2014年2月14日
三田茂医師「関東の子どもたちの異常について」
放射線被ばくを学習する会(top page)
三田:
簡単に自己紹介を。
父が小平というところで開業したのが50年前で、医師会やなんかでも活動していまして、
晩年副会長をやっていて、
父は数年前に亡くなりましたけど、僕に後を継げと言われて、15年位位になるんですかね。
で、いろんな事をやってきましたけれども、やはり東京に住む者として、
「東京が地震でどうなるか」というのはとても気になっていたんです。
直下型もあるし、それから東南海地震ですよね。
地震の勉強を少しすると、浜岡原発が壊れた時にどうなるのか?というのは当然心配になるわけです。
「浜岡原発が壊れた時に放射能が流れてきて、東京に影響が出る」と、そういうシナリオというのは当然あるわけで、
そんなものは誰が考えてもちょっと調べればいろんな事が出てくると、
で、準備していたんですけれども、今回浜岡じゃなくて福島で東京が汚染されてしまったと思います。
準備していたものとして、東京の、特に優先順位としては子どもたち。
子どもたちだけが良ければいいという事ではありません。
全年齢の人ですけれども、
優先順位としては子どもたちを何とか守りたいという事で、3年間やってきましたが、
最初に結論みたいな事を言っちゃうけれども、
行政は動かせなかった。
教育委員会も動かせなかった。
役所も動かせなかったし、保健所もダメだったし、
医師会も別に嫌がられはしなかったけれども一緒にやってくれる人は誰もいなかったという事で、
東京でやることに限界を感じまして、
来月で(三田医院は)50年続きましたけれどもリタイアして、
西の方から、東京あるいは関東の人達に、保養とか、避難とかを呼び掛けるような事をこれからはしていかないと、
もう時間的に余裕はないかなと、
そう思ってそういう決断をしました。
今日は内容についてはなんにも打ち合わせはしていないですね、
医者として「皆さんがちょっと誤解をしているかな」とか、
それから「攻める方向性がちょっと違うのかもしれないな」と思う事がありますので
そういう事で知って頂いた方が今後の活動を、全然違うところをプッシュしてもしょうがないですから、
参考になればいいなと思います。
で、何はなくともまず甲状腺ですよね。
これは甲状腺のエコーの検査です。
やはり浜岡のことを勉強すると、チェルノブイリの時にヨウド剤をどう加えたか加えなかったかとか、
それから国際的に認められているのは甲状腺がんと白血病だけであるとか、
そういうことが分かるわけですよね。
日本人がどれ位甲状腺がんになるか?というと、
やはり「ヨウドの摂取量から考えて、チェルノブイリほどじゃないんじゃないか」ってなんとなく僕は思ったし、
今でも「そうなのかな」ってなんとなく思っています。
だから甲状腺をみなくていいって言っているんじゃないんですね。
甲状腺ばっかり気にしていちゃいけないって思うんです。
これは甲状腺の検査です。
これは8歳ぐらいの男の子の甲状腺のエコーです、超音波検査です。

大体どこでもこういうふうにやりますけれども、
まず下を見ていただきますと、首ですね。

甲状腺は首のところにあるけれど、甲状腺の部位で首を水平に切っています。
ここは表面です。
ここに黒く見えているのが喉ですね、呼吸をする、声が出るところ。
ここに丸く見えているのが右の頸動脈、総頸動脈。
これが左の総頸動脈。
ちょっと見えているのが頸静脈ですけど、喉があって首の両脇の頸動脈。
これ輪切りになっていますけれども、ここの間にある白いところが、
これが甲状腺の右葉、これが甲状腺の左葉、右と左ですね。
ここに見えているのが食道。
これが峡部 ですね、右葉と左葉を繋いでいる
で、今度は縦に見ると、ここが甲状腺です。

こっちが甲状腺の頭がわ、こっちが足側。
これが右葉の写真、これが左葉の、矢状断って言うんですが医学的に、縦に切ったというところですね。
こっちが頭側で、こっちが足側。
これが水平なんですね。
甲状腺の事を考えた時にですね、
やっぱり甲状腺の病気の事の全体像が分かっていないと、わかりにくいし、
"結節"と"のう胞"という言い方自体にちょっと問題があるんですけれども、
その辺のことを簡単に、講義みたいになっちゃうけれども言います。
まず甲状腺の病気というのは、大きく二つに分けて、
びまん性疾患と結節性疾患に分かれます。
びまん性疾患というのは、
甲状腺が全体的にどうなるという事ですね。
全体的に縮んでしまう、全体的に腫れあがる。
こういうのをびまん性疾患といいます。
結節性疾患というのは、
"全体が"ではなくて、「どこかに何かが出来ます」と。
たとえば顔にほくろが一つある。
こういうふうな感じで、全体としておかしい訳じゃないけど、部分的になんかおかしいところがある。
そういうのを結節性疾患といいます。
今これの話をしているのはですね、甲状腺を扱う超音波の学会があります。
それのターミノロジー(terminology:特定の分野の専門用語)ですね。
用語検討委員会というのがあって、そこで決めている言い方です。
結節性疾患が今回問題になっている訳です。

これは、その専門の先生たちの委員会によると、
結節性疾患を"のう胞性結節"と"充実性結節"に分けるというふうになっています。
"のう胞性結節"なんて、なんかおかしいんじゃないか?っていうふうにね、感じると思うんです。
医学的にはほかの臓器もみんなそうです。
のう胞みたいなものも結節なんですね。
これはびまん性のものに対する結節性のものという意味で、
実際に甲状腺の超音波のガイドブックなんかを見るとこういう分類です。
"のう胞性結節"と"充実性結節"。
これが多分、山下先生達が言う"結節"
これが多分山下先生たちが言う"のう胞"に一番近いんだと思います。
で、これはインチキをやっているという訳ではないです、たぶん。
その学会を作った本人も、
「のう胞性結節は2cm位を超えたところで問題が起きる」と言われている。20mmですね。
「充実性結節は5mmを超えた位から問題が起きる」と言われている。
ですから、のう胞20mm、結節5mmというのはそういうところからだと思います。
おそらく、僕は別に友達でもないし、知り合いでもないんですけど、
のう胞性結節、「袋みたいになったものを雑だけど"のう胞"って言っちゃえ」と、
それから、「なにかそこにクリッとしたものがあったものを"しこり"とか"結節"って言ってしまえ」と。
で、5mmと20mm、これはマススクリーニングのやりかたですね。
何千人、何万人という人をいろんな検査者が、
それは手技の上手い下手もあるだろうし、機械も多少違うかもしれないし、
その日の調子によって超音波っていうのはかなり映り方が変わったりしますから、
マススクリーニングの手法として20mmののう胞結節、5mmの充実性結節で、
そこから分けて、網に引っ掛けて、そこから絞り込んで行くというのが一番効率が良くて、
多数の人を検査するのにいいだろうと考えたんだろうと僕は思います。
この辺は医者だから難しいことを言って煙に巻くみたいに思われちゃうと困るんですけれども、
やっぱりこの言語をですね、単語をちゃんとやっていかないと、あとになって話が合わなくなってきちゃうので、
ここはこれで押し通させて下さい。
"のう胞性結節"というのはびまん性じゃなくて、なにかクリッとしたものがあった時に、
それが「のう胞みたいです」ということです。
「のう胞みたい」というのはじゃあ「のう胞か?」といわれるとのう胞じゃないんですよね。
で、"のう胞"というのには非常に厳しい定義があります。
例えば肝臓にはのう胞が出来ます。
膵臓にものう胞はできるし、脳みそにものう胞が出来るし、
ただ、甲状腺には純粋なのう胞は殆ど出来ないと言われている。
だから、そういう事を言いだすときりがないですけど、"のう胞性結節"と言わせて下さい。
"のう胞性結節"これはのう胞がどうのこうのって、どこかで調べたら何%あるとか、
長崎がどうだったとか、チェルノブイリがどうだとか、こういう話のいわゆる"のう胞"ですけど、
これのほとんどは、僕がみてですね、
コロイドのう胞と、腺腫様結節と、腺腫様甲状腺腫と、こういう診断のつくものです。
で、大体この3者は同じ物を示します。
腺腫様甲状腺腫というのはこれは英語で言うとAdenomatous goiterと言うんですけど、
そもそもはこういう超音波なんかがなかった時代に甲状腺がプクッと腫れていると。
目で見て腫れている甲状腺腫。
それをよく見てみると、こういうのう胞性結節がたくさんあるもの、こういう意味なんですよね。
今回は超音波で触っても分からない、外から見ても分からない様なものも沢山見つかっています。
これは大きさもそうだし、柔らかさがまわりとあんまり変わらないと、とても触れてわかるものではないですね。
そういうものを超音波的に、あるいは病理学的に分類するとコロイドのう胞だし、
腺腫様甲状腺腫というのはちょっと気を使った言い方をすれな腺腫様結節と、大体こんなようなところでした。
だからあの先生に診てもらったら「腺腫様甲状腺腫と言われた」けれど、
三田が「コロイドのう胞と言った」と言っても、同じ事を言っている訳です。
のう胞様結節、これは、良性腫瘍、癌じゃない様な腫瘍。
こういう腫瘍を充実性の、良性腫瘍にものう胞状の部分が出来ることもあります。
ですから良性腫瘍に伴うのう胞性結節というのもあります。
癌でも、のう胞性の変化をきたすものもあります。
"充実性結節"というのは簡単に言って、良性腫瘍と癌で、クリッとしたものですよね。
たとえば結節の小さい時というのは、位置もだいたい一様なんですけれども、
ほかの臓器でもそうですけど、癌というのは無秩序に増殖しますから、
ですから栄養がいきわたらないところは崩れて液状に溶けちゃったりすると、
癌に伴うのう胞性結果とか、こういう事になるわけですね。
だからとても甲状腺の病気を"のう胞"と"結節"なんて二つに分ける事は無理なんで、
さっき言ったように、マススクリーニングの手法として20mmののう胞、5mmの結節。
ここでずっと甲状腺を扱っている先生たちは分けてきたし、
今回のこともそこで分けることにはあんまり問題はないと思います。
ただ、こういうものがあった時には僕は3ヶ月ごと6ヶ月後には調べるべきだとは思いますね。
で、もう一回これはさっきの写真なんですが、
これは甲状腺の変化を見ています。

これはびまん性の変化のない甲状腺です。
ここにクリクリッとあるのが、これが典型的なコロイドのう胞です。
結節なんですね、これはのう胞性結節。
黒いところというのは、このグレーのところがありますよね、
これは全く一様のように見えるけれども顕微鏡で見るとここはスポンジみたいな構造です。
スポンジみたいな構造の中にコロイドと言われる物質が詰まっている。
そこに甲状腺ホルモンが沢山溜まっていて、血液の中にこれが流れ出してホルモンの調節をするわけですけれども、
そういうコロイドを含む、そういうなんて言うのかな、隙間ですよね。
それが大きくなっちゃったようなものです、これは。
ですから、新しくできた病気というよりは、甲状腺がちょっと壊れて、こういうふうに水が溜まったというのかな、
水が溜まったんじゃないですね、目に見えるぐらいの大きさになったという、そういう事です。

この白いところというのが、今回いろんなところで石灰化と間違われているんですけど、
これはね、このコロイドの中にちょっと出血した血液の塊とか、中に落ちた細胞の塊とか、
そういうふうなものが変性して白くなっているというふうに考えられると思います。
縦に切ってもだいたい同じようですね、こういうふうに(赤丸の中)コロイドのう胞ですね。

だいたい3mm止まりだと思いますけれど、
3mmぐらいのコロイドのう胞が多発するという子どもは沢山います。
3割ぐらい、僕の経験ではいます。
もう検査を始めて2年以上になりますけれども、
当初こういうものがあって、
僕もこれまで実際に見たことはなかったんです。
大人の甲状腺にはこういうスタイルのコロイドのう胞の多発というのは僕は見たことがないです。
ですから子どもに特有のものだと思います。
「思います」「思います」って随分いい加減だなって思われるかもしれないけれど、
実はですね、子どもの甲状腺検査って今までほとんど行われた事がないですから、
ですから今が子どもの甲状腺のエコー検査の診断学の始まりですね。
だからここの機会を本当に大切にして、1年目2年目からどんどんやっていくべきだったと思うけど、
「3年経っちゃった」という、そういうことですね。

甲状腺の病気としましては先ほど言いましたように、びまん性疾患と結節性疾患というのがあります。
びまん性疾患というのは、機能異常があるかどうか?という、そういう様な病気ですね。
たとえばバセドウ氏病とか、それから橋本病とか、
こういうものは結節性ではなくてびまん性疾患です。
で、こういうものというのは内科的な疾患です。
ですから、内分泌の、ホルモンの量とか、それの補正とか、そういう事が中心になっているので、
びまん性疾患を扱うのは内分泌(内)科、あるいは内分泌科、甲状腺科という、
そういう看板を出している先生の主な仕事だと思っていただきたい。
それに対してですね、今回みんながとっても心配しているのは、結節性疾患ですよね。
結節性疾患というのはイコール腫瘍なのかどうなのか?という、
腫瘍だった時に良性なのか癌なのか?こういう事なのかと思います。
ちょっと「こんなに言いきっちゃっていいのか」っていう、そういう意見もあると思うけれど、
これは僕の診療していて感じることですね。
結節性疾患を扱うのは腫瘍の手術をするかどうかという事です。
さっきおっしゃっていたように、needle biopsy(ニードル・バイオプシー)、針生検ね、
針生検なんかは内科の先生もするかもしれないけれども、
やっぱりそれを最終的に取る外科の先生の仕事です。
こういう結節性疾患、腫瘍、甲状腺がん、甲状腺腫瘍を扱うのは、
内分泌内科ではなくて、普通は耳鼻科の先生であり、頭頸部外科の先生です。
内分泌外科と名乗っている先生もいるかもしれないです。
ですから今回子どもの甲状腺の事を、
内分泌と看板を出している先生に「診てくれ、診てくれ」というのはちょっと無理があると思うんです、実はね。
僕は大学は信州大学なんです。
菅谷先生の学校です。
ここから先は<甲状腺疾患>
「今後は今までの常識とは違う」~関東の子どもたちの異常について(1)~2/14三田茂医師(文字起こし)
に続きます。
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三田茂医師「関東の子どもたちの異常について」
放射線被ばくを学習する会(top page)
三田:
簡単に自己紹介を。
父が小平というところで開業したのが50年前で、医師会やなんかでも活動していまして、
晩年副会長をやっていて、
父は数年前に亡くなりましたけど、僕に後を継げと言われて、15年位位になるんですかね。
で、いろんな事をやってきましたけれども、やはり東京に住む者として、
「東京が地震でどうなるか」というのはとても気になっていたんです。
直下型もあるし、それから東南海地震ですよね。
地震の勉強を少しすると、浜岡原発が壊れた時にどうなるのか?というのは当然心配になるわけです。
「浜岡原発が壊れた時に放射能が流れてきて、東京に影響が出る」と、そういうシナリオというのは当然あるわけで、
そんなものは誰が考えてもちょっと調べればいろんな事が出てくると、
で、準備していたんですけれども、今回浜岡じゃなくて福島で東京が汚染されてしまったと思います。
準備していたものとして、東京の、特に優先順位としては子どもたち。
子どもたちだけが良ければいいという事ではありません。
全年齢の人ですけれども、
優先順位としては子どもたちを何とか守りたいという事で、3年間やってきましたが、
最初に結論みたいな事を言っちゃうけれども、
行政は動かせなかった。
教育委員会も動かせなかった。
役所も動かせなかったし、保健所もダメだったし、
医師会も別に嫌がられはしなかったけれども一緒にやってくれる人は誰もいなかったという事で、
東京でやることに限界を感じまして、
来月で(三田医院は)50年続きましたけれどもリタイアして、
西の方から、東京あるいは関東の人達に、保養とか、避難とかを呼び掛けるような事をこれからはしていかないと、
もう時間的に余裕はないかなと、
そう思ってそういう決断をしました。
今日は内容についてはなんにも打ち合わせはしていないですね、
医者として「皆さんがちょっと誤解をしているかな」とか、
それから「攻める方向性がちょっと違うのかもしれないな」と思う事がありますので
そういう事で知って頂いた方が今後の活動を、全然違うところをプッシュしてもしょうがないですから、
参考になればいいなと思います。
で、何はなくともまず甲状腺ですよね。
これは甲状腺のエコーの検査です。
やはり浜岡のことを勉強すると、チェルノブイリの時にヨウド剤をどう加えたか加えなかったかとか、
それから国際的に認められているのは甲状腺がんと白血病だけであるとか、
そういうことが分かるわけですよね。
日本人がどれ位甲状腺がんになるか?というと、
やはり「ヨウドの摂取量から考えて、チェルノブイリほどじゃないんじゃないか」ってなんとなく僕は思ったし、
今でも「そうなのかな」ってなんとなく思っています。
だから甲状腺をみなくていいって言っているんじゃないんですね。
甲状腺ばっかり気にしていちゃいけないって思うんです。
これは甲状腺の検査です。
これは8歳ぐらいの男の子の甲状腺のエコーです、超音波検査です。

大体どこでもこういうふうにやりますけれども、
まず下を見ていただきますと、首ですね。

甲状腺は首のところにあるけれど、甲状腺の部位で首を水平に切っています。
ここは表面です。
ここに黒く見えているのが喉ですね、呼吸をする、声が出るところ。
ここに丸く見えているのが右の頸動脈、総頸動脈。
これが左の総頸動脈。
ちょっと見えているのが頸静脈ですけど、喉があって首の両脇の頸動脈。
これ輪切りになっていますけれども、ここの間にある白いところが、
これが甲状腺の右葉、これが甲状腺の左葉、右と左ですね。
ここに見えているのが食道。
これが峡部 ですね、右葉と左葉を繋いでいる
で、今度は縦に見ると、ここが甲状腺です。

こっちが甲状腺の頭がわ、こっちが足側。
これが右葉の写真、これが左葉の、矢状断って言うんですが医学的に、縦に切ったというところですね。
こっちが頭側で、こっちが足側。
これが水平なんですね。
甲状腺の事を考えた時にですね、
やっぱり甲状腺の病気の事の全体像が分かっていないと、わかりにくいし、
"結節"と"のう胞"という言い方自体にちょっと問題があるんですけれども、
その辺のことを簡単に、講義みたいになっちゃうけれども言います。
まず甲状腺の病気というのは、大きく二つに分けて、
びまん性疾患と結節性疾患に分かれます。
びまん性疾患というのは、
甲状腺が全体的にどうなるという事ですね。
全体的に縮んでしまう、全体的に腫れあがる。
こういうのをびまん性疾患といいます。
結節性疾患というのは、
"全体が"ではなくて、「どこかに何かが出来ます」と。
たとえば顔にほくろが一つある。
こういうふうな感じで、全体としておかしい訳じゃないけど、部分的になんかおかしいところがある。
そういうのを結節性疾患といいます。
今これの話をしているのはですね、甲状腺を扱う超音波の学会があります。
それのターミノロジー(terminology:特定の分野の専門用語)ですね。
用語検討委員会というのがあって、そこで決めている言い方です。
結節性疾患が今回問題になっている訳です。

これは、その専門の先生たちの委員会によると、
結節性疾患を"のう胞性結節"と"充実性結節"に分けるというふうになっています。
"のう胞性結節"なんて、なんかおかしいんじゃないか?っていうふうにね、感じると思うんです。
医学的にはほかの臓器もみんなそうです。
のう胞みたいなものも結節なんですね。
これはびまん性のものに対する結節性のものという意味で、
実際に甲状腺の超音波のガイドブックなんかを見るとこういう分類です。
"のう胞性結節"と"充実性結節"。
これが多分、山下先生達が言う"結節"
これが多分山下先生たちが言う"のう胞"に一番近いんだと思います。
で、これはインチキをやっているという訳ではないです、たぶん。
その学会を作った本人も、
「のう胞性結節は2cm位を超えたところで問題が起きる」と言われている。20mmですね。
「充実性結節は5mmを超えた位から問題が起きる」と言われている。
ですから、のう胞20mm、結節5mmというのはそういうところからだと思います。
おそらく、僕は別に友達でもないし、知り合いでもないんですけど、
のう胞性結節、「袋みたいになったものを雑だけど"のう胞"って言っちゃえ」と、
それから、「なにかそこにクリッとしたものがあったものを"しこり"とか"結節"って言ってしまえ」と。
で、5mmと20mm、これはマススクリーニングのやりかたですね。
何千人、何万人という人をいろんな検査者が、
それは手技の上手い下手もあるだろうし、機械も多少違うかもしれないし、
その日の調子によって超音波っていうのはかなり映り方が変わったりしますから、
マススクリーニングの手法として20mmののう胞結節、5mmの充実性結節で、
そこから分けて、網に引っ掛けて、そこから絞り込んで行くというのが一番効率が良くて、
多数の人を検査するのにいいだろうと考えたんだろうと僕は思います。
この辺は医者だから難しいことを言って煙に巻くみたいに思われちゃうと困るんですけれども、
やっぱりこの言語をですね、単語をちゃんとやっていかないと、あとになって話が合わなくなってきちゃうので、
ここはこれで押し通させて下さい。
"のう胞性結節"というのはびまん性じゃなくて、なにかクリッとしたものがあった時に、
それが「のう胞みたいです」ということです。
「のう胞みたい」というのはじゃあ「のう胞か?」といわれるとのう胞じゃないんですよね。
で、"のう胞"というのには非常に厳しい定義があります。
例えば肝臓にはのう胞が出来ます。
膵臓にものう胞はできるし、脳みそにものう胞が出来るし、
ただ、甲状腺には純粋なのう胞は殆ど出来ないと言われている。
だから、そういう事を言いだすときりがないですけど、"のう胞性結節"と言わせて下さい。
"のう胞性結節"これはのう胞がどうのこうのって、どこかで調べたら何%あるとか、
長崎がどうだったとか、チェルノブイリがどうだとか、こういう話のいわゆる"のう胞"ですけど、
これのほとんどは、僕がみてですね、
コロイドのう胞と、腺腫様結節と、腺腫様甲状腺腫と、こういう診断のつくものです。
で、大体この3者は同じ物を示します。
腺腫様甲状腺腫というのはこれは英語で言うとAdenomatous goiterと言うんですけど、
そもそもはこういう超音波なんかがなかった時代に甲状腺がプクッと腫れていると。
目で見て腫れている甲状腺腫。
それをよく見てみると、こういうのう胞性結節がたくさんあるもの、こういう意味なんですよね。
今回は超音波で触っても分からない、外から見ても分からない様なものも沢山見つかっています。
これは大きさもそうだし、柔らかさがまわりとあんまり変わらないと、とても触れてわかるものではないですね。
そういうものを超音波的に、あるいは病理学的に分類するとコロイドのう胞だし、
腺腫様甲状腺腫というのはちょっと気を使った言い方をすれな腺腫様結節と、大体こんなようなところでした。
だからあの先生に診てもらったら「腺腫様甲状腺腫と言われた」けれど、
三田が「コロイドのう胞と言った」と言っても、同じ事を言っている訳です。
のう胞様結節、これは、良性腫瘍、癌じゃない様な腫瘍。
こういう腫瘍を充実性の、良性腫瘍にものう胞状の部分が出来ることもあります。
ですから良性腫瘍に伴うのう胞性結節というのもあります。
癌でも、のう胞性の変化をきたすものもあります。
"充実性結節"というのは簡単に言って、良性腫瘍と癌で、クリッとしたものですよね。
たとえば結節の小さい時というのは、位置もだいたい一様なんですけれども、
ほかの臓器でもそうですけど、癌というのは無秩序に増殖しますから、
ですから栄養がいきわたらないところは崩れて液状に溶けちゃったりすると、
癌に伴うのう胞性結果とか、こういう事になるわけですね。
だからとても甲状腺の病気を"のう胞"と"結節"なんて二つに分ける事は無理なんで、
さっき言ったように、マススクリーニングの手法として20mmののう胞、5mmの結節。
ここでずっと甲状腺を扱っている先生たちは分けてきたし、
今回のこともそこで分けることにはあんまり問題はないと思います。
ただ、こういうものがあった時には僕は3ヶ月ごと6ヶ月後には調べるべきだとは思いますね。
で、もう一回これはさっきの写真なんですが、
これは甲状腺の変化を見ています。

これはびまん性の変化のない甲状腺です。
ここにクリクリッとあるのが、これが典型的なコロイドのう胞です。
結節なんですね、これはのう胞性結節。
黒いところというのは、このグレーのところがありますよね、
これは全く一様のように見えるけれども顕微鏡で見るとここはスポンジみたいな構造です。
スポンジみたいな構造の中にコロイドと言われる物質が詰まっている。
そこに甲状腺ホルモンが沢山溜まっていて、血液の中にこれが流れ出してホルモンの調節をするわけですけれども、
そういうコロイドを含む、そういうなんて言うのかな、隙間ですよね。
それが大きくなっちゃったようなものです、これは。
ですから、新しくできた病気というよりは、甲状腺がちょっと壊れて、こういうふうに水が溜まったというのかな、
水が溜まったんじゃないですね、目に見えるぐらいの大きさになったという、そういう事です。

この白いところというのが、今回いろんなところで石灰化と間違われているんですけど、
これはね、このコロイドの中にちょっと出血した血液の塊とか、中に落ちた細胞の塊とか、
そういうふうなものが変性して白くなっているというふうに考えられると思います。
縦に切ってもだいたい同じようですね、こういうふうに(赤丸の中)コロイドのう胞ですね。

だいたい3mm止まりだと思いますけれど、
3mmぐらいのコロイドのう胞が多発するという子どもは沢山います。
3割ぐらい、僕の経験ではいます。
もう検査を始めて2年以上になりますけれども、
当初こういうものがあって、
僕もこれまで実際に見たことはなかったんです。
大人の甲状腺にはこういうスタイルのコロイドのう胞の多発というのは僕は見たことがないです。
ですから子どもに特有のものだと思います。
「思います」「思います」って随分いい加減だなって思われるかもしれないけれど、
実はですね、子どもの甲状腺検査って今までほとんど行われた事がないですから、
ですから今が子どもの甲状腺のエコー検査の診断学の始まりですね。
だからここの機会を本当に大切にして、1年目2年目からどんどんやっていくべきだったと思うけど、
「3年経っちゃった」という、そういうことですね。

甲状腺の病気としましては先ほど言いましたように、びまん性疾患と結節性疾患というのがあります。
びまん性疾患というのは、機能異常があるかどうか?という、そういう様な病気ですね。
たとえばバセドウ氏病とか、それから橋本病とか、
こういうものは結節性ではなくてびまん性疾患です。
で、こういうものというのは内科的な疾患です。
ですから、内分泌の、ホルモンの量とか、それの補正とか、そういう事が中心になっているので、
びまん性疾患を扱うのは内分泌(内)科、あるいは内分泌科、甲状腺科という、
そういう看板を出している先生の主な仕事だと思っていただきたい。
それに対してですね、今回みんながとっても心配しているのは、結節性疾患ですよね。
結節性疾患というのはイコール腫瘍なのかどうなのか?という、
腫瘍だった時に良性なのか癌なのか?こういう事なのかと思います。
ちょっと「こんなに言いきっちゃっていいのか」っていう、そういう意見もあると思うけれど、
これは僕の診療していて感じることですね。
結節性疾患を扱うのは腫瘍の手術をするかどうかという事です。
さっきおっしゃっていたように、needle biopsy(ニードル・バイオプシー)、針生検ね、
針生検なんかは内科の先生もするかもしれないけれども、
やっぱりそれを最終的に取る外科の先生の仕事です。
こういう結節性疾患、腫瘍、甲状腺がん、甲状腺腫瘍を扱うのは、
内分泌内科ではなくて、普通は耳鼻科の先生であり、頭頸部外科の先生です。
内分泌外科と名乗っている先生もいるかもしれないです。
ですから今回子どもの甲状腺の事を、
内分泌と看板を出している先生に「診てくれ、診てくれ」というのはちょっと無理があると思うんです、実はね。
僕は大学は信州大学なんです。
菅谷先生の学校です。
ここから先は<甲状腺疾患>
「今後は今までの常識とは違う」~関東の子どもたちの異常について(1)~2/14三田茂医師(文字起こし)
に続きます。
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