プルトニウム輸送船が茨城・東海村に到着
2016年3月21日 TBS
日本に保管されているプルトニウム300キロ余りをアメリカに輸送するため、21日朝、茨城県東海村の港に専用の船が到着しました。輸送されるプルトニウムは核兵器40発分に相当します。
午前8時前、茨城県東海村の港に、プルトニウムを運ぶ専用の輸送船が到着しました。この船はイギリス船籍の「パシフィック・イグレット」で、今後、もう一隻の船とともに、港に隣接する日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置で保管されているプルトニウム331キロをアメリカに輸送する予定です。
このプルトニウムは軍事利用も可能な高濃度のもので、核兵器40発分に相当する量だということです。輸送されるプルトニウムは、核分裂反応についての基礎研究を行うため、1970年代にアメリカ、イギリス、フランスから購入したもので、おととしの核安全保障サミットでアメリカに「返還」することで日米が合意していました。
警察は、厳重な警備態勢を敷いて警戒にあたっています。(21日11:07)
高浜原発3号機 運転停止
2016年3月10日 20時07分 NHK
高浜原発3号機 運転停止
9日、裁判所から運転停止を命じる仮処分の決定を受けた関西電力高浜原子力発電所3号機は、10日午後8時前、原子炉の出力がゼロになり運転を停止しました。裁判所の決定で運転中の原発が停止したのは初めてです。
高浜原発3号機と4号機について、9日、大津地方裁判所は「住民の生命や財産が脅かされるおそれが高いにもかかわらず、関西電力は安全性の確保について説明を尽くしていない」として滋賀県内の住民の申し立てを認め、運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。
この決定を受けて関西電力は10日午前10時、核燃料の間に核分裂反応を抑える制御棒を入れる作業を始め、午後5時すぎ原子炉の出力を10%ほどに下げたところで、発電機と送電設備を切り離し発電と送電を停止しました。そして、午後7時59分には原子炉の出力がゼロになり運転を停止しました。裁判所の決定で運転中の原発が停止したのは初めてです。先月再稼働した高浜原発4号機もすでにトラブルで停止しているため、現在、関西電力管内に電力を供給している原発はなく、全国で運転中の原発は鹿児島県にある川内原発の2基になりました。
現在、3号機と4号機の原子炉には、プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を含む、それぞれ157体ずつの核燃料がありますが、運転停止が長期化するとみられることから、関西電力は今後、原子炉建屋の隣にある燃料プールに移すことを検討するとしています。
官房長官 高浜原発の再稼働方針に変わりはない
2016年3月10日 12時20分 NHK
菅官房長官は午前の記者会見で、裁判所から福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機の運転停止を命じる仮処分の決定が出されたことに関連し、再稼働を進める方針に変わりはないと強調するとともに、原発の新しい規制基準を見直す考えはないという認識を示しました。
この中で、菅官房長官は、大津地方裁判所が9日、高浜原子力発電所3号機と4号機の運転停止を命じる仮処分の決定を出したことに関連し、「世界最高水準の規制基準に適合すると、原子力規制委員会が専門的見地から判断したものであり、政府としてはこの判断を尊重し、再稼働を進めていくことに変わりはない」と述べました。
また、菅官房長官は、今回の仮処分の決定で、原発の新しい規制基準を直ちに安全の根拠とすることは「ためらわざるをえない」と指摘されたことを受けて、記者団が「規制基準を見直す考えはあるか」と質問したのに対し、「原子力規制委員会で厳しい判断基準のなかで決定している。政府として今のところは考えていない」と述べました。
さらに菅官房長官は、今回の決定で、重大事故に備えた住民の避難計画の妥当性を審査するための国の基準を策定するよう指摘されたことについて、「避難計画の作成段階から国が関与し、総理大臣を議長とする原子力防災会議で了承する仕組みであり、国が前面に立って支援はしっかり行っている」と述べました。
高浜原発3・4号機 運転停止命じる仮処分決定
2016年3月9日 19時34分 NHK
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機について、大津地方裁判所は、「住民の生命や財産が脅かされるおそれが高いのに、関西電力は安全性の確保について説明を尽くしていない」として稼働中の原発に対して初めて、運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。関西電力は、異議を申し立てることにしていますが今回の決定によってすみやかに原子炉を止めなければならなくなりました。
福井県にある関西電力・高浜原発3号機と4号機について、滋賀県内の住民29人は、再稼働前の去年1月、運転の停止を求める仮処分を申し立てていました。これについて、大津地方裁判所の山本善彦裁判長は9日、3号機と4号機の運転の停止を命じる決定を出しました。
決定では「関西電力が原発の周辺で行った断層の調査は、周辺のすべてで徹底的に行われたわけではないうえ、地震の最大の揺れを評価する方法はサンプルが少なく科学的に異論のない方法と考えることはできない」と指摘しました。そのうえで、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や津波対策、避難計画についても疑問が残る。住民の生命や財産が脅かされるおそれが高いにもかかわらず、関西電力は安全性の確保について説明を尽くしていない」として、3号機と4号機の運転の停止を命じる決定を出しました。
決定はさらに、「福島の事故の大きさに真摯(しんし)に向き合って同じような事故を防ぐためには、原因の究明を徹底的に行うことが不可欠だが、この点についての会社の説明は不十分だ。もし会社などが原因究明を重視しないという姿勢であれば非常に不安を覚える」と指摘しました。
関西電力は、9日の決定の取り消しを求めて異議を申し立てる方針ですが、仮処分は直ちに効力が生じるため、稼働中の3号機の原子炉を速やかに止めなければならなくなりました。稼働中の原発の運転の停止を命じる仮処分の決定は初めてです。
高浜原発は、ことし1月に3号機が、先月に4号機が、新しい規制基準のもとで再稼働しましたが、4号機では、再稼働の3日後の先月29日に原子炉が自動停止するトラブルが起きています。また、高浜原発3号機と4号機を巡っては、福井地方裁判所が去年4月、再稼働を認めない仮処分の決定をしましたが、去年12月に福井地裁の別の裁判長がこの決定を取り消し、再稼働を認める判断をしています。
原子力発電所を運転させないよう求める裁判所への申し立ては5年前の原発事故をきっかけに全国で相次いでいて、稼働中の原発にストップを命じた今回の決定は、各地の今後の審理に影響を与えることも予想されます。
関西電力 あす午後8時ごろ運転停止へ
関西電力は9日午後6時から大阪・北区の本店で記者会見を開きました。この中で会社側は、稼働中の3号機の原子炉について、10日午前10時ごろから停止作業に入り、午後8時ごろに停止させる方針を明らかにしました。
そのうえで、仮処分の決定は到底承認できないとして、運転の停止を命じる決定の取り消しを求めて裁判所に異議申し立てを行う方針を明らかにしました。
一方、関西電力は、先月、原発の再稼働にともなって、ことし5月から電気料金を値下げする方針を表明していましたが、9日の記者会見で会社側は仮処分の決定で5月からの値下げは困難になったという認識を示しました。
関西電力「承服できない 速やかに不服申し立てる」
仮処分の決定について関西電力はコメントを発表し「当社の主張を裁判所に理解いただけず極めて遺憾であると考え、到底承服できるものではない。この決定にしたがい、安全を最優先に運転中の高浜原発3号機を停止するが、今後速やかに不服申し立ての手続きを行い、早期に仮処分命令を取り消していただくよう、高浜原発3号機と4号機の安全性の主張と立証に全力を尽くす」としています。
官房長官「再稼働方針は不変」
菅官房長官は9日午後の記者会見で、「仮処分命令が出たことは承知しているが、詳細についてはまだ報告を聞いていない」と述べました。そのうえで、菅官房長官は、「高浜原子力発電所3号機と4号機は、独立した原子力規制委員会が、専門的見地から十分時間をかけて、世界最高水準と言われる新規制基準に適合すると判断をしたものであり、政府としては、その判断を尊重して、再稼働を進める方針に変わりはない」と述べました。
そして、菅官房長官は「国は本件の当事者ではなく、あくまでも仮の処分であることから、当事者である関西電力が今後の対応を決めると思うので、国としても注視していきたい」と述べました。
運転停止に複雑な反応
高浜原子力発電所3号機と4号機の運転停止を命じる仮処分の決定が出されたことについて、福井県高浜町の住民からは今後の影響を懸念する声が聞かれました。
このうち、60代の男性は「決定の内容をニュースで知りびっくりしたが、動いている原発を止めることは立地自治体の住民としては理解できない。今後、ほかの原発も運転が難しくなるのではないか」と話していました。また、60代の女性は「原発は危険だという意見も分かるが、高浜原発がようやく再稼働し地域が活性化に向けて動きだしたところだったので、複雑な気持ちだ」と話していました。
一方、20代の女性は、「きょうの決定を聞くと原発の安全性について心配に思うので、いったん運転を止めて調査を行い対策を取ったうえで、安全に再稼働してもらいたい」と話していました。
住民と弁護団が報告会「鳥肌立つほど感動」
今回の仮処分を申し立てていた滋賀県内の住民と弁護団は、大津市内で報告会を開きました。この中で、住民の代表の辻義則さん(69)は、「高浜原発3・4号機を運転してはならないという決定の主文を目にしたときは、鳥肌が立つほど感動した。裁判所が県民の願いに応えてくれた。3月11日を前にこのような決定を出していただき、裁判長の思いも伝わってきた」と述べました。
また、弁護団長を務める井戸謙一弁護士は「これまでの裁判では、国の基準を満たしてさえいれば原発は安全だと立証できた。電力会社にとってはその立証は簡単なことだったが、今回の決定では規制基準に合格したかどうかだけでなく、福島第一原発の事故を踏まえていかに具体的な安全策を取ってきたかが検討された」と指摘し、「冷静な判断を示した裁判所に深い敬意を表したい」と述べました。
JAM THE WORLD : J-WAVE 81.3 FM RADIO
「高浜原発4号機の緊急停止からみる原発再稼働の課題」
(TEL:認定NPO法人『環境エネルギー政策研究所』所長 飯田哲也さん)
堀潤:
きのう、関西電力 高浜原発4号機が緊急停止しました。
先月20日に一次冷却水の漏えいが起きて対策を講じたのち、
26日に再稼働して、わずか3日後のトラブルです。
この一件から見えて来る、原発再稼働の課題について、
認定NPO法人『環境エネルギー政策研究所』所長 飯田哲也さんにお話を伺います。
飯田さんこんばんは、よろしくお願いいたします。
飯田さんは現在デンマークにいらっしゃるんですよね。
飯田:はい、デンマークに来ております。
掘:エネルギー関係の会合などですか?
飯田:
そうですね、やはりこちらも福島から5年でチェルノブイリから30年というので、原子力やエネルギーのこれからを問う会議がたくさんあるので、その一環できています。
掘:
日本の原子炉の再稼働の問題というのは、デンマークなどではどのように受け止められているんでしょう?
話題になりますか?
飯田:
やはりですね、政治は特に、今デンマークは新しいエネルギーが中心です。
先週金曜日はドイツで、まさに原発問題を問うシンポジウムの中では、やはり、
「日本はあれだけの事故にあって本当に原発政策を見直しているのか?」ということを疑問に思う人が多かったですね。
掘:
様々な安全対策が万全とは言えない中で、駆け足なんじゃないか。
そんな印象を僕も持っているんですが、飯田さんは今回の緊急停止はどうご覧になっていますか?
飯田:
起きるべくして起きたというのが、やはり正直なところだと思います。
過去4年停止して再稼働した原発は世界に14基で、その全てにおいてトラブルがずっと続いているということで。
しかもこのデンマークのすぐ向かいにスウェーデンがあるんですが、スウェーデンのオスカーシャムという原発が、やはり同じように4年ぐらい長く停止をした後に再稼働しようとしてはトラブルを起こし、またしようとしてはトラブルを起こし、で。
よく「自然エネルギーは不安定エネルギーだ」っていうんですが、
スウェーデンでは「原発こそ狼少年みたいに不安定電源だ」というふに半分からかわれるぐらいに、長い停止の後のトラブルはもう、こちらではやはり認識をされているという感じですね。
掘:
私も実を言うと、電力会社の原子力部門の方々にお話を聞く中で、
やはり「止まっているものを動かすというのは実を言うと非常にリスクが高いんだ」というのを、専門家のみなさんもやはりおっしゃっていますよね。
今回高浜4号機は2011年7月に定期点検のために停止して以来、4年半以上と。
具体的に止めていることでどういう不具合が生じやすくなるんでしょうか?
飯田:
大きくはまず、膨大な配管というか、水の系統の中で、錆が出てくるとかですね。
無数の配管と継ぎ手がある中で、恒常的に動かしているときはまだいいんですけれど、それが冷たい状態で長く置かれ、そしていろんな応力の状態、金属にかかる力の状態が変わることで、に加えて、予期しない錆とかそういうものが、とにかく水に関わる水回りですね、そこに問題が生じるのが一つ。
先日出た汚染水の問題もその一つだと思います。
もう一つはやはり電気系が。
これもすざましい電気系統が、接続も含めて長くあって、で、今回は主に電気系だと思いますが。
そういうものが両方重なって、しかもどこでトラブルが起きるのかもなかなか、全部点検するのが非常に難しということがでてきますね。
しかも、かなり老朽化をしているということがそれに輪をかけてトラブルを起こしやすくなっているという状況ですね。
掘:
私も東京電力福島第2原発の3号機の原子炉格納容器の中に入って取材をしたことがあるんですけれども、
本当に細かく、細い配管が入り組んでいて、これを一つ一つ手作業で点検するのはほぼ、難しいんだろうなというのは容易に想像ができましたけれども。
再稼働の政策というのは、これは日本政府が進めていますよね。
特に東電管内でも柏崎刈羽原発も再稼働に向けて東電は動かしたいと言っています。
ただ、中越沖地震のときから止まっている原発などもあって、日本の古くて長く止まっているものを本当に今再稼動させて大丈夫なのか?と、その不安が付きまとうんですけどね。
飯田:
ええ、まさに、すべてのものが完全に動いていたものではないので、それに加えて4年間の停止と、そして老朽化と。
3つのものがこれからどう検査をして動かしていけるのか?というのは、やはり安全性に関しては相当懸念は残ると思いますね。
ある程度、電力会社にとっては、もちろん今、これから電力小売の完全自由化を控えて、背中を再稼動に向けてますます押されているところだと思うんですが。
逆に言うと、もうはっきり損きりをしてしまっていく、その割り切りをしていかないと、安全性と経済性の綱渡りの中で、より危ない橋を渡らなければならないということがですね、この先も続くんじゃないかという気がしてですね。
掘:
この自由化の波で、各電力会社さん。
これから異業種の皆さんが電力に参加するということで、激しい競争にさらされるわけですよね。
そうした中で当事者の皆さんの声を聞くと、やはり今おっしゃったように、
「勝ち残るためには原発の再稼動が必要なんだ」と、そういう声を聞きます。
これはやはり、経済合理性が優先されて、安全性そのものへのまなざしというのが、おろそかになりかねないんじゃないですか?
飯田:
そうですね。これはかつての高圧の部分での自由化のときにも起きたことなんですが、電力会社が値下げをすれば、新規参入者はもう、一気になぎ倒されるかのように消えていくんですね。
で、電力会社とすれば、値下げの原資が欲しいと。
手っ取り早いのは、まずはコストを削減するということで、つい最近九州電力は免震重要棟を作ると約束したのをやめますといってですね、それを値下げ原資にする。
そして、燃料費を節約するために原発を再稼動して、これも競争の原資にする。
この二つが、安全対策費も減らし、原発再稼動によって燃料費を節約して、これも競争の原資にする。
この二つがこれからどんどんどんどん圧力が増していくと思いますね。
非常に危ないことですね。
掘:
東京電力の方も、福島県の復興や廃炉作業を進めるためにも利益を上げなくてはいけない。
そのためには新潟の柏崎刈羽原発も、なんとか理解を得て再稼動させたい、なんていう話を、
まさに昨日もお話をされていたんですね。
ただ、私たちはなかなか原発の再稼動に向けての安全性がどこまで本当に担保されているのか、知る由がないというかですね、このあたりは、国民サイドとしてはどのようにこの辺り向き合えばいいんでしょうか?
飯田:
そうですね、今回も泉田知事が設けられた技術委員会が追求する中で、東京電力のマニュアルで「メルトダウンを判定するマニュアルがつい最近出てきました」という事件があったと思うんですね。
掘:そうでしたね。
飯田:
あの技術委員会の目線を原子力規制委員会が同じ水準かもっと厳しい水準で本来なら持たないといけないと思いますが、それが今十分に持てていない。
昨年の春もそうでしたが、福井地方裁判所の樋口裁判長が、やはり、「今の安全基準そのものが福島の事故を学んだ水準に至っていない」っていうことを厳しく指摘をされたわけで、国民としては、本当に国民福島の事故に学んだレベルの安全性に全体として到達しているのか?ということを、絶えず厳しく目を向ける必要があると思うんです。
その意味で、今回東京電力のトップ3が強制起訴になったということのこれからの推移というのは、その意味で非常に私は期待できるというふうに思っています。
掘:
最後に飯田さん、まさに強制起訴、旧経営陣、勝俣元会長、武藤元副社長、武黒元副社長の強制起訴。
この件について今後注目されているのはどのような点でしょうか?
飯田:
やはりこの訴訟の中で、これまで東京電力が十分に出してこなかった様々な証拠書類や証拠ビデオ、様々なデータとかが、一つ一つこれから明るみに出てくると思うんですね。
例えば東京電力本店と福島第一とやりとりしていたビデオ会議の重要な部分がまだ出ていないとか、
掘:本編の消されている部分とかですね。
飯田:
はい、そうですね。
そういったところを一つ一つ検証していく中で、やはり東京電力が行った不作為というものがしっかり表に出てくる。
で、おそらく東京電力だけではない政府との不正や不作為というものも出てくることによって、
それを単に犯人探しではなくて、やはり今後の安全規制の改善につないでいってほしいなと。
それを是非期待をしたいと思っていますね。
掘:飯田さんどうもありがとうございました。
飯田:はい、こちらこそありがとうございました。
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