「被災地瓦礫の処分」 池田こみち環境総合研究所副所長の提言(2/15東京新聞こちら特報部より)

「瓦礫復興、足かせ」疑問
東京新聞 こちら特報部 2102年2月15日

野田政権が復興庁の発足を機に、
宮城、岩手両県で発生した震災がれきの広域処理キャンペーンを一段と強力に推進し始めた。
旗振り役の環境省は「がれきは安全」「復興の足かせになっている」と受け入れを迫るが、
ほかに選択肢はないのだろうか。
「広域処理は必要性、妥当性、正当性の観点から問題」と主張する
環境専門シンクタンク「環境総合研究所」(東京)の池田こみち副所長に聞いた。(佐藤圭)


広域処理は問題の山


野田佳彦首相は、復興庁がスタートした10日の記者会見で、今後の復旧復興の重要課題として
(1)住宅再建・高台移転
(2)がれきの広域処理
(3)雇用の確保
(4)被災者の孤立防止と心のケア
(5)原発事故避難者の帰還支援
の5項目を挙げた。
がれきについては「安全ながれきを全国で分かち合って処理する広域処理が不可欠だ」と力を込めた。


環境総合研・池田副所長に聞く

震災がれきの広域処理の問題点について語る池田こみち環境総合研究所副所長
東京都品川区旗の台で

20120201713.jpg
いけだ・こみち 1949年東京都生まれ。専門は環境政策。
聖心女子大卒業後、東京大医科学研究所、ローマクラブ日本事務局などを経て、
86年、環境総合研究所の設立に参加。
著書に「みんなの松葉ダイオキシン調査」など。


住宅再建・原発保証が優先

池田氏は真っ先に、政府の言う「復興の足かせ論」に疑問を投げかける。

「被災地に何度も足を運んでいるが、『がれきがあるから復興が進まない』という話は聞かない。
被災地では、住宅再建や雇用の確保、原発事故の補償を求める声が圧倒的だ。
がれきは津波被害を受けた沿岸部に積まれるケースが多いが、そこに街を再建するかはまだ決まっていない。
高台移転には、沿岸部のがれきは全く障害にならない。
がれきが復興の妨げになっているかのような論調は、国民に情緒的な圧力を加えているだけだ」

次に広域処理の妥当性だ。池田氏は環境・安全面と、経済的、社会的な観点からの議論を促す。

環境・安全面は住民が最も心配している点だ。
環境省の広域処理ガイドラインでは、
被災地からの搬出から受け入れまでに複数回、放射線量を測定することになっているが、いずれもサンプル調査
その精度については、同省も
サンプルを採取しなかった部分で、放射線量が高いところがないとは言えない」(適正処理・不法投棄対策室)
と認めざるを得ない。

「測定を繰り返して安全性を強調しているが、実は非科学的だ。
がれきを全部測ることができないのは分かるが、公表されているデータでは、
がれきのボリューム、採取方法、なぜサンプルが全体の線量を代表できるかの根拠などが不明だ」

焼却炉の排ガス測定もサンプル調査だ。

「環境省は、4時間程度採取した排ガスを測定する方法を示しているが、サンプル量が少なすぎるのではないか。
サンプル量を増やして定量下限値を下げ、実際にどれくらい出ているかを把握しないと、汚染の程度は分からない」

池田氏は、焼却灰の埋め立て処分にも首をかしげる。
放射性セシウムが1キロ当たり8000ベクレル以下であれば「管理型最終処分場」に埋め立てる計画だ。

「管理型の浸出水処理施設ではセシウムは除去できない。
灰を普通のごみと同じように埋め立てる基準が8000ベクレルでは高すぎる。
どうしても埋め立てるのであれば、コンクリート製の仕切りで厳重に管理する『遮断型最終処分場』で保管するしかない」

問題は放射性物質に限らない。池田氏は津波の影響にも警鐘を鳴らす。

「津波によって流されたがれきは、油類や農薬類などの有害物質を吸収している
日本の焼却炉における排ガス規制は、ヨーロッパに比べて非常に甘い。
規制されているのは窒素酸化物、ダイオキシン類など5項目にすぎず、重金属などは野放しだ

こうした未規制の物質が拡散する恐れがある」


現地焼却すれば雇用も

池田氏は「経済的妥当性も検討されていない」とあきれ顔だ。

「放射性レベルが低いというのであれば、
がれき処理専用の仮設焼却炉を現地に作って処理するのが最も効率的だ。
雇用も生まれる。高い輸送費をかけて西日本まで持って行くのは、ばかげている」

「東京都が既に協力しているが、問題は山積している。
都心部で新たに処分場を確保するのは困難。焼却炉の維持管理や更新にもコストがかかる。
できるだけ延命されなければならないのに、震災がれきを燃やしたり、埋め立てたりすれば、
焼却炉や最終処分場の寿命は確実に縮まる」

妥当性の三点目が社会的側面だ。
広域処理をめぐっては、被災地と被災地以外で“対立構図”ができつつある。

被災地の人たちは、普段の生活ではがれきのことをあまり気に掛けていなくても、
全国で『受け入れる、受け入れない』という騒ぎになれば、反対する住民への不信感が募る
だろう。
受け入れを迫られる住民たちも、本当は被災地をサポートしたいのに信頼できる情報もない中で心の余裕を失う。
こうした対立構図をつくっているのは国だ」

意思決定、政策立案プロセスの正当性はどうか。

環境省は関係省庁との検討を経て、昨年4月8日には、
宮城、岩手、福島の被災3県と沖縄県を除く各都道府県に受け入れの協力を要請している。
同省の有識者会議「災害廃棄物安全評価検討会」は一連の非公開会合
広域処理の方針にお墨付きを与えてきた。

「『広域処理』ありきの進め方だ。環境省は自治体や国民を蚊帳の外に置いたまま、一方的にものごとを決めている。
とても正当な手続きとは言えない」

では、どうするか。

首相は、冒頭に紹介した会見の中で
「被災地の処理能力には限界がある。岩手県では通常の11年分、宮城県では19年分だ」と述べている。
がれきの量は、宮城県が約1569万トン、岩手県が約476万トン。
2009年度の年間量で割れば、首相が言う通りの数字になる。

だが、実際に広域処理される量はずっと少ない。
現段階で県が把握しているのは、宮城が4年分の約344万トン、岩手が1・2年分の57万トン。

仙台は「自己完結」

しかも、宮城県の広域処理分には、仙台市は含まれていない。
同市が市内3カ所に仮設焼却炉を設置し、4年分の約135万トンを13年夏までに自前で処理するからだ。
環境省と岩手、宮城両県が処分目標に据える14年3月末よりも半年以上も早い。

木材燃料化、リサイクル促進を

池田氏はこう提言する。

「現地で処理する場合、焼却しない場合など
それぞれの事情に応じて選択できる多様な代替案を早急に検討すべきだ。
汚染が少なく分別が徹底されていれば、木材などはチップにして燃料にすることもできる。
広域処理する場合でも期間は1年のみとし、輸送距離の短い範囲でしっかりした施設を持つところに限定する。
その間にリサイクルを促進したり、専用の仮設焼却炉を増設したりすることが考えられる」


20120201715.jpg
広域処理に頼らず「自己完結型」の瓦礫処理を選んだ仙台市が設けた仮説焼却炉

20120201714.jpg
瓦礫搬入所では、コンクリートくず、木くず、廃家電製品など10種類以上に分別し、エリア別に保管。
作業は地元の業者に委託されている。瓦礫50%以上のリサイクルを目指す。

写真・いずれも14日午後、仙台市で

<デスクメモ>
「日が落ちると辺りは真っ暗。11カ月経っても、まだそんな状況」と、JR石巻駅近くの商店主は嘆く。
沿岸部にあるがれきの山は「視界に入れば気が滅入る」と言い、こう求める。
「広域処理が進まないのが安全性の証明が足らないと言うならば、国が責任を持って説明を尽くしてほしい」(木)






ーーーー<参考>瓦礫についての考え方

青木泰氏の意見
「被災がれき受入れは復興につながるのか」青木泰さん講演会その1 
神奈川 2/11(動画&内容書き出し)


「震災がれきは焼却して安全か」青木泰さん講演会その2完 
神奈川 2/11(動画&内容書き出し)


瓦礫焼却・バグフィルターで「放射性セシウムが99.9%除去できる」→本当?

「バグフィルターに騙されちゃいけない」青木泰さん講演会前編 静岡(内容書き出し)

「ちょっと変な国の安全基準」青木泰さん講演会後編 静岡(動画&内容書き出し)

小出裕章氏の意見
被ばくという事
「瓦礫広域処理についての勉強会」その1小出裕章氏・大阪維新の会2/8(動画&内容書き出し)


放射能のゴミ人形峠の場合
「瓦礫広域処理についての勉強会」その2小出裕章氏・大阪維新の会2/8(動画&内容書き出し)


福島第一原発から出た汚染 
「瓦礫広域処理についての勉強会」その3小出裕章氏・大阪維新の会2/8(動画&内容書き出し)


では、どうすればいいのか? 
「瓦礫広域処理についての勉強会」その4小出裕章氏・大阪維新の会2/8(動画&内容書き出し)


質疑応答 
「瓦礫広域処理についての勉強会」その5完 小出裕章氏・大阪維新の会2/8(動画&内容書き出し)



武田邦彦氏の意見
「なぜ瓦礫を引き受けてはいけないのか?」武田邦彦氏12/29(音声書き出し)


関連記事

コメント

非公開コメント

転載させていただきました!

いつも貴重なデータありがとうございます!
私もこの記事をブログに載せたいと思っておりました。
とてもわかりやすくレイアウトしていただいてあったので、私たちのブログにもそのまま転載させていただきました。
感謝です。