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04.27
Sat
【ペイフォワード環境情報教室】
松崎道幸先生 2013年4月26日



Sawada:
本日は松崎道幸先生に来ていただいています。
4月24日になりますが、郡山の集団疎開裁判というのが行われまして、
こちらの方の判決が出たという事で、原告団の方で記者会見を行っておりました。
その中で松崎先生も当初原告承認の意見書というふうな形で出されたりしておりまして、
この中に深くかかわっていたということもありますので、
是非ご解説いただければと思っているんですけれども、
大きい意味では前半の低線量における健康被害の部分は大枠認められたんですが、
集団疎開するまでには、それ単体では意味がないんではないだろうかという事の、
ちょっとぼかされたような結果だったように感じたんですけれども、
その中で低線量の部分が認められてきたというのはすごく大きな事だと思うんですけれども、
その部分の解説を頂けますか?


松崎:
結局、ちょうど国が
「毎年20ミリシーベルトまでの被ばくの場所だったら住んでもいいよ」という立場を否定した判決が、
判決文というか認定がていはんなんですね。
それは、余計に毎年1ミリシーベルト以上被曝するとか、
それから郡山市とか福島市でいろんな公的機関が測定するとやっぱり年間数ミリとか
シーベルトを余計に被ばくする状況があるというふうにまず認定してて、
そして、判決文の後、チェルノブイリでは郡山市並みの汚染の状態でも、
事故後に先天性疾患とか白内障とかですね、
心臓病、糖尿病、それからがんが増えたという調査結果があると。
それから、福島県が3万8000人の甲状腺を調べたら、
甲状腺がんが3人と疑いの子どもさんが7人見つかって、
これはチェルノブイリの事故の数年後に
チェルノブイリで同じ形の調査をした時に見つかった比率と同じ位だという事を認定してですね、
これは僕が意見書を書いた部分なんですけれども、
そういうふうな事が裁判所が認定した事と。
で、そういう事を受けて「由々しき事態である」という事を裁判所が認定したんですね。

それで、このまま福島の中通り地域にいるとすると余計な放射線被ばくをして、
チェルノブイリで起きたような様々な健康障害が福島でも同じように起きる恐れが
そういう蓋然性が強いという事で由々しき事態であるという事を判決文に書いてある
んですね。

※【蓋然性】がいぜんせい
 ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い。
 確からしさ。これを数量化したものが確率。

由々しき事態が起きているから疎開をするべきなんだけど、
本件がちょうど、学校教育を県外というか、放射線汚染のないところで出来るように
そういう権利を保障するべきだという内容なので、
それはいいけれども、じゃあ、
一日8時間県外で授業を受けて16時間はまた県内に戻ってきたなら意味がないじゃないかと、
「由々しき事態の場所に戻ってくるのは意味がないから、訴えは認められない」みたいな感じの判決文、
原告の請求を却下するという内容になったんですね。

ですから、もし、政府の言うとおりの判決文を書くとするんなら、
「放射線の汚染状態は20ミリシーベルトには達する見込みはなさそうだから今のままで大丈夫だよ」
というふうに,そういう理由を付けて却下するんじゃないかと思ってたんですけれども、
そうじゃなくて、私たちが言ったような
「本当にもう避難しなくちゃいけないような状態、汚染状態ではないのか」ということを
きちんと認定してくれた。

だから私自身は、とりあえずは敗訴だけれども、この判決文を活かして
より徹底的なというか、子どもたちをはじめとして
放射線被ばくを知らせる事が出来るような対策を県とか国にしっかり要求していく、
一つの基盤が出来たんじゃないかと思っています。



Sawada:
そうですか。
そういった意味ではこういう判決というのは
まさに次のアクションへの礎になるというところが多分多く考えられると思うんですけれども、
昨年政府の方で出ていました「被災者子ども支援法」というのもありましたけれども、
私どもの方でなかなかわかりにくいんですけれども、
こうしたものによる被害を受けたということを、
受けた証明を出さないと救済してもらえない法律があるのと、
逆に言うとそういう受けていないという事を証明しないといけないというような、
証明を素人に求められるという、どちらに求められるか?と。
東電、もしくは政府の側が
「そうじゃないという事を証明する」というのは難しいですけれども、彼らはやるべきだという事ですけど、
逆に素人がそういうことを証明するというのはすごく大変な話でありますよね。

で、そんな中で今回のでいきますと、
政府と司法とで、ま、日本に三権分立があるのかというのがよく出ますけれども、
司法の判断としては低線量被ばく1ミリを超えるという現行の法律に照らすとなれば、
「これは由々しき事態であり健康被害があるんだ」というところまで踏み込んで認めたというのは、
やっぱりそうとう画期的なんでしょうかね?


松崎:
そうですね。
結局、病気が起きちゃってから「こんな病気が起きて具合が悪くなりました」
という事で申告をして救済してもらうという事では遅すぎるし、
今回の判決はチェルノブイリの例などから考えると
放っておくと将来いろいろと深刻な病気が起こる可能性が充分にあるという事態だと認定して、
なにもまだ表に健康障害が見えてないけれども、
今から対策を取る必要があるんじゃないかということ
なので、
予防的な認定をしたというのは非常に意味があると思いますね。


Sawada:
そうですね。
あの日本人がですね、良く言われるところで「怒りを表現する仕方を最近忘れてしまった」と。
たとえばデモに行く人も初めは行くけれどもだんだんにかなくなってしまうと。
もちろん怒ってはいるんだけれどもなかなか表現する方法がないという中で
一つこういった形で一つ一つの事態に対して訴えていくと、
「提訴するというのも一つの手じゃないか」という方もたまにいらっしゃいますけれども、
そういった意味で今回勇気ある、
これは中学生でいらっしゃいましたっけ、原告の方。
ですので、そういった形で勇気ある活動、行動がですね、
こういった形で一つの成果になってきているという、アクションの始まりになっていますよね。
これについては先生はいかがですか?


松崎:
とっても貴重で大事な事で、
結構こういう裁判とかをやるというのは、もういろんなしがらみもある中でやるという事だから
精神的にきつい、とてもきつい事だと思って、
本当に途中で降りたいと思って悩んだ事も多かったんじゃないかと思うんですけれども、
ここまで頑張っていただいて、こういう判決を引き出してくれたのは、
すごく、あの…大人にとっても意味のある事だったなというふうに思います。


Sawada:
そうですよね、そういった意味で、そういった事を決意した福島の方がたとえばいらっしゃった場合に、
そういうことをサポートする、たとえば松崎先生のような
医者という立場の方からの意見書を出していただけるですとか、
弁護士の方も含めですね、
そういった方というのはやっぱりいらっしゃるものなんでしょうかね?


松崎:
そうですね、あの…、
繋がっていないけれどもきっといろんなところでそれなりにやっている方がいらっしゃる筈だし、
たとえば今回、甲状腺の検診が福島でああいうデータが出たので、
他のところで本当に福島よりも多いのか少ないのかっていうのを確かめるために、
数百人の全国から甲状腺の子どもの検診を受けていただく子どもさんを募ってですね、
生活クラブ生協が検診をしたんですね。
それで調査をして、その結果が大体まとまってきたんで、
来週郡山に行って、どういうふうにデータを見るか?とか、
そもそも福島の子どもたちの状態をどう見るか?という話をする予定なんですけれども、
やっぱり全国にいろいろと子どもさんの事を心配して立ちあがって行動をしている方が、
医師ですとか科学者以外でも一般の方々が沢山出てきていらっしゃるので、
とっても、その、普通の方が頑張って、
そうするとにわかには行動を移さない方のことを少しずつ動かして、
なにか決定的な時にそのアクションとか行動が出来る、
そういう原動力をつくっているんじゃないかという気がするんですね。
ですから、ぼくたち、私が出来るのはそういう医学的に解説してということぐらいしかできませんけれども、
子どもさんに接しているとか、それから不安を抱えている親御さんとか、
いろんな方と繋がって
この問題をもっといい方向で解決できるようにしていかなければいけないなというふうに思います。


Sawada:
そうですか。そんな中今回の裁判の結果としましては
「集団疎開させる義務はない」というところである意味敗北であったんですが、
それ以外に大きい意味でエリアとしてですね、
松崎先生が以前から提唱されています中通りの汚染状況について、
大変厳しい見方をされていたというのもありますし、
判決の中でもそのような事が出てきているという事を受けて、
先生としては正直、どうですかねホント
移住したいと希望している方は出来る方はみなさんされているかもしれませんし、
今残っていらっしゃる方はしたくてもなかなかできないという方が多いところでありますけれども、
先生からなにか、そこについてお医者さんとして何かアドバイスがございますか?


松崎:
とにかく、一つは裁判所でさえ由々しき事態だと認定したので、
「どう由々しいのか?」という事をしっかりと
福島に住んでいらっしゃる方とか、政策を決める方々に知っていただいて、
その上で「今このままでいいのかい?」という問いかけ
ですよね、それをして。
それから、それが必要と。
ですからそのうえで、やっぱりいろいろな情報を知ると、これは本当に、
移住とか疎開をしたいなという、そういう方々が沢山出てきた時に
ちゃんとそれをサポートできるような、資金だとか援助だとかを行政がやらなくてもいいのか?
というところまでやっぱり話を進める必要があると。

で、あと、…、
もうひとつは、あの、
低線量被ばくの事をやっぱりもっとしっかりと
「大変なことなんだ」という事を理論的にというか科学的に検討するような
医学者とか科学者のしっかりとした集まりというのも必要と思いますし、
ちょうどこれから夏休みなどに向けて保養ですとか、
一時的に福島から離れたところで何日間か何週間かもつような取り組みが
少しずつまた広がってきているので、
そういう取り組みも経済的にサポートしてもらうとか、
多くの人がその取り組みに参加して協力していくということも必要です、

もっと最近感じたのは福島だけじゃなくて、
首都圏でやっぱり検診をしたら甲状腺に異常があって、
小さなしこりがあってすごく心配だったよ、なさっている親御さんが沢山いらっしゃるようなので、
そういう方々のサポートというものも必要になってくるだろうと。

ですから、いろいろな課題はありますけれども、
医学的に見て科学的に見て大変な状態が今引き起こされているんだから、
みんなで何とかしようじゃないかという、そういう輪をつくってですね、
やっぱりあんまりその問題に関与してこなかったいろんな医学会ですとか科学会ですとかの協力というか、
どの子どもものっていく必要があるんじゃないかなと思っています。



Sawada:
そうですね、先生がおっしゃった通り先ず知ることから初めないと、
なかなか先ず情報が今、なくなってきているところがございますのでね。
ま、インターネットメディア中心に、真実と思われることは出るというのはもちろんありますけれども、
今後ともこのペイフォワードでは、先生を中心に良心のある専門家から正しい解説を頂いて、
知ることから始めていきたいと思っておりますので、
今後ともぜひよろしくお願いいたします。


松崎:はい、よろしくお願いします。



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03.14
Thu
2013年3月11日
「市民と科学者による内部被曝問題研究会」4名のインタビューを岩上安身さんがされました。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/66238
無題301111

沢田昭二氏 今日の内部被曝研究会の役割と問題提起
松崎道幸氏 福島県の子どもの甲状腺がんについて
矢ヶ崎克馬氏 被曝回避人権宣言
生井兵治氏 環境食べ物の放射能基準について


松崎先生の部分の文字起こしです。


松崎道幸氏 内部被被曝問題研究会メンバー 深川市立病院内科部長
無題30111112

わたくしは原爆訴訟ですとか、放射能被曝の問題をずっと考えてきたんですけれども、
今日は、子どもさんの甲状腺がんの発生率なんかを考えますと
どうも、その、私の予測する悪い方向にだんだん事態が進んで行っている気がします。
で、放射線を受けるとどれだけ被害があるか?という話があって、
「100ミリシーベルト以下なら何でもない」というふうに言っていらっしゃる方が多いんですけれども、
どうも1桁、害は過小評価されているだろうと、
その辺を今日は重点的にお話をしていきたいと思います。


ーー42:39~福島県の子どもの甲状腺がんについて


岩上:ご専門は内科医なんですね。

松崎:そうですね。肺の病気、

岩上:呼吸器の

松崎:はい。

岩上:先生は、内部被曝の問題というものに関心を持たれたのは何時頃からなんでしょう?

松崎:311以降ですね。
それで、なにが問題か?っていうふうに痛感したのはですね、
原爆被爆者のデータからすると、チェルノブイリとかで起きた事を説明できないんじゃないか?と

岩上:
なるほど。
つまり先程、ちょうど今
沢田先生からお話があった、広島・長崎の原爆の被爆者にどういう事が起こったのか?
これについて放影研等が研究した成果というのが発表されていてそれを勉強すると、
チェルノブイリで起きてずーっと長い事、広い範囲に多くの人達が
被曝症状というか、被曝の影響が出るんですよね。
それと全然合わないという事になるんですね。

松崎:そうですね。

岩上:通常のこれまでの公式見解と合わなかった。

松崎:チェルノブイリで、甲状腺がんが沢山出てきたという事自体も想定外だったんですね。

岩上:あの時も想定外だったんですね。

松崎:
そうですね。
それでその他に肺がんとか乳がんが増えて、
ただ、チェルノブイリの時の被ばく量を見ると、
「そんな肺がんや乳がんが増えるような被ばくじゃないよ」と、原爆のデータからみるとですね。

岩上:
初期放射線の量だけ見たら、そこまでの被ばくはしていないという人たちが
癌になっていた訳ですね。

松崎:
そうですね。
で、どうもその、10倍違いそうだという、事が分かったんですね。
それはつまり、原爆被爆者のデータでは、
1000ミリシーベルト被ばくすると、47%癌で死ぬ確率が高まる。

ところが、最近いろいろな調査が行われて、
それは一桁過小評価ではないか」という成績が沢山出てきてですね、
一番大きいのはですね、私が調べた一番大きなデータは、
日本の原発労働者の健康調査なんです。

これは文部科学省が20年前から20万人ほどの原発労働者の健康調査をやっているんですね。
「どれだけ被曝して、その中からどれだけ癌が出たか」というのを、
きちんと一応統計を取っている訳です。

そうすると、2011年ですか、311の前の年に発表された4番目の報告書の結論がですね、
10ミリシーベルト被曝した日本の原発労働者は、がんのリスクが3%有意に高まっているという
結果が出ちゃったんですね。

これは、10ミリシーベルトで3%高まっているという事は、
1000ミリシーベルトだったらその100倍だから300%

岩上:現実にはあり得ない数字ですよね、300%っていう事は…どうなんですか?

松崎:それは原爆被爆者の47%からみたら10倍近くですよね。

岩上:そうですね。

松崎:
で、もうひとつ同じようなデータが出ていまして、
これは、医療被曝なんですね。
病気をするといろいろとレントゲン検査をすると、CTを撮るという事が行われていて、
おととしぐらいにですね、カナダのチームがCT検査を、
10ミリシーベルト余計に被曝すると、やはりがんの確率が3%増えるというデータが出たんですね。
20ミリシーベルトだったらプラス6%
30ミリシーベルトだったらプラス9%、
ちょうど日本の原発労働者と同じ結果が出たんですね。

ですので、原爆被爆者のデータよりも、最近きちんと調べた疫学調査のデータの方が、
放射線の発がん影響というのが10倍多くありそうだという事が分かってきたんですね。


ですので、その他に、さらに補強するようなデータというのは、
たとえば女性の乳がんの検診でマンモグラフィーというのをやりますね。
あれも、乳がんになりやすい遺伝子を持っている女性がマンモグラフィーを受けると、
やっぱりですね、5ミリシーベルトとか10ミリシーベルト余計に被曝すると、
やはり乳がんが2倍になるという、


岩上:検査する事によって、癌の確率が高まってしまう

松崎:そうなんですね。

岩上:気をつけなければいけない。

松崎:はい。
ですからそういう事を見るとですね、どうもその、
チェルノブイリが原爆の被爆者の、どうも10倍多く放射線の影響が出ているようだという事は、
実はその方が本当ではないかと思っている訳ですね。

無題30111131

岩上:
なるほど。
他の医療放射線の被ばくによるその結果でもあきらかに高い」ということは、
一番ゆがめられている、根本的にゆがめられているデータは、
スケールの、物差しのように、基準値のようにいわれてきた
広島・長崎の原爆の被ばく、その影響のデータ。
こちらの方がゆがめられているという事なんですね。

松崎:
ですから、先程沢田先生がおっしゃったような、「過小評価の問題」というのが、
やっぱりここにきて、


岩上:重要になっている訳ですね。


松崎:
その、見直しをしなければいけないという事ですね。
という事を、それを念頭に置きつつですね、
今回の福島の子どもたちの甲状腺がんが沢山出てきた様だという話をするわけなんですけれども、

ま、2月、先月ぐらいに発表されたところでは、
超音波で甲状腺を検査した3万8000人の子ども達から3名甲状腺がんが見つかったと、


岩上:
これは今年の2月13日の話ですね。
県民健康管理調査検討委員会っていうやつですね。

松崎:
その他にまだ、確定はしていないけれども、
非常にがんの可能性が高いだろうと思われるようなしこりを持った子どもさんが7名いらっしゃると。
ですから、3万8000人から3名でも、1万3000人に一人、
で、もし残りの方が不幸にして甲状腺がんでありましたら、
4000人に一人というぐらいの率になるわけですね。

で、問題はこの数が多いか少ないか?という事ですね。
実はそれを比べる事が出来る調査というのが、チェルノブイリの時に行われているんですね。
それは山下俊一先生方がチェルノブイリで、事故が起きてから数年経ってから、
「どうも子どもの甲状腺がんが予想外に増えてきているようだ」という事が分かったので、


岩上:本来は、甲状腺の小児癌というのは、非常に、その発症率は低い病気なんですよね。

松崎:
そうですね。
ですから、本当に子どもの喉が沢山腫れて、
それで病院に行ったら、「あ、癌が出来ている」と、
そういう方は本当に1年間に100万人に一人とか10万人に一人ぐらいのレベルの少なさだったけれども、
チェルノブイリでは事故から、
ま、次の年から少しずつ増え始めて、
4~5年経ってそれまでの10倍ぐらいの発生率になってきたんですね。

という事で、慌ててといいますか、
山下チームが甲状腺の検査装置を使って、今回の福島のようなスタイルで検診をしたんですね。
で、その時に、一番最初の論文が、
5万5000人の子どもを検査したと、
そこから4人甲状腺がんが見つかったと、
ちょうどその、見つかった甲状腺がんのサイズは、15mmぐらいだったんですね、直径が。

それは今回の福島の子どもたちに見つかった甲状腺がんと大体同じ大きさなんですね。

甲状腺の超音波の性能が良いから1mmの癌も見付かったとか、そういうレベルじゃなくて、
チェルノブイリの時も、今回の検診も、
1センチ5ミリぐらいの大きさのしこりが見つかったという事ですね。


無題30111132

岩上:
これですね、↑ここのところですね、山下先生がやってきたと。
そうすると、1万4000人に一人という事は、同じ方法でやって、今回は先程4000人に一人という、

松崎:最大ですね、可能性があるということですね。

岩上:
という事は同じ方法でやっているのに、
そしてやった研究者もおなじあの、山下さんでありながら、
今回福島の方がなんとチェルノブイリよりも高い発症率が観測されていると。

松崎:
そうですね、しかも福島の調査というのは放射線被ばくから1年ちょっとの時期に行われたと。
チェルノブイリは5年経ってから行われた訳ですね。
ですから、1年と5年という違いがあるわけですから、
まだ1年少ししか経っていない福島で、
当時のチェルノブイリと同じか、
ひょっとしてそれを上回るような頻度で甲状腺がんが見つかった
というのは、
これは普通、誰でも心配するという事になりますね。

岩上:
そうですね、
これは甲状腺っていうのは、数年経ってからの方が癌が出やすいという事は分かっている訳ですね?

松崎:
おそらく、放射線の被曝があって、ちょうどその、
たとえで言いますと、放射性物質を地面に撒いて土の中に放射線によって甲状腺の種が出来て、
だんだんそれが大きくなって、芽を吹くんですね。
それで、そこが地表にうんと大きく出ればそれは臨床がんって言いまして、
そういうのが10万人に一人とか100万人に一人ぐらいにしか見つからない訳ですけれども、

岩上:臨床がんというのはつまり臨床のお医者さんでわかるという事ですね。

松崎:
そうですね、大きくなっている。
で、まだ土の中に、出来始めの甲状腺がんがどれ位あるか?と、ほどほどの大きさの。
それをチェルノブイリと福島で同じような手法でやったところ、
土の中には結構チェルノブイリと同じかそれ以上の頻度で、
福島の子どもたちには甲状腺がんが発生し始めているんじゃないかという心配が、非常に大きい訳ですね。

実際に、甲状腺がんというのは被曝の初期に放射性ヨードを被曝するとかというのが、
一番大きなファクターかもしれませんけれども、
その後、慢性の低線量被ばくでも、やはり甲状腺がんは発生するだろうと、
で、この事は山下先生も同じ論文の中で、おっしゃっているんですね。

しかもいまの福島の中通りあたりは、
山下先生が甲状腺がんを発見したチェルノブイリの周辺の地域と大体同じレベルの土壌汚染状態なんですね。

岩上:福島市のあたりでという事ですね。

松崎:福島市とか郡山あたりでも

岩上:
人口密集地、
重要なインフラもあり、そして多くの人々が住む中通りの、
まぁ、福島の中心地ですね。
そこがチェルノブイリの、言わば厳戒態勢、
そこから避難させなければいけないような汚染度と変わらないと。

松崎:
そうですね。
ですから実際に発生率を見ても、
それから、いまの福島の子どもたちが住んでいるところの放射線の汚染度を見ても、
ま、医者としてはですね、
「大丈夫だからずっとそこにいなさい」というふうには、やはりとても言えない
だろうと思いますね。


岩上:
これだけの調査を行ってきた山下さんは、
数字のもつ意味は誰よりもご本人がよくお分かりになると思いますけれども、
何故学者としてこれだけの業績を残しながら、
他方で住民に対しては「心配するな」と言い、「笑っていればいい」と言い続けているのか?と。
そしてそこにとどまるという事を基本的にはすすめる方向でね、誘導してきたのか?
ここら辺りがね真意がまったくつかめないんですよ、私は。
どうしてなんでしょう?

松崎:
やっぱり私は、あの、
ま、専門家とか、医者も含めてですけれども、
自分のおかれた立場とか、果たすべき役割を…、
ぼくがたとえば山下先生の立場にいたら、どうだったかな?というのはわりと考えますね。
科学的に危ないんじゃないかと思っても、
いろいろなしがらみとかですね、そういう事を考えて
ああいうふうに言わざるを得ないという、気持ちはわかる部分は、ちょっとはありますけれども、
ただ、私自身は、あの…なんて言いますか…
やっぱりその、人間、人の価値というのは
本当にプラスとマイナスというか、自分にとってメリットデメリットが見えている時に、
どっちを取るかで、やっぱり決まるんじゃないかという気がします。
ですから、私は一応公立病院の医師の立場ですけれども、
「医学的に間違った事は言わない」という事で進んでいって、
それでなにかあれば、もうしょうがないと。
ですから、山下俊一先生にも、やっぱりその、

岩上:
先生いま、「何かあったらしょうがない」というのは、
なにかとは誰の身になにが起こるんですか?
先生の身に不利益が被るという意味でなにか、ですか?

松崎:
ええ、そういうこともやっぱりあり得ると思うんですよね。
ええ。

岩上:
それは大いにあり得ると思います。
是非とも、そういう事が起こってもですね、
医学的に正しい事を先生が発信していただけたらなと、思っておりますんで、
ま、そういう意味ですよね、つまりね。

松崎:
そうですね、
それで、ちょうど集団疎開裁判というのが、
福島の子どもたちを移住させよう、疎開させようという裁判にずっとぼくも関わってきましたので、
やはり今回のデータは、被曝の影響が多い少ないとか、
原爆被爆者のデータから見たら全然心配ないというような事でとらわれて、
「大丈夫、大丈夫だ」というんじゃなくて、
やはり、真剣にその、ひょっとすると、
私自身はもっと強い気持ちで一刻も早く避難疎開を始める。
そういう行動を我々大人が起こすべきではないかというふうに思っています。

岩上:
甲状腺がんの話に関連して、どうしてもお聞きしたいのはですね、
これは甲状腺のところだけに話題が集中しているんですけれども、
しかし、チェルノブイリやウクライナの国家レポートみたいなものを見ると、25年経ってみると、
全身のいたる所に疾患のある、そういう子どもたちが増えていると、
だから今、健康じゃない子どもが8割だと、
それも病気のばらつきが、非常にばらついている訳ですね。
甲状腺がんだけではないように思うんです。

どうでしょう、甲状腺以外では、心配しなくていいんでしょうか?
その辺がすごく気になるんですが。

松崎:
妊娠して出産して、その次の世代にどういう障害が現れるか?というのも、
チェルノブイリではいろいろと報告されています。
それから、幼い時に被曝した、それから若い時に被曝した人々が、
チェルノブイリではどうも、はやく老化するようだという現象が観察されているんですね。
ですからそういう意味では

岩上:老化が早まってしまうんですね

松崎:
はい。
動脈硬化も進むし、それから中枢神経、脳にも結構いきますので、
認知症ですとか、精神的な疾患が増える可能性があるとか、
ですから放射線というのはもう、
がん以外も含めてすべての病気を増やすような力があるという事ですので、
出来るだけ追加の被曝を押さえるということも大事だし、
それから、今の子どもさん達がどういうふうになっていくかを、しっかり調査すると。

で、これは僕の個人的な考えですけれども、
環境省がやっているエコチル調査というのがあるんですね。
それは環境ホルモンとかいろんな有害物質の汚染が、
先天障害とかいろんな生まれた後の行動障害とかそういうのを増やさないかどうか、
いま壮大な規模で日本で調査が行われていますので、
それに是非とも放射線被ばくの項目も付け加えてもらって、
総合的に子どもたちの健康を守っていけるような対策が必要だと思っています。

岩上:
なるほど、わかりました。
ありがとうございます。

福島の子どもたちにこれ以上放射線被ばくをさせないために、
速やかに移住・疎開対策を進めることという事と、
納得のいく甲状腺の検診、施設配置・精度・検診間隔・説明等に関し、
受けられるよう速やかに体制を整える事ということを提言・要求されております。
まとめにそのような形で、黒い文字で記されています。

先生ありがとうございます。
これからね、長い闘いにきっとなると思いますので、
定期的に先生の身にですね、何か起っちゃいないか、とかいうことを、
我々が注視して監視していきたいと思いますんで、
みなさんもですね、松崎先生のような方が頑張ってお仕事が出来るように、
応援していただければと思っております。
先生どうもありがとうございました。

松崎:ありがとうございました。







<前半>
無視される内部被曝「黒い雨に遭った人と遭わなかった人」
沢田昭二氏 3/11(内容書き出し)


<後半>
誤魔化そうとするルーツがここにある「爆心地から離れると下痢の発症率が上がる」
沢田昭二氏 3/11(内容書き出し)


日本の飲食物や生態環境の「放射能」規制基準が如何に出鱈目か
<原発内の規制基準との対比>生井兵治氏3/11内部被曝問題研究会会見(内容書き出し)




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02.24
Sun
<本日のテーマ>
2013年2月13日に公表された福島県県民健康調査の結果を受けて

【ペイフォワード環境情報教室】松崎道幸先生

2013年2月22日



北海道深川市立病院の松崎道幸先生をお招きして
福島県健康管理調査についてのご意見を伺いました。


sawada:
この2月に福島県県民健康調査の結果が出まして、
3名に甲状腺の癌という事、また7名に疑いがあるという事が出まして、
各報道機関が健康管理調査の側の
基本的には「チェルノブイリのような例にはならないであろう」、と。
「期間的には発症が早すぎる」といった形のものだけを丸のみで発表しているところがございますが、
これについて松崎先生、ご見解を頂けますか?

松崎:
そうですね、えっと、
福島の子どもたちを詳しく調べた結果、
3万8000人の子どもたちから、
甲状腺がんが確定が3人と、疑い例が7人出たという事で、
最大を見ると、残り7人の方が全部甲状腺がんだと仮定すると
3800人に一人甲状腺に癌があるという結果になるわけですね。

実は、山下先生方が言っておられる一番は
「こんなに早い時期にこんなに甲状腺がんが出来る筈はない」と。
それからもうひとつは、
「今まで子どもたちの甲状腺を虫歯のように詳しく調べた研究調査結果はない」と
言うふうにおっしゃっているんですね。
で、僕はあの、実は今回の福島調査と同じような、比較できるような調査はあると思っています。
しかもそれはチェルノブイリ、山下先生方のチームがなさった、甲状腺の超音波検診の調査な訳です。
実はチェルノブイリの事故から数年経ってから、
チェルノブイリの子どもたちにどんどん甲状腺がんが現れてきたというショッキングな事態が起きたために、
1991年から94年までですね、日本財団の支援を受けて
山下先生方のチームがチェルノブイリ周辺の子どもさん達の甲状腺検診をしたんですね。
対象は5万5000人ぐらいの子どもさんを超音波の機械で検査して、
直径が5mm以上のしこりをもっている子どもさんを選びだして、細胞診検査などをした結果、
5万5000人から平均の直径が15~6mmぐらいの甲状腺がんが見つかったと


その時は5万5000人から4名甲状腺がんが見つかったという事が、
山下先生方のチームが書いた論文で公表されている訳です。
公表されたのは1995年ですね。

ですから、「原発事故の被災地で行った調査である」と。
それから、普通手で触ってもはっきりと、甲状腺に異常がなさそうな子どもさん達を対象に超音波検査をしたと。
それから、超音波検査の感度も直径が5mm以上のものを拾い上げて検査を行ったということで、
そういう共通点がありますので、
今回の福島の調査と、山下先生がたのチームがなさったチェルノブイリ調査は
比べる事が可能だと僕は思っています。


結局、その中でも、チェルノブイリ周辺と言っても、
ゴメリ地区のような放射能汚染度の高いような地区では
数千名ぐらいから2名甲状腺がんが出ていると、大体4500人に一人ぐらいという割合なんですね。
それから、汚染度の少ないところでも一万人に一人位という率で甲状腺がんが発見されたんですね。

一方、福島では3万8000人から確定例が3人、強い疑い例が7名ですから、
確定例だけですと、1万3000人ぐらいに1人、
疑い例も含めますと、3800人に一人という事で、
これは原発事故から数年経ったチェルノブイリと同じか、それ以上の頻度で
福島の子どもたちの甲状腺に癌が起きているという事になるわけです


で、問題は、原発事故と放射線被曝と関係なく日本の子どもの甲状腺には、
「それぐらいは前から甲状腺がんが出来ているものだ」という、
ま、可能性もない訳じゃないんですね。
ですから今回、
福島のデータが本当は日本のほかの地域ではどうなのか?という、比較調査は必ず必要だと思います。
実際に青森で何千人かを対象に同じような検査をするとかという話がありますので、
その結果も待ちたいし、それから、もっと離れた西日本でどうなのか?という、
そういう調査結果も踏まえて、
福島の事態が本当に放射線と関係があるのかないのかというのを判断する材料にして、
冷静に判断していきたいと思っているんですね。

それが普通の考え方であって、
今の時点で「福島の甲状腺がんは被ばくとは関係ないんだ」というふうに断定するのは、
全く科学的ではないと思います。



sawada:
そうですね、特にこれを否定するものとしてよく例が上がるんですけれども、
高齢者、60歳を超えた場合の甲状腺に異常をもっている方は大変に多くて、
「一般的である」というような表現が出ますけれども、
今回比較しているのは小児と、ま、18歳以下という事になりますと、
世の中一般的には百万人に一人、等と、大変低いものであるというのが通常ということですね。


松崎:
そうですね、
甲状腺がんというのは僕自身は3つにタイプを分けています。

一つ目は、被曝と関係なく、大人になればだんだん甲状腺に癌が出来てくると、
知らないうちに持っている方も2割3割居らっしゃるという、そういう甲状腺がんで、
このタイプの、被曝と関係ない甲状腺がんは、
非常に進行もゆっくりで、命取りになることもあんまりなくて、穏やかな癌だというふうに言われています。

二つ目のタイプは、
別の病気のために喉に放射線を外から外部照射して、
その結果、元の病気は治まったけれども、後で甲状腺の癌が出来たというタイプ。
これは外部照射による被曝で甲状腺がんが出来るというタイプですね。

三つ目は今回のように、
原子力発電所の事故で放射性の粉じんを吸収したり、外から外部被ばくを、
外部被ばくと内部被ばく両方で起きる甲状腺がんで、
特に子どもさんに多くて、小さくてもリンパ節に転移することが多くて、
最初のタイプ、1型の甲状腺がんとは違って、治療も大変だし、いろいろな合併症も多くなるという事なので、
甲状腺がんとはそういう3つのタイプに分けて考えないといけないと思っています。

で、原発事故に関する甲状腺がんはそういうふうに3番目の形だと。
それから、もともとあんまり転移もしないし進行もしないし、命取りにもならないというのが
最初の1型の甲状腺がんであるというふうに整理して考えないと、
なかなか問題の本質がつかめないんじゃないかと僕は思います。

sawada:
そうですか、そうした時今回みたいな形で
分かる部分と分からない部分がもちろんあるというのが前提なんでしょうけれども、
どのような対応をしていけばいいと思われますか?

松崎:
最初にご紹介した山下先生方のチェルノブイリでの調査の論文の最後にこういう表現があるんですね。

放射線の感受性が高い小児は初期の急性被ばくならびにその後の持続的低線量被ばくにより、
直接的、あるいは間接的に甲状腺が障害される可能性がある、
本研究は今後の調査解析に寄与する重要な基礎データとなるだろう。
そして、腫瘍及び免疫異常を伴う小児の甲状腺がんが、
放射性降下物によりもたらされたものであろう事を示唆している。

放射性降下物はホールアウトという表現ですけれども、
結局、山下先生方のチームが
原発事故による放射線被曝で小さな子どもに甲状腺がんが起こる事があるんだ」という、
気をつけろ」という警告を世界に発したと。
しかも、初期のヨウ素131に被曝だけじゃなくて、
その後の持続的な低線量被ばくも子どもさん達に甲状腺がんを引き起こす原因になっているようだ
というふうに結論を付けている訳ですね。
ですからそれを考えますと、甲状腺、今回の事態はやはり、山下先生の論文の結論を、
やはり、活かしてですね、十分に注意して対応すべきだと思います。
結局、チェルノブイリの周辺と福島の中通りは似たような地表汚染度になっていますので、
慢性の持続的な被ばくが続いている限りはやはり、
チェルノブイリと同じような甲状腺がんの激動というものが起こる可能性は十分にあると僕は思っています。
ですので、これからでも避難とか移住とかを真剣にやはり考える時に来ているんじゃないかと思います。
いずれにしても、
分かっている筈のデータを私たちにしっかり知らせていただきたいというのは、政府に対する要望ですね。
つまりただオウム返しのように「被ばくとは関係ないんだ」という、
そういうふうに言うだけでやはりその「本当かな?」という疑問を非常に抱きますし、
せめて今回不幸にして見つかった患者さんが、
どういう汚染度のところにいらっしゃるのか?とか、年齢とか、そういうことを知らせて、
そして、いろんな方の考えとかを集めて、
「どうするのが子どもたちにとって最善の事なのか」をやっぱりみんなで考える必要があると思います。

政府の情報管理が秘密主義になってきているなと僕は思います。


sawada:ありがとうございました。


ーーー

↓第10回「県民健康管理調査」検討委員会2013.2.13 記者会見より

<甲状腺がん>
「今回の調査結果で過去に書かれた論文・発表が、かなり覆される可能性がありますが…?」
山下俊一氏質疑応答2/13(文字起こし)


<甲状腺がんの頻度>
「超音波検診」と「潜在癌」鈴木眞一氏質疑応答2/13(文字起こし)


新たに2人甲状腺がん7人に疑い「放射能の影響は否定」福島県立医大鈴木眞一教授2/13




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11.17
Sat
【ペイフォワード環境情報教室】
松崎道幸先生 2012年11月17日





Sawada:
札幌の方で先生が講演されたなかで、大変有用なデータが沢山出ているという事が注目されていまして、
一番大きなところがよく言われる低線量被ばくにおける、
100ミリシーベルト以下の部分になりますけれども、
ここの部分の健康被害について、有意か有意じゃないかというところが常に問題になるという事で、
何が問題になるか?と言うと科学的根拠に基づいていないと言う事で否認されるケースが、
論文は出ているけれど、そうじゃないというケースが多いんですけれども、
今回それについて、特に原発労働者20万人を対象にした調査、
これは政府発表のものですけれども、
こちらのもの、ま、311以前のデータという事で発表されているのが比較されて、
今回そのような見解を出されていますけれども、その辺について教えていただけますか?



松崎:
日本の原発労働者の健康調査というか、追跡調査をずっと20年ぐらい前から政府がやっていまして、
それで、311前のちょうど1年前に4回目の報告書が公表されたんですね。
それによると10ミリシーベルトで、癌が3%有意に増加するという結果が出てしまっていたんですね。

ただそれは報告書の中では、政府、文科省サイドは
労働者の飲酒や喫煙率が高いから、たまたまそういう結果になったんだろうと書いていたんですね。
で、私がその報告書を読みなおして、いろいろと分析をしなおしても、
やはりですね、
飲酒とか喫煙の影響を補正してもやっぱり、
原発労働者はがかだか10ミリシーベルトの被ばくで癌のリスクが3%上がるという事は、
大体間違いがなさそうだという、そういう結論を出したわけです。

で、もうひとつ、
20年前からずっと、癌の発生率を追跡しているわけですけれども、
全体として右肩上がりで、だんだん、だんだん増えてきているんですね、そのデータが。
このトレンドでいくと、日本の原発労働者は
10数ミリシーベルト程度の累積の被ばくでも
さらにがんの率が増えてくるだろうということは予想できますね。

それが今まで、ICRPなんかが
「100ミリシーベルト以下では、
癌が出るかどうかは、被ばく者などのデータでも全然わからないから心配ない」
と言ってた事を覆すものだと僕は思うんですね。

で、それをまたさらに補強するデータが最近出まして、
それは、医療被曝。

心筋梗塞を患った患者さんに、
CTとかで沢山検査をやって、診断とか治療をするようになってきているんですけど、
1万人の患者さん、医療被曝を受けた患者さんを5年間追跡していてですね、
やはり、
10ミリシーベルト被ばく量が増すごとにですね、癌のリスクが3%ずつ増えるという
データが発表されまして、
これはカナディアンメディカル ジャーナルという医学雑誌に
2011年に掲載された論文なんですけれども、
それによると医療被曝、これは外部被ばくだけですけれども、
外部被ばくで10ミリシーベルト受けるごとに3%ずつ、癌のリスクが有意に上昇するという事がわかった。


ですから、
原発労働者も10ミリシーベルトで3%。
医療被曝でも10ミリシーベルトで3%。
という事で、桁も数字もまさに一致している
わけで、
そうすると、やっぱりもう、
10ミリシーベルトとか20ミリシーベルト程度の低線量被ばくでも、
癌は有意に3%とか6%増えてくるんだというふうに
放射線の影響を捉えなおす必要があると思うんですね。


そうしますと、実は文部科学省が3.11から1年間で、
福島のいろんな地域の住民がどれだけの被ばくを受けたかという実態をホームページに出しております。
それによると、福島の市役所の所在地ですとか、郡山市の市役所の所在地周辺の住民は、
すでに1年間で10ミリシーベルト程度の被ばくを受けていることになるんですね。
ですからもう1年半たっていますから、15ミリシーベルトぐらいは
文部科学省の推定値でも福島市や郡山市の住民はすでに被ばくをしているということになる。


そうすると10ミリシーベルトで3%癌のリスクが増えるということからすると、
やはりもう5%近くがんのリスクが上がるような
被ばくを受けちゃっているんじゃないか
という事になるんですね。

ですから
「100ミリシーベルト未満なら全く心配ない」
「50ミリ、20ミリでも子どもはそこに住んでもいい」というふうに政府が言ってきたんですけれども、
政府自身の調査が逆に、
「もうそれではちょっと危険だからしっかりするする必要があるんじゃないか」
ということを言わざるを得ないなと、僕は。それが一番、最近気にしていることです。

ですから、子どもさんとかはもちろん、大人の方々も、
福島の中通りに、ずっとこのまま居続けて良いのか?真剣に、というか、
もうひどい、困難なことではあるけれども、避難とか移住とかを考えなきゃいけないのかな?と
どうするのか?という事については、
私の出したデータを考慮に入れて、いろいろと考えていただきたいなと

もちろん政府もデータを、
最近の放射線の影響のデータをどういうふうに捉えて対策をまた見直すか?という事も、
政府にやってもらいたいなというふうに思っていますね。


Sawada:
そうですね、
そんな中でもですね、また、チェルノブイリの例においても
小児の甲状腺がんが中心であるというような形で、ついついそれだけが目に行きがちですけれども、
それ以外についてはどの程度考慮するべきだと思いますか?

松崎:
放射線に被曝してどんな病気が起こるのか?っていうことは、
最初に原子爆弾の被害者の方をずっと追跡してわかってきたのは、
やはりいろんな癌が増えてくると、
癌だけじゃなくて、心筋梗塞ですとか脳卒中、
ホルモンの異常の病気ですとか、そういう事も
学者の中にはうんと増えてきたというデータが最近出てきていますね。

ですからどうも、
癌だけじゃなくて、普通のいろいろな病気も随分被ばくで増えるというのがハッキリしてきて、

それが決定的になったのは、チェルノブイリの事故の後の、またいろいろな疫学調査が行われて、
一番インパクトがあったのが、子どもさんに絶対ない甲状腺がんが沢山出てきたという事で、
甲状腺がんが、ま、強調されているんですけれども、
肺がんですとか乳がん、
大人がなる乳がんも放射線被ばくでチェルノブイリでは増えてきました 
若い白血病も増えましたし、
で、それ以外にですね、やはり心臓病とか脳卒中
それから、認知症とか精神疾患
そういう、癌ではないけれども、非常に生活の質を落とすような病気も
放射線被ばくによって随分増えるというような事がわかってきました。

で、早期老化
早く年を取るという言葉を当てるんですけれども、
早期老化現象というのが放射線被ばくでは起きるんだろうと言う事が
チェルノブイリのいろいろな経験で分かってきました。

とりわけそういう現象が強く表れたのが、
チェルノブイリの原発事故を収束させるために
数十万人の軍隊を中心とした労働者が作業をした訳ですけれども、
リクビ ダートルと呼ばれる人々ですけれども、
その方達が、癌も多かったけれども、心臓病も、それから認知症なども
その後どんどん、どんどん出てきたという事も分かっていますので、
放射線被ばくというのは癌だけじゃなくて、がん以外のさまざまな病気をどんどん増やす
そういう影響があるんだという、そういう認識が広まってきていますよね。



Sawada:
そういった中でいろいろな検査、
今回福島県で行われた小児の甲状腺異常検査が行われて、
44%のお子さんに異常が見つかったというような事が出てはいるものの、
たとえば今回そういった方が、手紙を、検査結果を受け取ったなかで、
「あなたのお子様にはしこりがございますよ」みたいなもがくるんですけれども、
それがまた「2年後に検査しましょう」と。
大変、なんか聞いていて悠長だなぁと、
本当に真剣に考えているのかな?と思えるような事が多いのですけれども、
不安に思った方はセカンドオピニオンを求めて外に出なければいけない。
中ではなかなか受けてくれないなんていう話もありますが、
もうすこし、やっぱり、
本当になにかがあるのであれば、何かしらしたいというのが親の心だと思うんですが、
そんな中で、血液検査などをはじめとした、遺伝子の染色体異常検査。
多分これは費用も、コストもちょっとかかると思うんですけれども、
そういった物の方がむしろ有効ではないか?と言うような意見も出ていますけれど、
それについて先生はどう思われますか?

松崎:
おそらく遺伝子レベルでいろいろと詳しく調べてると、
放射線の影響がどれだけあったか
将来どういう病気が起きる可能性があるか、わかる時代になってくると思うので、
少なくても遺伝子検査ができるようなプロジェクトを早く立ち上げてですね、
一番望ましいのは、国レベルできちんと予算を出して、
いろいろな詳しい調査ができるような環境をつくることだと思うんですけど、

なかなかそういうことが難しいとしても、
たとえば何か、実はあまり多くなくてもいいですから、そういう遺伝子の分析をすれば、
そういう将来の病気を診断したり早く発見したりするメリットがあるという、
そういうアイデアをいろんな研究者の方にどんどん出していただいてですね、
そしてそのかかる費用を見積もって、
とにかく多くの方が心配しているような病気を早く見つけて治せるような検査や計画を
どんどんやってもらえれば、いいんじゃないかなと。

そういう事ではやはり市民の方々も、
それから被曝された方々の心配な民主的な動きというか、意欲的な研究者の方が、
もしそういうことの声を挙げればですね、結構その協力をすると思いますし、
国が動くのを待っていたんではなかなか、子どもさんの心配もすぐには晴れないと思うので、
ネットの力を利用していろいろなプロジェクトをどんどん立ち上げて、
みなさんの心配を減らす努力をしていただけたらなと、
そういうふうに僕も思います。



Sawada:
そうですね、先生が札幌で公演されたという事もありますし、
そういうところにも多くの方々が駆けつけるかと思いますし、、
今度たとえば11月18日、ちょっと定員はいっぱいだと聞いているんですけれども、
医療者向けにですね、
オーストラリアの有名な先生が医療者向けに講演会というと結構な人数が集まるというような形で、
聞いているところによると、
良心ある医師という方も数多くいらっしゃるのかなというふうに思っていますので、
ぜひまた医師の方、また市民の私たちができるレベルで、
少しづつでも前に動くような言い活動をしていきたいと思いますんで、
また今後ともアドバイスの方よろしくお願いいたします。






comment 2
11.06
Tue

【ペイフォワード環境情報教室】
松崎道幸先生 2012年11月5日




Sawada:
今回は一般的にみなさんからのご質問がありますので、
この辺の疑問にお答えいただければと思っています。

一つ目は
福島他東北関東で、水道水から検出されている放射性物質が与える影響は?
これはやっぱり、お店で外食するとそちらで使われているでしょうし、
お風呂に入ったり、シャワーを浴びたりと、こういう素朴なところで疑問があるんですけれど、
こちらはどの程度気にしたらいいでしょうか?

松崎道幸:
放射能っていうのがもう、現地の上流に降り積もって、それがだんだん水になって出てくるわけですから、
これからも若干水道水が汚染されるという事は避けられないと思うんですよね。

で、今簡単に測れるのがセシウムだけなので、
他のストロンチウムだとか、他の放射性物質は全然、
「セシウムがでなければ他も大丈夫だろう」という感じで言われている訳なんですけれども、
水の、今政府が行っている基準と言うのは、「本当に安全かどうか?」っていうのは
誰も確かめたことはないし、
机の上の計算だけで、「おそらく大丈夫だろう」という計算で、基準がつくられているものですから、
それを飲んで将来完全に放射線障害が出ないという保証はまずないだろうと思うんです。

ですから、飲み水とか食べ物の放射能汚染の基準はいろいろと言われていますけれども、
僕自身は、311前の日本のいろんな食品とか水に含まれるセシウムなどのレベルを超えないようなものを、
食べたり飲んだりする事が、まず第一に必要じゃないかと思うんですよね。

だから、非常に「昔よりも放射能が多く混じったものを今、食べなければならないんだ」というふうに、
政府が311以後に言っているのは、非常に僕はおかいしいと思ってね、
で、汚染されてない飲料水とか食料が、ほんのちょっとしかないんならば、
それは赤ちゃんとか子どもにクリーンなものを優先して摂取してもらって、
大人の人は残念ながら汚れたものを食べるしかないという事になるかもしれませんけれど、
今の日本は、汚染されていない311前のレベルの割とクリーンな食料や飲料水も
簡単に入手できる環境にあるので、
僕の考えはとにかく政府の言う基準にあったものを食べたり飲んだりして大丈夫だ。というんじゃなくて、
出来るだけクリーンな飲料水とか食料を求めてそれを摂取するべきだと思うんですね。


Sawada:
そうですか、
そうしますと比較的放射性物質がでやすいと言われる食品、
たとえば、牛乳、お魚、シイタケ、海草、など、
これはどの程度意識して、もしくは、取得すら中止すべきかというところでいくと

松崎道幸:
もう、おそらくですね、東北地方、東日本の山菜、きのこなどは、
やはり放射性物質の汚染が割と多いと思いますし、
それから乾燥させて保存して食べるも
のは、余計に放射能が濃縮されますから、
当面は避けた方がいいだろうと思うんですよね。

それから、お魚などの海産物もですね、
今、結構福島から何百キロも離北海道の近くで獲れた魚でも、
セシウムが基準値以上に検出されて、どうなるかと言うのが結構心配なので、
本当に、放射能汚染が心配な方は、日本海側で獲れたものとか、輸入の海産物を食べるというふうに、
当分の間した方がいいのかもしれない
なというふうに思っています。


Sawada:
そうですか、
今回、水産省のホームページで、
この海の汚染と言うのが、実はしっかり公表されているんですけれども、
その中で100ベクレルといった基準を超えたものについては当然出荷しないという事でやっていますが、
ホームページを見るとですね、ホームページでしっかりと公表しているんですけれども、
100ベクレル以下のゼロから100までのあたりに、
随分汚染しているものがある
んですけれども、
世の中全般、100ベクレルを切れば安全であるというような風潮があるが故にですね、
なかなか、当然ニュースにも出てきませんし、
皆さんが水産省のホームページを見る訳じゃないので、気付かないというところがあるんでしょうし、
これはどういったもので、
この100ベクレルは切っているという事自体がどうかというところがありますけど、
たとえば、ドイツなんかは、26年前のチェルノブイリを受けてですね、
大人8ベクレル、子ども4ベクレルという基準を作っています。
この基準の設定というのはどうしたら…
自分でもう、基準を設定するしかないと思うんですけれど、
先生のお勧めとしてはいかがでしょうか?


松崎道幸:
おそらく国は「汚染のひどいものを食べる期間は数年で収まるだろう」という見通しで、
当面は1kgあたり100ベクレルとか、というものを摂取しても大丈夫だろう、
というふうにみてると思うんですが、
あの…実は、毎日10ベクレルずつ、食べ物とか飲み水で、
身体に摂取、セシウムを入れますと、
だんだん、だんだん、身体に蓄積して、最終的には千何百ベクレルで、  状態になっちゃうんですね。
そうすると、今の政府の基準のものを、限度いっぱい、もし何年間も食べていると、
実際には体の中には
1kg当たり数十ベクレルとか、数百ベクレル位のセシウムが溜まる危険があるわけですね。
そうなると、脳ですとか心臓ですとか、いろんな内臓の障害が   のように出てくる恐れがありますので、
そうなると、政府が言う基準にあっていれば安心して食べるというのは、
もう机上の計算で出したものにすぎないので、
実際にはできるだけ放射能汚染の少ないものを選んで食べていくという事が、
自分の身を守る一番のやり方
になるんじゃないでしょうかね。

Sawada:
そうですね、先生の著書の中にもありましたけれども、
内部被ばくは外部被ばくに比べてですね、
「直の症状が出るというよりは次の世代に対して出やすい」というような位置づけで、
ま、一部は分かりにくいような表現もあるかと思うんですけれど、
こういった中で、ご自身でなかなか気付かないと、
気付かないと当然症状が無ければというところがあると思いますけど、
どうしたらいいもんでしょうかね?

松崎道幸:
放射線被ばくは大量に一度に沢山浴びると、あら方の細胞が死んでしまうというふうになるんですね。
少しづつ長い時間被ばくを受けると、細胞が死ぬところまではあんまり行かなくて、
ただ、遺伝子が変質したままで生き延びて
その生き延びた遺伝子を持った細胞が将来癌を起こしたり、いろんな病気をもたらす。
それから、次の世代に変質した遺伝子が伝わって、いろんな障害を起こすという。

ですから、「線量が低いから、被ばく量が無いから、将来への害も少ない」というのは、
放射線被ばくの場合は、あたらないみたいですね、
ですから、「被ばく量が少ないから害が少ない」と考えたいところだけども、
実は、少しずつの被ばくをした方が、
後の世代に受け継がれる遺伝子の損傷の量が増えてくるだろう
と僕は思うんですね。
ですからそういう意味では外部被ばくそれから食べ物を通した内部被ばくも、
本当にできるだけ少なく少なく押さえるということが、
後で悔いを残さないためには重要なことだと思いま
すね。



Sawada:
そうですね、
結構私の友達なんかでもみなさん、気にしている方は気にしてるんですけど、
個人で気にするのはちょっと限界が出てきているところもありまして、
そうしますと、やはり、まずは測ること。
で、自分たちで測るのも限界がありますから、
やっぱり自治体等で、一緒に測ってもらえるように呼び掛けること、
また、ベクレルの事についても表示してもらうとか、
今回の基準自体をもう少し下げてもらうように要求するとか、
なにかもう少し次のアクションを起こしていかないとなかなか、これ、続かないですよね。


松崎道幸:
そうですね。
ですから、食品添加物ですとか、塩分がどのくらい入っているというのは、
普通の食品の表示は随分進んでいますのでね、
それに放射能の量が加わるというのは、ある意味で悲しいけれども、
それを判断にして食べていかなければいけないというような、
いやな時代になっちゃったなと僕は思いますね。


Sawada:
そうですね、本当にいやな時代だなぁと思うんですけれども、
いやな時代だからと言って耳をふさいで目を閉じてというわけにはいきませんしね、
次の世代のためになにができるのか?となると、
やはり私たちの世代がそういうふうに動いていかなければならないんでしょうね。


松崎道幸:そうですね。

Sawada:
今後もこういった形でいろいろとお話をお聴きできるればとおもいますので、
またよろしくお願いいたします。


ーーー


農林水産省
農畜水産物等に含まれる放射性物質の検査結果(随時更新)

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/index.html#01



第3回【ペイフォワード環境情報教室】
「放射能被曝と関係ないと断定すること自体が医学的に誤りだと思う」
10/24松崎道幸先生(内容書き出し)


第5回【ペイフォワード環境情報教室】
「避難とか疎開というよりも移住そのものを考える時期にきてる」
10/27松崎道幸先生(内容書き出し)





チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害 
科学的データは何を示している

松崎道幸
2012年03月 発売
核戦争防止国際医師会議 松崎道幸 合同出版 151p
1,680円(税込)送料無料









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10.28
Sun
【ペイフォワード環境情報教室】121028
松崎道幸先生Vol.005




松崎先生は現役のお医者さまで、
北海道反核医師歯科医師の会の代表委員を務められていて、
北海道原爆訴訟では原告側の証人として証言もされています。
今回ドイツの核戦争防止国際会議が出版した
「チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害」という著書が、
先生の改訳により日本語で紹介されています。


そんな松崎さんに放射線被ばくによる健康被害についてご意見を伺いました

SAWADA:
先生の今回の著書で、ドイツの医師団が出しております、
「チェルノブイリの健康被害」といった部分を改訳されて、
これは日本語訳で出されているという事がありましたけれど、
特にこういった形で改訳を出されようと思ったのは、
311で福島で事故が起きて以降といった事なんでしょうか?

松崎道幸先生:
そうですね、それまでは特別放射線被害のことを一生懸命やろうという事は無かったんですけれども、
311が起きた後に、首相官邸のホームページなんかを見ると、
「チェルノブイリは大したことが無かったから、福島もそんなに大変にはならんだろう」
という事が出てくるんですね。
それを見て「本当かな?」と思っていろいろと調べているうちに、
「官邸の言う事は違うんじゃないか」という問題意識を持ち始めて、
それからいろんな昔の重なりで、
チェルノブイリののいこうしないデータを翻訳するというチームを作って出版をした。

ですからある意味では偶然なんですけれども、
自分ではやっぱり、結構大変な時に「政府はちゃんとものを正しくしてるのかな」という
ところの問題意識が何時もあったものですから、その辺を調べていったら、
どうも・・・随分  というのが分かってきて、
だんだん、 の方になってきたわけです

SAWADA:
そうですか、
今回1年半経ちまして、福島には子どもたちが約30万人いるといわれてて、
そのうち約3万人ぐらいしか避難できていない。
すなわち27万人がまだそちらにいらっしゃるといったかたちで、
みなさんそれぞれのご事情があると思いますし、
多分判断基準としてですね、危険かもしれないし、危険じゃないかもしれないといったところで、
大変親御さんは悩まれているかと思うんですけれど、
そういった中でやっぱり当初、随分情報としては過小評価されていたのかな、と言うのを感じるところで、
先生、今回こうやって改訳されたことを踏まえてですね、
先生からのメッセージとしてどういった形でこういったチェルノブイリの経験というのを、
今回福島の形として生かしていきたいか、というようなメッセージを頂けますか?


松崎道幸先生:
チェルノブイリは、被ばくした子供たちが、
普通はこどもにはほとんど起きないような甲状腺がんというものをいっぱい発症した。
もうひとつは、なんかわからないんだけれども、子どもの体調が悪くなる。
放射線被ばくというとほとんどがん以外の事は一般の方は思い及ばないと思うんですけれども、

実は、
心臓病とか精神疾患とかいろんな病気が起きることがチェルノブイリでは分かってきたんですけれども、
どうも子どもたちが甲状腺がんに侵されるとともに、
とてもその、体調不良になって通常の生活ができなくなっているという
そういう状態が、ま、見えてきたんですね。

で、じつはその、
福島県でいうと中通り、福島市とか郡山市がある地域の今の土壌汚染度というのは、
実はチェルノブイリの子供たちが住んでいた地域の汚染度と大体同
じで、
ですから、同じように放射線の汚染が起きているところにずっと住んでいると、
ひょっとすると
チェルノブイリで起きたことがそのまま福島でも起きるかもしれないという心配がすごくあるわけですね。

で、チェルノブイリでは福島の場合とは違って、
牛乳とか食べ物は汚染されたものを福島の子どもたちは食べなかったはずだと。
だからチェルノブイリの子どもと同じ事が福島で起きる筈がないと、
大方の人達が考えていたんですね、1年前は。

で、もうひとつ、甲状腺がんというのは、
ヨウドが足りなくなると非常に起きやすいというのもありまして、
チェルノブイリに比べれば日本の子供たちは海産物を沢山食べますから、
ヨウド不足はあんまりないから病気が起きる心配はないからと、
全体から言ったらチェルノブイリみたいにいろんな事がどんどん起こるという事にはならないんじゃないかと
ま、考える方が多かったんですね。

僕自身はですね、いろんなデータを見て思うのはですね、
人類でまだ2回目なんですね。
こんなふうに放射性物質がワッ!とばら撒かれて、それにさらされた子どもたちがどうなるか?というのは
1回目がチェルノブイリで、2回目が福島で。
だからまだ人類は1回しか経験していなかった事態なんですね。

ですから、1回目の事態を想定して、2回目はそれよりもひょっとすると放射線被ばくが少なそうだから、
そんな大変なことは起きないんじゃないかっていうのは、
ちょっとその…「早とちり」かなと

放射線というのは放射線に弱い人と強い人がいるという事がこの頃はっきりしてきていて、
いま日本人以降、チェルノブイリ周辺の人々と、放射線に対する抵抗力というのはどうなのか?
という事は分かっていない。

それからあと、子どもたちの甲状腺がんの事を考えると、
最初の1週間の時に、どれだけ放射性ヨウドが子どもたちの身体に入っていたかというのは
実は日本ではほとんどはっきり分かっていないんですね。

ですので、そういう二つの事を考えると、チェルノブイリの知識だけで、
福島の子供たちの将来の健康状態を確実に予測することはできないだろうと僕は思うんですね。

そういうふうにいろいろと考えているうちに
実はその、実際に、10ミリシーベルトとか20ミリシーベルト位の低線量被ばくで
果たして人間は病気が増えるのか?癌が増えるのか?増えないのか?ということが、
去年から今年になって非常に論争になったんですね。

実は福島市や郡山市はこの1年半で、
もう15ミリシーベルト、そこに住んでいらっしゃる方が被ばくしている
ことになって、

15ミリシ―ベルトの被ばくというのはですね、
原爆被爆者のデータとか、それをもとにICRPというところが計算したリスク評価をみるとですね、
まぁほとんど癌も増えない、増えるかどうかも分からない位のレベルだから、もう心配ないと。
今たとえ10ミリシーベルトまで積み重なっても、
ほとんどその、あるような健康被害はないと言われていて、
それに賛成する科学者の方も結構多いんですけれども、

実は日本の原子力発電所の労働者20万人の健康調査ですとか、
それからこの1年 発行された医療被曝ですね。
病院で治療とか検査のためにレントゲン検査をするという、で、被ばくすると。
それでどれだけ癌が出るかという報告がされたんですけれども、

それを見るとですね、どうも10ミリシーベルト被ばくすると
やはり有意に4%ぐらいがんのリスクが高まるようだというのが分かってきたんですね。

で、癌のリスクが4%有意に高まるっていうのは、
実はもともとのICRPとか、原爆被爆者のデータでは
100ミリシーベルト以上被ばくしないと起きないはずの健康被害なんですね。


ですので、いまの福島の中通り付近に住んでいらっしゃる子どもさんも、それから大人の方々も、
ひょっとするともうがんのリスクが何%か上澄みされているんじゃないかという心配が、
僕は非常にその最近のデータを見聞きして心配を持っているんですね。

ですので、理論的に言うと、
日本政府が、日本の原発労働者の健康調査というのをやってますけれども、
政府がやったという調査、それから
しっかりした医学雑誌に掲載された医療被曝のデータなんかをきちんと見るとですね、
やはり、今、福島で避難しないでそのまま被ばくを、
10ミリシーベルト、20ミリシーベルトの被ばくを受け続けるという事は、
やはり、僕自身はもうすみやかに避けなければいけないんじゃないかという考えになったんですね。

ですから、避難とか、疎開というよりも、
もう、移住そのものを考える時期にきてるんじゃないかと、僕は思います。


長くなりましたけれども、これが僕の今の考えです。


SAWADA:ありがとうございます


ーーー


第3回【ペイフォワード環境情報教室】
「放射能被曝と関係ないと断定すること自体が医学的に誤りだと思う」
10/24松崎道幸先生(内容書き出し)




チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害 
科学的データは何を示している

松崎道幸
2012年03月 発売
核戦争防止国際医師会議 松崎道幸 合同出版 151p
1,680円(税込)送料無料



【内容情報】(「BOOK」データベースより)
チェルノブイリ原発事故がもたらした健康影響を検討した240余の研究を評価。
原発事故による健康被害に適切な対策を講じるための必読書。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 はじめに
第2章 リクビダートル
第3章 乳児死亡率
第4章 遺伝性障害・催奇形性(奇形)
第5章 甲状腺がんとその他の甲状腺疾病
第6章 全がん・白血病
第7章 チェルノブイリ原発事故によるさまざまな疾病
第8章 政府および公的機関によるチェルノブイリ事故の影響の卑小化

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
松崎道幸(マツザキミチユキ)
1950年稚内市生れ。北大医学部卒。深川市立病院内科部長。日本禁煙学会理事。
医療九条の会・北海道副幹事長。北海道反核医師・歯科医師の会代表委員。
厚生労働省「喫煙と健康問題に関する検討会」委員として「タバコ白書」刊行に協力。
受動喫煙訴訟・北海道原爆訴訟で原告側証人として証言
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)





comment 2
10.25
Thu

【ペイフォワード環境情報教室】Vol.3
「被ばく防御コース」松崎道幸先生


2012年10月24日

Sawada:
第3回目の今日は北海道深川市立病院の松崎道幸先生をお迎えしております。
松崎先生は現役のお医者さまです。
北海道反核医師歯科医師の会の代表委員を務められていて、
北海道原爆訴訟では原告側の証人として証言もされています。
今回ドイツの核戦争防止国際会議が出版した
「チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害」という著書が、
先生の改訳により日本語で紹介されています。

そんな松崎先生に放射能被ばくによる健康被害についてご意見を伺いました。


松崎道幸先生
ちょうど、結局、広島・長崎の原爆被害の後にチェルノブイリがあって、
そして今回福島があったと。
それまで原爆補償という「被ばく者の原爆症を認めよ」という裁判の手伝いをしていた位で
その頭でチェルノブイリの被害をどういうふうに解釈するのか、というので、
ま、いろいろと、
「このデータはホントかいな?」とかいろいろと悩んで、
悩みながらもとにかく翻訳すべき物はして、
そしてその、走りながら考えていこうっていう感じで考えていたんですね。

そのあと、日本の原発労働者の健康調査結果だとか、医療被曝してのデータが出てきたので、
結局チェルノブイリがちょうど、広島長崎と福島の間にあるんだけど、
どうもチェルノブイリで起きていると言われていることが、広島長崎よりも随分被害が大きいようだという、
この違いはなんだろう?とずっと不思議だったんです。

それで今回原爆労働者の外部被ばくのデータを見て、
ああ、チェルノブイリで起きているっていう事は、ま…本当のことだっていう事がわかってきて、
逆に言うと、広島長崎で起きたことがどうも小さく報告されていたような、
過小評価されていたんではないかと、
それで、最初にチェルノブイリの状況に僕が抱いていた違和感というものが、
それが今回、やっとそのデータが出て、チェルノブイリで起きたことが今
日本の原発労働者とか、医療被曝の問題で、ま、やっぱり起きているという感じで問われ直しているのかと、


Sawada:
先生、今こういうね、先生といったお立場で、真実をなるべく伝えたいということで、
本も書かれていて、こういうところにも出て下さるという事なんですけれども、
先生のお立場のようなところでなんかこう、困るような事は特にないんでしょうかね?

松崎道幸先生:
一応、原爆訴訟の時も原告側の証人として、証言して、
結局は嘘をつかなければいいんだと。
粛々とですね、医学的な科学的なデータを基にしてしゃべるという事で、
嘘をつかなければどういう立場でも大丈夫だろうと
もし何かを言われるんだったら、それはその時のことで、失うものはないので、もうw

Sawada:そうですかwありがたいですもう・・

松崎道幸先生:そんな感じですよね、ええ。

Sawada:
そうですか。ちなみに福島件では山下俊一氏はじめですね、通達が出ているという噂があってね、
放射能に起因するという事を因果関係がハッキリしないものについては、
そういう事を書いてはいけないし、表現してもいけないというような、
実質、禁止令的な事が出ていて、
多分、一般的なお医者さん、大きな組織に属していないとかは、
それが放射能由来であるという事を証明できないお医者さんが大多数でしょうから、
そういう場合に、放射能かもしれないけれど、
それが起因しているという事を明快に立証できなければ言えないと、
言っちゃいけないと、いうものがあるという…

松崎道幸先生:
それは、被ばくのせいかもしれないし、ないかもしれないけれども、
「両方の可能性があるよ」という事はやっぱり言う必要はあるだろうし、
それから100%証明できなければ、逆に
「放射能とは全然関係ない」なんて言わなければいけないという事になりますよね。
だから否定も肯定もできない段階では両方の可能性があるという事は普通に言いますし、
言わなきゃいけないと思うんですよね。
それが放射能被曝と関係ないと断定すること自体が医学的に誤りだと思うんですよね。

Sawada:逆の事も証明できないという事ですよね?

松崎道幸先生:
そうです。
ですから「可能性は否定できない」というような言い方でよく言いますけれども、
もともと禁煙運動、減らす運動をやっていたので、
児童喫煙で肺がんになったり具合が悪くなった時の裁判をやってて、
その時に意見書を書くんですけれどもね、
受動喫煙で具合が悪くなったというんで、
患者さんの身体に別に受動喫煙の印がある訳じゃないんだけれども、
受動喫煙でもこういう病気が起き得るんだという意見書でいくわけですよね。
100%の証明なんかはできない訳なんだけれども、
とにかく「医学的には受動喫煙が相当絡んでいると考えられる」という感じで意見書を書くわけですね。
ですから福島の場合も、やはりその、
「確定は出来ないけれども可能性はあり得るんだ」という事は言う必要があるだろうし、
その100%でなければ放射線の「ほ」の字も言ってはいけないっていうことは、
逆に言うと全く間違っていると思いますけれどもね。

Sawada:
そうですか、ありがとうございます。
松崎先生には本番組の「被ばく防御コース」の主任講師として、これからもご登場を予定しています。
その他コースとして、原子力、食品安全、次世代エネルギーなど、
今私たちが本当に必要な環境情報を定期的に発信していきます。




ーーー関係ブログ

「今、福島の子どもたちになにが起きているか?」松崎道幸医学博士
2012年5月19日
<上記意見書より一部抜粋>

甲状腺
1.平均年齢が10 才の福島県の子どもの35%にのう胞が発見された
2.長崎県の7才から14才のこども250人中、
  甲状腺のう胞が見られたのは0.8%(2 人)だった(山下俊一氏調査)
3.甲状腺のしこりやのう胞は、生まれた時はほとんどゼロだが、5才過ぎから徐々に増え始め、
  20 才になると10 人に一人が甲状腺にしこりやのう胞が出来る
4.チェルノブイリ地域の18歳未満のこどもの甲状腺のう胞保有率は0.5%だった。
  (日本財団調査)
5.福島調査の「のう胞」保有率は、過去のどの調査よりも高率である

呼吸機能
セシウムによる高汚染地域に住み続けたこどもたちの肺の働きが悪くなっている
一秒量が150cc 減る→5 年から7 年位肺が早く老化する、あるいは成長しきれなかったことを意味します。

福島市と郡山市など中通りのすべての地域は、「低」と「最高」の中間の汚染度になっています。
したがって、現在福島の浜通りと中通りに住んでいる子どもは、
肺の働きが数年早く低下(老化)するおそれがあることになります。

骨髄機能
放射線被ばくで血液を作る働きが落ちて、白血球が減ったり貧血になる
汚染の高度な地区(350~879 キロベクレル/㎡)の子どもは、
汚染の少ない地区(29~112 キロベクレル/㎡)より20%近く白血球数が少ない(5810 対6870)ことが
分かりました。血小板数と赤血球数も5~10%ほど少なくなっていました。
したがって、
現在福島の浜通りと中通りに住んでいる子どもは、
血液を作る骨髄機能が長期間妨害されるおそれがあるということです。
白血球が減ると、細菌やウイルスに対する抵抗力が減ります。
赤血球が減ると貧血になりやすくなります。
血小板が減ると、怪我をした時に血が止まりづらくなります。



「完全に制御不能です」ヘレン・カルディコット博士(内容書き出し)

上記ブログ後半に転記してある
ヘレン・カルディコット博士が2011年4月30日ニューヨーク・タイムズへ寄稿した文章。
「安全な被曝量というものはない」は松崎道幸医師が翻訳協力をされています。





チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害 
科学的データは何を示している

松崎道幸
2012年03月 発売
核戦争防止国際医師会議 松崎道幸 合同出版 151p
1,680円(税込)送料無料



【内容情報】(「BOOK」データベースより)
チェルノブイリ原発事故がもたらした健康影響を検討した240余の研究を評価。
原発事故による健康被害に適切な対策を講じるための必読書。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 はじめに
第2章 リクビダートル
第3章 乳児死亡率
第4章 遺伝性障害・催奇形性(奇形)
第5章 甲状腺がんとその他の甲状腺疾病
第6章 全がん・白血病
第7章 チェルノブイリ原発事故によるさまざまな疾病
第8章 政府および公的機関によるチェルノブイリ事故の影響の卑小化

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
松崎道幸(マツザキミチユキ)
1950年稚内市生れ。北大医学部卒。深川市立病院内科部長。日本禁煙学会理事。
医療九条の会・北海道副幹事長。北海道反核医師・歯科医師の会代表委員。
厚生労働省「喫煙と健康問題に関する検討会」委員として「タバコ白書」刊行に協力。
受動喫煙訴訟・北海道原爆訴訟で原告側証人として証言
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)









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