東日本大震災4年~福島と原発のいま
21:19〜https://youtu.be/5GXzqghUwIY?t=21m19s
核のゴミ
水野:
小出さん、次は「核のゴミ」について伺いたいんですけれども、
原発再稼働への動きが進められている中で、
科学者の団体である日本学術会議というところが発表したものがあります。
それは「再稼働の条件」として、
「原発から出る核のゴミの対策を明確にしなさい」という提言なんですね。
これは具体的には「50年間の乾式貯蔵」というのを提案していると言うんです。
これはどう評価なさいます?
小出:
日本学術会議というのは、「学者の国会」と呼ばれるように、
学者の中の本当に偉い人たちが会員になって作っている団体なのです。
その団体がようやくにして、これまでの日本がやってきたやり方。
というのは、原子力発電所から出てきたゴミを「
地下深いところに埋め捨てにしてしまえ」というのが日本のこれまでの方針だったのですけれども、
「そんなものはダメだ」と言って、最近になってようやく提言を出してくれるようになったのです。
私は今水野さんが言ってくださったように、
「乾式貯蔵でやるしかない」と、もうずーーーっと昔から言ってきた人間なのです。
「埋め捨て」にするなんていうことをやってはいけない。
「埋め捨て」にしたところで100万年間そこにじっとしていてくれなければいけないというようなことは、
科学が保障できるようなことではないので、
水野:100万年埋めたままの状態が保証できるか?っていうことですね?
小出:そうです。
水野:「地球は変わる」っていうことです。
小出:
はい。
例えば関西には六甲山という山があります。
標高約900mあるはずですけれども、
あれは100万年前は海の底だったのです。
それほど長い時間のことを言っているわけで、
私たちがわずか何十年間で使った放射能のゴミを100万年も、
後々までじっとしておいてくれと望むこと自身が、まずはおかしいと思いますし、
「そのようなやり方をやってはいけない」と私はずーーっと言ってきました。
で、少なくともそういうやり方がダメなのであれば、
私たちの目の黒い場所で保管を続けるしかないし、
そのやり方というのは「乾式貯蔵しかない」と私は言ってきましたので、
学術会議が、ようやくにしてそこまで言ってくれるようになったということで、
ありがたいとは思いますけれども、なんで今まで学術会議が日本の原子力の暴走を認め続けてきたのか?と。
むしろ私は、…ちょっと文句も言いたいな、と思っています。
平野:その気になれば今は、これはもう実現できるんですか?
小出:
使用済み燃料というのは、かなり膨大な発熱体ですので、
原子炉から取り出した直後はプールで保管するしかありません。
でも、4年とか5年とか経ちますと、崩壊熱と言っている放射能が出す熱が随分減ってくれますので、
金属製のキャスクという、鉛と鋼鉄でできた容器の中に入れて、
いわゆる空冷で冷やすことができるという状態になるのです。
実際に世界でやっていますし、日本の原子力発電所も、
例えば東海第二原子力発電所とかいうところでは、
プールではなくて、金属製のキャスクに入れて、空冷で建屋内で保管をするということを既にやっています。
で、青森県のむつ市には東京電力と日本原子力発電が、中間貯蔵施設という貯蔵施設を作って、
金属製のキャスクで空冷式の保管をしようとして、もうすでにその建屋もできているという、
そういう状態になっていますので、やろうとすれば出来ます。
ただし、私自身はその乾式貯蔵の場所というのをこれまでやってきたように
過疎地に押し付けるということではなくて、「都会に作ってくれ」と私は言っています。
東京電力の本社ビルの地下、あるいは関西電力の本社ビルの地下でもいいわけですから、
そういうところにおいて、都会の人達が自分達の生んだゴミというのをきちっと認識すべきだと思っています。
水野:でも、「50年経ったら安全」というわけじゃない…ですよね。
小出:
もちろん違います。
50年たっても結局やり方がわからないということに多分なると思いますし、
それからまた50年間、なにがしかのやり方を考えるということになると思います。
水野:次のやり方を考えながら走らざるを得ない…
小出:はい
もちろん私は死んでいるし、平野さんも水野さんも死んでしまっているわけですけれども、
「そういうゴミというものを原子力というのは生んでいるんだ」ということを、
皆さんも認識して欲しいと思います。
26:33
水野:
小出先生は今月末で京都大学を退官なさるというふうに伺っておりますけれども、
今後もまた色々教えていただきたいと思いますので、
今後ともどうぞよろしくお願いたします。
小出:はい、ありがとうございました。
水野:京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんにうかがいました、ありがとうございました。
ー参考ー
日本学術会議、核ごみ対策提言へ 再稼働条件で明確化要請
長崎新聞 2015年2月17日 18:01
日本学術会議が開いた「核のごみ」の最終処分に関する検討委員会で、政策提言案について議論する今田高俊委員長=17日午後、東京都港区
日本学術会議は17日、原発から出る「核のごみ」の最終処分に関する検討委員会(委員長・今田高俊東工大名誉教授)を開き、原発再稼働の条件として、核のごみ対策の明確化を政府と電力会社に求める政策提言案について議論した。3月にも正式に公表する。
日本学術会議の提言案は、原発の高レベル放射性廃棄物の処分地が決まらないまま再稼働を進める国の姿勢を「将来世代に対する無責任」と批判。原発推進、脱原発など立場にかかわらず、再稼働で生じる廃棄物の抑制や上限設定など「総量管理」を議論すべきだとしている。
核のごみ:日本学術会議が計12項目の政策提言
毎日新聞 2015年02月17日 21時47分
有識者で作る日本学術会議は17日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分のあり方を議論する検討委員会(委員長=今田高俊・東京工業大名誉教授)を開いた。ごみを地中深くに埋める地層処分を将来的に導入することを前提にしつつも、原則50年間、地上施設で暫定的に保管することなどを含む政策提言をまとめた。
提言は計12項目。核のごみの保管・処分は電力会社の責任と明記。電力会社が配電地域ごとに暫定保管施設を少なくとも1カ所設置するように求めた。同時に、原発再稼働や新増設に当たっては、こうした暫定保管施設の確保を前提条件とすることも盛り込んだ。
国民の合意形成を図るため、市民が参加する「核のごみ問題国民会議」の設置も提唱した。今田委員長は記者会見で「再稼働を進めるなら、政府はごみ処分方針について国民に明確なプランを示す必要がある」と述べた。【中西拓司】
京大:反原発の闘いこれからも…小出裕章助教が定年退職へ
毎日新聞 2015年02月19日 15時15分(最終更新 02月19日 16時17分)
小出裕章さん=2014年7月、松井豊撮影
京都大学原子炉実験所=大阪府熊取(くまとり)町=の研究者として、40年以上、原発の危険性を指摘し続けてきた小出裕章(こいで・ひろあき)助教(65)が3月末で定年退職を迎える。市民に分かりやすい語り口で原子力利用に伴うリスクを訴える論客で、東京電力福島第1原発事故以降は週末ごとに全国の市民団体などの求めに応じて講演してきた。今月27日には同僚と始めた自主講座「原子力安全問題ゼミ」で最終講義をする。
◇今月27日「最終ゼミ」
小出さんは1974年、実験所に助手として採用された。もともと「原子力開発に命をかけるつもりだった」という原発推進派だったが、原発が都会に建てられず、過疎地に危険性が押しつけられている現実を知り、一転、反対派に。原発に批判的な実験所の同僚5人と研究グループを作り、市民が参加可能な「安全問題ゼミ」を開いた。活発な反原発の動きが注目され、「熊取の6人組」などと呼ばれた。
福島原発事故以後は、日常業務の傍ら週末などに約230回講演に出かけ、ラジオ番組に約150回出演した。27日午後2時から実験所で開く最終講義は「原子力廃絶の道のり」がテーマという。退職後は長野県に移住する計画を立てている。一方で「福島事故で苦難の底にいる人たちを考えれば、簡単には引き下がれない」と話し、7月末まで講演の予定が入っているという。【大島秀利】
京大の小出助教「原子力は危険」 定年退職前に最終講演
福井新聞(2015年2月28日午後4時09分)
公開勉強会で、定年退職を前に最後の講演をする京都大原子炉実験所の小出裕章助教=27日午後、大阪府熊取町
京都大原子炉実験所(大阪府)の小出裕章助教(65)は3月の定年退職を前にした27日、公開勉強会で最後の講演をした。「原子力は徹底的に危険で差別的。事故が起きれば古里を追われる」と話し、あらためて原発の危険性を訴えた。
福島第1原発の事故について「起きる前に何とか止めたかった。無力さを感じる」と話した。
事故により原発に絶対的な安全はあり得ないと明らかになったのに、国は安全性を確認したとして再稼働を進めようとしていると批判。「巧妙なすり替えだ。福島の事故はまだ終わっていない」と述べた。
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東日本大震災4年~福島と原発のいま
10:56〜https://youtu.be/5GXzqghUwIY?t=10m56s
廃炉への道
水野:
そして最終的にはもちろん廃炉を完成させなければいけないんですけど、
その廃炉への道ですね。
福島第一原発でメルトダウンした燃料、溶融燃料がまだどこにあるか?わかっていないんですよね。
小出:わかりません。
水野:
それさえわかっていないんですよね。
で、その場所を知る方法に、今言われているのが
「ミュー粒子」っていうものを使うという案が上がっているそうです。
この「ミュー粒子」って、なんなんですか?
小出:
放射線の一つで、大変透過性の高い放射線の一種なのです。
それが、ま、宇宙から降り注いでいますし、ごく特殊な加速器を使うとそういうものも作り出すことができるのですが、
それを福島第一原子力発電所の原子炉建屋に照射する。
あるいは宇宙から降ってくるミュー粒子を利用して、
それがどのように原子炉建屋の中を突き抜けてくるか?ということを調べることによって、
「どこに溶け落ちた炉心があるかを知ることができるかもしれない」という話があるのです。
水野:小出先生はこれでわかると、場所を突き止められるとお思いになります?
小出:ダメだと思います。
水野:ダメですか。
小出:
はい。
そんなことをやっているよりは、もっともっと私たちは迅速に対処しなければいけませんし、
「何年後かに分かればいい」という話ではなくて、
まずはもう、汚染が外に出ないように、もう、何よりも早くどんどん工事、
というか、わたし自身は「閉じ込めるしかない」と思っているのですが、
1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故の時にやったような、
「石棺」というものをまずは作る。
チェルノブイリ原子力発電所の場合は地上だけで済んだのですけれども、
福島の場合には原子炉建屋が、地下でもうボロボロにひび割れてしまっていて、
地下水が汚染水と一体化してしまっているという状況ですので、
地下にも石棺を作らなければ、
水野:地下にも石棺って、出来るんですか?
小出:
はい、もう私は、水野さんに聞いていただいて、
前の「たねまきジャーナル」の時代にですね、
2011年5月の段階からそれを私はみなさんにお伝えしてきました。
「地下に遮水壁をめぐらして地下水と接触しないようにしなければいけない」
「すぐにでもやるべきだ」と私はあの時に発言をしたのですが、
もうすでに4年も経ってしまっていて、
「あまりにも遅い」と。
国や東京電力のやっていることが、思います。
今更「ミュー粒子でどこにあるか?」なんて、そんな議論をしている暇すら本当は無いのです。
どんどん地下の石棺、私が遮水壁と呼んだようなものを早急に作らなければいけないと私は思います。
水野:結局今地下水がどんどん汚染されて海へ流れているわけですもんね。
小出:そうです。
平野:
凍土壁というのを遮水壁として国とか東電はやろうとしている。
これはま、初めから「あんまり効果はない」と言われていたんですけれども、
特に、全然成果が上がっていないみたいですね。
小出:「出来ない」のです。
平野:はぁ〜
小出:
私よりは平野さん含めて報道の現場にいる方の方がご存じかもしれませんが、
凍土壁というのは、言ってみれば、「やったことがある技術」なのです。
トンネルなんかを掘削したりしているときに、どこかで地下水が噴き出してきたら、その場所だけ凍らせてトンネルを先に掘り進めようというための技術です。
ですから、やったことがないわけではないのですが、
福島第一原子力発電所で作る凍土壁というのは、深さ30m、長さ1.4kmというような氷の壁を作ると言っているわけで、
そんなことは人類全く経験がありませんし、それをずーっと、何年何十年と維持できるのか?といえば、
冷やしている冷媒が途切れてしまえば、氷が溶けてしまって壁がなくなってしまうわけであって、
そんなものが維持できるはずがないのです。
結局はその周りに恒久的な壁を作るしかなくなります。
ただ、ゼネコンから見ると、「大変うまいやり方だな」と私は思います。
凍土壁を作るために何百億円という金をゼネコンが儲けるわけで、
結局「凍土壁ではダメでした」
「また、次の恒久的な壁を作ります」と言えば、
また何百億円何千億円の金をゼネコンがせしめるということになるわけです。
ゼネコンというところは、原子力発電所を作るときに儲けて、
また事故が起きれば儲けてと、
どんなことがあっても儲けることができるという、そんなところなんだなと思います。
水野:
小出さんは「石棺をできるだけ早く作るべきだ」とおっしゃいますけど、
今言われているのは、実際にはメルトダウンした、溶け出した燃料を取り出すのは、
格納容器の横の部分ですね、側面に穴を開けて、そして溶融した燃料を取り出す。
これを検討していると聞きます。
このやり方はいかがですか?
小出:
もともと、国と東京電力は「上から取り出す」と言っていたんです。
圧力容器という鋼鉄製の圧力釜自身はもう底が抜けてしまって、
溶け落ちた炉心はさらに下に落ちているわけです。
どこか?というと、格納容器というもう一つ大きい容器の底に落ちた、のです。
格納容器というのは、放射能を閉じ込めるための最後の防壁として設計された容器ですので、
もちろん水も漏らさなければ空気も漏らさない放射能だって当然漏らさないという筈の容器だったのですが、
その容器がもうボロボロになってしまっていて、
地下水でもなんでもそこに入ってきたり、
あるいは、今圧力容器の中に水を意図的に入れているわけですが、
それが格納容器に流れ落ちて、それがまた原子炉建屋の中に流れ出ていってしまっているというように、
もう格納容器もボロボロに壊れているのです。
で、国や東京電力の工程表によると、
「格納容器の中に水を満水にする」と言ってるわけですけれども、
そんなこと自身がまずはできません。
水野:出来ないんですね。
小出:
はい。
ですから、
水野:
でも、この水っていうのは、放射能を
遮断する。
小出:そうです。
水野:
効果があるので、
本当は水を入れてから、
水の中に沈没させるような形にしてから、溶融燃料を取り出したいわけですよね。
小出:
はい。
上の方向に取り出したいと言っていたんですけども、
水野:それがもう出来ない。
小出:
それができないので、横方向からやろうか、
あるいは私の友人たちは「地下からやればできるんではないか」というような話もしています。
水野:どうなんですか?
小出:私は、多分出来ないと思います。
水野:出来ないと。
小出:
はい。
国や東京電力の工程表によると、
溶け落ちた炉心は圧力容器という鋼鉄製の圧力釜の底を抜いて下に落ちた。
で、格納容器の床に落ちたわけですけれども、
圧力容器の真下に、饅頭のように堆積しているという、そういう想像をしているのです。
そんなことは決してありません。
もう、猛烈なドラスティックな事故が進行したわけで、
溶け落ちた炉心はもう、格納容器の床に饅頭のように堆積しているのではなくて、
もうそこらじゅうに飛び散ってしまっていると私は思います。
ですから、上から取り出そうにしても、もうそこらじゅうに飛び散ってしまっていて、
上から見えるところというのはほんのわずかなところしか見えませんから、
まず上には取り出せません。
横からやったとして、
何がしかの物を取ったとしても、
取りきれないものは山ほど残ってしまいます。
「取る」という作業のために膨大な被曝をしなければいけなくなるわけですし、
そんなことをやって、仮に50%取ったとしても、50%は取れないで残ってしまうわけですから、
初めから、私はそんな作業は諦めるべきだし、
すぐにでも石棺化ということに行くべきだと私は思います。
水野:どうして石棺説の方に動かないんでしょう?
平野:ねぇ。
取り出すと言っても何か僕らのイメージでは、機械で取り出すみたいなイメージですけど、
そんな物は無いわけですね、
小出:
もちろんこんな経験をしたことはないのです。
1979年に米国のスリーマイル島というところで事故が起きて、炉心が溶けたことがあったのですが、
その時は「原子炉圧力容器の底は抜けなかった」のです。
ですから、溶けた炉心は原子炉圧力容器という鋼鉄製の圧力釜の底に、
饅頭のようにそれこそ溜まっていたわけで、
だから上から、圧力容器の中に水を満たしてですね、
上の方から、饅頭のように固まっている奴を取り出したんですけれども、
すでにもう、その圧力容器すらが、底が抜けてしまって、さらに下に落ちているわけで、
仮に格納容器を全部水没出来たとしても、
上の方から見ると30m、40mも下に溜まっているものを上から掴み出さなければいけない。
という、かつてやったこともないことをやらなければならない。
そして、わたし先ほど聞いていただいたように、
上から覗いて見えるようなところに饅頭のように溜まってるなんていうことが元々無いのです。
そんな馬鹿げたことを考えるよりは、
一刻も早く封印するという作業に入ったほうがいいと私は思います。
ーーつづく
ー参考ー
福島第1原発で「ミュー粒子」使用し、溶けた核燃料調査始まる
FNNLocal 福島 2015/02/12
こちら、茨城県の東海第二原発。
「ミュー粒子」というものを使って撮影されました。
レントゲンの写真のように建物の内部が一部透けていて、
こちら(右の黒い部分)は柱、そして梁(柱から横に伸びる黒い部分)。
青く見えているのは「燃料」です。
茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構が撮影に成功しました。
福島第一原発でも、この技術を使い、溶け落ちた燃料の分布を探る調査が始まりました。
福島第1原発1号機の北側と西側に設置された、2台のコンテナ。
この中にそれぞれ、ミュー粒子を計測する装置が入っています。
ミュー粒子は、宇宙線が大気と衝突して発生するもので、物質を通過する性質を持っています。
しかし、ウランなどに衝突すると方向が変わるため、
ミュー粒子の動きを調べることで、燃料が原子炉内でどう溶け落ちているか把握できるのです。
30~50cmほどの大きさでも計測できるといい、
溶けた燃料の状態がわかれば、取り出し作業に向けた大きな材料になるということです。
12日、東京電力は、会見で
10cm厚の遮蔽(しゃへい)体の中に測定器が入っているのですが、
ま、その中の温度の状況が、その管理範囲内にあることを確認をして、
それから、測定を始めるというふうに聞いています。
溶けた燃料の取り出しは、廃炉にあたって極めて重要ですが、
一方で、これまでに例のない、未知の作業となります。
東京電力では、3月末までに調査結果をまとめ、取り出し方法の検討を始めたいとしています。
追記
<福島第一原発>1号機の原子炉に核燃料なし
透視調査で「原子炉に核燃料なし」 福島第一原発 NHK福島 3月19日 20時58分
先月から行われていた、溶け落ちた核燃料を探す調査で、
1号機の原子炉の中に核燃料が見あたらないことがわかりました。
福島第1原発 汚染水対策の鍵「凍土遮水壁」の最新建設現場公開
FNNLocal 2015/02/18
福島第一原発です。
東京電力が汚染水対策の柱に据えるのが、福島第1原発の1号機から4号機の周りを氷の壁で囲い、地下水の流入を抑える「凍土遮水壁」です。
18日は、その最新の建設現場が公開されました。
記者:
こちらが4号機脇の、一番工事が進んでいる凍結管になります。
この下にあるのが凍結管になるんですが、この下に凍土壁ができることになります。
公開された、凍土遮水壁の建設現場。
着工からおよそ8カ月で、建屋の山側部分は、凍結管の設置も6割以上進んでいます。
1号機から4号機の周りを囲うように地盤を凍らせる、凍土遮水壁。
完成すれば、建屋に1日300トン流れ込む地下水を遮断し、新たな汚染水の発生を大幅に抑制できるとされています。
建屋を見下ろす、高さ30メートルの高台。
ここに設置されたのは、冷凍機などが並ぶ凍結プラントで、
-30度に冷やした冷却液を建屋周辺の配管へと送ります。
記者:
こちらが凍土壁に欠かせない冷却液を作る冷凍機です。
この場所から冷却液がパイプを通って、建屋の周りにある凍結館へと流れていきます。
凍結プラントも完成し、東京電力では、3月中に、一部で凍結を始める計画でした。
しかし、相次ぐ作業員の死亡事故を受けた安全点検で、
作業が2週間中断したことから、工程の見直しを迫られています。
東京電力は、会見で
「今、詳細な日程を、今詰めている状況です。
現時点では、まだ、3月中には開始したいということで」
汚染水対策の鍵を握る、凍土遮水壁。
東京電力では、準備が整い次第、山側の凍結しにくい部分から先行して、凍結を始める計画です。
2014年12月
<福島第一原子力発電所>
燃料の取り出し・汚染水・魚・凍土壁・「処理水」・他
おしどり・木野龍逸12/31 報道するラジオ(文字起こし)
2014年9月
<作業員の証言5>
タンク・凍土壁・アルプス…「結局ゼネコンのただの食い物ですよ」9/12報道するラジオ(文字起こし)
2014年10月
<福島第一原発視察最新状況>
4号機使用済み核燃料・汚染水対策・凍土壁・今後について/服部良一×増山麗奈(文字起こし)
より一部抜粋
服部:
凍土壁を作っている現場であるとか、
そういう汚染水対策の現状というところを見てきたんですね。
これは凍土壁を作っている現場やね。こんな感じなんです。
増山:えっ、凍土壁って「地下掘って」と思ってたんですけど。
服部:地下にずーっと送っているわけよ、凍らすためのをね。
増山:え・・どこが地下掘っているところなんですか?
服部:だからここに管があって、ここからずっと送っているみたいよ。
増山:
へぇ〜〜〜、・・・しょぼいですね。
私はもっと世界最先端のすごい技術かと思ったら、
服部:うん、
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東日本大震災4年~福島と原発のいま
水野晶子:
今日の報道するラジオ特集テーマ「東日本大震災4年、福島と原発の今」です。
今日は早速、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんと繋がせていただきます。
小出さん、こんばんは。
小出裕章:こんばんは。
中間貯蔵施設
水野:
小出さん、今日はまず、最初にお届けいたしましたニュース、
中間貯蔵施設の話から伺っていきたいと思います。
これは、「福島大地原発事故の除染作業で出た汚染された土などの廃棄物が、運び込まれ始めた」ということなんですけれども、
地図で見たらものすごく広いんですね。
小出:そうです。
水野:
大熊町と双葉町にまたがって、福島第一原発を取り囲むような格好で敷地が予定されていて、
16平方キロメートルって。
これ、どれだけ広いか?ってちょっと勘定しましたらね、
だいたい4キロ四方でしょ、4×4=16ですから。
すると丁度、梅田から難波までの距離が4kmなんです。
これで4km四方をちょっと想像していただくと、
なんと広大な土地が、この汚染物質の中間貯蔵施設として必要か、っていうのが、
少しイメージしていただけるかと思うんですね。
16キロ平米っていったらね、芦屋市の面積よりちょっと小さいくらい、
それくらい広大な施設が必要だということなんですけど、
この中間貯蔵施設って、そういう広いところに汚染物質を持ち込んで、
どんなふうに保管。どんなことをするんですか?小出先生。
小出:
私はよくわかりません。
今現在は、それぞれの人々が住んでいる周辺に、いわゆるフレコンバックというものに詰めて野積みされている、
水野:あの”黒い袋”のようにみえますが、
小出:
黒いのもありますし、青いのもあるのですけれども、
とにかくそれに詰めて野積みしているのですが、
水野:
住宅のすぐそばなどにも置いていますし、
小学校などの校庭の土を剥ぎ取った場合、本当にそうした土を野積みの状況で、
子供達がいるすぐ近くにも野積みしていますよね。
小出:
そうです。
ですから「それをなんとかしなければいけない」ということは確かにある、のですけれども、
でも「どうできるのか?」と言っても、その方策がわからないのです。
とにかく目の前から何処かに消さないといけないということで、
中間貯蔵施設というのを作ろうとしています。
水野:
はぁ。
で、この敷地の中で焼却もするんですか?
小出:ええ、燃えるものは焼却すると思います。
水野:
はぁ…、
また、焼却した灰などをそこに埋めるんですか?
小出:
え…、何をしても放射能は消えないのです。
袋に詰めたところで放射能は消えていないで袋の中にあるし、
それを焼いたとすれば、また濃縮された形で放射能は残るのです。
それを本当に何百年、あるいはもっと長い期間にわたって『どうすれば閉じ込め続けられるか』ということがわからないのです。
水野:
閉じ込めることの難しさでいうとですね、
地図を見たら、海にも面しているところですしね、
「もしも、また次の津波が来たらどうなるんだろうか?」とか、
「地下水はどうなるんだろうか?」
「海水に流れないんだろうか?」とかいろんなこと。
そうした、汚染物質をそこに搬入した後の懸念というのはどうなんでしょうか?
小出:
もちろんあるのです。
例えばこれまでは、福島原子力発電所の事故が起きない時でも、原子力発電所が動いている限りは放射能のゴミが出てきたのです。
そのうち、あまり汚染の高くないゴミというのは、「青森県の六ヶ所村に埋め捨てにする」ということでこれまでもずーっとやってきました。
そこには、いわゆるプールのようなものをたくさん作って、そのプールの中に放射能のゴミを入れていく。
そしていっぱいになったら蓋をして粘土で固めて盛り土をする。
というやり方でこれまでやってきました。
では、それをやって何年間じっとしておいてくれればいいか?というと、300年、
水野:300年!?
小出:
と、日本の国や電力会社は言ってきたのです。
もちろん私は死んでいるし、水野さんや平野さんも死んでいるわけですし、
東京電力、関西電力、すべての電力会社のお偉いさんも死んでいる。
自民党のお偉いさんも死んでいる。
ま、たぶん「自民党」という政党すらが無いという、
そういう長さに渡って「お守りをするからいい」と言って、自民党政府がそのやり方を認めてきてやっているのです。
300年という時間の長さは、私にとっては途方もなく長いと思いますし、
300年前は、じゃあどんな時代だったか?というと、「忠臣蔵の討ち入りの時代」だったのです。
水野:そうなんですね。
小出:
そんな先のことまでなんで今の私たちが
「もう大丈夫だ、保証できるんだ」と言えてしまうのか?ということが、
とてつもなく私には不思議です。
水野:じゃあ、300年の話から、ちょっと小さい数字の30年という話にさせてもらったら、
平野:そうですね、この根拠がなかなか分からないですね。
水野:
これは「30年以内に福島県外で、福島県じゃないところで最終処分を」という話なんですけど、
これは、…できるんですか?出来る話なんですか?
小出:
できません。
出来る道理が無いと私は思います。
今の中間貯蔵施設にしても、住民たちは本当に嫌なんです。
自分たちがずっと生活をしてきた場所が、放射能のゴミ捨て場になってしまうということは、耐え難いほどの苦しみだと思います。
それを、先ほども平野さんがおっしゃってくださったように、
暴力的にとにかく「金でやってしまおう」としているわけですけれども、
30年経って、じゃあどこか別の人たちが引き受けてくれるか?といえば、
そんなことを引き受けてくれるところがあるはずがないのです。
水野:
その辺りのことをリスナーの方が聞いてくださっているんですね。
「最終処分場が決まらないままで『中間』と言って地元を説得しているんですが、最終地が見つかるわけないと思うんですよ」って。
小出:はい、私もそう思います。
水野:そうですか……ということは「このまま」になる可能性が高いっていうふうに小出さんはみてらっしゃる。
小出:当然そうなります。
水野:
そもそも、じゃあ、
「最終処分」というのは、どういう状況を示すんですか?
小出:
それもわからない…わけです。
で、私自身は、今作ろうとしている中間貯蔵施設。
福島第一原子力発電所の周辺の、いわゆる民有地ですね、に作ろうとしているのですけれども、
それ自身が全く間違えていると思います。
今周辺で、たくさんの汚れたものを集めてフレコンバックに詰めたりしているわけですけれども、
その汚れの正体というのは、もともと福島原子力発電所の原子炉の中にあった放射性物質なんです。
東京電力のれっきとした所有物だったものなのですから、
住人がそれを必死で集めたものは、「東京電力に返せばいい」と私は思います。
住民たちがそれを引き受けるなんていうことは決してあってはいけないことなので、
元々あったところ、本来であれば福島第一原子力発電所の敷地に返せばいいと私は思います。
かなり広い敷地がありますけれども、
ただ、福島第一原子力発電所の敷地の中では、今7000人近い労働者たちが、放射能を相手に格闘しているのです。
ほとんどが下請け労働者、いわゆる非正規労働者が被曝しながら戦っているわけで、
そこに新たな放射能を戻すということは、私はできないと思います。
でも、福島第一原子力発電所南約15kmのところに福島第二原子力発電所という広大な敷地があるのです。
東京電力は「そこにある4基の原子炉をまた再稼動させる」ということを言っているわけですけれども、
私は「冗談を言わないでください」と思っています。
これだけ周辺の人たちに苦難を押し付けながら、自分だけは無傷で生き延びるということは、到底許すべきことではないと私は思いますし、
福島第二原子力発電所の敷地を、まずは中間貯蔵施設。
当然、最終処分場になってしまうのですけれども、
そのために使うべきだと思います。
それでも足りなければどうするか?ということがまた出てきますけれども、
なかなか難しいことであって、
私はとにかく東京電力に責任を取らせたいと思っていますので、
福島第二原子力発電所で足りなければ、
新潟県の柏崎刈羽原子力発電所という、世界最大の原子力発電所の敷地がありますので、
そこに持っていくべきだと思っていて、
先日柏崎に行った時にもそう発言しました。
水野:あー
小出:
柏崎の方々から見れば「なんというとんでも無いことを言うのだ」と思ったと思いますけれども、
でも、何と言っても第一義的な責任は東京電力にあるわけですから、
それを住人が引き受けてしまうということは、やってほしくありません。
水野:あ…、私たちは本当にずっと背負っていかなければいけない問題をいくつも持ってますね。
平野:そうですね、国と電力会社は両方とも責任を取っていませんからね。
小出:そうです。
平野:押し付ける形ですよね、これ。
小出:弱いところ弱いところにしわ寄せをしていっているのです。
ーーつづく
ー参考ー

【3.11から4年】「中間貯蔵施設」 13日搬入開始 迫る
福島民報 2015年3月7日
東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設をめぐり、内堀雅雄知事は2月24日に廃棄物の搬入受け入れを表明、翌25日に政府に伝えた。これを受け、環境省が3月13日の搬入開始を表明するなど、施設整備に向け、大きく前進した。中間貯蔵施設は除染の進展につながるなど、本県復興に欠かせない。ただ、2000人余りともされる地権者との用地交渉の多くは、これからだ。「県外最終処分は実現できるのか」「先祖代々の土地を手放したくない」。地権者は複雑な思いを抱える。
■福島復興の"出発点" 9市町村から先行輸送
13日搬入開始の決定に伴い、同省は平成57年3月までの県外最終処分の完了の責務を負った。しかし、最終処分場の候補地の選定は始まっていない。中間貯蔵施設の用地確保の見通しや施設建設の日程などは不透明なままだ。
望月義夫環境相は13日搬入開始の理由を「中間貯蔵施設は日本全体の復興のためにも一日も早く稼働させたい。ただ、3月11日を静かに過ごしたいという地元の思いを重く受け止めた」としている。また、地権者が墓参りする彼岸の間にも配慮し、3月18日から24日までの7日間は廃棄物の搬入と一時保管場の整備工事などを停止する方針も示している。
搬入開始後の最初の約1年間はパイロット(試験)輸送を行う。双葉郡に田村市を加えた9市町村から先行して輸送した後、除染計画を策定している計34市町村からそれぞれ約1000立方メートルずつを一時保管場に搬入する。その後の本格搬入に向けては、同省が各仮置き場からの搬出スケジュールや施設建設の工程表などを早急に示す必要がある。
搬入開始日の決定を受け、建設予定地の大熊町の渡辺利綱町長は「地元の意向を受け入れてもらった。安全に作業を進めてほしい」、双葉町の伊沢史朗町長は「国がある程度の配慮をしてくれた。地域の人の思いをくみ取った丁寧な対応をしてもらいたい」と語った。
内堀知事は「両町の思いを受け止め、国が判断した。輸送の実施に当たっては安全・安心の確保を最優先に取り組んでほしい」との談話を発表した。県は搬入受け入れに際して、地権者への丁寧な説明など5項目を政府に求めた。
同省は今年1月中の搬入開始を目指してきたが、県、大熊、双葉両町、建設予定地の地権者との交渉が難航して断念。東日本大震災から4年となる3月11日を新たな目標としていた。
中間貯蔵施設への搬入開始から30年以内の県外での最終処分完了は昨年11月19日に参院本会議で可決、成立した日本環境安全事業株式会社(JESCO)法の改正案(中間貯蔵施設関連法案)で定めている。
【県が搬入受け入れに当たって政府に要請した5項目】
(1)地権者に対して分かりやすく丁寧で寄り添った対応をする。
(2)30年以内の県外最終処分に向けて万全の措置を講じる。
(3)中間貯蔵施設の交付金の運用に当たって、県と市町村が自主的、主体的に使えるよう対応する。原子力災害からの復興に関わる財政措置は引き続き国と協議していく。
(4)道路交通対策やルートの維持管理、積込場からの搬入ルートの生活環境の除染などは県と市町村の意向を踏まえ国がしっかり取り組む。
(5)輸送の実施に当たっては安全確保を最優先する。県全体の搬入の見通しを早急に示す。
【中間貯蔵施設への搬入例】
○県内市町村の仮置き場に保管されている除染に伴う汚染土壌などの廃棄物
○1キロ当たり10万ベクレルを超える放射性セシウム濃度の焼却灰など
※1キロ当たり10万ベクレル以下の廃棄物は富岡町の民間管理型処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」で埋め立て処分
※中間貯蔵施設
原発事故に伴う除染廃棄物を最長30年間保管するため、環境省が双葉、大熊両町の福島第一原発周辺に建設する施設。面積は約16平方キロで約3千万トンの貯蔵が可能。貯蔵や減容化のための施設の他、空間放射線量や地下水のモニタリング、情報公開、効果的な減容化技術の研究開発・評価のための施設も併設する予定となっている。
(2015/03/07 17:14カテゴリー:震災から4年)
中間貯蔵施設へ廃棄物搬入 12袋で2時間半の慎重な作業に
FNN 2015年3月13日
福島県の最重要課題の1つ、中間貯蔵施設への廃棄物の運び込みが始まった。2,200万立方メートル、東京ドーム18個分という、前例のない廃棄物の輸送が行われる。
13日に初めて搬出が行われた場所は、福島第1原発から、およそ20km離れた大熊町の南平仮置き場。
そこから県道を北上して、常磐自動車道、国道6号線を横切って、中間貯蔵施設一時保管場へと搬入された。
廃棄物の量は、わずか12袋だったが、2時間半もかかった慎重な作業となった。
午後1時、大熊町の居住制限区域にある「南平仮置き場」で、廃棄物の積み込みが始まった。
保管が長い期間に及び、袋が劣化しているおそれもあるため、新しい袋に詰め直しての搬出となった。
廃棄物を積んだトラックは、15km離れた中間貯蔵施設の一時保管場へと運ばれた。
一時保管場で行われるのは、廃棄物の移し替え。
環境省の担当者は「(なぜ移し替える?)場内と場外の作業を分けるためです。汚染の拡散を防ぎますし、効率もいいと思います」と話した。
一時保管場の放射線量は、毎時3マイクロシーベルト(μSv)から4マイクロシーベルトほどだが、輸送と搬入でトラックを分けることで、汚染の拡散を防ぐ狙いがある。
また輸送の前後で、重さや線量に変化がないかチェックする。
環境省の担当者は「(搬出の前後で放射線の値に変化がないかわかる?)そうですね。途中でフレコンバッグを落としていないか、何か違う物に変わっていないか確認する。(その資料がトラックに?)全部のトラックに積まれています」と話した。
13日は、2台のトラックが、12袋を一時保管場に搬入。
1カ月ほどで、1,000袋ほどが一時保管場に運ばれる計画。
福島の中間貯蔵施設へ除染で出た土を搬入
NHK 2015年3月13日 17時02分
(ニュース動画の文字起こし)
原発事故の後、福島県内の除染などで出た土などを保管する袋です。
人々の生活の場に仮置きされたままです。
事故から4年を経て、今日(13日)中間貯蔵施設の「保管場」への搬入が始まりました。
30年以内に完了するとしている福島県外での最終処分へ時計の針は動き始めたことになりますが、
今後の工程が着実に進むのか、見通しはたちません。
除染で出る土などが入った袋。
福島県大熊町の借り置き場です。
午後袋がトラックに積み込まれ運び出されました。
ヘリ 記者:
午後2時55分です。
除染で出た土などを載せたトラックが中間貯蔵施設の「保管場」に到着しました。
東日本大震災、そして原発事故発生から4年を経て、
ようやく今日、中間貯蔵が始まりました。
施設の建設予定地は、双葉町と大熊町にまたがり、
土地の広さは東京渋谷区とほぼ同じおよそ16平方キロメートルです。
土などの借り置き場の近くに住む人は、
「なるたけ早く持って行ってもらいたい。というのが願いですね」
避難生活を続ける大熊町の住民は搬入が始まったことについて、
しょうがないと思ってますけど、…何処かが受け入れなきゃならないわけですよね。
反対ですけどね。
諦めてるっていうかね…、…帰れないし。
福島県内堀知事
本当に大切な節目になると考えています。
ただ一方で様々な地元の方の思いもありますので、
県としては複雑な思いせこの件を受け止めています。
土などの搬入は、施設の用地確保もほとんどできていない中で始まりました。
今現在保管できるのは、搬入が計画されている量の0.1%未満です。
広大な建設予定地の地権者は2300人以上にのぼるとされますが、
契約できたのはわずか1件です。
施設の完成や、搬入の完了時期の見通しは立っていません。
そして大きな課題は土などの最終的な行き場です。
政府は、保管が始まった13日から30年以内に福島県外で最終処分を終える方針です。
しかし処分場の候補地の選定を含め、その具体的な工程は示されていません。
続きを読む
報道するラジオ年末特番
『もう、だまされないぞ!2014』
2014年12月31日
京都大学原子炉実験所 小出裕章助教
・高浜原発3、4号機のプルサーマル発電について
・高浜原発1、2号機の40年の期限延長
・高温ガス炉とは? 水のいらない原子炉
・福島第一原発の現在とこれから
http://youtu.be/tKn3AelBRBg?t=20m3s
プルサーマル発電 高浜原発
水野:
まず伺いたいのは、再稼動に向けて動く高浜原発についてなんです。
この高浜の3号機4号機というのは、
「プルサーマル発電を前提として再稼働の申請をした」ということなんですが、
この「プルサーマル発電」というのは簡単に言うとどんなものでしたっけ?
小出:
「プルサーマル」という言葉は日本で作った造語なのです。
「プル」の方はプルトニウムの「プル」です。
「サーマル」というのはいわゆる「熱」という意味ですけれども、
このプルサーマル発電というのは、
「プルトニウムを現在普通に動いている原子力発電所で燃やしてしまおう」という計画のことです。
水野:
プルトニウムを、ま、一般の原子炉で燃やすということで、
何かリスク、危険性というのはないんですか?
小出:皆さん石油ストーブをお使いですね。石油ストーブの燃料は「灯油」です。
水野:そりゃそうですね。
小出:
「灯油」というのはいわゆる石油、
原油というのを汲み上げるわけですけれども、
その原油を精製していきまして、
ある成分は「灯油」にいく、ある成分は「重油」にいく、ある成分は「ガソリン」にいく
というふうに分けて出来たのが「灯油」なのですね。
それでその「灯油」を燃やそうとして石油ストーブというのは設計されているわけです。
でもその石油ストーブで、例えば「ガソリン」を燃やそうとすれば、
水野:えええぇー
小出:
火事になってしまうわけですね。
灯油に例えば、5%ぐらいガソリンか何かが混じってしまった、というのであれば、
爆発したり火事になったりしないかもしれないけれども、
ガソリンの量をどんどん増やしていけば、どこかの時点で火事になったりしてしまうわけです。
今日の原子力発電所というのは、「ウラン」という物資とを核分裂させてエネルギーを得ようと、
そのために設計された原子炉です。
水野:「ウラン」を燃やすための設計なんですね。
小出:
そうです。
で、「プルトニウム」という物質も長崎の原爆になったように、
ウランと同じように核分裂はするんですけれども、
核分裂の仕方がウランと少し異なるのです。
ですから、灯油とガソリンが同じ原油だったのに燃え方が異なるように、
ウランとプルトニウムも燃え方が異なるのです。
で、ウランを燃やそうと設計した原子炉でプルトニウムを燃やしてしまおうというのが、
プルサーマルというもので、
本当はやってはいけない、のです。
石油ストーブでガソリンを燃やすようなことになってしまう訳です。
危険が必ず伴うということは、もちろん原子力を推進しているしている人たちも知っているわけで、
「プルサーマルといってもプルトニウムだけを燃やすんではないんだ」と、
「ウランの中にプルトニウムを少し混ぜるだけだからいいじゃないか」というのが彼らの言い分でして、
現在までのところ、「30%までは、まぁ入れてもいいだろう」というような話になっているわけです。
ただ、もともとやってはいけないことをやろうとするわけで、危険は必ず増えますし、
経済性も失われるということは、彼ら自身がもうはっきりと認めていることなのです。
水野:
じゃあ、一般の原発と違うプルサーマル発電のリスクっていうのはどういうものですか?
例えば、燃料棒がどの状態で溶けるか?とか、いろいろありますよね?
小出:
はい、
核分裂の連鎖反応をなんとかその制御棒で制御しているんですけれども、
「その制御がしにくくなる」ということもありますし、
「燃料が溶けやすくなってしまう」ということもあります。
おまけにプルトニウムというのは、ウランに比べれば20万倍も放射線の毒性が強い物質ですので、
そういうものを取り扱うと、あるいは事故も起こりうるわけで、
そのようなことを考えれば大きく危険が増加してしまうということになります。
水野:プルトニウムはウランの20万倍の放射線の強さがあるんですか?
小出:
生物学的な毒性というんですか、
同じ1gずつのウランとプルトニウムを持って来れば、「20万倍危険だ」ということです。
水野:
プルトニウムって、それこそ「近寄ったらどうなる」とかそういう言い方ってできるんですか?
小出:
プルトニウムという放射性物質はα線という放射線しか出さないのです。
ですから近寄ってもプルトニウムが外にある限りはあまり大きな危険は負わずに済みます。
ただし、100万分の1gを吸い込んでしまうと癌で死んでしまうというほどの猛毒物質ですから、
水野:
100万分の1gで、
100万分の1gを吸い込んだら死んでしまう
小出:
「吸い込んだ人が肺がんになって死ぬ」というのが現在の定説です。
平野:国の安全規制委員会は別の基準を、プルサーマルについては持っているんですか?
小出:持っていません。
平野:
持っていない。
一緒に審査、同じ基準で審査しているということですか?
小出:
そうです。
ただし、先ほども聞いていただいたように、普通の原子力発電所、
ウランを燃やそうとする設計の原子力発電所でプルトニウムを燃やしてしまうわけですから、
「3割以上入れてはいけないよ」とか、そういう規制はあるのです。
それ以外は、新しい規制基準もできましたし、その下で審査されることになります。
水野:じゃ、なんでそんな危険を伴うものをやるですか?
小出:
日本はこれまでプルトニウムという放射性物質を「高速増殖炉という原子炉の燃料に使う」と言ってきたのです。
福井県の敦賀にもんじゅという比較的小型の実験的な原子炉を作ろうとして、
「それがうまく動けばプルトニウムが燃やせる」というふうに言ってきた訳ですけれども、
もんじゅという原子炉は1兆円を超えるお金を投入しましたけれども、
未だに豆電球一つ付けることができないというほどの欠陥原子炉でして、
今後ももんじゅが動くことはあり得ませんし、
もんじゅという、高速増殖炉というプルトニウムを燃料にして使おうという、
その原子炉自身がもうほとんど絶望的な状況なのです。
ただし日本は「高速増殖炉でプルトニウムを使う」と言って、
すでに47トンものプルトニウムを入手してしまった。
水野:海外から?
小出:
日本の原子力発電所が動いて出来た使用済み燃料を、
イギリスとフランスの再処理工場というところに送りまして、
そこで使用済み燃料の中からプルトニウムを分離してもらいました。
つまり、日本の使用済み燃料の中からプルトニウムを分離してもらったわけで、
日の丸印のプルトニウムというものが47トンあるのです。
それでもし長崎原爆を作ろうとすると、
4000発分も出来てしまうのです。
ま、この報道するラジオのリスナーの皆さんがどうお考えか、私はよくわかりませんが、
何か、「日本は国際的に信頼を受けている」というふうに多くの日本人は思っているかもしれませんが、
そんなことは決してないと、私は思っています。
数十年前までアジアの多数の人たちに多くの苦難を与えた国であって、
そうとう怪しい国だと、多分外国からは日本を見ているはずなのです。
その国が高速増殖炉という原子炉に使うためにプルトニウムを取り出したんだと言っているけれども、
一向にその高速増殖をは動かない。
そのプルトニウムでいったん原爆を作ろうとすれば4000発も出来てしまうということは、
到底許されないことなのです。
それで日本は「使い道のないプルトニウムは持たない」という国際公約をさせられてしまいました。
でも「使い道がない」と言っても高速増殖炉はもう動かない訳ですから、
何とかしてそれの始末をしなければいけない。
安全性も犠牲になる、経済性も犠牲になるけれども、
もう普通の原子力発電所で燃やすしかないというところに追い詰められてしまった、ということなのです。
水野:
なるほど。
もう持って行きようはないけれども、国際的に何か処理しなければならない。ということなんですね。
小出:はい。
原発40年の期限延長
水野:
高浜原発につきましてはね、
1号機2号機は40年の期限を延長して動かす方向で特別点検に入っていますよね。
原発を40年を超えて動かすということの危険性はどういう風に見てらっしゃいますか?
小出:
原子炉の寿命というのは原子炉圧力容器という鋼鉄製の容器が決めるのです。
で、皆さん「鉄という金属」と「ガラス」をちょっと今頭に描いて欲しいのですが、
「鉄」は常温ではトンカチで叩いてもバリッと割れたりしないですね。
「ガラス」は簡単に割れます。
「ガラス」の方は脆性という性質、もろいという性質を持っている。
そして「金属」の方はのびる延性という性質を持っている。
というふうに、普通はみなさん思っているし、そのように学者たちも言っているわけですけれども、
でも「鉄」も、温度をどんどんどんどん低くしていくと、ある温度以下では脆性になるのです。
ガラスのような性質になってしまうのです。
つまり脆性から延性に変わる温度というのが、ガラスと鉄では違っていて、
常温ではガラスは脆性だし、鉄は延性だという事になっているのですが、
原子炉が動いて、原子炉圧力容器という鋼鉄が被ばくをしていきますと、
脆性から延性に変わる温度がどんどんどんどん上がってくるのです。
例えば高浜の1号機というのは、すでに脆性から延性に変わる温度が95度になっているのです。
つまり常温、今の10度20度30度という温度の時は高浜の原子炉圧力容器はもうガラスなのです。
ですから何かあればもうバリッと割れてしまうという状態になっているわけです。
本当にそんなことが許されるかどうかということなのですけれども、
原子力を進めようとする人々は、
「原子炉を運転している時には原子炉の中の温度は200度300度になっているから、
ちゃんと延性だ」と。
「だから運転してもいいんだ」と、そういう考え方なのです。
しかし、何か事故があって原子炉を冷却しなければいけないということになると、
緊急炉心冷却水というのを入れるのですけれども、それは冷たい水なのです。
ですから事故になって冷たい水をいきなり入れた時に、
「95度以下ならガラスだ」という高浜1号機の原子炉圧力容器が、
本当にバリッと割れないという保証ができないのです。
ですから私はもう、40年も経った原子炉は、本当であればもう運転を停止して、
困難でありますけれどもこれからなんとか廃炉という作業を始めなければいけないと思うのですが、
電力会社の方はもうとにかく今あるものが動けば儲かるということで、
動かしたいということなのだと思います。
平野:最大20年もの延長を認めるというような国の方針のようですね。
水野:これなんで20年という期間がまた出てくるんですか?科学的にはどういう意味があるんですか?
小出:米国がそう言ったからです。
水野:
米国、ですか。
「60年は大丈夫」とか、そういう科学的な根拠はないんですか?
小出:
要するに、危険はどんどんどんどん増えてくるということはわかっているわけです。
でもどこまでならいいか、というのは、科学的に決めるのではなくて、
社会的あるいは経済的な判断で決めているわけです。
平野:延長のコストもまた1基100億単位でかかるみたいですね。
小出:
そうです。
大変なことになると私は思いますし、こんな古い原子力発電所を動かし続けるよりは、私はある時点で、
いつか諦めなければいけない時点がくるわけですから、
今の時点であきらめれば、改造工事も必要ないわけですし、
経営判断としても私はその方がいいのではないかと思います。
水野:なるほど。
高温ガス炉
平野:
今政府は、例えば中東などの新興国に高温ガス炉の開発を売り込んでいると聞いてですね、
高温ガス炉ってなんだろうと。
なんか砂漠の中に作って水のいらない原子炉だというふうに政府が売り込んでいるようなんですけれども、
小出:
今日まで長い原子力発電の歴史があって、いろいろな形の原子炉が作られてきました。
例えば、一番初めに発電をした原子炉は、実は高速増殖炉だったのです。
もちろん実験的な小さな原子炉でしたけれども、高速増殖炉でした。
その高速増殖炉というのは、炉心をナトリウムという物質で冷やそうとする原子炉です。
もんじゅもそうで、簡単に事故になってしまったし、
人類初めて発電をした高速増殖炉EBR2というのですけれども、
それも事故を起こしてやはり動かなくなってしまった訳です。
そのほかに炭酸ガスで原子炉を冷やそうとする原子炉もありました。
日本が一番初めに導入した東海第一原子力発電所は炭酸ガスで冷やそうとしていました。
それから、今日ほとんどの原子炉は水で冷やしているのですね。
なぜ水で冷やす原子炉が残ってきたのか?といえば、
水という物質がものを冷やすためにはものすごく便利でいい物質だからです。
比熱が1ということで、他の物質に比べれば物を冷やす力がものすごく高いですし、
放射線を浴びても放射性物質を作るという割合が大変少ないし、
何か事故があっても透明ですので、例えば炉心の中を上の方から見るということもできるし、
使用済み燃料のプールだって、上から覗けるということで、
水というのは大変便利だから、今日まで開発された原子炉の中で水で冷やす原子炉が残ってきたのです。
ただし、水というのはですね、
現在の原子力発電の原子炉ですけれども、せいぜい300度ぐらいの温度にしかできないのです。
それ以上温度を上げようとすると燃料が溶けてきてしまう危険がどんどん増えてきまして、
高浜もそうですし、関西電力が使っている加圧水型という原子力発電所でも、
水の温度はせいぜい340度にしかできないし、
タービンに送る時の蒸気の温度というのは260度、あるいは270度ぐらいしかならないのです。
そして、そういう蒸気でタービンを回そうとして発電をするわけですけれども、
そんな温度の蒸気だと、エネルギーの3分の1しか電気に変換できない。
残りの3分の2のエネルギーは、もうただただ捨てるしかないということになってしまいまして、
今はその熱を「海を温める」ということのために、
実に馬鹿げたことに使わざるを得ないことになっているわけです。
だからなんとか熱効率を上げようとすれば、
もっと高温の物質を冷却剤として使う以外にないということになるわけですし、
そのために昔から「ガスで冷やそう」ということは構想されてきたわけです。
とくに300何十度の熱では、単に蒸気タービンを回すぐらいにしか使えませんけれども、
もし、800度、900度、あるいは1000度というようなガスを使うことができるなら、
製鉄にも使えるじゃないか。
熱効率も上がるじゃないか。
とにかく「いいものだ」「いいものだ」とずっと言ってきて、
高温ガス炉の開発ということにもこれまで随分力を注いできたのです。
でも、そんな高温を維持できるような材料そのものがとても難しい、ということがあって、
なかなか実用化できないまま今日まできているのです。
日本だって高温ガス炉なんて、もちろん作ったこともないわけで、
東海村で実験的な高温ガス炉が、ま、小っちゃなものが動いているというだけです。
これが本当に実用化できるのか?
本当に事故を起こさないのか?ということはまだまだ検証しなければいけないことであって、
簡単に海外に売り込むなんていうことは、もちろんできません。
水野:
でも、日本原子力研究開発機構が
「炉心溶融を起こさない原子炉である」という風に説明しているようですが、
小出:
(笑)ま、実に馬鹿げたことだと思いますが、
例えば今日の原子力発電所でも
「炉心溶融なんて決して起きない」と原子力を推進してきた人たちは言ってきたのです。
様々な事故が考えられるけれども、様々な対策がとってある。
先ほどもちょっと聞いていただきましたけれども、
水が抜けてしまうような時には緊急炉心冷却水というのが必ず入るから、
絶対に炉心溶融なんか起きないというように言ってきたわけですけれども、
やはり炉心溶融は起きてしまったのです。
高温ガス炉でも「安全だ」「安全だ」という宣伝はこれからもずーっと私たちは聞かされると思いますけれども、
完璧に安全だなんていう機械はもちろんありませんし、
時と場合によっては大きな事故も引き起こせざるを得ないというのが機械だと思っていただきたいと思います。
福島第一原発の現在とこれから
水野:
最後にリスナーの方が、
「福島第一原発はもう危険じゃないんでしょうか?まだ汚染物質は出ていますか?」
って聞いていらっしゃいますが、
小出:
もちろん出ています。
大気中にも毎日放射性物質が放出されていますし、
海にはもう、福島第一原子力発電所の敷地の中全体が放射能の沼のようになってしまっていて、
そこを地下水がどんどん流れていますので、
今現在も海に向かって放射性物質がどんどん流れて出て行ってしまっています。
なんとかそれを少しでも食い止めようとして、
多分6000人ぐらいの労働者が今現在も働いていると思いますが、
その労働者は東京電力の社員ではなくて、
下請け、孫請け、またその下請け孫請けというように、
8次9次10次というような下請け関係で雇用されている本当に底辺の労働者たちが、今苦闘しているのです。
でも、放射能を海に流さないということが本当にできるのか?と問われてしまうと、
大変難しいだろうと私は思います。
なんとか食い止めよう、なんとかタンクで保管しようとしてやっているのですけれども、
いつかそう遠くない時点で、
私は汚染水を「意図的に」海へ流さざるを得ない日が来るのではないかと、危惧しています。
水野:
はぁ〜。
「意図的に」流さざるを得ない。
小出:はい。
水野:
4号機の燃料取り出しが終わったわけですけれども、
これからまだ様々な困難があると思いますが、
他に危惧してらっしゃる大きな困難はなんですか?
小出:
4号機の使用済み燃料は、まずは大変私は心配していました。
最近になってもまだ余震が起きているわけで、
4号機という原子炉の原子炉建屋は、半分爆発で吹き飛んでしまっていて、
使用済み燃料プールが宙づりのような状態になっていました。
そのプールの底には広島原爆に換算すれば
1万4000発分にも相当するようなセシウム137が沈んだままでしたので、
余震で原子炉建屋がさらに壊れるようなことになれば、
大変な量の放射性物質が噴き出してきてしまう恐れがありました。
東京電力もそのことを承知していて、
なんとか4号機の使用済み燃料プールから一刻も早く使用済み燃料を
少しでも危険の少ないところ、共用燃料プールというのですが、
そこに移そうという作業を昨年の11月に初めまして、ようやくにそれを終えてくれたのです。
本当に私はホッとしました。
これが一応この危機を乗り越えたので、
大量の放射性物質がこれから大気中に吹き出してくるという可能性はずいぶん小さくなったと、
私は胸をなで下ろしているところです。
ただし、まだ1号機にも2号機にも3号機にも使用済み燃料プールがあります。
そのプールの底に使用済み燃料が眠っていますし、
1号機から3号機までは、原子炉建屋の中が猛烈に汚されてしまっていて、
未だにプールに近づくことすらができないのです。
でも、なんとしてでもプールの底から使用済み燃料を取り出して、
少しでも危険の少ないところに移さなければいけませんので、
これからその作業をやらなければいけません。
またたくさんの労働者が被曝をするでしょうし、
作業の中で何かトラブルでもあって、放射性物質がまた環境に出てくるということも有り得るだろうと思います。
十分注意してやらなければいけません。
そして、仮にそれがうまく済んだとしても、
1号機から3号機は、すでに原子炉の炉心が溶け落ちてしまっているのです。
その溶け落ちた炉心がどこにどのような状態であるのか、
未だに誰も知らないのです。
なぜかといえば、現場に行くことができないからです。
なんとかロボットを行かせて情報を得ようとしてきたのですけれども、
ロボットも放射線に弱いがために、送り込んだロボットが戻ってこられなくなる、
ということを今日まで繰り返しています。
これからもなんとか炉心の状態を知ろうとして、様々なことをやらなければいけないと思いますが、
もし分かったとしても、じゃあ何ができるか?というと、
なかなか難しいいだろうと思います。
国や東京電力は「いつか炉心をつかみ出してどこか別な安全な場所に移す」
というようなことを言っているのですけれども、
私は多分それは、何十年かかるんだろうか、と心配しています。
水野:はい、小出先生どうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
http://youtu.be/tKn3AelBRBg?t=44m20s
ーーー
私は水野晶子さんと小出先生のやりとりが大好きです。
年の初めのブログが報道するレジオの文字起こしになって、とても嬉しいです。
2014年12月31日が終わろうとしているその時、
私の家はグラッと揺れました。
23時49分頃 千葉県北西部 M4.2
そして、年が明けて2015年になった途端に、今度は窓がガタガタうるさい。
外はものすごい強風が吹き荒れている。
いつもは聞こえるお寺の除夜の鐘の音も風の音でかき消されて聞こえない。
1月1日の昼
まるで吹雪のように雪が舞った。
元旦の東京ではとても珍しい事です。
2015年、
今年もいろんなことが起こりそうだと思ってしまいましたが、
前向きに、明るく元気に、本当のことを見つけるために、
負けないで、力強く生きていきたいと思います。
こんなふうに元旦から気合を入れたのは初めてのような気が…。
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関西電力高浜原子力発電所1号機2号機の再稼動について
2014年11月29日 小出裕章ジャーナル
関西電力が福井県にある高浜原子力発電所1号機2号機、
これは74年に稼動が始まったので、40年経とうとしている原発ですけれど、
これの特別審査を申請して、また再稼働させようとする動きが見えています。
現行の法律では、基本的に原発の寿命は40年。
特別検査をして合格すれば20年プラスをして60年まで稼動が一応可能となっていますが、
心配になるのが相当老朽化しているのではないか?
40年も動かし続けて、ということが真っ先に頭に浮かびますけれども、
40年稼動の原発はどう考えたらいいでしょうか?
小出:
みなさんご自分の周りのことを考えていただきたいのですが、
例えば自分が乗っている車、
40年前の車であったとすれば使い続ける気がするでしょうか?
あるいは家庭の電化製品でもそうですけれども、
40年前のものをこれからもずっと使っていこうと…、思うのがむしろ不思議だろうと私は思います。
原子力発電所というのは、特に安全性に十分な注意を払わなければいけない機械なわけですし、
それがもう40年の寿命、というか、
40年経ったのに尚且つそれを動かそうということ自体が、私は随分異常なことだと思います。
一番問題なのは、原子炉圧力容器と言っている炉心を格納している圧力釜なのですが、
それが中性子を被曝しながらどんどんどんどん劣化してしまってきているわけです。
もちろん人間は被曝をすれば簡単に死んでしまうわけですけれども、
鋼鉄も被曝をすればするだけ劣化していくわけです。
みなさん、家庭で使っている鍋と、それからガラスでできているコップとを考えていただきたいのですが、
普通私たちが生活している場所、というか温度ですね。
気温10度20度、あるいはマイナス、零下何度になるということもあるかもしれませんが、
普通、鉄は割れないのです。
ガラスは簡単に割れますけれども、鋼鉄は割れません。
トンカチで叩いても、例えば落としたって、
ひしゃげたり曲がったりはするかもしれませんけれども割れないという性質を持っています。
ただ、その鋼鉄もどんどんどんどん冷やしていくと、
ある温度以下になると簡単に割れてしまう、
つまりガラスのように割れてしまうという温度が、実はあるのです。
普通鋼鉄が割れないというのを私たちは「延性(えんせい)」と呼んでいるのですが、
延びるのですね、金属というのは。
それからガラスのように簡単に割れてしまうものを「脆性(ぜいせい)」と私たちは呼んでいるのですが、
温度が低いと大抵のものは「脆性」なのです。
それから、「脆性」から「延性」に変わる温度というのがあって、
それを私たちは「延性脆性遷移温度」と呼んでいます。
鋼鉄の場合にはそれが、通常だと零下何十度というところで、
それ以上の温度であれば延びる、つまり簡単には割れないという性質を持っているのですが、
原子炉が稼働して鋼鉄が被曝をするにしたがって、
その温度がどんどんどんどん上がってくるのです。
例えば高浜原子力発電所の1号機の場合には、
すでに脆性から延性に変わる温度が95度という値が、すでに数年前に得られています。
どんどん遷移する温度が高くなってしまっていて、
95度以上であればまだ金属の性質を持っているけれども、
95度以下、つまり普通私たちが生活している温度の状態では、
もう高浜原子力発電所の原子炉はガラスなのです。
ですから、何か事があればバリッ!と割れてしまうという、
そういう危険な状態にすでになってしまっています。
本当であればこういう原子炉は動かさないという判断をするのが妥当だろうと私は思います。
Q:もろくなる温度が上がってきたのは中性子を浴び続けたせいなんですか?
小出:そうです、まさにそうです。
Q:40年間経ってどんどんもろくなってきたもの、これを使わざるを得ないわけですよね、交換はできないんですよね。
小出:
交換はできない。
ですから、原子力発電所の寿命というのは、もともと40年ぐらいだろうと言われていたのですけれども、
それはこの原子炉圧力容器というものが交換できないし、
それがどんどん中性子を被曝して劣化してくるので、
40年ぐらいでやめておくのが妥当だろうなと、はじめに考えたのです。
その時期がもう高浜原子力発電所には来ているわけですし、
私はもうやめるのが当然のことだろうと思います。
Q:動機が経済的な動機、つまり欲ですよね、儲けたいということで、
この安全の問題がまた二の次になることは本当に困りますよね。
高浜の問題も、脆性、もろくなる、ガラスのようになるということで、
どれだけ検査で規制委員の方が検討するのか、ちょっとわか利ませんけれども、注目していきたいと思います。
)
3月13日(木)●3年が経ったことで見えてくる放射能汚染
(木) 伊藤 洋一
福島第一原発事故後、毎週番組に出演していただいた京都大学原子炉実験所・小出裕章助教。
小出助教は、かつてチェルノブイリ事故後、数年経って様々なデータが出た後に、
人々が放射能にどう立ち向かうか、放射能汚染にさらされた食糧や健康被害について、
科学的に数字を上げながら検証していました。
そして福島原発事故も本当のことが分かるのは、事故直後ではなく3年後、5年後、10年後なのかもしれません
チェルノブイリでは、事故の3年後、野菜、牛乳、母乳、玄米など、
食糧汚染や健康被害はどうなっていたのか?
その前例のデータを私たちはどう受け止め、どう生きていくか?
放射能汚染の中で生きるとはどういうことなのか、考えます。
ーーー
チェルノブイリの全例も含めまして事故から3年という月日が流れた原発について
私たちはどう受け止めてどう行けばいいのでしょうか。
福島原発事故の後、毎週番組にご出演下さいました京都大学原子炉実験所小出裕章助教にお電話でお話を伺います。
振り返ってみて
伊藤:小出さん、お久しぶりでございます。
小出:お久しぶりです。
伊藤:
3.11からね、3年経って。
当時小出さんがこの番組に何回かお出になって、動揺したり絶望したり、いろいろとされたと思うんですけれども、
当時を振り返ってどう思われますか?
小出:
「もう3年経ってしまったんだな」と思います。
「なんにも解決しないまま3年が経った」という思いが一番強いです。
たとえば、どんな事故、いろんな事故が起きると思いますけれども、
「3年経っても事故現場に足を踏み入れることもできない」という様な事故はやはり原子力しかないし、
原子力というのはここまで過酷だったんだなと改めて思います。
チェルノブイリと福島を比べて
伊藤:
当時ね、小出さん、
今よりも時間が経って、なんていうかな、
計測したほうが事故の本当が分かるんだみたいな話をされていて、
チェルノブイリでもね、時間経過の中で放射能に関わる事故がどういうふうに影響したのかっていう事を
検討されたというふうに聞いていますけれども、
チェルノブイリの3年と、福島の3年。
これ、比べてみるとどんな感じになりますかね?
小出:福島の方がずっと過酷だと思います。
伊藤:ずっと過酷ですか。
小出:
チェルノブイリの場合には壊れた原子炉がひとつでしたけれども、
福島の場合には運転中のものが3つ。
そして運転していなかったけれども、爆発で原子炉建屋が壊れたという4号機というのがもうひとつありまして、
その4つともが現場に足を踏み込む事が出来ないというまま現在にいたっていて、
事故原因すらが3年経っても全く分からないという状況になっています。
そして周辺の人々もそうですけれども、
ソ連と日本という国の国土の違いもありますけれども、
いまだに1000平方km。
琵琶湖が1.5個も入ってしまうという広大な地域から人々が追い出されてしまって、
根こそぎ生活を破壊されたまま流浪化してしまうという事が今続いているという状態で、
「本当にひどいもんだな」と思います。
伊藤:でもこれ、ものすごく残念なんですけれども、起きてしまいましたよね。
小出:そうです。
収束のプロセス
伊藤:
で、その後の収束のプロセスを政府の対策とか業界の対策、ま、当然なんですけれども見ておられて、
「起きてしまった」という事を前提でご覧になるといかがですか?
小出:
私はその、今は安倍さんが首相をしている訳ですけれども、
安倍さんが何か「これから事故を収束させる」とか、ま、言っている訳ですけれども、
「一体あなた何を言っているんですか」とわたしは思います。
福島の原子力発電所が「安全だ」と言ってお墨付きを与えたのは自民党だった訳ですし、
その政権を担っていた人達が、どなたも、誰も責任を取らないまま今日まで来ている訳ですし、
なんか事故が収束で来ている。
汚染水もアンダ―コントロールだ。
そんな事を言ってオリンピックを誘致するという事を安倍さんはやっているわけで、
本当に「この人大丈夫なのかな?」と私は心配してしまいます。
再稼働
伊藤:
あのー、今原発はね、一つも動いてなくて、
川内かな、今度動くかもしれないみたいな状況になってきているんですけれども、
今の政府の「まァ、安全だったら再稼働すればいいじゃない」っていう、
その方針についてはもちろん小出さんは反対ですよね?
小出:
もちろん反対です。
事故原因すら分かってないわけですから、安全の対策をとり様がないわけであって、
これまでも「安全性を確認した」と言いながらやってきた訳ですし、
事故が起きてしまった今は、
「安全性を確認する」なんていう事は本当は言ってはいけないはずなんですけれども、
今の安倍さんを含めた自民党の人達はまた
「安全性を確認して再稼働させる」と言っている訳で、あり得ない事だと思います。
高い天然ガス
伊藤:
なるほどね。
ま、あのー、経済を見ている人間からするとですね、
たとえば原発が動かない。
代替エネルギー源もない。
で、しょうがないから高い天然ガスを買ってきて発電している。
それで貿易収支が赤字になって、最近は経常収支も赤字になる。
これ自身は「困ったことだなぁ」というふうに思っていて、
でも、じゃあ日本はどうやってこれからエネルギー源を確保していくか
という事について、なんか真剣な議論もあまりないみたいだ。
なんか、「原発を再稼働すれば事態は解決する」みたいな、これも困ったことだなと思っているんですが、
小出:そのとおりです。
伊藤:
日本のエネルギーのなんて言うか、
「確保」みたいなものについては小出さんはどうお考えになっていますか?
小出:
みなさん、伊藤さんを含めてそうかもしれませんが、
「原子力発電をやらないと電気が足りない」とずーーっと脅かされてきたのです。
伊藤:いま足りてますよね(笑)
小出:もちろん、だから原子力発電なんかやらなくたってちゃんと足りてしまっているわけで、
伊藤:ただコストがね、ちょっと高いですね
小出:
ただ、そうではないのです。
元々原子力発電の発電単価が火力に比べても水力に比べても高かったのです。
これまで通産省、経産省が「原子力が安い安い」と言ってきたのですけれども、
それも単に彼等の都合のいい仮定で言ってきただけであって、
有価証券報告書に基づいて計算すれば、「原子力はもともと高かった」のです。
ですからそんなものやらなければ一番良かった訳ですし、
今止めてしまうと確かに、今ある原子炉が不良債権になってしまいますので、
一時的に困る事はあるかもしれませんけれども、
もともと高い発電単価のものですから、さっさと止めるのが一番いいのであって、
やればやるだけ損をしてしまうという事になります。
原発に代わる代替エネルギー
伊藤:
たとえば原発に代わるものとしては、太陽光とか風力とか潮力とかいろんなアレがでてますけど、
あのーなんて言うんですかね、化石燃料もいずれなくなるじゃないですか。
そうすると日本は、ま、世界全体の問題なんですけれど、
どんな物にエネルギー源を頼っていけばいいと小出さんはお考えですか?
小出:
私はもともと、
「化石燃料が枯渇してしまうから招来は原子力だ」と思い込んで原子力の場に足を踏み込んだ人間です。
しかし、原子力の燃料であるウランというのは、石油に比べても数分の1しか資源量はありませんし、
伊藤:そうですね。
小出:
石炭に比べれば数10分の1しかないという、まことにバカげた資源なのであって、
そんなものは未来のエネルギー源になんかにはもともとならないのです。
そのため原子力を推進してきた方々は、
「プルトニウムというのを作りだしてそれで原子力を維持する」と言ったんですが、
それをやるための“もんじゅ”という原子炉はもう全く動いてもいない。
1兆円を超えるお金をどぶに捨てながら、豆電球一つ点けられなかったという、そんな原子炉ですので、
そんなものに期待する事も出来ないのです。
もう私たちは原子力の夢から本当に覚めなければいけない所にきている訳ですし、
今後は、当面は化石燃料でいかれますし、いずれは太陽エネルギーに依存するしかありません。
さっさと頭を切り替えるべき時だと私は思います。
3年後のチェルノブイリで起きた事と福島の今
伊藤:
あのさっきちょっとしたんですけれども、
チェルノブイリで事故から3年後に起きたこと。
で、今の福島で起きている事。
この比較はどうなさいますか?
小出:
チェルノブイリの事故が起きた後に、現地の人達は
「こんな被害が出ている」「あんな被害が出ている」と沢山の症状を訴えていました。
特に深刻だったのが甲状腺の癌というものだったんですけれども、
それに関しても原子力を推進している人達は、
「そんなものはありよう筈がない」と。
広島・長崎の原爆の経験をもとにすれば、いわゆる固形がんと私たちが呼んでいる、
あの、血液の癌である白血病ではない様な癌というのは、
10年経たなければ出ないのであって、「そんなに早く出る事はあり得ない」と言って、
影響を否定していたのです。
しかし、実際には被害がどんどん出ていた訳で、
3年経って4年経った頃から甲状腺がんが激増してきまして、
「あ、やっぱり」と言って、ようやくにして原子力を推進していた人達も甲状腺がんの発生を認めたのです。
ところが福島では1年経って、2年経ってという頃からもう、
甲状腺がんがどんどん子どもたちの間に出てきているようになっている訳ですけれども、
日本の原子力を推進している人達は、
「チェルノブイリでも4年経ったからしか激増しなかった。だからこれは違う」という事を言ってるわけです。
伊藤:そうですね。
小出:
私は本当に科学の素養のない人達だなと思います。
「従来分かっていなかったこともきっちりと調査をして、新しい知見を蓄積していく」
というのが本来の科学のあり方だと思うのですけれども、
残念ながら原子力を進めている人達にはそういう考え方がないように見えます。
今何してますか?
伊藤:
いま、小出さんは実験所の助教というお立場なんですけれども、
そういう事をなさっている訳じゃ、今、どんな事をなさっているんですか?小出さんは。
小出:
さまざまです。
福島の事故が起きてしまってからは、本当に毎日戦争のように過ごしていまして、
福島現地の汚染を調べるという事もそうですし、
沢山の情報が出てきますので、その情報を整理して、
どのような事態が進行しているのかという事を私なりに理解して、
皆さんにお伝えするという事も私の責任だと思っています。
伊藤:
うーんなるほどね。
じゃあこの番組にもまた出てきて、その福島の今と今後あるべき姿?
いまだから、小出さんに言わせればね、事故が起きた事自体が間違いだとおっしゃる。
でももう起きちゃったもんですから、じゃあどうしたらいいかという事がこれから非常に大きな課題になりますよね。
小出:そうです。
伊藤:ありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
報道するラジオ 2014年3月7日
23:35~ http://youtu.be/A5P4gIhU8lo?t=23m35s
3年経つ今、放射能は出ていますか?
水野:
報道するラジオ、今日の特集テーマは「メディアが伝えていない福島第一原発事故3年」です。
今度は京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに伺います。
小出さんに質問が早速リスナーの方からきておりまして、
「安倍総理は7年後の東京オリンピックが開催されるころまでには、原発による放射能汚染について問題なく解決しているんだという様な意味の事をおっしゃられているように聞きました」というふうにおっしゃられているんです。
「本当に大丈夫なんでしょうか?今放射能の心配はしなくていいのでしょうか?」
と、いうご質問なんですけれども、
小出さん、今、もう3年経とうとしているんですが、
放射能は出ているんですか?
小出:
はい、もちろん出ています。
原子炉が壊れてしまっている訳で、
格納容器という放射能を閉じ込めるための最後の防壁も、多分あちこちで穴が開いてしまっていまして、
水を入れてもみんな漏れてきてしまうという状態ですので、
今でも放射性物質は大気中、あるいは汚染水としてあちこちに漏れています。
水野:今も出続けていると。
小出:そうです。
どの位の量ですか?
水野:
で、これまでに福島第一原発事故で放出されたセシウムの量というのは、
今までの物と合わせるとどれぐらいになるんでしょう?
小出:
はい。えー、どこまで正確化はよく分からないのですが、
日本国政府がIAEA国際原子力機関という原子力を推進する団体に提出した報告書があります。
それによりますと、1.5×10の16乗ベクレルという数字が書かれていまして、
それは広島原爆がまき散らしたセシウム137に比較すると、168発分に相当しています。
水野:広島に落とされた原爆の168発分のセシウムがもうすでに、
小出:大気中だけなのですけれども、
水野:あ、これはじゃあ、「海に流れているものとは別で」ですか?
小出:
全く別です。
そして私はこの168発というのも、多分過小評価だと思っています。
なぜなら日本国政府というのは、「福島第一原子力発電所が安全だ」といってお墨付きを与えた張本人です。
で、重大な責任があるわけですし、
私は「責任」という言葉では甘過ぎると思っていて「犯罪」だと思っています。
犯罪者が自分の罪を正確に申告する道理はないのであって、
なるべく自分の罪を小さく見せようとしてはじき出した数字がこの168発分という数字です。
多分それの2倍とか3倍が大気中に既に出たと思いますし、
それとあまり違わない程のものが多分、汚染水として海に向かって流れていると思います。
水野:
あ、そうですか。はぁ~!
大気に出されたものと同じくらいの量のセシウムが海にも流れだしていく事になるであろうと。
小出:
敷地の中にもうそれぐらいは流れているはずで、
敷地というのは土がある訳ですから、
すぐにジャージャーと海へ流れていく訳ではありませんけれども、
多分敷地の中は今も、大気中に出たのと同じくらいのセシウムがあちこちに汚染水として浸みこんでいると思います。
水野:
そうしますと、今の小出さんのお話を荒っぽく計算したら、
広島に落とされた原爆の300発以上分のセシウムが、
様々なところ、地球に移されてしまうと、そういう事になりますよね。
小出:そうです。
放射性物質はどの地域にどの位?
水野:はぁ・・・・
あのそして、皆さん本当に気にしていらっしゃる、
放射性物質はどの地域にどの位の量であるのか?っていうところですね。
小出:
はい。
皆さんご承知だと思いますけれども、
日本というこの国は「北半球温帯」というところにあります。
そこでは「偏西風」という大変強い西風が吹いているのです。
そして福島第一原子力発電所というのは、福島県の太平洋に面しているところに建っていた訳で、
福島第一原子力発電所から放出された放射性物質、セシウムも含めてですけれども、
殆どのものは偏西風に乗って太平洋に向かって流れていきました。
そのため多分、放出された放射能の8割から9割は太平洋に向かって流れて、
北アメリカ大陸の西海岸をかなり汚染しています。
そして残りの1割から2割が、場合によっては東風の日もあったし、南風、北風という日もあって、
福島県を中心とした東北地方、関東地方に降り注いだという事だと私は思います。
水野:東北地方に、関東地方も加わっているんですか
小出:そうです。
水野:具体的にはどの程度の汚染がどういった県でみられているんでしょうか?
小出:
数字でちょっと話させていただきたいのですが、
1平方mあたり60万ベクレルを超えてセシウムが降り積もったという地域が、
およそ1000平方kmあります。
関西のみなさんは琵琶湖はご存じだと思います。
大変大きな湖というか、海のように見える湖ですけれども、
琵琶湖が1.5個入ってしまうというぐらいの広大なところです、1000平方km。
そこが1平方mあたり60万ベクレルを超えて汚染されまして、
今現在10万人を超える人々が追い出されてしまったという地域です。
そしてその周辺にももちろん、汚染の程度が低くなっているところがずーーーっと繋がっている訳です。
そして、私は京都大学原子炉実験所というところで、放射能を相手に仕事をして給料をもらっています。
そしてそういう人間に限って入っていいいという場所を「放射線管理区域」と呼びます。
普通のみなさんは入れないんですけれども、
その「放射線管理区域から外に持ち出すことのできる汚染の程度」というのは、
1平方mあたり4万ベクレルなのです。
「それ以上汚れているようなものはどんな物でも放射腺管理区域の外側に存在してはいけない」というのが、
これまでの法律でした。
もし、1平方mあたり4万ベクレルを超えている地域というものの面積を求めていくとすると、
たぶん、1万4000平方kmだと思います。
水野:どれぐらいの広さっていうことですか?
小出:
日本が38万平方km。
本州だけで24万平方km位だったと思いますので、
本州の数%、5%は超えているというぐらいのものだと思います。
水野:ふ~~~ん・・・
平野:
これ、先生のご本の原発ゼロというデータによると、
東京都心の葛飾区でも4万ベクレル/平方m、こういう数字が出ていますよね。
という事は、「東京の中でも放射線管理区域があった」ということですね。
小出:そうです。
水野:今もあるんですか?
小出:
はい、今もあります。
私のデータではなくて、それは日本国政府のデータなんですが、
東京の下町、葛飾区あるいは江戸川区の一部というところは、
放射線の管理区域にしなければならないほどの汚染を受けています。
平野:なにもやっていないですよね?現実的には。
小出:
はい。
もう、日本国政府は「どうしようもない」と。
これまでは通常時として法律があったけれども、
「今は緊急時だから、元々は放射線管理区域にしなければいけない地域にも人々は住め」
という事を言っている訳でして、
1平方mあたり60万ベクレルを超えているような、先ほど聞いていただいたところは
さすがに人は住めないけれども、
そうでないところは人が住んでもいいし、「一度逃がした人々もそこにまた戻れ」と日本国政府が言っています。
水野:
東京都の一部も、また、千葉県や埼玉県の一部もそうした放射線管理区域のレベル。
で、今もあり続けているという状況なんですね。
小出:そうです
黒い物質
水野:
そうした地域で、黒い物質というものが見つかっていると聞きましたが、
小出さん、これはどういうものですか?
小出:
みなさんもちょっと想像していただきたいのですが、
例えば駐車場の隅っこの水たまりのあたりに、「なにか黒く干からびたものが堆積している」という様なもの。
あるいは、雨どいの下になにかコンクリートの様なものがあるとすると、
「その上に黒く干からびたものが残っている」という、そういうものです。
水野:小さい、小さい、粒子の様なものが固まっている感じですか?
小出:
要するに、泥がちょっと固まっているという、
あるいはコケがなんか干からびたという、そんな感じです。
水野:それは一体何なんですか?
小出:
私は生物学者ではないのですけれども、
神戸大学の山内さんという私の知り合いが調べてくれたところでは、
「らん藻類の死骸だ」と私は聞きました。
水野:らん藻類ってなんですか?
小出:ええ、苔の様なものだと私は思うのですけれども、
水野:藻類ですね。
小出:
そうです。
そういうもの、あるいは細かい土が雨で集まったとか、そういうものの集合体だと思います。
水野:は。それで、それを小出さんが検査なさったんですね。
小出:
私もやりましたし、山内さんもやっているし、
沢山の人が検査をしてくれています。
水野:なにが検出されたんでしょう?
小出:
えー、今問題になるのはセシウム134とセシウム137の2種類の放射性物質です。
・・・・猛烈な濃度、でした。
水野:猛烈な濃度!
小出:
はい。
たとえば1kgあたり1万ベクレルという濃度を超えているようなセシウムは、
放射性物質として厳重に管理をしなければいけないのですが、
たとえば福島県内の南相馬、あるいは飯舘村というようなところで集めてきた黒い物質の中には、
1kgあたり数100万ベクレルのセシウムがありましたし、
東京都の葛飾区、先ほどちょっと放射線管理区域だと私は聞いていただきましたけれども、
そういうところでも1kgあたり何10万ベクレルという、
水野:何10万ベクレル!
小出:
はい、ものがあります。
そして東京都のいわゆる下町ですね、東の端っこ、千葉県に近いところが汚れている訳ですし、
あるいは西の端っこの奥多摩も汚れているのですが、
水野:へぇ・・・・
小出:
中央部は比較的汚染が少なくて済んだのです。
その比較的汚染が少なかった東村山市というところがあるのですが、
そこの学校から集めてきた黒い物質にも1kgあたり2万ベクレルを超えるセシウムがありました。
水野:はぁ・・・
小出:
つまり、放射性物質にしなければいけないようなものが、
子どもたちが遊ぶ学校の校庭にあるという、そういう状態です。
水野:
はぁ、これ、子どもたちの傍にこういった物質があるという事は、
ずっと子どもたちは被曝し続けることになるんですか?
小出:
そうです。
たとえば、JRの平井駅という駅があってですね、その近くでも黒い物質というものがありましたけれども、
その黒い物質、地面に薄く黒く広がっている訳ですが、
そこは子どもが指でこすった跡すらがあるという、そんな状態になっていました。
水野:これは除去しなければいけないですよね。
小出:もちろんです。
平野:こういうデータを自治体とか政府の担当省は聞いても、要するに何も手を打たない訳ですか?
小出:
そうです。
例えば学校の方は、「そんな面倒なものを持ってきてくれるな」と。
むしろその・・試料を集めようとする人たちを排除するという様な学校が多いわけですし、
国の方はもちろん、知らぬ存ぜずを決めこみたいのですから、
なかなか調査もしてくれないという状態になっています。
平野:もう自衛するしかないけれども、なかなか見えないもので難しいですね。
小出:
そうです。
放射能は目に見えませんし、放射能を測るという事はなかなか難しい事でもありますので、
「自衛しろ」といっても出来ないと私は思いますし、
やはり政府、あるいは行政、自治体というところが
本腰を入れて子どもたちを守るという事をやらなければいけないと思います。
アルプスって期待できる?
水野:
では次に伺いたいのは、福島第一原発の現在行われている作業についてなんですけれども、
汚染水の問題が大変深刻です。
で、アルプスという浄化装置がありますよね。
これが上手く動いてくれればかなり良くなるなんていう話も聞くんですが、
アルプスにはどれぐらい期待していいもんでしょうか?
小出:
え・・・まず、私はあまり期待していません。
福島第一原子力発電所の敷地の中は今猛烈な被ばく環境になってしまっていまして、
そこでちゃんとした装置を組み立てるという事もなかなか難しい、のです。
みんな要するに、なんかやろうとすればみんな被ばくをしてしまうという、そういう状況ですので、
きっちりとした機械をその場所で組み立てるということがまず難しい。
水野:現場で組み立てるものなんですか?アルプスって。
小出:
そうです。
巨大な装置ですので、トラックに乗っけて持っていけるようなものではありませんので、
水野:置く訳じゃないんですね。
小出:そうです。
水野:という事は作業員の方の被ばくを伴う作業なんですね、置くだけでも。
小出:
そうです。
アルプスを作り上げるだけでも被ばくをしながらみなさんがやっている訳です。
ですから本当であれば、たとえば配管で繋がなければいけないというようなところも、
「そんな事をしている余裕がない」という事で、ホースで繋いでいたりするわけです。
そうすると、「あちこちで漏れてしまいまして、なかなかアルプスという装置自身が動かない」
という状態で今日まで来ている訳です。
そして仮に動いたところで「本当に汚染が除去できるか?」というと、
私は多分「出来ない」と思っています。
水野:どうしてでしょう?
小出:
汚染水の中に入っている放射性物質で、重要な放射性物質は3種類です。
セシウムとストロンチウムとトリチウムと呼んでいる放射性物質です。
で、汚染水の中から、セシウムはこれまでも除いてきたのです。除去してきました。
ゼオライトという粘土鉱物にくっつけて、汚染水の中から取り除こうとしてきました。
でも、セシウムがなくなった訳ではなくて、ゼオライトに猛烈にセシウムがくっついていってきたわけですね。
で、そのゼオライトを今は保管をしている訳ですけれども、
セシウムを猛烈に含んだゼオライトはたぶん数100度という温度にもうなっている。
それが保管されているという状態だと思います。
ただし汚染水の中から、セシウムはまがりなりにものぞかれた訳ですが、
まだ、ストロンチウムとトリチウムは全く除かれないまま汚染水にある訳です。
それがタンクに溜められまして、
次々とタンクが満水になってまたあふれてしまったり、あるいは漏れたりしているわけですけれども、
ある時に漏れたタンクから漏れた汚染水の中には、
「ストロンチウムという放射性物質が1リッターあたり8000万ベクレルあった」
という事が確か1年ぐらい前にあったと思います。
つい最近では、「2億何千万ベクレル」というストロンチウムを含んだ汚染水が漏れたと報道がありました。
で、ストロンチウム90という放射性物質は
環境に放出する時には1リットル当たり30ベクレルでないといけないという、
水野:桁がいくつも違う・・・
小出:
はい、そうです。
ですから、今ある汚染水の中からストロンチウムを除去していって海に流せるような濃度にしようと思うと、
何100万分の1にしなければいけない。ということなんですが、
私自身も放射性の廃液から放射性物質を除去しようという仕事に日々従事している人間なんですが、
1000分の1にしようと思えば、多分出来ます。
で、1万分の1にしろと言われれば、「やってみよう、多分出来るだろう」と思います。
10万分の1に綺麗にしろと言われると、「う・・・・ん」と、私はやっぱり考えてしまうし、
「出来ないかもしれない」と思います。
それを「100万分の1、あるいはもっときれいにしなければいけない」という事な訳でして、
「おそらく出来ない」と思います。
そうなると、
綺麗にできないままのストロンチウムを含んだ排水を海に流すという事になると思いますし、
もう一言いってしまいますと、トリチウムという放射性物質は、アルプスでは全くとれないのです。
水野:全くとれない。
小出:
他の手段を使っても、全くとれません。トリチウムに関しては。
ですから、いつか、必ず海へ流すという日が来ます。
平野:
先生、これは一部の研究者は「害があるのか分からない」という様な事を言っていますけれども、
これ「無い」という事は立証されていないですよね?
小出:必ず害はあります。
平野:あります
小出:
はい。
放射能はもちろん、どんな放射能も必ず害があるのです。
トリチウムという放射性物質は大変弱いベータ線しか出しませんので、
害の程度は小さいという事は確かだと、私は思います。
しかし先程から聞いていただいているようにトリチウムに関する限り、
人間がそれを捕まえようとしても、全く捕まえる事が出来ないのです。
水そのものになってしまうという、そういう性質の放射性物質です。
地球というのは水の惑星と言われているように、水で生きている星な訳で、
その水が汚されてしまうという事は、私はかなり深刻な問題だろうと思いますし、
トリチウムをなんとか、海へ流したりしないようにしなければいけないとは思うのですけれども、
もう、ここまで来てしまうともうどうしようもないと、私も思います。
平野:
これは、汚染水の管理がもう限界に達しているという見通しが出ていますけれども、
先生も前からおっしゃっていますが、
「やがては海に流すしかしょうがなくなるんじゃないか」という様な見方を述べられていますけれども、
これはもう、それが、限界に近付きつつあるという分析ですかね、今は。
小出:
はい。
今福島第一原子力発電所の敷地の中に約40万トン分の汚染水が存在しています。
それで東京電力はこれからもタンクを増設していって、80万トン分はなんとか入れようと言っている訳ですけれども、
でもそれにしたって、どんどん今、汚染水が増えてきていますし、
1日400トンずつ増えている訳ですから、いつか破たんする。
「結局海へ流すしかなくなる」という事は確実です。
溶け落ちた炉心はどうなっているの?
水野:小出先生、元々の溶け落ちた炉心がどうなっているのか?これはどうなんでしょう?
小出:
わかりません。
事故を起こした発電所がもし火力発電所であったとすれば、事故現場に行って調べればいいのです。
どこがどんなふうに壊れてしまった。
ここをこうやって直せるだろう、といって直していけば、
運転を再開することだってそんなに難しいものではないのですけれども、
壊れているのが原子力発電所ですので、現場に行かれない。のです。
水野:
そうですよね。
ただ東電はね、ドロドロになった一つの塊、それを取り出していくんだという計画を立てていますでしょ?
小出:そうです。
水野:小出先生はどういう見立てですか?
小出:
東京電力と国は「確かに炉心は溶けてしまった」と、
で、炉心を入れていた圧力がま、
「原子炉圧力容器という鋼鉄製の厚さが16cmもある圧力がまの底も抜けてしまった」と、
国も東京電力も言っています。
では、その後どうなったか?というと、
「放射能を閉じ込める最後の防壁である格納容器という容器の床に落ちたんだ」と、彼等は言っています。
勿論そうだと私も思いますけれども、
彼らが今想像している状態というのは、
上から落ちてきた溶けた炉心が、格納容器の床の上にまんじゅうのように堆積しているという、
そういう事を彼等は想像しているのです。
私はそんな事は決してないと思っています。
溶けて、猛烈な水をかけながらですね、それでも溶けてしまって、
蒸気がもうもうと噴き出すというようなそういうような、
言ってみれば動的環境と私が呼ぶような環境の中で、
水野:固まっていないっていうことですか?
小出:
はい。
溶け落ちたのであって、私たちがスラッジとかスラリーとか呼ぶような、
いわゆる泥水のような形で多分溶け落ちているし、
あちこちに流れたり、壁に張り付いたりしてしまっていると私は思います。
水野:あちこちに細かく分散して飛びちっているような状況、
小出:多分そうだと思います。ただし、
平野:
地中に混ざったのであれば、またそこに地下水がまた流れてきますよね、
それがまた海の方へ流れるっていうおそれがありますよね?
小出:
そうです。
ただし東京電力は、
格納容器というのは厚さが3cmの鋼鉄製なんです。
で、もし溶けた炉心がその鋼鉄に接触してしまうと簡単に格納容器の鋼鉄は穴が開いてしまうのですけれども、
「溶け落ちた炉心は格納容器の床に落ちた」
床には実はコンクリートの内張りがしてあって、
そのコンクリートが確かに溶けた炉心で破壊されていったけれども、
「70cm分しか破壊されていないで、まだ溶け落ちた炉心は格納容器の中にある」
というのが東京電力の主張なのです。
でも私はその主張を聞いた時に、「あなた達は見てきたのですか?」と聞きたくなりました。
彼等は「計算した」と言っているのですけれども、
そんな計算は全く根拠がない計算なのであって、信用できません。
場合によってはすでに、格納容器の床に張ってあったコンクリートが破壊されてしまって、
「格納容器が、すでに底が抜けている。そして溶けた炉心が地面にめり込んで行っている」
という可能性すらあると私は思っています。
水野:
小出さんが想像するような炉心の状態であれば、
それは、取り出す事ってできるんですか?
小出:
出来ないです。
東京電力と国はなんとかして溶け落ちた炉心を掴み出そうという事をロードマップに書いているのですけれども、
その作業をしようと思うと、大変な被ばく作業になるはずだと私は思います。
で、たとえば100溶けた炉心のうちの、大変な被ばくをしながら50を取り出したとしても、
50が残ってしまうのならば、やはり私はもう同じ事だと思います。
大変な被ばくをするぐらいであるなら、もう取り出す事を全て諦めて、
水野:諦めて、
小出:
はい。
その場で封じ込めるのがいいのではないかと私は思っています。
水野:封じ込めるというのは、いわゆるチェルノブイリの様な、覆ってしまう。
小出:石棺です。
水野:石棺。棺(ひつぎ)って書くんですね、石の棺。
小出:
そうです、おっしゃって下さった通り、1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故の場合には、
「もう炉心を取り出すことは諦める」という事にしまして、
石の棺、石棺というもので封じ込めるという事をやったわけです。
ただ、事故から28年経ちまして、チェルノブイリの石棺はすでにボロボロです。
そのために今、始め作った石棺をまた丸ごとさらに大きな石棺で封じ込めようという計画が進んでいまして、
第二石棺というのを現在作っています。
ですから福島の場合も、多分私は石棺を作ることになると思います。
その石棺が何年後に出来るのかわかりませんが、
私は多分死んでいるんじゃないかと、私自身は多分もう死んでいて見る事が出来ないかもしれないと思っています。
ただし、仮に私が生きている間にその石棺が出来たとしても、
30年、40年経てば、またその石棺がボロボロになっていってしまって、
新たな石棺を作らなければならなくなるはずだと思います。
多分その時には、私は確実に生きていません。
水野:・・・・・、はい、ありがとうございました。
2014年3月7日 報道するラジオ
「メディアが伝えていない福島第一原発事故3年」文字起こしブログ
「メディアが伝えていない福島第一原発事故3年」木野龍逸氏3/7報道するラジオ(文字起こし)
放射能は今も出てる?どれ位の量?どの地域に?黒い物質って?アルプスは?汚染水は?炉心は?
小出裕章氏3/7報道するラジオ(文字起こし)
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東海村にあるプルトニウム溶液と高放射性廃液の「潜在的危険」は
水素爆発と10の何乗ギガベクレル単位になる放射性物質の飛散だ!!
1.東海村JAEA潜在的危険に関するヒアリング~規制庁からの説明~12/2(内容書き出し)
2.東海村JAEA潜在的危険に関するヒアリング~日本原子力研究開発機構からの説明~12/2
(内容書き出し)
上記のブログを書いていて、東海村の再処理工場が危険を持っている事を知りましたが、
今回、小出裕章ジャーナルでこの事に関して小出先生の解説がありましたので書き出しました。
第52回放送 ラジオフォーラム
湯浅誠(社会活動家)
小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
湯浅:今日も小出さんと電話がつながっています、小出さん今年もよろしくおねがいします。
小出:はい、こちらこそよろしくお願いします。
湯浅:
えー、正月早々ちょっと物騒な話題なんですが、
12月2日に原子力規制庁が東海村にある「東海再処理施設」
これは日本原子力研究開発機構の施設だという事なんですが、
そこにプルトニウム溶液と、高レベル放射性廃液があって、それについての調査報告をまとめたと。
で、その調査報告によると、廃液が430立方メートル、それだけの量が処理されずに残っていて、
安全装置が壊れると、沸騰して放射性物質が飛散したり、
水素爆発をおこしたりする恐れがあるということなんだそうですが、
まず初歩的でいつもながら恐縮なんですけれど、
東海村の再処理施設というのは、これはどういう施設なんですか?
小出:
はい、皆さん再処理と言うような言葉を聞くと、
この施設が放射能のゴミをなにか処理してくれる、
始末をしてくれるというふうに思われる方がいらっしゃるようなのですが、
それは全くの誤解です。
再処理という作業は、
原子炉を運転して出てきた使用済みの燃料の中から、プルトニウムという物質を取り出すため、
それを目的にした工場です。
で、プルトニウムというのは、長崎原爆の材料になった物質でして、
もともとは米国がマンハッタン計画という原爆製造計画を進める中で、
どうしてもプルトニウムを取り出したいとして開発された技術です。
東海再処理施設でも、これまで「ふげん」という原子炉が日本にあったのですが、
そこから出てきた使用済み燃料を、「ふげん」というのは敦賀にあったんですが、
敦賀から東海村まで持ってきまして、
その使用済み燃料、もともとは個体なのですけれども、
それをドロドロの液体にまず溶かしまして、溶かした液体の中からプルトニウムという物質を分離しようという、
そのために作られた工場でした。
湯浅:
たとえば「再処理施設」という言葉を聞いたら、
頭の中で「プルトニウム抽出施設」と置き換えて考えないといけないという事ですね。
小出:そうです、そのとおりです。
湯浅:
で、その、プルトニウムなんだから当然危ないものだということはわかりますけど、
「安全装置が壊れると沸騰して水素爆発が起こる」というのは、
これは要するに原発で冷却が止まると熱くなって爆発するという、
今回起こった事と同じ事が起こるという事なんですか?
小出:
そうです。
全く同じ事が起こります。
使用済みの燃料というのは膨大な放射性物質を抱えてしまっていますので、常に発熱をしています。
その熱を冷やせなければ、温度が上がってしまいますし、
いま東海再処理施設には液体になった、使用済み燃料を液体にしてしまった廃液が沢山残っているのです。
で、それが常に発熱をしていますので、
それを冷やせない限りは液体が沸騰してしまうという事は簡単に起きてしまいますし、
膨大な放射線が飛び交っていますので、水素も日常的に生成されてしまっていますので、
それをきちっと処理できなければ、福島第一原子力発電所で起きたよう水素爆発が起きてしまいます。
湯浅:
これ、430立方メートル残っているっていうんですけど、
実際はもっとあったという事ですよね?「残っている」って言うからには。
小出:
そうです。
これまで東海再処理施設というのは1977年から運転を始めた筈だったと思います。
それで、確か2006年までは、まがりなりにも運転されてきたんですけれども、
この際処理という作業は猛烈な危険を抱えている作業でして、
度々事故を起こしたり、故障で機械が動かなかったりしまして、
1977年から2006年まで30年間、一応まがりなりに動わけですけれども、
その期間の施設の稼働率、設備利用率と私たちは呼んでいますが、
20%にも満たないという程の悲惨な運転履歴を残してきました。
で、2006年に一応は、お金儲けのための運転は止めたのですけれども、
でもその時までに処理できない廃液が残ってしまっていましたし、
施設自身も故障や事故が続いて、運転できないまますでに6年間停止してしまっていたのです。
湯浅:
そうすると、その危なっかしい物をいつまでそこに置いておくんだ?という事が
今回の調査でそういう話になったんだと思いますが、
これは結局どうするという事になっているんですかね?
小出:
いずれにしても廃液の状態でこれからずーっと保管を続けるという事はとっても難しい事です。
廃液は加熱されればすぐに蒸発してしまいますし、
放射性物質が沸騰して噴出してくるという事になってしまいますし、
タンクなんかにどこかに割れが出来れば、また漏れてきてしまうという事になりますので、
とにかくなんとしても個体にしたいという事だと思います。
湯浅:それは、その稼働率が20%だったという中で出来るんですか?
小出:
大変だろうと思います。
30年間で処理できた使用済み燃料というのは1100トン程度だったと思いますし、
だいたい1トンの使用済み燃料を溶かしますと、1㎥(立法m)の廃液が出来るのですが、
今430㎥あるということで、
多分それを処理しようとすれば何十年。
確か原子力規制委員会の計画では20年ぐらいかかるという事だったのだと思いますけれども、
ま、これから長ーい期間頑張らなければいけないし、
施設はまた事故や故障が起きるでしょうから、本当にいつになったら終わるのかもわからないという、
そういう状態になってしまっています。
湯浅:30年かけて1000トン。
小出:はい、1100トンぐらいだったと思います。
湯浅:
1100トンぐらいですね。
いま430トン分残っていると。
小出:そうですね。何十年かはかかると思います。
湯浅:
なるほど、じゃあそれは東海村で「動かせない」という事になるんですよね?
東海村でやらざるを得ない。
小出:
六ヶ所再処理工場というのもまあ日本はつくろうとしたわけですけれども、
六ヶ所の再処理工場すらが動いていませんし、
廃液をガラスに固めようとするところで止まってしまっていますので、
六ヶ所に送ったところでやはり出来ないだろうと思います。
湯浅:
んー…、これはあの、小出さんとしては「どうしたらいい」っていうか、
ま、そ、そうやって20年かけてやるしかないっていう事なんですかね?
小出:
はい、多分そうだと思います。
再処理なんていう事に手を付けたことそのものが間違いだった訳で、
本当はやってはいけなかったのです。
ただし、もう時間を元に戻すことはできませんので、
既に溶かしてしまった廃液はなんとしても個体にするという事をやらざるを得ないと思います。
湯浅:この安全装置というのは、かなりしっかり設計されているものなんですかね?
小出:
もちろんその施設を設計する時には、
事故が起きないように、そして安全装置等を沢山付けるわけですけれども、
残念ながらその安全装置がきちっと動かないという事はよくある事でして、
福島第一原子力発電所だって、もちろん安全装置は付いていたのですけれども、
それでもやはり事故は起きてしまう訳ですから、
これからまた東海再処理施設で廃液を処理しようとすれば、
さまざまな事故、故障が起きるだろうと思います。
湯浅:結局だからそうやって、手を付けちゃいけないものに手を付けたからこうなるっていう事ですね。
小出:はい、そういう事だと思います。
湯浅:はい、ありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ーーー
液体にしてしまった
液体になっている
液体だから固体よりも危険がとても大きいのだという事が分かりました。
あらためて、これからどうやっていくんだろう・・・と、
寒気がしました。
2013年10月25日
「原発再稼働をめぐる攻防・泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明」
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章さん
新潟県知事・泉田裕彦さん、
元経済産業省の官僚・古賀茂明さん。
27:31~ http://youtu.be/OUwMpTIIDU0?t=27m31s
水野:
今日の報道するラジオは「原発再稼働をめぐる攻防」と題してお送りしております。
ここからは京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生にも伺います。
小出さん、こんばんは、よろしくお願いいたします。
今日は新潟県の泉田裕彦知事にも議論に参加していただいているんですけど、
先ほどの話で泉田知事が東電に対して、フィルターつきベントについていろいろと疑問を呈したところ、
東電は設計を変えるんじゃなくて、ベントを追加しましょうと言ってきたんですね。
それも地下に追加するという話だそうです。
これで安全性は保たれるんでしょうか?どうなんでしょうか?
小出:保たれる道理がありません。
水野:はい。
小出:
もともとこれまで原子力発電所というものは、
「原子炉が溶けるなんていう事は絶対にない」と言ってきたのです。
それで安全審査という事をやったんですけれど、
仮に溶けたとしても、格納容器という放射能を閉じ込める容器は絶対に壊れない。
「だから周辺住民は被ばくをする事はありません」というのが前提だったのです。
しかしもし、原子炉の炉心が溶けてしまうようになれば、
格納容器が壊れてしまうという事は技術的にあたりまえなことなのであって、
福島の原子力発電所でも実際に格納容器が壊れてしまって、
膨大な放射性物質が噴き出してきてしまった訳です。
技術的に言えばそういうふうなことはもちろん起こり得るわけで、
「炉心が溶けても格納容器だけは壊れません」という事はやはり言えないということになって、
ある時点から「では、格納容器をなんとか壊さないようにベントというものを取り付けましょう」
ということになってきたのです。
ですから、もともとは「絶対に壊れない」と言っていた訳ですけれども、
それが「壊れるかもしれないからベントを付けよう」とかいうことになったわけですが、
ベントというのは
「もともと放射能を閉じ込めるための格納容器の中から、放射能を外に放出する」
ということが前提になっているというわけであって、
そんな事をすれば周辺の人達が被ばくをしてしまうということは避けることができなくなってしまうのです。
ですからもともとベントという事はやってはいけない事なのですし、
そんな装置が必要になるようなものは造ってはいけないと思うべきだと私は思います。
水野:
はい、なるほど。
新潟県知事の泉田さん、今の小出先生のお話を聞かれていかがでしたでしょうか?
お聞きになりたいことも含めてどうでしょう?
泉田:
原子炉というのはまさにそういうものなんですけど、
特にヨーロッパは、「メルトダウンが起きた時にどうするか」という事を想定して設計しているんですよね。
溶け落ちたものを受け止める施設というものを最新の原発に付けているんです。
で、アメリカは?って言うとですね、ソフト的に溶けないように対応するための部隊というか、
制度・仕組みを持っている。
日本は第二の安全機能を付けようとしているとしか見えないので、
やっぱり「事故が起きないようにいろいろ基準を作りました、だから安全です」というのは、
これは虚構だというふうに思います。
水野:
うーん、…あの、小出さん、
今のどうでしょうか、やはり・・・メルトダウンありき。
それでもやはり出来る限りのことをするという為のこのフィルター付きベントというんでしょうか、
あのー、東電の社長は
「フィルターベントで出ていく放射性物質の量を1000分の1に出来る」って言っているんですね。
で、「100テラベクレルに抑えられる」というふうに、知事との会談で言っているんですが、
これって、どういう意味と捉えたらいいんですか?
小出:
皆さんそんな事を信じることができるのでしょうか?
これまで東京電力という電力会社は
「絶対に放射能は外に出ませんし、周辺の住民が避難訓練をする必要もありません」と言ってきたのですね。
それがスリーマイル島の事故、チェルノブイリの事故を受けて、
「周辺8kmの人だけ避難訓練をしておけば十分だ」というような事を言っていたのですけれども、
福島の事故では50kmも離れたようなところの飯舘村という村が猛烈な汚染を受けてしまっている訳です。
東京電力がどんな事を言ったとしても、
それが守れなかったということがすでに事実として示されてしまっている訳ですから、
「フィルターベントだって本当にちゃんと動くんだろうか?」と、私はそれこそ不安です。
水野:泉田さん、せっかくの機会ですから小出さんにご質問なさったらいかがでしょうか?
泉田:
質問、・・何を言ったらいいですか・・・、
じゃあ一番ね、せっかくの機会なので聞かせていただきたいのは、
2号機がですね、最も放射能をばら撒いた設備なんですけれども、
なぜそうなったか?というと、格納容器がまさに壊れてしまったという状況で、
この放射能を最大ばら撒いたと、
水野:あ、福一ですね。福島第一原発の2号機ですね、はい。
泉田:
で、今回の基準、新しい基準というのは、
この格納容器を壊さないというのに適切な規制になっているんでしょうか?
小出:
もちろんなっていないと思います。
もともと泉田さんご自身がずーっと言われていることですけれども、
「福島第一原子力発電所の事故の原因がしっかり分からないうちは安全対策の取りようが無い」
ということだと私も思います。
いま泉田さんがおっしゃって下さったように、
福島第一原子力発電所の場合には2号機が最大の汚染源だと国も東京電力も言っている訳ですけど、
では、いったい2号機の格納容器のどこが壊れたのか?
ということすらいまだに分からないのです。
あれこれ推測はありますけれども、その推測を確かめに行くことすらできない。
原子力発電所というのは、原因を確かめるためのこともとても難しいという、
そういう装置なんだということな訳です。
おそらく原因を確定するためにはたぶん10年とかそんな時間が必要になると思います。
水野:ははぁ…10年ですか。
小出:はい
水野:はい、小出裕章さんどうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
水野:
京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに聞きました。
泉田知事、小出さんは「10年程も原因が分かるまでには時間がかかるだろう」
というふにおっしゃいましたですね。
いかがでしたか?
泉田:
うーん、「10年で分かるのかな?」という感想ではありますけれどね。
あの、ただ可能性としては、今回の事故でいろんな事を想定しなくてはいけないという事はわかりますよね。
たとえば、さっきの2号機の話で言うとですね、ひょっとすると、
この、ベントが上手く出来なかったんです。
ベントが上手く出来なかった原因の一つが、
「空気圧でバルブを開けるところが動かなかったんじゃないか」という説もあって、
そうするとCクラスの配管は大丈夫か?っていう話も出てくる訳なんですよね。
だから、チェックするところが可能性としてあげられるところはかなり出てくるんじゃないかと思いますよね。
つづくーー
※お願い
この部分は小出裕章先生の出演部分のみを文字起こししています。
ここだけを読むと、泉田知事の本心が分かり辛いと思います。
番組の最初から読んでいただくのが一番いいのですが、
続きの部分4「非常に今回、泉田さんに対する個人攻撃がひどいんです」古賀茂明
泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明10/25報道するラジオ(文字起こし)
も是非合わせてお読みください。真実を知るために・・・
私は一般市民として、泉田知事を応援していますლ (。◕ˇε ˇ◕。ლ)
いろいろなマイナスの情報には惑わされないで本当を見つけていきたいと思っています。
報道するラジオ 2013年10月25日
「原発再稼働をめぐる攻防・泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明」文字起こしブログ
1「止まっていても生きている原発ですのでなにが起きるか分からない」泉田裕彦
小出裕章・古賀茂明」10/25報道するラジオ(文字起こし)
2「経産省が銀行と約束しているんですね、裏で」古賀茂明
泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明10/25報道するラジオ(文字起こし)
3「もともと泉田さんご自身がずっと言われていることですけれども
『福島第一原子力発電所の事故の原因が分からないうちは安全対策の取りようが無い』」
小出裕章・泉田裕彦・古賀茂明」10/25報道するラジオ(文字起こし)
4「非常に今回、泉田さんに対する個人攻撃がひどいんです」古賀茂明
泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明10/25報道するラジオ(文字起こし)
報道するラジオ 2013年10月25日
「原発再稼働をめぐる攻防・泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明」文字起こしブログ
1「止まっていても生きている原発ですのでなにが起きるか分からない」泉田裕彦
小出裕章・古賀茂明」10/25報道するラジオ(文字起こし)
2「経産省が銀行と約束しているんですね、裏で」古賀茂明
泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明10/25報道するラジオ(文字起こし)
3「もともと泉田さんご自身がずっと言われていることですけれども
『福島第一原子力発電所の事故の原因が分からないうちは安全対策の取りようが無い』」
小出裕章・泉田裕彦・古賀茂明」10/25報道するラジオ(文字起こし)
4「非常に今回、泉田さんに対する個人攻撃がひどいんです」古賀茂明
泉田裕彦・小出裕章・古賀茂明10/25報道するラジオ(文字起こし)
小出:
まずは、汚染水問題が今始まったかのように皆さん考えていて、
その今始まった汚染水の深刻さがレベル3だというような事を言っている訳ですけれども、
そうではなくて、汚染水問題というのはレベル7の事故が起きた
2011年3月11日からずーっと続いているのであって、
「レベル7の事故が今現在も続いている」と、そのように認識してほしいと思います。
そして、「レベル3だ」と言ったその評価ですけれども、
それは「ひとつのタンクから300トンの汚染水が漏れてしまいました」と。
そして「その中に1リットルあたり8000万ベクレルという放射性物質が入っていた」と言っているのです。
その放射性物質の正体は私はストロンチウム90だと思っているのですが、
その1リットルあたり8000万ベクレルで300トン分を考えると、
24兆ベクレルという総量になります。
それは広島長崎の原爆がまき散らしたストロンチウム90の数分の1ぐらいです。
ですから、たった一つの汚染水タンクから、300トンの水が漏れたがために、
広島原爆と、まぁ、そんなに変わらない位の放射性物質が地下に流れてしまったと言っている訳ですね。
ですから猛烈に深刻なことであるわけですけれども、こんなことは今初めて起きた訳ではないのです。
もうずーーーーっと漏れてきたのです、2年半にも渡って。
そちらの方がもっと深刻だと私は思っています。
湯浅:そうすると、1日300トンで原爆の数分の1だとすると、2年半だとものすごい量・・
小出:そうです。ですからそれだけでも数100発分になってしまうと思います。
湯浅:相手が海なんで、「薄まるだろう」みたいに思うこともあると思うんですけど・・・、
小出:
私たちが今心配している放射性物質は、
先程聞いていただいたストロンチウム90とか、セシウム137という放射性物質を心配しているわけで、
そういう放射性物質は30年経たないと半分になってくれないのです。
つまり一度海へ流してしまえば、
それは一方で薄まりながら、一方では生物がそれを濃縮していくという作用で、
ずーーーっとこれからも汚染を長い間引きずるということになると思います。
湯浅:
そうすると今、海から獲れる物に関して、
「基準値が超えるものが続々と出てくるというような状態になっていない」と言われていますが、
小出:
たとえば私は「2011年3月11日からずーっと汚染水が流れていた」と言っている訳ですが、
流れている汚染水は多分、福島原子力発電所の敷地の、まずは地面に染み込んでいるわけですね。
で、土というのはかなり放射性物質を捕捉しやすい性質を持っていますので、
土に漏れたセシウム137、あるいはストロンチウム90という放射性物質は、
土につかまりながら、少しずつ少しずつ海に向かって流れているのだと思います。
ですから、たとえばタンクから漏れた汚染水に含まれていた放射性物質が、
全量すぐに海へ出たという事ではなくて、
今、福島第一原子力発電所の敷地の中が、放射能の沼のような状態になってしまっている訳ですが、
これから長い時間をかけて少しずつ少しずつ海へ流れていくという事だと思います。
湯浅:結局どれぐらいの間、我々は海から獲れる物を注意し続ければいいんですかね?
小出:
セシウム137もストロンチウム90も、半分に減るまで30年です。
それから30年経つとまたその半分、つまり4分の1になってくれるというのですね。
つまり60年経って4分の1になる。
それからまた30年、つまり今から90年後には8分の1に減ってくれます、と言いますけれど、
それでもまだ10分の1にもならないということなんですね。
私のような放射能を取り扱う人間にとっては、
もともとの汚染の1000分の1にとにかくなるまで、なんとか仕事をしようと思うのですけれども、
1000分の1になるには、半減期のちょうど10倍の長さが必要になります。
つまり、セシウム137、ストロンチウム90に関して言うなら、
「300年後」ということになります。
その位の長さの時間に渡って、
汚染というものを調べて、被ばくをしないようにするという作業を続けなければいけないだろうと思います。
湯浅:300年ですか・・・・・
小出裕章ジャーナル 2013年9月7日
湯浅:
今日はですね、「母乳と放射性物質について」というテーマでお伺いしたいんですけれども、
チェルノブイリの後に、乳児を育てているお母さんたちの母乳を
「1リットル調べてほしい」というふうに頼まれた。
小出:
そうです。
チェルノブイリから放射性物質が飛んできまして、
日本で採れているものも、様々なものが汚れたのです。
その中で、日本にお住まいの母親の「母乳を調べてくれ」という依頼が届きまして、
それをやった事があります。
湯浅:なるほど。その結果はいかがだったんですか?
小出:
1リットルの母乳を私はいただきまして、その母乳を測定したところ、
ヨウ素131という放射性物質が、1ベクレルを超えて含まれていました。
本来はゼロのはずなんですけれども、1ベクレルを超えて含まれていて、
「あー、こんなところにまで来るんだな、そして母乳にまで出てしまうんだな」と思った記憶があります。
湯浅:
んー・・・、そうすると、まァ当然ですが、
今回も、相当その、母乳に放射性物質が含まれる可能性が高いということになりますね?
小出:
もちろん日本で、
福島の事故の後日本の母親の母乳の中にはヨウ素があったはずです。
ちょっと今数字を正確に覚えていませんが、
1リッター当たり1ベクレル、あるいは0.何ベクレルというようなものが、あちこちであったと思います。
湯浅:
んー、なにかこの、防衛する手段というか、あるんですかね?
小出:
要するに母親という生き物も含めて、この環境の中で生きているのですね。
環境が放射能で汚れてしまえば、そこで生きている生き物の身体が汚れるという事は、
基本的にはもう「避けることはできない」と思っていただくしかありません。
ただし、ま、程度の問題で少しでも下げたいと、もちろん皆さん思うでしょうし、
そのためにはもちろんやることは沢山あります。
たとえば母乳が汚れるという事は、母親の身体が汚れている訳ですけれども、
呼吸で吸い込む放射性物質を減らす。
食べ物で取り込むものを減らす。
あるいは水道水の中の汚れを減らすというようなことは何がしかはできるわけですから、
やるべきだろうと思いました。
湯浅:
ん。母乳に放射性物質が混じってしまっているからと言って、
ま、粉ミルクにすればという話でもない?
小出:
もちろんですね。
ですから、赤ん坊というのは母乳で生きている訳ですけれども、
ですから、母乳の汚染というのを極力避けるというのはもちろん大切な事ですね。
ただその母乳をやめて粉ミルクにしたとしても、「粉のままなめさせる」のではないのですね。
水道水を沸騰させて、それに粉ミルクを溶かして与える、
冷やして与えるというようなことをやるのだと思いますが、
当時は水道水も汚れていたのです。
日本も福島事故の後で東京の金町浄水場の水が汚れているという話もありましたけれども、
水道水自身が汚れてしまっているわけですから、
粉ミルクを溶かしたとしてもやはりだめなわけです。
湯浅:
ちょっと具体的な手立ての話になっちゃいますけど、
家庭に水道の蛇口に付ける浄水器ってあるじゃないですか。
ああいうので、ま、活性炭とかが入っている奴ですね。
小出:はい
湯浅:ああいうのである程度の除去って出来るもんなんですか?
小出:
その、ある程度は多分出来るんだろうなと、私はチェルノブイリの時も思いましたし、
今でも「ある程度はできるはずだ」と思ってはいます。
ただしチェルノブイリの事故の時に、その母乳の汚染を検出したお宅で、
実はすぐにやったのです。
水道水そのものではなくて、活性炭をつけて、活性炭でヨウ素、
あるいはほかの放射性物質を取り除いて、
ま、母親自身の身体を綺麗にしようと努めた事があったのです。
で、しばらくその活性炭の浄水器を使っていて、
ひと月ぐらいだったと思いますが使った後に活性炭を私は貰ったのです。
それでその活性炭の放射性物質を測定してみたのですが、
残念ながら私が期待したようには活性炭は有効ではありませんでした。
湯浅:
ある意味、家庭で一個人が出来ることとしては、
ちょっと水道の蛇口に浄水器を付けるぐらいしか思いつかないんですけど。
小出:
ま、食べ物そのものを「なるべく汚染の少ない低いものを妊婦の方は食べる」
あるいは、「ちいちゃな赤ん坊を持っている母親は汚染の高い食べ物を避ける」
という事をやるべきだと思います。
今この日本という国では、1kgあたり100ベクレルという基準値を決めて、
それ以下であればもう全部安全だから気にするなという、
そういう作戦に彼らが打って出てきてしまっていて、
一つ一つの食べ物がどこまで汚れているかという事を、
私たちは知る事が出来ないという状況に追いやられているのですね。
ですから「気を付けて下さい」と私はどなたにもお願いをしますけれども、
多分出来ないと思います。
湯浅:
小出さんはあれですよね、以前から商品のタグに、これは96ベクレルだとか、
これは1kgあたり56ベクレルとか、
要するに基準値以下のものも以上のものも表記して消費者が選べるようにという、
そういうふうなことをやるべきだと訴えていらっしゃいましたよね。
小出:
そうです。
それが何よりも大切な事なのであって、
消費者自身がきちっとした情報のもとに、自分で判断できるという事をやるのが、
本当の民主主義だと私は思うのですが、
残念ながら日本というこの国ではそうではなくて、
おかみが決めた方針がすべて正しいという、それで「やれ」と言われているのですね、庶民のほうが。
本当ならば私たち庶民、一人一人の個人というものが、
ちゃんと情報を得て判断できるような形というものをつくらなければいけないわけで、
そのような形が作れるように、それぞれの現場というか、生きている場所で行政に働きかけるなり、
えー、ま、選挙というのはあんまりどこまで有効か、私はますます疑問になってきましたけれども、
選挙の時にきちっとした候補者を選ぶとかですね、
やはり、なかなか有効な手だてがありませんけれども、
でも仕方がないので一つ一つやるしかないと思います。
湯浅:そういう事ですね、はい、今日もありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
小出裕章氏
2013年8月23日
今日は福島第一原発の汚染水を特集しますが、
まず今日の動きから千葉アナウンサーに伝えてもらいましょう
千葉:
それでは福島第一原発関連のニュースをお伝えいたします。
福島第一原発で汚染水漏れのトラブルが相次いでいる事態を受け、
原子力規制委員会は今日、現地調査を行いました。
福島第一原発では、今月19日
タンクからとしては過去最大となる300トン以上の汚染水が漏れていることが明らかになり、
一部は排水溝を通じて海へ流れ出た可能性があります。
さらに昨日、東京電力が同じ構造のタンクおよそ300基について総点検したところ、
別のエリアのタンクの周辺2カ所でも、非常に高い放射線量が測定されました。
タンクの底の部分で、1時間当たり100ミリシーベルトと、70ミリシーベルトだったという事で、
非常に高い数字です。
原子力規制委員会は今日現地調査を行い、
漏れたタンクなどを確認したほか、
地下水を通じて汚染水が漏れている海沿いで地下水のくみ上げ作業を視察しました。
また、1号機から4号機の建屋にたまった汚染水がどのように海側に流れているかを調べるため、
比較的構造が似ていて汚染が少ない5号機、6号機側の地下の構造を確認しました。
建屋の地下内は配管などを通す地下のトンネルがいたるところにあり、
こうした場所を通じて汚染水が海に漏れだしていると見られます。
現地調査を行った原子力規制委員会の更田豊志委員は
「漏えいを前提とした対策が取られていたとは思えない。点検がずさんだったと言わざるを得ない」
と話しました。
原子力規制委員会は今日の調査を踏まえ、
来週火曜日に具体的な対策について議論する予定ですが、
現場では今日も、今回漏れたものと同じ構造のタンクの建設が続いていたという事です。
タンクからの水漏れというのはこれでもう5回目なんですけれども、
水が増え続けているから、早く作れるこのタイプのタンクをつくり続けて、
汚染水を収容していくという事なんですね。
水野:
でも、このタイプのタンクは寿命が5年とか・・・と聞きますね。
仮設のものなんですね、あくまでも。
千葉:
そうなんです。
接続の部分がゴムでできていまして、まァ5年という事なんですけれども、
それでもとにかく早く作れるから作り続けるという状況だそうです。
水野:まだ2年と少ししか経っていませんのにね。
千葉:漏れてもいるんですけどね。
水野:
はい。
千葉アナウンサーがお伝えしました。
今福島第一原発で本当に何が起こっているのか?
今日は京都大学の小出裕章先生にも伺います。
また、海の状況についても伺っていこうと思っております。
03:44~
http://youtu.be/zRA0kZmdajA?t=3m44s
水野:
今日の特集「福島第一原発事故 汚染水をどうする」
今日は京都大学原子炉実験所助教、小出裕章さんとお電話を結びます。
小出さん今晩はどうぞよろしくお願いいたします。
平野:今晩はよろしくお願いします。
小出:はい、平野さんこんばんはよろしくお願いします。
水野:
多くのリスナーの方から小出さんのお話を伺いたいというお便りを頂いていました、
まずは
「東電は何であんなにウソをつくんでしょうか。
最初は汚染水が120リットルと言っていたのに、二日したら300トンですか!?」と。
昨夜になったら別のタンクからも漏れているっていう話ですね。
今何が起こっているのか、今日は教えていただきたいんですけれども、
まず、汚染水って、何でそんなに増え続けているんですか?
小出:
今、福島第一原子力発電所の中で、原子炉と私たちが呼んできたもの。
そこの炉心が溶けてしまっているという事が2011年3月11日から進行しているのですね。
で、炉心というところにはウランというものがあって、
それが核分裂をしてエネルギーを出して、それで発電をするという事をしてきました。
ウランという物質は地球上にどこにでもありますし、放射能を持った物質です。
みなさん、この地球という星が、単に私たちがこう、
表面で生活出来ていて、命の星だと思われていると思いますが、
地球の内部を考えてみると、ドロドロに溶けているのですね、今でも。
マグマというものがごく近くにあって、火山で噴出してくる訳ですし、
コアという部分はもう、全部が溶けてしまっているという、そういう星なんですね。
それはなんで溶け続けていられるか?というと、
ウランとか、トリウムとか、カリウムというものもありますけれども、
要するに放射能があって、それが熱を出しているからなんです。
ウランはもともと放射能を持っている物質で、生命体にとって危険なわけですけれども、
そのウランを核分裂させてしまうと、放射能の量が一気に1億倍に増えてしまうのです。
もう、モーレツな発熱体になってしまうという事になります。
2011年3月11日に地震と津波で襲われて、
福島第一原子力発電所はウランの核分裂反応自信は止めたのですけれども、
でも1億倍にも増えてしまった放射能がそこにあるが為に、
炉心でずーっと発熱を続けてしまう事になっていたのです。
ですから何とかそれを冷やさない限りはドロドロに溶けてしまうと。
それはもう宿命なのです。
水野:「今もずっと冷やし続けているんですか?」とリスナーが聞いて下さっていますが
小出:
そうです。
ですから、何が何でも冷やし続けなければ溶けてしまうという、
そういうものを相手に私たちは今戦っているのです。
2011年3月11日の事故が起きて以降、
とにかく大量に作ってしまった放射性物質が熱を出し続けていましたので、
まずは冷やして溶けないようにしなければいけないという事が起こりました。
水野:
ずーっと冷やし続けているんですね。
ただ、その汚染された水はですね、
東電は建屋でちゃんと回収して、それを放射性物質を除去して、もう一回格納容器に冷却水として使うから、
ぐるぐる回すので汚染水は増えないはずじゃなかったんですか?
小出:
東京電力の説明はそうでしたけれども、炉心を冷やそうとして水を外から入れているんですね。
そうすると、水が汚染する事自身は避けられません。
そして本来は炉心というものは原子炉圧力容器という圧力釜の中にあったのですが、
圧力釜自信ももう溶けて穴があいてしまっていますし、
その外側にあった、放射能を閉じ込める最後の防壁として設計された格納容器も、
もう多分そこいら中で穴があいてしまっていて、いくら水を入れても全部漏れてきてしまう。
水野:だだ漏れですね。
小出:
そうです。
それで、漏れてきたミスは何処へ行くかといえば、
原子炉建屋という、皆さんが写真で見る四角い建物ですね。
その建物の地下に溜まってしまったり、
あるいはそこと繋がっているタービン建屋という建物の地下に溜まってしまったり、
あるいはさらにその外側に、
トレンチとかピットとか立抗と呼ぶ地下のトンネルの様なものが張り巡らされているのですけれども、
そういうところにずーっと溜まってしまってきていたのです。
それは2011年3月の段階で「すでに10万トンも溜まっている」という状態になっていました。
4月の初めにその一部が、ピットというところがあって、
海に向かってジャージャーと滝のように汚染水が流れている事が目に見えたのです。
ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、
「これは大変だ」という事で、東京電力はそこを大変な苦闘をしながらふさいだのです。
ところがその塞いだ途端にマスコミの方々は、
「ああ、これで汚染水の漏れは防いだ」と思ったのかもしれませんが、
そんなことはあるどおりが無いのです。
コンクリートというのはもともと水を蓄える・漏らさないという力はありませんし、
福島第一原子力発電所の場合には大きな地震に襲われて、そこいら中にひび割れが生じているはずで、
目に見えなくても地下で汚染水はもうダダ漏れだったのです。
ですから、なにか今みなさんは汚染水問題が大変だと思われたようですし、
マスコミもここへ来て初めての様な顔をして、汚染水問題の事を報道しているわけですが、
もう2年半にわたってダダ漏れのままずーっと汚染水は漏れてきていたのです。
水野:
毎日汚染水は400トン増加しているという計算もありますよね、
ドラム缶2000本分です。
小出:
そうです。
それはあの、地下水というのはどこにでもあるわけで、
コンクリート構造物がひび割れている限りは、
中から外にも漏れるし、外から中にも入ってきてしまうという事は当たり前な事なのであって、
地下水がどんどん、どんどん中へ入ってきてしまいました。
だから「循環しています」と言っても、
外から中へ入ってくるものを考えれば、
どんどん、どんどん増えていってしまうという事になってきてしまったのです。
水野:
今回問題になっているタンクの水で言うと、
1リットル当たり8000万ベクレルだそうですが、
これはどれ位の危険のあるものなんでしょうか?
小出:
その8000万ベクレルの正体は、
私はストロンチウム90という放射性物質だと思います。
そのストロンチウム90という放射性物質を、もし、事故ではなくて、
たとえば私がいる京都大学原子炉実験所から外に流そうとすれば、
1リットル当たり30ベクレルを超えたらもう外へは流せません。
水野:1リットル当たり30ベクレルが限界、今回はその・・・え・・
小出:8000万ベクレルですから、ま、約300万倍という、
水野:300万倍。はぁ
小出:
もう、想像することも難しいほどの猛烈な汚染水というものが、タンクの中に溜まっているわけですし、
どんどん、どんどんそれが、毎日のようにたまってくるという状態になっているのです。
水野:
これ300トンで24兆ベクレルというふうに計算できるんですけど、
24兆ベクレルが流れ出しているというのは、どういう意味なんですか?
小出:
それもみなさん、24兆ベクレルと言っても全然実感が湧かないと思いますが、
24兆というのはですね、10を13回掛け合わせるというのが10兆という桁になります。
それで、広島の原爆がまき散らしたセシウム、あるいはストロンチウムというのは、
10を13回掛け合わせた量です。
水野:はぁ!
小出:
ですから今10を13回と私は言ったんですね。
24兆というのは。
ですから、ほとんど要するに
広島原爆がまき散らしたセシウム137あるいはストロンチウム90と同じようなものを
今、漏らしたという事ですね。
水野:はぁ。
小出:
それがただ300トンだと言っているだけであって、
福島第一原子力発電所の敷地の中にはもうすでに43万トンもの汚染水が溜まっているのです。
水野:43万トン溜まっているんですか!
小出:はい。
水野:はぁー
平野:これはもう、なんか一種の池とか沼のような状態ですね、全体を上から見たら。
小出:
はい。
もう、今私はもう、福島の敷地が放射能の沼のように思えてしまいます。
平野:これでもう、ここで作業すること自体がもう、…なんか危ういんですね、危ないですね。
小出:
そうです。
もう毎日現場で働いている作業員の方々が被ばくをしながら向き合って下さっているわけで、
本当に危うい状況だと私は思います。
水野:
1リットル当たり8000万ベクレルの汚染水の周りで作業したり、
たとえば手を突っ込んでしまったりしたら、どうなるぐらいのものですか?
小出:
それは状況によるのですけれども、
ストロンチウム90という放射性物質は、ベータ線という放射線しか出さないのです。
ですからタンクという鋼鉄の容器に入っている限りは大きな被ばくをしなくて済むのですけれども、
それが漏れてきてしまって、地面の上に水たまりになってしまっているという事になりますと、
ベータ線もかなり空気中でも飛びますので被ばくをしてしまうという事になってしまいます。
で、もちろんそれを身体に付けてしまいますと、皮膚が被ばくをしてしまいますし、
作業員の方々は十分に注意をしながら作業をしてもらいたいと思います。
水野:これ水たまりに最初120リットルでしたでしょ?
小出:(笑)はい。
水野:それが、日があらたまったら、タンクの水位の低下から300トンという事に訂正されました。
小出:はい。
水野:
じゃあ、300トンから120リットルを引いたその差ですよね。
299トン880リッターっていうんですかね、kg。
これ、どこに行ったんですかね?
小出:
はい、堰に中に。
堰という、コンクリートでこぼれないようにしている構造物があるのですが、
その中に残っているというものもあると思いますし、
多分大部分はバルブから外に流れて地面に染み込んだんだと私は思っています。
水野:地面に染み込むとやがて海へ流れますよね
小出:
そうです。
先ほど平野さんも全体が沼のようになっているとおっしゃったけれども、
敷地全体が放射能で汚れた沼のような状態になってしまっていて、
そこにどんどん地下水が流れ込んでいる訳ですから、
もちろん海へ流れ込んで行ってしまうと思っています。
水野:
この問題についてはね、
タンカーを持ってくるべきだという事を、もう事故の直後から小出先生はおっしゃっていましたが、
これは何とも、動きませんでした。
で、今度は浄化装置のアルプスというものを動かすんだと、
こういう話もあったんですけれども、これもうまく動きませんね。
ん・・・
小出:そうです。
水野:
ただ、これからどうすれば、
この、タンクに入っている、やっと、ま、確保できた汚染水を外へ逃さないでいけるのか?
いかがでしょう?
小出:
わかりません。
今東京電力がやっているのは、
ひたすらタンクにためようとして、これまで40万トン分ぐらいのタンクをつくってきたのですけれども、
それも非常に応急的なタンクであって、溶接して作ったタンクではありません。
鋼板をただボルトでつないでですね、間にパッキンが入っているというような応急的なタンクですので、
ま、今もうすでに漏れてしまっているわけですし、
これからもどんどん漏れていくだろうと、私は思います。
そして今もどんどん汚染水が増えているわけですし、
東京電力は80万トン分までタンクを作ると言ってはいますけれども、
いずれにしても敷地には限界がありますので、
いつかは海へ流すことになってしまうと思います。
平野:規制委員会の田中委員長は、もうそうせざるを得ないみたいなニュアンスで話されていますよね。
小出:はいそうです。
平野:しかしそれでいいかどうかは大変疑問に思いますし、
小出:今までのようなやり方は決してやってはいけないと私は思います。
平野:
それと、地下水のバイパスを通す計画というのも、
敷地を通さずに地下水をいきなり、こう海へ流すみたいな計画もね、
水野:
あ、地下水が汚染される前に、先にそれをくみ上げて、海へ流そうという計画ですよね。
つまり、いままでお話ししていたタンクの中の水ではなくて、
他にも汚染水って、今お話しいただいたようにいろんな形であるわけですね。
小出:そうです。
水野:
地下水がどんどんどんどん、汚染をされてしまっている。
これは、今平野さんがおっしゃったこのやり方、汚染される前に海へ出すというのはどうなんですか?
小出:
汚染の現場に入る前の地下水を、
汚染をする前に海へ流すことは私はやるべきだと思います。
どうにも、もうこうなってしまった限りは、少しでも汚染を少なくするしかないわけですから、
それが本当にいいかどうかというのは疑問はありますけれども、
でも、やるべきだと思います。
水野:でも地下水というのは、全く汚染されていないところで
小出:
ではないですよね。
ですから、完璧に私がそれを支持するわけではありませんけれども、
本当にどうしていいのか分からないような困難な状況にありますので、
少しでも海へ汚染を流さないという方策は考えなければいけませんし、
私は、今この場所できちっとご説明できないと思いますが、
もう水で炉心を冷却するという事を止めなければいけないのではないかと思うようになりました。
水野:は?だって、水で炉心を冷却しなかったら、破局的な事になるんでしょ?
小出:
そうですね。
私もそう思ってきましたし、事故直後は海水でも良いし、海水もないなら泥水でもいいから、
「とにかく水を入れて冷やしてください」というように私は発言もしてきたのですけれども、
2年半たちまして、放射能自身も随分減衰というか、減ってきてくれていますし、
発熱量も減っていますので、
水以外の物質という事を考えて、
これ以上汚染水を増やさないという事を考える時に来たと私は思います。
平野:それはたとえばどういうものが想定されるんですか?
小出:
私は事故直後からヨーロッパの方々が忠告をしてくれたやり方なのですけれども、
最近はまた日本国内の方も私にそういう忠告をくださるようになりましたが、
「金属で冷やそう」という。
平野:金属
小出:
具体的には鉛とかですね、ビスマスとか、そういう重金属の類を、
多分溶けてしまって、どこかにあるだろうと思われている炉心のところに送ってですね、
その金属の、冷却材というか、熱伝導を使って炉心を冷やそうという、そういう発想があるのです。
それが本当にうまくいくかどうかという事も私は確信は持てないし、
これまでそんな事をやった試みも人類は経験したことが無いのですけれども、
「水というやり方はそろそろ諦めるしかない」と私は思うようになりました。
水野:これ以上汚染水を増やすわけにはいかないっていう事ですか
小出:と、思います。
水野:
これ以上汚染水が増えたらどうなると思いますか?
リスナーの方は、「もう収束作業ができなくなって、破局に至りませんか?」
って、聞いていらっしゃるんですけれども。
小出:
はい。
要するに、これまで日本の政府が福島第一原子力発電所の事故で、大気中に放出した放射性物質
セシウム137という放射性物質を尺度にしていますが、
168発分だと言ってきたんですね。
でも汚染水の中にはそれの10倍以上のものがもうあるのです。
それが今、海へ向かって流れようとしている訳ですから、
それを何とか防がなければいけないという事が、私たちのやるべき仕事なのです。
でもやろうとすると、敷地の中全体がもう放射能で汚れてしまっていますので、
その作業に携わって下さっている労働者の被ばくが毎日のように積み重なってきてしまっているのですね。
ですから、なんとかその労働者の被ばくも減らしながら、海へ汚染水を流さないという、
抜本的なというか、なにか別の方策を探さなければいけないのではないかと、私は思うようになりました。
平野:
それは、国が本当に取り組まなければだめなんですけど、
そういう気構えとか、現実的に体制とかそういうものが全く見えてこないですよね。
小出:多分ないと思います、今では。
平野:これはしかし、それを言い続ける、メディア含めてそれを言い続けるしかないんですけれども、
小出:はい、是非ともお願いしたいと思います。
平野:
現実的に学者のみなさんの知恵というものを集めて、その辺の対策を取るという事は、
現実的に出来ますかね?
小出:
ええ、出来ていないのですね。
残念ながらみなさんも原子力ムラという言葉を最近はよく使うようになってきていますけれども、
原子力の世界にいた人々というのは、
こんな事故がまさか起きるとは思っていなかったわけですし、
大きな油断の中でずっと原子力を進めてきてしまいました。
そして思ってもいなかった事故が起きてしまって、
今現在も本当にどういう方法が良いのかよく分からないというまま、一人一人の方々がいると思いますし、
知恵をきちっと集めて集約できるような組織すらがいま無いという状態なのです。
水野:
あの、東電が出すね、海への汚染水の流出を初めて認めたのって、ついこの間7月ですよね。
本当は何時から海へ流れ出ていたというふうに小出先生は見ていらっしゃいますか?
小出:2011年3月半ばからです。
水野:
3月半ば。
ということは3月11日の事故からもう何日か経ったらということですね。
小出:
そうです。
もう炉心が溶け落ちて、3月12日には1号機の原子炉建屋が爆発しているわけですが、
その時にはもう炉心が溶けている訳ですから、
その時から炉心を冷やした冷却水というか、汚染水がすでにもうあふれていたわけです。
で、3月末には敷地全体で10万トン分の汚染水が溜まっていて、
私はその段階で「タンカーで汲みだしてくれ」と言ったんですけれども、
やってもくれませんでしたし、
その時からずーーっと漏れています。
水野:
経産省はですね、1日300トンの汚染水が海に流出しているという計算をしていますし、
東電はですね、これまでのずーっと流出した放射性物質の量を
最大で30兆ベクレルというふうに計算しているんですよね。
で、この計算式を見ると、何時から漏れているかというと、
2011年5月からという計算なんですよ。
仮定が。
これ、どういうことなんですかね?
小出:
おかしいですよね。
もっと前から漏れているわけですし、仮定自身が私は成り立たないと思います。
水野:つまり30兆ベクレルをもっと超える量が流れ出ていると思われますか?
小出:はい。私は遥かに多いと思います。
水野:たとえばどれくらい?
小出:
すみません、数字では私は申し上げられないけれども、
30兆というのは10を13回掛けた桁です。
それで、大気中に出したのは10を16回掛けた桁だと日本国政府と東京電力が言っているのですけれども、
私は多分それに匹敵する位ではないかと思っています。
水野:ハァ~、桁が3つも違うという。
小出:そうです。
水野:とんでもないことになりますね。
小出:
もっとも、私自身もそれを証明できるデータを持っているわけではありませんし、
実際に環境の汚染がどれだけ生じているかという事も
未だにデータがあんまり整っていませんので何とも言えませんが、
(ためいき)ため息しか出ないというような事態に今なっていると思います。
水野:はい。
どうもありがとうとうございました。
番組の続きの文字起こしは ↓ こちら
「毎日海に流れている300tの内容がストロンチウムだと予想を超えていろいろ心配な事があります」
水口憲哉教授8/23報道するラジオ「汚染水で海への影響は」(文字起こし)
<参考>
漏れすぎてて何が何だかʅ( ‾⊖◝)ʃワカラナーイ
汚染水漏れ関係の直近の報道
過去の汚染水漏れ
2011年事故直後の汚染水漏れ
第30回放送 熱狂なきファシズムの到来? 参院選を振り返る
ゲスト: 想田和弘さん(映画監督)
パーソナリティ: 湯浅誠(社会活動家)
小出裕章ジャーナル
湯浅:
今日はですね、ズバリ日米原子力協定についてお聞きしたいと思うんですが、
私もちょっと調べましてね、この協定1955年にまず結ばれて、
1968年に旧協定が結ばれて、
そして1988年、今の協定が、中曽根内閣だと思うんですけれど結ばれて、
この協定は今も有効な訳ですよね。
小出:
そうですね。
30年だったですかね、なんか。
湯浅:
そうです、30年で。
だから2018年まで日米原子力協定というのが今あるわけですよね。
小出:もちろんです。
湯浅:
小出さん、
この協定はどんな内容でどんな問題点がありますか?
小出:
原子力協定だけを特別歴史の流れから切り離すというのは、もちろん間違いなのであって、
日本というこの国が、
サンフランシスコ講和条約で、一応米軍から解放された時からの流れの中で理解するべきだと思います。
そして日本には日米安全条約があるわけですし、日米地位協定というものもあるわけですね。
そういうものの基本的な枠組みはなにかというと、
日本という国が米国の属国になっているというそういうことなのですね。
原子力協定ももちろんその一部を成しているわけで、
米国の指導のもとというか、米国の思惑の枠組みの中でこれまで原子力をやってきた。
で、米国に付き従っている限りは一定の自由を与えてやろうという、そういう協定です。
湯浅:
たとえばですね、核燃料サイクルですが、
これを日本がやめたいと思っても、この協定がある限りやめれないでしょ?
小出:
もともとは米国は日本に核燃料サイクルはやらせたくなかったのです。
というのは、“核燃料サイクル”というのはいわゆる“核兵器製造サイクル”とでもいうべきものでして、
原子炉で出来たプルトニウムを取り出すという事が一番の眼目なんですね。
で、日本はでも、なんとしても自力で核兵器をつくる力、技術的な能力を付けておきたいと思っていたわけで、
その中心技術である再処理という事をやりたかったのです。
ところが米国としては「やはり日本という国にそれをやらせるのはまずいかもしれない」と思ってですね、
日本が再処理に手を付けるという事に関しては、随分と米国の中で反対があったのです。
その反対を押し切って、1977年に東海の再処理工場というのが動きだしたわけで、
ようやくに日本としては米国から了承を取り付けて、核燃料サイクルに踏み込む事が出来たという事なのです。
湯浅:そうなんですか。
小出:はい。
それをもちろん日本は簡単に手放すことはできないわけですし、
米国としても日本が指図に従っている限りは、
ま、世界で唯一なんですね。
核兵器保有国以外に再処理工場を認めたというのは日本だけなのであって、
「日本が属国である限りは認めておいてやろう」という、
そういう枠組みの中で原子力協定があるのです。
ですから、歴史の流れの中で考える限りは、
日本は自分でも抜けたくないだろうし、
米国としても今の枠組みが維持できている限りは、日本はその枠組みで利用したいと思っていると思います。
湯浅:
たとえばね、アメリカの原子炉を日本が購入することで、
ウランあるいはプルトニウムの燃料でアメリカは儲けていこうと、そういうこともあったんですか?
小出:
ウランを売りつける。
あるいは原子力発電所というのは天然のウランでは日本の原子力発電所は動かないわけで、
“濃縮”という大変な厄介な事をしなければいけないのですが、
米国はウラン濃縮、つまり原爆をつくるためのウラン濃縮工場を沢山つくり過ぎてしまって、
そこから出てくる濃縮ウランをどこかに売らなければ儲からないのですね。
湯浅:あ、アメリカは余ってたんですか…
小出:
そうです。
もう山ほど余っていますのでとにかく原子炉を売りつけて、その燃料を売りつける事で金儲けをする。
そして、原子炉自身も米国がパテントを持っているわけですから、「売れば売るほど儲かる」と。
ただし米国自身はゼネラルエレクトリックも、ウェスティングハウスも、
すでにもう生産ラインを失ってしまっていますので、
日本の生産ラインを動かして、それでまた金儲けをしようともくろんでいる訳です。
湯浅:危険は日本任せで利益はアメリカが取ると?
小出:そうです。
湯浅:
日本もまた原子力ムラはそれで儲けたいし核兵器も取りたい、つくりたいという本音もあるので、
日米のそういう、この原子力に群がった人たちが、お互いが、
これ、民衆は全く無視して、お互いがいいだろうと作ったような協定でしょ?
小出:
そうです。
ま、国家としても思惑、あるいは企業としての思惑というのが複雑に絡み合って、
米国の利益、もちろん米国は利益を求めるわけですし、
日本の企業もすでにつくってしまった生産ラインがあるので、もう抜ける事が出来ないという事で、
儲けに入っている訳です。
湯浅:
これね、先生ね、たとえば日米安保条約ってありますよね。
これがある限り沖縄とか横須賀の基地は日本にあるじゃないですか。
だからいくら沖縄の人が「基地を撤去しろ」と言っても、
日米安保条約がある限りなかなか撤去されませんよね?
小出:そうです。
湯浅:これと同じような構図が原子力にもあって、
小出:そうです。
湯浅:
結局その、日本政府も沖縄の基地ビジネスで儲けたい人もいますからね、
あるいは軍産複合体もそれで儲けた人がいるし、
アメリカだって、日米安保条約の中で沖縄に基地を置きたいという、
そういう両者の野望みたいなものが安保条約であって、結局沖縄の人が苦しんでいると。
小出:そうです。
湯浅:
先生ねこれね、この原子力協定、2018年に期限が切れます。
これは破棄させなきゃダメですね。
小出:
私は破棄させるべきだと思いますし、
原子力協定だけじゃなくて地位協定だって破棄しなければいけないし、
日米安保条約も破棄するべきだと私は思います。
湯浅:本当の意味で独立していかないといけないという事ですね。
小出:そうです。
湯浅:はい、良く分かりました。先生また引き続きよろしくお願いします。
小出:こちらこそよろしくお願いします。
第30回放送
Web公開 2013年8月6日(火)
ラジオ放送日 2013年8月3日(土)~8月9日(金)
ゲスト 想田和弘さん(映画監督)
パーソナリティ 湯浅誠 (社会活動家)
テーマ ここがヘンだ日本の選挙 - 参院選を振り返る
小出裕章ジャーナル
湯浅:
今日はゲストの想田和弘さんと一緒にお話を伺わせていただきます。
今日お伺いしたい事なんですが、
7月12日の共同通信が、「農業用水に汚染水340トン 原子力機構が計画了承」というタイトルで、
「南相馬市で生じた汚染水340トンを農業用水に使う川に流していた」っていう話だっていうんですが、
原子力機構が設けた放射性セシウム管理基準というのが、
1リットル当たり最大90ベクレル以下なんだけれども、
実際にはそれを上回る100から121ベクレルの水が60トン含まれていて、
流出した放射性物質の総量は1600万ベクレルという事なんですが、
小出:
いま湯浅さんがおっしゃった、1リットル当たり最大90ベクレル以下という値はですね、
いわゆる国の法律に書かれている値でして、
「それ以上の濃度の廃液であれば事業所から外へ出してはいけない」という
そういう法律の値なのです。
ですから日本の企業であるとか、いわゆる研究所であるとか、
そういうところが動くためには必ずこの基準だけは守らなければいけないという、
そういう値なのですけれども、
それを上回っているような廃液も流してしまった。
そして、もともと原子力機構はそれを承知だったという、そういう話のようなんですね。
想田:この、最大90ベクレルいかという基準は、昔からずーっと同じ基準なんでしょうか?
小出:
えっとですね、歴史から言えば数字は細かくは変わっていますけれども、
かなり前から、セシウム137に関しては1リットル当たり90ベクレルという数字は
もう、10年じゃないな、20年から30年位は続いていると思います。
想田:
たとえばですね、いま、そういう基準は変わらないと。
だけれども、あの大規模な大事故が起きて、この同じ基準でですね、汚染水を処理していくとなると、
それがもしかしたらキャパを超えてしまったからこういうことになったんじゃないかなというふうに、
小出:
はい、多分そうです。
要するに大量の放射性物質がすでに放出されてしまいまして、
大地全部が猛烈に汚れているのですね。
それを全てこれまでの法律のもとで管理するという事はもう出来なくなってしまっているわけで、
そのために、たとえば被ばく量でいえば、
「普通の方々は1年間に1ミリシーベルト」というのがこれまでの法律だったのですけれども、
「そんなものはもう守れない」という事で、
「1年間に20ミリシーベルトまでのところには人々が住んでもいい」というように、
日本の政府が言っているのですね。
ですからもう…、廃液中の濃度というものも、もう全く守れないという、
実質的には守れないという状況になってしまっている。
日本原子力機構もそのことを十分承知しているので、
「これまでのものなどは、もう到底守っていられないよ」いう、そういう事だと思います。
湯浅:
あの、ちょっとおさらいというか、確認させてもらいたいんですけど、
これは除染で出た汚染水という事なんですが、除染作業で出た。
除染作業っていうのは、保育園の屋根を高圧洗浄機で、水を流したりしておりますが、
それは通常、基本はまずその水っていうのはどうしているんですか?
小出:
本当は集めると言っているのですね。
高圧洗浄でジャージャー使った水はそのまま流してはいけないで、
「それをちゃんと集めなさい」という事になっているのですけれども、
そんな事をやっていたら到底仕事にならないし、お金もかかってしまうので、
要するにジャージャー流してしまうという事をこれまでもやってきたわけですし、
汚染物も川に蹴り落とすなんて言う事前にも朝日新聞に載っていましたけれども、
もう、多分日常的にやっていると思います。
想田:やらざるを得ないんですよね、きっと現場的には。
小出:
現場の作業で言えば、そんな一つ一つの排水を溜めるとかですね、
汚染物をきちっと梱包して保管するという事は、
「実際上はもう出来ない」と、多分現場では思っていると思います。
想田:
お聞ききしていると、除染という事自体が
もしかすると幻想というかですね、フィクションに近いんじゃないかと思いますが、
小出:
おっしゃるとおりです。
除染というのは汚れを除くと書くんですけれども、
「汚れ」と私たちが読んでいるものは放射能な訳で、放射能を消すなんていう事はもともと出来ないので、
言葉の本来の意味で言えば除染は出来ないのです。
湯浅:前にこの番組でもおっしゃっていましたよね、「除染は移染だ」って。
小出:
そうです。
汚れを移動するという事しか私たちにはできないのですけれども、
その移動のためのお金が膨大になり過ぎてしまっているので、
もうそこいら中にとにかく流してしまえという事になっているのです。
想田:
そうすると小出先生からご覧になって、いまその除染をすると。
今これは国が主導して実施計画書を作ってやっていると思うんですけれども、
全体的にこの除染という作業に意味があると思われますか?
小出:
私は除染は、まずは反対なのです。
一番やらなければいけないのは汚染地域の人々を逃がすという事なのであって、
汚染地域を除染出来るなんていう事そのものが間違えていると思います。
ただこの除染というのは、いわゆる除染ビジネスになっているわけで、
これまで原子力を進めてきたゼネコンとかが、
これまでつくる事、原子力発電所をつくることで儲けてきたわけですし、
事故を起こしたら今度はまた除染ビジネスで儲けるという、そういう事をやっているのです。
想田:
これは、国が約110億円の事業予算を投じていると。
これは年間110億円という事ですよね?
小出:
これまでも何千億円と確か費やしたと思います。
2011年2012年で合わせれば、多分数千億円に達していると思います。
想田:
ここにありましたね。
2012年度の国の予算に計上された除染費用は約3千7百億円。
小出:あ、そうでしたかね、はい。
湯浅:それでこの下水に流した水っていうのは、当り前ですがどこへ行くか分からないんですよね。
小出:川を通って、農業用水にも使われながら、最終的には海へ行くことになります。
湯浅:でもその間に農業用水から外れて地下に・・・、
小出:
もちろんですね。田畑を汚しながら地下にもぐって、
ある所では地下水を汚して、最終的には海へ行くんだと思います。
想田:という事はまた再汚染をさせてしまうという形に
小出:
そうですね。
もともと環境というのは全てが繋がっているわけで、
汚染した場所から汚染していない場所に移動したりすることもあるわけですし、
えー…簡単には汚染を食い止めるという事はもともと出来ないのです。
想田:だからこそ原発をやっちゃダメだという事ですね。
小出:そうですね。はい、おっしゃるとおりです。
湯浅:はい、小出さんありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
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「意味がない」以上に「やってはならない事をやってしまっている」
小出裕章ジャーナル2/2ラジオフォーラム(内容書き出し)
<除染の実態>
「川に直接投棄・手抜き作業次々と」
ーメディアが報じれば政府が動くー1/7報道ステーション(内容書き出し)他
第29回放送
Web公開 2013年7月30日(火)
ラジオ放送日 2013年7月27日(土)~8月2日(金)
ゲスト 原一男さん(映画監督)村松昭夫さん(大阪アスベスト弁護団副団長、弁護士)
パーソナリティ 西谷文和 (ジャーナリスト)
テーマ 人命より経済優先? 大阪泉南アスベスト訴訟を考える
小出裕章ジャーナル
西谷:
今日は、「なぜ電力会社は再稼働をしたがっているのか」ということなんですけれども、
基本的に電力会社は「総括原価方式」で電気料金を決めますから、
小出:そうです。
西谷:赤字にならないですよね?
小出:絶対になりません。
西谷:ね。
要は資産に3%の報酬をのせて決めていきますから、
「赤字だ、赤字だ」って言っているのは、あれも…ウソ…じゃないかな?と思ったりもするんですが。
どうなんでしょうか?
小出:
電気料金をある時期に決めるわけですし、
その時に、いわゆる会社ですから、必要経費というのはあるんですね。
そして会社ですから利潤も取っていいと。
その利潤を今西谷さんがおっしゃって下さったように、
資産に3%といま西谷さんはおっしゃったけれども、
西谷:今年は2.9です。
小出:それも時代で変わっているのですが、確か今は3%だと思います。
西谷:はい。
小出:
それだけ、「資産が多ければそれに比例して儲けを取っていい」という、
法律の仕組みがあるんですね。
西谷:そうですよね。
小出:
それで、
「必要経費と利潤を合計したのを埋め合わせできるように電気料金を決めろ」と書いてあるわけですから、
電力会社としては儲けたかったら資産を持てばいいし、
そうすれば電気料金を上げていくらでも儲けることができるという事でこれまでもきたのです。
ただし、今回の東京電力の事故ように、全く予想もしなかったような事が起きてしまうと、
東京電力だって簡単に倒産しちゃうっていう程の被害が出るわけですし、
いま、関西電力を含め他の電力会社も、
これまでは金儲けのためにつくってきた原子力発電所が
一斉に不良債権になってしまうというというようなところに追い詰められているのですね。
ですから彼らとしては「なんとしてもそんなことは避けなければいけない」
いままでどおり「原子力とはいいものだ」という事を言い続けなければ、
赤字に本当になってしまうかもしれないというところにまで、追い込まれているのです。
西谷:
ちょっとね、こういう理解でいいですか?
たとえば火力発電をつくる、原発をつくる、原発の方がコストが高くなる、
小出:そうです。
西谷:
そうするとそのコストに3%乗せるから
高いものをつくっていた方が今までは儲かっていた訳ですね。、
小出:おっしゃるとおりです。
西谷:これはもうなんか、こう、消費者をバカにしたような話なんですが、
小出:本当にその通りなのです。
西谷:
もうひとつ僕が腹が立つのは、使用済み核燃料棒がありますね。
これも資産だと言って3%かけてたんですよね。
小出:そうです。
西谷:使用済み核燃料って、ゴミじゃないですか。
小出:
私はゴミだと思うのですが、
電力会社の説明によると、
「使用済みの燃料の中にはプルトニウムという物質が入っていて、
それが新たな原子力発電所の燃料になるのだからそれは資産だ」と言っていたのです。
西谷:核燃料サイクルは、破たんしてるじゃないですか。
小出:
本当にそうなのです。
ですから、その事を言えば、電力会社が言ってきた事、あるいは経産省が認めてきた事、
日本の国家が進めてきた事という事は、本当にはあり得ない事なのですが、
でも、「あり得ない事を、きちっと制度として作ってしまった」がゆえに、
どこまででも金儲けができるという事になったのです。
西谷:
福島第一原発でですね、使用済み核燃料をあれだけ抱えていて、この危機を起こしたわけですが、
それが資産で3%を乗せて私たちの電気料金に跳ね返っていたという事は、
返す返すも腹が立つ事実なんですけれども
小出:本当に腹が立ちます。
西谷:
それとですね、原発の寿命は20年と言われていて、
この前の関西電力の株主総会は40年の美浜をさらに20年、60年使うと言ったんですが、
小出:そうです。
西谷:
この考え方は、一回コストをかけた原発を毎年3%ずつ乗せていくから、
電力会社としては20年で終わるよりは40年続けた方が儲かるという、
そういう事で大丈夫でしょうか?
小出:
もちろんです。
えっと、いま西谷さんは20年とおっしゃったけれど、
確か私の理解では、原子力発電所のいわゆる原価償却期間っていうのは16年だったと思います。
西谷:あ、そうですか。
小出:
ごめんなさい、私が間違えているかもしれない、20年かもしれないのですが、
要するに16年か20年使ってしまえば、
施設としては価値が無いし、税金も払わなくて済むようになるんです。
固定資産税を払わなくても済むようになる。
そうするとあとは、使えば使うだけただ金儲けができるという、そういう事になってしまう訳ですから、
とにかく、電力会社としてはそんなうまい話は無いんですね。
西谷:だから、ずーーーっと使いたいわけですね。
小出:
そうです。
動く限りは固定資産税も払わなくていい、
ひたすら金だけ儲ける事が出来るのですから「使いたい」という事になってしまいます。
西谷:じゃあ、逆に廃炉にすると、その資産は無くなるから、3%乗せる事が出来ないという事ですね。
小出:もちろんできませんし、廃炉の費用が膨らんでくる訳ですね。
西谷:ダブルで損をするというふうに考えているんですね、彼らは。
小出:はい。
西谷:
あとですね、もうひとつ。
コマーシャルをやっていますよね。
コマーシャルもこれは必要経費なので、
結局、コマーシャルというのは普通の企業でしたら自分のコストでやるんですが、
彼らはそのコマーシャル分も電気料金で
小出:そうです。
西谷:
これはですね、
「節電お願いします」というコマーシャルをしてますよね。してましたよね。
という事は消費者にお願いをして、そしてそのお願いしたコマーシャルも消費者から取っていたと。
小出:
そうです。
マスコミを自由に扱うように、マスコミに金をばらまいて、それを消費者から徴収しているのです。
西谷:
本当に、この仕組みを変えないといけませんが、
これは今回の電力改革で、総括原価方式、出てきているんですけれども、
まだまだ続けそうですよね、この様子じゃ。
小出:
ま、今の状況でいうと、日本の官僚というのは、「自分の既得権益を守ろう」とするわけですし、
財界と官僚が結びついてしまっていますので、
総括原価方式というのを覆すというまでに派、まだまだ時間がかかると思いますし、
電力会社の抵抗もずーっと続くだろうと思います。
ただしいずれにしてもこのままでいかれる道理はありませんので、
今電力自由化という流れもどんどん加速していますので、
いずれ、破たんすることは分かっているし、
「電力会社の経営者というのならちゃんと未来の事まで見てくれよ」と私は思います。
西谷:
今回の株主総会でも、経営陣に何千万円という手当が出るわけですが、
これ総括原価方式だったら、別に誰でもできるじゃないですか。
小出:
むしろ、そうです、
それでその経営陣に膨大なお金を払っても、それは全部電気料金として私たちが払ってしまっているのですね。
西谷:
あの…、ほんとにね、怒りを通り越して、なんか笑ってしまうような話なんですけれども、
これ、廃炉の積立金がものすごく不足しているという話もありましたが、
先生、この廃炉の事については、これから、今後、廃炉にしていってほしいと思うんですが、
やっぱり膨大なお金がかかるんですか?
小出:もちろん膨大にかかりますし、現在考えているようなお金では到底足りませんので、
西谷:足らないですか、やっぱり。
小出:到底足りません。
西谷:到底足りない。
小出:
はい。
遥かに膨大なお金が必要になりますし、
そのために、それもまた未来の子どもたちが電気料金として負わせられることになると思います。
西谷:
これはしかし、なんていうか今すぐにでも止めて廃炉にしていっても莫大なお金がかかるという事は、
さらに延ばして再稼働させてツケを遅らせて、
また核燃料サイクルの分もツケですし、
そういう意味では本当に、なんかこう、将来の事を考えるとますますツケが広がっていくんじゃないですか?
小出:
そうです
私は「全ての原子力発電所を即刻止めて廃炉にしろ」と主張しているわけですけれども、
それをやろうとすると膨大なお金が必要になって、それを私たちが負担をせざるを得なくなると思います。
ただ、それを嫌って問題を先延ばしにするのであれば、
負担はどんどんどんどん膨れ上がってくるだけですので、
やはり一刻も早く決断をして、これまでのツケというのを払うしかないと私は思います。
西谷:
先生、多重債務者がですね、
この借金を払うためにまたよそで借金して、雪だるま式に膨らんでいくのとよく似ていますよね。
小出:いま、その通りの事を電力会社がやっているのです。
西谷:
だからここで思い切って英断をして、即刻止めて、
そして廃炉にしていくというのが一番安い方法なんですね?
小出:傷としては浅くすむと思います。
西谷:
総括原価方式と、そこに一社しかないという、私たちが選べないという、
この二つは絶対に変えないとだめですね。
小出:
いまの電力というのは地域独占という事で始まったわけですす、
独占企業であれば何らかの形で電気料金なら電気料金を決めるしかなかったわけです。
それで、ま、総括原価方式というのをやったわけですけれども、
そのやってきた結果というのが今日のような事になっているわけで、
気が付いたのならば帰るしかないと思います。
西谷:
そうですね。
今日は小出先生と総括原価方式をテーマにやりましたが、
このテーマでまたもう一回やりたいですね、先生。
小出:はい、またお願いします。
電気料金の驚異の”からくり”「総括原価方式」←これは知っておくべきですね。(内容書き出し)
2011年7月のそもそも総研で、とてもわかりやすく説明しています。
小出先生も出演していらっしゃいます。
当時の文字起こしは私はまだヘタクソだったので、読みやすく文字起こし部分を直しました。
今なら動画も見る事が出来ます。
sawada:
2013年7月に行われた参議院選挙で
脱原発を掲げて初当選を果たした山本太郎さんと歩む脱原発への道についてご意見を伺いました。
昨日参議院選挙が開票になりまして、山本太郎さんが前回の衆議院選を経て今回初当選をしました。
「反原発」という事を掲げてですね、初めて一筋の光が見えたというふうにちょっと思われていますが、
小出先生からみて、今後山本さんがどういう形で活躍されるか?
どういった形で私どもがサポートしていったらいいのか?
何かご意見があればぜひ、いただけますか。
小出:
はい。
今回の選挙の結果は全くもって悲惨な結果だったと私は思います。
それでも太郎さんが当選したという事は、そんな悲惨な中でも一筋の希望です。
わたしにとっても嬉しいですし、
太郎さんには、この場を借りて「おめでとうございます」とお伝えしたいと思います。
ただし、これから太郎さんを待っている仕事というのは、大変困難の多い仕事だと思います。
皆さんは太郎さんが当選したので、
太郎さんにあれもやってほしい、これもやってほしいと願うかもしれませんけれども、
いくら私たちがそれを願ったとしても、政治というものは巨大な流れで動いていますので、
太郎さんがどんなに頑張ったところで実現の出来ない問題はもちろん山ほどあるし、
一つでも実現できるのか?とむしろ私はそんなふうに思ってしまいます。
それですので、なにか太郎さんが当選したからといって、
一切を太郎さんに預ける、太郎さんに期待してしまうというようなことは決してしてはいけないと思います。
sawada:
そうですね、今までも先生は政治には期待しないというお話をされていましたが、
ついつい期待してしまうのはもちろんある中で、
そうしますと、私たちがなにかしなければいけない。
その中で小出先生というのは今まで日本の原発の歴史の中でここを研究したという形で
ある意味山本太郎さんが初めて政治界の小出先生といえる位
孤高の立場にこれからなっていくイメージがあるんですけれども、
そんな中どうやったら、今心構えというお話を頂いていますが、
私たちは期待しない、私たちは私たちのやれる事をやるんだという事があるかと思うんですけれども、
山本さん、今どうしていったらいいもんでしょうね。
エールは、エールは送らないといってもでしょうかね?
小出:
もちろん太郎さんをサポートしなければいけません。
太郎さんからなにかサポートの依頼のようなものがあるのであれば、
私はもちろん全力でそれを果たしたいと思いますし、
お一人お一人の方が、太郎さんからなにかやってほしいというような事があるのであれば、
必ずやり遂げて欲しいと思います。
しかし、太郎さんに対して、私たちの側から
「あれをやってほしい」とか「これをやってほしい」というような依頼は決してするべきではないと思います。
太郎さんという、非常に個性的で優れた方がいるわけですから、
私はもうひたすら彼の個性を生かして、彼が彼らしく活動をすると。
そうして、もし私たちに彼の個性をサポートできるようなことがあるのであれば、
それをするという事がいいのだと思います。
sawada:
そうしますと、反原発の中で原発の収束というのは一番大きい所がありますけれども、
そういったところでもし小出先生にお声がかかれば「喜んで」というところでしょうか?
小出:
太郎さんから、なにか私にアイディアを出せとかですね、
えー、国の方との喧嘩も多分これからたくさんしないといけないと思いますが、
そういう時の、ま、喧嘩のための手段を提供しろといわれるのであれば、
もちろん私は喜んでそれをやります。
しかし、私自身がこれまで原子力に抵抗をしてきたのですけれども、
何一つ実現できないまま、福島第一原子力発電所の事故に至ってしまったのです。
そういう意味で言えば一人一人の人間の力というものは、
国家、あるいは歴史の流れというものに比べれば圧倒的に非力なんです。
もうそれは認めるしかありませんので、
太郎さんも、多分彼は彼なりに頑張ってくれるだろうと思いますけれども、
でもそれで今の原子力が止められるとか、そのように期待するとすれば私は誤りだと思います。
sawada:
そうしますと、小出先生はじめ皆さんスキルのある方、
もしくはそれぞれの分野でみなさんも太郎さんの事をサポートできればというところであるんでしょうけれども、
そういう意味で先生今回選挙戦をみられていて、三宅洋平さんという新しい方が出ておられましたけれども、
どうご覧になっていますか?
小出:
はい、ネットで拝見しました。
大変優れた方だなと思いましたし、
彼はミュージシャンなわけで、彼の才能全てを使って、現在の世界に向き合おうとしている。
「とっても素敵だなぁ」と思いました。
彼も本当であれば当選してくれたら良かったと思いましたけれども、
結果は残念なことになってしまいました。
でも、一人一人の人達が
「それぞれ持っている自分の個性というものを輝かせて生きるという事が一番大切なんだ」
という事を改めて示してくれたという意味では、三宅さんもとっても輝いて私には見えました。
sawada:
そうですね、そんな中で私どもも先生のご指摘の通り太郎さん等に期待するだけじゃなくて、
自分達でなにか発信して、自分たちでやれる事をやるんだというのが今回スタート地点かと思います。
今そんな中で私どもがしなければならない課題、
もしくは先生の方で今こんなことをしていきたい、
もしくはこうすべきだというようなご提案とかがあればお願いできますか。
小出:
私は長い間原子力の場で生きてきた人間で、
原子力の場で私が担わなければいけない仕事というのはもちろんこれからもあると思いますし、
何を私がしたいかというようなことを、私の個人的な希望というかやりたい事を言えというのであれば、
沢山あります。
たとえば、福島第一原子力発電所の事故を引き起こしてしまった責任のある人たち、
いわゆる原子力ムラ、原子力マフィア、と呼ばれるような世界にいた人たちを、
まずは全員刑務所に入れたいと私は本心願っています。
残念ながらそうする力が私にはありませんが、
それでも彼らの責任というものをこれからも追及していきたいと思っています。
それは、原子力の場にいる“私”という人間のやるべきことだと思っていますが、
普通の方々はもちろん私のような原子力の場にいるわけではありませんので、
やはりそれぞれの方がそれぞれの場で、
「自分にとって何が大切な事なのか」
という事を考えていただいてそれをやり遂げるという事が大切なのだと思います。
sawada:
ありがとうございました。
そしたら今後ですね、山本太郎さんをはじめ、活躍される事だと思いますけれども、
あのぜひ、小出先生のご活躍を私ども自身も見守らせていただきながら、
是非何か新しいムーブメントの光の動きが出来ればなと思っておりますので、
今後とも先生からの発信もぜひお願い出来ればなと思っております。
小出:はいありがとうございます。
sawada:ぜひよろしくお願いします。
小出:はい、よろしくお願いします。
第27回放送
・ラジオ放送日 2013年7月13日(土)〜19日(金)
・ゲスト 広瀬隆さん(作家、反原発活動家)
・パーソナリティ 今西憲之(ジャーナリスト)
・テーマ 脱原発・ドイツの廃炉事情レポート
小出裕章ジャーナル
今西:
今日は広瀬隆さんにもスタジオに来ていただきまして、原発のお話を色いるかがって行きたいと思いますが、
福島第一原発ですね、今廃炉作業が進んでおるんですけれども、
6月27日にですね、政府と東京電力が、福島第一原発の廃炉の工程表を改定したという公表をしました。
最大の難関であるですね、1号機2号機3号機の原子炉内に落ちた核燃料、
要するにメルトダウンした燃料ですね。
その回収が、順調に進んだら
「1号機2号機は従来の計画より約1年半早い2020年度前半に始める」というような会見の内容でした。
なんか、かなりスムーズにいくのかな?と思えてならないような気もするのですが、
小出さん、そのあたりはどのように見ておられるでしょうか?
小出:出来ません、残念ながら。全く絵に描いた餅です。
今西:広瀬さんはこの改定をみられていかがかご感想をお持ちでしょうか?
広瀬:まずあり得ないですね、まずそんなことは無理です。
今西:
こういうあり得ない事が原子力ムラでは簡単に通ってしまうという、
非常に不思議な気もするのですけれども、
小出さん、どういう所が一番ポイントとしてあり得ないと思いましたでしょうか?
小出:
いま進行している事故というのは、人類が初めて遭遇した事故なのです。
これまでの最悪だと言われていたのは旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故でしたが、
そこで溶け落ちたのは、原子炉が一つなのです。
今福島では3つの原子炉が溶け落ちてしまって、
さらに4号機という、溶け落ちてはいないけれども、
建屋が壊れかけて膨大な死の灰を抱えたままの使用済み燃料プールが宙ぶらりんになっているというような、
大変な、いま事故が進行しているわけで、
簡単に「どうこう」言えるような事態ではないのです。
今西:なるほど。広瀬さんはそのあたりどのように見ておられるでしょうか?
広瀬:
ま、いま今西さんがおっしゃった燃料をね、
メルトダウンした燃料がそもそも、ま、最悪の場合コンクリートの下にめり込んでいます。
原子炉を突き破ってね。
それはもう、これは取り出すとか取り出さないとか、そういうような話じゃないです。
それと原子炉の、おそらく壁の中にもへばりついたような形で、
いろんな形で、まァ細切れになっている可能性も非常に高いし、
そんなものをですね、仮にロボットをつくったからって取り出せませんよ。
今西:
そうですよね。それにメルトダウンしたその燃料というのはですね、
私も実際原発で作業しておられる専門家の方にも聞いたんですが、
「かなり重いんだ」というふうに聞いたんですが、
広瀬:そりゃ重いですよ、ウランですから。ね。
今西:感じとして100kgとか200kgとかそういう単位なんでしょうか?
広瀬:いえいえ、これは小出さんに聞いた方がいいです。
今西:小出さん、いかがでしょうか?
小出:ウランの塊は100トンあります。
今西:100トンですか…すみませんキロじゃなかったですか。
小出:
それも、セトモノ状に焼き固めてあって、もともとはあったのですが、
そのセトモノは比重が20というモーレツに重たい物なのです。
ウランというのはもともと重金属の一種で重たいもの。
だからこそ、劣化ウラン弾という形の、超優秀な砲弾にもなるわけですけれども、
その重たいものが100トンも溶け落ちて
どこへ行ってしまっているのか、今でも分からないというそういう状態なのです。
いま広瀬さんもおっしゃって下さったけれども、
それがもう、塊になっているというだけではなくて、
もうそこらじゅうにあちこちにへばりついてしまっているという状態にありますので、
それをいずれにしても全量回収するなんていうことはできませんし、
わずかな物でも回収しようと思えば大変な被ばくになってしまいますので、
私は多分、作業自身が実質的にできないと思っています。
今西:
なるほど。
けどいまの廃炉作業のやり方をみておりますとですね、
まぁまぁ建屋を一定のところまで潰しまして、その上に覆いをかけ、
そしてメルトダウンした燃料を取り出すという方向で首尾一貫やっておるんですけれども、
これが、そうすると、全く無駄な作業に終わってしまうという可能性もあると言う事なんでしょうか?
小出:
今やっているのはまずは使用済み燃料プールの底に眠っている、
これ以上燃やせない、つまり核分裂生成物が目いっぱいたまったという使用済み燃料が、
プールの底に眠っているのですが、
それを少しでも危険の少ないところへまずは移さなければいけないという作業をしているのです。
私はその作業は絶対にやらないといけないと思いますし、
東京電力にも急いでやってほしいと願ってもいますが、
その作業自身が大変困難な作業で、
これから何年かかるのか、それすらが分からない。
今西:
そうするとあれですね、
溶け落ちた燃料を取り出す以前の問題ということになりますね?
小出:そうです。
溶け落ちた燃料は広瀬さんが今おっしゃって下さったように、
そんなものをつかみだすことはまず「出来ない」のです。
でも、今のところまだ溶け落ちていない使用済みの燃料というものは、
どうしてもプールから移さなければいけないという仕事があるわけで、
それをいま何とかやろうとしている訳ですが、それだけでも大変な作業で、
10年かかるか、20年かかるか分からないという、そういう仕事なのです。
今西:
それでまァ、日本より前にですね、チェルノブイリ原発で大きな事故が起こりました。
その際にはコンクリートで原子炉自体を固めてしまう「石棺」という方法がとられました。
福島第一原発の時も、今回の事故でも、当初そういう方法を取るのではないか?
というような話もあったのですが、
現状のところは燃料を取り出す所にかなり固執しているような気がするのですけれども、
小出:
燃料を取り出さない限りは石棺で覆う事が出来ないのです。
石棺で覆ってしまうと、使用済み燃料プールの底に今眠っている
使用済みの燃料を取り出すことすらできなくなってしまいますので、
まず、作業の優先順位としては
使用済み燃料プールの底に眠っている使用済み燃料をまずは移す。
その次に国や東京電力が言っているように、
溶け落ちた燃料を何とか掴み出せるかどうかという作業が、始めて考える事ができるようになるのですが、
それは私は多分出来ないと思いますので、
その段階で諦めて「石棺」というものをつくるという事になるとおもいます。
今西:
なるほど。
広瀬さん、福島第一原発でですね、事故の収束作業としてチェルノブイリ原発に見習うべき、
手本にすべきところという事がもしあればと思うんですが。
広瀬:
えっとね、状況が違うんですよ。
いま、要するに新聞やなんかで断片的に見ているのと違って、
今実際に福島第一で毎日3000人ぐらいの作業者の方がやっている作業っていうのは、
もう、本当にかわいそうなんですけど、
被ばくしながら、要するに汚染水やなんかをどこへやるか?というね、
そういう日常作業にほとんど追われているんですよ。
だから今小出さんがおっしゃったようなきちっとした作業っていうのは、
ま、別のグループが一応ゼネコンと組んで、建屋を組んだり、骨組みを作ったりして、
たとえば一番危険な4号機について、
そういう燃料を取り出すための土台作りをやっている訳ですけれど、
現実に作業している人たちの作業っていうのは、もうそういうもんじゃないんです。
今西:日常の目先の作業
広瀬:
もう、めちゃくちゃなんですよ。
それは今西さんがご覧になった通り、あの状況と何も変わってないんですよ。
基本的に。
もうめちゃくちゃな中で、作業員の人が送りこまれて、
「これをあっちやれそっちやれ」っていう作業をね、毎日必死でやっている。
それが現実なんですよね。
だからこういうなんか、ポンチ絵みたいなのをね書いてやるっていう段階のところへは、
たぶんね、いってないと思います。
我々は東電とヒアリングもやったんです。
だけど彼らは、東電のこっちに、東京なんかに居る人達はね、何も分かっていないです。かわいそうに。
現場を分かってないです。
今西:
そうなんですね、
小出さん、そういう現場をよく分かっておられない方が陣頭指揮をとり、
いま、廃炉作業が進んでいるという現状を聞くとですね、もう言葉もないんですけれども、
いかがお感じになられますでしょうか?
小出:
確かに広瀬さんがおっしゃったように、
今はとにかく日々悲惨な作業を続けるという事に追われているのですね。
でもやはり仕方がないのです。
もう事故がここまで来てしまっていますので、
とにかく何とかこれ以上汚染をひどくさせない。
事故をこれ以上進行させないという事をやらなければいけませんので、
それに追われているという状態なのです。
私が心配しているのは、若い人たちも含めて、
殆ど被ばくに対して知識のない人達が、下請け孫請け構造。
1次、2次3次…何か10次にまで及ぶというような、そういう下請け構造の中で、
毎日被ばくを強要されて働いているという、そういう事が一番心配です。
今西:
わかりました。
小出さんありがとうございました。
福島第1原発、廃炉技術開発へ組合設立 工程表を改定
日本経済新聞 2013/6/27 19:38
政府と東京電力などでつくる福島第1原発廃炉対策推進会議(議長・茂木敏充経済産業相)は
27日、同原発の廃炉に向けた中長期ロードマップの改定を正式決定した。
原子炉内で溶け落ちた核燃料「デブリ」の取り出し開始時期を最大で1年半前倒しするのが柱。
電力各社や機器メーカーが、廃炉技術の開発のために技術研究組合を設立することも明らかにした。
廃炉技術の開発に向けて「国際廃炉研究開発機構」を設立する。
原発を保有する電力各社や東芝、日本原子力研究開発機構など17機関が参加し、
7月中旬にも国に設立認可を申請する。
理事長には山名元・京都大学教授が就任する予定だ。
従来計画では同原発の1~3号機からのデブリ取り出し開始は2021年末までを目標としてきた。
改定後のロードマップでは計画が最も順調に進んだ場合、
1号機と2号機からのデブリ取り出しは20年度前半になる。
同会議は今月10日にロードマップ改定案を公表し、正式決定に向けて周辺自治体との協議を続けてきた。
地元の意向も踏まえ、福島県内の自治体などと廃炉問題で意見交換する評議会を新設することを盛り込んだ。
また「政府が前面に立つ」と基本原則に明記し、国が主体的に廃炉にかかわる姿勢を鮮明にした。
2013/06/27 東京電力 臨時記者会見 17:30
IWJ 2013年6月27日
2013年6月27日(木)17時30分から、東京電力本店で臨時記者会見が行われ、
「廃炉対策推進会議(第5回)」および「中長期ロードマップの進捗状況」について説明した。
ロードマップの改訂版が承認され、コミュニケーションの強化と、政府が全面に立つ方針が明文化された。
本日6月27日9時30分から東京電力本店で廃炉対策推進会議事務局会議(第5回)が、
13時30分から経済産業省で廃炉対策推進会議(第5回)が開催され、
ロードマップの改定案が正式版に承認された。
東京電力の説明によると、改訂版の主なポイントは三つあり、
一つは、燃料デブリの取出しを、各号機毎の状況に応じ、工程を柔軟に変更するとともに、
平行してできることは同時並行して行うという。
工程の前倒しをにらんだ方針変換を行った。
次に、関係者とのコミュニケーションを強化するため、福島評議会を設置し、
情報共有、広報活動のありかたについて意見を伺うようにした。
最後に、廃炉に向けて国際的な叡智を集結する体制、環境を強化することを打ち出した。
これら三点と共に、政府が全面に立ち、ロードマップの取組みを進めていくことを基本原則としている。
廃炉作業は長期間に渡り、人材不足が懸念されることを記者が質問すると、
東電は若手人材の育成は一事業者の範疇では収まらない。国全体で取り組んでいくものだと回答した。
将来的には海外の廃炉事業に参入する時に、大きな技術アドバンテージになるだろうと言う考えを述べた。
ロードマップの改訂判では、廃炉対策推進会議や評議会、政府が前に出てきており、
東電自体が少し後ろに引いた、悪く言えば隠れるようになった感が否めないものであった。
その他のプラント状況説明の主な内容
・CST炉注水系は、7月2日から順次運用を開始する
・2号機炉内調査のためのTIP配管再確認い、7月8日から現場作業を行う
・ALPSのホット試験の結果を踏まえ、吸着剤を改良し、
除去能力が低いRu-106,Sb-125,I-129の除去能力を向上させる
・漏洩したALPSのバッチ処理タンクのピンホールは、タンク除染後、中に人が入り詳細調査を行う
・漏洩した地下貯水槽は、残留している汚染数を希釈し、濃度を下げリスク低減を計る
・海側トレンチ内に残留している汚染水は、
タービン建屋内の滞留水を移送し、希釈し、濃度を下げリスク低減を計る
・1F正門付近に設置した新しい入退域管理施設は6月30日から運用を開始する
・1F-4号機燃料取出しカバーは天井クレーンを据え付け済み、7月上旬から燃料取り扱機の設置作業を開始する
・1F-3号機オペフロアの線量低減のため、TMI事故時に稼働実績のある除染ロボットを導入する
・サプレッションチェンバー内水位測定のため、マグネットクローラーを使用しているロボットを導入する
第25回放送 うまくいくんかいな? アベノミクス
ゲスト: 浜矩子さん(エコノミスト、同志社大学大学院教授)
パーソナリティ: 石丸次郎(ジャーナリスト)
放送日: 6/29(土)〜7/28(金)
小出裕章ジャーナル
石丸:
今日のテーマなんですけれども、核兵器の事についてお伺いしたいと思います。
2月12日に北朝鮮が核実験を強行しました。
これに対してアメリカ中国ロシアをはじめとした、核保有国が中心となった国連の安保理でですね、
制裁決議が上がりました。
自国だけ核兵器を持って、他国に「核兵器を開発するな」というのは、
これはこれで非常に不平等な事ではありますけれども、
それはそれとしてもやはり北朝鮮が核開発をするという事は非常にやっぱり憂慮される事でありますが。
以前、小出さんは北朝鮮は核兵器開発に成功していないと見ておられるという事をおっしゃいましたけれども、
この辺についてもっと詳しくお聞きしたいんですが、
小出:
もともと朝鮮人民民主主義共和国という国の核疑惑というものが起きたのは1992年の事でした。
その当時にIAEA等がさんざん査察等を行った事があったのですが、
核兵器を製造するには二つの道筋がありまして、
ウランを使う道筋とプルトニウムを使う道筋です。
広島に落とされた原爆がウランを使って作られていましたし、
長崎に落とされた原爆はプルトニウムという物質を使って作っていました。
で、朝鮮人民民主主義共和国の場合は、
核分裂性のウランを濃縮するという技術も工場もありませんでしたので、
もし、あの国が核兵器をつくるとすれば、プルトニウムでつくるしかなかったのです。
ただし、朝鮮人民民主主義共和国には、まずそのプルトニウムをつくる道具、つまり原子炉ですけれども、
「原子炉は大変小型の小さな実験用のものしかなかった」のです。
熱出力という原子炉そのものの大きさで言うと、2万5000kw。
日本には100万kwという、電気出力の原子力発電所が、ま、何十もある。
電気出力100万kwというのは、熱出力でいうと300万kwになりますので、
朝鮮人民民主主義共和国が持っていた2万5000kwというのは、100分の1以下ですかね。
もう本当に話にならないほど小さな原子炉しかもっていなかったのです。
その原子炉をいくら効率的に動かしたとしても、
作り出せるプルトニウムの量なんてもちろん知れているのです。
おまけに、プルトニウムというのは原子炉の中でつくっただけではダメで、
それを使用済みの燃料の中から取り出すという、再処理という作業が出来なければいけない。
ただしそれはもう、猛烈に危険な作業でして、
大変な被ばく作業だし、環境汚染もそこいら中で引き起こしてきた作業なのです。
で、それを行うためには、いわゆる再処理工場という工場が必要なのですが、
1992年の時点で朝鮮人民民主主義共和国には再処理工場はなかったのです。
つまり「取り出すことすらが出来ない」という、そういう状態でしたので、
あの国に核兵器があるという事は、私はそれこそあり得ない事だと思いまして、
そのように発言を続けてきています。
石丸:
なるほど。
それは90年代前半のお話ですが。
小出:そうです。
石丸:
北朝鮮が「核実験を2006年、2009年、2013年にやった」と主張しておりますが、
時間的に言うと、14年の年月がたちました。
この間に開発が進んだというふうには考えられませんか?
小出:
えー、あるかも、しれません。
放射化学実験室という非常にプリミティブ (primitive 原始的・素朴・幼稚)な再処理工場が
90年代の初めにも、ま、建設途上であったわけで、
それをその後も建設を続けて、ひょっとしたら完成させたという事もあるかもしれません。
ただし、先程聞いていただいたように、
朝鮮人民民主主義共和国には本当におもちゃのような工場しかありませんので、
取り出せたとしてもプルトニウムの量は本当に知れている量でしかありません。
今年になって、ストックホルムにある国際平和研究所という所が、
また今年度版の年鑑を出しましたけれども、
それで考えられている朝鮮人民民主主義共和国が持っている核弾頭の数も、
せいぜい6発から8発だというのです。
そしてたとえば朝鮮人民民主主義共和国と未だに戦争状態、
つまり休戦協定しか結んでいない米国という国は、核弾頭の数で言えば7700発も持っているわけで、
戦争をしている当事者同士の数の比較で言うなら、
もう話にならないほどちいちゃなものしかもっていないのです。
石丸:
そうですね。
2006年そして9年13年北朝鮮が核実験をやったと主張しています。
咸鏡北道吉州郡豊渓里(ハムギョンブクド、キルジュグン、プンゲリ)というところに、
地下に穴を掘ってそこで爆発をさせたと。
で、直接それは映像ではもちろん見られた訳ではないんですけれども、
何らかの大きな地震と言いますか、地下で大きな爆発があったという事は、
国際機関、いろんなところの調べで明らかになっていますね。
これは、核実験として、核爆弾の実験としては、どう理解したらいいんでしょうか?
未熟なものだと理解したらいいんでしょうか?
非常に小型と理解したらいいんでしょうか?
小出:
いずれにしても、もう話にならないほどの小型なものです。
ただ小型の原爆をつくるという事はそれなりに難しい事なので、
朝鮮人民民主主義共和国に言わせれば、
「どうだ、俺たちはこんな小型の原爆だって作れるんだぞ」という、
そういう言い訳になるのかもしれませんけれども、
観測された地震そのものは、普通の火薬でも、
火薬を使った爆弾でもできるほどの地震のマグニチュードでした。
石丸:その程度にしか過ぎなかったという事ですね
小出:はい。
ですから、なんか皆さんはもう、
その時の地震が必ず核爆弾を爆発させたための証拠だというふうにおっしゃる訳ですけれども、
私はそれは直結しないと思います。
石丸:
見えない所で、あたかも大きな武器を持っているということを誇示するための
一つのトリックのようなものの可能性もあると、
小出:はい、私はそう思っているのです。
石丸:
なるほど。
その後ですね、ウラン濃縮のための道具をいろいろ揃えたりして、
ウラン濃縮の実験場でしょうか、
それをアメリカの核研究者に直接見せたりという事もしていますけれども、
これも進展は進んでいない…というふうに見られますか?
小出:
進んでいるとは思いますけれども、
ウラン濃縮という技術は大変難しい技術でして、
たとえば日本だって、やろうやろうとしてきたわけで、
人形峠でパイロットプラントをつくって、
その技術を基に青森県六ケ所村に巨大なウランの濃縮工場をつくろうとしてきたのです。
しかし、つくればつくるだけどんどん壊れていってしまいまして、上手くいかない。
そして昨年度から、新型のまたウラン濃縮施設をつくろうとして、今やっているところであって、
簡単にできるものではないのです。
ですから、米国と戦争状態にある国ですから、もちろん何とかしたいという思いはあるでしょうし、
それなりの努力もしているだろうとは思いますけれども、
いずれにしても容易ではないし、あの国が核兵器を簡単に持てるというふうには私は思っていないのです。
石丸:
なるほど。
核技術者として、実際はそんなに簡単ではないからということですよね。
小出:そうです。
石丸:
なるほど。
もうちょっとお聞きしたいんですが、またよろしくお願いします。
今日はどうもありがとうございました、小出さん。
小出:ありがとうございました。
ーー
「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を持っているかどうか」その事自身に疑いを持っています。
小出裕章ジャーナル3/30ラジオフォーラム(文字起こし)
第24回放送 従軍慰安婦問題を考える
放送日:6月15日(土)~22日(金)
ゲスト:趙博(チョウバク)さん(歌手)
パーソナリティ:西谷文和(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
西谷:
小出さん、今日は「プルサーマル計画とMOX燃料」
この特集をしたいと思うんですが、
関西電力が高浜原発3号機で導入されているプルサーマル向けの、いわゆるMOX燃料。
プルトニウム、ウラン混合産物ですね。
これをフランスから海上輸送していてですね、6月下旬に日本に到着すると発表しているんですよ。
小出:そうですね。
西谷:
もしかするとこの放送がオンエアされている時にはもう、日本に着いているかもしれない訳ですが、
ここで、リスナーから質問がきています。
48歳女性からの質問ですが、
「現在日本に運ばれているMOX燃料や、プルサーマル計画についてもう一度詳しく教えて下さい」
ということなんですが、先生どうでしょうか?これ。
小出:
プルサーマルという名前ですけれども、
「プル」というのはプルトニウムの事です。
「サーマル」というのはいわゆる熱という日本語の
西谷:サーマルは熱ですね。
小出:はい。
つまり、「プルトニウムを現在使っている普通の原子力発電所で燃やしてしまおう」という計画の事です。
西谷:
普通の原子炉は「ウラン」を燃やすという事で設計されているけれど、
その普通の原子炉で、プルトニウムを混ぜたもの、つまりMOX燃料を燃やすと
小出:もちろん危険は増加します。
西谷:
ただでさえ危険な原子炉に、さらに危険度をUPさせて、無理やりプルサーマルをするというのは
やはり、プルトニウムを燃やさないと都合が悪いという事でしょうか?
小出:そうです。
プルトニウムというのは原爆の材料に使った物質なのです。
それをこの日本という国では「原子炉で燃やす」という事をずーっと言ってきました。
ただし、その原子炉と言っても普通の原子力発電所でプルトニウムを燃やすというのは
今聞いていただいたように危険な事なのであって、
日本というこの国が言ってきたのは、高速増殖炉という、
西谷:もんじゅですね。
小出:そうです。
日本ではもんじゅという、実験炉という小ちゃなものをつくろうとして、
未だに動いてもいないのですけれども、
そういう形の原子炉で燃やすための燃料だとして、イギリスとフランスに頼んで、
日本の原子力発電所で生まれたプルトニウムを分離して取り出してもらってきたのです。
しかしもんじゅはもちろん動いていませんし、
他の高速増殖炉も一台もありませんので、
「分離してしまったプルトニウムを燃やす手段が日本にはない」のです。
それなのにプルトニウムは原爆の材料な訳ですから、
日本というこの国が使い道の無いプルトニウムを取り出してしまって懐に入れてしまったという
状態になっているのです。
西谷:
という事は国際社会に「これはあなたのところで核兵器をつくるつもりなのか」と疑われないためにも、
燃やさざるを得ないという事ですか?
小出:そうです。
リスナーのみなさんはこの日本という国が、
いわゆる世界のほかの国々からどのようにみられているか?という事を、
どうお考えになっているのかな?と私は思いますけれども、
世界の国々は、日本というこの国がそんなに立派な国だとは思っていないのですね。
何十年か前までアジアの国々に侵略をして、沢山の人々に苦難を味あわせた国だった訳だし、
今現在も「平和利用だ」と言いながら、
原爆材料になるプルトニウムを着々と懐に入れてきて、
西谷:40トンぐらいあるとか。
小出:はい、現在45トンあって、
西谷:45トンもある
小出:はい。
それで長崎の原爆をつくろうとすれば4000発も出来てしまうと言うほどのプルトニウム
西谷:4000発ですか
小出:はい。すでに懐に入れてしまっているんです。
西谷:
だから自民党の石破さんがね、
「プルトニウムを持っているだけで潜在的な抑止力になる」とおっしゃってましたね。
小出:そうです、はい。
西谷:いみじくも。
小出:
石破さんもそうですし、自民党というその政党が日本の原子力をずっと進めてきたわけですけれども、
一番初めから、平和利用と標榜しながら「実はプルトニウムを持ちたかった」というのが
彼らの狙いだったのです。
そんな事を、でも、世界の国々が許してくれる訳はないわけで、
「日本の国は使い道のないプルトニウムは持たない」という国際公約をさせられたのです。
西谷:そういうことは無理矢理でもプルサーマルをやっておかなきゃいけないという…。
小出:そうです。
もうどうにもならなくなって、危険なことは承知だし、
やればやるだけ経済的に損をするということも分かっているのですが、
もうどうしようもなくなって燃やすしかない。
危険を承知で普通の原子力発電所で燃やしてしまおうという所に追い込まれてしまったのです。
西谷:
このMOX燃料を、本来なら日本で作れると僕は思っていたんですけれども、
フランス、イギリスへ頼んでいるという事は、日本の技術では作れないという事ですか?
小出:もちろんそうです。
もともと、使用済みの燃料というのが原子力発電所から出てくるのですけれども、
その使用済みの燃料の中からプルトニウムを取り出すという作業を私たちは再処理と呼んでいます。
その仕事というのは原爆材料になるプルトニウムを取り出すために、
「どうしてもやらざるを得なかった」から開発された技術です。
核保有国はどうしてもみな再処理という事をやったのですが、
再処理工場の周辺では、猛烈な環境汚染をどこの国でも起こしています。
大変危険な技術で、日本という国でも六ケ所村でやろうといましているのですけれども、
日本というこの国の手では負えないという事で、なかなか動く事が出来ないのが現在なのです。
西谷:
もうひとつ、使用済み核燃料棒が、非常に処理がね、ガラス固化体にしてとかという事なんですけど、
普通の原子炉から出てくる使用済み核燃料棒と、
プルサーマルから出てくる使用済み核燃料棒はやっぱり違うんですか?
小出:ちがいます。
西谷:やっぱり、厄介ですか?
小出:
一度プルサーマルという事をやってプルトニウムの燃料を燃やしてしまいますと、
私たちが超ウラン元素と呼んでいる特別に寿命の長い放射性物質が
西谷:超ウラン元素
小出:
超ウラン元素というのですが、ウランを超えるというような。
ウランというのは自然界にある一番重たい元素なんですけれども、
西谷:プルトニウムは超ウランですよね?
小出:
そうです。
プルトニウムも超ウランですし、プルトニウムよりももっと重たいキューリウムとか、
そういうような原子核が沢山その使用済み燃料の中に溜まってきてしまうのです。
それの取り扱いは大変厄介ですし、寿命が長いので、
再処理をするにしても、ガラス固化にするにしても、
今までやってきたような時間の長さでは到底できないで、
何十年も、まずは原子力発電所の中で冷やしておかなければならない。
西谷:またこれ、子々孫々までツケを後回しにするという事ですね。
小出:
そうです。
日本にある、あるというか今作ろうとしている六カ所の工場では、
プルサーマルの燃料を再処理する事すらができませんので、
「どうしていいのか全く分からないもの」をまた生み出してしまうという事になります。
西谷:
先生、すみません、聞いていたらもう頭が痛くなってきて、どうしたら良いのか分からないという。
その、「どうしたらいいのか分からない」っていう事が分かりました。
お時間になりました。
この問題はこれからも追及していきたいと思います。
小出先生どうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
プルサーマル燃料 高浜原発へ
NHK 6月18日 5時20分

使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料を一般の原発で燃やす「プルサーマル」で、
関西電力が高浜原子力発電所で使用する予定の燃料が、今月27日にも福井県に到着する見通しになりました。

「プルサーマル」は関西電力高浜原発や九州電力玄海原発など国内4つの原発で実施されてきましたが、
おととしの原発事故の影響で、国の核燃料サイクル政策が不透明になり、
輸送の警備態勢も十分確保できないなどとして、
使用するMOX燃料と呼ばれる燃料の海外からの輸送は中断されていました。

関西電力では、震災から2年がたって受け入れ態勢が整ったことなどから、
ことし4月、フランスから日本に向けてMOX燃料を積んだ専用の輸送船2隻を出港させ、
関係者によりますと、今月27日にも高浜原発に到着する見通しだということです。

海外で製造されたMOX燃料が日本に到着するのは、原発事故のあと、初めてです。

関西電力の八木誠社長は、高浜原発3号機と4号機の運転再開について、
来月の原発の新たな規制基準の施行後に「MOX燃料を考慮した申請をしたい」と述べており、
国の原子力規制委員会がどう審査するのか注目されます。
第23回放送 南海トラフ地震〜ふたつの大震災から学ぶこと
放送日:6月15日(土)~22日(金)
ゲスト:渡辺実さん(防災・危機管理ジャーナリスト)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
小出裕章ジャーナル
石井:
今日のゲストは防災・危機管理ジャーナリスト渡辺実さんです、よろしくお願いします。
今日は、「地震」をテーマにお送りしているんですけれども、
地震によって原発に多大な影響損害が与えられるという事は、
今回の福島原発をみても、私たちは十分理解をしている筈なんですが、
活断層の上に原発がいくつもありますよね。
小出:えぇ・・はい、そうですね。
石井:どうしてこんなことになっちゃったんでしょうか?
小出:
えっと、日本中活断層が無いところはないし、
もともと活断層を避けて原発を建てるという事自身が不可能だからです。
石井:活断層を避けて原発を建てることは不可能。
小出:はい。
石井:
活断層の研究が進んでいなかった、
あるいは、活断層を無視して原発を建てた。
小出:
もともと活断層の研究が無い昔から日本で原子力発電所を建て始めた。
1966年には東海1号炉をつくってしまいましたし、
浜岡だって70年代初めにはもう動きだしている訳で、
その頃はまだまだ活断層というものに関しての研究はほとんどない状態で
日本の原子力発電所は出来てきたのです。
石井:
んーー・・・、なるほど、それからもうひとつね、小出さん、
福島第一原子力発電所の事故について、東京電力側は「あれは津波である」と。
「大きな被害は津波によって起きているんだ」と主張をされています。
小出さんはそうではありませんよね?
小出:
えーっと、津波というものが大きな要因になったという事自身は疑いのない事ですけれども、
津波の他にも地震そのものによって、
原子力発電所の構造物が破壊された可能性が強いと私は思っています。
石井:
その場合に時に問題なのは、
原子力発電所はつまり何重もの安全装置があるというふうに言われてきましたけれども、
地震によって、大きな地震によって地表そのものがずれると、
あの、僕も柏崎の原子力発電所のかなり中まで入った事があるんですが、
山のようなパイプが張り巡らされていて、
小出:そうです。
石井:これは絶対外れますよね?
小出:
これまではですね、
地震が起きた時に、建屋がどのように振動して、
その中にある配管などがどのように振動して壊れるのか、壊れないのか、という、
それだけを審査してきたのですが、
たとえば活断層が原子炉建屋の直下にあって、
そこで縦にずれてしまう、あるいは横でもいいですけど、ずれてしまうという事になると、
振動ではなくて建屋自身が変形してしまう訳ですね。
そうなった時に原子力発電所というのは配管のお化けのような機械なのですけれども、
「配管は多分もうもたない」と考えるのが当り前だろうと思います。
これまではそのようなことを無視してきてしまったということなのです。
石井:
今日実は前半でですね、南海トラフ地震について渡辺さんと話を聞いてきたんですけれども、
南海トラフ地震の被害想定の区域の中に、浜岡と伊方原発がありますよね。
小出:はい、そうです。
石井:この伊方原発もかなり危険ですか?
小出:
伊方原発というのはですね、行ってみていただければお分かり頂けると思うのですが、
愛媛県の佐多岬というかなり急峻な岬があるのですが、
その急峻な岬の崖っぷちに建っているのですね。
で、伊方原発の海側は、かなり深い海がストッ!と落ちていまして、
そこに溝のような地層が存在しているという事が分かっていて、
そこが中央構造線という、日本最大の活断層だというふうに考えられています。
ですから南海トラフももちろん重要ですけれども、
日本最大の活断層の、まさにその横にあるという、そういう発電所ですので、
昔から私たちは心配してきています。
渡辺:番組の前半で南海トラフの、例の政府の被害想定のお話をしました。
小出:はい、ありがとうございます。
渡辺:
政府は、これは最悪のシナリオで、32万人の死者。220兆。
これが最大の最悪の被害だと。
「しかし原発の被害が入ってないんだよ」っていう話をしました。
担当者とこの議論を、担当者というのは
被害想定をした政府の担当者とこの議論をすると、
まだ福島の被害のメカニズムが、どうしてこんな大きな被害が出たのかという事が分からないから、
被害想定の前提としては入れられない。
「従って被害想定が出せない」という回答なんですね。
小出:そうですか、はい。
渡辺:
これはとても大きな大事な問題で、
にもかかわらず、「最悪最大」という言葉を政府が使って、
マスコミがその数字に飛びついて、
もうそれですら完全に、たとえば地方自治体など歩くと、
または僕の事務所に相談に来る自治体の職員の方は、
「もうこんな大きな被害では何の対策も出来ない、お手上げだ」ということを
多くの方がおっしゃるんですね。
しかし僕はいつも言うんですが、
「実はそれは最悪ではないよ」
「ここにプラス、原発震災、原発災害という物が加わるんだよ」っていう事をお話をしてるんですが、
なぜ今、
たとえば途中段階でも、その要素を外してしまうと国民の目からそれが外れてしまうんですよね。
だから、正確な数字ではないけれども、算定的だという条件付きで、
原発被害をこの被害総計の中に入れる事は、先生は不可能だと思ってらっしゃいます?
小出:
もちろん不可能ではありませんけれども、
いま現在進行中の福島原発の事故で、一体いくらの被害が出るかという事でさえ、
全く分からないままなんですね。
多分私は福島の事故を本当にその日本の法令にのっとって補償する、賠償するというような事をすれば、
何100兆円あっても足りないと思っていますけれども、
その推計自身がいまだに出来ていないという段階なのですから、
仮に南海トラフ地震が起きた時にどれ位の被害が起きるのかという事を推定するという事は、
もうほとんど不可能ではないかと思います。
防災というのはもともと、最悪の事態、
最悪の事態というものを想定しながら行かなければいけないはずで、
原発の事を全く初めから無視してしまうなんていう事は
防災の原則から著しく逸脱してしまっていると思いますし、
220兆円だったでしょうか?
なんか、はじき出した数字もですね、
要するに「最大でもなければ、最悪でもない」という事を
まず初めに言っておかなければいけない事だと思います。
渡辺:
その、次の南海トラフ。
これは確実にきますから、
そこではもう、
「議論にならないような状況をいま、政府は作りだしている」ようにしか僕には思えないんです。
小出:はい、私もまったく同感です。
石井:
とりあえず、日本には今「沢山の断層がある」と。
「断層の上に原発はあるんだ」と。
当時は断層の研究というのはほとんど進んでいなくて、
進んでいないうちに
「どんどん原発つくっちゃえ」という形でつくられてきた
というお話があったという理解でよろしいですね?
小出:結構です。
第22回放送 ふたつの震災が残したもの
放送日:6月8日(土)~15日(金)
ゲスト:西岡研介さん(ジャーナリスト)
パーソナリティ:今西憲之(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
今西:
せんだてから大きなニュースとして伝えられているなかで、
やはり福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅで、
重要な機器に点検漏れが1万点も見つかったと言うニュースが伝えられていますけれども、
1万点のそういう機器、部品なんかが、
点検時期が過ぎていたにもかかわらずそのまま放置されていたということが、
原子力規制委員会の調査で分かったという事なんですが、
1万点も期限が切れてたという事で、
こんなものを放っておいて、もし運転再開したらエライ事になるなと思うんですが、
小出さん、その辺いかがお感じになりましたでしょうか?
小出:
もちろん私もそう思います。
ただし、なにか日本原子力開発機構だけがサボっていたというふうに報道されているようですが、
いったいこれまで国の規制機関は何をしていたのか?と、
私はむしろそちら側が不安です。
今西:
なるほど。
原発事故が起こって、国民の関心が急に原発に向いてきた。
それで慌ててきちんと規制する側も見始めた。
そんなふうに捉われかねないですよね。
小出:
もちろんそうですね。
ようするに「きちんとこれまで規制も何もしてこなかった」ということなんですね。
何か国の方は偉そうに「原子力研究開発機構が悪い」というふうに言っていますけれども、
悪いのは国も同罪だと私は思います。
今西:
なるほど。
そういう中でですね、監督官庁は文部科学省だそうなのですが、
その文部科学省を毎年日本原子力研究開発機構、昔は「動燃」と呼んだところなんですが、
「安全確保の徹底」ですとか、「もんじゅの研究開発について」という評価基準がいろいろとあって、
その中で「A評価、順調であるという評価をずっと下していた」という報道もあるんですが、
なんかもう小出さん、マンガみたいな話なんですけれどもね。
小出:
はい、本当に漫画のような話ですね。
もともと、いま今西さんがおっしゃってくれたように動燃という組織ですけれども、
正式名称で言えば、"動力炉核燃料開発事業団"と言いました。
新しい形の原子力発電所をつくったり、
あるいは核燃料をどうやって調達するかという事を考える研究所の筈だったのですけれども、
今西:一種の国営の研究所みたいなものですよね?実質的に。
小出:
そうです。
もともとは科学技術庁傘下でしたし、今は文部科学省の傘下にあるのですが、
言ってみれば国営のものです。
で、その動力炉核燃料開発事業団が手がけたいわゆる発電用の原子炉というのは、
"ふげん"という原子炉と"もんじゅ"という原子炉の二つなのですが、
"ふげん"はもう、とうの昔に「こんなものは役に立たない」と言って廃炉になって無くしてしまいましたし、
"もんじゅ"はつくってはみたけれども、
未だに1kwhの発電も出来ないまま1兆円を超えるお金を捨ててしまったという、
本当にどうしようもないものなのです。
それで、核燃料に関しても、人形峠でウラン鉱山を掘ってみたりしたわけですが、
そこも結局何の役にも立た無いまま、
「放射能のゴミを周辺にまき散らせて知らん顔している」というそういう組織ですし、
海外でウラン鉱石を調達しようとしてきたのですけれども、
全くそれも出来ないという。
…想像を絶するほどダメな組織なのであって、
A評価なんていうものはどれを考えてもあり得ない組織です。
今西:
おまけにあれですよね、
ナトリウム事故という重大な事故を起こし、
その上その事故の詳細を隠し、
地元の方々に大変迷惑をかけ、恐怖を与えたというとんでもない組織ですもんね。
小出:そうです。
今西:
そうですよね。
それでまた同じ福井県で、今度は日本原子力発電。
よく"日本原電"と言われる会社があります。
ま、電力会社、関西電力だとか中部電力が株主になっている発電専門の会社ですよね。
小出:そうです。
今西:
その日本原電が保有する
「敦賀原発の2号機の下にある断層が活断層だった」という調査報告書がこのほどまとまり、
敦賀原発2号機が廃炉に迫られるのではないかという報道も大きくなされてます。
活断層、地震の多い日本において、
おまけに「活断層の上に原発があるなんてとんでもないことや」と思うんですけれど、
こんなことがあって良いんでしょうか?
小出:
「あって良い」もなにも、実際にあるのですね。
日本というのはみなさん御承知の通り世界一の地震国な訳です。
なぜかといえば、大陸をつくっているプレートという大きな硬い岩盤があるのですが、
その岩盤が4枚も日本列島周辺ではこすれ合って動きあっているという、
地球上ではとても特異な場所であって、
地震が起きない方がむしろ不思議だし、岩盤が割れて断層が走るという事など当たり前の事なのです。
そんな所に原子力発電所をつくってしまうという事、その事自身が間違いなのであって、
日本という国にすでに58基もの原子力発電所をつくってしまった、
そしてそれら全てがいわゆる断層とは無縁ではいられないという、
そういう場所なのです。
調べてみればあちこちに活断層というものが見つかってくる訳で、
活断層と無縁の原子力発電所なんて日本には無いと私は思います。
今西:
それで小出さんね、報道では「2号機だけが廃炉」と書かれているんですが、
ようするに断層というのは、そこがもしずれてしまったら
その範囲全体で大きな地震になったり、多大なる被害が出てしまう訳ですよね。
小出:そうです。
今西:
それを考えると、敦賀原発全体も含めですね、
福井県には沢山原発があるのですが、そこも見直さなければならないと、
私はそう考えるのですが、
小出:
はい、私もそう思います。
ただし、断層が動いて地震というものが起きるのですけれども、
原子力発電所はこれまで「地震が起きた時の揺れに対しては耐震設計を施した」と言ってきたのです。
ただし、もし原子炉の真下に断層があって、それが動いてしまうような事になると、
今度は"揺れ"ではないんですね。
変位と私たちが呼んでいますけれども、土地地震がずれてしまうわけ、
高さ方向にずれたり水平方向にずれたりしてしまう訳で、それは揺れではなくてもう直接的に建屋あるいは機器が破壊されてしまうということで、
そういうものに対してはいかなる計算もできませんので、
活断層の真上にはとにかく造ってはいけないという事になってきたのです。
敦賀2号機の場合にはまさに活断層の真上に原子炉が乗ってしまっているという事が、
最近になって分かったと言っているわけで、
もちろんそんなものを動かしてはいけません。
今西:
私も大阪に住む身として、そう遠くない福井県にそういう原発がある。
これが不安でならないのですけれども、今どうすればいいんでしょうか?
小出:
もちろん止めればいいのです。
ただし止めたところでこれまでに作ってしまいました使用済みの燃料、
いわゆる核分裂生成物を沢山含んだ使用済み燃料そのものが消えてくれるわけではありませんので、
まずは止める。
そして止めた後にこれまでに作ってしまった毒物を何とか周辺にまき散らさないように、
今後長い間苦労を重ねなければいけないという事になっています。
今西:
なるほど。
それで敦賀で日本原電のですね、敦賀原発と言うと、
関西電力がここから充電している割合も結構多いのですが、
ラジオネーム白クマさんという方から質問がきていまして、
「敦賀原発がもし止まってしまうと今年の夏の電力需要が大丈夫なのか?」
と心配する声があるのですけれど、
それについて小出先生いかがでしょうか?
小出:
全く大丈夫です。
日本には水力発電所と火力発電所がすでに膨大にありますので、
原子力発電所の全てを即刻停止させたところで、
電力の供給に支障が出ることはいついかなる時でもありません。
昨年「大飯の原子力発電所を動かさないと停電になってしまうぞ」と
国と電力会社が脅かしをかけてきまして、
多くの方が何か「そうだ」と思ってしまったようなのですが、
そんなことはもともと無いのです。
大飯の原発なんか動かさなくても去年も十分に火力発電所は余っていましたし、
今年も原子力発電所の全てを止めたとしても何の問題もありません。
今西:
なるほどなるほど、わかりました。
小出さん、今日もいろいろありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ラジオフォーラム
第21回放送 憲法について考える
放送日:6月1日(土)~7日(金)
ゲスト:石坂啓さん(漫画家)
パーソナリティ:湯浅誠(社会活動家)
小出裕章ジャーナル
湯浅:
基礎知識編という事で、
今日は「放射能のゴミって何ですか?」っていう事でちょっとお伺いしたいんですけれども、
放射能のゴミと一口で言ってもそれはいろんな種類のものがあって、
それがどこから出るのか?というのもそれぞれの部署というか箇所みたいなのがあって、
報道なんかでも「高レベルだ」「低レベルだ」といろいろ言われているんですけど、
それがどんなものがあって、どんな問題があるのかというのを改めて教えていただきたいと思うんですけど、
まず、いわゆるその「放射性廃棄物」というのはどんなものなのですか?
小出:
いま湯浅さんがおっしゃって下さったように、多種多様なゴミが出てきます。
で、一番問題なのは、私たちが電気が欲しいとして原子力発電所を動かしてしまう訳ですが、
そうするとウランを核分裂させる。
そうなると核分裂生成物という放射性物質が大量に出てきてしまいます。
もともとウランが持っていた放射能の10億倍にも放射能が膨れ上がってしまう。
湯浅:10億倍!
小出:
はい。ということになります。
それは基本的には使用済み燃料というものの中に残ってくるのですが、
原子力発電所も機械ですので、様々な形であちこちから漏れてくる訳で、
それが全て放射能のゴミとして日常的にも出てくる訳ですし、
最後には今聞いていただいた使用済みの核燃料というものが、
本当にどうしたらいいか分からない放射能のゴミとして残ってしまうというものです。
湯浅:固体もあれば液体もあるという事なんだと思いますけど。
小出:そうです。
湯浅:
ある意味では、今回の汚染水っていう奴も、放射能のゴミという事になると思うんですけれども、
今日のゲストの石坂さんが、ちょっとそれについてぜひ小出さんに伺いたいっていうことがあって、
石坂:
私はですね、やっぱり福島で汚染水を、もう海に流すのもやむなしで、
漁連の関係の方達にもですね、了解を得ることにするという事の内容だったんですけれども、
もうこれはやはり、致し方ないというか、他に選択がなかった状況なんでしょうか?
小出:
えーー、難しいご質問です。
私は事故が起きた直後から、原子炉建屋の周辺に深い遮水壁を張り巡らせて、
溶けてしまった原子炉と地下水などが接触しないようにしなければいけないと発言をし続けてきたのですが、
東京電力も国もその手段を一切取らないまま、
汚れてしまっている原子炉建屋と地下水が、
もう、渾然一体となってしまっている状態になっているのです。
ですからどんどん汚染水が膨れ上がってしまって、
おそらく今の状態でいけば、本当に近い将来に、汚染水を海へ流す以外には無くなると私は思います。
こうなってしまうと、多分それしか手の打ちようがないと思うのですが、
それでも、できる事であれば今からでも遮水壁というものをつくって、汚染水を減らすべきだと思います。
湯浅:
小出さん、私も覚えているんですが、
原発事故のあった年に、かなり早い時期でしたよね、4月とか、
小出:はい、5月から私はこの発言をしています。
湯浅:
はい、おっしゃっていましたね。
あれはちょっとその、地価のイメージというのが私らみたいな素人にはいまいちイメージできないんですけど、
その、遮水壁というのはかなり分厚いコンクリートの板を、
ダーン、ダーンと、囲むように入れるべきだっていうお話だったんですよね?
小出:
そうです。
原子炉建屋の周囲を囲むように、地下に10m、20mぐらいのコンクリートの壁を張り巡らせて、
周辺の地下水と遮断するという事を私は提案しました。
石坂:
でも、それがあるだけでもイメージ的、絵的なイメージなんですけれども、
ずいぶん違う気がしますよね。
小出:
はい。
多分、当時それをやっていれば今のように困った事態には陥らないで済んだと思います。
石坂:
私たちはいろいろと不安を口にしたりですね、不満を言ったりすることができるんですけれども、
もう、実際にそこで生活されている漁連の方たちなんて、もう、本当にもう、
何でしょうか、抵抗の仕様が無いというか、悔しい思いをされていると思うんですけど、
小出:
はい。
当然そうだろうと思います。
漁を自粛しなければいけないという形に追い込まれてすでに2年経ってしまっているわけで、
漁民の方から漁を奪ってしまうという事は、
要するにもう、人間として生きていられないというそういう状態になってしまっている筈ですので、
大変なことだと思いますし、
陸の方で言えば農民の人達は土地そのものを奪われて、追い出されてしまっているという状況なわけですから、
もっともっとみなさんこの現実というのを知ってほしいと思います。
湯浅:
それで小出さんはさっき「遮水壁は今からでも」とおっしゃったけど、
いまはもう混ざっちゃっている状態で、それでもまぁ入れることは、
要するにこれ以上新たに入れた水が漏れださないという事で意味があるだろうと、
小出:
そうですね。
いまはもう毎日400トンぐらいずつ増えてきているのですけれども、
それを少しでも減らして、持ちこたえられる期間を先に延ばす。
そしてその間に何がしかの打つ手を探すという位の事はできるだろうと思います。
湯浅:
あの、最後にもう1個聞いてもいいですかね?
最終処分が出来ないまま、日本も核燃料サイクルが挫折していますけど、
そういう中で「トイレのないマンション」と言われ、
トイレのないマンションを輸出しようとしたら「冗談じゃない」って、
普通は、ま、そういう話になりますよね?
小出:そうですね。
湯浅:
だから住宅だとそうなるんだけど、原発なら受け入れましょうという、
ま、やって下さいとなりかねる国が現実にあるというのは、
その国の政府としてみると、
日本はそれでもどうしても、トイレのないマンションなんだけどやりたいっていうのは、
どこかでやっぱり核武装したいという気持ちがあるからだっていう話がありますよね。
小出:はい、私はそう思います。
湯浅:
他の、日本からの原発輸出を受け入れると言っている国も「あわよくば」という、そういう、
いわば色気があるから「トイレのないマンションだけど受け入れましょう」ってなるんでしょうかね?
小出:日本もそうだった訳ですし、世界はどの国もそうだと思います。
石坂:
あの、本当に、日本の人達にもう一回、
手塚治虫の「火の鳥」を読んでいただきたいなと思いました。
小出:はい、私もそう思います。
湯浅:ありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ーーー
<やっと遮水壁>
でも、この遮水壁は小出先生がおっしゃっているのとちょっと違う?
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第20回放送 在特会と差別排外扇動活動(ヘイト活動)の実態
放送日:5月25日(土)~31日(金)
ゲスト:安田浩一さん(ジャーナリスト)
パーソナリティ:石丸次郎(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
石丸:ゴールデンウイークは小出さん、いかがお過ごしだったんでしょうか?
小出:
はい、前半は原子力実験所の宿直というのにあたっていましたし、
後半は北海道の東部の3カ所で集会を開いていただいて、そちらを駆け回ってきました。
石丸:じゃあ、ずっとお仕事だったんですね。
小出:そうですね。
石丸:
そのゴールでウイーク中、安倍総理もお仕事されていました。
ロシア中東を外遊されまして、
特に中東では原発をはじめとした新幹線の公共交通システムとか、
医療分野等のトップセールスをされていました。
経団連の米倉さんとかを引き連れてされていました。
やはり注目されるのはこの原発の輸出を、えらく安倍さんは一生懸命やられたという事なんですけれども、
小出:だそうですね。
石丸:
この中で安倍さんは次のようにコメントしています。
「過酷な事故がある中で高い安全基準を持っている日本への期待は大きい」
小出:・・・
石丸:「期待にこたえていくべきだ」
小出:はい。
石丸:これはどう思われますか?
小出:全く事実に基づかないあきれた話です。
石丸:あきれるというのは、具体的におっしゃっていただけますか?
小出:
今現在福島第一原子力発電所の事故は進行中で、
その事故をどうやって収束させていいのかそれすらも分からないまま、
沢山の労働者を被ばくし続けていますし、
放射能が環境に流出することを止める事も出来ないという現実が目の前にあるのです。
日本の原子力技術というものが全く当てにならないという事が目の前に示されているのですから、
そうである時に「高い安全基準を持っている」等という事がどうしたら口をついて出てくるのか、
私にはさっぱりわかりません。
石丸:
安全基準、高い安全基準。
これは、沢山我々も聞きましたね。
日本の原発は
「チェルノブイリ、スリーマイルで事故があったけど、日本の原発は安全なんだ」と。
ところが事故が起こりましたよね。
小出:そうですね。
石丸:
これは法的にはともかくとしても、やっぱり倫理的に非常に大きな問題があると思うんですけれども。
いかがでしょうか?
小出:
もちろんです。
これまで日本では58基の原子力発電所をつくってきました。
その全ての原子力発電所は完全に安全ですと、
安全の確認をしましたとお墨付きを自民党の政権が与えて、
その原子力発電所でも沢山の事故が起こってきまして、
「本当に大きな破局的な事故が起きないで欲しい」と私は願い続けてきましたけれども、
でも、本当に悲惨な事故が2011年3月11日に起きてしまって、
先程聞いていただいたようにその収束の方策すら分からないという状態なのです。
「日本の原子力発電所は安全だ」などという事は、誰が見てもそう思えないはずだと私は思います。
石丸:
当然、お金儲けと。
企業ですから利益追求のために原子力発電を輸出したいということなんですけれども、
これは裏返すと日本で新規の開発、あるいは建設というのが、
もう非常に困難になったことの裏返しだという事でいいですよね。
小出:そうです。
自民党政権はすでにつくって、現在止まっている原子力発電所を再稼働させると言っていますし、
新たな原子力発電所もつくるといまだに言っているのですけれども、
でも本当にそれをやるというのは自民党にとってもかなり難しい事だと思いますし、
国内で原子力発電所をつくれないなら海外にとにかく売りつけるしかない
という所に日本の原子力産業が追い込まれているのです。
石丸:
裏返すと、それでも、「そういう過酷な事故が日本であっても、それでも原発が欲しい国々がある」と。
建てたいという国々があるという現実があるわけですけれども、
これはどういうふうに解釈したらいいんでしょうか?
小出:
日本の場合もそうですけれども、一方では金儲けをしたいという大きな企業があったわけですし、
もうひとつの原子力を求めた基本的な理由というのは、核兵器を持ちたいというその動機からきているのです。
それはもう、日本が原子力に手を染めた当時と今で、全く変わっていませんし、
世界中の国々が「何とか核兵器を持てるような力をつけておきたい」とずっと思ってきている訳ですし、
日本がそうであったように他の国も、とくに中東諸国などはそうだと思います。
石丸:
電力という事以外に、ま、公言はしないとしても
核兵器をつくる能力を確保しておきたいという動機が各国にあると。
小出:
もう日本ではちゃんと公言をしていますというか、外務省の文書にもきちっとその事は載っていますし、
政府の要人たちがたびたびその事を発言してきましたので、
もう、いわば公言されていると思っていただいて構わないと思います。
石丸:
なるほど。
で、一方で国際的な原発関連メーカー開発会社にとっては
原発をつくるという事が、コストが非常にこれはかかるので、これは商売にならないという動きもあります。
昨年10月にはイギリスの原子力関連会社セントリカ社が、
福島事故後の新しい安全対策などでコストがかかり、もはや投資は適切ではないと言って撤退をしております。
ところが今回日立が買収をするという事に動いた訳ですけれども、
日本の原発関連会社にとってコストの事を考えると、まだ、
ビジネス的にはまだまだ美味しい面があるんでしょうか?
小出:
そうです。
日本というのは電力会社は独占企業ですので
「どんなに高い投資も必ず電気料金として回収できる」という法的なしくみがすでにあるのですね。
ですから原子力発電所がどんなに高かろうと、
むしろ逆に言うなら「高ければ高いほど電力会社が儲かる」という
そういう仕組みのもとでここまできてしまっています。
そういう法律を一切、まずは撤去しない限りは、
「電力会社が原子力をやりたい」という動機が残ってしまいますし、
原子力産業もその中で利益を得たいと思い続けているとおもいます。
石丸:
ですから日本の仕組みの中でも、原発開発を現在の仕組みの中で続けるかぎり、
これは消費者にコストが転嫁できるというそういう仕組み
小出:そうです。電気料金を高くすればいいだけなんですね。
石丸:
先程ちょっとお話に出ました、各国が電気だけではなくて核兵器を保有するという事を、
将来の希望と言いますか念頭において原発輸入をもくろんでいるのではないかという事ですけれども、
今、ベトナム、あるいはヨルダンなんかもですね、あるいはトルコ。
これ、中東の国で言うと当然紛争の火種をずっと抱えている地域ですよね。
こういうところに原発をつくるという事はなおさら危険度が増すという事に繋がると思うんですけれども、
たとえばトルコなんかはですね、
トルコに原発をつくって、トルコが核兵器を持つという事は念頭においてやっているという事は、
政治的な意味はともかくとしてですね、
それは見方としてトルコの核開発に日本の企業が参画するというような見方をしてもかまわないんでしょうか?
小出:
もちろんです。
どの国でもそうですけれども、
原子力開発をするという事は、技術的に言うなら核開発をするという事とまったく同じことですので、
なにか日本では原子力発電と言うと平和利用とイメージされる方が多いんですけれども、
そんなことは全くなくて、
原子力開発をやってしまうとそれはそのまま核開発に繋がってしまうというものが技術の宿命なのです。
ですから日本があたかも平和利用だとか言いながら、原子力技術を輸出するのであれば、
それは核技術を輸出するというのとまったく同じ事になります。
石丸:
はい、もうちょっとお聞きしたいところですがお時間がきました。
どうも小出さんありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ーーー
そんな安倍くんはサウジへ原発を売り込み行商中<日本人として恥ずかしい>
まず、サウジアラビアで原発売り込み
「日本は再生可能エネルギーや世界一安全な原子力発電の技術を提供できる」と強調
「あなた方はこれからも原子力発電所を日本国内に建設するんですか?」
トルコシノップ市長[トルコへ原発輸出]5/3報道ステーション(内容書き出し)
そして福島事故後では初めてトルコへ「原発輸出」首脳会談で合意
第19回放送
放送日:5月18日(土)~24日(金)
ゲスト:纐纈(はなぶさ)あやさん(映画監督)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
放射能は何故怖いのか
小出裕章ジャーナル
石井:
今日は映画監督、「祝の島(ほうりのしま)」、
山口の上関原発に反対する島民のみなさんを描いたドキュメンタリー映画の纐纈さんと一緒にお話を伺います。
纐纈:よろしくお願いいたします、ご無沙汰いたしております。
小出:こんにちは、ご無沙汰しておりました。
石井:どこかでご一緒された事がおありになるそうですね。
小出:神戸の集会でご一緒させていただきました。
石井:
今日はですね、小出さん。
「放射能はなぜ怖いのか」についてお聞きしたいと思います。
まずですね、放射能というのを小出さんはどういうふうに説明していらっしゃいますか?
小出:
皆さん放射線というのは多分分かって下さると思います。
たとえば病院に行ったりするとエックス線撮影というのをうけますし、
学校でも年にいっぺん受けたり、入学の時に受けたりするわけですが、
そのエックス線というのは私たちが放射線と呼ぶものの一種です。
で、エックス線のほかにアルファ線とかガンマ線とかベータ線とかという、
放射線と呼ぶものがあるのですが、
放射能というのはその放射線を出す能力を意味する言葉です。
そして日本では、放射線を出す能力を持っているもの、つまり放射性物質を放射能と呼ぶ場合もよくあります。
石井:
そうすると
「放射能と放射線というのはまず違うよ」というところを前提として押さえて置かなければいけない。
小出:もちろんそうです。
石井:
私たちが本当に、「5年前には誰も知らなかった」とハッキリ言って良いと思いますが、
ベクレル、シーベルトという単位でですね、
これは放射線の値という理解でよろしいでしょうか?
小出:
ええっと、ベクレルというのは、放射能の強さの単位。
物には何でも単位がありますね、たとえば身長を測る時には1m何十cmと測るわけですし、
体重を測る場合には何十kgとか、どんなものにも単位があるわけですが、
放射能に関する単位がベクレル。
その放射能から放射線が飛び出してきて、人々が被ばくする時に、
その被ばくの量を測るのがシーベルトという単位です。
石井:なるほど。これはある種の「相関関係がある」という理解でよろしいんですか?
小出:
これもまぁなかなか難しいのですが、
たとえば電球を考えて下さい。
電球の明るさがありますね。
たとえば100ワットとか200ワットとか、
それが言ってみいれば放射能の強さに対応しています。
電気急が明るければ放射能の強さは強いし、暗い電球の場合は放射能の強さが弱いと思って下さい。
その電球のごく近くにいれば明るさを強く感じることができるわけですし、
その電球から遠く離れていってしまえば、明るさを感じないようになるわけですね。
ですから人がどこにいるかによって、明るさというのが変わってしまう訳で、
その人が感じる明るさというのがむしろ被ばくの単位であるシーベルトを意味しています。
ですから、同じ1ベクレルと言っても、危険の程度が違いますし、
その放射性物質にどれだけ近づいているかによって、人々が被ばくする量、
つまりシーベルトという事も違ってくるという事なのです。
石井:とすると、大変ベクレルの高いものの近くにいれば、シーベルトは当然高くなると。
小出:おっしゃる通りです。
石井:大変危険であると。
小出:
そうです。
ですから放射能から被ばくをしないようにと思えば、なによりもその放射能、つまり放射性物質ですけれども、
それから遠ざかるという事が一番大切なことになります。
石井:
いま小出さんがおっしゃられた「放射能が大変危険だ」という事なんですけれども、
なぜ危険で、どのように人体に影響があるというふうに
小出さんたち科学者の間では考えられているんでしょうか?
小出:
「被ばくがどれほど危険か」という事の情報というのは、
長い被ばくの歴史の中でだんだんわかってきたわけです。
特に広島・長崎の原爆で沢山の人が死んでしまったり、火傷を負ったりしたわけですけれども、
人間は大量に被ばくをしてしまうと死んでしまう訳ですね。
では大量というとどれだけなのか?というと、
8シーベルトという被ばくをすると、人間は100%死んでしまいます。
ではその8シーベルトという被ばくがどの程度のものか?という事ですけれども、
被ばくというのはもともと放射線から、人間なら人間がエネルギーを受けてしまうという事なのですが、
その放射線から受けたエネルギーで、人間の体温は8シーベルトという被ばくをしたとしても、
1000分の2度しか上がりません。
私はちょっとこの数日風邪気味なのですが、
たとえば体温が1度上がるというようなことはみなさんどなたでもあると思います。
でも人間は死なないんですねそんなことでは。
しかし、事放射線からエネルギーを与えられてしまう場合には
体温が1000分の2度上がるだけでも100%死んでしまうという、それほどのものなのです。
何故かというとですね、
放射線と私たちが呼んでいるもののエネルギーが、生き物を支えているエネルギー、
つまり水素や酸素や炭素がお互いに結びつけあって生き物というのは生きているのですけれども、
その結び付けているもののエネルギーに比べると、
「何十万倍も何百万倍も高い」というのが放射線のエネルギーなんです。
そんなものが生き物の身体の中に入ってきてしまいますと、
生き物が持っている遺伝情報なども含めてズタズタに切り裂かれてしまう、
そのため、わずか1000分の数度という位にしか体温が上がらなくても
生き物は生きていけないという事になてしまうのです。
石井:
大人の方より子どもの方の方が非常に被害を受けやすいというふうにも聞いていますが、
これはなぜでございますか?
小出:
えっと、石井さんと私は違う人間ですね。
わたしと纐纈さんも違う人間です。
それは私が持っている遺伝情報が石井さんとも纐纈さんとも違いますし、
全ての人で遺伝情報が違うから、なのですね。
そしてその遺伝情報というのは、私の一人の人間の細胞の中に遺伝情報というものが書き込まれていて、
それが細胞分裂という形で増えながら私なら私という体を支えているのですね。
ただ、もう私なんかは60歳を超えた人間ですから、細胞分裂をそんなに活発にしているものではありません。
ただし赤ん坊とか、5歳10歳15歳というような子どものころには、
細胞分裂をどんどん繰り返しながら、遺伝情報を正確に複製しながら生きていく訳です。
そういう時代に遺伝情報に傷を受けてしまいますと、
その傷ついた遺伝情報がどんどん増幅してしまうということで、
子どもの時の被ばくは大人に比べると圧倒的に影響が大きくなってしまうんです。
石井:
なるほどね、とするとやっぱり、
現在福島の原発の近くでですね、何らかの形で放射線の影響を受けている人達の身体にですね、
大変目に見えない影響が出ているという判断をせざるを得ないですよね。
小出:
そうです。
いま被ばくで傷ついた細胞が、大きくなっていくにしたがって
細胞分裂という形で増殖していくのですけれども、
それが何時の時点かで癌や白血病という病気になってあらわれてくる可能性もある訳ですし、
先程聞いていただいたように、
放射線のもっているエネルギーは、生命体を支えているエネルギーに比べて圧倒的に高いので、
多分、癌や白血病だけじゃなくて、さまざまな異常というものが出てくるのだろうと私は思います。
そういう中で子どもを含めて沢山の人が今現在も被ばくをしてしまっているわけで、
本当であれば逃げて欲しいのですけれども、なかなか逃げる事が出来ないままになっています。
そうであればせめて「子どもたちを少しでも被ばくから守る」という事が、私たち大人の責任だと思います。
石井:
そうですね、
大人が放射能や放射線の危険について伝えていく、ま、一助になればいいと思いますので、
初歩的な質問ばかりで申しわけないんですが、今しばらくお付き合いください。
今日はどうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
放送日:5月11日(土)~17日(金)
パーソナリティ:西谷文和(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
西谷:
小出先生、今日はですね、沖縄の特集という事でいろいろとお聞きしたい事がありまして、
まずズバリですね、日本の電力会社で沖縄電力だけ原発を持っていないんですよね、
これはやはり基地があるからですかね?
小出:
本当の思惑がどうかは私にはわかりませんけれども、
沖縄というところは皆さんご存じのとおり基地だらけになってしまっているわけで、
そういうところに原子力発電所を建てるという事は、事実上できないと思います。
西谷:裏を返せば米軍は危険だという事を知っていて、そういうものはそういうところには造らないんだと。
小出:
もちろんです。
原子力発電所が攻撃を受けた時にどんな被害が出るか?という事は、
米国の中では度々計算まで行われていて、
西谷:計算までですか?
小出:
はい。
「核兵器でやられるよりももっとひどい被害が出る」というような事まで計算している訳ですから、
基地のところに原子力発電所を建てるという事は、実質的にはあり得ないともいます。
西谷:
日本の電力会社って、発送電株式会社という戦時中はひとつにまとめられて、
で、戦後GHQがその電力会社を9つに分割して、東京電力や関電にしたわけですよね。
小出:そうです。
西谷:その時に沖縄は日本じゃないので、
小出:そうです。
西谷:これは絶対米軍というかアメリカの意向が働きますよね、そうすると。
小出:
もちろん働きますし、
西谷さんが考えておられるように基地がある所に原子力発電所は不適切だっていう事は、
当然米国としては思っていたはずですし、
米軍としてもそう思っていたし、今でも思っているはずですので、
沖縄に原子力発電所が建てられる事は無いと思います。
西谷:
あの、沖縄電力の方は、とは言え建てたいようで、
なんかこっそり揚水発電所なんかつくっているという話も聞きますが。
小出:
そうですか。
実際もし沖縄電力が原子力発電所を建ててしまうとですね、一番困るのはやはり沖縄電力だとおもいます。
というのは、原子力発電所で何か事故が起きると、
一斉に原子力発電所というのは日本中止まってしまったりするわけで、
沖縄でたとえば大きな原子力発電所を建ててそれが止まってしまうなら、
やはり電力供給が出来なくなってしまいますので、
やはり沖縄のような所では小規模分散型というのが一番、電力会社としても良いと思います。
西谷:結果的には沖縄電力は得をしているという事でしょうね
小出:ま、そうですね、はい。
西谷:実はですね、オスプレイというのが配備されて、良く落ちる飛行機で有名なんですけれどもね。
小出:そうですね。
西谷:
あれいろんな、オレンジルートとかで本土へも飛んでいくんですけど、
小出先生もね、四国の伊方原発、裁判等でかかわっておられるんですけれど、
その伊方から約1kmのところに1988年6月に米軍機が墜落した事故がおきまして、
あの…、飛行機が落ちたら壊れますよね?原発って。
小出:
私は壊れると思います。
特にですね、原子力発電所という構造物は、
一番外側には原子炉建屋があるし、それから格納容器というものがあるわけですけれども、
どんな構造物も天井の部分というのは、かなり薄いんです。
西谷:薄いんですか
小出:
壁はですね、コンクリートでもなんでも1m2mの厚さのコンクリートの壁をつくることができるんですが、
天井というのは何処でも薄いです。
というのは構造として持たないのです、分厚くしてしまうと。
西谷:重くなるから。
小出:
そうです。
ですから原子炉建屋の屋根なんていうものは、ま、言ってみればペラペラですので、
西谷:
怖いです、先生それ。
もしオスプレイが落ちたら
小出:
そうです。
横方向から突っ込んでくるものについては彼らも「大丈夫だ」という事を言っている訳ですけれども、
真上から落ちてくるようなものに関してはほとんど無防備だと言っていいと思います。
西谷:
あの、なんていうんでしょうね、
沖縄国際大学に落ちた事件があったでしょ
小出:はい、ありました。
西谷:
あれ、ちょっと、ちょっと話がずれますが、
あの時に米軍は防護服を着てきたんですよね。
小出:そうです。飛び込んできました。
西谷:
沖縄の人達は普通の服で見てたんですが、
先生、あれ、防護服を着てたのはなぜ?
小出:
あのヘリコプターにはですね、
プロペラのところにストロンチウム90という放射性物質を積んでいました。
西谷:えーー、そうなんですか
小出:
6枚のプロペラの羽根があったんですが、
それの一つ一つにストロンチウム90というかなり毒性のたかい放射性物質が積んであった
西谷:それって、確か骨に入ったら大変なことになるという、
小出:
そうです、はい。
それが火災で、ま、壊れて火災で蒸発してしまったりしているわけで、
米軍の方はもちろん放射性物質を積んでいるという事も知っていた訳ですから、
当初から防護服を着てきましたし、
放射能の測定器も持って現場に駆けつけてきました。
西谷:
沖縄の人はそれを知らずに、ま、やじうまみたいな形でね。
抗議もしていましたよね。
で、あの時ね、撮影も禁止だったんですよ。
小出:そうです、もう
西谷:だから非常に機密だったんですよね。
小出:
はい、現場はとにかくもう…、
日本というこの国の筈なんですけれども、米軍が現場を封鎖しました。
その外側を沖縄県警の警察官が米軍を守るような形で取り囲んで、
その周りに人々が、沖縄国際大学の関係者もいた訳ですけれども、
現場に近づくことすらが出来ないという、そういう状態でした。
西谷:
あの、先生、
戦争と原発が非常に繋がっているという事で、前回話をしましたが、
結局、米軍の情報というのは多々あってですね、
福島の事故でも米軍の軍艦は逃げたじゃないですか。
小出:そうです。
西谷:あれも先生、データを持っていたという事ですか?
小出:
日本ではですね、原子力発電所の事故が起きたら、
どちらの方向にどれだけ放射性物質が飛んでいくかという事を
計算するためのSPEEDIという計算コードがあったのです。
西谷:ありましたね。
小出:
確か120億円位投入したと思うんですけれども、
何十年かかけて開発したその計算コードがありまして、
実際にその計算コードは事故の直後から動いていたのです。
ただし、原子力発電所からどれ位の放射性物質が時々刻々出ているか?という事が分からなかったがために、
あまり正確な計算になりはしなかったのですけれども、
それでもずーーっと計算を続けていて、
何月何日何時の時点でどちらの方向が危ないというようなデータはちゃんと持っていたのです、日本の政府は。
ただしそれを「あまり正確じゃない」という事で「日本国民には知らせない」という事にしたのですけれども、
西谷:飯館村の方向へ行くという事を知っていたんですよね。
小出:そうですそうです、それも知っていたんですけれども、日本国民には知らせなかったのです。
西谷:そっちの方へ逃げたんですよね、浪江の人達はね。
小出:
そうです。
ただし米軍には知らせていたのです。
西谷:米軍だけには知らせていた。
小出:
そうです。
ま、米軍というか、米国には知らせていたんですね。
ですから米軍としてはSPEEDIのデータを持ちながら、
何時自分たちの方へ放射能が来るかという事も知りながら行動していた訳で、
自分たちの方に放射性物質が飛んできた途端に彼らは逃げたという事になったわけです。
西谷:
「どこの国やねん」と思いますけれども、
彼らは80km逃げましたもんね。
小出:
そうです。
もう深刻な事故だという事は原子力の専門家であれば誰でも分かっていた訳ですし、
距離をとるという事が原則な訳ですから、
とにかく距離を離して逃げようと、彼らは、米国という国は考えたんですね。
ごくごく当然な判断だったと思います。
西谷:
これ、たとえばですよ、万が一、
ま、あんまり考えたくないんですけれども、
オスプレイがですね、伊方に落ちたらですよ。
これやはり米軍だけが逃げるみたいな事になるんでしょうかね?
小出:(笑)ま、なるかもしれませんね。
西谷:
なんというか、あの、沖縄もそうですし原発もそうですし、
「結局この国はどっち向いて政治しているんだ」と、そういう気がしますが、先生はどう思いますか?
小出:
もちろんそう思いますし、
日米安全保障条約というものがあるわけですし、
日米地位協定というものもあって、
日本は完全にその点で言えば主権を奪われたまま今でもあるわけですね。
ですから日本というこの国が米国につき従うのは国益だという事を、
国家のトップがずっと言ってきたりしている訳ですから
ま、米国ばかり見ているというのは事実だと思います。
西谷:
いずれにしても天井が厚く出来ないのならば、もう本当に何が降ってくるのかわかりませんから、
はやく止めて廃炉にするべきだという事でしょうね。
小出:私はそう思います。
西谷:
今日は沖縄の特集という事で、
「沖縄電力には何故原発が無いのか」というところから、戦争の話も含めてお聞きしました。
小出先生どうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ーーー
2013年4月30日
電力10社の平成25年3月期の決算が発表された。

「沖縄電力だけ原発を持っていない」
第16回放送
■放送日 2013年4月27日(土)~5月3日(金)
■Web公開日 2013年4月30日(火)
■ゲスト リ・ハナさん(日本在住の脱北者)
■パーソナリティ 西谷文和(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
西谷:
小出さん、早いもので4月26日と言えばチェルノブイリの事故ですよね。
27年経ちましたね。
チェルノブイリは石棺に囲まれているわけですけれども、
この石棺が老朽化してヒビがいっていると。
そして雨が降ったら地下に汚水が浸みこんでいって汚染をしていると、
ま、そういう事を聞くんですが、
小出:そうです。
西谷:現在のチェルノブイリはどんな状況なんでしょうか?
小出:
はい。
1986年4月26日に原子炉が爆発しまして、
ほぼ1週間の間に大量の放射性物質が環境に噴き出してきました。
そのため、当時「地球被曝」という言葉ができたように、
地球全部が汚染を受けてしまいました。
日本はチェルノブイリから見ると8000km以上離れている所にあるのですが、
その日本にすらチェルノブイリからの放射性物質が飛んでくるというようなことになって、
西谷:先生は当時計測されていたんですよね。
小出:
そうです。
私は原子炉実験所で
自分が呼吸している空気の中にどれだけ放射能が飛んでくるかという事を測定していました。
初めはまさか地球の裏側から
物質が飛んでくるということはないだろうと思いながら始めた仕事だったのですが、
西谷:8000kmですもんね。
小出:
そうです。
5月3日になりまして、チェルノブイリからはるか離れた日本まで放射能が到達して、
大変驚いた経験をしました。
ただその後10日、あるいは20日経つとですね、
一度減っていった放射能がまた私が呼吸している空気中に増えてくるという事が起きてですね、
西谷:地球を1周してきたんですか?
小出:
そうです。
もう一週地球を回って日本まで戻ってくるという事があったのです。
西谷:その時はやっぱりセシウムが多かったんですか?
小出:セシウムもありましたし、ヨウ素も沢山、もっと沢山ありました。
西谷:ヨウ素。8日で半減ですけれどもヨウ素もあった…。
小出:
ただし、ヨウ素自身は8日で半減してしまいましたので、すぐに測定ができなくなったのですが、
セシウムはほぼ3か月ほど、ずーっと私が吸っている空気中に存在している事が測定できました。
その時に私は、もうこういう事故とは二度と起こしたくないと思ったのですが、
残念ながら福島の事故が起こってしまったのです。
それでチェルノブイリの方はその後、とにかく放射能を閉じ込めなければいけないという事で、
今おっしゃって下さったような石棺というですね、
石の棺で原子炉全体を封じ込めようという作業が始まりました。
西谷:あの時作業した方が、どんどん癌で死んでいきましたよね。
小出:
はい。
60万人とか80万人とか言われているような、軍人、退役軍人、あるいは労働者が駆り出されて、
本当に過酷な被ばく作業に従事しました。
それで多分沢山の方々がですね、
その作業に従事したが為に癌などになってすでにお亡くなりになって来たのだと思います。
西谷:
当時はね、勲章貰って表彰されていた方が、
10年後20年後にね、ガリガリに痩せて…、
小出:
はい。
そうやって苦労をしてつくった石棺なんですけれども、
さすがにやはり年が経つとですね、コンクリートの構造物だった訳で、
あちこちにひび割れが入ったりですね、天井が落ちてしまったりして、
西谷:あ、天井が落ちてしまっているところもあるんですか。
小出:
はい。
あちこちに穴が開いてしまって、きました。
放射能を閉じ込めるという意味では、どんどん性能が悪くなってきているわけで、
いつか何とかしなければいけないという事はずっと前から言われていたのです。
ただし、なんとかするにしても放射能を相手にしての作業で、被ばくはしてしまうし、
お金も膨大にかかるという事で、なかなか取りかかる事が出来ないできました。
西谷:27年間ずっとそのままという事ですね。
小出:
そうです。
でも何とかしなければいけないという事で、EUの方がかなりのお金を提供しまして、
ようやく今、第2石棺という、初めにつくった石棺の全体をまた覆ってしまうような構造物を
西谷:もうひとつ、外側から
小出:
そうです。
はい、つくる作業が続いています。
多分そんなに長くかからないで、その第2石棺というものでもう一度覆いをつくるということになると、
西谷:今だから、被ばくしながらそれをやっていただいているという事?
小出:
そうです。
ただあまり、壊れてしまった原子炉建屋自身に近付くことすらが好ましくないので、
原子炉建屋から少し離れたところで、その第2石棺という構造物を今つくっています。
それが完成した時に、第2石棺をレール上で引っ張って行って、
原子炉建屋そのものの上にまで動かして覆いをつくろうという、
そんな作業をいま進めています。
西谷:
それでね、福島との繋がりなんですけれどもね、
今、汚染水が漏れている問題がありまして、
で、いつか福島を石棺で覆わなければいけないですよね?
小出:そうです。
西谷:
これはまた、そしたら、
その膨大な作業と膨大な被ばくをしながら、いつかそれをつくっていかないといけない。
小出:おっしゃるとおりです。
西谷:
これはまた、誰がやるのか?とかですね、どういうふうに補償するのか、
ものすごい大きな問題が横たわっていますよね。
小出:
そうです。
もうこれから何年という単位では済まない、
何十年という単位の時間をかけて放射能を閉じ込めるという作業を福島でやらないといけないのですが、
西谷:気の遠くなるような。
小出:
本当に私が思うだけでも気が遠くなるような作業が長い年月にわたって必要になってしまいます。
で、そのためには大量の労働者が必要になるでしょうし、
日本というこの国で一体どうやってその労働者を調達できるんだろうかと、
それも大変不安です。
どうも聞くところによれば海外からですね、労働者をまた調達してくるということも
なんか…進んでいるように聞いていますし、
西谷:やりかねないなぁ、いまの原子力ムラやったら…。
小出:そうです。恥ずかしい国だなと思います。
西谷:
あのですね、この原発が安いとか言っているけど、
このコスト考えただけでも、もうメッチャ高くなりますよね。
小出:
そうです。
もう、そんなことは誰が考えても当たり前のことで、
経営者というような人であれば、責めてちゃんと金勘定ぐらいすべきだと思いますし、
西谷:
でもいまだにね、原発止めたら日本経済が止まるとか言うけど、
これだけでものすごいお金じゃないですか。
もうメチャメチャね、コストが高いのに本当にごまかしがあると思うんですけど、
小出:そうです。
西谷:
あの、熊本のリスナーの方から質問が届いております。
日本で子どもや被災者支援法がつくられるという事なんですけど、
ウクライナではチェルノブイリ法というのがあって、
その法律によってこの補償がされているというふうに聞いていますが、
このチェルノブイリ法というのはどういう法律なんですか
という質問なんですが。
小出:
すみません、私は法律の専門家ではないので詳しい事は知りませんが、
チェルノブイリの場合にも大量の放射性物質が噴出してきてしまいまして、
事故の直後は日本政府が取ったのと同じようにソ連の政府も事故を隠そうとしたり、
あるいは過小評価をしようとしたり、
きちっとした対応が出来ないでゴテゴテまわるということがありまして、
大量の人達が被ばくをしてしまう。
子どもたちも被ばくをしてしまうという事が起こりました。
で、そのために甲状腺がんを中心にして、
被ばくが原因でこんな病気になっているという事が分かっている病気も沢山出てしまったわけです。
避難という事を余儀なくされる人々もいたわけですし、
もう経済的に持たないで汚染地帯に取り残されている人々も、
今、福島で起きている事と同じような事がチェルノブイリでも起きましたし、
そういう方々の健康状態を調査をしたり、
あるいは保証したりということはもちろん必要なことであって、
チェルノブイリでも何とかそれを保障しようという法律はあるのです。
それがチェルノブイリ保障法というやつだと思いますが、
実際にはソ連という国自身が
西谷:なくなりましたからね。
小出:
崩壊してしまうというほどのですね、重荷になってしまっていて、
なかなか救済というのは進んでいないと思います。
西谷:
あの、チェルノブイリの事故をきっかけに、やはりソ連が崩壊したという説があるんですが、
やっぱりこのチェルノブイリ事故というのはソ連崩壊のきっかけになったんでしょうね。
小出:
はい。
もちろん、「いわゆる社会主義というものの破綻」というものがあったとは思いますし、
世界的な政治状況というのもあったとは思いますけれども、
チェルノブイリ事故がソ連の崩壊に果たした役割は大きかったと私は思います。
西谷:少なくても引き金を引いていったという、
小出:はい。
西谷:
それとですね、日本では20ミリシーベルト以下を帰還させるということなんですけど、
チェルノブイリは、どういう…?どれぐらいだったんでしょうか?
小出:
実際にはですね、現在日本で取っている方策と、私はあまり変わらないと思います。
ただしチェルノブイリの場合には20ミリシーベルト以下であっても
「避難をする権利」というものを認めています。
ですからその場所に踏みとどまってやはり生活をしたいという方は居るだろうと私は思いますけれども、
「避難をしたい」という希望があれば、
その方に何がしかの保証をするという法律はあるのです。
日本の場合にはもう「20ミリシーベルト以下なら勝手に住め」と。
「国家は何の補償もしない」と今言っている訳で、そこに大きな違いはあると思います。
西谷:旧ソ連の方がまだましだったという、
小出:私はもう、日本というこの国よりははるかにましだったと思います。
西谷:
わかりました。
小出先生ね、本当に27年前のチェルノブイリ事故の話を中心に聞きましたけど、
ソ連よりも日本の方がひどいという事が分かりました。
今日はどうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
「チェルノブイリの犠牲者」原発作業員の証言と現実 2003年スイス(動画・内容書き出し)
サクリファイス The Sacrifice
- 犠牲者ー事故処理作業者(リクビダートル)の知られざる現実
<福島第一原子力発電所の今と未来>
「福島はチェルノブイリよりもっとずっと困難です」小出裕章氏インタビュー(文字起こし)より
チェルノブイリ 事故の原子炉覆う工事
NHK 2012年11月28日 6時12分

26年前に史上最悪の原子力発電所の事故を起こした、
旧ソビエト・ウクライナのチェルノブイリ原発では、放射性物質の拡散を防ぐため、
事故を起こした原子炉を覆うアーチ型の建造物が建設されており、初めて工事の様子が報道陣に公開されました。
チェルノブイリ原発:
建物崩落、ずさん修理が招く「石棺」も腐食進行−−ウクライナ政府報告書
毎日新聞 2013年04月25日 東京朝刊

建設が進む新シェルター(左)と奥に見える4号機母屋=大前仁撮影
旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で
今年2月に建物の一部が崩落した事故について、
1986年の爆発事故後のずさんな修理と老朽化が原因とする報告書を
ウクライナ政府の事故調査委員会がまとめていたことがわかった。
同時期に造られたシェルター(通称「石棺」)もコンクリートや鉄筋部分の腐食が進んでおり、
同原発のクプニー元副所長は
「石棺を含め(86年に爆発した)4号機の建物が非常に危険な状態にあることを示した」と指摘。
26日に史上最悪の放射能漏れ事故から27年を迎える施設が崩壊の危険に直面していると警告した。
86年に爆発事故を起こした4号機は、同年秋に完成した石棺で覆われている。
この石棺に隣接するタービン建屋の屋根と壁の一部が
今年2月12日、約600平方メートルにわたって崩落した。
今年の冬は例年より雪が多く、非常事態省は当初「雪の重みが原因」との見方を示していた。
だが調査委はこの見方を撤回し、2月末にまとめた暫定報告書で
「積雪は想定された許容量を超えなかった。幾つかのマイナス要因が重なって屋根の留め具が壊れた」と
結論づけた。
タービン建屋の一部は86年の爆発で吹き飛ばされ、翌87年に造り直された。
修理箇所が建物に想定外の負荷をかけ腐食や稚拙な溶接が留め具の損壊につながった可能性があると
分析している。
ウクライナ政府は石棺とタービン建屋の一部を覆う金属製の「新シェルター」を2015年に完成させ、
その中で古い建物を解体する方針だが、
クプニー元副所長は「完成が遅れれば(石棺を含め)建物損壊の可能性が高まる」と警告している。
【チェルノブイリ(ウクライナ北部)で大前仁】
石棺覆う巨大ドーム出現 チェルノブイリ原発事故27年
中國新聞 2013年4月24日
旧ソ連時代の1986年に起きたウクライナ北部のチェルノブイリ原発事故から26日で27年。
事故を起こした4号機を覆う石棺が老朽化したため、
石棺全体を覆い放射線の拡散を防ぐかまぼこ形の巨大ドームが全容を現した。
ウクライナ政府が23日、共同通信などに公開した。現地では、東京電力福島第1原発の周辺と同様、
放射線との長い闘いが続いている。
ドームは鉄製で重さ2万9千トン、幅257メートル、高さ110メートル。
石棺の隣接地で昨年3月に建造が始まり、既に基本構造はほぼ完成。
耐用年数は100年だ。
丸く湾曲した屋根が陽光を受けて銀色に輝く。くすんで角張った石棺とは対照的だ。
準備が整えばレールの上を約300メートル移動させ、2015年10月には石棺密閉作業が完了する。
同原発の安全担当責任者アレクサンドル・ノビコフ氏は
「チェルノブイリには二つの色がある。悲劇の色と未来の色だ」と述べ、
計画が順調に進んでいることを強調した。
作業の状況は外部から見えないが、
クレーンを動かすような低音と、鐘を鳴らすような金属音が絶え間なく響く。
石棺周辺の放射線量はこの日、手元の線量計で毎時約7マイクロシーベルト。
130キロ離れたキエフ市内の30倍を超す。長時間の作業は難しい。
石棺の耐用年数は約30年で、16年には極めて危険な状態となる。
ドームが完成する15年10月は「滑り込み」に近い際どい期限だが、問題はその後にある。
密閉した石棺と原子炉を解体、内部に残る核燃料をどのように処理するかは全く未知の領域。
ドーム建設には欧州を中心に国際社会が資金を出したが、完成後の計画内容は事実上白紙の状態だ。
(チェルノブイリ共同=松島芳彦)
放送日:2013年4月20日(土)~26日(金)
※放送日、放送時間は放送局によって異なります。くわしくはこちらをご覧ください。
Web公開日:2013年4月23日(火)
ゲスト:李政美(イ・ヂョンミ)さん(歌手)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
小出裕章ジャーナル
石井:今日のゲストは歌手の李政美さんです。
李:大ファンで、今日はこうやってお電話で話せるなんて光栄です。
小出;こちらこそ光栄です。ありがとうございます。
石井:
小出さんね、基本的な質問をいくつか聞かせて下さい。
先ずですね、電力会社が沢山ありますけれども、
こんなに、私からみればリスクが多い原子力発電所を、なぜこんなに沢山つくってきたんでしょうか?
小出:
それには沢山の思惑があると思います。
“国家”という側からみれば、原子力の技術というのは核の技術と全く同じものですので、
「平和利用」と言いながら原子力を進める事で核兵器を開発する能力を身につける事が出来る。
という理由はあったと思います。
“電力会社”からみれば、
「電気事業法」という法律で、電力会社が守られていたが為に、
原子力発電をつくればつくるだけ利潤が膨れ上がるという、そういう法律的なシステムがありました。
そのため電力会社としては「とにかくお金を儲けたい」と思う訳ですから、
「なにがなんでも原子力」という事になってしまいました。
石井:
コストの問題ということも、いつの間にか私たちは刷り込まれてしまっていて、
火力発電は、石油ショック以降ですね、「石油が無くなるぞ」と。
「次はもうプルトニウムの原子力発電」と。
もうこれしかないというように私たちはいつの間にか思わされてきてるんですが、
どうも「石油は無くならない」。
その一方で「実はウランがそんなに沢山はない」というふうに小出さんはおっしゃっていますが。
小出;
そうです。
私自身も1960年代に中学、高校時代というのを過ごしていたのですが、
その時に「化石燃料は無くなってしまうからいずれ原子力しかない」と言われましたし、
もし原子力が発電に利用できるようになれば、
「発電単価は値段が付けられない位安い」と宣伝を聞かされました。
そして私はその宣伝を信じて原子力の場に来てしまったわけですが、
事実をきちっと知ってみると、原子力発電の燃料であるウランは
石油に比べても数分の1しかありませんでしたし、
石炭に比べると数10分の1しかないという大変貧弱な資源でした。
ですから初めから考えていた事が間違えていた訳ですし、
電気代が安いというのも真っ赤な嘘で、
日本なんかは原子力をさんざんやってきてしまったが為に、
世界一高い電気代の国にすでになってしまいました。
石井:
原子力発電の方が安いという事が一つと、
それからもうすでに3分の1以上原子力発電による電力を使っているから、
「原子力を止めたら真っ暗になるぞ」というふうに、
みんないつの間にか思い込まされてきちゃっていますよね。
小出:
そうですね。
日本の国がそのように言ったわけですし、
電力会社や大企業も全てそれに乗っかって、
「原子力は安全だし安いし、止めたら停電しちゃうぞ」と言って、
マスコミも含めて脅しをかけてきていたのです。
そのため多くの人たちが
「原子力をやめたら自分たちの生活が大変になってしまう」と思ってしまったわけですが、
実際には原子力なんてやめても停電なんかには決してなりません。
現在日本には水力発電所と火力発電所が膨大にありますので、
それらがちゃんと動くように管理が出来ているのであれば、
真夏のピーク電力の時ですら原子力発電がなくても停電にはなりません。
それはもう私が言っているのではなくて、政府の統計データがそれを指しているので、
みなさん何の心配もないという事をまずは知って欲しいです。
石井:
そうですね。
その上でもう一つですね、その経済性の問題だけでなくて安全の問題についてお聞きしたいんですが、
「原子力発電所は何重もの安全装置を持っているから安全だ」と。
「決して事故は起こしません」という形で私たちは説明を受けてきました。
しかしそれが今回の福島の事故でですね、「ウソだった」というふうにやっと私たちが分かったというか、
大変不幸な事態だなと僕は思っているんですが、
小出;
はい、ま、何重もの安全装置を付けているから「安全だ」というのが、
いま石井さんがお話し下さったように、政府、あるいは電力会社からの宣伝だったんですね。
でも逆に言えば、
「何重もの安全装置をつけなければ動かす事が出来ないほど危険な機械だった」のです。
そして機械というのは時に壊れるというのは当たり前のことであって、
誰も原子力発電所が壊れて欲しいなんて願う筈はないのですけれども、
でもやはり機械ですから時には壊れてしまうという事が
今回の福島第一原子力発電所の事故で、本当に残念ながら示されてしまいました。
石井:
ということは、小出さんにこんなお話をするのも変ですが、
原子力発電ほど割に合わない電力のシステムって無いですよね。
小出:
そうです。
まともに動いている時ですら、「発電単価は原子力が一番高い」ということは、
電力会社の有価証券報告書のデータを使って計算してみれば、もう分かってしまっていたのです。
おまけに事故が起きてこんな被害が出て、それを電気料金に上乗せしようとすれば、
もう一体いくらになるのか分からなくなるほど高くなってしまいます。
さらにその上、仮に事故が起きなくても、
生み出した核分裂生成物、それを10万年あるいは100万年お守をしなければいけないと言っている訳で、
その費用などを考えたら到底割に合いません。
本来であれば経済界というのは金勘定をする人たちな訳ですから、
「せめてしっかり金勘定ぐらいしなさいよ」と私は言いたくなります。
石井:
あのー、良くも悪くも資本主義の原則を徹底していただければ、
原子力発電所などというものを造ってもいけないし、
稼働させてもいけないっていうことに普通になりますね。
小出;要するに経済人が普通にそう判断する筈のものなのです。
石井:
今後も基礎的なところを一つ一つ
私たちがいつの間にか勘違いしているところをですね、
小出さんとお話しながら改めて行けたらなと言うふうに願っています。
小出:ありがとうございます、とても嬉しいです。
第14回放送
■放送日 2013年4月13日(土)~19日(金)
■Web公開日 2013年4月16日(火)
■ゲスト おしどり(漫才師)
■パーソナリティ 今西憲之(ジャーナリスト)
■テーマ 原発事故と福島の子どもたち
小出裕章ジャーナル
今西:おしどりの二人が今日はスタジオにゲストに来て下さっています。
マコ:お久しぶりです。
小出:こんにちは、ケンさんもですね?
ケン:そうですよ、僕もいてます。
今西:
それでですね、ロフトプラスワンのシンポジウムの時に、ギャラリーの方から質問があって、
全て答えられなかったものがあるんですが、
そこで出たもので、3月12日の、
2年前の3月12日、福島第一原発の事故の時に1号機が爆発しました。
その時に専門家の方がいろんな話をテレビとか新聞でされておられたんですが、
まずですね、メルトダウンという事についてですね、
先生、簡単にちょっと解説を頂ければと思います。
小出:
はい。
原子力発電所というのはウランを核分裂させて、その時に出るエネルギーで水を沸騰させて蒸気にする。
それでタービンを回しているわけですが、
何か事故が起きると原子炉で起きている核分裂反応自身は比較的容易に止める事が出来ます。
原子炉の中に制御棒というものを入れることで、核分裂反応を止めることは出来ます。
しかし、それまでの運転で
原子炉の中には核分裂生成物という放射性物質が膨大に溜まってしまっている訳です。
核分裂生成物というのはそれ自身が放射線を出す、つまり発熱しているという、そういうものなのですね。
ですから核分裂の連鎖反応事態を止められたとしても、
すでに炉心の中に核分裂生成物が溜まってしまっていると、
その発熱を止めることができない、のです。
その熱をどこかに逃がさない限りは原子炉の温度が上がってしまって、
どっちにしても溶けてしまうという事を避けられないというのが原子炉という装置なのです。
今西:
なるほど。
それでですね、1号機のオペレーションフロアですね。
これはどういう部分に当たるのでしょうか?
小出:
「原子炉」と私たちが普通呼んでいるものは炉心という部分がまず一番中心にあって、
それを原子炉圧力容器という鋼鉄製の圧力釜の中に入れてあります。
その圧力容器のさらに大きな原子炉格納容器と呼ぶ、
福島第一原子力発電所の場合には、
理科の実験で使うフラスコのような形をしている大きな容器があるのですが、
その中に入れてあります。
その格納容器というのが、原子炉になにかトラブルがあった時に、
放射能を閉じ込めるための最後の防壁なのですが、
その格納容器も含めて、さらにまた原子炉建屋という皆さんが映像で見られた四角い建物が、
四角の大きな建物があるのです。
今西:
白とブルーの、あの建物の事ですね。
小出:
そうです。
で、オペレーションフロアというのは原子炉建屋の最上階の部分に相当するところを
私たちはオペレーションフロアと呼んでいます。
今西:
なるほど。
それでオペレーションフロアがですね、爆発で吹っ飛んだという事は、
メルトダウンしているに違いない。
というのが原子力の専門家の常識であるという事なのですが、
そのあたりについてお願いします。
小出:
なぜ、あんな大きな爆発が起きたのか?と言えば、
原因はひとつしか考えられません。
要するに水素なのです。
水素というのは非常に軽い気体ですので、もしそれがどこからか漏れてくる事になれば、
建屋なら建屋の最上階に集まってくるという、そういう性質のものなのです。
で、1号機の爆発も原子炉建屋の最上階に相当しているオペレーションフロアで起きたのです。
そうなればあの爆発は水素爆発だということはすぐにわかりますし、
一体じゃあ、その水素というのは何処から出て来たのか?という事が次に問題になります。
そしてこの水素は、ウランの燃料というのは通常セトモノに焼き固めてあります。
直径1cm高さ1cmという小指の先ぐらいの小さなセトモノに焼き固めてあるのですが、
今西:よく言われるペレットというものですね。
小出:
そうです。
そのペレットを約400個ほど細いパイプの中に詰めてあるという、
そんな形で炉心の中に存在しています。
そのパイプの材料がジルコニウムという金属で出来ているのですが、
そのジルコニウムという金属は温度が850度程度になると、周辺の水と反応して水素を発生するという、
そのような化け学的な性質を持っているのです。
ですから、原子炉の中にあった核分裂生成物が熱を出したが為に、炉心の温度がどんどん上がっていって、
850度を超えて、ジルコニウムが水と反応して水素を出したという事が分かります。
今西:なるほど。
小出:
そしてその反応は発熱反応と私たちが呼んでいる反応で、
一度その反応が始まってしまいますと、その反応自身によってまた熱が出てくる。
そうすると温度がまたさらに上がってしまう。
そうすると反応がさらに加速する。
そうするとまた温度が上がってしまうという悪循環に陥ってしまいまして、
どんどん温度が上がっていって、
一気にジルコニウムという金属が水と反応して大量の水素を発生してしまうという事になる事が分かっています。
で、同時にそのジルコニウムという金属はウランのペレットを中に包んでいたものなわけですし、
発熱によって、次はウランのペレット自身が溶けてしまうということになるというのが、
私たちの事故を想定してのシナリオだったのです。
まさにその通りの事が起きました。
今西:いわばあの原子力の専門家の方々が言われる、教科書通りの事が起こったというわけですね。
小出:そうです。
今西:
けれども、ま、私の知る範囲でですね、当時テレビですとか新聞ですとか、
専門家の方がいろいろ解説をされておりましたが、
小出さんのように、そういう明快な解説をされた方というのはあまり記憶にないのですが、
どうしてなんですかね?
小出:
まぁ、マスコミに出させてもらえる専門家というのは、
いわゆる原子力ムラ、原子力を推進していた人達だけだった訳ですし、
そういう人たちは「決して事故など起きない」と言い続けてきた人だし、
「炉心が溶けることはあり得ない」と発言し続けてきたわけですから、
彼らからみれば「今もう溶けてしまっています」という事はやはり言いたくなかったのだろうと思いますし、
もしそうでないとすれば、よっぽど無知な人だったという事だと思います。
今西:なるほどねぇ~。
マコ:
あの、4つの事故調を全部読みなおしていて、
国会と民間や政府と社内の、
それも全て今小出さんがおっしゃった、
ジルコニウムで反応があって、水素がいっぱい出て爆発しましたという事が全部書いてあるんで、
もう、小出先生が事故当時からね、直後からおっしゃっていた事を
1年経って全部報告書にまとまって上がってきたっていう感じになっているよね。
で、事故調の各報告書を読んでいて、
炉心が冷却できなくなって、どんどん水が減っていったっていう、
水位計がきちんと機能していなかったんじゃないかっていうふうに、
ちょっと読みとれる箇所があったんですけど、
この、水位計がきちんと読みとれなければ、原発事故の時にものすごく致命傷だと思うんですけど、
これは何とかならないものなのでしょうか?
あの、現在の各地の原発でも。
小出:
多分難しいと思います。
要するに想定している通常の運転状態であれば、原子炉の、
今問題にしているのは沸騰水型というのですけれども、
沸騰水型の原子炉の中の、どの部分でどのくらいのボイド、
私たちがボイドと呼ぶ泡ですね。
水が沸騰して蒸気になるかという事はそれぐらいの角度を持って、確実性を持って計算できるのですけれども、
事故のような事が起きてしまいますと、
猛烈にドラスティック(drastic)に事故が進行していくわけで、
どんな状態になっているかという事自身が正確にはなかなか分からないという事がありますので、
通常測っている水位計で事故時の水位という事が
本当に正しく測られているかどうかということは分からないと思います。
出来る限り、だから、「わかるような装置をつけろ」という事はもちろんそうなのですが、
本当の事故になってしまうと、「どこまで確かなのか」ということはよく分からなくなってしまいます。
マコ:
なるほどありがとうございます。
そうですね、通常は分かるけれども事故になると見せかけの圧力とかで、
水はいっぱいあるように思っていたけれど、実は全くありませんでしたっていう状態だったっていうのが
すごいその。
小出:
それは1979年にスリーマイル島というところで、
それは今度は加圧水型の原子力発電所というものだったのですが、
それも水位計というものが「付いてはいた」のですけれども、
通常運転の時と全く違う挙動をしてしまいまして、
「原子炉の中に水はある」と運転員は思いこんだんですが、実は「水は全くなかった」という、
それで事故になってしまいました。
今西:
水位計というのも想定外には対応できんもんなんやね。あてにならんもんやね。
わかりました。小出さん、今日はありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
2013年4月12日
水野:
今日最初のテーマは、汚染水問題について
京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに私が先ほど伺いました。
水野:
福島第一原発の汚染水の漏えいがずっと続いております。
きのう明らかになりました新しい情報なんですが、
漏れの見つかった貯水槽から別の、漏れの確認されていない貯水槽に汚染水を移そうとしたんですが、
「移し始めて僅か3分後に汚染水が漏れた」ということです。
で、今度は、「配管の接続している部分から」というんですね。
ですからこれまでやってきた貯水槽も構造的にダメだし、
配管もダメだという話になってきました。
で、今回漏れた汚染水は、「放射性セシウムを除去した汚染水だ」と言うんですが、
セシウム以外にいろんな放射性物質が入っているという事になりますよね、
小出:そうですね。
水野:「中にはストロンチウムというものが多く入っている」と言う事なんですが、
小出:多分そうだと思います。
水野:
この放射性ストロンチウムなどの放射性物質の濃度がですね、
1立方センチメートル、1cm四方ですよね。
小出:そうです。1ccですね。
水野:
1ccあたり、29万ベクレルというんですが、
これは…、リスナーの方からも質問がきています。
これってどれぐらいの危なさなんでしょうか?
配管の水漏れの場所には近づけるものなんでしょうか?
小出:
ほとんど近づけないと思います。
私は京都大学原子炉実験所で放射性廃液の処理を担当している人間です。
原子炉実験所で様々な放射性廃液が出てくるのですが、
それを処理して何とか放射能だけを捕まえて、
水をきれいにして環境に放出するというような事をやっているのですが、
その時に環境に放出される濃度は1ccあたり、セシウム137であれば0.09です。
水野:0.09ベクレル
小出:
ベクレルです。
それ以下でなければ環境に出せないというものですし、
ストロンチウムの場合には、1ccあたり0.03です。
水野:ストロンチウムの場合0.03。
小出:
はい。
それが29万ベクレルというような値になっているのですから、
もう、私からみれば途方も無い濃度ですし、
こんな廃液に近付くことすらためらってしまうというほどのものです。
水野:
これ、たとえばですよ。
この廃液に皮膚が…、ま、触ってしまったというか、
手でその液に触ってしまった場合、どうなりますか?
小出:
直ちに洗い落せばいい訳ですけれども、
気がつかないままずーっと汚染を付けてしまっていれば、
きっと、ベータ線で火傷をすると思います。
水野:そこに長くは居られないような水なんですか?
小出:はい、現場に近づくことすらが困難だと思います。
水野:
はぁー、それぐらいの汚染水。
ま、昨日は22リットルというふうに伝わっているんですけれども、
小出:それは配管の継ぎ目から漏れた量ですね。
水野:
そうですね。
で、これまで漏れたとされる汚染水を合わせると、120トンとも言われているんですね。
もしも仮にですね、この1立方センチメートル当たり29万ベクレルの計算で120トンとなりますと、
35兆ベクレルというふうに、荒っぽい計算ですが、なります。
小出:はい、そうですね。
水野:この値、35兆ベクレルというのはどういうものだと考えたらよろしいでしょうか?
小出:
たとえば広島の原爆というのが、
1945年8月6日に爆発して、放射性物質をまき散らしたのですけれども、
私が一番重要だと思っているのがセシウム137ですが、
そのセシウム137の量は89兆ベクレルと考えられています。
ですから広島原爆がばら撒いたセシウムの量の3分の1ぐらい、
2分の1か3分の1ぐらいをすでに地下に漏らしてしまったという事になります。
水野:えぇ~~っ、
広島原爆の半分にはいかないかもしれませんけれど、半分近い放射性物質ですね。
小出:
そうですね、
あ、ただ私はセシウム137の量を89兆ベクレルだと言ったのですが、
多分この29万ベクレルのほとんどは私はトリチウムではないかと思うのですが、
トリチウムというのはセシウムに比べればはるかに、はるかにと言ったらおかしいかな、
生物毒性が低いですので、単純には比べられませんけれども、
でも、本当に恐ろしい量がすでに漏れてしまっているという事です。
水野:このトリチウムというのはどういう性質でどれ位の危険性があるんでしょう?
小出:
トリチウムというのは水素なのです。
自然界にある水素というのは放射性を帯びていません。
普通の水素のほかの重水素という、ごく変わった水素もあるのですが、
それも放射能を持っていないのですが、
このトリチウムというのは3重水素という別名が付いている位に、3倍重たい変わった水素なのです。
これが放射能を持っているという、そういう物質です。
放射線のエネルギー自身は高くないので、
放射線の危険性という意味では大きくないのですけれども、
でも水素ですので、環境に出てしまうと必ず水になってしまいますし、
もう回収する事が出来ないという、そういうものなのです。
水野:水になってしまうから回収が出来ない。
小出:
そうです。
ですからこの汚染水というものも、セシウムを捕まえたり、
あるいは今度新しいアルプスという除去装置を使ってですね、
様々な放射性物質を捕まえようとしているのですが、
要するに、やろうとしている事は
水の中から放射性物質を捕まえて水を綺麗にするという作業をやろうとしているのです。
しかしトリチウムというのは水素で水そのものになってしまっていますので、
どんなに放射性物質を水から除去したとしても、トリチウムだけは絶対に取れないのです
水野:はぁ~~
そんなトリチウムが大量に地下に流れ込んでいると…、
小出:そうです。
水野:
ただ、東電はですね、「汚染水は海には流れ出ていない」と言っているんですが。
これはそうなんでしょうか?
小出:
まぁ、私は「随分とぼけた事を言う人たちだな」と思います。
要するに地下に漏れてしまえば、地下水というのはあっちへ流れたりこっちへ流れたりしているわけで、
海の方から流れてくるものもあるでしょうし、海の方へ流れていっているものもあるはずで、
「海へ行っていない」なんていうことは決して実証できないと思います。
遮水壁
水野:
リスナーの方が、
「事故当初から小出先生は地下水汚染を心配されておりましたけれども、
今、貯水槽の汚染水の話にばかりなっていますが、本当にそれだけなんでしょうか?
私は原子炉建屋内の汚染水漏れの方を心配しているのですが、どうでしょう?」
とおっしゃっています。いかがでしょうか?
小出:
私もそう思っています。
今回の漏れというのは、新しく作った貯水槽の方から漏れているのですけれども、
その前に汚染水は原子炉建屋の地下とか、タービン建屋の地下、トレンチとかピットとかいうところに
もう、いっぱい溜っているのです。
それら全てがコンクリートの構造物ですので、割れないコンクリートなんかは無い訳ですから、
「必ず漏れている」と、私は事故当初から警告をしてきましたし、
それをなんとか海へ出ないように、
「地下に遮水壁をつくらなければいけない」と言ってきたのですけれども、
残念ながらそれはまだ出来ていないという状態で、
「海へ向かって汚染水が流れていってしまっている」と私は思います。
水野:
この地下の遮水壁も、小出先生はずっと前からおっしゃっていたんですが、
「今からでも間に合いますか?」と聞いていらっしゃいます。
小出:
要するにもう間に合わないのですね。
この間事故が起きてもう2年経ってしまっている訳で、
2年の間は何の防壁も無いまま原子炉建屋の地下、タービン建屋の地下から汚染水が環境に漏れていたし、
その一部はもう多分海へ出てしまっていると思います。
水野:ただ東電は「漏れていない」と言うので、そこのところが進まないですね。
小出:
そうですね、
「漏れていない」というなら、きちっとした証拠を提出すべきだと私は思います。
タンカー
水野:
また、ラジオを聞いていらっしゃる多くのみなさんがお便りをくださっているのは「タンカーについて」です。
もう、2011年の3月のうちからですね、
小出先生は「大きなタンカーを持って来て処理すればいい、それしかないんじゃないか」と、
汚染水の事を心配してらしたんですが、
「この“タンカー案”は今からでも間に合いますか?」と、皆さんが聞いていらっしゃいます。
小出:
間に合うか間に合わないかという意味で言えば、
すでに2年間、間に合わないで環境に放射性物質が漏れてしまっている訳ですから、
この2年の分はもう取り返しがつきません。
しかしこれからもまた次々と汚染水が溢れてくる訳ですから、
東京電力は次々とタンクを作る。
でも、それでは間に合わないからと言って、
今回漏れたような水槽をつくるというような事でやろうとしてきたのですけれども、
それでは結局しのげなくなりますので私はタンカーは一刻も早くやるべきだと思います。
水野:はぁ~…、政治家にいろいろ言ったんですがね。
小出:そうでしたね、
水野:本当に全く進まない。
※たねまきジャーナル2時間スペシャル。小出氏と3人の政治家の生討論No1(内容書き出し)
何年経っても出続ける
水野:汚染水というのは、いつまで出続けるんですか?
小出:ずーっと出続けます。
水野:ずーっとって、…、何年ですか?
小出:もう何年経ってもです。
水野:えぇッ!
小出:
溶けてしまった炉心という部分が、いまだに「どこにあるか」すらが分からないのです。
人間が現場に行くことができませんし、それを調べるための測定器の配置すらがありませんので、
とにかく「どこかに溶けたものが落ちている」ということなのです。
仕方がないので「ひたすら水をかけてこれ以上溶けないようにする」という事が、
出来る唯一の事で、2年間ずっとやってきている訳です。
ただ「水をかけてしまえなあふれてくる」というのは当たり前なことであるので、
これまでも沢山あふれてきているし、
これからもあふれてくるという事なのです。
水野:
ハァ~、東電は1日当たり400トンずつ汚染水が増える。
それはタンクをどんどん作って、「6月の初旬までには地上のタンクに今の貯水槽の物を移す」と。
「だから大丈夫なんだ」という話をしているんですが、
6月以降の事は分かって無いですよね、何にも。
小出:
タンクを次々と東京電力はつくってはきているのですけれども、
福島第一原子力発電所の敷地にももちろん限りはありますし、
無限にタンクが増設できる訳ではありませんので、
いつか破たんすると私は思います。
廃炉
水野:つまり、廃炉は40年と一応言っていますね?
小出:はい。そんなことできませんけれども、
水野:少なくても40年は汚染水が出続けるんですね?
小出:そうです。
水野:小出先生は本当のところ、廃炉は何年位と今思っていらっしゃるんですか?
小出:
わかりません。
人類が遭遇した初めての経験な訳で、
これをどうやって「廃炉」というですか…、
どういう状態にすれば一応安心できるのか?ということも、私にはよく分からないです。
70年、あるいは100年という単位がかかってしまうかもしれないとおもいます。
水野:
そうした中で、原子力規制委員会はですね、
今はこの貯水槽が構造的に欠陥があると言われていますけれども、
事前にOKを出したんですよね?原子力規制委員会が。
小出:そうですね。
水野:これ、どうなっているんですか!
小出:いや、規制委員会が無能なんでしょう。
新安全基準
水野:ハァ~
で、また「その原子力規制委員会がやっている事はなにか」と言いますと、
原発の新しい規制の基準案をまとめたんですね。
この内容をどうご覧になっていますか?
小出:
え…、
問題は、今私たちの目の前で福島原子力発電所の事故が進行中なんだという事です。
その事故の原因すらがいまだに分からない。
もちろん津波は原因の一つだったし、地震というのも大きな原因の一つだったと私は思っていますし、
国会の事故調査委員会もそう主張しているわけですけれども、
その調査すらが東京電力の妨害によってなされなかったのです。
ですから原因自身がまだ分かってもいないという、
そうなれば対策だって決めようがない訳で、
「どんな事をしたら基準が出来るのか?」私にはそれがまずわかりません。
水野:
内容はいろいろとありますが、たとえばですね、
「時間的な猶予を与える」という項目があるんですね。
たとえば非常時のバックアップシステムである第二制御室。
これは中央制御室の変わりにいざという時になるものなんだそうですが、
「これはすぐに出来なくてもいい、5年間猶予しましょう」という事だそうです。
小出:そうですね。
水野:これって、そんなにすぐにいらないものなんですか?
小出:
事故というのは予測できませんので、
ひょっとしたら第二制御室が必要で無い事故かもしれないのですね、次に起きるのは。
ですから、
「何がどうやって必要か」という事は事故に関しては予測が出来ないという者だと私は思っています。
でも事故というのは、私たちが望むと望まざるとに関わらず起きる訳ですし、
原子力発電所が事故を起こしてしまえば、今現在起きているような大変悲惨な事になってしまうわけで、
私はもう原子力から足を洗うべきだと思います。
対策をもし、取るというのであれば、
「自分たちが思っている対策が出来るまでは、やはり動かさせない」
という位の事は言うべきだと思いますけれども、
残念ながら原子力規制委員会というのはそこまでの力を持っていないという事だと思います。
水野:はい、どうもありがとうございました。
原子力規制委員会は怠慢だ!
水野:いかがでしたでしょうか?平野さん。
平野:
改めて、この汚染水の放射線量の凄まじい単位というものを感じるんですけれども、
やっぱり、原子力規制委員会の怠慢ですよね、改めて思う。
先生がおっしゃっていますけれども、これ、東電はもう当事者能力が私は無いと思うんですよ。
だったらもう国が率先して、他の電力の技術者も集めてですね、
チームを組んでやらなきゃダメなんですけれども、
これ、もう任せっきりですよね。
これはもう、ほんとうに怠慢ですよね。
それと、海の汚染というのが、もう、間違いなく進行しているというのが、
東京の海洋大学の魚の最終調査でも、基準の数千倍、数万倍の単位が出ているんですよね。
だから東電の言う事はもう全く信頼できませんよね。
水野:
小出先生が大学でなさっている、
「セシウム、あるいはストロンチウムがどれだけだったら捨ててもいいか」のような汚染水の値。
たとえばストロンチウムの0.03ベクレル以下でないといけないというのが、
いま結局計算してみたら、流れているのが1000万倍になりますね
平野:そうですね、広島原爆の3分の1なんていうのもビックリしますね。
水野:
それだけの量の放射性物質に換算できるという、
凄まじい数字が出てまいりました。
小出先生のお話をお届けしました。
ーーー関連記事ーーー
汚染水漏れ
漏れないプールはあるのか?入れれば漏れる汚染水&読売新聞エライ!7100億ベクレル→35兆ベクレル
読売新聞の汚染濃度に関する記事。
漏れたプールから異動した場所のプールも漏れた。
移動のための配管からも漏れた。(番組中で話している)記事。(2013年4月11日)
新たに別の池も!収束後最悪の漏れ「漏れて当たり前の構造に見える汚染水の池」
汚染水漏れ最初の報道。
福島第一原発汚染水漏れを読み解く4/6デモクラTV(文字起こし)
5年猶予
「安全系設備に猶予期間を設けて運転するのは 故障した航空機をそのまま飛ばしているのと全く同じ」
後藤政志氏4/2原子力規制を監視する市民の会「新安全基準骨子案」の問題点を暴く(文字起こし)
<5年猶予問題>原子力規制を監視する市民の会4/2坂上武氏&デモクラTV4/5
放送開始日:2013年4月6日(土)~
Web公開日:2013年4月9日(火)
ゲスト:保坂展人さん(東京都・世田谷区長)
パーソナリティ:湯浅誠(社会活動家)
小出裕章ジャーナル
湯浅:
この番組には原発についての様々な質問が寄せられています。
中には「もっと原発の基本から学びたい」というリスナーの声も多くあります。
そこで今日は
「そもそも原子力発電とはどういうものなのか?」
「なぜ、原子力発電が危険なのか?」
あらためて考えてみたいと思います。
まず、原子力発電所と火力発電所の違い。
どちらも代表的な発電所と言われますが、
そもそもこの二つの違いというのはどういうことなのか?教えていただけますか。
小出:
どちらも電気を起こすという機械ですけれども、
もともと200年ほど前にジェームスワット達が蒸気機関というものを発明しました。
それまでは、例えば農業をやるためには家畜を使っていたし、
一部の贅沢をしたい人達は奴隷を使っていた訳ですけども、
蒸気機関というものが発明されてからは、
水を沸騰させて蒸気をつくる事が出来るなら、その蒸気の力で機械が動くと。
そうなれば家畜もいらないし、奴隷もいらないという、そういう時代になったのです。
発電ということもいわゆる蒸気機関でして、
噴出してくる蒸気でタービンという羽根車をまわして発電するという、
言ってみれば、200年も前からできている大変古めかしい装置なのです。
火力発電所の方は石炭、石油、天然ガスというような、いわゆる化石燃料を燃料に使いますし、
原子力発電所の場合にはウランというものを使う。というのが違いです。
湯浅:
どちらも蒸気でタービンを回して発電するというところは一緒だけども、
何を燃やして蒸気をつくるか?というところが化石燃料とウラン。
その違いだという事ですね。
小出:そうです。
湯浅:
だとすると、同じ蒸気でタービンを回すなら、
なぜ、原子力発電所だけは都会には決して作る事が出来ない、そういうものなんでしょうか?
小出:
それは燃料が違う。
つまり原子力発電ではウランというものを燃料にしているという事に由来しています。
ウランはもともと放射性物質で危険なものですけれども、
そのウランを核分裂という現象を起こさせてエネルギーを取り出そうとするのですが、
一度核分裂という現象を起こさせてしまいますと、
放射能の強さが1億倍にも増加するというような現象でして、
湯浅:1億倍ですか
小出:
1億倍です。
いわゆる核分裂生成物という放射性物質が大量にできてしまう。
だから原子力発電所だけは決して都会には造れない。という事になりました。
おまけに原子力発電所、先程聞いていただいたように、蒸気機関の一種なのですが、
大変効率の悪い蒸気機関でして、
発生させたエネルギーのうちたった3分の1しか電気にならない。
残りの3分の2はどこかに棄てなければ動く事が出来ないという、そういうバカげた装置なのです。
棄てる場所が必要ですので、なかなか都会では出来ないということにもなりました。
湯浅:
なるほど。
その造られたエネルギーの電気のうちの、3分の1しか使えないと。
3分の2は棄てなきゃいけないと。
小出:そうです。
湯浅:どこに棄ててるんですか?
小出:
基本的には、日本の場合は海に棄てています。
棄てると言っても、じゃあどうやって棄てるのか?という事になりますけれども、
海水を発電所の敷地の中に引き込みまして、その海水に熱を棄てる。
つまり海水を温める。
そしてまた海に戻していくということで、
使えない、本当に無駄になってしまうエネルギーを棄てているのです。
湯浅:
うーん。
げんしりょく発電は作りだしているエネルギーの3分の2を
海を温めるために使っているという事ですね。
小出:
そうです。
私に「原子力というものがどういうものか」という事を教えてくれた人。
私が、ま、数少ない先生と呼ぶ人の中に、
かつて東大の原子核研究所というところで働いていらっしゃった
水戸巌(みと いわお)さんという方がいらっしゃるのですが、その水戸さんがある時私に、
「皆さんが原子力発電所と呼んでいるものをそういう呼び方で呼ぶのは間違っている」と言いました。
「どうやって呼べばいいのかな?」と、私がふと思ったら彼が、
「あれは『海温め装置』と呼びなさい」と、私に教えてくれました。
湯浅:
確かにそうですよね。
3分の2海を温めているのに使っているんだったら、
作られている電気のメインの使い方は海を温めることで、
家庭とか、工場に電気を送サブの役割だっていう事ですね。
小出:
そうです、はい。
その事を私は水戸さんから教えてもらって、
「物事というのはちゃんとやっぱり見なければいけないのだな」という事を学びました。
湯浅:
なるほど。
それで現在日本には54基の原子力発電がある訳ですけれども、
どうして電力会社は、他の選択肢があるにもかかわらずですね、ここまで原発を進めてきたんですかね。
小出:
沢山の理由がありますけれども、
まず電力会社というのは会社ですから、「金儲けをする」という事が基本的な目的です。
そしてみなさん、たとえば何か物を買う時には、
あっちこっちの商店に行ってみたりしながら、自分の気に入った物を
そして少しでも安い物というのを選ぶと思うのですが、
電気の場合には選べないのです、消費者の側からは。
いわゆる地域独占という形になっていまして、電力会社を選ぶことが出来ない。
ではその時の電気代というのはどうやって決めるか?と言うと、
電気事業法という法律で決められているのです。
その電気事業法で、
いわゆる会社ですから必要経費はあるだろう。
その他にも会社ですから儲けも取るのは当然だ。と。
じゃあその儲けというのを一体どうやって決めるか?という事なのですが、
普通の企業であれば、自分の努力で儲けを。
電気の場合には法律でその儲けの仕方が書いてあるのですね。
それを私たちは「総括原価方式」と呼んでいますけれども、
湯浅:
総括原価方式
この間何度も話題になっていますね。
小出:
はい。
電力会社が持っている資産の何%分を毎年も受けてもよいというそのような決め方なのです。
そうすると、電力会社としては資産を持てば持つほど儲けが増えるという、
法律が保証してくれるという仕組みなんですね。
原子力発電所というのは1基つくると4000億円、5000億円という巨大な資産になるわけで、
つくってしまえばもう自動的に金もうけが出来るというシステムが法律的にできてしまっていていた。
ですから電力会社としては、原子力発電所が動こうとうと動かまいと何でもいい。
とにかく造ってしまえば金儲けが出来るという、そういう事になってしまいました。
湯浅:
先日、経産省の委員会でしたっけね、
7年後の発送電分離。
まぁ、自分で電力会社を選べるように、
この間の9つの電力会社の地域独占体制を変えていくんだというふうに答申を出したかと思うんですが、
小出さんはそれによって、今おっしゃられた様な課題が、いくらかでも変わるとお考えですか?
小出:
送電と配電ですか?
その分離をするという事が出来れば、原子力は絶対に潰れます。
ただ電気というのは人々が生きるためにかなり重要なインフラですので、
本当にどうする事が人々の幸せに繋がるかという事は十分に議論すべきことだと思います。
ただいずれにしても現在のように
原子力発電を造ればひたすら電力会社が儲かってしまうというようなことは、
やはり止めなければいけないと思います。
湯浅:はい、ありがとうございました。
ーーー
Wikipedia 水戸 巌
(みと いわお、1933年3月2日 - 1986年12月30日)より
「えこ&ぴーすActio」1252号(2007年9月25日)
何より温暖化対策を真剣に考えるのならば、膨大な温排水を出している原発こそ真っ先に停止すべきです。
100万キロワットの原発の原子炉の中では、300万キロワット分のエネルギーが出ています。
電気になっているのはたった3分の1で、残りの200万キロワット分のエネルギーは海に棄てています。
私の恩師である水戸巌さんは、
「原子力発電という名前は正しくない。正しい名前は『海温め装置』だ」と指摘されました。
私はこれを聞いて、目から鱗が落ちる思いがしました。
確かに原発のエネルギーの3分の2は海に棄てられ、海を温めているのですから
「海温め装置」と呼ぶのが正当です。
これは海の生物にとっては大迷惑な話です。
100万キロワットの原発1基は、1秒間に70トンの海水を7℃温めます。
東京の主要河川である荒川でも、1秒間に30-40トンの流量だと思います。
1基の原発は、荒川以上に巨大な川の水を7℃も温めて海に流しているのです。
日本にある55基の原発全体からは、1年間に1000億トンの温かい水が排出されます。
日本全土に降る雨の量は1年間で6500億トンで、そのうち川に流れるのは4000億トンです。
つまり原発は、毎年日本の川を流れる水の4分の1に相当する量を7℃温めて海に戻しているのです。
温暖化対策を真剣に考えるなら、炭酸ガスを問題にする前に
真っ先にこの「海温め装置」を止めるべきです。
(小出裕章)
■放送開始 2013年3月30日(土)~
■Web公開日 2013年4月5日(金)
■ゲスト 西谷文和(ジャーナリスト)
■パーソナリティ 石丸次郎(ジャーナリスト
小出裕章ジャーナル
IAEA「ビキニ環礁は永住に適さない」
西谷:
今日は核実験の事についてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、
今から59年前の1954年3月。
太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁でアメリカが水爆実験を行いましたね。
この時、いわゆる死の灰をかぶった、第5福竜丸の乗務員の久保山無線長が、
半年後に亡くなるという痛ましい事件になってしまいましたが、
この「死の灰」これはよく聞く用語なんですけれども、
どのように理解すればいいでしょうか?
小出:
はい。
ウランという物質を核分裂させるという事が原爆の原理ですし、
現在やっている原子力発電所の原理でもあるのです。
ウランをそうして核分裂させてしまいますと、
核分裂生成物という、およそ200種類に及ぶ放射性物質が出来てしまうのです。
で、もともとウラン自身が放射性物質ですので、危険なものなのですが、
それを核分裂すると、放射能の強さが約1億倍に膨らんでしまうという、
西谷:1億倍
小出:
はい、そういう現象なのです。
で、出来た核分裂生成物の中には、寿命が著しく短いものもありますし、
また長ーい寿命を持った放射性物質もあるのです。
それが原爆が爆発する、あるいは水爆の起爆にも原爆を使っているのですが、
原爆を爆発させてしまいますと、一気に大気中に噴き出してくる訳ですね。
で、短い寿命のものは被ばくをする人の所に届く前に消えてくれるものもあるわけですけれども、
久保山さん達が乗っていた第5福竜丸というのはビキニ環礁の、かなり、
100何十キロだったと思いますけれども、のところにいて、
そこまで「死の灰」いわゆる核分裂生成物が飛んでくるまで
それほど長い時間がかからないで降ってきてしまったわけです。
船の上で、もう逃げることもできませんので、
雪のように降ってきた放射性物質を浴びてしまって、そのまま汚れた船に乗ったま、
とにかく焼津まで逃げて帰ってきた訳ですけれども、
その間ずーっと被ばくをし続けてしまうという事になりました。
西谷:
なるほど。
この100数十キロ離れた第5福竜丸ですら、そうとうの「死の灰」をかぶったわけですけれども、
このビキニ環礁、当然アメリカ政府は汚れてしまう事が、
汚染されてしまう事を予想して、島民に離党させていました。
ところが元の島、住み家に帰りたいという人たちが70年代に139名が帰島をしています。
ところが健康不安があってですね、「ちゃんと調査をせよ」ということで、
98年にIAEAがビキニ環礁は
「定住してそこで得られる食料を摂ると、年間15ミリシーベルトに達するので永住に適さない」
という結論を出しているんですが、これは15ミリ。
ところが、福島の場合2011年4月に政府は計画的避難区域に指示をする基準をですね、
20ミリシーベルトに、年間積算線量を20ミリシーベルトを基準として出してきていましたけれども、
この20ミリシーベルト、…IAEAは「15ミリでも危ない」と言っている訳ですけれども、
「永住には適さない」と言っている訳ですけれども、
それを基準に考えた時、この20ミリというのはどのように考えたらいいですか?
小出:
もちろん適さないのです。
もともと日本というこの国では、
「普通の人々は1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてもいけないし、させてもいけない」
という法律があったのです。
何故かと言えば、被ばくをする事はあらゆる意味で危険で、
仮に1ミリシーベルトにとどまったとしても危険はある。
それでも「日本というこの国に住む以上はその程度の危険はをしなさい」ということで引かれた基準が
1年間に1ミリシーベルトというものだったのです。
ただ私はたとえば、京都大学原子炉実験所という職場で働いていまして、
もちろん放射能を取り扱ったりするわけですね。
それで給料も貰っていますので、私を雇っている側からすると、
「お前には給料をやっているのだから、被ばくは少しぐらい我慢をしろ」と言ってくる訳です。
そして私の1年間に被ばくをしていい、というか、それ以上は被ばくをしてはいけないという限度は、
1年間20ミリシーベルトなんです。
それから私のようなごくごく特殊な人間で、
「それを仕事にして給料をもらっているというような人間はその程度は諦めなさい」
として決められた基準なのです。
それを一般の人々に押し付けるというような事は、もう、到底許せないと私は思います。
北朝鮮「沢山の死人と先天性異常」
西谷:
それで、私は北朝鮮の取材をずっと続けている中でですね、
北朝鮮の内部の人達とよくインタビューを繰り返していると、
ま、軍の統制地域の傍、あるいはおそらく核関連施設の傍でですね、
あの、沢山の死人が出ているだとか、それから先天性異常の子どもが非常に多く生まれているという話を、
ま、不確かな部分もあるんですけれども、良く聞くんですよね。
核実験は武器としても非常に怖い一方でですね、
「北朝鮮という国で、ちゃんとした核物質管理がされているのか?」ということも非常に私はやっぱり怖いなと、
中に住んでいる人の立場、それから北朝鮮、朝鮮半島の大地が汚れるという事に、
非常に憂慮を感じるんですけれども、
あの、本題とちょっと離れますけれども、この北朝鮮の核実験について、
実験の報を聞かれてですね、小出さんはどういう印象、感想をお持ちになりましたか?
小出:
私は「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を持っているかどうか」というその事自身に疑いを持っています。
「核実験をした」というような事を言っている訳ですけれども、
それはむしろその朝鮮民主主義人民共和国の方から
「自分の国は強いんだぞ」ということを言いたいための宣伝である可能性もまだ私は残っていると思っています。
何故かというと、核兵器を作ろうとすると、プルトニウムという物質を分離しなくては行けなくて、
それが再処理と言われている工程なのです。
しかし、朝鮮民主主義人民共和国にはその再処理工場はないのです、まだ。
ですから基本的に私は、
「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を作る力がいまだにない筈だ」と私は思っているのです。
ただし、まぁ、「核実験をやった」と言っている訳ですし、
もしそうだとすれば、え…、大変不完全な形で再処理ということをやっている。
「工場もないの」にですね。
もともと再処理というのは膨大な危険を抱えている作業でして、
米国はハンフォードというところでやりましたが、
ハンフォード周辺は膨大な放射能汚染をしています。
ロシアも原爆を作るために再処理をやりまして、
チェリャビンスクというところでやったのですが、
そこも膨大な放射能汚染をしてしまっていて、周辺の住民に被害が出ています。
ですからどこでも原爆を作ろうとするようなところは、
環境を破壊しながら、人々に危害を加えながらやってきた訳です。
ましてや朝鮮民主主義人民共和国には再処理工場という正式なものが無い状態ですので、
そんなところで、もし再処理という作業を本当にしたのであれば、
環境が汚れることはもちろん避けることはできませんし、
周辺に被害が出ているということも頷けます。
西谷:
なるほど。
なかなか情報が出てこない国で、
だから故にですね、余計にその被害の広がりなんかが本当に心配になりますね。
小出:はい、そうです。
西谷:解りました。どうも小出さんありがとうございました。
ロシア チェリャビンスク
2013年2月15日現地時刻9時頃には重さ10トンと見られる隕石が落下。
1957年にチェリャビンスクから150キロメートル北西にあるオジョルスク市(秘密閉鎖都市のため、当時はチェリャビンスク-65と呼ばれた)のマヤーク核兵器工場で事故が発生し、3万人を越える住民が被曝した。
「北朝鮮に核兵器があるということはあり得ない」と思う理由~小出裕章ジャーナル6/29
ラジオフォーラム(文字起こし)
■放送開始 2013年3月23日(土)~
■Web公開日 2013年3月29日(金)
■ゲスト 阪口徳雄さん(弁護士、政治資金オンブズマン共同代表)
■パーソナリティ 石丸次郎(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
2年前のあの日
石丸:
東日本大震災、そして東電の福島原発の事故から丸二年が経ちました。
あの地震の時は小出さんはどちらにいらっしゃいましたか?
小出:私の職場の放射線の管理区域の中で仕事をしておりました。
石丸:熊取町は大阪府の南の方にありますけれども、そこでも揺れは感じられましたか?
小出:全く感じませんでした。
石丸:
あぁ、そうですか。
私は大阪市内で仕事をしてたんですけど、結構揺れたんですね。
小出:そうですか、
石丸:
で、その後ニュースで大きな地震だと。
それから津波が押し寄せたって事は、すぐにお知りになりましたか?
小出:
えっと、今聞いていただいたように管理区域の中で結構重要な仕事をその日していまして、
朝からずっと管理区域の中に閉じこもっていました。
それで夕方になって職場の同僚たちの会議があったので、
管理区域から出てきて会議室に行きました。
その会議室にテレビがありまして、そのテレビでみんな釘づけになってニュースを見ていました。
それで私も初めて地震と津波があったという事を聞きまして、
え…、随分驚きました。
石丸:
あの津波、太平洋沿岸に、広い範囲に押し寄せた訳ですけれども、
福島はじめ、いくつも原発のある地域に津波が押し寄せましたね。
小出:そうです。
石丸:
あの津波を見て、そして地震の規模を知られてですね、
当然原発の事をご心配されたと思うんですけど、
どういう事をお感じになりましたか?
小出:
ちょうど私がテレビのニュースを見た時に、仙台空港に津波が押し寄せている映像だったのです。
仙台というのは、私が学生時代に過ごした町ですし、
少し離れた所に女川の原子力発電所というものが建てられてしまって、
私は女川の町でも原子直発電所に反対して活動していたことがありましたので、
大変不安に思いました。
その時に。
女川の原子力発電所を含め、東北地方の太平洋岸に原子力発電所が連立しているわけですから、
これは容易ならない事にすでになっているという事に気が付きました。
それからは自分で情報を集めるように勤めましたし、
マスコミからもヤイヤといろんな問い合わせがきて、
まさに戦争のような状態に陥ってしまいました。
1ミリシーベルト
石丸:
じゃ、そこから、
まさに今おっしゃった戦争のような状態が今日まで続いている訳ですけれども、
今日、先ずリスナーの方から質問が寄せられていますので、お答えいただければと思います。
福島の除染目標である1ミリシーベルト問題について。
国は除染事業で、年間追加被ばく線量を1ミリシーベルト以下にすると長期目標にしています。
この数値は安全なのか危険なのか?
福島県の佐藤知事は「新たな安全基準」を示すよう国に求めていますが、
小出さんはどうお考えですか?というご質問です。
小出:
はい。
年間1ミリシーベルトというのは
現在ある日本の法律で「一般の人々にそれ以上の被曝を与えてはいけない」と決められている数字です。
ただ、それが「安全なのか?」と問われてしまえば、「安全ではありません」。
放射線に被曝をするという事は、
「どんなに微量でも危険が伴う」という事が現在の学問の定説になっていまして、
「仮に1年間に1ミリシーベルトという被ばくであっても危険は伴う」というものです。
ただし、このような時代、このような国に住んでいる人間として、
「1年間に1ミリシーベルト程度の危険であれば我慢をすべきだ」として決められた数字です。
私は多分、1年間に1ミリシーベルトという被ばくをしてしまうと、
2500人に一人の方が癌で死ぬ運命を負わされると思っています。
国の方は「いやいや1万人に1人だ、2万人に1人だ」というような事を言っていますけれども、
いずれにしても危険は必ず伴ってしまうというものですし、
危険があるからこそ法律で人々の被曝の限度というものを決めてきたわけです。
私自身は「原子力というものは全く価値が無いし、害悪ばかり」だと思いますので、
「原子力から受ける被ばくというのは一切ゼロにすべきだ」と思ってきました。
ただし、残念ながら私にそんな権限がある訳じゃありませんし、
日本というこの国の法律で1年間に1ミリシーベルトというものを
国家の方から決めて、それを人々に対して規制してきたわけですね。
それなら「その規制値というものを守るのが国家の最低限の義務」だと思いますので、
日本に住む人は1年間に1ミリシーベルト以上の被曝を、どなたもしてはいけないと思いますし、
国がしないようにきちっと対策を取るべきだと思います。
シーベルト・ベクレル
石丸:
はい、わかりました。
それでこのシーベルト、そしてベクレルという単位がですね、
この2年間メディアで非常に沢山使われてきましたけれども、
これもなかなか理解しにくいという声も大きい訳ですけれども、
シーベルト、ベクレルの違い。
それからシーベルトとは何か?というのをちょっと簡単にご説明いただけないでしょうか。
小出:
はい、
ベクレルというのはですねたとえば電球の明るさだと思って下さい。
10ワットの電球もあるだろうし、100ワットの電球もあるだろうし、
もっと多分、野球場の照明なんかはもっと大きい照明もあると思いますが、
そのもともとの強さです。電球なら電球の。
でも、たとえば同じ電球、100ワットという電球があっても、
ごく近くで見れば明るいでしょうけれども、
家の外に出てしまって見ればどんどん暗く、ま、見えなくなるわけですし、
遠くどんどん離れれば、ますます見えなくなっていく訳ですね。
その見えやすいというか、人のいる場所で感じる明るさというものがシーベルトに相当します。
ですから、放射能の単位がベクレルですけれども、
その放射能から遠ざかってしまえば、被曝をする量、
つまり明るさを感じる量というのは減っていってくれるという、それがシーベルトです。
石丸:
わかりました。
それでは来週もまたよろしくお願いします。
Sawadaさんが小出先生に質問して下さっています。
【ペイフォワード環境情報教室】小出裕章先生Vol.021
2013年3月23日
2号機が危険?
Sawada:
昨日ですね、福島第一原発の方で停電騒ぎというのがございました。
発表によるとですね、こちらは
「小動物、ネズミのようなものが原因ではないか」と言うのが発表されている中、
皆さん疑心暗鬼になっていろんな事を想定される方がいまして、
あるブログではですね、
2号機が特に危険であるから、それに対する対応を増強していたための停電ではないか?とか、
いろんなお話しが出ています。
小出先生の方ではどう思われますか?
小出:
はい、私は今回のようなトラブルというのをもちろん歓迎しませんし、
起きて欲しくないと思ってきましたし、今もそう思っていますが、
今回起きた事故という事に関する限り、東京電力の説明は合理的だと思います。
起きてしまったことも小動物がショートさせてしまったという事は実にあり得る事だと私は思いますし、
それを防ぐ事が出来ないほどの厳しい現場だと皆さんに理解してほしいと思います。
Sawada:
そうしますと、特に言われるところで1号機から3号機が、特に何か今危険な状態にあるのではないかと、
「今2号機が特に」であるというような表現が出ますが、
それはどう思われますか?
小出:
特に2号機だけが危険という事はないと思います。
1号機から3号機まで等しく危険です。
どれも原子炉の炉心という部分が溶けて落ちてしまっていますので、
それをとにかく収束させなければいけないという事が最優先でして、
今でも東京電力は間断なく水をとにかく入れ浸すという事をやっている訳です。
それはやり続けなければいけませんし、
ただしやってしまえば汚染水が増えてくるという、
どっちに行っても大変だという、その仕事に追われているという状態です。
2号機だけが危険という事ではないと思います。
Sawada:
そんな中、窒素を注入したというニュースがたまに入ると
これはまた「危険だからなのじゃないか」という事なのですが、
こちらは一応「爆発を防ぐため」というようなところをよく聞かれますけど、
あの…、「入れたから危険」という事ではないのでしょうか?
小出:
要するに水素爆発というものが2011年3月11日以降、
12日14日15日と次々と1号機3号機4号機で起きたわけで、
ああいう爆発というものはなんとしても防がなければいけない訳ですね。
で、あの時に起きた水素爆発というのは、
燃料が溶け落ちていく過程で、
燃料の被覆管に使っていたジルコニウムという合金が水と反応して発生した水素、
大量に発生するのですが、それが原因だったと私は思っています。
ただし、水素が発生する原因はジルコニウムと水が反応する以外にも、
水が放射線に被曝する事によって分解して水素が出るという、そういう物理現象もありますので、
今現在も水素の発生はゼロではありません。
その水素がどこかでまた爆発するという事は、出来れば望まない訳だし、
何とかして防ぎたいと東京電力も思っているはずで、
そのために窒素も入れているという事だと思います。
やらないよりは、もちろんやった方がいいと思います。
遮蔽壁
Sawada:
そうなると今は対策というよりは現状に対して対応しているというのが精一杯のところかもしれませんし、
また小出先生からは今までのとおり4号機についてはですね、使用済み燃料について、
プールに入っている部分について早く移動すべきだというようなお話しが一ついただいておりますが、
今1号機から3号機が等しく危険と言われている中で、
またこれも先生が以前から提唱されていますけれども、
遮蔽壁っていうんですかね、地下水との接触を防ぐというところについてですけれども、
こちらについてはどう思われますか?
小出:
残念ながら溶け落ちた炉心がどこにあるか?という事がわからないのです。
私にもわかりませんし、東京電力も知ることが出来ないという状態なのです。
東京電力はコンピューターで計算したところ、
「まだ格納容器の中にとどまっている」というような事を発表した時がありましたけれども、
でも「そのシュミレーションがどこまで正しいか」という事を確かめる事が出来ない訳で、
場合によっては溶け落ちた炉心がすでに地下に溶け落ちて、地下水と接触しているかもしれないのです。
そういう事態が進行していけば、放射性物質の環境への漏出という事が避けられなくなってしまいますので、
私は出来る限り早く、溶けた炉心と地下水が接触しないように、
地下に防壁を張り巡らせる必要があると発言をしてきています。
東京電力の工程表にも、それは含まれてはいるのですけれども、
いまだにほとんど作業は成されないままです。
少しでも早く、私はやって欲しいと願いますし、環境への放射性物質の拡散は防ぐべきだと思います。
ただしそれをやろうとすると、膨大なお金がかかる事になりますし、
さらに私が一番心配なのは、
多数の労働者たちがまた、その作業のために被曝をしていってしまうという事です。
収束担当大臣だったら
Sawada:
あの、良くみなさんからお聞きになるかもしれませんけれども、
「小出先生が収束担当大臣だったら良かったのに」と言う事が、常にみなさんの願いとしてあると思います。
いろんな制約がある中、多分費用もそうですし、人の問題、被曝の問題、いろいろありますが、
小出先生がもし収束担当大臣になった場合、たとえばそういういろんな制約がある中、
「こういうものをもう少し優先してやっていけたらいいのにな」というのは、
何か先生のお考えってございますか?
小出:
もちろん沢山あります。
事故直後に汚染水が次々と溢れて来た時には、
私はとにかくその汚染水が漏れないようにしなければいけないという事を考えまして、
巨大タンカーを福島に走らせて、そのタンカーに汚染水を溜めて
それを東京電力の柏崎刈羽原子力発電所に輸送すると、
そうすると柏崎刈羽原子力発電所には廃液処理装置がありますので、
それを使って何がしかの、やはり放射能の補足という事が出来ると思いましたし、
やって欲しいと発言をしました。
もし私が収束の大臣だったとすれば、それをやったと思いますし、
今聞いていただいたように、地下に遮蔽の壁をつくるという作業も、私はやるべきだと思いますし、
私に権限があるなら、やります。
ただし、残念ながらこの事故をどうやって収束したらいいのかという事に関しては、
わからないのです。
人類が遭遇して初めての経験で
4つの原子炉が同時に壊れてしまっていっているという、大変厳しい状況です。
もちろんやらなければいけない事はわかっています。
溶け落ちた炉心が環境に汚染を広げないようにするとか、
今現在も危機にある、4号機の使用済み燃料プールの崩壊を食い止めなければいけないとか、
さまざまに言える事はありますけど、
どれ一つをとっても大変な作業だし、
必ず被ばく作業になってしまうという困難を抱えています。
目の前にある重大な問題一つ一つに向き合って、重大さという事を考えながら、
とにかくこれ以上の悲劇が来ないように出来る事を一つ一つやる事しかないと思います。
Sawada:
そうですか。
ありがとうございました。
続きを読む
「福島第一原発停電事故・小出裕章」
水野:
報道するラジオ、今日最初の特集テーマは
「福島第一原発停電トラブル」
あの、平野さん、今回の事をね、
東電はいまだに「事故」とは呼ばないんですね、
平野:
「事象」と言っていますよね。
電力会社はよく原発の事故の時には「事故」とか、
ま、最大限「トラブル」という時もあるんですけど、
本当に事の重大な物でも矮小化して言いますよね。
水野:3.11のあの時も、最初は「事象」と、言っていたと覚えております。
平野:そうですよね、はい。
水野:
今日はですね、京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに繋がせていただきます。
小出さんこんばんは~。
小出:こんばんは、
水野:お久しぶりです水野です。
小出:はい、お久しぶりです。
平野:ひらのです、
小出:はい、平野さんご無沙汰しておりました。
水野:
小出先生には是非とも伺わなくてはという「事故」が起きてしまいました。
小出さん、じっくりといろんなお話を伺いたいんですが、
先ずその前にですね、私どもの上田孝之アナウンサーが福島県で今取材をしております。
その電話をつなぎますので、
一緒に上田アナウンサーの報告も、小出さん聞いて頂けるでしょうか?
小出:はい。ありがとうございます。聞かせていただきます。
水野:
よろしくお願いいたします。
では、福島第一原発停電を受けて、いまどんな風に地元のみなさんが思っていらっしゃるのか、
上田孝之アナウンサーの報告です。
上田さん、こんばんは。お願いします。
ネズミすら怪しい 停電しょっちゅう
上田:
福島県のいわき市に来ております。
ここは原子力発電所から40kmぐらいの距離のところなんですけれども、
地元の方に話を聞きますと、地元の方はこの停電について、
ま、FM局で少しニュースとして取り上げているという状況はあったものの、
「全国のニュースほど、ローカルでは大きなニュースにならなかった」と皆さんは成しています。
水野:
えぇ~っ!!
ローカルの方が大きなニュースになるのが普通じゃないですか?
こういった事は…、
上田:
ええ、
情報はですね、「テレビで知った」という人がほとんどで、
ですからやはり、3時間ぐらい遅れて情報が伝わってきますよね。
水野:はい。公表は3時間以上遅れました。
上田:
ま、そのタイミングでみなさんお知りになったと。
たとえば、自治体とか、国とか、東京電力とか、
直接緊急的な連絡という事などはなかったという事なんですね。
で、皆さん今回の事についても、
あの、最近やっぱり体で感じてしまうのは「花粉症のほうが大変なんだ」と。
水野:すぐに感じるのは花粉ですからね。
上田:ええ。
で、やっぱり放射線、放射能というのは見えないですし、匂いもしないので、
やはりそのあたりに関しては、そういう事の情報の伝わり方でも、
「ま、こんなもんだよね」と。
水野:へーーっ!
上田:「マンネリしてしまっている」というふうな話でした。
水野:はぁ~~っ!
上田:
ただ、皆さん憤っている方もいらっしゃいまして、
「温度が規定の上限まで上がるのに4日かかる」という事だったら、
そのうちに逃げないといけないケースになることもあるわけで、
「真実をしっかり教えてほしい」と。
「いつになったら本当の事を教えてもらえるようになるのか、福島県民をバカにしている」
と言う声もありました。
そして原因が「ネズミのような小動物」という情報がありましたけれども、
「そういった動物1匹如きにやられるなんて」と、憤る人と、それから
「ネズミすら怪しい」と。
「後から持ってきたんじゃないんですか」という声も聞かれました。
一方で福島第一原発に入っている作業員の方の話なんですけれども、
第一原発の中の事について聞きますと、
「配管やタンクなども仮設のまま放置されているというものがいっぱいあります」と。
水野:ほぉーー、
今回は、配電盤が仮設であったという事が一つの原因だと言われていますけれども、
それだけじゃない、配管タンクも仮設の状態であると。
上田:
はい。
「本来整備しなければならない設備が、放射線などの影響で、途中でほったらかしになっている現状です」
「保安設備はとりあえず仮設のものばかりですよ」と。
水野:
保安設備は仮設のものばかり
それは現在福島第一原発で作業をしていらっしゃる方々が、
ま、いわき市ってね、そこでとまってらっしゃる方も多いから、
それでいましゃべっていらっしゃる貴重な証言ですね。
上田:
今日も中で仕事をされていた方のコメントなんですけど、
それから、汚染水をためるタンクなんですけれども、
「中には鉄をボルトで留めたものもあって、溶接が出来ていない」と。
で、「汚染水が漏れたというケースもありました」というふうに話していました。
水野:え?汚染水が漏れていくようなタンクなんですか?
上田:
はい、「そんなものもある」と。
それぐらい仮設なんだと、急いで作っているもんなんだという事ですよね。
それから停電について話を聞いたんですけれども、
「今回は冷却システムに影響したので大きなニュースになったけれども、今までも何度かありました」と。
水野:停電はしょっちゅうしてるっていう事ですか?
上田:
ん~、ちょくちょくあるらしいんですね。んーーん…
それから、汚染水を浄化するような配管も
「ただの耐圧ホース」というホースを使っているところもあるということもあって、
水野:えっ?ホースが本格的なホースじゃないっていう事ですね?
上田:ということなんですね、はい。
水野:ホースでさえ、ま、いうたら、かりの、仮設のホースだっていう事ですね。
上田:はい。
そしてあの、ま、何人かの方がこの週末は急遽土日出勤という声も聞かれまして、
中でなにがいったい起こっているのかわからないので少し気になる状況ですよね。
で、町の方は、昨日実は2時34分に震度3の地震があったんですね。
その時はみなさん慌ててガソリンスタンドに行きまして、「行列が出来ていた」と。
水野:うわぁ~…、
上田:
やっぱり、「きちんとした情報を出して、判断基準を教えてほしい」と。
もう命がかかっていますので、健康がかかっているので、
何とかそれを伝わるようにしてほしいという声が聞かれました。
水野:はい。
上田さんはこの後も取材を続けるんですね。
上田:そうですね、少し残って、もう少し話を集めてみます。
水野:はい、ご苦労様でした。
上田:はい。
こういうやり方しかできない
水野:
今日は京都大学原子炉実験所助教、小出裕章さんにも聞いていただいております。
小出さん、今の上田アナウンサーのリポートをお聞きいただいて、
現地の地元の皆さんの声、作業員の方の声いかがでしたでしょうか?
小出:目に見えるようです。
水野:本当ですね。
先ずは作業員の方の証言がいくつもありました。
この、今回配電盤が問題だと言われていますけれども、
他にも「仮設のものだらけ」だという話、
そんな状況でしか、2年も経っているのに無理なんですか?
小出:もちろんです。
水野:それはどうしてですか?
小出:
こんな事故が起きるとはだれも思っていなかったのです。
そして、4つの原子炉が同時に溶け落ちてしまうなどというような、
人類が今まで一度も経験したことが無いような、過酷な事態が今進行しています。
それをともかく、何とか収束させなければいけないわけで、
東京電力というか、現場では、いわゆる下請け孫請けの労働者たちが被曝をしながら苦闘をしているのです。
でも、大半な被ばく環境ですので、
すぐに完ぺきな装置を作れるなんて事はないわけで、
思ってもいなかった現場で、思ってもいなかったような事態に、
仮設、仮設で、対処するしかないという、本当に過酷な現場なのです。
水野:
ただ、あの、リスナーの方々からもね、
「バックアップの電源を用意するのは難しかったんですか?」
あるいはほかの方も、
「3.11の教訓は“原発は絶対に停電させてはならない”という事だったんじゃないんですか」
とおっしゃる。
実際、バックアップの電源を用意する事さえ出来ないんですか?
2年も経って。
小出:
いまの仮設の配電盤があったと、私も東電の発表で聞いた訳ですが、
その仮説の配電盤もトラックの荷台に載せてようやく現場に運び込んだものなのです。
その現場というのは、1時間当たり300マイクロシーベルトという、
水野:
300マイクロシーベルト、1時間当たり。
それって、どういう値なんですか?
小出:
えー、今私がいるこの家、私の自宅ですけれども、
1時間当たり0.05マイクロシーベルトぐらいです。
それが0.6マイクロシーベルト、つまり約一桁上がってしまうと、
もう放射線の管理区域にしなければいけません。
水野:普通の人は入っちゃいけません。
小出:
はい。
普通の方は入れないような場所になってしまう訳です。
そして私が働いている京都大学原子炉実験所には、もちろん放射線管理区域がありますが、
その中でも特に被ばくが激しいという場所ももちろんあるのですが、
1時間当たり20マイクロシーベルトという、空間ガンマ線量率を超えてしまうような場所は、
「高線量区域」として、特別に規制されるというのが私の職場です。
いま、20と私は数字を聞いていただいた訳ですけれども、
それが300なのです。
水野:300!
小出:
はい。
もう到底、労働者ですら「普通ならば行かれない」という現場に配電盤があるわけですし、
そこでトラブルが起きたからといって、簡単に見に行くこともできませんし、
修理することもできないし、
ましてや「もっともっとバックアップを作っておけよ」というような事をもちろん私も思いますけれど、
できないのです、そんなことは。
平野:
今回たこ足配線ですぐに、なかなか原因が分からなかったですよね。
これはこういうやり方しか出来ないんですかね?
小出:
本当はもちろん出来るわけだし、ちゃんとやらなければいけない事なのです。
ただ、あまりにも過酷な事故が今現在も進行しているのです。
みなさんなんかもう2年経って事故が収束して、
ゆっくり落ち着いて様々な機器が設置できると思われているのだとすれば、
全く違います。
水野:
全く違うんですね、はぁーっ!
仮設以外のものを備えようなんていうことすらが出来ないぐらいの高い放射線量。
今回ね、結局大気への放射性物質の放出というのが無かったので、
その意味では、なんか通り過ぎてしまった一つの出来事のように捉えている人もいるのかも知れませんけれども
これ、もしも最悪の事態に繋がっていたとしたならば、
どんな事が起こり得る出来事だったんですか?
小出:
使用済み燃料プールの冷却が出来なくなったのですね。
その事自身は私は大変深刻な事だと思っていますが、
ただし事故からすでに2年以上経っている現在、
使用済み燃料プールの底に眠っている使用済み燃料が出している熱、
私たちが崩壊熱と呼んでいる熱は、かなり減ってくれています、ありがたい事に。
そのため、仮に冷却が停止しても使用済み燃料プールの水が干上がってしまうとか、
そういう状況になるまでにはかなりの余裕があるという事は、私は本当だと思っていますし、
水野:4号機場合で4日少しと言われていますね。
小出:それも、ま、65度を超すというところで
水野:65度を超すという事ですよね。
小出:
もちろんそれも、そんなことはいけないことですよね、
65度なんて、人が入ったら火傷して死んでしまうという位の熱湯ですよ。
そんな温度にプール全体がなってしまうという事ですから大変な事なのですけれども、
でもその水が100度になって、沸騰していってプールの水がどんどん失われていく。
2011年3月11日には、まさにそういう状況で危機的で自衛隊がヘリコプターから水を撒いたり、
東京消防庁が水を放水車で入れたり、とにかく水を入れようとしたという、
あの時から比べれば、随分崩壊熱自身は減ってくれていますので、
今現在で言えばかなり、今回の事故に関しても私はまだ余裕があったと思いますので、
皆さん大変ご心配になったとは思いますけれども、
今回の事だけで言えば、…まだ良かったと思います。
ただ、いついかなる時でもこのように乗り切れるという事にはなりませんので、
バックアップも含めて、きちっとやはりやらなければいけないと思います。
ただし、それは全て被ばくを伴う作業の上にしか成り立ちません。
水野:それはロボットで代わりをするなんていう事は、
小出:
先ずは出来ないと思って下さい。
ロボットというのは、教えた事、決まった事をやる事は出来ますけれども、
わからない事に一つ一つ対処するという事は、いまのロボット技術にはありませんので、
基本的には人間がやると思わなければいけません。
水野:
そうしますとね、今回冷却装置が停止したところの部分だけでも
8800本以上の核燃料が保管されていると
小出:そうです
水野:
聞きました。
それがですね、あれもこれも仮設の、仮の、そんな中に8800本眠っている訳ですよね。
小出:はい
水野:
で、今回、ほんまにネズミやったとしてですよ、
「ネズミ一匹でこれがエライ事になるやもしれぬ」という不安を抱きますが、いかがですか?
小出:
仕方がないのです。
それほど厳しい状況が今もあるし、
2011年の12月には野田さんが「事故収束宣言」などというものを出しましたけど、
事故はもう全く収束していないのです。
ただただ、水をかけて冷やすしかないということで2年も続いている訳ですし、
いつ崩れ落ちるかもしれない4号機の使用済み燃料プールもいまだに手を付ける事が出来ない。
今年の末になって、ようやく何とか「プールの底から使用済みの燃料を吊り出せるかな」という作業が、
“今”続いているのです。
きちっと情報を出すことすらできない
平野:
先生、今回東電のですね、情報の隠ぺいぶりというか、
告知の遅れというものが全く体質が変わってないなという印象を受けたんですけれども、
今回のこの事故直後に、規制委員会にはすぐ報告をしておきながら、
メディアとかですね、
県の方にも1時間遅れということで、
こういうものはやっぱりすぐに言うべき話で、
規制委員会も「発表しなさい」と言って指導するべき話じゃないんですか?
小出:
はい、おっしゃる通りです。
マスコミ、いわゆるジャーナリズムの現場にいられる方々にしっかりと認識してほしいし、
「東京電力の発表を待っている」というような事ではなくて、
積極的になにか情報を得るような仕組みというものをつくらなければいけないと思います。
水野:
先ほどの上田アナウンサーのリポートの中でね、地元の方々が、
「4日間まだ余裕があるとはいえ、避難しなきゃならんとなったら時間がかかるじゃないか」
と、おっしゃっておりました。
小出さん、今回国はですね、菅官房長官は「ある意味で全く心配ない」と、
19日午前の記者会見で述べていたんですけれども、
国の、その、やるべきことというのはこのような事態ではどうであったと思っておられますか?
小出:
間抜けた人達ですね。
ま、事故当時も、2011年3月11日当時もそうでした。
確かに今回の停電に限って言えば、「まだ余裕があった」という事は本当だと私も思います。
しかし、思わない事がやはり今回も起きているわけですし、
危機感というものを持って対応しなければいけないし、
情報を少しでも早く住民に知らせなければいけないわけですけれども、
2011年3月11日もそれに失敗しました。
きちっと情報を出すこともできない。
なにが起きているかを整理して考える力すらがないという日本の政府だったのです。
いまだにそれが続いている訳ですし、
自分たちのやった事、
いまのあり方というものを、もっともっと、本当反省しなければいけないと思います。
水野:
これ、今回の東京電力の説明を小出さんはどう見てらっしゃるんですか?
本当にこれはネズミのような小動物のせいであり、電気系統だけの問題なんでしょうか?
小出:
今回の停電に関しては、私は東京電力の説明に合理性があると思います。
ただ、逆に言うなら、ネズミ一匹によって、これほどの事が起こってしまう。
それを防ぐ事が出来なかったという、それほど厳しい現場なんだという事を
改めて教えてくれたという事だと思います。
水野:
こうした同じような事を防ぐ事って、出来るんですか?
何をすれば出来るんですか?
小出:
もちろん電源を二重化しておけば今回だって防げた訳ですし、
トラックの上に載せた配電盤、いわゆる仮設の配電盤でずーっとしのいできたわけですけれども、
そうではなくて、ちゃんとした配電盤を、
もっとましな場所につくっておくという事をやれば良かったと思います。
でも、出来ないのです。
水野:はぁー…
小出:「それほど厳しい現場が今ある」という事を皆さんに分かって欲しいと思います。
平野:
そういう意味でも政府の言う「廃炉に向けた工程に支障はない」というのは、
「全くその通りではない」と疑ってみなきゃダメですね。
小出:
もちろんです。
廃炉なんか政府が言っているようには到底できません。
平野:30年、40年なんて…もうそんな数字じゃないんでしょ?これも。
小出:
もちろんありませんし、30年、40年経って、
本当に万が一上手く、使用済み燃料をどこかに、少しでもましなところに移せた。
溶け落ちた炉心をなんか、少しでも片付ける事が出来たとしても、まだ事故はずーっと続くのです。
何十年も放射能の拡散を防ぐために苦闘をしなければいけないという、
それほど厳しい状況です。
水野:
リスナーの方も
「これから何十年、何百年と続く収束作業を考えてみるだけで気が重くなってしまいます」と下さいました。
あの…今回起こったような事は、福島第一原発だけですか?
全国にある他では無いんですか?
小出:
もちろんあり得るわけですね。
日本の政府、もちろん自民党がずっとやってきた日本の政府があって、
その政府が「日本の原子力発電所だけは絶対に安全です」
「安全性を確認したから動かしていいです」と言って
日本中に50何基もの原子力発電所をつくってきてしまいました。
しかし、実際には福島第一原子力発電所で事故が起きてしまったのです。
だからどんなに政府が安全のお墨付きを与えたとしても、
事故というのはお墨付きをすり抜けて起こるという事を今回の事故が教えてくれている訳ですから、
問題はもちろん福島第一原子力発電所だけではありません。
世界の地震の1割2割が日本で起きるというほどの地震国なのですから、
こんなところに原子力をつくってしまった、抱えているという事を
もっとみなさん深刻に受け止めるべきだと私は思います。
水野:どうもありがとうございました。
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■放送開始 2013年3月16日(土)~
■Web公開日 2013年3月22日(金)
■ゲスト 森達也さん(作家・映画監督)
■パーソナリティ 石井彰(放送作家)
小出裕章ジャーナル
石井:
今日小出さんにお聞きしたいのは、経済産業省から3月1日、
「エネルギー基本計画を検討する有識者会議」の新たな委員が発表されましたが、
いわゆる「原発をもう止めようじゃないか」というメンバーは二人しか入っていずにですね、
これは明らかに安倍自民党、公明党連立政権は、
「原発をもう一度動かそうじゃないか」
というような気配が感じられるという見方もあるんですがいかがでしょうか?
小出:気配どころか、「絶対にそうする」と彼らが宣言したんですね。
石井:
「エネルギー基本計画」というのの前にですね、
以前小出さんにお話を伺った時に、「日本は原発推進の法律があるんだよ」と。
「この法律を先ず何とかしなければいけない」というお話もありましたよね。
小出:私はそう思います。
石井:いつ頃決められたのか?という事をちょっと簡単に、
小出:確か、1955年?54年か55年だと思いますが、
石井:1950年代に、はい。
小出:
「原子力基本法」という法律を作りました。
それは「平和目的に限る」という事が書いてはあるのですけれども、
でも少なくても「原子力をこれからどんどん進める」という事が書かれていて、
原子力基本法のもとで、日本の原子力開発というものが行われてきました。
石井:
そうすると、実際に原子力発電を無くそうというふうに考える人達は、
まず、「この法律を何とかしなければいけない」という事になりますよね?
小出:
そうです。
その法律のもとで様々な組織が作られてきまして、
たとえば「原子力委員会」という委員会も一番初めにつくられました。
その原子力委員会のいまの委員長は、近藤駿介さんという東大の教授です。
その近藤さんがある時に、原子力に反対をする人たちと話をしている時に、
「私は原子力委員会の委員長だし、原子力基本法のもとに仕事をしている人間だ」と。
「そういう人間として原子力発電に反対をするという事は、
法律に反する行為をする事になるので、原子力発電に反対は出来ない」という発言をされました。
まさにその通りであって、
「原子力基本法」という法律がある限りは、
原子力を推進するために仕事をしなければいけなくなってしまっています。
原子力委員会自身が、「原子力開発利用長期計画」というものを作って、
エネルギー計画全体の中で原子力の役割のような事をこれまで決めてきたのです。
その時にはやはり「原子力をどんどんやる」という前提で作ってきたわけで、
エネルギー計画全体のものも、
やはりエネルギーをどんどん使うという方向で作ることになるだろうと思います。
石井:
実際に今回のメンバーをご覧になって、
小出さん自身はどういうふうにお考えになりましたか?
小出:
自民党色がますます強まってきたわけですし、
民主党で少しは抑制的なメンバーがいた訳ですけれども、
今後はもう、本当に原子力をどんどんどんどん推進していってしまうという、
その路線がひかれてしまったという事だと思います。
石井:
実際に「原発をもう卒業しようよ」と、
「原発を止めようよ」という方は二人しか残っていないというふうにも報道されていますが、
なかなか二人で13人残りの人を相手にいろいろと議論するというのは大変ですよね。
小出:
ま、もちろん議論は出来ると思います。
お二人の方はしっかりした方ですから、議論はして下さるだろうと思いますけど、
最後は数で決まってしまう訳ですし、
要するに経産省の方が、もうこの委員会をどうするかという方向性を決めちゃっているわけですから、
どんなに頑張って抵抗したところで、結論は決まってしまっています。
石井:あの、森さんからなにか…。
森:
30年ぐらい前ですよね、忌野清志郎さんが反原発ソングを作ってね、
発売禁止、放送禁止みたいな措置を受けたんですけれど、
小出:そうでしたね。
森:
そこの歌詞の中で、
「いらねぇ、いらねぇ、電力なんて余ってるってよ」そういうフレーズがあるんです。
で、この時代って、多分日本中の原発がまだ20何基、30基無かったんじゃないかと、
小出:そうですね、28基だったかな、30基だったかな?そのぐらいだったと思います。
森:
で、いま54基あるわけですよね。
で、いまほとんど稼働していません。
でも、じゃあ、電力足りてないか?って…、
今年の冬は記録的な寒さだったし、去年の夏は記録的な暑さだったけど、
何ら問題ないですよね。
小出:もちろんです。
森:
だから、「安全か?安全じゃないか?」を論じる前に、
本当に「必要なのか?必要じゃないのか?」
ぼくはもうこれは必要ないと思うんですよね。
この電力状況を考えたらね。
小出:
電力の供給が足りるとか足りないとかいう事であれば、原子力は全くいりません。
それは政府の統計データを見ても歴然としています。
森:
そこからやっぱりもう少し考えるべきで、
「安全か?安全じゃないか?」という論議はその後に、
「本当に必要なんだ」というコンセンサスが出来ればね、その論議にいってもいいと思うんですけど、
それ以前に「電気必要ないじゃん」っていうね、
そういった発想がもっと強く前に出てきてもいいんじゃないかなって気もするんですけどね、
小出:
はい、もちろん私はそう願いますけれども、
今日本の国家の方は「原子力を止めると停電してしまうぞ」という脅しをかけてきている訳ですね。
それで多くの人達は、「電気が使えなくなれば困るから」ということで、
その宣伝に屈服してしまっているという状況にあるわけですから、
森:そうですね、もうほとんど稼働していないのになにが停電なのか、ねぇ。
小出:そうですw、はい。
森:暖房冷房これだけ使っているけど何ら問題ありませんもんね。
小出:そうです。
夏だって、関西電力の大飯発電所の再稼働という事を結局はやりましたけれども、
大飯の原子力発電所なんか全く動かなくても電力供給に支障はなかったという事は、
もうデータが裏付けている訳ですから、
電力供給自体でいうなら、原子力は全く必要ありません。
石井:
あのー、僕らがすりこまれちゃっ他のは、もちろんメディアの責任もあると思うんですが、
小出さん自身はどういうふうに見ていらっしゃいますか?
小出:
それは、国家が原子力をやると決めた訳ですし、
その周りに電力会社をはじめとする巨大な企業がもうすでに群がってきているんですね。
そしてマスコミも全体がその体制に取り込まれてしまっていて、
「原子力は良いものだ」
「原子力を止めればエネルギーが足りなくなるぞ」という宣伝をずーっと流し続けてきた訳ですから、
多くの国民が騙されたとしても、私はあながち無理のない事だなと思います。
石井:ただし、騙された私たちにも責任がある。
小出:はい、当然そうだと思います。
石井:
いつも難しい事に本当に丁寧に小出さんは答えてくれて、
難しい質問ばっかりで申しわけないんですが、
また来週もよろしくお願いいたします。
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吉田照美 ソコダイジナトコ
2013年3月13日
アシスタント 唐橋ユミ
・週刊エンター:「After3.11 ソコトコが伝えたかったこと」
「京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さんが伝えてきたこと」
※後半今日の小出先生が登場します。
週刊エンター、今週は「Afetr3.11 ソコトコが伝えたかったこと」をお届けしています。
小出:
私は原子力を一刻も早く廃絶したいと願いながら、原子力を廃絶出来ないで事故を起こさせてしまった
防げなかった一人の責任者でもあるので、
吉田:
いやいや、そういうことをおっしゃるというのは僕は本当にお人柄だと思うんですけどね、
小出:
とっても残念だけれども、私は非力だった訳ですね。
その非力な私が、せめてこの事故を引き起こしてしまった責任をどうやって取れるか?と言えば、
「子どもを守りたい」という、
そこで、その1点で私のやるべきことはあるだろうと思っている。
ーー
吉田:
今流れましたのは2011年8月にですね、京都大学原子炉実験所にお邪魔した際に、
小出裕章先生に伺ったインタビューの一部なんですけれど、
とにかく僕がビックリしたというのは、
小出先生は専門家の立場から原発無くそうというふうに、ずーーっと働き続けてこられた方なんですけども、
その反対の考えの福島第一原発で事故が起きちゃったことを、
その小出先生が逆の立場でいらっしゃって活動も続けられていたのに、
真っ先に謝られるということっていうのはね、
ぼくとしては本当に、その事だけでも全うだし、
おっしゃっている事が全部得心できるというね、思いに至っています。
唐橋:
東日本大震災が発生した2011年3月11日。
あの日から私たちは何を考え、どんな思いで震災、
特に福島第一原子力発電所の事故と向かい合ってきたのか?
今朝は専門家の立場から原発や放射能について番組でたびたびお話を頂きました、
京都大学原子炉実験所の小出裕章先生のインタビューを振り返ります。
吉田:
小出先生はおよそ2カ月に一度、都合13回ご出演頂いています。
唐橋:
初めてご出演頂いたのが2011年4月11日ですね。
使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを燃料に混ぜ合わせて使うプルサーマル。
福島第一原発3号機で、
そのプルトニウム混合燃料であるMOX燃料が使われていたことから伺った質問では、
こんなお話をして下さいました。
ー
小出:
プルトニウムというのはですね、ものすごく生物学的毒性が高くて、
ウランに比べると20万倍危険だという、そういうものなんですね。
現在日本で使われている原子力発電所というのはウランを燃やすために設計された原子炉です。
たとえば皆さん家庭で灯油のストーブを使っているかもしれませんが、
灯油のストーブにガソリンを入れて火を付けたら火事になるんですね。
ですからウランを燃やすために設計された原子炉でプルトニウムなど燃やしてはいけないのです。
それなのに、プルトニウムが余り過ぎたというので、
普通の原子力発電所でプルトニウムを燃やそうとしているのがプルサーマルと呼ばれる計画です。
ー
唐橋:
また翌月、5月26日の放送では、
原子力発電についてこんなことを語られています。
ー
吉田:
原子力発電を始めた理由の一つにですね、
石油等の化石燃料の枯渇という事が言われていますけれども、
化石燃料が無くなってしまうとしたら原子力に頼らざるを得ないという、
こういう論理はどうなんですか?
小出:私自身はそういうふうに思って原子力の場に足を踏み込んだ人間です。
吉田:小出先生もそうなんですね、実は。
小出:60年代にはずっとそういうふうに言われていまして、
吉田:ね、言われていましたよね。
小出:
私もそれを信じて原子力に来てしまったんですが、
実際にデータを調べてみるとですね、
原子力の燃料というのはウランなのですが、
ウランというのは石油と比べても数分の1しか資源がありません。
石炭に比べれば数10分の1しかないという事で、実に馬鹿げた資源だったのですね。
ー
吉田:
推進の方々はこのあたりどういうふうに受け止めているんでしょうかね。
さらに福島第一原発4号機にあります使用済み核燃料プールの危険性が注目される中ではですね、
こういうお話もありました。
2012年2月20日の放送です。
ー
小出:
4号機の場合には使用済み燃料プールが埋め込まれているその階すらが爆発で吹き飛んでいるのです。
だから使用済み燃料プールが宙ぶらりんのような形でまだ存在しているわけで、
これから大きな余震でも来て、使用済み燃料プールが倒壊するような事になれば、
それで、一切の打つ手が無くなると思います。
ー
吉田:
もう、この発言でもう、絶望っていう以外に何にもないっていう思いに至ると、
このあたりの事を、本当に推進している方々、
推進を信じている方にね、やっぱり問い返したい気持ちに強くなるわけですけれども、
メルトダウンした1号機2号機3号機よりも、
4号機の核燃料プールが危険だという事を事故直後から小出先生は指摘されていまして、
違う日にご出演頂いた際にはですね、
「万が一倒壊するような事があれば、東日本は壊滅してしまう」とおっしゃっていたのは
実に衝撃的でありました。
その危機は今現在も続いているという事は、いまの現状なんですけれども、
今朝はここで小出先生と電話でまたご出演頂けるという事なので、お呼び出ししてみたいと思います。
小出先生お早うございまーす。
小出:おはようございます。
吉田:
非常に短い時間で恐縮なんですけれども、
原発事故と我々が今現在おかれている状況を
小出先生のお話で再確認させていただきたいと思うわけなんですけれども、
東京あたりでは放射能の危険性が意識の中でみんなもう薄らいでいる感じがするわけなんですが、
暮らしていくにあたってですね、政府が除染の対象としているような場所を除けば、
その土壌汚染であるとかですね、外部被ばくはもう気にしなくてもいい状況なんでしょうか?
小出:
放射能、あるいは被ばくという事に関しては、安全量はありません。
ですから、「大丈夫」だとか「安心」とか「気にしなくていい」というような言葉は、
出来れば使わない方がいいし、
吉田さんも今「気にしなくてもいいか」とおっしゃったわけですけれども、
使って欲しくはありません。
どんな場所でも「気にしてほしい」と私は思っています。
特に私たちがこれまで調べてきたところでは、
汚染には濃淡があってですね、ホットスポットと呼ぶところもありますし、
もっと局所的なマイクロスポットと呼ぶように、
本当に限られた場所に猛烈な放射能が濃縮されていたりするのですから、
そういう場所を丹念に調べて、
せめて子どもたちがそういう場所に接しないようにするという注意はしなければいけませんし、
それは現在もそうですし、これから永い間そういう注意は必要だと私は思います。
吉田:
ああ、わかりました。
それと、福島第一原発で増え続けています、高濃度の放射能汚染水の問題なんですけれども、
この汚染水は何時まで増え続ける事になるというふうに思えばよろしいんですか?
小出:ずっと増え続けます。
吉田:ずーーっとなんですか?これ。
小出:
はい、
1号機から3号機までは原子炉が動いている時に地震と津波に襲われまして、
炉心と呼ばれている部分が溶け落ちてしまいました。
そしてその溶け落ちた炉心が今どこにあるかすらわからないのです。
見に行くこともできませんし、知るための測定器の配置もありませんでしたから、
どこにどんな状態であるか?がわかりません。
そのため、ただひたすら水をかけて、冷やさなければいけないという状況がすでに2年間続いている。
で、水をかけてしまえば、そこらじゅうが壊れて穴が開いてしまっていて、
どんどんどんどん漏れてきてしまっているという事になっているわけですが、
水をかける事を止めることができませんので、これからも増え続けていきます。
吉田:果てしない訳ですね、これはね。
小出:そうです。
吉田:
そしてその10年先、20年先と言われています、核燃料の取りだしが行われるまで、
循環冷却が必要ということで、汚染水も当然、これ、出続けるっていう事になるんですよね?
小出:
そうです。
どんどんどんどん増え続けますし、
東京電力は福島第一原子力発電所の敷地の中に、次々とタンクを増設して、
そのタンクに入れながら今日までしのいできたのですけれども、
敷地にはもちろん限りがありますし、
タンクを置ける場所ももうほとんど無くなってきていますので、
やがて汚染水を、今度は海へ流さざるを得なくなると思います。
吉田:もうそれは必然の流れになるんですね。
小出:残念ながら多分そうだと思います。
吉田:
とにかく福島第一原発4号機にある危険性を知った、その使用済み核燃料プールの冷却なんですけれども、
この使用済み核燃料プールは、これもやっぱり際限なく冷却が必要という事になってくる訳ですか?
小出:
そうです。
使用済みになった燃料の中には、核分裂生成物、つまり放射性物質が大量に含まれていますので、
冷やさなければ溶けてしまいます。
ただし取り出した直後には、発熱量が多いのですが、
発熱量がだんだん、年が経るにしたがって減っていっててくれます。
そのため、ずーーっとプールというものの中で冷却しようと思うと、
たとえばプールに穴が開いてしまったら、水が漏れてしまって冷却が出来なくなるとかですね、
そういう危険がありますので、
5年とか10年経って、発熱量が少なくなった段階で、
キャスクと私たちが呼ぶ保管するための容器に入れて、空冷で冷やせないか?という事を考えてきています。
吉田:はぁ…可能なんですか?
小出:
はい。
もうすでにやっているところもありますし、
5年10年経った後の使用済み燃料は、空冷で出来る事がすでに分かっていますので、
福島でもそういう形に、多分なると思います。
吉田:
そうなんですか・・今初めて伺いましたけれど、
それで、使用済み核燃料プールですけれども、
六ヶ所村の再処理工場をはじめとしてですね、全国の原発にこれがあると思いますけれども、
原子炉が停止していたとしても、日本では福島第一原発が現在置かれているような危機の可能性を
す―ーっとこれは抱え続けていくっていう、事になるんですよね?
小出:
そうです。
プールの底に今は使用済み燃料が眠っているのですが、
プールというのは今聞いていただいたように、水漏れとかがあるわけですから、
それで水が抜けてしまうと、また燃料が溶けてしまう危険というのは、
どこの原子力発電所の、どこの使用済み燃料プールにもあるのです。
ですから出来るだけ早く、プールではなくて、
私たちが乾式貯蔵といっている空冷の形に移す必要があると思います。
吉田:
わかりました。
短い時間で非常に今朝は恐縮だったんですけれども、
今改めて現在ですね、小出先生が改めておっしゃりたい事がもしあればですね、
一言お願いしたいんですけれども。
小出:
はい。
吉田さんが初めに東京に人たちがですね、
「だんだん放射能の事を気にしないようになっている」とおっしゃって、
確かにその通りだと思います。
恐怖というのは持続できませんし、
出来れば忘れてしまいたいと皆さん思っていると思いますが、
残念ながら事故はいまだに進行中ですし、
故郷を奪われて流浪化している人が何10万人もいるということになってしまっています。
全く状況は2年経っても改善していませんし、
「忘れないで欲しい」と思います。
私も忘れないでいようと思っています。
吉田:そういう認識は安倍さんにはないんですかね?やっぱり。
小出:私はあの人からそういう認識を感じ取ることができません。
吉田:そうですね!ありがとうございました。またよろしくお願いします。
ラジオフォーラム
小出裕章ジャーナル
■放送開始 2013年3月9日(土)~
■Web公開日 2013年3月15日(金)
テーマ/世界が見えてくる「イラク戦争開戦から10年」
ゲスト/今井紀明さん(特定非営利活動法人D×P共同代表)
パーソナリティ/西谷文和(ジャーナリスト)
西谷:
今日はですね、先生、ズバリ聞きたいんですが、
劣化ウランとはどんな物質なんでしょうか?
小出:
地底からウランを引きずり出してくると、
実はそのウランには2種類あるんです。
西谷:2種類ある、
小出:
それで一つが原子爆弾の原料になったり、原子力発電所の燃料になったりする
核分裂を起こす性質をもっているウラン、というものが一方にあるし、
もう一方に核分裂を起こさないで使い道がないという、そういうウランがあるのです。
核分裂するウランは235番と言う番号が付いていて、
天然のウランの中には0.7%という、大変微量な物しかないのです。
西谷:0.7%しかないんですか。
小出:
はい。
残りの99.3%は238番という番号のついた役立たずのウランなのです。
原爆を作ったり原子力発電所の燃料を作ったりする時には、
核分裂性のウランだけを集めてくるという、「濃縮」という作業をするのですが、
そうすると一方には
今度は核分裂性のウランが少なくなってしまったウランというものが残ってしまう訳です。
それが「劣化ウラン」です。
西谷:
「劣化」という名前なので、何か問題が無いのかな?と思うのですが、
この劣化ウランも人体には危険なんですか?
小出:
もちろん危険です。
ウランは235番も238番も放射能をもっていますので、
もともと超危険な毒物です。
西谷:
今おっしゃったように、地下深くからウランを掘ってきて、濃縮をするわけですよね。
これはやはり原子力発電所のためにという事でしょうか?
小出:
原爆を作るためにも濃縮はしなければいけませんし、
原始力電所の燃料を得る場合にも濃縮をしなければいけません。
西谷:たとえば広島型の原爆の場合、何%ぐらいまで濃縮したら…?
小出:
広島の原爆の場合には、おそらくですけれども、
90%を超えるまで核分裂性のウランを集めたと思います。
西谷:90%。
小出:はい。
西谷:普通の原子炉で燃えている濃縮ウランは何%なんですか?
小出:4%~5%ぐらいです。
西谷:と言う事は、同じ作業をして出来上がるものなんですね?
小出:そうです。
いずれにしても掘り出したウランの中から、核分裂をする性質をもっているウランを集めてくる。
つまり濃縮という作業を、いずれにしてもやらなければなりません。
西谷:
ここでですね、質問がきているんですけれども、
劣化ウラン弾は原発のために作られる中の核のゴミということなんですが、
小出:そうです。
西谷:
日本の原発で使われていたウランのために出た劣化ウラン。
それがイラクやアフガニスタンで使われているのでしょうか?という質問なんですが。
小出:
本当にどうなっているのか?という事は私にはよく分かりませんが、
原理的には使われていると思います。
日本の原子力発電所で使っているウラン、濃縮されたウランですけれども、
それをつくりだすために米国であるとか、一部の国で濃縮という作業をやってもらって、
日本に来ている訳ですが、
取り出してしまった劣化ウランが戦争の材料になったという事は充分あり得るし、
多分そうだろうと思います。
西谷:ああ、日本のためのウランもアメリカで濃縮している訳ですか
小出:そうです。
西谷:
それはもしかしたら私たちが使っている電気のために出た劣化ウランが、
イラクで使われた可能性があるという事ですね。
小出:もちろん、十分にあり得ると思います。
西谷:
戦争と原発というのは、バラバラに報道される場合が多いのですが、
先生、これ繋がっていますよね。
小出:
もちろんです、
初めから繋がっているのです。
全ての原理、ウランを核分裂させるというところから始まって、
ウランを燃料に使うという事も、核分裂させるという事ですね、
これが根本にあるわけで、
それが軍事的な目的に使うか、いわゆる平常時にエネルギー問題で使うか、
結局同じ事になります。
西谷:
もともとですね、この「地下深くに埋まっているウランを掘りだす」ということが、
なんか問題があるような気がするんですが、どうでしょうか?
小出:
もちろんです。
放射能は先程聞いていただいたように、必ず危険ですし、
ウランは放射能をもっていますので、
そのようなものを掘り出してきてしまえば、そこからもう被害が始まるという事になってしまいます。
西谷:
私もモンゴルに行ってどのウランの鉱山を見たんですけど、
やっぱり凄い放射能が出ていますし、
これ、地域の住民にとっても大変迷惑な話ですよね。
小出:
そうです。
大変不思議だと私はいつも思うのですが、
ウランが出る場所というのはここの場合もそうですし、オーストラリアの場合もそうですし、
ほとんどがいわゆる先住民という人たちの住んでいるところでして、
そういうところで先住民の人達が労働者として駆り出されて働いて被ばくをし、
そしてウランのゴミを投棄されてまた被ばくをするという歴史がずーっと続いています。
西谷:インドにも行かれたらしいですね、先生。
小出:はい、行きました。
西谷:やはりそこも少数民族の村でしたか?
小出:そうです。
昔からのインドの人達で、インド先住民で、
インドというのはカースト制度という、言ってみれば人種差別の厳しい国なのですが、
そのカースト制度にも入れない人はアンタッチャブルという不可触賎民と呼ばれる人たちですが、
そのアンタッチャブルにすらなれないという人たちがインドの先住民で、
そのような人たちがウラン採掘の被害を受けています。
西谷:
あのね、私もモンゴルに行った時に、
出てくるところが実はブリアード族という少数民族のところだったんです。
不思議ですね、先生ね、
何でそういうところに
小出:いや、そうなのです。もう、そんなところばっかりなのです、ウラン鉱山は。
西谷:
具体的にね、私は、日本の場合はオーストラリアのウランを購入していると、多くはね。
聞いた事があるんですが、
そのオーストラリアの天然ウランを日本が買ってアメリカにもっていく訳ですか?
小出:確か日本で使っているもののほとんどは米国で濃縮をしてもらっていると思います。
西谷:で、その出てきた劣化ウランがリサイクルされて、劣化ウラン弾になっている可能性があると。
小出:そうですね。
リサイクルというか、要するにもう使い道のないゴミなんですね。
それも放射能を持ったとても厄介なゴミなんですけれども、
それを米国という国は敵国に撃ち込んで人を殺して、敵国に捨ててくるという事をやっている訳です。
西谷:
こんな危険なものを戦争でも使うし、
それをこう、国際社会が止められないというのも、ねェ、ちょっと問題ですよね。
小出:
皆さん国際社会という言葉が大好きなようですけれども、
要するに国際社会というのは米国を中心とする力の強いものの社会という事ですね。
彼ら地震が劣化ウだんだんも使いたがっている訳ですから、
止められる道理がありません。
西谷:
わかりました。
今日は劣化ウランと原発と戦争の繋がりについて小出さんにお聞きしました。
小出さんどうもありがとうございました。
小出:いいえこちらこそありがとうございました。
原子力発電のゴミは劣化ウラン弾となり戦争の道具に使われる~犠牲になる子供たち~
ブログ初期の頃なので動画の文字起こしはしていません。
劣化ウラン弾の犠牲になった子どもたちの動画2つ紹介しています。
アメリカ女性兵【放射能=ガンだけじゃない】10年後の日本?ぶらぶら病 (内容書き出し)
イラク軍に放つための劣化ウラン弾で被ばくした女性アメリカ兵の証言。
2013年3月6日
福島第一原発事故から二年、
核のゴミと原発安全審査についてご意見を頂きました。
sawada:
今度の3月11日で福島第一原発事故から2年を迎える事になります。
その間いろいろな動きがある中で、やっぱり原発の問題というところで、
一番言われているのが、「核のゴミ」というところでして、
こちらが無毒化できないという技術の問題というものがありますが、
こちらについてどう処分していくのか、処理していくのか、保管していくのか、
というところが本当に一番の課題なんですけれども、
最近出てきたニュースの方ではフィンランドの方で、中間貯蔵なのか、最終処分なのか、というかたちで、
人々の方向性が出たという話がありますけれども、
全世界、ま、日本が抱える問題もそうなんですけれども、
全世界にですね、原発の核のゴミ、これ、どう扱って行ったらいいか?またお話しいただけますか?
小出:
え・・・・、ま、一言で言ってしまえば、
「誰もどうしていいか分からない」というのが、
昔もそうだったし、現在もその状態が続いているのです。
人間が原子炉を動かしたのは、米国という国がマンハッタン計画という“原爆製造計画”を立てて、
その中で、
「長崎原爆の材料にするためのプルトニウムを生みだしたい」という動機で原子炉を始めて動かしました。
日本のみなさんは原子炉と言うと原子力発電、発電のための道具だと思われるかもしれませんが、
もともと原子炉というのは発電なんかに興味があったわけではなくて、
原爆材料を生み出すための道具だったのです。
どうしても原爆を作りたいという事でそれを動かしてしまいました。
そして動かしてしまえば、核分裂生成物という放射性物質が出来てしまうという事は、
物理学的に当たり前な事な訳で、その当時から、
「なんとかその生み出した放射性物質を消さなければ大変なことになる」という事が分かっていたのです。
すぐにそのための研究も始まりましたけれども、すでに70年経ってしまっています。
「いずれなんとかなるだろう」
「いずれ科学の進歩によって、良い手段が見つかるだろう」と思い続けながら来たのですけれども、
残念ながらいまだに、「生み出した放射性物質を消す」という力を人間は持っていないのです。
もう「そうなれば仕方がない。他に隔離をするしかない」という事で、
その隔離の手段もさまざまに考えられてきました。
「宇宙に捨ててしまおう」という案もありましたけれども、
捨てるためのロケットが失敗して落っこってきた時にはもう取り返しがつかないということで、
技術的にそれは出来ないという事になっています。
その他、
「深い海の底に埋めてしまえばいいのではないか」とか、
「南極にもって行って捨ててくればいいのではないか」とか、さまざまな案がありましたけれども、
どれも、「これなら大丈夫」と確信を持てるような案ではありませんでした。
そのため今現在としては、
「仕方がないのでどこか地底に埋めよう」という事になっている訳ですし、
日本でも「地底に埋める」という案が、唯一の案として法律で既に決まってしまっているという、
そういう状態になっています。
しかし日本というのは世界一の地震国で、「安定な地下」なんていう場所はありませんので、
「どこに埋めても大変なことになりそうだ」という事で、私もずっとそう主張してきましたし、
昨年の9月11日には、日本学術会議という学者の国会とも言うべき団体が、
「地下に埋め捨てにする事はやはり正しくない」という提言を出したりしているのです。
どこの国もやはり「どうしていいのかが分からない」という状態のままここまで来ているわけで、
最近になってフィンランド、あるいはスウェーデンという国々が
「何とか、やはり地底に埋めるしかない」という事で、
どこに埋めるか?という場所の選定作業などを続けてきて、
フィンランドはようやくその埋め捨てにする場所を確定したというのが最近の動きなのです。
しかし本当にそれを、
これからですね、埋めようとするわけでしょうけれども、
本当に出来るかどうか?という事を考えると、
私自身は「まだまだ難しいだろうな」というように思っています。
sawada:
そうですか。
自民党政権に代わりまして、基本的に原発の再稼働を進める形で動いてきているという話があるなかで、
再稼働の要件として、「安全であれば」と安全審査が行われると思いますが、
これもまた、日本の原発という立地自体がですね、もともと建ってた、
ま、玄海を除いてという形になりますけど、
活断層の上、もしくはすぐ近くに立地しているというのが歴然たる事実だと思うんですけれども、
それをもってもまだ「安全だ」と言い切る可能性が今後も出てくると思いますが、
これについては先生、どのような見解をお持ちでしょうか?
小出:
皆さんもう、ご承知だと思いますし、先程聞いていただいたように、
日本という国は世界一の地震国なんですね。
「この地球という星は、プレートというものが動いている」というのが最近の定説なんですけれども、
そのプレートがちょうどぶつかり合うという場所に、日本というこの国がありまして、
安定している場所というのは、残念ながらこの日本という国には「ない」のです。
そんな国に原子力発電所を50基を超えてつくってしまったという、
その事自身が大変異常な、世界からみれば大変異常な事なのですし、
いまだにそれを反省しないで、まだまだ原子力をやるというような事を考えている人がいるんですね、
日本には。
私から見ると本当にあきれた話だと思います。
sawada:
そうですね、
またいろんな各種委員会、政府のしてます懇談会、委員会からですね、
脱原発派と呼ばれる方々が、メンバーから外されてくるという流れがある中で、
311以降、市民の活動も増えておりますし、いろんな方が活動をはじめられています。
ですが、2年今度経過するにあたりですね、
「なかなか結果が出ない」
みなさんやっていく中でその憤りがあるかと思いますが、
長年反原発として活動されてきた小出先生から見て、
随分311以降、変化はあるかと思うんですけれども、どう見られていますか?
小出:
はい…ま、私自身はかれこれ40年原子力を止めさせたいと思って活動してきましたけれども、
私の力などは、国家の力、あるいは巨大産業の集まった力、
マスコミもみんなグルになった力の前からすれば、「全く無力」と言ってもいいほどのもので、
原子力を止める事が出来ないまま、福島の事故が起きてしまいました。
「自分の人生はいったい何だったのかな」と思わないではありませんし、
今現在苦難のどん底に突き落とされている方々が、「沢山いる」という事を思うと、
本当に「無念」の一言です。
で、事故が起こってしまってから、それなりに多くの人達が原子力の問題に気がついて、
私の話なども聞いて下さるようになったのですけれども、
私から見ると、私の事なんかもう聞いてくれなくても良いので、
とにかく「事故がなければ良かったな」と思い続けてきました。
私を読んで下さる集会に行って、沢山の人々がその会場に来て下さっていたわけですけれども、
私は全く嬉しいとは思わないで今日まできました。
え…しかし、つい最近ちょっと、私の中で思う事が変わってきた事があります。
というのは、事故から2年経って、
国の方はもう「福島の事故は忘れさせようとする」そういう戦術に出てきているわけで、
マスコミも含めて福島の事を報道しない。
いまだに沢山の人が苦難のどん底にいるという事についても報道しない。
「全て忘れ去らせてしまおう」という戦術で来ている訳ですが、
でも、「忘れない」「決して忘れない」という人たちが、
日本中にあちこちにやはり、残って下さっていて、
私の話しを聞きに来て下さったりするわけですから、最近は「ありがたいなぁ」と。
こういう人たちがまだいてくれるのであれば、私もその人たちと一緒になって、
「原子力を止めるためにまだ働けるかもしれない」と思うようになっています。
sawada:
そうですか、ありがとうございます。
たね蒔きジャーナルもそうでしたし、愛川欽也さんの番組もという中で、
なかなかですね、スポーンサーがある番組ですと
なかなか継続するのが難しいというようなところで長い闘いになってきていますけれども、
こちらのペイフォワード環境情報教室ではですね、スポーンサーも全くありませんし、
先生のボランティアでやっていただいていますので、
これからもずーーっと継続してですね、長い戦いを勝ち抜いていきたいと、
一緒に勝ち抜いていきたいと思っていますので、
小出:ありがとうございます。
sawada:
今後とも是非、小出先生には私たちの心の支えとしてご登場いただきたいと思っていますので、
是非ともよろしくお願いいたします。
小出:はい、こちらこそよろしくお願いします。
放送開始日 2013年3月2日(土)~
パーソナリティ 湯浅 誠 活動家/社会運動家
小出裕章ジャーナル
湯浅:
今日はお便りからいきたいと思うんですけれども、大阪府にお住まいの方から
小出さんに質問です。
先日福島の18歳以下で3人が甲状腺がん、7人に疑いあり。とのニュースを見ました。
すごくショックでした。
県の説明は、チェルノブイリでは4~5年後に甲状腺がんが発生したので、被曝の影響とは考えにくい。
ま、チェルノブイリでは4~5年後だったので、
今回は2年後、1年後なので、被曝の影響ではないんではないか。
との見解があったようですが、
素人目に見てやはり原発事故によって出た放射性物質の影響ではないか?と勘ぐってしまいました。
小出さんの見解をお聞かせ願えたら幸いです。
私も子どもをもつ親として子どもたちに出来る限り症状が出ないよう祈らずにいられません。
とのことなんですけれども。
小出:
チェルノブイリの事故で4年後から甲状腺がんが出たという主張は、まずそれ自体が誤りです。
4年後には明確に出てきたという事なのであって、1年後から甲状腺がんがもう発生していますので、
経験から見ても注意をしなければいけないという事だと思います。
そして今回福島で検出された甲状腺がんの発生率というのは、
これまででは決してあり得ないような発生率になっています。
それを見て山下さんとかそういう方々は、
「いや検査のやり方が向上しているから見つかっているのだ」という事をおっしゃっている訳ですけれども、
言葉を変えて言えば、それより前は検査自身をしていなかったという事なのです。
ですから、…「前の事は分からない」のですね。どうであったか?という事が。
それで、科学というものはですね、もともと分からないものは「分からない」と言わなければいけないし、
分かった事を「分かった」というのが本来の科学という物のあり方だと私は思います。
今、山下さんを含めて福島県で甲状腺がんの発生を否定したがっている方々は、
“分からないもの”に関して「いやそうではない」というような結論を出してしまっているわけで、
もともと科学的な態度とは言えないと私は思います。
私自身も本当にこの甲状腺がんが被曝の影響かどうか?という事は、
申し訳ありませんが確信をもっては言えません。
しかし、だからこそきちっと、
「わからないので調べなければいけない」と言わなければいけないのだと思います。
湯浅:
なるほど。
甲状腺がんの発生と、今回の原発事故の結びつきがわからない事をもって、
「被ばくの影響とは考えにくい」というのは、
科学的な立場から見て不誠実だと。
小出:はい、私は間違い、間違えている態度だと思います。
湯浅:
なるほど、わかりました。
もう1問よろしいですか?
東京都の30歳の男性からの質問なんですけれども、
国がここまで原子力を止めない理由に、核保有の問題が本当にあるのですか?と、
小出:
もちろんあります。
皆さん原子炉と言うとですね、なにか発電の道具だと思われるかもしれませんが、
人類が一番初めにつくった原子炉は発電のためでもなんでもなくて、
長崎原爆の材料であるプルトニウムを作りたいという動機で原子炉がつくられたのです。
ですからそもそも原子炉というものは原爆材料をつくる、
つまり核兵器をつくりたいという動機から始まっているわけで、
そのことをみなさんしっかりと認識しておかなければいけないと思います。
湯浅:
原発問題についてはですね、特に東日本大震災の原発事故以降、
エネルギー問題として他の代替案はないのか?
あるいはコストの問題として原発は高いのか?低いのか?
それから経済的な問題としてというふうに語られてきましたが、
中に軍事的な目的もあって、言わば起源なんだということですね。
小出:
そうです。
ご質問下さった方も福島の事故が起きて何故今?というふうに多分思ってられる訳ですけれども、
福島の事故で人々が受けた被害というようなものを本当に賠償しようと思えば、
日本の国家が倒産したって足りないぐらいの被害がすでに出ているわけで、
「原子力発電の電気が安い」なんていう事はもう、全く破たんしてしまっているのですね。
それでもなおかつ原子力から足を洗えないという事は
経済性とかという理由とは「別の理由がある」という事なのであって、
私はそれが軍事的な理由だと思っています。
湯浅:
なるほど。
ありがとうございました、また来週もよろしくお願いします。
小出:こちらこそよろしくお願いします。
新たに2人甲状腺がん7人に疑い「放射能の影響は否定」福島県立医大鈴木眞一教授2/13
<甲状腺がん>
「今回の調査結果で過去に書かれた論文・発表が、かなり覆される可能性がありますが…?」
山下俊一氏質疑応答2/13(文字起こし)
<甲状腺がんの頻度>「超音波検診」と「潜在癌」
鈴木眞一氏質疑応答2/13(文字起こし)
第10回「県民健康管理調査」検討委員会2013.2.13 <質疑応答文字起こし・ほとんど全部>
<甲状腺がん>
原発の事故の話しが無ければ、「原因不明の多発」です
3/6津田敏秀教授OurPlanetTV (文字起こし)
「 そうすると、もうすでに50人ぐらい甲状腺がんが出ている可能性がある」
2/20井戸弁護士→環境省→山田医師
「小児甲状腺がん事故無関係」危うい即断 チェルノブイリ翌年から増加
医師の菅谷松本市長が警鐘9/27東京新聞
「日本の子どもはチェルノブイリとは違ってヨウドが過剰だから大丈夫!」
県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会 11/10鈴木眞一氏質疑応答(内容書き出し)
放送開始日 2013年2月23日(土)~
ゲスト 山本太郎さん
パーソナリティ 今西憲之さん
小出裕章ジャーナル
今西:
リスナーの方から質問がきまして、「東京電力の情報公開について」という事で、
是非小出さんから聞いてほしいという事だったんですが、
東京電力の情報公開と言いますと事故直後から
「ちゃんと情報公開してまへんがな―」という事でエライ問題になって
国民の間でも不信感が広がったんですが、
2月1日に東京電力は原子力規制委員会に対して、福島第一原発事故直後に撮影された写真2145枚をですね、
「最近になって見つかりました」みたいな感じで提出をされたんですね。
このシ写真をよく見てみますと、2011年3月15日から4月11日ぐらいまで、約一カ月ぐらいですね、
東京電力の社員の方とか、協力企業の方とかが撮影されたものなんですが、
事故から二年近く経ってですね、
「何で今頃出すねん」と、小出さん、思うんですが。
小出:
もちろん私も思いますが、
みなさん、ちょっと誤解をされているのではないかと思うのですが、
東京電力という会社は今回の事故を引き起こした最大の責任がある会社な訳ですし、
私は「責任」という言葉では甘過ぎると思っていまして、「犯罪」だと思います。
犯罪者が自分の罪をきちんと申告する理由はありませんし、
「出来る限り自分の罪を隠蔽したくなる」というものが犯罪者な訳ですから、
東京電力が情報を出さない、あるいは都合の悪いものは出来る限り隠すという事は
当たり前の事なのだと私は思ってきました。
今西:そうすると強制力を持ってそういうものを出させないといけないという事ですか?
小出:
はい。当然そうだとおもいますし、
もし、今回のような事故を起こしたのが東京電力ではなくて、町工場だったとすれば、
すぐにもう警察が踏み込んでですね、責任者を逮捕していくという、
そういう事になった筈だと私は思いますが、
何故か東京電力という会社だと無傷で許されてしまう訳ですし、
情報の公開という事も、東京電力が「自分が公開したいと思う物だけを出す」という事で、
それを許しまうようなことになっているのですね。
本当に不思議な世界だと私は思います。
今西:そうですね、山本太郎さんからも質問があるという事でお願いします。
山本:
すみません、この東京電力というところからは少しずれてしまうかもしれないんですけれど、
やっぱり原発を終わりにしていくためには、その先の事というか、そのバックエンドというか、
「最終処分」ということも考えなければ、やっぱりそういう部分も議論されなければいけないと思うんですよ。
小出:当然です。
山本:でも、政治家の人達だったりというのは、その事について語り合うのは絶対に避けますよね。
小出:政治家もそうですいs、学者も避けてきたのですね。
山本:
でも、その最終処分地というこのを現実的なものというか、話を進めていくために、
やっぱりこういう場所だったりとか、こういうラジオだったりとか、
で、みんなが町の中でもそういう事を話し合うような機会というのはすごく重要だと思うんですね。
小出:はい、もちろんそうだと思います。
山本:でも、言えば言うほど今の状況じゃ叩かれるばっかりなんですけれども、(笑
今西:
まァまァ、結構ね、そういう原子力ムラとかね、
やっぱり一部のね第マスコミなんかはそういうのを避けてきましたよね、意図的にね。
小出:
そうですね、原子力の専門家と呼ばれている人たちも、このバックエンドというか、
ごみの最終的な始末という物の道筋が見えない事はみんな知っていたのですね。
私は「その道筋が見えない限りは止めるべきだし、簡単に埋め捨てをするという選択はするべきではない」
として、原子力を進めてきた人たちと喧嘩をしてきたのですけれども、
学者も、ほとんどの人はみんな知らん顔をするという事をしてきたわけですし、
マスコミもきちっとそれをみなさんに知らせないというやり方を貫いてきてしまったのですね。
で、去年の9月11日になって、日本学術会議という学者の国会が、
初めて今日本の国がやろうとしている埋め捨ては正しくないというような声明を出した訳ですけれども、
私は何で今まで彼らが黙っていたのか?と、むしろそれをおかしいと思いました。
山本:
なるほど。
えーっと、ま、僕個人的に「どうするのか?」という事を考えた時に、
すみません、こんな空っぽな頭で考えた場合なんですけれども、
現在原発が存在している、
その「原発立地の場所にそれぞれに最終処分場をつくっていく」という考え方というのはどうなんですかね?
小出:
あり得るとは思いますけれども、
現在立地をさせられてしまった地域というのは
「必ずゴミはもちだす」という、そういう約束の下に立地を引き受けたという経緯が歴史的にあるわけですね。
山本:なるほど。
小出:
私はそれが正しいとは思いません。
原子力発電を引き受けて、それなりに交付金などで恩恵を受けようとした地域な訳ですから、
「ゴミはいつかどこかに行ってくれる」というふうに思う事自身に、私は問題があるとは思いますけれど、
でも、本当に過疎地で、財政的に苦しくなった時に、原子力発電所を押し付けられてしまったのですね。
ですから、長いいろんな歴史がありますので、簡単にはいかないと思いますが、
え・・・・、いま、太郎さんがおっしゃったような選択はあり得るとは思います。
山本:
なるほど。
先日、鹿児島県の南大隅。
本州最南端のところに「そこに誘致しようじゃないか」というのがずっとあるんですよね。
今西:最終処分場を、
山本:
そうなんですよ、最終処分場を。
で、地元にちょっと応援に行ったんですよ、その反対の。
という事なんですけれどもやっぱり水面下でいろいろと動かれていて、
小出:そうです。
山本:
それで、漁協だったりというのがもう買収されてしまっていたりとか、
たとえばJAというところは「中立」と言っちゃったりとか、
というような状況なんですよね。
でも、あの南大隅という町は100%自然エネルギーでもう賄えているし、
小出:そうですね。
山本:食料自給率も100%以上だと。
小出:はい。
山本:
そんな完璧なところにゴミを押し付けるってどういう事なんだよ!
汚染のないところに汚染をわざわざ運びこむって言うのはどういう事なんだ?って言う話なんですけれど、
なんかいい方法があればいいですよね。
小出:
ええ、そうですね。
ただ、残念ながら私たちが生みだしてきた「放射性物質を無毒化する」という力が、今現在ないのですね。
ですからどこかに隔離するしかないという事になってしまっているわけで、
最近になって日本の国では「もう国内では無理だからモンゴルに押しつけよう」という、
そんな事まで言いだしているわけです。
本当に恥ずかしい国だと、私は思いますし、
いま太郎さんがおっしゃったように大隅町というようなところ、
南大隅町ですね、なんかに押し付けるというような事は到底正しいとは私は思えません。
それぞれの原子力発電所の立地点で引き受けるという選択もあるでしょうし、
私はそれを言うなら東京とか大阪の大都会こそがゴミを引き受けるべきだと思います。
山本:きましたねぇ―。消費地が。
今西:なるほどねぇー。
山本:恩恵を受けたものが引き取れと。
小出:はい。
今西:山本さんもうひとつ何かお伺いしたい事があるとおっしゃられてましたが、
山本:
そうなんです、先生。
国は今回の事故を矮小化、ずーーっと図ってきたじゃないですか。
で、「結局どれぐらいの汚染があるのか」という事に関して、
セシウムだったりそういうものにちょっと触れているだけじゃないですか
小出:そうです。
山本:
だから是非先生だったり、たとえばチャルノブイリの汚染地図をつくられた今中さんだったり、
っていう方々が、今リアルな日本の汚染というものを地図に落とし込めたりというような事の
可能性はないのかな?という事をお聞きしたかったんです。
小出:
はい、ただ、空気中に出てきたというその放射性物質の量で言うなら、
圧倒的に多かったのは希ガスと私たちが呼んでいるものなのですが、
地面を汚染するとか、そういう性質がありませんので、もう汚染地図を作ることはできません。
その次に大量に出てきたのはヨウ素という放射性物質ですが、
それも寿命が短いためにほとんど全部なくなってしまっていますので、
今の段階で汚染地図を作る必要はないと思います。
次に問題なのがセシウムであって、
セシウムの汚染地図というのは日本の政府も公表していますし、
私たちもできる限り測定をして、
その政府の発表があっているかどうか?という事のチェックぐらいはしているのです。
で、ではそれ以外に何が問題か?というと、
みなさんが気にしているのはストロンチウム90であるとか、
プルトニウム239というような放射性物質だと思うのですが、
大気中に放出された「量」を問題にするのであれば、
私は今ストロンチウム90やプルトニウム239はむしろ小さな問題だと思います。
そういう放射性物質を問題にするのであれば、
おそらく水に溶けて海へ流れていますので、
海のストロンチウム90の汚染地図、
プルトニウム239の汚染地図というものをこれから作らなければいけないと思いますが、
残念ながら私たちの力はまだそこまでいっていないという事です。
大変申し訳ないと思っています。
山本:とんでもないです。
今西:
いやいや、だってね、あれだけ汚染水を大量に放出していますからね、東京電力は。
本当にこれは日本だけじゃなくて、もう世界中に迷惑がかかっている話ですからね。
小出:
もちろんです。
1986年には旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で大きな事故が起きましたが、
その時には「地球被曝」というような言葉がつくられました。
まさに福島の事故の時にもそうで、
日本の福島だけが汚染しているのではない、日本中汚染している訳ですし、
もう、世界中が福島からの放射能で汚れてしまったという状況になっています。
今西:
なるほどね。わかりましたです。
小出さんどうも今日はありがとうございました。
小出:こちらこそ。
今西:小出先生の話、説得力がありましたね。
山本:
ありますね。
心優しい人ですね、コメントの一つ一つが。
今西:そうですね。という事で、以上小出裕章ジャーナルでした。
最終処分場候補・鹿児島県南大隈町の山林8/23~25(追記)

最終処分場候補地に南大隅町が浮上 TBSニュース 2012年8月23日(木) 20時10分
「南大隅町」最終処分場、モデルは六ヶ所村 TBS(24日10:44)
候補地浮上の南大隅町、不安広がる TBS(2012年8月24日11:06)
南大隅町で最終処分場反対集会 TBS(25日17:30)
ーーー
この日のラジオフォーラム↓
選挙開票生放送出演秘話・3分に賭ける「子どもを避難させて下さい!」
2/23ラジオフォーラム山本太郎さん(文字起こし)
「世界中にある焼却炉の3分の2が日本に…だから燃やしたくってしょうがない」
山本太郎さん2/23ラジオフォーラム(文字起こし)
「警戒区域に人が戻れるのは2万4000年後」ラジオフォーラム2/23(書き出し)
ーーー
福島第1原発:事故直後の写真2145枚公開 作業員撮影
毎日新聞 2013年02月01日
東京電力は1日、福島第1原発事故直後の
11年3月15日~4月11日に構内で作業員が撮影した写真2145枚を公開した。
一度に公開した枚数としては過去最多。
水蒸気を上げる爆発直後の3号機や、高い線量のがれきに注意を呼びかけるため
「キケン」と書かれた1号機周辺の様子など、当時の緊迫した状況が収められている。
公開した写真は、同社のホームページ
(http://photo.tepco.co.jp/date/2013/201302-j/130201-01j.html)で見られる。【久野華代】
小出裕章ジャーナル
放送開始日 2013年2月16日(土)~
パーソナリティ 石井彰放送作家
ゲスト 吉岡忍さん ノンフィクション作家
福島第一原発
増え続ける高濃度汚染水を東京電力が検討「海に放水」について
石井:今日はノンフィクション作家の吉岡忍さんと一緒にお話を伺います。
小出:ありがとうございます、楽しみにしていました。
石井:
東京電力がですね、福島第一原発の高濃度、高く汚染されている汚染水のですね、
処理をした大量の水を海に放出する事を検討し始めたという大きなニュースがですね、
最近ありましたけれども、
先ずこの事について小出さんはどのように考えていらっしゃいますか?
小出:
えー、実際問題としてはせざるを得ないと思います。
どんどん今敷地の中に汚染した水が増えてきてしまっていて、
何時までも持ちこたえられる道理がありませんので、
いつの時点かで何がしかの方策をとって、海に捨てる以外にありません。
吉岡:
あぁ……、
それはでも、なかなか大変な事ですよね。
小出:
そうです。
漁民からみればとんでもない事だと思われるでしょうけれども、
でももう、大変な事故が進行中なのであって、「どうにもならない」と私は思います。
石井:
小出さんにまず一つお聞きしたいのは、
高濃度の汚染水をそこから放射能を除去する事は、
完全にとは言いませんが、ある程度でも除去する事というのは可能なんでございましょうか?
小出:
可能です。
ただし猛烈な汚染水ですので、作業をするために多数の労働者がまた被ばくをするだろうと思います。
ただし汚染水の中から、汚染水というのは水を放射能が汚しているわけですが、
水の中から放射能を取り分けるという事は、えー、“できる”のです、やる気になれば。
石井:やる気になれば「出来る」けれども、やるためには沢山の人達が被曝をせざるを得ないと、
小出:そうです。
石井:
で、そういった大変なリスクがありながらも、
もう現実に「これ以上保管が出来ない」という状況なんでしょうか?
それとも、どこか別の場所で保管をすることは可能なんでしょうか?
小出:
えっと、私はですね、事故が起きた直後から、
巨大タンカーを福島の海に連れて行ってですね、タンカーの中に汚染水を移して、
「それを柏崎刈羽原子力発電所廃液処理装置にもっていって処理をする」という案を提案していたのですが、
今までもう、ほとんど2年近く経ちましたが、国も東京電力もそれをやろうとせずに、
とにかく福島第一原子力発電所の敷地の中にタンクをつくって、そこで受けるという事をやってきたのです。
それをやる限りはいずれにしても敷地は限りがありますので、いつの時点かで必ず破たんします。
それでもうかなり満杯になっていますので、遠からず別の事を考えるしかなくなると思います。
吉岡:
結局それをいま東京電力が「海へ流しましょう」という事を、
ま、可能性を探っているというところだと思うんですけれど、
渡し、実は2~3日前まで、宮城県の牡鹿半島の方に行っていまして、
漁師さん達といろんな話をしてました。
ぼちぼち漁業は少しずつ復興してきているんですが、
とはいえ「福島から流れてくる水」ですね、
小出:そうです。
吉岡:これを一番心配しているんですよ。
小出:そうでしょうね。
吉岡:
で、今漁師さん達は大きな声でそれがいえないんですよ。
何故か?と言うと「宮城県もか」というふうに言われるからですよ。
小出:なるほど。
吉岡:
漁師さん達も言えない、漁協も言えない。県も言えない。
っていうか、誰も反対をしない。
しかし一番心配をしている彼らという、こういう構図があるんですよ、今。
小出:そうですね、はい。
吉岡:どうすればいいんですか?これ。
小出:
えぇ・・・、私が言うのは本当に申し訳ないけれども、
どうしようもないのです。
もう、人類が経験した事がないひどい事故というのが、今現在進行中なのです。
で…、相手は放射能な訳で、
人間がどんな風に手を加えても消すことができませんので、
何とか漏れを防ぐという事は唯一出来る事なのですけれども、
次々と水を入れ続けるしかない状況では、それがまたあふれてきてしまう。
いつかやはりどこかに捨てるしかないというところに、追い込まれてしまっている訳です。
石井:あの、小出さん、沢山、
吉岡:
もうひとついい?もうひとつ、
ぼくね、2~3日前に牡鹿半島に行ったんですよ。
そしたら女川の原子力発電所がありますよね。
そしたらですね、今まで僕は20回ぐらいあそこに行っているんですが、
初めて見ましたけれどもPRセンターが開いていました。
小出:笑)・・そうなんですか。
吉岡:
あれでしょう、ずばらしい我々のエネルギーがないこの時代に
原子力発電所が必要ですというPRをやっていましてですね、いやちょっとビックリしましたね。
小出:そうですね、この期に及んで「まだかなぁ」という思いを私も禁じえないです。
石井:小出さんありがとうございました。また来週もよろしくおねがいいたします。
ラジオ・フォーラム初回特別版<後半>
「優秀なロボット・処理できない汚染水・田中正造・質問」小出裕章氏1/12(文字起こし)
東京電力 汚染水濃度下げ海に放出 !!!
パーソナリティ 西谷文和 ジャーナリスト
私にとって記念すべき一回目の番組ですので、自己紹介を行っていきたいと思います。
西谷文和と申します、職業はフリーランスジャーナリストという事になっております。
実は私は8年前まで大阪の吹田市役所で公務員をしていました。
公務員をしながら休暇を取って、アフガンとかイラクとかに行ってたんですけど、
公務員をしながら戦地へ行くという、二足のわらじがもうちょっと無理だという事で辞めまして、
これ一本という事になっています。
この番組ではシリアの内戦、リビア、アルジェリア、スーダン、レバノン、ガザ、
こういったですね、戦地の模様などを、生の情報などを伝えていきたいなというふうに考えていますので、
よろしくお願いいたします。
小出裕章ジャーナル 2013年2月9日
西谷:
今日はテーマが原発の輸出についてお聞きしたいと思うんですけれど、
あの、日本の原子力ムラは懲りてませんよね。
小出:全く懲りてないです。
西谷:
ね、生き残りをかけてですね、
ベトナム、トルコ、ヨルダン、リトアニア、
こういったところに必死になって売り込みをかけているんですが、
まずこの原発輸出について、先生ご意見はどんなふうにお持ちですか?
小出:
もちろん私はやるべきではないと思いますが、
今、西谷さんがおっしゃった通り、
日本の原子力産業は行きの頃をそれに掛けなければならない状況に追い込まれていますので、
これからも輸出という事を狙ってさまざまな動きがあると思います。
西谷:
やはりいまもう日本ではね、ああいう大きい事故を起こして、
もう日本ではおそらく建設はもう出来ないだろうから、ベトナムとかに売り込みをかけていると。
小出:そうです。
西谷:
先生これね、爆発して危険なものをですよ、「よその国だからいいんだ」って、
こういうわけにはいきませんよね。
小出:
もちろんですね、
自分の国でもう引き受ける事が出来ない危険を抱えているという事が分かっている訳ですから、
それを外国に押し付けるという事はやってはいけない事だと思います。
西谷:
あの~、ベトナムの予定地はですね、
漁師さんがね、自然と共存しながら細々と生きておられる、そんなきれいな海なんですけど。
小出:そうですね、
西谷:
結局ベトナムという国は、
枯れ葉剤で汚染されてですよ、また放射能でという事になりますよね。
小出:
なりますね。
原子力というのはどこでも、
原子力発電所だけではなくて、ウラン鉱山もそうですし、
これからまた核のゴミ捨て場を探すという事になるわけですし、
さまざまな形で原子力から恩恵を全く受けない人々に犠牲を強いることになると思います。
西谷:やはり一基つくればものすごく儲かるんですかね?利権があるんですよね。
小出:
もちろん利権だらけな訳でして、
地域住民にどれだけのお金が行くか?というのはそれぞれの地域で違うと思いますけれども、
もともと狙われる地域というのは、
自然に寄り添うように生きていて、いわゆるお金とは無縁のところを狙っていく訳ですから、
そういう人たちからみると、一度その金をつかんでしまうと逃げられなくなるという事になると思います。
西谷:
まさに、福井県や福島県で、町が二分されてですよ、
賛成派と反対派がね、もう本当に親戚同士で争ったりするんですが、
小出:そうです、もう、地域のつながりがズタズタにされてしまいます。
西谷:そうですよね、
それをベトナム人やトルコ人がこれをせなあかんということになりますよね。
小出:そうですね。
西谷:
もう、これは是非計画の段階で止めたいんですが、
逆に、ベトナムやトルコ、ヨルダン、サウジ、リトアニア、インド、
こういった国々がですね、何故、原発を欲しがるのか?ということですが。
日本の場合には利権とかそういうものがあると思う、売る方はね。
でも、輸入する方は、やはり背後に「核兵器を持ちたい」という、そういう野望があるんですかね?
小出:
もちろんあります。
日本もそうだったのです。
何か日本の人は「日本の原子力は平和利用だ」と言われて、何か思い込んでいるようですけれども、
日本が原子力を導入したというのももともとは核兵器が欲しかったからなのです。
西谷:やっぱりそうなんですか、
小出:そうです、
「原子力」と「核」という言葉が、日本では使い分けられていて、
「原子力」は平和利用、「核」は軍事利用というふうにみなさんは思いこんでいる訳ですけれども、
技術には「軍事」も「平和」も無くて、
「いつでも使いたいように使える」という事なのです。
日本というこの国でも、
原子力の平和利用と標榜しながら、核兵器を作る能力を手に入れたいという事で、原子力が始まりました。
西谷:
という事は、表向き、ベトナムとかトルコとかサウジなどは、「電気が足りない」とか言いながら、
裏ではやはり、たとえば「イスラエルに対抗するためには核兵器を持たなきゃあかん」とか、
こういうことを思っているんでしょうね?
小出:
非常に残念なことではありますけれども、
現在の世界というのは「力」が支配しているのです。
国連という組織があって、ユナイテッド・ネイションズ(United Nations)ですけれども、
正しく訳すなら「連合国」なのですね。
先の戦争で勝った国々が今世界を支配している訳ですが、
その中でも常任理事国というのが5カ国あります。
米・英・仏・露・中ですけれども、
何故その5カ国だけが、連合国という沢山の国の中で常任理事国になれたか?と言えば、
その5カ国が核兵器を持っているからなのです。
ですから
「現在の世界で力をもつためにはどうしても核兵器がいる」と考える人がいる事は当たり前な訳ですし、
世界の国々の指導者の多くがその考えにとらわれてしまっていて、
「核兵器を持ちたい」と願っているのだと思います。
西谷:
恐ろしい世界ですがね。
先生、もうちょっと具体的にいきますと、
そうしたら、「原発をもつ」という事と「核兵器をつくる」という事は、
ほぼ「ニアリーイコール( nearly equal)」ですか?
小出:あの…「イコール」です
西谷:あっ!「イコール」!もう、ニアもないんですか。
小出:
ま、ニアを付けてもいいですけれども、
要するに「核兵器を持ちたい」という思惑でもう始まっちゃっている訳ですから、
「イコール」だと思った方がいいと思います。
西谷:という事は「原子力の平和利用」という事は全くのごまかしであると
小出:もちろんそうです。
西谷:
そもそもですね、
軽水炉というこの原子炉が開発された経過というのは核兵器を作るためなんですか?
小出:
軽水炉そのものはですね、原子力潜水艦という、これは画期的な技術だったんですけれども、
軍事的に。
それをつくりたいという事で始まっています。
さらには核兵器を作るための施設が、米国の中でとにかく余り過ぎてしまってですね、
それを「平和」という形で標榜しながら併用することで「軍事産業の生き残りを図った」という事です。
西谷:そうか、軽水炉というのは原子力潜水艦のために開発されたものなんですか。
小出:
そうです、もともと、
潜水艦というものはですね、何か海に潜るとみなさん思っていられるかもしれませんけれども、
「水の下に潜ることもできる船」という程度のことであって、
すぐに酸素が無くなってしまうので、すぐにまた、海面に出てこなければいけないものだったし、
今でもそうなのです。
しかし原子炉で動かす事が出来る潜水艦がつくれれば、
たとえばノーチラス号というのは、北極海の氷の下を潜水したままくぐるとかですね、
そのようなことが可能になったわけで、
潜水艦というものは原子力潜水艦が出来て初めて意味のあるものになったという、
それほどのものなのです。
それをどうしてもつくりたかったが為に出来たものです。
(※1958年8月には米国のノーチラス号が北極点を通る横断に成功)
西谷:
軍産複合体がね、
そうしたら、横須賀とかにいるじゃないですか。今アメリカの原子力潜水艦が。
という事は、あれがもし事故を起こしたら、横須賀の人達は被ばくするという事ですよね?
小出:
そうですね。
今、横須賀は原子力潜水艦だけではなくて、
ジョージワシントンという、原子力空母の基地にもなってしまっていまして、
東京湾の入り口に巨大な原子炉が動いているという、そういう状態になっています。
西谷:かなり都会に近いから、
小出:圧倒的に近いです。
西谷:あれが事故したらエライ事になりますね
小出:
はい。
ですから、たとえば日本では原子力安全委員会というものがあって、
全ての原子炉は安全審査をしないと認めないという事にしていたわけですが、
ジョージワシントンの原子炉、あるいは米軍の原子力潜水艦の原子炉などは、
一切の安全審査を受けないままあるのです。
西谷:一切の安全審査を受けていなくて、アメリカの技術を頼るだけですか?
小出:米国が「安全だ」と言っているから「安全だ」ということになっているのです。
西谷:先生、それは安全神話の最たるものですねw
小出:そうですね。
西谷:
本当に、でもそれ、ちょっと盲点ですよね。
そういう危険なものが都会の近所にあるっていうのはね。
小出:
横須賀の人達は長い事それは「問題だ」と言って声をあげ続けてきて下さっているのですが、
日本のマスコミも取り上げませんし、
ほとんどの方は知らないままだと思います。
西谷:
先生、今日は非常に貴重な盲点が明らかになってよかったです。
今日は原発輸出について小出先生にお聞きいたしました。
どうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ーーー
原子力潜水艦
第二次大戦で急速に発達した原子力技術を駆使して誕生したのが原子力潜水艦である。
吸気も燃料補給もなしに半永久的に駆動する、
潜水艦には理想のボイラーたる原子炉の登場により、潜水艦の水中速力は大きく上がり、
可潜時間は数ヶ月近くにまで増えた。
原子力潜水艦は有り余る出力を生かして海水を電気分解し、艦内へ常時新鮮な酸素を提供する。
このため、原子力潜水艦は「世界一空気が綺麗」と言われるほど艦内は快適である。
しかし、超微量の放射能漏れは絶えずあり(特に艦外)、米軍の乗員は放射線被曝線量測定バッジをつける。
ジョージ・ワシントン 空母(USS George Washington, CVN-73)

アメリカ国外の基地を事実上の母港として配備される唯一の空母であり、
日本に配備された初の原子力推進空母である。
機関 ウェスティングハウス A4W 原子炉2基 蒸気タービン4機, 4軸, 260,000 shp
乗員 士官・兵員:3,200名 航空要員:2,480名
兵装 RIM-7 シースパロー短SAM 2基 RIM-116 RAM 2基 ファランクスCIWS 2基
搭載機 85機
原発輸出推進で合意 安倍首相 ベトナム首相と会談
2013年1月17日 東京新聞 朝刊
【ハノイ=金杉貴雄】
ベトナムを訪問した安倍晋三首相は十六日、ズン首相と会談し、
日本がベトナムから受注している原発建設計画や高速道路などのインフラ整備、
レアアース(希土類)採掘などの貿易投資で協力を進展させることで合意した。
両首脳は沖縄県・尖閣諸島問題やベトナムが実効支配する南シナ海の中国との領有権問題で、
圧力を強める中国を念頭に
「すべての地域の紛争と問題を、国際法の基礎に基づき平和的交渉を通じて解決すべきだ」との考えで一致。
南シナ海問題では
「力による現状の変更に反対する」との認識を共有し、政治・安全保障分野でも協力を進めることを確認した。
経済分野では、
安倍首相がベトナムに対し、新たに五億ドル(約四百五十億円)の円借款を供与する方針を表明した。
安倍首相は会談終了後の共同会見で
「ベトナムとは地域的課題を共有し、経済的に相互補完関係にある重要なパートナーだ。
アジア太平洋地域の戦略環境が大きく変化する中、地域の平和と繁栄のため、
両国が積極的な役割を果たしていく」と強調した。
原発輸出、サウジと協議
事故後初案件 政府、再開へ転換
2013/2/10付 日本経済新聞 朝刊
政府は中東のサウジアラビアと原発輸出の協議に入った。
サウジは2030年までに16基の原発をつくる計画。
安倍政権は東日本大震災後の原発事故で凍結された原発輸出を再開する方向を鮮明にする。
国内の原発再稼働が見通せないなか、海外市場に活路を開いて原子力分野の人材や技術を守るとともに、
原子力産業を日本の経済成長の原動力のひとつに育てる。(関連記事総合・経済面に)
中東を訪問中の茂木敏充経済産業相が9日、…
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日立は原発輸出やめよ
「リトアニア世論尊重して」
NGO申し入れ
しんぶん赤旗 2012年12月19日(水)
「日立はリトアニアの国民を尊重し、原発輸出をやめよ」―18日、東京・丸の内の日立本社前で、
リトアニアと日本のNGOのメンバーらが、日立がリトアニアで進める原子力発電所建設にたいし、
中止するよう訴え、文書で申し入れました。
「脱原発世界会議2」(15、16日開催)に参加したアンドレイ・オザロフスキーさんは
「国民投票では、62・68%の人が原発新設に反対です。リトアニア国民の意思を尊重してほしい」と話し、
参加者は「さよなら原発」「輸出をやめろ」と唱和しました。
横浜から参加した女性(32)は「海外にまで次の“福島”をつくらないで」と言います。
リトアニアでは、2000年代にソ連時代の原発が閉鎖された後、原発新設プロジェクトが進められ、
11年に日立が優先交渉権を獲得しました。原発事故後、初の原発輸出として注目されています。
「核のない未来を」―。
リトアニアの複数の環境団体や政党は、粘り強く反対運動を展開。
今年10月に行われた国民投票では新設反対が6割を超えました。
また、同時期に行われた選挙で、建設を推進してきた与党が敗北し、政権交代も起きました。
オザロフスキーさんは
「新政府は態度をまだ決めておらず、日立もあきらめていません。
脱原発を願う日本の人々と連帯して中止させたい」と話していました。
申し入れ文書は、日本政府、国際協力銀行、リトアニア政府にも送りました。
原発輸出は「今後も進める」、
エネ政策議論で組織変更の意向=経産相
2013年 01月 15日 12:31 JST
[東京 15日 ロイター]
茂木敏充経済産業相は15日の閣議後会見で、
原発輸出について「安全な原発インフラの輸出はこれからも進めていきたい」と述べた。
同相はまた、国のエネルギー基本計画策定では従来とは違う組織で議論を進める意向を明らかにした。
原発輸出の条件として茂木経産相は
「相手国側の希望を重視して判断する。安全性が大前提だ」と指摘した。
「脱原発」方針を打ち出した民主党前政権でも原発輸出は継続の意向だったことから、
政権交代によってもこの点では大きな方針変更はない。
国のエネルギー政策の根幹となる「エネルギー基本計画」について前政権は、
東京電力福島第1原発の事故発生を受けて、2011年10月に見直しに着手。
総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)基本問題委員会で有識者が
1年以上にわたり33回の議論を重ねてきたが、
前政権が昨年9月に打ち出した脱原発方針を受け昨年11月14日の会合を最後に中断していた。
エネルギー基本計画はエネルギー政策基本法に基づき3年ごとに見直される。
現行計画は2010年6月策定のため今年6月ごろが見直し期限だ。
茂木氏は策定議論の再開時期について
「スケジュールは決まっていないが、早々にこの問題については取りかからないといけない」と語った。
基本計画策定の議論の場として、34回目の基本問題委員会を開くのか、
新しい委員会を立ち上げるのかについて同氏は
「組織については若干これまでと違った形を考えている。固まった段階で報告する」と述べた。
(ロイターニュース 浜田健太郎;編集 内田慎一)
茂木経産大臣ってこんな方→茂木敏充経済産業大臣VS美輪明宏さん
動き出した「原発輸出」ヨルダン&ベトナム(動画&内容書き出し)
初めて原発を導入するというヨルダンとベトナムの取材をしたテレビ番組の書き出し
2013年2月6日
岐阜県土岐市で核融合科学研究所が計画している重水素実験についてお話をお伺いしました。
Sawada:
今年に入りまして岐阜県土岐市で文部省所管の研究機関、
核融合科学研究所が計画している重水素実験に対してですね、
放射性物質の安全管理などに不安をいだく母親たちからの反発が強まっているというお話がありまして、
実際に多治見市の方々から岐阜県知事に対して「申し入れ書」というのが1月18日に出されています。
まず、そもそも、この核融合科学実験所での重水素実験。
こちらはどういったものなんでしょうか?
小出:
はい、
先ず核融合という物の説明をさせて下さい。
もともと人間は様々な形でエネルギーという物を得てきました。
初めのころは薪を燃やしていたり、木を燃やしていたりしていたわけですが、
それから石炭を燃やし、石油を燃やし、
さらにはウランを核分裂させるというような事までやってきたわけです。
しかし、ウランという原子力の資源というのは、地球上にあまり豊富にあるわけではないので、
ウランは容易に枯渇してしまうという事がすでに分かっています。
何か、普通のみなさんは、ウラン・原子力というものが、
かなり豊かな資源だと思ってこられたと思いますが、
実はそれが全くの誤解で、
普通原子力と呼んでいるものはエネルギー資源として「ほとんど役に立たない」のです。
そこで、「じゃあ次はどうするのか?」という事で、
「ウランの核分裂ではなくて、今度は核融合という反応を使えないか」ということに思い至りました。
核分裂というのはもともとは原爆という形で人類の前に姿を現した技術で、
原爆を管理しながらエネルギー源にしようとしているのが現代の原子力発電です。
核融合の方は、
原爆ではなくてさらの巨大な水爆という爆弾を人類は作った事がありますし、今でもあるのですが、
その水爆の原理を使ってエネルギーを取り出そうということです。
水爆の反応を支えているのが核融合反応というものなのですが、
その反応は実は太陽で起きている反応です。
ですから核融合というものを地上で実現してエネルギーにしようということは、
「地上に太陽をつくりだす」という、そういう試みです。
大変難しい技術でして、今から50年、60年ぐらい前から構想自体はあって、
「簡単にできる」というように、当時は言われたのですが、
やればやるだけ難しくて、10年経つと実現年度が二倍に伸びてしまうというように、
猛烈な勢いで実現可能性が遠のいてしまっていっています。
今現在で言えば、「21世紀中には実現できないだろう」と、
ほとんどの核融合研究社は思っている筈だと思います。
それでも、「なんとか人類の未来を核融合エネルギーで取り出せないか?」
と考えている研究者というのはもちろんいるわけで、
日本の場合には日本原子力研究所、現在は日本原子力開発機構というところで一部研究をしていますし、
今問題になっている核融合研究所というところでも研究をしているという事です。
そして核融合研究所で今度は少し新しいというか、進んだ実験をしようとしている訳ですが、
その時にトリチウムというものを使おうとしています。
つまり燃料にトリチウムというものを使おうとしているのですが、
トリチウムというのは水素です。
水素というのは、もうみなさんご存じだと思いますが、水を作っている基本的な元素でして、
H2Oというのですね。
環境にはどこにでもありますし、
人間の身体なんてほとんど水なわけですから、私たちが慣れ親しんできた元素です。
ただし、自然にある、天然にある水素というのは、全く放射能をもっていないのです。
しかしトリチウムというのは放射能を持った水素でして、
それを実験に使おうという事をやろうとしています。
放射能ですからもちろん危険を伴いますし、
水素というのは大変閉じ込めが難しい、捕まえることが難しいという元素ですので、
実験を開始すれば何がしかのトリチウムが環境に漏れてきて、
周辺の人々を被曝させるという事になってしまいます。
Sawada:
そうですか。
そのトリチウムをはじめ、また中性子の話、もしくは放射性物質がまた出ると。
たとえばトリチウムでいうと、「95%は捕獲予定をしています」と、いうような事を話されていたり、
「中性子が出ます。しかし微量です」というような説明があったりだとか、
その辺について説明は頂いたものの、それで私たちが納得できるようなものなのか?
それともはたまた危険なものなのか?という事はいかがでしょうか?
小出:
もちろん、放射能はあらゆる意味で危険ですから、
95%を捕まえるという事は「5%を外に出します」という事ですので、危険は必ずあるのです。
ただし、その危険が周辺の住民の方にとって、「とても大きいか?」と問われてしまうと、
私は「それほど大きくはない」と思います。
というのは現在核融合研究所でやろうとしている研究は本当にそのプリミティブな基礎的な実験なのであって、
取り扱うトリチウムの量も、ま、私なんかからみるとかなり少ないものですし、
そのうちまた何%か漏れてくるということであって、
「大した危険ではない」と私は思います。
ただし今聞いて下さったように、中性子という放射線も飛び出してきて、
実験装置全体が放射能の塊になっていってしまうという事もありますので、
いずれにしても危険がゼロという事ではないという事は、もちろん核融合研究所も承知している筈ですし、
みなさんも承知しておくべきだと思います。
Sawada:
そうですか。
こういった中で、このエリア自体がですね、
2km圏内あたりに小中学校があるような住宅地ですというところで、
もちろん大きな危険性か、小さな危険性かというところで、
危険性の高を計るのは大変難しいところがあるんですけれども、
また、福島の事故自体がまだまだ収束していない中で、
あえてこうやって、こういう実験をですね、まだまだしていこうというのは、
まだ夢のエネルギーと言うところに、幻想があるのでしょうか?
というのは、放射性物質に関する無毒化の話で、先生もずっとお話しされていますけれども、
こちらについても処理方法がないというのがずっと延々と延期されてきているわけですけれども、
同じ事が繰り返されようとしています。
で、そんな中で市民の方々が一生懸命、
「やっぱりこういうところでしっかり市民が声をあげていこう」
という事で動かれていると思うんですけれども、
今後どういう形でこういう事を反対していく、もしくは声をあげていったらいいものなんでしょうか?
小出:
えー、私は現在している核分裂を利用する原子力発電にも反対ですし、
核融合という物にも、エネルギー源にするということにも反対なのです。
ですからそういう事を研究するという事にも、もちろん反対ですし、
出来る限りやらない方がいいと思います。
ですから、危険が大きい小さいという議論はあるかもしれませんけれども、
研究そのものをやるべきではないと私は思っていますので、
核融合研究所に対する反対の声というものは大切にしたいと私は思います。
Sawada:そうですか、ありがとうございます。
小出:はい、ありがとうございました。
核融合「D-D実験」ってなぁに?岐阜で実験開始!パブリックコメント受付中
パブリックコメントを募集している事もあって、土岐市の核融合実験について調べたブログ
2013年2月2日 ラジオフォーラム
http://f12.voiceblog.jp/data/ki-ko/1359851514.mp3
湯浅誠(活動家、社会運動家)さん
湯浅:
早速リスナーの方からこんな質問が寄せられているんですね。
「福島第一原発周辺の除染作業で、取り除いた土や枝葉、
洗浄に使った水の一部を現場周辺の川などに捨てる手抜き除染が横行している事が明らかになりましたが、
これは地元住民たちにどのような影響があるのでしょうか?」というご質問なんですけれども、
ま、これは連日ニュースになっていましたが、
先ずそもそも、「除染という事の中身と意味」というのを、
先ずその手抜き云々の前に確認していきたいんですけれども、
小出:はい、ありがとうございます。それが大切なことだと思います。
湯浅:そもそも「除染とはなに?」っていところからお願いしてもよろしいでしょうか?
小出:
はい。
「除染」とは文字通り汚れを除くと書くのですけれども、汚れの正体は放射能な訳で、
放射能を消すという事は人間には出来ないのです。
つまり汚れを除くという事は基本的に出来ない事なのです。
で、私たちに出来る事は、
今ここにある汚染を隣の場所に移すであるとか、
集めてとにかく隔離をするとか、
そういう事が唯一出来る事なのです。
それで、人々の被曝を減らそうというわけですから、
人々が生活している場所にある放射性物質を、
「とにかく集めて生活の環境から隔離をする」という事が、今言われている「除染」という事の中身です。
湯浅:
具体的にはですね、地域の中には家もあれば、川もあれば、山もあれば、林もあれば…だと思うんですけど、
その除染作業というのは具体的に何をやることを指すんですか?
小出:
え…w、
みなさんもちょっと想像していただきたいのですが、
今現在の汚染というのは湯浅さんが今おっしゃって下さったように、もう全てが汚れてしまっている。
家も道路も、いわゆるビジネス街があればそこも、そして山も畑も田んぼも林も…
とにかくもう、みんなが汚れてしまっているわけで、
その汚れの全てをどこかに集めて隔離するという事はもともとできないのです。
何か日本の政府は、除染をすれば人々が今汚れている場所に帰れるかのように宣伝をしているわけですが、
実際にはそんな事は到底できないのです。
でもそれでも被ばくを少しでも減らしたいということであれば、
汚れてしまった屋根を掃除するとか、
人々が歩きまわる道路、あるいは庭先ですとか、
そういうところの汚染だけは少しでも集めて隔離をしようという事をやってきたわけです。
でも、非常に限定された効果しか、まずはありませんので、
「除染によって綺麗になるというふうにまずは私は思わない方がいい」と思います。
湯浅:
報道なんかでも出ていましたが、小学校の土を剥ぎとって校庭の片隅に集めるとか、
屋根を洗浄機で、水で洗浄するとか、
ま、そういった事だけれども、これは要するに屋根の上にあった放射能を地上におろす。
あるいは、校庭の前面に薄く広がっていたのを固めて校庭の隅にもって行く。という、
いわば「移染」ですよね。
小出:そうですね、汚れを移動させるという意味の「移染」が正しい言葉使いだと思います。
湯浅:ということであって、それによって別に減らせる訳じゃないんだと。
小出:そうです。
湯浅:残念ながら人間の力では放射能を減らすという事は出来ないんだと
小出:はい、おっしゃる通りです。
湯浅:
そうなりますと、「手抜き除染」と、わりと衝撃をもって受け止められたりしたわけですが、
これは結局どういう影響を及ぼすことになりますか?
除染そのものの意味がそうだという事になると、w
小出:
基本的に「除染」というものは出来ないで「移染」でしかない。というのは、
いま湯浅さんが話して下さった通りなのです。
ただしそうではあっても、少しでも人々の被曝を減らすべきだという意味では、私もそうだと思いますし、
小学校の校庭であるとか、幼稚園の園庭であるとか、
子どもたちが集中的に時を過ごす場所の土は、
私は「必ず剥ぎとらなければいけない」と思っています。
そして問題は、「それをどこかに、隔離をきちんとしなければいけない」という事な訳ですけれども、
「手抜き除染」というのは隔離をするのではなくて、
むしろその汚染を広げてしまうというような事をやってきてしまったという事です。
湯浅:ばら撒いてしまったという事ですね。
小出:はい、そうです。
湯浅:川に流したりして、
小出:
水で流し足りですね、川に落としてみたりですね、
むしろ「隔離」ではなくて「拡散」をさせてしまっている訳で、
「意味がない」こと以上に「やってはならない事をやってしまっている」という事です。
湯浅:
なるほど。
ま、ようするに「除染」は「移染」だけれども、
「手抜き除染」というのはいわば「拡染」ですね。
放射能を拡散しちゃっているんだという事ですね。
集めた落ち葉を川にながしちゃうとかですね、ということになると、
川を伝ってそれが広がっていく訳ですが、
小出:
そうです。
汚染が広がっていく訳ですから、
もともと汚染が無かった、下流の方にですね、汚染が無かった場所があるとすれば、
そちらの方に汚染が移っていってしまう訳ですし、
最終的には海にまた汚染が流れてしまうという事になってしまいます。
湯浅:そうすると、途中で川から水を引いている水田の稲なんかにも、影響が出る恐れは
小出:
もちろんですね、
汚れたものを新たに川に落とし込んだわけですから、
その分だけの汚染はその水を使っている地域に、汚染としてまた上乗せされてしまうという事になります。
湯浅:それの人体に対する影響というのは、何らかの形で確認できるものなんですかね。
小出:
事故直後に枝野さんがしきりに「直ちには影響が出ません」というような事をおっしゃっていた訳ですが、
「直ちに出ない」という事は、その裏を言えば、
「長期に渡った時を考えれば影響が表れるでしょう」という意味なんですね。
その意味というのは、私は基本的には「癌」だと思っていますが、
あらゆる被ばくは危険ですし、特に、すでに科学的に証明されているという意味では
「癌が増えてくる」という形の影響が出てくると思います。
湯浅:
先程おっしゃった「移染先」ですよね。
今は校庭の片隅にあったり、自治体の中の仮置き場にあったり、
そういうところにあるわけですが、そこの放射能が高くなってしまっている訳で、
これを、じゃあ、人間の力で減らせない以上は、
どこかに持っていって集約して、影響を低く抑えなきゃいけないということになるわけですが、
これについては、…
小出:
わたしはその放射能のお守をするという仕事を40年やってきているのですが、
その私の原則から言うと、
放射能は出来る限りまとめて、集中的に管理をするというのが正しいと思いますし、
あちこちに手抜き除染のような形でばらまくのはもう基本的に間違えているし、
集めたものもどこかに集中的に責任をもって管理できる場所に集めるべきだとわたしは思います。
で、その場所という事なのですけれども、
今日本の政府の方は各県に一つずつでも置き場を作って、
中間貯蔵とかという言葉で埋め捨てにしてしまおうとしているわけですが、
汚染というものの正体は、
もともと東京電力の福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった放射性物質な訳で、
東京電力のれっきとした所有物なのですから、
東京電力に返すというのが私は原理的に良いだろうと思います。
で、本当の事を言えば福島第一原子力発電所の敷地の中に返すのが良いのですが、
今あの場所は、多数の労働者が放射能を相手に戦争を戦っている場所ですので、
その場所に新たな放射能を持ち込むという事は多分出来ないと思います。
で、私の提案は福島第二原子力発電所という、広大な敷地がすぐ南にありますので、
そこを放射能のゴミ捨て場にするという事の方が正しいだろうと思います。
それぞれの県で引き受けてしまうのではなくて、東京電力に返すというような方策を探って欲しいです。
湯浅:かなりの量にのぼると思うんですが、その、福島第二原発の敷地で吸収できる…
小出:
分かりません、それはもうどこまで丹念に集めるかという事なのですけれども、
福島第二原子力発電所の敷地はかなり広大な敷地ですし、
東京電力はまた、「福島第二原子力発電所を再稼働させる」というような事を言っている訳ですね。
周辺の何10万、何100万の人達にこれだけの苦難を押しつけながら、
自分だけは無傷で、また原子力発電所を再稼働させるというふうな事は、私は正しいと思いませんので、
先ずは福島第二原子力発電所を放射能のゴミ捨て場にする。
それでも足りなければ、また次の手段を考えるというやり方がいいと思います。
湯浅:なるほど。小出さん、ありがとうございました。
小出:いいえ、ありがとうございました。
2013年2月1日
福島県からすると千葉県は、
一つ南が茨城県で、その茨城県の南の件だからずいぶん離れているんです。
平野:
離れていますよね、どちらかというと東京都に近いですよね。
しかし原発事故直後からいろいろとこのあたりは…放射能雲が流れたという話がありましたけれども、
なかなかその実態というのは僕らはね、継続的に知らない状況ですよね。
上田:今日はこのテーマで前半後半含めてお送りします。
ーーー
03:59~
水野:
柏という町はどういう位置にありますかと言いますと、
福島第一原発から離れること200kmです。
200kmも離れているんですが、先程平野さんがおっしゃったように、
ホットスポットと呼ばれている地域なんですね。
東京から電車で行ったら40分ぐらいですか、3~40分というところ。
ものすごく人が多いベッドタウンなんですね。
上田:東京に通勤で通いやすい場所ですよね。
水野:
いろんな線も乗り入れていて、本当に多くの人達が行きかっている大きな町なんです。
ただ、そこのところの放射能汚染、
最新の数字で言いますと、柏市役所が測定しているものですけれども、
おとといで、0.461マイクロシーベルト/hという数字が出ています。
これ、どういうふうに読みとったらいいか?ですけれども、
たとえば大阪、このあたりではね、普通のところで見ると、大体0.01とか、0,02とか、
桁がですね、0.0いくつというのが大体普通なんですよ、こっちの西日本だと。
その事を考えますと、現在でも、もともとも値の、
柏で10倍から20倍ぐらいの値が出ていると考えるのが妥当かと思います。
「200kmも離れているのにか!?」と思うのですけれど、
日本の200kmってどんな感じになっているのかな・って、大阪で考えてみたんですよ。
今稼働しております大飯原発を中心に200kmの半径を地図で見てみますと、
平野さん、ここに地図がありますから見て下さい。
そうしますとですね、西は岡山県倉敷市が200km地点ですわ。
上田:えーっ!西がですか
平野:高松がちょうどかかるところですね。
水野:
そうか、四国で言うと高松までかかりますね。
だから淡路島はすっぽり入ります。
平野:入りますね。
水野:東でいうと、長野県飯田市が200km。あんなところまで200kmなんですね。
上田:岐阜県も当然入っている訳ですね。
水野:
そうです、岐阜県も入りますね。
京都府、滋賀県はもちろんのこと、奈良県、三重県も入り、岐阜県も入り、
だから名古屋も入るんですよ。
上田:えーーっ!!
水野:
で、大阪市内というのはまだ、100kmという、というようなところですから、
もちろんのこと大阪府内全部入ってしまう。
ま、この番組をお聞きのみなさんは、「誰の町にも起こり得る事だ」という意味合いがあるわけですね。
そんな思いで今日聞いていただけたらと思うんです。
その柏市で先日原発被害に関する講演会がありました。
で、普通とは違ってですね、原子量を利用するという事に対して、
反対する側と、いや推進しようという側、両方の側がゲストになって話をするという、
これは非常に珍しい。
なかなか実現しない事を市民団体が一生懸命になって主催して実現したという、
非常に価値のある、私は画期的なイベントだったかと思います。
それを柏市で「健康被害についてどう考えるべきなのか?」という事を論点に
賛否それぞれの立場から話を聞く試みに、
市民文化会館という、大きな会館の大ホールでしたけれども、
ものすごい行列が1時間前からもう出来ているんですね。
上田:みなさんやっぱり関心が高いんですね。
水野:びっくりしました。
先ずその公演の模様を今日の番組前半は聞いていただこうと思います。
先ずですね、「柏市の状況をどう見るか?」というテーマについて、お二人の意見を聞いていただきます。
先ずは原子力を利用する立場で研究を進めてこられました、
独立行政法人日本原子力研究開発機構の小林泰彦さんの声です。
小林:
柏市の市のホームページに出ている数字などいろいろ見て考えたんですけれども、
いま私自身が、皆さんに「こうしたらいいですよ」っていうつもりで言ってもしょうがないので、
自分だったらどうするか?という事で考えると、
私だったら、もう全然気になりません。小さい子もそれでいいと思う。
もし、自分の家族がいてもそれは気にならない。
それは学問上の確信があります。
被ばく線量の測定と公開ということ、
これは今非常に市もやられているし、詳しい情報が出ている。
ただしこれから気を付けるべきことは、「どこが何ベクレル汚れている」っていうことよりも、
そうではなくて、「今住んでいる人がどれ位のシーベルトで放射線を受けているのか」ということ、
これを基準にし一人一人考えるのがいいかと思いますね。
公共施設などは非常に低くなっていますから、全く問題ないだろうと思います。
それから、通学路などで、もしところどころマイクロスポットと呼ばれているような所があったとしても、
そこをまたぎ越す時間、時間にすれば非常に短いので、
それから受ける線量というのは微々たるもの。
それよりも長い時間を過ごす子どもさんの寝室の窓のサンとか、屋根のトイであるとか、
そういう所の掃除の徹底でもう少し下げる事が出来れば、多分そっちの方が有効なのかな?
という気がしています。
水野:
今の小林さんの主張は
この柏市の現状で、小さな子どもさんが暮らし続けても問題ではないんだというお話ですね。
それは100ミリシーベルトという一つの数字を出されているんですけれども、
100ミリシーベルト以上になればですね、
これは甲状腺がんになるリスクが高まるというふうに科学的な証明がなされているんだけれども、
100ミリシーベルト以下ではそこのところはまだ分からない領域であるんだということですね。
ですから「科学的に考えていけばですね、今の柏市の状況でも気にすることはない」
という主張をしていらっしゃる訳です。
上田:「分からないところは大丈夫」という判断でいいんですかね?
水野:「大丈夫かどうかという事を言えない」という事ですね。
上田:あー、はいはい。
水野:
大丈夫かどうかを今、言えない状況であると。
だからもっと研究が進まないと、「そこは言えない」んだと。
だからそこは政策的な考え方で「どう判断するか」であると。
「科学的な問題としてはそこは論じることがこれ以上は出来ない」というお立場ですね。
で、この方は放射線生物学、
放射線が生物にあたった時に何が起こるか?というのを研究して、
ま、放射線の利用についての研究を進めてきている方なんですけれども、
今回は「自分の家族がここに住んだらどうするか」という立場で私は話をしますという事での主張でした。
じゃあ、今度はですね、京都大学原子炉研究所助教の小出裕章さんの声を聞いて下さい。
小出:
この柏を含めて広い地域が1平方mあたり4万ベクレルを超えて汚れています。
そういう所に私は「普通の人が住むという事自体に反対」です。
出来る事ならばみなさん逃げて欲しいと思いますし、
本当であればその法律を作った日本国政府が責任を持って、皆さんをコミュニティーごと、
どこかできちっと生活できるようにするということが私は必要だと思っています。
いま大地を汚している主犯人はセシウム134と137という放射性物質ですが、
1平方mあたり4万ベクレルのところにいれば、1年間で1ミリシーベルトになると思います。
避けることができません。
それだけでももう、ようするに法律が決めている限度を超えて被ばくをしてしまうという事になる訳です。
そして今、小林さんが言って下さったように、
そうではなくて局所的に汚染しているところもあちこちにあります。
そういう所をきちっと調べて、子ども達が接するような場所からはそういう汚染を除くという作業を、
これからもずっと続けなければいけませんけれども
環境中で放射性物質は移動していますので、
ある場所を綺麗にしたと思ってもまたそこがしばらくしたら汚れてくるという可能性もありますので、
これから長い期間にわたってそういう作業を続けていって、
出来る限り子どもを被ばくから守るというような事をしていっていただきたいと思っています。
水野:
はい。
小出さんの主張は
「100ミリシーベルト以下の低い線量の被曝にも健康への危険は存在するんだ」という主張ですね。
で、小出さんは
「放射性物質はゼロでない限り、1でも2でも、あればそれだけの危険度はあるんだ」という考え方な訳です。
こうした小出さんと、先程紹介した小林さん、
100ミリシーベルト以下では健康的な危険があるという事は、疫学的なデータでは証明されていないという、
このお二人がですね、論戦を繰り広げる場面がありますので、
そこを次は聞いていただこうと思うんです。
ただですね、その中に出てくる言葉で「疫学」という言葉が出てくるんですね。
で、これって、言葉の意味そのもので言うと、
「人間の集団を対象に統計を取って、その原因は何なのかという事を探る方法論」な訳ですけれども、
この疫学というものの限界という事についてのお二人の見解が出てきます。
で、はっきりいうて、専門用語が出てくるので、
わたしは「なんのこっちゃわからへん」というふうになりました。
みなさんもそうお感じになるかもしれません。
ただ、「専門家同士が議論するとこうなる」という場面でね、
まぁ、本当になかなか聞く機会がないんですよね。
住民にしたら、「私らはここにいて大丈夫なのかどうなのか」を聞きたいのですけれども、
「専門家同士が科学的な見地から攻めて話をしていくっていうとこうなる」っていうのをですね、
ぜひ聞いていただきたいと思います。
4分ちょっとございますけれども、滅多にない議論だと思いますので、お聴きください。
ーー
お二人のご意見にはかなり差があるように思うんですけれども、
それに関しましてご意見がありましたら小林さん、いかがでしょうか?
小林:
まぁ、ご意見っていう事ではないんですけれども、
小出さんがお示しになった資料には科学的な間違いが多々ありますしね。
まぁでも、「細かいこと」だと思われるかもしれない。
専門的には私は非常に気になります。
たとえば、ICRPがハムに値切ったという表現は、あれはおかしいですね。
DDREFのことをおっしゃっているんだと思います。
瞬時の被ばくに対して、緩慢な被ばくは2分の1から10分の1ぐらいの影響になるだろうという事は、
さまざまな科学的実験事実です。
そのなかで、一番用心深いところを取って2分の1をとるとか、
DDREFの値をとるというのが国際的な合意だというふうに思っています。
小出:
えー、いいですか?
えーっと学問的な誤りと言われてしまうと私としても言わなきゃいけないのですが、
DDREFという係数がありまして、
低線量で低線量率で被爆をした時には、
高線量、高線量率で被爆をした時の危険度よりもどれだけ少ないかというような事を表す係数です。
それをICRPは「2」という係数を使っていまして、
高線量の時よりも低線量は2分の1になるというような係数を使っているのです。
そして、今それは慎重な過程だとおっしゃったけれども、
先程聞いていただいた、ベイグという米国の委員会では1.5です。
確か小林さんの資料にもあったと思います。
むしろベイグの方がずっと厳しく見ているわけですし、
私は先ほど原爆被爆者たちの実際の疫学データ、人間の物を見ていただきましたけれども、
人間の疫学データはむしろ低線量の方が危険度が大きいということも示しているのです。
ですから簡単にDDREFという係数を使って、低線量のリスクを値切るということは、
私は正しくないと思っています。
小林:
それは値切っているんではなくて、
えーっとじゃあ、先程今おっしゃった原爆被爆者データのところでお聞きしたいと思いますけれども、
低線量ほど1シーベルトあたりの過剰相対リスクが大きくなる。
この時のコントロールは何ですか?
小出:
これは原爆という非常に特殊な集団を取っているのであって、
コントロールがどこまで正しいかというのは、それこそまた議論が起きてしまう、ということなんですね。
小林:
そのとおり。
だから、コントロールの取り方によって、逆に線量が低くなるほど
シーベルトあたりの過剰相対リスクが低くなるという結果も導ける。
つまり、どうにでも出せるという意味で、
本当に何が起きているのかという議論をするにはあまりふさわしくないと。
小出:
ですから、疫学というものは今小林さんがおっしゃってくれたけれど、統計学に基づいているわけだし、
どれだけの候補を集めるかという事で違ってしまう訳で、大変難しい学問だと思いますけれども、
やり方によっていろんな結論が出てきてしまうという、まだそういう段階にある訳ですね。
小林:それで私だったらこういう特定の見方だけを出すような扱い方はしないで、
小出:もちろんだからいろんな
小林:
医学データは結論が出せない状態である、
まぁ、ハッキリ言えばゼロから100ミリシーベルトの間は言いたい放題ですね。
何を言ってもいい領域になっている、
しかもゼロと言っても、場所によって人によって違うわけで、
そこでこれ以上本当の事を知りたいと思ったらやはり、
メカニズムの研究で一つずつ解明していくしかないのかなぁと考えて、
そういうふうに今大勢の人が努力していますよという話を今日させていただきました。
小出:そうですね、ですから疫学だけでは証明できないという
小林:そうです
小出:
範囲が必ずある訳で、そこでは実験もしなければいけないし、
モデルもつくらなければいけないという事になっている訳です。
ただしそれを全部踏まえた上でデイルにしてもICRPにしても、
低線量でも危険は直線的に存在し続けると考えるのが、科学的に妥当だと言っている。
小林:
そうですよね、それは全てのリスクについてそうですよね。、
絶対に安全という事は誰にも証明できない訳です。
小出:そうですね。
小林:
リスクはある。ただしその大きさをどうやって定量的に調べようか、
把握しようかという所が努力すべきところだと思います。
小出:そうですね。
ーー
水野:さぁ、いかがでしたか?
上田:
随分と専門的な言葉も多かったですし、
なーんかやっぱり、どんどん、どんどん言葉が難しくなっていく気がするんですよね。
水野:
住民の思いと科学者同士の議論というのは
やっぱりこういう溝がどうしても出来やすいのかなと思いますね。
平野:
私も大変興味深かったですね、
一つ言える事は「リスクに対してどういうスタンスを取るのか?」という
水野:
そこですね。
つまり低い線量の被曝のリスクをどう考えるか?というところには非常に幅がある。
読みとりをどうとるか?っていうところですね。
小出先生は「やはりリスクがあると考えるべきだ」とお考えだし、
「あるかどうか分からないじゃないですか」っていうのが小林さんのお考えという事になる。
平野:そうですねぇ
水野:
その時に、じゃあそこに住んでいる人間はですよ、
小さい子どもも住んでいるんです。
「どうしたらいいのか」って、本当に悩みが深まるわけですけど、
私がビックリしましたのはこの議論を聞いてもですね、会場のみなさんがね
「うん、うん」とか、「いや、いや」とかね、首を振ってたりしてね、
分かって聞いていらっしゃる方が非常に多い。
という事は「この2年本当に苦しんで、勉強し続けてこられた方達が多いんだな」
というのを、その会場では感じました。
さぁ、結局この柏市で、住民はどうしたらいいの?
そこのところをお二人がお話になっております。
次は、まずは小林さん、そして小出さんと聞いていただきましょう。
ーー
小出:
子どもを中心としてこの地域から逃げる事が正いと私は思います。
ただし、さっきもそれも聞いていただいたけれども、
逃げるという事その事自身が猛烈な苦難を伴ってしまうので、容易なことではありません。
それで今、いま現在人々がこの地域で生きているわけだし、
子どもたちも生きている訳です。
私は何度も言いましたけれども、「子どもだけはとにかく被ばくから守りたい」と言っているわけで、
子どもが集中的に時を過ごす場所、学校の校庭であるとか、幼稚園の園庭であるとか、
地域の公園であるとか、あるいは人々が住んでいる、ま、ご自宅でもいいけれども、
子どもたちが泥んこになって遊ぶような場所の土はまずは剥いで欲しいと思っています。
ただ剥いだところで放射性物質が無くなるわけではありませんので、
それを今度はどこにどうするか?という困難な課題がまた持ちあがってくるという。
でもやって欲しいと私は願っていますし、
それから内部被ばくを避けるためには、学校給食であるとか、
子どもがとにかく食べるものに関しては注意をして、
行政ももちろん一緒になって、子どもたちに放射能汚染の極力少ないものを回すという、
そういう対策をとって欲しいと思います。
小林:
私は少し違いますね、
基本的には良いんですけれども、放射線のリスクの事だけを考えるとそうかもしれないけど、
残念ながら、現実にはもっといろいろ、普段見えていないリスクがあって、
そちらの大きいリスクを忘れてっ目の前の小さな放射線の事だけにとらわれると。
その「えーっ」とおっしゃった方はね、大きい小さいを比べる物差しが、違うんですね。
それは科学的なデータで比べないと、感覚で言っていてもしょうがないと思います。
ま、専門家はそういう事のために助言をするために役割があるんだろうと思います。
たとえば、もし自分が住んでいたとしたら、
給食だったら、今の流通しているものの放射性物質の内部被ばくのリスクよりも、
圧倒的に食中毒の事を気を付けてほしい。
小さいお子さんを持っているお母さんはそうじゃないですか?
あるいは市のお金があれば、通学路で大きな車がビュンビュン通るところを
ひょっとしたら引っ掛けられそうになりながら行く。
私が伝えたかった事はこの場でどうしたらいいのかという事で、
「汚されてしまってけしからん」と腹立つというのは当たり前ですよね。
完全に元通りにして欲しいという気持ちは当たり前です。自分だってそう思います。
でもそれが無理な場合に、じゃあどうするのか?っていう時に、
一番自分と子どもにとってベストな方法をさがす。
で、どれがベストなのか?
比べても分かりにくいところをはかるための知恵が科学なんだろうと、
そういう事になると思います。
ーー
水野:
お二人を紹介する順序を私が最初間違えました、大変申し訳ないです。
最初に発言なさったのが小出さんです。
小出さんの主張はこの柏市などの広い範囲で
「子どもたちはここに住むべきではない」と、「逃げて欲しい」とおっしゃいました。
でも、逃げるという事には、いろんな意味でのしんどさがありますね、
経済的にも、そして家庭がバラバラになる場合もありますし、
上田:仕事もね、しなきゃいけないですしね。
水野:
そうですね、ええ。
そうした家族が一緒にいられるかどうかというようないろんな精神面もあるので、
「逃げない」というのであれば、どうやって子どもに安全な、より安全な食べ物を食べてもらうか、
「行政もいろいろと工夫をするべきだ」と。
あるいは除染も子どもたちがいるところを中心に
「やり続けなければいけない」というお考えです。
上田:続けなきゃいけないんですね。
水野:ええ。
一回やってもまた元に戻ってしまうものだから、
ながーーーい間「やり続けなければいけない」というお考えで、
そして次にご発言なさったのが小林さんです。
小林さんの考え方は、「子どもの安全」という事でいけば、
確立から言って、「目の前の小さなリスク」とおっしゃる、その放射能のリスクよりも、
食べ物だったら、たとえば「食中毒に気を付ける」。
あるいは子どもがいつも通る道の「交通事故に気を付ける」と、
そういう考え方が必要ですよというふうにおっしゃったわけです。
上田:はい、なんか…
水野:大分違いますね。
上田:別の話をもってこられているような気持になってしまうんですけれどもね。
水野:うん、リスクの話ですよね。
上田:そうですよね。
水野:
会場からはですね、この後、小林さんの考え方に対しては、
じゃあ、「リスクっていうのは食中毒や交通事故のリスクはどこの地域にもあるわけだから、
その上に放射能のリスクをわれわれがかぶらなければいけないんですか」と、
「リスクが上乗せされるという事にはなりませんか?」
というご意見も確かに出ていました。
ま、こんなふうにですね、一つの現象を全く違う捉え方をするお二人の講演会。
この後、この講演会を主催なさった柏市の住民の方と繋いでお話を実際に聞こうと思います。
ーーつづく
<後半・柳沢さん>
「本当に見えないのが罪です」千葉県柏市の場合~報道するラジオ2/1(内容書き出し)
<対談>小林 泰彦VS小出裕章1/19千葉県柏市「東葛から問う」・千葉の汚染(内容書き出し)
放送開始日 2013年1月26日(土)~
ゲスト 吉富有治(ジャーナリスト)
パーソナリティ 今西憲之(ジャーナリスト)
小出裕章ジャーナル
今西:
今日は、たね蒔きジャーナルにもよくご出演されていた
ジャーナリストの吉富有治をお招きして放送を送りしています。
吉富:吉富です、よろしくおねがいいたします。
小出:吉富さん、よろしくおねがいいたします。
今西:
まず、私の方から、小出さんに質問させていただきます。
福島第一原発の現状について、前回私の担当した回ではいろいろお伺いしたのですが、
やはり現状の福島第一原発の中でですね、
とりわけ危険性が高いとみられているのは4号機ではないかという気がするんですね。
というのもですね、地震津波の時には4号機は運転されていませんでしたよね。
小出:そうです。
今西:という事は、使用済み燃料棒などはプールに保管されていたという事になりますね。
小出:
そうです。
原子炉の炉心の中には一体も無くて、
全てが使用済み燃料プールというプールの底に移されてていた時に事故になりました。
今西:
現在東京電力から発表されているところによると、
使用済み燃料棒、未使用のものも含めて1533本という数がプールに保管されているという事ですけれども、
小出:そうです。
今西:
私は実際に福島第一原発の中に行きですね、
この4号機、爆発で吹っ飛ばされた4号機を目の当たりにしました。
その時に、この燃料棒プールがですね、今も外気に触れたままになっているというところで、
「ここが一番危ないんやないかな」と思えてならないんですけれども、
そのあたりについて先生、いかがでしょうか?
小出:
1号機から3号機までの燃料はすでに溶け落ちてしまっているわけで、
今のところすぐに手をつけることすらもできません。
4号機の使用済み燃料は、現時点ではまだプールの底に形をとどめた状態でとどまっていますので、
それが溶け落ちてしまうよりも前に、一刻も早くすこしでも安全なところに移さなければいけません。
ですから、何よりも急ぐ作業に該当します。
今西:
その中でですね、やはり4号機の耐震性、
「もう一回地震が来たらどないなりますねん」という所が非常に大事かと思うんですね。
コンクリートというのはですね、劣化してきます。
それは昨年の笹子トンネルの事故などでもですね、コンクリートは劣化するという事がありました。
「4号機本当に大丈夫なんかな?」と思えてならないんですけれども、
小出さんはそのあたりどのようにみられていますか?
小出:
私は建築の専門家でもありませんし、耐震設計の専門家でもありませんけれども、
少なくても現場の映像とかを見る限りはですね、建屋そのものが激しく破壊されています。
東京電力は「不安があるから」という事で、「耐震補強工事をやった」と言っている訳ですけれども、
ゆっくり慎重に工事が出来るような現場ではありませんし、
どこまで耐震補強工事がきっちりと出来たかは私は不安に思っています。
今西:
吉富さんね、原子力安全基盤機構という所があるんですね。
この4号機の耐震性について「どうなのか?」という不安が湧きあがった時にですね、
いまの機構がですね「耐震性は大丈夫や」というお墨付きを出したんですね。
けれどもこの原子力安全基盤機構というのもですね、原子力ムラの、いわば一員であるわけですね。
吉富:なるほど。
今西:その中でのお墨付きというのは、小出さん、「大丈夫かな?」と思えてならないんですが。
小出:
もちろん私も不安です。
安全基盤機構はいま、今西さんがご指摘くださったとおり、原子力の一角にある組織ですので、
原子力ムラの内部どうしでお互いを支え合っているのです。
そういう方々がお墨付きを与えたところで、不安が消えるわけではないと思います。
今西:
昨年の7月だったと思うんですが、
4号機から未使用の燃料棒を実験的に取り出すようおな作業が行われました。
その時にいろいろと取材をしていると、
いろんな人手とか機械ぶりの関係もあってでしょうか、
「一日1本しか燃料棒が取り出せない」という事が分かってきました。
1500本以上ある燃料棒を取り出すには、
4年も5年もかかるような計算になってしまうのですけれども、
小出さん、こんなことで大丈夫なんですかね?
小出:
えーっと、未使用の使用済み燃料というのは、
プールの水面から空気中に吊り上げたところで、周辺の人々が強い被ばくをするという事はないのです。
そのため、2体の未使用の燃料をとにかくプールの水面から上へ引き出すことが出来たわけですけれども、
使用済みになってしまった燃料の方は、猛烈な放射性物質の塊になっています。
そのため空気中に吊り上げる事自身が出来ないのです。
今西:という事は水中の中で作業しなければいけないという事になるんですね。
小出:そうです、
先ずはプールの底にキャスクと呼ぶ巨大な容器を沈めます。
およそ100トンある鉛と鋼鉄の塊ですが、
その容器を沈めて、プールの底で使用済み燃料をキャスクの中に入れて、
蓋をしたうえでキャスク全体を吊り上げるという、そういう操作になります。
一つのキャスクの中に10体、あるいはもう少しの使用済み燃料が入ると思いますので、
回数としては、1本1本吊り上げるよりは少ない回数で済む筈です。
今西:
ただ、そのキャスクもかなりの重さになると思うので、
かなり慎重に慎重を期した作業になるという事で
小出:
もちろんです。
大変な作業ですので、すでに4号機の使用済み燃料プールの中には、
大量のがれきが崩れてきてしまっています。
先ずそのがれきを撤去しなければいけませんし、
おそらくは一部の燃料集合体は損傷していると思いますので、
その損傷したものが本当にキャスクにきっちりとはいるか?ということもよく分かりません。
作業の途中で集合体を落とすような事をすると、また放射性物質が噴出してきてしまいますので、
本当に大変な作業になるだろうと思います。
今西:そこでもね、想定外という事が起こり得る状態にあるという事ですよね。
小出:
はい、ま、
「想定外」というよりは、「多分起こるだろう」と思っていた方がいいだろうと私は思います。
今西:なるほど。小出さん、次は吉富さんの方から質問があるという事で、聞いていただきます。
小出:はい。
吉富:
今の福島第一にちょっと関連するんですけれども、
非常に基本的な事なんですけれども、
1号機2号機ですね、これは燃料棒が溶けているという事ですが、
そこの、キャスクですか、それがかぶせる事が出来なかったとした場合ですね、
チェルノブイリみたいに、4号機まで石棺で、鉛で覆わなきゃダメな事になるんですか?
小出:
おそらく最終的には、1号機2号機3号機は石棺で覆う事になると思います。
4号機は今ちょっとどうなるかわかりませんが、
プールの底に沈んでいる使用済み燃料を全部取り出す事が出来るのであれば、
4号機の石棺は免れるかもしれません。
1号機から3号機はいずれにしても石棺で覆わなければいけませんが、
覆う前には、1号機から3号機にも使用済み燃料プールがあって、
その中にまだ、使用済み燃料が沈んでいますので、
それをまず取り出すという事が絶対的に必要になります。
吉富:あ、それは絶対条件なんですね?
小出:はい。
吉富:そうすると、それがとれなかったら、「石棺で覆っても意味がない」という事ですか?
小出:
そうです。
覆ってしまいますと冷却もできなくなりますので、
溶け落ちてしまったものがどう出来るか?という事は今のところよく分かりません。
東京電力の方は、「溶け落ちてしまった燃料も掴み出したい」と言っていますが、
多分私はそれは出来ないと思います。
ただし、使用済み燃料プールの底に沈んでいる燃料に関しては必ず取り出さなければいけません。
吉富:なるほど。
小出:そのために何年かかるのか、10年かかるのかどうなのかが分からないという状態になっています。
吉富:
わかりました。
もう一点教えて下さい。
小出:はい。
吉富:
私は時々大飯町の方へ、ま、原発とは関係なしにですね、取材させてもらっているんですが、
そこで、大飯町の議員さんたちともよく話す事があったんですね。
で、あちらの方は、町会議員の方々はですね、
「うちの原発が止まったら、関西に電力は供給できなくなる」ということをしきりにおっしゃいます。
これは電力会社もそう言っている。
で、実際に今、活断層の問題がありますね。
ひょっとすると、あれが活断層だと認められた場合、大飯原発は停止という可能性も出てきます。
小出:そうですね。
吉富:
ただ、実際は去年でしたか、夏。
とりあえず原発ゼロでも節電すれば電力は何とか賄われるという事は一応証明された訳ですが、
たとえはいま、すとーんとですね、原発がゼロになっちゃう。
大飯原発が、高浜・美浜を含めて。
その場合ですね、電気料金の値上げなしでですね、安定した供給というのは関西電力は出来るんでしょうか?
小出:安定した供給はもちろん出来ます。
吉富:出来ますか、
小出:原子力初d年所何か1基も動かさなくても電力供給に何の支障もありません。
吉富:支障もない。
小出:ようするに、これまで止めていた火力発電所をきちっと保守して動くようにすればいいだけです。
吉富:これは電力料金の値上げも無しでもいけると?
小出:
電力料金はひょっとすると値上げという事はあるかもしれませんけれども、
もともと原子力発電というものは一番高い発電方法なのです。
ですから、一刻も早く足を洗うことが、全体的に言えば電気料金が安くて済むという方策になります。
吉富:わかりました、ありがとうございます。
今西:小出さん、今日も忙しい中どうもありがとうございました。
小出:いいえ、こちらこそありがとうございました。
ーーーー
崩壊寸前4号機の燃料の取り出し方(動画&内容書き出し)
4号機からの使用済み燃料棒の取り出し方を画像で説明。
福島第一原発4号機・未使用燃料1体取り出し(毎日新聞&各局のヘリ画像)
昨年7月に未使用の燃料棒を取り出した時の画像。
小出裕章先生
Sawada:
新年初めてという事ですけれども、
昨年末ですね、福島第一の2号機の温度の上昇というのが
いろんなところで報道されたという事がございましたけれども、
この2号機についての現状と今後の見通し、危険性についてお話しいただけますか?
小出:
はい。2号機の原子炉圧力容器のあちこちの温度が昨年の暮れに上昇データがあるのです。
それが何故か?という事で、
従来と同じように2号機の原子炉圧力容器の中には水が注入され続けていますので、
もしその温度の上昇が正しいということであれば、
これまでとは別の発熱源が生まれたと考えなければいけないと思います。
これまでの発熱源は炉心の中に溜まっていた放射性物質そのものですけれども、
それが増える事はありませんので、別の発熱源があるという事は、
原子炉が再び臨界状態になったという事以外にはあり得ないと思います。
ただし私自身は、原子炉が再び臨界になるという事は、
限りなく可能性が少ないと思ってきましたし、今もそう思っています。
そうすると、温度計が上昇するという物理現象を「これだろう」と推定することができませんので、
私としては、「多分、温度計の故障だ」と、今は思っています。
ただし、データの推移を注意深く見なければいけないという状態です。
Sawada:
ありがとうございます。
またですね、別な話で、3号機というのがもともとMOX燃料を使っているというようなところで、
1号機2号機と比べてですね、またさらに注意が必要か否か?というようなところはいかがでしょうか?
小出:
はい、3号機はモーレツな爆発を起こしたので、
その爆発についても「核爆発ではないか?」という指摘をしている方もいらっしゃるわけで、
3号機は1号機2号機と少し違う事故の経過をたどったという事は、多分そうだと思います。
ただし、MOX燃料というのはどういうものか?というと、
もともとはウランを燃料に使っていた燃料に、
プルトニウムという物質を混ぜて燃料にしたというのがMOX燃料ですが、
プルトニウムはウランに比べれば大変危険性が高いものですから、
MOX燃料を使うという事はそれだけで危険性が増えているという事は確実なのです。
しかし私はウランが核分裂して出来る核分裂生成物というものが、途方も無く危険なものだと思っていますので、
その途方も無く危険なものの中にプルトニウムの危険がなにがしか加わったとしても、
被ばくという意味で大きな危険の増加にはなっていないというふうに思います。
ですからみなさんMOX燃料を使っていたという事で、たとえば、
「プルトニウムが大量に噴き出してきたのではないか」というご心配をされているかもしれませんが、
おそらく、「あまり関係ない」と私は思います。
ただ、事故の経過自身が1号機2号機3号機全て、少しずつ違っていますので、
3号機独自の危険あった、大きな爆発が起きたとか、という事があったわけですから、
もちろんその事の意味がどういう事なのか?という事は今後検証しなければいけませんし、
これからも3号機の事故の進展が1号機、2号機と違うという事はあり得ると思いますので、
データをしっかりと見ていくという事が必要だと思います。
Sawada:
それに続きまして4号機が常に言われているようなところでありますけれども、
4号機の今後ですね、数年かけてという中で、足場を組んでキャスクに入れてというような中で、
取り出すのも難しい、また保管する受けての方も難しいというような話がありますけれども、
これについて、今後の展望という所と、あと、体制としてもですね、先生からのアドバイスとして、
先生は、本当なら僕らの願いとして先生に是非アドバイザーとして入っていただいて、
もう少し、先生以上にもっといろんな方も集めてと思う中、
ずーっと東電1社を見守るような形で経産省がやって来たというようなところがあるかと思いますけれども、
今後どういう形をとっていけばいいのか?という、
なんか、先生の知見も含めアドバイスいただけるところはありますか?
小出:
4号機の使用済み燃料プールの中には、既に使用済みとなった燃料。
つまりもう「ウランが燃え尽きた」、それだけ大量の放射性物質が含まれているという燃料が、1331体。
沈んでいるのです、プールの底に。
その他に204体「まだ燃やしていない」という燃料がプールの底に沈んでいました。
そして東京電力は、まずは
燃やしていない新燃料というものを2体だけプールの底から引き出してみたという作業をしたのです。
それはもうすでに行われましたし、
「大きな危険を伴わずにとにかく取り出す事が出来た」ということになりました。
しかし、使用済みの燃料というものは、実は「吊りだせない」のです。
それをプールの水から空中に引き出してしまうと、
「周辺の人達がバタバタと死んでしまう」というほどの危険物ですので、
新燃料と同じように釣り出す事が出来ない。
どうするか?というと、
私たちがキャスクと呼ぶ鋼鉄と鉛でできた巨大な容器を先ずプールの底に沈め、
そのきゃすくと呼ばれる容器の中に使用済みの燃料をいれて、蓋をして、
それ…そうしたことで初めて、水面につりだすことが出来るという、そういうものなのです。
ただ、キャスク自体は重さが100トンもあるという、そういう重量物ですので、簡単に吊り上げたり吊り降ろしたりという事ができない。
巨大なクレーンが必要だったりするわけですが、
すでに原子炉建屋は爆発してしまっていてボロボロになっているし、
クレーン自体も壊れてしまって「ない」んですね。
だからどうするか?と言えば
まずは、キャスクを吊り降ろしたり吊り上げたりできる、クレーンを設置しなければいけない。
そのためには、クレーンを支えるためのしっかりとした建物を建てなければならないという、
そういう事になっているんですね。
東京電力は今新しい建物を4号機の壊れた建屋の上にもう一度つくりなおして、
そこに巨大なクレーンを設置して、そしてキャスクを吊り上げたり吊り降ろしたり出来るようにして、
それから作業を始めようとしている訳です。
でもその作業が始められるようになるまでに、今年の暮れまでかかると言っているわけです。
私はまぁ、そうだろうと思います。
大変な作業ですし、時間がかかるだろうと思います。
そして、実際上できる事はそれしかないだろうと思いますので、
東京電力には一刻も早くその作業を早めてでもやって、
使用済み燃料を吊りだしを始めて欲しいと願います。
しかし、吊りだしが仮に始められたとしても、
1331体もある使用済み燃料をキャスクに入れながら、吊りあげて、
そして別の場所に持っていく。
まぁ、今東京電力は隣にある共用燃料プールという所に持っていこうとしている訳ですけれども、
持っていく。
そしてまた次のキャスクを沈めて、そこにまた使用済みの燃料を入れて、吊りあげて、
それをまた共用の燃料プールに移動するという事をやるわけですけれども、
もうすでに4号機の使用済み燃料プールの中にはがれきが崩れ落ちて散乱している訳ですね。
先ずはそのがれきも片付けなきゃいけないし、
崩れ落ちたがれきで使用済み燃料がすでに破損をしているかもしれない。
上手く吊り上げたり、キャスクに入れたりすることが出来ないかもしれない。という、
そういう状態になっているという訳です。
1331体もある使用済み燃料を、完璧に…外に出さなければいけないという、
大変に困難な作業だと私は思いますし、
そのためにまた、沢山の労働者が被爆をしていくだろうと思います。
「注意をしてやるしかない」ということです。
その上に、また
1号機から3号機の使用済み燃料プールの中にもまだ、燃え尽きて使用済みになった燃料が沈んでいて、
「それらはどうやって釣りだせるかすらがまだ分からない」という状態で、
これから何年何十年という苦闘が、被ばく作業とともに続くという事になります。
Sawada:
大変厳しいお言葉で、なかなかこう、希望が見いだせるタイミングではないんですけれども、
私たち国民の意識はだんだん遠のいている中にあるんですけど、
やっぱりこれを持ち続けて、監視し続けてどうあるべきか?という事を僕らが考えていって、
力にして、やっていくしかないと思うんですけど、
先生からそんな、一生懸命考えているリスナーのみなさんへ一言アドバイス、エールを頂けますか?
小出:
皆さんもう、福島の事故は終わったというふうに思っていられる方もいらっしゃるかもしれませんし、
国にしても東京電力にしても積極的にそういう宣伝を流しているわけですね。
マスコミはもう取り上げないし、
福島の人達がいまだに故郷を奪われて10万人を超える人々たちが流浪化しているという事実も伝えないというなかで、みなさんが忘れようとしているんですけれどもm、
でもいまだに福島第一原発の敷地の中でも事故は続いていますし、
その周辺にいた人々の苦難も未だに続いているわけで、
私は忘れて欲しくないし、これからも見まもって欲しいと思います。
Sawada:ありがとうございます。今年1年もまたぜひよろしくお願いいたします。
小出:こちらこそよろしくお願いいたします。
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2013年1月19日放送(ラジオフォーラム)
原子力発電にかかる費用と解決策のない使用済み核燃料の処理
石井彰:今夜も電話が繋がっています。小出さーん、こんばんは。
小出裕章:こんばんは。
小室等:今晩は小室等です。はじめまして、
小出:始めまして、お話できてうれしいです。
小室:こちらこそよろしくお願いいたします。
石井:
小出さん、先程ですね、小室さんから原発の費用の問題というのがお話しの中で出てきたんですが、
実際にはあんまり原発を動かすためだけには使われていないんではないかというのは、
それは本当でございますか?
小出:
安全装置の費用というのをどのように評価するのか?ということに関わってくると思いますが、
「原子力発電所は5重の壁に守られているから安全だ」というのが、
原子力を推進してきた人たちの宣伝の仕方でした。
でも私から考えると、5重の壁を作らなければ安全と言えないようなものなんだと、
むしろそのように私は受け止めています。
膨大な放射性物質を持っているが故に、
それを環境にまき散らさないためには何重もの壁を用意しておかなければ動く事が出来ないという、
そういう機械なのです。
もちろん費用もかかります。
小室:
パーセンテージとしてですね、どこからどこまでって線を引くのは科学的にもいろいろと、
そう簡単には行かないんでしょうけれども、
つまり燃料があって、燃料の原料があって、
そしてその原料のタービンを動かすために、タービンを動かすためには電力が必要であると、
その電力でもって、原子力発電所の燃料を何らかの形で云々、っていって、
タービンが回るっていうことみたいなんですけど、
そこの、その原理だけのことでかかる費用っていうのと、
小出:
はい、要するに原子力発電所も火力発電所も単なる湯沸かし装置なんです。
水を沸騰させて蒸気を噴出させて、タービンが回ればそれでいいのですが、
原子力発電所の場合には燃料がウランというもともと放射性物質ですし、
ウランを核分裂させてしまうと、放射能の量は1億倍に増えてしまいます。
そのためにそんな放射能をむき出しにはもちろん取り扱えませんので、
もう様々な安全のための道具を張りめぐらさないと、お湯を沸かすことすらが出来ないという、
そういう状態になっている訳です。
石井:
あの、小出さん、
もちろん実際にタービンを回していく、電力を作っていくということもさることながら、
原子力発電所に特有の問題としてですね、
いわゆる放射能のゴミ、廃棄物が出てきますよね。
小出:そうです。
石井:
いわゆる使用済み燃料をどうするか?ということについて、
私たちは何も考えないまんま、どんどん、どんどん原発を各地につくってきた。
これを今、陸上で保管するというプランが出てきているというニュースを最近見たんですけれども、
この事について小出さんはどのようにお考えですか?
小出:
はい、原子力というものを今私たちは使っているわけですが、
人間が一番初めに原子炉というものをつくったのは、1942年です。
マンハッタン計画という米国の原爆製造計画の中で、
「プルトニウムという原爆材料を作るためには原子炉をつくらなければいけない」
ということで初めてつくってきました。
それから数えるともうすでに70年経っています。
そして原子炉を動かしたその時から、
原子炉を動かしてしまえば核分裂生成物という放射能がどうしても出来てしまうし、
それを無毒化できなければ「大変なことになる」ということは、実はもうみんな知っていたのです。
そのために、1942年から、もう、放射能の無毒化の研究ということは始まって、
「いつか、何とか、科学が、してくれる」という事を、期待はしてきたのですが、
結局70年経っても放射能の無毒化ということは「出来ない」ということになってしまっています。
そうすると、
[無毒化できない限りはどこかに隔離して人々のところに出てこないようにする]
ということ以外にはもう成す手段が無いというところに私たちは今追い込まれているのです。
まァ、いろいろな手段が考えられまして、
「宇宙にロケットで打ち上げて捨てて来い」という話もありましたが、
ロケットは時々失敗して落っこってきてしまいますので、
それはやはり「出来ない」ということになりました。
他の手段としては「深い海の底に沈めてしまおう」という案や、
「南極に行って捨ててこよう」という案もありましたけれども、
海も南極も原子力の恩恵を受けた国だけのものではないと、やはりそれは「ダメだ」ということで、
国際条約ですでに禁止されてしまっています。
そうなるともうどこか、陸上で始末というか、保管を続けるしかない訳ですけれども、
きちっと保管をしようと思うと、大変なお金がかかってしまいますので、
今日本の原子力を推進してきた人たちは、
もう「地面の深い所に埋めてしまえば後はもういいだろう」という、そういう選択をしようとしているのです。
ただし、では埋めてしまって、何年間そこにじっとしていてくれたらいいか?というと、
10万年とか100万年、というのです。
そんな事を世界一の地震国で保障できるような土地は日本にはどこにもありませんので、
本当はやってはいけないのです。
しかし他の手段も無いし、もうどうにもならないということで、
そこに日本という国は追い込まれてきたのですが、
つい先日9月11日(2012年)に、日本の学者の国会ともいうべき日本学術会議という所が、
「やはり放射能のゴミを埋め捨てにするのは正しくない」という勧告を出しました。
そうなるともう、他に話す術が無い…という状態に今なってしまっていまして、
その少し前から原子力を推進してきた人たちは、
「日本で生みだした放射能のゴミをモンゴルにもっていって捨ててしまおう」という、
そんな案までもが出てきてしまっています。
小室:ひどいですね
小出:はい、本当にひどいことだと思っています。
石井:
いま原子力発電を止めたとしても、小出さん、最後の質問になりますが、
すでに今までに沢山の使用済み燃料が、いわゆる核のゴミが出ております。
小出:そうです。
石井:
これは、大変苦渋の選択ですが、小出さん。
どうしたらいいんでしょうか?
とりあえず、もう出てしまったものは。
小出:
はい、えーっとわたしはみなさんからそう問われるのですけれども、
申し訳ありませんけれども私も「わからない」のです。
私は「自分で分からない様なゴミは生んではいけない」と思いますので、
まず「即刻原子力は止めるべきだ」と、先ず第一に主張しています。
そしてでも、それだとしてもすでにつくってしまったゴミがあると。
その量は、広島原爆が生み出した核分裂生成物の120万発分すでにあるのです。
それをこれから10万年、100万年後の子子孫孫にまで
私たちが押し付けていかなければいけないという事になっているわけで、
私自身はなんとしてもそのゴミを無毒化したいと思っているのですが、
70年間苦闘して出来なかった事というのは、
「ほとんど出来ない」と、やはり受け止めざるを得ないと思います。
小室:小出先生、そんな事言わないで・・・それでも…、
小出:
はい、それでも何とかしたいと、私も思っていますし、
私たちの世代、せいぜい数10年という世代が、原子力に頼って、享楽的な生活を維持しようとしたわけで、
それが生み出したゴミというのは何としても私たちの世代で始末をつけるべきだと思いますので、
そのような研究を、今後もやはり続けなければいけないと思います。
私が生きている間にそれが出来るかどうかという事に関しては、
自信はありませんけれども、でも方策は探らなければいけないと思います。
石井:
あの、小出さんには沢山ですね、番組をお聴きの方の質問ですとか、
私たち、小室さんも僕もいろいろと聞きたい事はあるんですが、
毎週小出さんには電話に出ていただいてですね、一つづつ、お話を伺わせていただこうと思います。
末長くお付き合いください。
小出:
こちらこそ、貴重な機会を作っていただいてありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。
石井:よろしくお願いいたします、ありがとうございました。
ーーー
「今もう危ない事に直面しながら日々怯えて暮らしている筈なのにこの怯えなさは何なんだろう?」
小室等さん1/19ラジオフォーラム(内容書き出し)
小出裕章氏1/12(文字起こし)の続き
パーソナリティ
石丸次郎(ジャーナリスト・アジアプレス)
今西憲之(ジャーナリスト)
西谷文和(ジャーナリスト)
特別ゲスト
小出裕章氏(京都大が具原子炉実験所助教)
ラジオ・フォーラム初回特別版「原発事情の今・小出裕章」 20130112
こちらで番組を聞く事が出来ます ↓
http://www.rafjp.org/program-archive1
25:00~
石丸:
ラジオフォーラム記念すべき第1回目の放送を
大阪府岸和田市のラジオきしわだのスタジオをお借りしてお送りしております。
特別ゲストとして京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんにおいでいただいております。
ここからも引き続きお話をよろしくお願いいたします。
やっぱり、福島第一原発の現状がどうなっているのかがすごく気になりますよね。
今西:
そうですね、やっぱりあれだけ大きな事故を起こして、「どないなっとんねん」と。
新聞とか、テレビのニュースでもですね、
やっぱりだんだん報道される回数がものすごく減っていますからねぇ。
石丸:
だから、なんととなくね、
なんとなく、こう、収束に向かっている。
なんとなく、こう、事態はマシになっているんじゃないかな?というふうに、
世間は思っているところがあると思うんですよ。
優秀なロボットがある?
今西:
そうですよね、
「もうあれは今安全でっせ」みたいな感じでね、やっぱり捉えているところがあると思いますが、
「実際は違いますねん」と。
要するに一番のこれから問題になってくるところがですね、
メルトダウンしてしまった燃料をどうするのか?という部分かなと思うんですけれども、
「優秀なロボットがいるから大丈夫なんだ」というようなアナウンスが、
東京電力ですとか、政府の方から聞こえてくるのですが、
そのあたりについて先生、どんなもんでっしゃろか?
小出:
先ずは「優秀なロボット」というものが無いのです。
これからロボットを何がしか開発しなければいけないという事は本当だと思いますが、
今西:ロボットおまへんか?せんせい。
小出:ありません。
今西:はぁ~
小出:残念ながら。
今西:
はぁ…、あれだけ優秀なロボットがあるあるという事でですね、
東京電力のホームページなんか見ても、よう出とるわけですよね、
こんな腕が4つも5つもあるようなもんがですねぇ、
※東京電力ホームページより 4本足のロボット


小出:
特に日本はこのよな事故が起きるという事を全く想定していなかったので、
ロボット開発という事もほとんどやらないまま事故に突入してしまったのです。
そのために世界から「なにを日本はやって来たのか」と言って、
まぁ、おしかりを受けているという、そういう状況であって、
今西:
小出さん、そうするとね、たとえばアメリカだとか、フランスだとか、
他にも原発をやっている国はあるんですが、
そういう国々は最悪の事を考えて、
多少なりロボットを開発をするとかロボットが必要だとか、何らかの研究をしとったという事ですか?
小出:
そうです。
日本以外の国は日本よりは真剣に取り組んできました。
しかし残念ながら、そういう国々にが開発してきたロボットも、今の福島で起きている事に関しては、
殆ど対応すらが出来ないという、そういう状態になっているのです。
今西:
小出さんそうするとね、「それだけとんでもない大事故やった」という裏返し、
裏付けという事ですか?
小出:
そういう事です。
こんな事故が起きるという事は、
日本の原子力関係者も思っていませんでしたし、
米国にしてもフランスにしても、
これほどひどい事故が起きるという事は、ほとんどだれも予想もしてこなかったような事故が、
今現在進行しているのです。
石丸:
間もなくあと2ヶ月で事故から2年が経ちますけれども、
今の事故を起こした原子炉、原発の状況って、いまどういう状況にあるのか?教えていただけますか。
小出:
2011年3月11日に地震と津波に襲われて、原子力発電所が壊れてしまったわけですが、
1号機から3号機は運転中でした。
4号機は定期検査で止まっているという状態でした。
そして1号機から3号機、運転中だったそれらの原子炉の炉心は
全て溶け落ちてしまったという事になっているのです。
そして、この事故が起きているところが火力発電所であれば、
事故現場に人が行って、「どんな事故になっているか?」という事を見る事が出来るわけですが、
原子力発電所の場合には「現場に行く事が出来ない」ということになってしまいます。
そしてこのような事故を「予想もしていなかった」という事で、
人が行く代わりに情報を得るための測定器の配置すらがないのです。
まがりなりに通常運転時の状況を知ろうとして設置してあった測定器があるのですけれども、
それも過酷な自己の進行の中で
次々と壊れていってしまって、何がどう進行しているのかが分からない。
そしてロボットも送り込むのですけれども、
次々と壊れてしまって戻って来れなくなる。という、
そういう状況になってしまっている。
何よりも、一番は人間が現場に行くという事はこれまでの技術だった訳ですが、
「それを許さない」というものが原子力発電所の事故なのです。
西谷:
日本の場合はロボットの技術が高いじゃないですか。
あの、高いと言われている。
でも、あえてそういうロボットを作らなかった、というか、開発してこなかったのは、
それを開発すると
「原発が壊れてしまうという可能性があるという事がバレてしまうから」という話も聞いた事があるんですが、
そのあたりはどうなんでしょうか?
小出:
ま、そういう思惑もあったかも知れませんけれども、
それ以上に原子力を進めてきた人たちが「そんなロボットが必要なほどの事故は起こらない」という、
西谷:安全神話に乗っかっていて、
小出:はい、彼ら地震が安全神話に乗ってしまっていたという事だと思います。
今西:
けど、その安全神話というのは、
小出さん、結局根拠のないもんやったわけですよね、この事故で。
小出:
そうです。
もちろん事実が「安全神話というものに根拠が無かった」という事を示しているわけです。
今西:
ですよね。
まぁ、過去アメリカのスリーマイル、ロシアのチェルノブイリでも大きな事故はありました。
けれども、今回の福島の場合はなんせ4つの原子炉が事故を起こしてしまっているわけですから、
そこが決定的に違いますよね。
小出:もう人類が初めて遭遇する、原子力開発事業最悪の事故が、今、まだ進行中だという事です。
処理が出来ない!どんどん溜まる高濃度汚染水
今西:
そんな中でですね、綱渡り的に、その、まあ水でですね原子炉を冷やすという、
循環冷却システムという方法で今冷やし続けている訳なんですが、
これも非常にですね、小出さん、トラブルの多い代物でして、
おまけに、その汚染水がどんどんどんどん溜まって行き、
もう福島第一原発の中は、私実際に見てきたから分かるんですけれども、
もう、タンクだらけでしてね、
それもかなり高い放射能濃度で汚染された汚染水が、
もう本当に想像もつかないような大きなタンクに、目いっぱい入っている訳なんですけれども、
こういう方法をですね、綱渡りのような方法を続けとってよろしいんですか?
小出:
え…やるしかないのです。
原子力発電所を動かしてしまうと、
何度も聞いていただいたように核分裂生成物という放射性物質が大量にできてしいまいます。
それ自身が発熱体ですので、とにかく冷やさない限りは溶けてしまう。
なんとしても冷やし続けなければいけないというものなわけですから、
「水を入れる」という手段しか…ないのです。
ただそれをやってしまうと、いま今西さんがご指摘くださったように、
大量の汚染水が発電所の中にどんどんと溜まってきてしまうと。
今西:そうですよね。
小出:
いうことで、もう敷地中がタンクで埋まりそうになっているわけですね。
でも「やめる事が出来ない」のです。
今西:
その汚染水ですが、これ、どうしたら処理できるんですか?
高濃度に放射能に汚染されたですね、この汚染水っていうのは、どうすればいいんですかね?
小出:処理が、処理が出来ないのですね。
今西:
じゃあ、あの使用済み燃料棒も処理の方法が無い。
おまけに今度は、汚染水も処理できない。
というと日本は、もう「処理できないものを二つ抱える」そういう意味になるわけですか?
小出:
汚染の正体は同一物質ですね。
要するにウランを核分裂させてしまって、
つくってしまった放射性物質というものが使用済み燃料の中に溜まっているわけですし、
それが溶けてしまったところに水をかければそれが今度は汚染水として出てくると、
そして人間は放射性物質を消す力が無いわけですから、
いずれにしてもどこかに残ってしまうという事になるわけです。
今西:
なるほど。
この放射性物質をですね、除去するような発明をすればですね、
やっぱり小出先生も山中先生と同じようにノーベル賞を取れるんですかな?
小出:
えー、放射性物質を放射性物質でないように出来ないか?という研究は、70年前から続いているのです。
そして原理的には「できる」という事も分かっているのですが、
それを実際上に適用しようとすると、厚い壁があって成し遂げる事が出来ないという事が、
70年経った歴史の今であるわけです。
ですからそれを何とか、壁を越えたいという思いは、
もちろん多くの研究者にあるし、私もありますけれども、
70年間越えられなかった壁というのは、相当厚いと思わなければいけないと思います。
今西:70年ですか…
そうすると、今日本に原発が出来て40年そこらですけれども、
その30年前から、研究は実はしてはったわけですか。
小出:
原子炉というのは米国という国が原爆を作ろうとした時に、
原爆の材料を得るための道具として作った。
それは1942年なのですけれども、去年でちょうど70年になりました。
「科学が進歩すれば、いつか誰かが何とかしてくれる」と思いながら、ここまで来てしまった。
非常に愚かな選択だったと思います。
♪一粒の種♪
石丸:
はい、ありがとうございます。
さてここで、歌をお聴きいただきたいと思います。
実は私たち、このラジオフォーラムを立ち上げるにあたって、
いろんな会議、そしてイベントを繰り返してきたんですけれども、
去年の11月27日に、大阪心斎橋のライブハウスでラジオフォーラムを告知するイベントをやりました。
その時に来ていただいたのが砂川恵理歌さんという沖縄の歌手の方です。
これはいい歌ですね~
今西:
ええ歌やったね、ほんまにね~
小出さんもね、来ていただいてライブを一緒に聴いてもらいましたけれど、
石丸:
はい、この歌「一粒の種」というタイトルなんですけれども、
たね蒔きジャーナル、種が蒔かれてそこから芽が出て実が結ぶという、
そのたね蒔きジャーナルの精神にぴったりのですね、タイトルで。
これを聴いてみるとですね、砂川恵理歌さんの本当に優しい歌声、
そして、我々がやろうとしているこのジャーナリズムのラジオのテーマソングにぴったりだなということで、
この歌を皆さんにお聴きいただきたいというふうに思います。
36:12
♪一粒の種 ♪ 砂川恵理歌さん
一粒の種に 一粒の種に
ちっちゃくていいから 私もう一度 一粒の種になるよ
出会って語って 笑って泣いた
生きててよかったよ あなたのそばで よかったよ
一粒の種は風に飛ばされ どこかへ行ってしまうけれど
あなたへとたどる確かな道を 少しずつ舞い戻って
丘の上からあなたにだけ見える
闇にも負けない光を放とう
ささやかな日々に愛をもらった 私にはそれができる
一粒の種に 一粒の種に
ちっちゃくていいけど あなたにだけ気付いてもらえる種になる
石丸:
砂川恵理歌さんの一粒の種を聴いていただいております。
小出さん、いい歌ですね、これ。
小出:そうですね、「あきらめちゃいけない」と励まされます。
今西:
ライブハウスで聴いた時、本当にライブで聴いたんで、
またこのCDとは違うね、良さがありましたよね。
石丸:うたがうまいんですよね、この砂川さんはね。
今西:ほんまやね。ここに来てしゃべってもらったらええかもしれないね。
石丸:
この一粒の種、これが地に芽を出して、それから葉を出して、花になって、実を結んで広がっていくと、
本当に我々、このラジオフォーラムのイメージにぴったりの歌という事で、
今日ここでご紹介をいたしました。
今西:僕らの番組もそうならなあきまへんもんね。この歌のとおりにね。
石丸:
はい。
この砂川恵理歌さんの一粒の種はCDにもなっていますので、
インターネットで検索されるとみなさんもお聴きになる事も出来ますし、
お買い上げいただける事も出来ると思います。
えっと、じゃあ後半のテーマに行きましょうか。
正造さんがいてくれた
今西:
そうですね、僕は小出さんのところの京都大学の熊取にある研究室というのは、
もう何回も利用させていただいているんですけどね、
やっぱりそこでね、一番印象に残った事があるんですよ。
小出さんの机の上にね、足尾銅山鉱毒事件のね田中正造さんの銅像が置いてあるんですよね。
石丸:銅像!
今西:銅像。
石丸:肖像画やなしに、
今西:肖像画やないんですよ、銅像が置いてあるんですけど、
石丸:どれぐらいの大きさなんですか?
今西:どんなもんですか?先生。
小出:
えー、このくらいですかね、高さ10cmぐらい。
それはでも、ついこの間貰ってきたのです。
今西:ですよね、最初に行った時はおまへんでしたよな。
小出:
その時は写真とかですね、絵とか、
あとは土鈴であるとか、土鈴、土の鈴ですね。
正造さんのものは山ほど私の研究室にあります。
石丸:
ああ、そうですか。
あのー、もうリスナーのみなさんはご存知かと思いますが、
田中正造さんはね、教科書にも出てきます。
いまの我々の世代は小学校の時に習いましたけれども、
今西:習いましたね。今でも習ってはんのやろうか
西谷:
習ってはるのかもしれませんね。
わたしら、習いましたね。
今西:
誰かね、公開録音に来てはっていて、詳しい人で教えてくれはったらありがたいですね。
「習ってまっせ」とかね。
石丸:
この田中正造さん、ね、いま今西さんがいわはりましたけれど、
栃木県の足尾銅山の鉱毒事件、体を張って、命をかけてこの鉱毒事件解決のために動かれた方。
この田中正造さんが没後100年に今年あたるという事で、
あちこちでイベントなんかも多いようですけれども、
今西:
小出さんもね、何度か、良く、
栃木県の佐野市でしたっけ、行かれているという事でしたよね。
小出:
今年、2013年に正造さんが倒れてからちょうど100年になる。
それに向けて栃木の人達を中心に、様々なイベントをいま積み重ねてきています。
私は去年の、没後99年にあたった集会に呼んでいただいて、
栃木県佐野市に行ってきました。
石丸:
小出さんにとって、田中正造さんというのは、どういう方として映っているんですか?
どうしてそこまで思い入れを持って、
小出:
私は1968年に大学に入ったのですが、
当時は公害問題というものが日本中で起きていた時代で、
私自身も公害問題という物の深刻さというものに気がついたわけですが、
それを勉強していたらば、それどころではない、もっとずーーっと前に日本には公害が、
公害という言葉はあまり適切ではないけれども、
でも国家の、国家あるいは企業の金儲けのために、人々が大変な困難を負わされるという歴史があった。
という事に気がついたのです。
その問題に1人の人間として国家を相手に、
孤立してでも闘い抜くという人がいたという事を知りました。
「すごい人だな」と思いましたし、
私から見ると「破格の人」だったと思います。
わたしも、まぁ、国家を相手に今闘っているつもりではありますけれども、
あまりにも力が違いすぎる。
絶望しかけることだってあるわけですけれども、
それでも「正造さんがいてくれた」という事を思えば、
「あきらめることはできない」と、いつも励まされます。
石丸:
そうですね、田中正造さんもね、そのためも含めて国会議員にもなられ、
天皇陛下にまで直訴されたという、すごい人でしたからね。
西谷:
あの、これ田中正造さんの言葉だったと思うんですけど、
ちょっとネットで引いてきたんですけれども、
「真の文明は山を荒さず 川を荒さず 村を破らず 人を殺さざるべし」
単にその鉱毒事件の事だけじゃなくて、
「戦争に反対する」という考え方をしっかり持っておられた方ですよね。
小出:
そうですね、当時は日清、日露の戦争というのが起きていた訳ですけれども、
正造さんは国会議員として、
「そんな問題よりは足尾鉱毒で苦しんでいる人々を助けるというのが国家の仕事だ」として、
抵抗を続けました。
小出先生に質問
石丸:
その、田中正造没後100年ということで、
栃木県佐野市を中心にいろんなイベントが開かれるようです。
で、ちょっと話は変わります。
私は、このラジオフォーラムをやるんだという事を周囲の人に宣伝をしておりますけれども、
最初の回に小出さんに来ていただくんだと言ったら、
「いろいろ聞いて欲しい」という、いろんなリクエストもありました。
なかなか、「こんなん聞いてもええのかな?」と思うような事もあるんですけれども、
いいですか?
小出;はい。
石丸:
一つ目。
「小出さんは何故助教なんですか?」という質問がありました。
今西:そうですよねぇ。
石丸:それと、
「京大原子炉実験所ってどんな職場なんですか?何をしているところですか?」
という素朴な質問もありました。
で、世間的に言いますとね、
「なんで小出先生みたいに偉い先生が教授じゃないの?」というような事を聞く人もいたんですけれど、
それをちょっと教えていただけますか?
小出:
私の個人的な性格だと思いますが、
誰かに命令する事が嫌いなんです。
そして誰かから命令される事も嫌いなのです。
ですから、組織を私が背負うなんていう事は大嫌いなことな訳ですし、
教授というような立場になって人々に命令をしていくというような事は、私が一番イヤな事なのですね。
ですから私は一人の私なのであって、私のやりたい事をやるということが、
何よりも私にとって大切な事なわけで、
今西:じゃあ、今まで教授いになりたいとか思われた事はおまへんですか?
小出:
一度もありません(笑)
現在のポストが一番私にとっては快適なポストです。
石丸:
それは何故ですか?
「助教というポストは上にも下にも人がいない」っていうことですか?
小出:
あ、本当はですね、
助教というのは、教授、准教授、助教という、
教員の中の最下層の立場ですから、
本当であれば、教授や準教授が私に命令をしてくる筈なのですが、
私が39年前に原子炉実験所に就職した時以降、
ずーっと、私の上に立つ人たちは「私に関しては一切の命令をしない」という、
そのような立場を貫いて下さったので、
石丸:
それは、その実験所がそういう環境の職場だったんですか?
それとも、
小出:
そうではありません。
私の、私が所属した研究部門の特殊性というのがあったと思いますし、
その研究部門の特殊性に加えて、私が請け負った仕事、
つまりは放射線測定という仕事なんですが、
その特殊性のために一切の命令を私に実験所の方からはしないと。
そのかわり私は私の責任を果たすという、
そういう、ま、お互いの合意のもとに命令を受けなかったという事です。
石丸:
それは、特殊性というのは、「危険だから」という事ですか?
それとも、どういうことなんでしょうか?
小出:
私が属したのは放射性廃棄物処理設備部門という名前の部門でしたけれども、
放射能のゴミの管理をするというところだったのです。
で、そこの学問的な専門性で言いますと、
いわゆる土木工学であるとか、衛生工学であるとか、水処理であるとか、
そういう専門家の居るところだったのですが、
そういう専門家は逆に言えば放射能に関しては専門でないという事になってしまって、
私がそういう所に行って、放射能に関しては責任を負うという立場であった訳です。
ですからそういう人達は、
私が放射能に関してきちっと責任を取る限りは、私に対して命令はしないという事になったのだと思います。
西谷:なるほど、なるほど。もっと聞きたいですけどね。
今西:
そうするとものすごい大切なお仕事でしてね、
ちゃんと、原子炉実験所ですから、ちゃんと原子炉があるんですよ。
うーん、すごい重要なお仕事ですよね。
石丸:
もうちょっとお聞きしたいんですが、残念ながら放送時間が終わりに近づいてきました。
しかし、小出さんには来週からですね、
毎週「小出裕章ジャーナル」というコーナーで、電話ゲストとしてご登場いただきます。
リスナーのみなさんからも、小出さんに是非聞いてみたいという質問を受け付けますので、
メール、電話等でお寄せ下さい。
今西:どんどん送ってよ~
石丸:という事で、小出さん今日はどうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
ご意見ご感想質問はeメールで。
rafjp2012@gmail.com
番組ホームページ
http://www.rafjp.org/
ーーーー
砂川恵理歌さんの歌を聴いた時、ちょっと泣けた。
これから毎週楽しみです。
よろしくお願いいたします((ヾ(。・ω・)ノ☆゚+.
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記念すべき第1回放送です。
1時間の番組ですので、2回に分けて文字起こしをしますd(◕‿-。) ネ❤
こちらで番組を聞く事が出来ます ↓
http://www.rafjp.org/program-archive1
パーソナリティー
石丸次郎(ジャーナリスト・アジアプレス)
今西憲之(ジャーナリスト)
西谷文和(ジャーナリスト)
特別ゲスト
小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
ラジオ・フォーラム初回特別版「原発事情の今・小出裕章」 20130112
今日からいよいよ始まりましたラジオフォーラム。
第1回目の収録は大阪府岸和田市のラジオきしわだのスタジオを借りてお送りしております。
自己紹介・番組紹介
石丸:
先ずわたくし石丸次郎は、アジアプレスというジャーナリストグループの大阪事務所の代表をしております。
普段は朝鮮半島問題、中国問題を主に取材しております。
今西:
えー、わたし今西憲之は、普段はですね、大阪を中心に日本全国世界を飛び歩きながら、
主に週刊誌の記事を書くという商売をしております。
西谷:
西谷文和です。
私はイラク、アフガニスタン、最近はシリアですかね、
そういう中東やアフリカの現状を取材しておりまして、
この番組ではそういう世界のネタなんかもご紹介したいなと思っております。
石丸:
このラジオフォーラム、私たち3人が今日からパーソナリティーを務めますけれども、
もともとは大阪の毎日放送MBSラジオのたね蒔きジャーナルに出演させていただいていた縁であります。
この毎日放送のたね蒔きジャーナルは本当に良い報道番組でした。
「小さな出来事、ニュースの種を見逃しません、伝えます」をキャッチフレーズに
2009年から始まった番組でした。
記者が現場にちゃんと行って取材し、
沖縄の米軍基地問題、部落差別問題、そして中国北朝鮮の問題など、
政治、社会、国際問題について藻、専門家や当事者をゲストに呼んだり、
あるいは電話を通じて積極的に報じてきました。
2011年3月11日に東日本で大震災が、大地震が発生し、
福島第一原子力発電所で大事故が起こってからは、
小出裕章京都大学原子炉実験所助教を連日のようにゲストにお招きして、あるいは電話を繋いで、
福島で起こっている事の現実を毎日のように伝えてきました。
政府や東京電力が情報を開示しなかったり、
あるいは大手マスメディアも事態をちゃんと伝えない状況が長く続きましたけれども、
このたね蒔きジャーナルは原発報道をしっかりやって、
リスナーにインターネットで放送がアップされ、関西圏だけではなく全国から注目される番組になりました。
ところがこのたねまきジャーナルは昨年の夏に打ち切りになるという動きが表面化しました。
「何とかこのたねまきジャーナルを残して欲しい」という市民、リスナーの声が大きくなって、
存続運動が始まりました。
存続を毎日放送に訴える声は1万を超えました。
「市民がスポーンサーになって寄付を募ろう」と、そして番組を続けてもらおうと、
集まったお金は1000万を超えました。
けれども残念ながら毎日放送は昨年の9月末を持って番組を打ち切ってしまいます。
最後の放送の日、300人の人がラジオを持って毎日放送の前に集まりました。
このすぐれたラジオの報道番組、「たねまきジャーナルの火を消さない」精神を継承していこう。
そのような声が高まって、市民のみなさんから集まったカンパを基金にして始まることになったのが、
ラジオフォーラムです。
この番組は日本全国21局のコミュニティーFM放送局、
それからインターネット放送を通じ、みなさんにお送りします。
そして、カナダバンクーバーの日本語放送局でも放送が始まりました。
今西:
ほんまにありがたい事ですよね。沢山のコミュニティーFMですとかね、
インターネットの放送局も集まっていただいて。
西谷:神奈川の方も聞けるっていうのがすごいですね。
今西:
そうですよね、なんかアジアにもね、シンガポールとかバンコクとかアメリカにも
そういう日本語のFMの放送局があるっていう事をね、聞いていますんでね、
そういう輪が世界に広まっていけばいいなって思いますよね。
石丸:
この番組、当面は週に一回の放送、1時間の放送をみなさんにお伝えしていきます。
第1週目は「社会が見えてくる」
第2週目は「世界が見えてくる」
第3週目は「メディアが見えてくる」
第4週目は「関西が見えてくる」
ですけれども、今日は第1回目という事で「特別放送」いきなり。
今西:そうですね、記念すべき第1回目です。
石丸:
そこで今日は特別ゲストとして、
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんにおいでいただいております。
特別ゲスト 小出裕章先生
6:25~
小出:今晩は小出です、よろしくお願いいたします。
石丸:小出さんはたね蒔きジャーナルに最初に出られたのはいつのことだったですか?
小出:
2011年の3月14日だったと思います。
事故が起きて3日経った時から呼んでいただいて、
それ以降連日のように話を聞いていただけるようになりました。
石丸:たねまきジャーナルが打ち切られるっていう話を聞いた時は、どんなふうに思われましたか?
小出:
私自身の発言が出来なくなるというよりは、
大変良質なジャーナリズムというものを背負ってきた番組が無くなってしまうという事を
大変残念に思いました。
そのため毎日放送に伺った時も、
「私はもう出してもらえなくてもいいからたねまきジャーナルを存続させて下さい」というふうに
私からお願いもしました。
石丸:
そのたねまきジャーナルが残念ながら去年の9月で終わりましたけれども、
その精神を引き継いで、このラジオフォーラムを続けていきたいと思います。
という事で今日は私たち3人と小出さんの4人で、今の原発私たち3人と小出さんの4人で、今の原発事情、
これをテーマにお送りしたいと思います。
今西:
えー、ま、前半はですね、去年12月16日に衆議院選挙をやりまして、
民主党から自民党に政権が代わりました。
政権が代わってですね、政府の原発対応も大いにに変わりつつあるという、
そのあたりについて前半に語っていきたいなと。
後半についてはですね、福島第一原発、「今どうなってまんねん」という、現状ですね。
その辺についてお届けしたいなと思っております。
石丸:それでは小出さん、今日はよろしくお願いいたします。
小出:よろしくお願いいたします。
814
民主党から自民党に政権が代わって
933
石丸:
第一回目の特別番組をお送りしております。ラジオフォーラム。
それでは早速テーマに入っていきたいと思います。
民主党政権が自民党に代わってしまいました。
民主党政権は一応2030年代に原発ゼロを目指すという、
ま、脱原発を掲げていたわけですけれども、
新しくできた自民党政権、安倍政権は「これを白紙化する」という事を公言しております。
この辺について政治の動き、それから原発政策が変わっていくことについてどう考えたらいいのか?
この辺について話を進めていきたいと思っています。
今西さん、原発のことをずっと取材もされてきましたけれども、
何を今日は集中してお聞きしていきましょうか?
今西:
もともと日本の原発というものはですね、自民党政権の歩みと共にですね、
数が増え発展していったという側面があると思うんですよね。
その歴史から考えると、やはり自民党政権に戻るという事は原発を推進する政策というものがですね、
やっぱり掲げられていくのではないか?
小出先生、いかがでしょうかそのあたり。
小出:
今、今西さんがおっしゃって下さったけれども,日本の原子力発電所は自民党が全てつくってきたのです。
いま、福島を中心に大変な苦難が存在しているわけですが、
福島第一原子力発電所の原子炉に対しても、
それが「安全だ」と言ってお墨付きを与えたのも自民党だったのです。
あの原子炉をつくったことに一番の責任がある政党なわけで、
その政党がいまだ事故が収束していない段階で、
さらにまた「原子力発電を続ける」というような道を開こうとしているわけで、
私から見ると大変呆れた人たちだし、大変呆れた政党だと思います。
今西:
その中でね、やっぱりあの、民主党が政権を握っていた時に、一つの大きな看板というですか、
ポリシーとして「2030年代までかな」と、
かなり先ではあるけれども「もう原発はやりません」と、「もうゼロにしまっせ」というようなことを、
総理大臣自らが言ってたわけですよね。
それをもう、いとも簡単に
「民主党から自民党に政権変わりましたから、そんなもんに当主しません」と「同じ事をしません」と、
そんな事よりも再稼働を、「再稼働をやってもいいんじゃないですか」
おまけに安倍さんなんかは「いや、形の違う原発をやればいいのではないか」という、
本末転倒のわけのわからない話をされているんですが、
そのあたり先生いかがでしょうか?
小出:
もともと、民主党政権の時にパブリックコメントというのを求めて、
2030年に、原子力発電をゼロ%にするのか、15%にするのか、25%にするのか?
という事を聞いたですね。
それに対して沢山の国民が意見を寄せて、
ほとんどの意見は「2030年にゼロにしろ」
いやそれどころか「即刻ゼロにしろ」という意見が多かったのです。
ところが民主党政権は、その国民の意見を求めたにもかかわらず、
2030年ではなくて、2030年代という、一つの「代」という言葉を付けた。
そのために2039年12月31日まで、10年間インチキでサバを読んだんですね。
そしてそのインチキをしたにも関わらず、それを閣議決定すらが出来ないという、
そういう政党だった訳で、私は「大変情けない政党だ」と実は思ってきました。
しかしその民主党よりもさらにまた、原子力に関して悪い政策を取ろうとしているのが自民党な訳ですから、
これから国民はどれだけ苦難を抱えなければいけないのかなと私は思います。
今西:
先生その辺でね、要するに安倍総理は
「今までと違う原発をやればいいんだ」というような事をおっしゃられているんですけれども、
小出:
原子力発電所というものも機械ですので、
年が経るにしたがってさまざまな改良をしていくという事は当り前の事なのですね。
ですから福島の第一原子力発電所だって、1号機と2号機は違うし、2号機と3号機も違う。
3号機と4号機もまた違うというように、少しずつ改良をしていくというものなわけですから、
これからつくる原子力発電所が今までのものとまったく同じでないというのは、
むしろ当たり前の事なのです。
しかし、原子力発電所というものがウランを核分裂させる、
つまり核分裂生成物という放射性物質を生みだしながら、
それでエネルギーを取って発電するという原理は全く同じなのであって、
基本的には「同じだ」と皆さんにも思っていただきたいと思います。
石丸:
ああ、まだ安倍政権が発足してまだ1カ月弱ですけれども、ちょっとその辺が心配ですけれども、
ま、この話は引き続きしていただきたいと思います。
今西:
先生、自民党政権に戻ってですね、
もう本当に今まで日本全国の原発、大飯を除けば止まっていた原発がですね、
にわかに今にも再稼動してきそうな雰囲気があるんですけれども、
その辺について先生はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか?
小出:
この前の選挙というものを経て、「自民党が圧勝してしまった」という事があるわけですから、
自民党としては今の状態を維持しながら、原子力発電所をどんどん再稼働させる。
そして可能であれば新しい原子力発電所をつくろうとするだろうと私は思います。
ただし、もうすぐまた参議院選挙が来る。
そこでもし自民党が負けるような事になると、自民党は大変やりにくくなるでしょうから、
私は多分参議院選挙が終わるまでは、自民党は静かにしているだろうと思います。
使用済み核燃料をモンゴルへ
今西:
この衆議院選挙でですね、一部の政党が原発問題を語る上でですね、大きな問題にしたのが、
やっぱり使用済み燃料棒の問題だと思うんですよね。
もう、六ヶ所村のプールもですね、数年でこのまま稼働していると満杯になるとかいうようなですね、
話にもなっておってですね、
この問題は避けて通れないという事になると思うんですが、
自民党政権というのはそういう事も無視して、やっぱり突き進んでいくような政権なんですかね。
ま、これだけ沢山原発をつくった政権なんで、
まぁ、自民党にとっては簡単な事なのかもしれませんが、
小出:
原子力発電をやってしまうと、ウランを燃やす、ウランを核分裂させるわけで、
使用済みの燃料、つまり放射能まみれの燃料が残ってしまうというのは当たり前の事なのです。
もちろん原子力を進めてきた人はみんな知っていたわけですが、
「いつか、誰かが、なんとかしてくれる」と、思い続けてここまで来てしまった。
今西:だーれもなんもしてくれまへんわなwそんなもんねww
小出:
残念ながら科学の力では、それをどうする事も出来ないまま70年の歴史が流れてきてしまったのです。
これからも「どう出来る」という見通しは残念ながら「ない」のです。
そうであるならば私は、
「自分で始末が出来ないような毒物を生む行為は先ずは止める」というのが、
本当の選択の仕方だと思うのですが、
残念ながら自民党、あるいは日本の財界という所は、
とにかく自分たちが金を儲けたいという事でここまで来てしまったわけで、
その流れが簡単に彼ら自身の手で止められるとは、私には思えないのですね。
今西:
それでその使用済み燃料棒の問題をですね、
去年一部の報道でですね、「海外に持っていったらどうなんだ」といったようねですね報道がされました。
その問題に対して西谷さんがこの間モンゴルまで行って取材をされてきたみたいなんで、
ちょっとその辺ね、詳しく聞いてみたいなと僕は思ったんですが。
石丸:西谷さん、何時、モンゴルはどのあたりに行かれたんでしょうか?
西谷:
去年の11月14日から10日ほどモンゴルに行ったんですが、
埋められそうな場所は、おそらくノモンハン事件ってありましたよね、
旧満州とモンゴルと、今のロシアの国境あたりなんですが、
そこに大きなウラン鉱山がありましてね、
そこのウラン鉱山は今使っていないんですけど、そのあたりではないかと思って、
ちょっと取材に行きましたね。
石丸:
そのウランをかつて掘っていた鉱山の近所に、
新たに廃棄物のゴミ捨て場をつくろうという、そういう計画があるんじゃないかという事ですね。
西谷:
一応この問題は水面下に潜っていますけどね、
でも今、小出先生がおっしゃったように、もうどんどんどんどん出てくる訳ですよ、ゴミが。
それを埋める場所が無いので、日本にもアメリカにも。
今西:っていうか、世界を探してもなかなかないですよね。
西谷:
そうですよね。
で、ここで問題になってくるのがね、いわゆる包括的燃料サービス
日本がベトナムとかトルコに原発を売り込みに今行っていますけれど、
その時にベトナム政府にですね、
「ベトナムで出た核のゴミは引き取ります」って言っているんですよ。
つまり、ベトナムに売る際に、その売り込みセールスで、
「あなたのところには核のゴミは残しません」と。「引き揚げます」。
でも日本に引き揚げても日本にも埋めるところはないですよね。
今西:アフターサービスね、
西谷:
だから、パッケージにするんですよ。
だからウランは生産地に送りかえすという。
だからウランの生産量ではモンゴルも沢山埋まっていますので、
で、モンゴルは貧しい国ですから、ウランを輸出して儲けて、そして核のゴミを輸入して儲けたいと、
日米政府は埋めるところがないし、
これから海外に原発を売り込みにかける時に、ロシアとか韓国と競争ですから、
だからそういう意味ではセールスポイントの一つとして、「核のゴミは残しませんよ」という、
こういう売り込みをかけていますからね。
石丸:現状モンゴルは、今もウランを生産輸出はしているんですか?
西谷:
一応かすかに、13位ですけれどもね、世界で。
埋蔵量は1位だと言われているんですが、
だからそういうウランを精製したり採掘する技術が、今ないので、
それを中国とかカナダの資本がやっているわけですけど、
それを日本とアメリカと組むことによってね、
それでそういう物の技術をモンゴルとしては得たいと。
ゆくゆくはモンゴルに原子力発電所もつくりたいとこういう事だと思います。
石丸:
現場はどんな場所でしたか?
まぁ、まだそこがね、廃棄物処理場の建設場所とは決まったわけじゃないけれど、
目星をつけて、
西谷:
あの、予算は付いているんですよ。
そこの村に予算がもうついちゃったんですよ、モンゴル政府は。
それでどんなところか?といいますと、
ウランの露天風呂です。
旧ソ連が1980年代から96年まで掘ってたんです。
ソ連の崩壊でソ連は引き上げまして、現在は中国がその採掘権、権利を持っています。
石丸:露天風呂いうと、けど、放射能がすごいんやないですか?
西谷:
だから、測ったらですね、ウラン残土のところで24マイクロ出ましたから、
いきなりピーピーピーピー鳴っていましたからね。
石丸:だいぶ放射能浴びてきたとちゃう?
西谷:いや、まぁ浴びてきたかもしれませんね。ま、40歳を超えていますから、はい。
石丸:24マイクロ
西谷:残土、残土がそのままにしてあるんですよ。
石丸:これは、小出さん、かなり高い?
小出:24マイクロシーベルト/hという量だと思いますが、
西谷:そうです
小出:
通常、たとえばこのスタジオでもし測ると、0.05ぐらいしかありません。
で、0.6を超えてしまえば放射線の管理区域にしなければいけませんし、
私の実験所にはもちろん放射線の管理区域がありますが、
その管理区域の中でも20マイクロシーベルト/hを超えるようなところは、
高線量区域として立ち入りを制限するという、そういう位のところですから、
西谷:そこで遊牧民が草を食べさせているんですよね。
小出:
西谷さんが行かれたようなところは、
私のような職場、特殊な職場でも、高線量地域として立ち入りが制限されてしまうようなところに
普通の人々が生きているという、
西谷:何の囲いもないですからね。
石丸:草原ですか?
西谷:
大草原です。
人口密度が極めて低く、少数民族が住んでいるんですよ。
ブリアート人というね、
モンゴルの少数民族が住んでいて、ものすごくウランバートルから離れていますから、
だからそういう意味では日本の構図と一緒ですよね。
大都会から離れていて、少数民族が住んでいる。
そういうところに反対運動も起こらないだろうという、そういう所に持っていくのではないかと。
現実に予算もついていますから、
石丸:予算というのはモンゴル政府の予算が?
西谷:モンゴル政府の投資計画に、日本円にして30億円位の予算がもうついています。その村に。
石丸:日本円にして30億円というと、モンゴルにとってはすごい予算ですよね。
西谷:
500億トゥグルですからね。
だからもう、モンゴルにとってはものすごい予算が付いているという事は、
おそらくビックビジネスですから、これ。
そういう意味では、やるんじゃないかなと僕は思っておりますし、
フランスのアレバとか、そういう所も支援しているんですよ。
今西:
なるほどね、フランスのアレバっていうのはね、
東京電力の福島第一原子力発電所の収束作業にも大いにかかわっているところですよね、
冷却循環システムなんかをね、入れているのがアレバですね、フランスの。
石丸:
なるほど、そこに日本が関わっている可能性が高いと。
関わっていく可能性が高いと。
西谷:
間違いなく関わっているんですよ。
極秘文書があるというスクープ記事が毎日新聞に載っていました。
石丸:載っていましたね
西谷:
でも、極秘文書は明らかになっていないですけれども、
でもそういうのはもう決定はしていると思うんです。
石丸:
なるほど、このモンゴルの話し、現地まで行かれて本当にごくろうさまです。
引き続きまたお聞きしたいので、
回を変えてですね、じっくりとお話を聞かせて下さい。
西谷:はい
石丸:
なお、小出さんにはこれから電話ゲストとして、
これから毎週このラジオフォーラムにご登場いただきたいと、
題して「小出裕章ジャーナル」これをみなさんにお送りしていきたいと思います。
小出:ありがとうございます。私がお伝えできることがあれば喜んでやらせていただきます。
石丸:
はい、ありがとうございます。
それでは来週からもよろしくお願いいたします。
ーーつづく
<後半>ラジオ・フォーラム初回特別版「優秀なロボット・処理できない汚染水・田中正造・質問」
小出裕章氏1/12(文字起こし)