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06.08
Sat
2013年5月22日【京都】
『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』刊行記念
―チェルノブイリから学ぶ― アレクセイ・ヤブロコフ博士講演会



主催 京都精華大学 人文学部 細川研究室
司会 アイリーン・未緒子・スミス
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01:40~

アイリーン:
それではまず質問を二つします。
今までチェルノブイリに関する報告書が数万点、沢山出たという事ですけれども、
そこから5000お選びになったという事ですが、
5000を選んだ基準は何だったのか?

もうひとつは、
WHOとIAEAのレポートが何故間違っているのか?
どういう問題があるのか?という事を統計の数字を変えたのか?
その辺の説明をもうちょっと詳しく教えていただければと思います。


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ヤブロコフ:
まず私たちが本をつくるにあたって選んだ、参考にするとして使おうと選んだ基準でありますけれども、
汚染された地域とそうでない地域との比較というものが実際反映されていたというものを、
選ぶ際には基準にしました。

私たちが選んだのは約5000点であるという事は、これまで紹介されてきた通りですけれども、
ただ、汚染されている地域とそうではない地域との比較と、その違いを如実に示しているというのは、
この5000以上、研究の成果というのはあがっているんですけれども、
5000以上のものを私たちが見ていく、読んでいくというものが
物理的に不可能であったから、5000に限定したという事です。

さて、WHOの2005年の報告書でありますけれども、
事実を改ざんしているという事ではありません。
ただ、数多くの事実を黙殺しているという事
であるわけです。
つまり、科学的な治験として十分に証明がされていないという理屈を彼らは付けて、
彼らは多くの事実、多くの調査結果というものを黙殺している訳であります。

それに対して私たちは、たとえば乳幼児の死亡率というものが高くなったというのは、
各国政府の公の統計であると、
これに対して、これが学術的な調査ではないというような理由を
こじつけると、押し付けるというのはおかしくないですか?と反論してもですね、
それに対するWHOの回答無いわけです。

この2005年のWHOのチェルノブイリの事故についての報告書は大変ぶ厚いものですけれども、
私たちが挑む、そういった議論からすべて彼らは逃げている訳ですね。

で、アメリカの裁判所で証言をするにあたって、人々が宣誓をします。
さらに私が述べるのは真実であり、真実のみであり全ての真実を語りますと言って宣誓する訳ですけれども、
それに例えるとWHOがこの報告書で語っているのは、部分的な事実であり、
全ての事実ではないし、また、真実に限られているという訳でもないということです。


また、甲状腺の癌に関してでありますけれども、
チェルノブイリの事故から3年4年経って、甲状腺がんの罹病率というものが目立って増えた訳です。
それに対してWHOは「データが不十分である」と言って、この関連性を認めることを拒否したわけです。

そして8年経ってようやく
「確かに甲状腺がんの罹病率は増えました。チェルノブイリの事故の影響が認められます」
というふうに認めた訳です。

白血病に関しても同じでありました。
事故から2年、3年経って、汚染の著しかった地域でですね、
白血病の罹病率というものが高まったわけですけれども、
やはり当初WHOは「データが不十分である」と言って、関連性を認めることを拒否しました。

これがWHOの典型的な行動の様式でありました。



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アイリーン:
そしたらまた質問を続けたいと思います。
福島から避難された方、お子さんたちと避難した方で、今関西にいる方なんですけれども、
このように一遍被曝したので、東京都か埼玉、神奈川の方面にいま住もうと思っているんですけれども、
一度汚染を受けたので、どういうふうにしても大丈夫なのか?
関西に今、ここに残った方がいいのか?
どちらが安心で正しい選択なんでしょうか?
という御尋ねが1点。それに加えて私の方から

IPPMW核戦争防止国際市会議が、去年の8月29日に声明文を出してまして、
そこの中では
1ミリシーベルトから5ミリシーベルトの汚染区域にいる小さい子どもを持つ人たちは、
避難をする事をできるようにするべきだと。
避難の権利が与えられるべきだということを提言しているんですけれども、
それについてもご意見を伺いたいなと思います。

ヤブロコフ:
今中先生ですけれども、この会場にもいらっしゃいますし、
日本において、その放射性物質による汚染という事の最も優れた専門家であると
私も思っている先生ですけれども、こうおっしゃいました。
「私は誰に対してもレコメンデーションという事は出来ません」ということです。
私が説明できることは汚染について、そしてどうすればいいかという事についてです。

つまり私が言う事が出来るのは、汚染の状況、汚染のレベルはどうであるか?ということだけであります。
しかし、当然ながら一人一人にとって重要なのは「被ばくの程度がどの程度か」という事であります。

この地域の汚染度はどうであるかという事は、その放射性核種それぞれを測るという事も出来ます。
ですから、汚染度というのは客観的な数字というものでわかる事、理解することができるわけです。
でも、個人個人の被曝のレベルというものを測るというのはとても難しいのです。

つまり、「汚染された地域に住む」という事によって、
大変高い線量を浴びてしまうということもありますし、
かなり汚染が激しい地域であるけれども、
その線量を浴びる量というのがかなり限定されるというケースもあるのです。

つまり同じ地域に住みながら、どれだけの放射性の核種を体内に取り込んでしまうのかという事は、
個人個人によって違ってくるという事が現実にあるわけです。
つまりどういう水をどれだけ飲むのか?
何をどれだけ食べるのか?
たとえば牛乳であったらどういった牛乳をどれだけ飲むのか?
葉物野菜はどういったものをどれだけ食べるのか?
根菜類であればどれをどれだけ食べるのか?といったことであるわけです。

ですから、避難という事になりますと、
これは、国、政府として管理のしやすい行動ではあるけれども、
しかしながら疑問が全く残らないというものではありません。
答が見えない、解決が出来ない問題というものは、いくつもあるわけです。

つまり、避難を実際にしたけれども、ですね、
避難をする必要がなかった。
浴びた線量は避難する必要がなかった線量であったという人々もいるし、
避難する必要が無いと言って残った人の中にはですね、
本当は避難をしなければいけないほどのものを浴びてしまったという人も居るという事が
現実にあるわけです。

そして事故発生後の数日間というものでありますけれども、
それ以降の期間に比べますと、何千倍もの線量を浴びてしまったというケースが実際にあると。
あり得るし「ある」ということも、これも真実であります。



つまり屋外に出ていたのが、10分であったか20分であったか、2時間であったかという事でも
相当の差が出てきてしまう訳です。
屋内にいた人はその間2時間屋外に出ていた人よりも100倍または数100倍ですね、
浴びた線量が少ないという事があり得ます。

そして「その後に平均線量と言っても意味がない」という事はお分かり頂けると思います。
これからチェルノブイリの例をひとつご紹介いたします。

チェルノブイリの事故の後、強制的な疎開というものが行われました。
半径30km圏内の人は全員強制的な疎開をされた訳です。
そういった疎開をした人、避難民でありますけれども、
一人一人がですね、程度は多少違いがあっても、それなりの治療も含めて医学的な観察がなされました。

そしてこれは先程の、
「関西に残った方がいいのか、首都圏に移った方がいいのか」
という質問に対する間接的な答えになるかと思いますけれども、
この30km圏内から疎開をしたと、強制的に移住をしたひとのなかで、
新たな移住先というのは放射線からほぼクリーンな地域だったのですけれども、
そういった、全くクリーンな所に住んでいても、
事故から10年後、15年後の健康状態をみてみますと、
1平方kmあたり15キュリーのところに住み続けた人よりもですね、
遥かに健康状態が悪かったというデータも出ているわけです。

先程の世界のIPPMWの人達の声明文の内容というものには私は賛成をいたします。
つまり、子どもであればですね、
平均1~5ミリシーベルトといったところには住むべきではないと私は思います。


しかしながら、放射性物質に汚染された地域に住み続けていながらもですね、
健康を保っていくという事は可能ではあります。

これは、何を食べるのか、何を飲むのかといったことを、
きちんと選んで食べて飲んでいくと。

そして体内の放射性物質がどれだけであるのかという事を定期的にチェックをし、
そして、体内の放射性の物質というものが増えたらすぐにでも、
すぐに排出するという措置を撮るという事をすれば可能であります。

ただこれは相当にお金がかかる事であり、
そしてそもそも大変なことであるわけです。



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細川:
では私の方からいくつか質問をしていきたいと思うのですが、
今回出版された本を拝見して非常に印象的なのは、
人間の健康影響という事も非常にいろんな例や数字が紹介されていますけれども、
同時に植物への影響、それから動物への影響、
それから私が非常に印象的だったのは微生物、ウイルスへの影響と言ったものが、
非常によく研究報告されていて、それを非常に広い範囲で紹介していただいているというのが、
非常に印象が強かったんですが、
これは、最初からそういうような調査や研究に注目されていたのか、
それともだんだん最近注目されるようになったんでしょうか?

ヤブロコフ:
さて、ソビエト連邦でありますけれども、核の関連施設というのはいくつもありまして、
当然これは大変厳密な機密施設であったのですけれども、
その周辺の調査、これもまた一般からは完全に機密な形でありましたけれども、
そういった調査というのはもともと盛んに行われていました。

そういう蓄積がありましたので、
チェルノブイリの事故が起きてすぐにさまざまな調査研究が始まりました。
これはチェルノブイリ原子力発電所の事故が
森林にどういう影響を与えたか、
農業にどういう影響を与えたか、
漁業、そして魚全般にどのような影響を与えたか、
そして今後どういう影響が及ぶか?という事。
そしてまたハンティングの対象となった動物にどういう影響が及んでいるのか?という事であります。

たとえば、森林に対する影響という事では、
一つはまとまった本になっている研究。
私が知っているだけでも5冊、6冊ありますので、
実際にはもっと数が増えている訳です。

という事で今言ったような研究は盛んに行われた訳ですけれども、
また、動物、動物界に対する影響というもの、調査研究というのは沢山行われました。

ただし、1991年の暮にソビエト連邦が崩壊してから、5年6年経ちますと、
こういった調査はほとんど行われないようになってしまいました。

では、ソビエト崩壊から5年6年経ってそういった調査が行われなくなった理由ですけれども、
まず、ソビエトが崩壊してのちのそれぞれ独立国家となった国々の予算が少なかったという事もあります。
しかし一番大きな理由は政治的な理由であると思います。

つまり政府として、
事故の後遺症、事故の影響が深刻であるという事を政府として公の形で知ってしまいますと、
対策を取らなければいけない。
当然ながら相当な国の予算を支出しなければならない訳ですけれども、
それをそれぞれの政府がしたくなかったからです。

やはりこういった核施設に関しまして、原子力の施設で大惨事が起きますと、
これは大変高く付く事になります。

ベラルーシでありますけれども、事件後10年間に渡ってでありますけれども、
国の予算の20%をチェルノブイリの事故対策に使わざるをえませんでした。

ウクライナでありますけれども、人口が約5000万人、
大体日本の人口の約半分と考えていい訳ですけれども、
ウクライナは政府の予算の5%をチェルノブイリの事故対策に使わざるをえませんでした。
ロシアに関して、国はもっと規模が大きくなりますけれども、
人口は日本より若干多い国ですけれども、
予算の1~1.5%を事故対策に使わざるを得なかった訳です。
ですからこれに加えてですね、追加的に政府の予算を事故対策に、
事故の影響対策に使わざるを得ないという事は、それぞれの国の政府は好まなかったわけであります。
だからこそベラルーシの大統領のアレクサンドル・ルカシェンコがかなり最近でありますけれども、
「もうチェルノブイリの事は忘れましょう」というふうに宣言したわけです。

もちろん政府がチェルノブイリの事を忘れるということは可能でありましょう。
しかし社会は忘れることはできませんし、人々も忘れるべきではないと思います。
と言いますのは、遺伝学者達が言うところでは、
これから7世代に渡ってチェルノブイリの影響というものが実感されるであろうと言っているからです



そして現在チェルノブイリの事故の影響が動植物にどう及んでいるかという事を調査しているのは、
この旧ソ連以外の専門家だという状況になっています。

サウスカロライナ大学のティム・ムソー教授は
20年以上に渡ってチェルノブイリの事故の影響を調査をしております。
そしてまた福島に関してもですね、動物界、
特にクモなどの昆虫、植物、鳥への影響というものがすでに調査がなされていて、
その結果でありますけれども、チェルノブイリの事故に劣らない影響が出ているという結果であります。



細川:
関連してもうひとつ、今の事に関連して、もうひとつお尋ねしたいんですが、
日本でも野生動物の被ばく状況についての具体的な研究というのは、かなり去年ぐらいから増えていて、
最近私が聞いて非常に印象を受けたのは、
ニホンザルの被ばく量、被ばく量というか、体内のセシウムの蓄積量を、
ちょうどニホンザルは人間よりも野生のものを沢山食べるという事で、
被ばく量で言うと、チェルノブイリの子どもたちぐらいの内部被ばく量になっているという事で、
白血球の数が減少したり、染色体の異常があったりというような事が日本でも報告されています。

「福島のサルの異常はセシウムによるものと考えていい」
「チョウに表れた変化は放射性物質が原因とみて間違いない」

ヤマトシジミのほか、ニホンザルの研究結果など中日新聞の記事



で、こういった一つ一つの報告やデータというものを、
国際的な目で見て評価していく。
日本ではこういうものは報告はされても、
報告書の中に眠ってしまってあんまり共有されないという事が多いんですが、
国際社会の中でこういうデータを共有して評価していくというには
どのようにしていったらいいとお考えですか?


ヤブロコフ:
良い質問であります。

どうすればいいのか、
どうすれば国際的な世論の注目を引き寄せる、浴びるようになるのかという事でありますけれども、
たとえば先程ご紹介したWHOの本部の前で6年間ピケを張っている
WHOとIAEAの恥ずべき協定に、反対するピケを私たちは張っている訳であります。
そして、ティム・ムソー教授でありますけれども、
可能な限り、あらゆるその動物関係の雑誌などに、記事、そして論文を発表している訳です。


福島において、動物や鳥にどういった影響が及んで、すでに及んでいるかという事を発表している訳です。
そしてどれだけの反響を呼んでいるか?と言うと、反響は呼んでいないと思います。


つまり、研究者たちだけ、科学者たちだけでは、何かを動かすという事は出来ないと思います。
研究者・科学者が与えるべきなのは、市民社会に対して事実を与えるという事が必要であります。

たとえば福島県内において馬がすでに死ぬという事態が起こっているという事実があるわけです。
それを政治家につきつけて「解決をしなさい」と。
そのための国の予算も含めて資金というものを国が投入するべきだというように、そう働きかける。
それを彼らにやらせるのは、やはり市民運動、そして社会の力があって初めて可能な訳であります。

チェルノブイリの事故の後でも馬や牛というものが死んだという事がありました。
これは有名な、もちろん公になっている事実です。
ですから福島県内において、馬が11頭、あるいはそれ以上と聞いていますけれども、
「死んだ」という事は、これはとても危険なシグナルであるわけです。

ですから社会の人々が活発積極的に動いて、政治家を動かさなければいけません。
つまり研究者は事実というものを集めてそれを突き付けると。
その事実を受け止めた社会というものは叫び声をあげると。
そして政治家に圧力をかけて、対策を取らせると。
これ以外に考えられないと思います。


ーーつづく



アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(ベラルーシ)

日本の20年後をこの番組の中で考えるーチェルノブイリで急増する大人のがんー
(内容書き出し)

先月当選を果たしたルカシェンコ大統領は汚染地の再利用に動きだしています。
放射能を恐れ、人が住まなくなったゴメリ州の農地に新しい住宅を建てました。
ルカシェンコ大統領:
事故を忘れるのはよい事です。
代わりに私達が覚えておきますから。
政府は国民に恐怖を植え付けすぎたのです。

原発事故25年目の現実 「心臓障害」・・・医師の告発(動画・内容書き出し)
ベラルーシ ルカシェンコ大統領:
原子力発電所は不可欠だ。それがベラルーシで建設される。

チェルノブイリ事故後、
病理解剖で内部被ばくを研究したバンダジェフスキー氏の調査結果

アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(1994年より独裁体制)は
「ベラルーシ国内農地の4分の1が放射能汚染を理由に放置されていることは認めがたい」として、
バンダジェフスキーが逮捕された1999年に原発事故以来人々が避難していた汚染地への再入植を施政方針とした。





福島原発事故 生態系に影響与えていないのか
2013年5月30日放送 そもそも総研(内容書き出し)

ヤマトシジミとアブラムシの研究。




福島第一原発 飯舘村から 馬の異常死 相次ぐ
2013年03月25日
(一部抜粋)
今年になってから、この牧場に異変が起きている。
生後一週間から一ヶ月で死亡した子馬が14頭。元気に育った子馬は1頭のみ。
さらに、2月末から現在までに4頭の大人の馬が死亡した。
後ろ足を引きずるようになり、だんだん、歩けなくなり死亡してしまう。
みな同じ症状だったと細川さんは言う。
ー略ー
「事故が起こる前には、こんな事はなかった。放射能の影響以外考えられない」
「とんでもない事が起こり始めた。一刻も早く東電は賠償に応じて、解決して欲しい。
異常の原因をはっきりさせて欲しい」と細川さんは言った。
ー略ー
被ばくとの因果関係を解明する必要がある。
現在もこの牧場は毎時4μ㏜前後の放射線が出ている。


2013年6月2日
本日の「さようなら原発 北海道集会」で飛び出した、がんセンター名誉院長西尾正道氏の爆弾発言。
「飯舘村で次々に馬が死んだ。
解剖して放射性物質の量を計測したら、筋肉から2000bq/kg出た。
東北大学の先生は『大変な事だ』とデータを持っていってしまった」。
(※上記西尾先生の動画を探し中です)




チェルノブイリ原発事故から29年、次世代の子に影響か 5/4News23(文字起こし)


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福島 生態系に異変 原発事故の影響を調査

(2013年4月25日) 【中日新聞】【朝刊】

福島原発事故で放出された放射性物質が、
生態系にどのような影響を与えているかを検証する調査が進んでいる。
事故から2年余りが経過し、一部の動植物では放射性物質が原因とみられる変化も確認されている。
もちろん、それがそのまま人間に当てはまるわけではない。
しかし、生態系は人間の生活と不可分。調査から得られるデータを無視するわけにはいかない。
(上田千秋)



羽や脚短いチョウ


ヤマトシジミ1a
正常な個体

「科学に100パーセントはないが、チョウに表れた変化は放射性物質が原因とみて間違いない

事故2カ月後の一昨年5月から、
チョウの一種「ヤマトシジミ」への影響を調べている
琉球大の大瀧(おおたき)丈二准教授(分子生理学)はこう話す。

大瀧准教授の研究室はチョウを用いた研究が専門。
調査のきっかけは事故発生から間もなく、大学院生から
「ボランティアや炊き出しは他の人でもできる。私たちがやるべきことは生物への影響の調査では」
という声が上がったことだった。

ヤマトシジミ2
放射能で汚染されたエサを食べた結果、羽化の途中で死んだ個体(大瀧准教授提供)

早速、福島県の5カ所(福島、郡山、いわき、本宮の各市と広野町)と
茨城県の3カ所(水戸、つくば、高萩の各市)、
宮城県白石市、東京都千代田区の計10カ所でヤマトシジミを採取すると同時に、
地表から0センチ、30センチ、1メートルの空間放射線量も測定した。
これらは事故後に羽化しており、線量が高い所にいたヤマトシジミほど羽が小さいことが分かった。

子や孫世代についての調査では、さらに興味深いデータが得られた。

ヤマトシジミ3e
放射線の外部照射により片方の触角が短くなった個体(大瀧准教授提供)

異常のある雌と正常な雄から生まれた子や孫を調べると、
(1)羽化までの日数が長くなる
(2)目がへこんでいる
(3)脚が短い(4)羽がくしゃくしゃになっている
(5)羽の模様が不自然−など、異様な個体が多数確認された。
他の実験で突然変異誘発剤を餌に混ぜて食べさせたケースに似ていたという。

ただ、これだけでは放射性物質が原因とは言い切れない。
今度は福島県飯舘村(2カ所)と福島市、同県広野町、山口県宇部市の計5カ所で
ヤマトシジミの幼虫の餌になる野草「カタバミ」を採取。
それを沖縄で捕った幼虫に食べさせる内部被ばくの実験や、
個体に放射線を直接照射する外部被ばくの実験をした。

結果はカタバミに含まれていた放射性セシウムの量や、照射した放射線量にほぼ比例する形で、
異常な個体の割合が高くなっていた。

脱皮や羽化の途中で死んでしまう例も目立った。

こうした調査や実験の成果をまとめた論文は昨年8月、
英科学誌ネイチャーの関連誌「サイエンティフィック・リポーツ(電子版)」に掲載され、
英BBC放送や仏ルモンド紙に大きく取り上げられた。


だが、国内では批判も多かった。
インターネット上には、感情的に結果を否定するような文言が書き込まれていた。

大瀧准教授は「論文を読んでいないことが明白な批判が多かった」と振り返る。
「何でも最初から完璧にできるわけではない。
指摘を受けてまた実験をし、進歩していくのが科学。
根拠のある批判や指摘であれば、どんどん寄せてほしい」

免疫力 半減のサル

ヤマトシジミ4
住民が避難したため、民家の庭先まで下りてくるニホンザルの群れ=福島県飯舘村で

日本獣医生命科学大の羽山伸一教授(野生動物管理学)らのグループはニホンザルの被ばく実態を調べた。
先進国で野生のサルが生息しているのは日本だけで、羽山教授は
「人間以外の霊長類が被ばくした例はない。記録にとどめておくのが、科学的に重要だと考えた」と語る。

調査対象としたのは、福島第1原発から60〜80キロ離れた福島市西部の山林で捕獲され、
個体数調整のために殺処分となったサル。
筋肉1キログラム当たりのセシウム量は、
2011年4月時点で1万〜2万5000ベクレルだった。
3カ月後には1000ベクレル程度にまで下がったものの、
同年12月から再び上昇に転じる個体が多く見られた。


「サルは木の実やドングリなどを食べる。
冬はそうした餌がなくなるので、セシウムの含有度が高い木の皮を食べたのだろう。
明らかに内部被ばくしたと考えられる」

造血機能にも異常が確認された。
筋肉中のセシウムの量が高い個体ほど赤血球と白血球の数が減っていたほか、
免疫力が約半分にまで落ちていたケースもあった

事故後に生まれた子ザルでも同様の傾向が見られた。

青森県で捕獲・殺処分されたサル約60匹と比べると、違いは顕著だった。
青森のサルからはセシウムは検出されず、赤・白血球、免疫力とも異常はなかった。
福島のサルの異常はセシウムによるものと考えていい」と羽山教授は説く。

サルの寿命は約20年。
5歳ぐらいから出産する。
羽山教授は「少なくとも、そこまでの調査は必要」と話す。
「次世代への影響が心配だ。『放射線の影響は何もなかった』となればよいが、まずは調べないと。
サルは生物学的に人間に近い。将来的に役に立つことがあるかもしれない」

大瀧准教授や羽山教授の調査結果は先月30日、東京大農学部で開かれた
「飯舘村放射能エコロジー研究会」のシンポジウムで発表された。
同シンポでは、別の研究者たちから、イネや鳥類に表れた異変についても発表された。

福島の動植物の調査はこれだけではない。
環境省は一昨年11月、国際放射線防護委員会(ICRP)の指標を参考に
「哺乳類・鳥類」「両生類」「魚類」「無脊椎動物」「陸生植物」の
5分類、26種類の動植物を調査対象に指定。
大学や研究機関などと協力しながら、警戒区域とその周辺で調査している。

同省自然環境計画課の担当者は
「予算の問題はあるが、セシウム137の半減期である30年ぐらいは調査を続けていきたい」と説明する。

「人間との関連 考慮必要」

ヤマトシジミ5
「私たちの研究が、議論を続けるための材料になれば」と訴える大瀧丈二准教授=大阪府熊取町で

数々の調査が進んでいるとはいえ、生態系全体から考えれば、これまでに分かったことはまだ乏しい。
長い時間をかけて放射性物質の影響を見極めていく必要がある。

大瀧准教授は
「『チョウに影響があっても、人間には関係ない』と考える人もいれば、
『もしかしたら人間に関係するかも』と思う人もいる。
議論をしていくことが何よりも大切だ」と指摘し、こう提言する。

>安全であることと、分からないことは全く別のこと。
福島原発の事故以降、さまざまな場面で情報が出されなかったり、
データの裏付けもないのに『安全だ』と言い切ろうとするケースがあった。
だが、それらは科学的な態度とはいえない。

私たちの研究が理性的に思考していく材料の1つになればよいと思う」

ヤマトシジミ 羽の長さ約1.5センチの小型のチョウで、北海道以外の日本全国に広く分布する。
卵から成虫になるまで1カ月弱、成虫になってからは1週間程度生きる。
人間と生活空間が重なっているため、採集もしやすい。

ニホンザル 本州から九州まで広い範囲に生息し、
青森県下北半島のニホンザルは世界最北のサルとして知られる。
体長は50〜60センチ。寿命は約20年。




福島原発事故 生態系に影響与えていないのか
2013年5月30日放送 そもそも総研(内容書き出し)

そもそも総研、ヤマトシジミとアブラムシに関して放送

ヤマトシジミ被曝影響研究論文とドイツ報道(字幕書き出し)
論文発表後も日本では全く報道されなかった頃のドイツの番組





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