「テレビから政権批判が消えれば日本はもう民主主義国家ではない」古舘さん降板他メディアの危機
2015年12月26日 東京新聞朝刊 (↓クリックすると大きく見ることができます)

政権批判がテレビから消える日
報ステ、クロ現…相次ぎ介入
「圧力」で反対意見封じ
テレビ朝日系の報道番組「報道ステーション」のメーンキャスター古舘伊知郎さんが来年3月末で降板する。番組では、コメンテエーターとして出演した元経済産業相の古賀茂明さんが安倍政権を批判したところ、局幹部が自民党に呼びつけられ、事情聴取を受ける一幕があった。TBS系の報道番組「NEWS23 」でも安全保障関連法の廃案を訴えたアンカーの岸井成格さんが、安倍晋三首相を支持する右派勢力から狙い撃ちされた。メディア支配を強める安倍政権と、自粛・萎縮する各局。テレビから「政権批判」が消える日も近い?
古舘さんは24日の記者会見で古賀さんの問題の影響を問われると、「全くない。ただ番組の中でいざこざが起きたことは大変残念だった」と語った。
古賀さんは古賀さんは3月27日の放送中、テレ朝会長らの意向で「今日が最後(の出演)」と発言・「官房長官をはじめ官邸のみなさんからバッシングを受けてきた」と続けたところ、古舘さんが「降ろされたというのは違う」と反論した。
当の菅義偉官房長官は即座に「事実無根」と否定。
自民党の情報通信戦略調査会が4月、テレ朝の専務を党本部に呼びつける騒動に発展した。
古賀氏は「こちら特報部」の取材に「私が1月の放送で『I am not ABE』と言った直後、官邸から番組に抗議のメールがきた。私の降板が正式に決まったのは、その1、2週間後」と明かす。
古館さんの降板との関連性はどうか。
古賀さんは「官邸の意向を受けた局幹部が昨年来、古館さんを含め番組全体に、政権批判や反原発を抑えるように圧力をかけたと聞く。古舘さんは降板発表の際、「不自由だった」と言ったが、あまりの窮屈さに嫌気がさしたのだろう」と推察する。
報道ステーションとともに安倍シンパから目をつけられているのが「NEWS23」である。
アンカーの岸井さんは、安保法案の参院採決をめぐる与野党の攻防が佳境を迎えていた9月16日の放送で「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と踏み込んだ。
すると任意団体」放送法順守を求める視聴者の会」が産経新聞の11月14日付朝刊に「一方的な意見を断定的に視聴者に押し付けることは放送法に明らかに抵触する」と指弾する意見広告を掲載した。
同会の呼びかけ人には、右派論客らが名を連ねる。
事務局長で文芸評論家の小川栄太郎さんは安倍政権発足直前の2012年9月、「約束の日 安倍晋三試論」を出版。
小川さんは自らを「安倍の応援団」と認めた上で「NEWS23は大半の時間を「安保法案反対」の報道に使った上、岸井さんはアンカーの立場を逸脱した発言をした。テレビは多角的な観点で報じるべきだ」と主張した。
しかし、岸井さんと長年の親交がある経済評論家の佐高信さんは「言論人が意見広告を金で買って、異論を封じ込めようとするのはおかしい」とけん制する。
「現政権は批判を受け入れて、より良い政治につなげるという視点に欠ける。批判は許さないという度量の狭さが、テレビ報道の窮屈さにつながっている」
実際、岸井さんをめぐっては、来年3月末の降板説が一部で報道された。
TBS広報部は「番組の制作過程についてはお答えしていません」と否定も肯定もしていない。
出演者降板、幹部は首相と会食も
自粛、萎縮目立つ各局
「国民の代弁者たり得ない」
もう一つ忘れてはならないのが、NHKの報道番組「クローズアップ現代」の去就である。
安倍政権との因縁は昨年7月の放送にさかのぼる。
菅官房長官をスタジオに読んだ際、キャスターの国谷裕子さんが「(集団的自衛権の行使容認という)憲法解釈変更の違和感をどう払拭するのか」と問うと、菅氏が「どの国でも一国で平和を守れる時代じゃない」と気色ばんだ。
同番組のやらせ問題では、国谷さんが4月の放送で謝罪。その後、自民党の情報通信戦略調査会は、テレ朝の専務と同じ日にNHK副会長を事情聴取した。
現在、国谷さんの降板説や放送時間変更説が飛び交う。
NHK広報部は「来年4月の番組改定はまだ決まっていない。検討中だ」とコメントした。
テレビ界を見渡せば、姉政権に批判的な人物はまれだ。
ジャーナリストの青木理さんは、日本テレビ系の情報番組「ミヤネ屋」で政権批判を口にしていたが、10月に降ろされた。
青木さんは「10年前なら普通の体制や政権に対する批判が、あたかも極端な主張であるように受け取られている」と嘆く。
「以前はニュースステーション(報道ステーションの前身)に久米宏さん、ニュース23に筑紫哲也さんがいて、辛辣に政権を批判していた。それと比べれば古舘さん、岸井さんの論調は穏やか。こんな人まで標的にされるのかと驚く」
政治からメディアへの「圧力」は今も昔も存在するが、安倍政権のやり方は露骨だ。
昨年の衆議院選前、自民党は在京キー各局に「公平中立な報道」を求める文書を突きつけた。
安保法案反対の声が高まると、6月の自民党若手議員の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」との圧力発言が飛び出した。
放送業界の第三者機関「放送倫理・番組工場機構(BPO)」は11月、「クローズアップ現代」のやらせ問題を批判する一方で、自民党の圧力発言や、NHK、テレ朝への事情聴取を「政権党による圧力そのもの」と批判した。だが、安倍首相は「事実を曲げているか議論するのは至極当然だ。全く問題ない」と聴取を正当化し、反省する気などさらさらない。
BPOはテレビ局に対しても「干渉や圧力に対する毅然とした態度を堅持できなければ、放送の自由も自立も侵食され、やがては失われる」と発奮を促した。
ところが、テレビ局はむしろ安倍政権に取り入ることに熱心だ。
2013年1月7日付から今年25日付けまでの本紙「首相の1日」を調べたところ、安倍首相と会食やゴルフを共にした回数は、フジテレビの日枝久氏会長が12回、日テレの大久保好男社長が4回、NHKの島田敏夫解説副委員長が5回などだった。
このままではテレビから「政権批判」が消えてしまわないか。
服部孝章・立教大学名誉教授(メディア法)派、衆議院選時の文書配布が「テレビ局が毅然とした態度を示すチャンスだった。一局ずつ呼びつけられて文書を渡されたのに、どこもその事実を報じなかった」と残念がる。「政権の顔色を伺う『忖度ジャーナリズム』は、もはや国民の代弁者たり得ていない」
大石泰彦・青山学院大教授(メディア法)は「今の政権には会見という大目標がある。この高いハードルを越えるには、まず来年の参院選で勝たなければならない。そのために安倍政権は障害となるメディアを本気で殺しにきているとみたほうがいい。日テレとフジは手なずけたので、次の標的はNHK、テレ朝、TBSだ」と警鐘を鳴らす。
元NHKプロデューサーの永田浩三・武蔵大教授(メディア社会学)も行く末を心配する。
「報道番組のキャスターはフリーな立場で自分の意見をもべることが持ち味。そんなキャスターに政権批判を許さないのは異常なことだ。古舘さんの後任として曲穴のなが挙がっているが、果たして曲の方針から外れたコメントができるのか。いずれテレビから政権批判が消えれば、日本はもう民主主義国家ではない」
デスクメモ
今年の「こちら特報部」の通常紙面は今日が最後です。明日からは回顧などが続きます。振り返ればこの1年間、ジャーナリズムの危機を再三訴えました。そして最後の最後もメディアの問題です。来年は多分もっと厳しい局面に立たされるのではないか。現場で奮闘する同業者にエールを送り続けます。
<最後の報道ステーション>「世界によって自分が変えられないようにするため」3/27古賀茂明氏のコメントの部分全てそのまま文字起こし
<集団的自衛権>菅官房長官生出演 「クローズアップ現代」2014年7月3日放送(文字起こし)
古舘伊知郎「報ステ」降板全真相と官邸大ハシャギの内幕
2015年12月26日 日刊ゲンダイ
降板について語った古舘伊知郎(左)と中央から時計回りに古賀茂明、青木理、岸井成格の3氏(C)日刊ゲンダイ
またひとり安倍政権に批判の論陣を張るメディア人が消えた。24日、テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のメーンキャスター・古舘伊知郎が会見し、来年3月いっぱいで降板することを明らかにしたのだ。官邸は“してやったり”ではないか。早速、テレ朝の報道局員のもとには、霞が関の官僚たちから“お祝い”の連絡が続々と届いているらしい。
■政府に批判的なコメンテーター次々と“首切り”
サバサバした表情で会見に現れた古舘は、「2年前から考えていた。急に心境が変わったことではない」と“円満降板”を強調。もっとも真相は不明で、古舘はつい最近まで、「オレ、絶対頑張るからな」と周囲に語り、“続投”に意欲を見せていたという。実際、後任について質問が飛ぶと、「ボクのようにあまり問題発言をしない人がいいんじゃないでしょうか」と自虐的に語り、「権力を監視し、警鐘を鳴らすのが報道番組。全く中立公正はあり得ないと思っている」とも語った。
「古舘さんは原発報道をめぐって『圧力がかかって番組を打ち切られても本望』と発言したり、原発再稼働に向けて突っ走る政府に批判的な姿勢を強めていた。そんな最中の突然の降板劇です。むしろ何かあったと考える方が自然でしょう」(テレビ朝日関係者)
報ステでは今年3月、元経産官僚の古賀茂明氏が番組内で「I am not Abe」と発言し、官邸からの“圧力”でコメンテーターを降板させられた。その古賀氏は古舘の降板をこう見ている。
「古舘さんは『しゃべるのが命』という人だから、自分から降板するなんてありえないと思います。トークライブで原発の話をしようとしたら、台本を書き換えさせられたりと、報ステの番組はおろか、番組の外でも自由にモノを言うことができなくなっていたそうです。もう疲れちゃったんでしょう。古舘さんの方から辞めると言わせるように、テレ朝側が持っていったのでしょう」
もはや、官邸にタテついて煙たがられているジャーナリスト、コメンテーターのクビ切り降板は珍しいことではない。
■「NEWS23」岸井成格氏も降板
安保法制をめぐる安倍政権の乱暴なやり方を批判していたジャーナリストの青木理氏も、今秋、「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)のコメンテーターを突然降板した。TBSでも、安保法案に批判的なコメントをしていた報道番組「NEWS23」のメーンキャスター・岸井成格氏が来年3月いっぱいで降板すると報じられた。
これでは、言論の自由もへったくれもないのだが、番組を降ろされた本人たちは更迭劇をどう思っているのか。青木氏に聞いてみた。
「『ミヤネ屋』をクビになったのは事実ですが、説明があったわけではないので、詳しい事情は分かりません。私は社員じゃないので、方針に合わなかったり、必要がなくなったら切られるのは仕方がないと思う」
そのうえで、政府に批判的な発言が目立つジャーナリストやコメンテーターが相次いで降板している現状についてこう語った。
「テレビ局側の自粛なのか圧力なのか、それぞれの事情は知りません。だけど、結果を見れば政権側の思うツボだし、官邸にとっては好都合の状況が醸成されつつあると思う。このままいくとマジメに取材する報道番組が次々と消え、毒にも薬にもならないエンタメ番組ばかりになるでしょう。すなわちテレビ局が報道機関から娯楽機関に成り下がるということです。それでいいのか。重大な問題をはらんでいると思います」
前出の古賀氏は古舘について、「もう辞めると決まったのだから、残り3月まで思い切ってやりたいことをやって欲しいですね。そして4月になったら、『テレビというのは実はこういうことになっているんですよ』と、本当のことを話したらどうですか。そうすれば視聴者のリテラシーも高まると思います」と話す。
ぜひ期待したいものだ。
古舘伊知郎さん
報道ステーションの12年…綱渡りだった
毎日新聞 2015年12月24日 17時32分(最終更新 12月24日 21時16分)
テレビ朝日は24日、ニュース番組「報道ステーション」のメインキャスター、古舘伊知郎さん(61)が、契約が終了する来年3月末で降板すると発表した。古舘さんは同日夕、記者団に対し、「不自由な12年間だった。言っていいこととダメなことの綱渡りだった」と振り返った。テレ朝は、番組は継続するが後任キャスターは未定としている。
古舘さんは、久米宏さん司会の「ニュースステーション」の後継番組として「報道ステーション」が始まった2004年4月から、メインキャスターを務めてきた。古舘さんによると、2年前に「10年を区切りとして、別の挑戦をしたい」と、早河洋テレ朝会長に降板を申し出たが、「契約があと2年残っている」と慰留され、今夏に改めて降板の意向を伝えたという。
番組では今年3月、コメンテーターが自身の降板を巡って、古舘さんと激しく応酬。この問題を巡って自民党がテレビ朝日幹部を事情聴取し、政治による圧力が問題になった。古舘さんは「番組の中でいざこざが起きたことは大変残念だったが、それで今回の決意に至ったわけではない」と説明した。
さらに「ニュースキャスターは反権力、反暴力で、表現の自由を守る側面もある。キャスターが意見を言ってはいけないことはない。偏っていると言われれば私は偏っている」とも語った。今後については「娯楽の方で思いっきりしゃべり倒したい」と述べた。【丸山進、須藤唯哉】
『ミヤネ屋』が安倍政権に批判的なコメンテーター・青木理をクビ切り降板!
政権への配慮、読売新聞の圧力説も
2015.12.24 リテラ
TBS『NEWS23』の岸井成格、膳場貴子両キャスターが安倍政権と右派勢力の圧力で降板させられそうになっていることを本サイトがスクープしてから2カ月。この間、『NEWS23』問題はさまざまなメディアで取り上げられ、論議をよんだが、ここにきて、2人の更迭は回避される可能性が出てきたらしい。
「二人の降板問題については、複数のメディアが後追い報道。視聴者からも批判の声が巻き起こり、岸井さんや膳場さんら当事者、(TBSの)報道、制作現場も激しい抵抗を見せた。そのため、上層部も動けなくなってしまったみたいですね。ただ、おさまらないのは岸井さんの後任に星浩特別編集委員を出すことを了承し、それを前提に人事計画を組んでいた朝日新聞。TBSの煮え切らない態度にカンカンらしいですよ」(TBS関係者)
これが事実なら喜ばしい展開だが、しかし、一方で、報道圧力に屈し、自主規制を続けるテレビ局の空気はまったく変わっていない。つい最近も、あるワイドショーのコメンテーターが、安倍政権に批判的なスタンスが原因で、首を切られていたことが明らかになった。
そのワイドショーとは『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)。首を切られたのはジャーナリストの青木理だ。
青木は共同通信社の公安担当やソウル支局記者などを経てフリーになったジャーナリスト。著書や雑誌連載では安倍政権を真っ向批判するなど、リベラルなスタンスで知られるが、テレビでは、政治から犯罪、メディア批評など様々なジャンルに目配りできる安定感のある解説で重宝されており、現在は『モーニングショー』(テレビ朝日系)のレギュラー・コメンテーターなど、複数の番組で活躍している。
その青木が、2年ほど前から『ミヤネ屋』にも月2回ほどコメンテーターとして出演していたのだが、10月くらいから、まったくその姿を見なくなってしまったのだ。
調べてみると、やはり青木は番組を降ろされていた。しかも、原因はそのリベラルな政治スタンス、安倍政権批判にあったようだ。
「建前は通常の改編期の交代ですが、実際は上層部から『青木を切れ』というお達しがあったようです。事実、この時に切られたのは、青木さん1人だけでしたからね。『うちの局にも番組にも合わない』ということだったみたいですが」(読売テレビ関係者)
たしかに青木は『ミヤネ屋』の中では、異色の存在だった。『ミヤネ屋』は局自体が政権べったりの読売テレビの制作というだけでなく、安倍首相の“腹話術人形”ともいわれる日本テレビの青山和弘政治部副部長がレギュラー出演し、9月には安倍首相の単独無批判インタビューを放映するなど、露骨に安倍政権に擦り寄りを見せている番組だ。
その中で、青木はただ1人、政権への批判を口にし続けていた。安保法制については一貫して安倍政権の乱暴なやり方を批判していたし、朝日新聞の慰安婦問題でも一方的なバッシングに異を唱え、イスラム国の日本人人質殺害事件でも、安倍首相の演説の問題にはっきり言及していた。つまり、こうしたスタンスが上層部に嫌がられたということらしい。
しかし、青木のリベラルなスタンスは今に始まったことではない。なぜ最近になって急に降板ということになったのか。
「青木さんを起用した『ミヤネ屋』のチーフプロデューサーとその部下の2人のプロデューサーが今年6月に異動してしまったんです。局内では事実上の更迭といわれています。このチーフプロデューサーは『番組に左巻きが1人くらいいたほうが面白い』というような骨のあるタイプで、彼がいたおかげで『ミヤネ屋』はぎりぎりバランスを保ってきた。青木氏についても、上層部に対して防波堤になってきた。そのチーフプロデューサーがいなくなって、番組ががらりと変わってしまったんです。報道姿勢も露骨に政権べったりになって、青木氏のような政権に批判的なコメンテーターも上層部にいわれるがまま排除することになった」(前出・読売テレビ関係者)
なんとなく古賀茂明の『報道ステーション』(テレビ朝日系)更迭劇を彷彿とさせるが、実際、チーフプロデューサーの異動や青木降板の背後には、官邸の圧力と政権の意向を忖度した自主規制があったのではないか、ともささやかれている。
「『報ステ』や『NEWS23』のケースでもそうでしたが、圧力といっても直接、官邸が番組に抗議をしてくるということはでない。政治部の番記者などを通じて、チクチクと文句をつけてくるんですよ。で、そういう声は現場を飛び越えて局の上層部に届けられ、上層部は人事で政権に批判的な人間を現場から外してしまう。実はこれがテレビ局の自主規制の一番多いパターンなんです」(テレビ局関係者)
しかも、今回の青木降板劇には、もうひとつ、大きな要因があったようだ。それは読売テレビの親会社である読売新聞の介入だ。
「チーフプロデューサーが番組を降ろされるすこし前、東京の読売新聞本社のメディア戦略室の幹部がわざわざ大阪の読売テレビに出向いてきたことがあった。その用件はズバリ青木氏降ろしだったようです」(前出・読売テレビ関係者)
実は青木は昨年の朝日新聞慰安婦問題に関し、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)の連載で読売新聞の報道姿勢と、独裁的な社内体制を批判する記事を掲載したのだが、これに対し、読売新聞が激怒。内容証明を送りつけてくるという事態に発展していた。そういう経緯もあって、読売新聞が青木をどうにかしろとクレームをつけてきたようなのだ。
「幹部は相当な剣幕で、直々に読売テレビ上層部に圧力をかけたといわれます。読売テレビは読売新聞のグループ会社ですし、社長は代々読売新聞の経済部OBが“天下る”。その意向は絶対でしょう」(前出・読売テレビ関係者)
まさに、報道の自由もへったくれもない、あからさまな現場介入だが、この更迭劇について青木はどう考えているのか。直接、本人に聞いてみた。
「クビになったのは事実ですが、説明があったわけではないんで、事情はわからないね。いろいろ噂はとびかってるけど、まあ、僕らは社員じゃないんで、方針に合わなかったり、必要がなくなったら切られるというのはしようがない。むしろ、あの番組が僕のような人間を起用していたのが奇跡でしょう」
てっきり『ミヤネ屋』の悪口を聞かせてくれるものと期待していたのだが、青木は淡々とこう語るのみで、批判はまったく出てこなかった。
実は、青木は古賀茂明の『報道ステーション』降板騒動の際も冷ややかな反応を示しており、どうも、切られた時は四の五の言わないという、フリーとしての矜持のようなものがあるらしい。
だが、青木の個人的な信条はどうあれ、今回の降板が、安倍政権による一連の報道機関への圧力、テレビ局の過剰な政権批判自粛の延長線上にあるのは間違いない。本サイトとしては、テレビ局のこうした体質を見逃すことなく、これからも徹底追及していくつもりだ。
(伊勢崎馨)