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02.29
Wed
ものすごく長くなっちゃいましたが・・・
分けないで一気に載せることにしました。
ガンダーセン氏の記者会見です。

原発を造るための3つの条件に関しては日本は1番のみ合格でした。
1・充分な冷却水
2・地震活動
3・人口密度




ーーーー


アーニー・ガンダーセン氏  日本記者クラブ2012.2.20

司会 日本記者クラブ企画委員 井田 由美(日本テレビ)
通訳 長井 鞠子 (サイマル・インターナショナル)

会見で使用した資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2012/02/709cb5f939f98575ef2ea7df46455afa.pdf



司会:
みなさんこんにちは、
著者と語るシリーズ、今日は「福島第一原発 真相と展望」をお書きになった
アメリカの原子力技術者で、エネルギーアドバイザーのアーニー・ガンダーセンさんにお越しいただきました。

ガンダーセン:
ありがとうございます。わたくしはアーニー・ガンダーセンと申しまして、バーモントに住んでおります。
わたくしは自分の職業人生の間、完全に同一とまではいかないかもしれませんが、
福島第一原発の原子炉と非常によく似ています
マークⅠと呼ばれております原子炉関係の仕事をずっとしておりました。

皆様方には本日お運びいただきました事に心より御礼申し上げます。
それと同時に集英社にもお礼を申し上げたいと思います。
私がこうして講演をするようなツアーをスポンサーして下さいましたし、
それから、福島の事故と、今後の展望という事につきまして、
わたくしの意見をいろいろと説明発表するという、機会を与えて下さいまして感謝しています。

わたくしは原子力工学に関しまして、学士号と修士号を持っております。
それからわたくしは資格認可を持っております、
原子力発電所でのオペレーターをするという資格も持っておりまして、
それから、原子力安全に関する特許も保有しております。
原子力産業界における上級副社長も務めております。

私は福島第一発電所の1号機とほとんど同一であるという、マークⅠの炉を手掛けましたのも
わたくしの最初の仕事でありましたが、
その後マークⅡ、マークⅢもするようになりまして、
上級副社長でありました時にはわたくしの下には400人ほどの人間が働いておりました。
また、わたくし個人としましても、全部で70カ所ぐらいの原子力発電所に足を運んでおります。

まず、わたくしの話を始める前に申し上げておきたいのは、
今回の事故で福島第一それから福島第二発電所におきまして、
まことに勇敢に事故に対応するために働かれました男性女性のみなさん。
主に男性だと思いますけれども、まことに勇敢なお仕事をして下さった方々に、
感謝の気持ちをささげたいと思います。
事故直後からの1週間、2週間、本当に見事な、勇敢な戦いぶりだったと思います。
で、彼らが、勇敢にも戦ってくれたという事は
私個人の意見ですけれども、日本という国を救ったとおもいますし、
それだけではなく、世界全体をも救ったと言えるのではないかと思います。
ですから我々全員は彼らに負うところ大であると。
彼らに対する感謝の気持ちを本当にもたなければならないというふうに思っていますし、
また、あのように本当にひどい条件の中で、大変な仕事を成し遂げられた
現場の人々に対しまして、私は個人的に本当に感謝をしたいと思います。
彼らが日本を救ったと思っております。

本当に勇敢な人達でした。


マークⅠは最も格納機能が弱い原子炉

マークⅠという沸騰水型原子炉というのは
長い問題を抱えたという歴史を持っております、

この事はよく知られていることでして、
わたくしは1972年に大学を卒業してすぐにかかわった仕事というのがこのマークⅠの仕事でございましたけれども、
まず、NRCがその時に言っておりましたのが、原子力規制委員会が言っておりましたのが、
「マークⅠというのは、この原子炉として格納があまりにも小さい」という事でありました。
この炉が出力するパワーに比べて格納があのように小さいというのは、極めて原子炉の中でもユニークなものでありまして、
他の原子炉というのは、このマークⅠよりもはるかに格納容器のサイズが大きいものであります。
1972年当時のこのNRCのメモがあります。
みなさん方が必要とあらばそのメモをEメールでお送りする事も出来ますけれども、
1972年当時NRCは
「このような問題を持ったマークⅠというものは、ライセンス、許可を与えるべきではなかった」と、
「しかしながら、すでに許可は与えてしまっているので、もし、この炉を止めるという事になっていまったならば、
アメリカの原子力産業全体の伸びを止めるという事になってしまうから、
それはあまり好ましい事ではない」という趣旨の事が書かれたメモがすでに72年当時に出ています。

1976年当時、わたくしは今度はマークⅢの仕事を始めるようになったんですけれども、
このマークⅢというものに関しましては、NRCはテストをするという事が必要でありました。
そのテストをしてみたところ分かったのは、圧力が下がるどころか上がるという事が分かったわけです。
その結果、マークⅠに関してもひょっとして何か事故があった時には、あの原子炉自体がもう吹っ飛んでしまうと。
その、地上から浮き上がってしまって、飛んでしまうというような
設計上の問題があるという事が分かったわけであります。
で、そのようなことに対応するために、NRCはマークⅠに関しましては
ストラップ、ま、ベルトのようなものを装着いたしまして、
トーラスと呼ばれております、円形の丸い部分というものが飛ばないように、押さえつけるという
デザインの変更をしたわけでございます。
これが1976年でありまして、始めてマークⅠの設計に対して修正が加えられたというのがこの時です。


ベント

1979年にスリーマイル島の事故が起こりました。
あの時にはスリーマイル島の原子力発電所の格納容器の中で水素爆発があったのです。
その時まで水素が発生するなんていう事は原子力産業は全く推定はいたしておりませんでした。
そこで、10年ぐらいたちまして、またもう一つ、水素のベントをするという部分がマークⅠの設計に付け加えられました。

従いましてベントが付け加えられたわけですけれども、
ベントという発想というのは格納というものの発想とある意味逆であります。
格納というのは出来るだけ放射性物質を格納して中に閉じ込めておこうという発想な訳ですけれども、
ベントというのはそうではなくて、格納容器からそれを放出してやろうというものであります。
そのためにエスケープバルブという放出弁のようなものが付け加えられまして、
このマークⅠの格納では、格納がもし水素が発生したような時にはホールドすることはできないということで、
このようなバルブが設けられ、ベントというシステムが加えられたのです。

わたくしはバーモント州に住んでいると言いましたけれど、
毎朝、家内と散歩するのを日課にしております。
で、ある2月、本当に福島の事故が起こる3週間ぐらい前の事でしたけれども、
いつものように散歩をしておりました時に、
彼女が「これだけ原子力のコンサルをやっているわけだけども、こんなに原子炉には問題があるというなかで、
実際に次の事故が起こるとしたらどこだと思う?」というふうに聞きました。
で、私はその時彼女に言ったんです。
「どこで起こるかというのは私にはわからないけれども、起こるとしたら、これはマークⅠの原子炉で起こるだろう」
といいました。

という事で、まず原子炉のマークⅠに関する最初の問題というのは
デザイン的に設計的に、
これは各種あります原子炉の中でも、最も格納機能が弱い原子炉であるという事が第一の問題であります。


地震

第二の問題というのは地震という問題であります。
これは福島というところに限らず、日本というのは一般論といたしまして、
世界のどの国よりも最悪の地震に襲われやすい国であります。

この福島の原子力発電所というのは1970年から78年にかけて作られていく訳でありますけれども、
その時にはもちろん、地震という事に関しては
当時持つ事が出来たベストな知見を持って、それは設計されたのだろうと思いますけれども、
しかしながら、80年代から90年代になるにつれまして、
実はこの福島第一発電所が設計されていた時に想定されているよりも、
もっと強い津波、あるいはもっと強い地震があの地域にはあるいは日本全体には起こり得るというような
地震学上の知見が増えてまいりました。


ですから二つ目の問題というのは、ここ少なくても過去20年位の間に、十分な情報が上がって来まして、
第一第二発電所というのは、当初設計されていたものに対して
より大きな地震、より大きな津波が来るかもしれないという事が分かってきたわけでありますので、
設計には手直し、修正がなされるべきであったのに、それがなされなかったという問題であります。


規制当局と東電との密接な関係

三つ目。
このパズルの中の三つ目のピースは何かといいますと、
これは規制当局とそれから東電との間の関係が密接すぎたということであります。
これに関しまして日本の皆様にルールを申し上げる必要はないと思います。

今申し上げましたように3つのピースが相まって、3.11になったということであります。
すなわち第一はマークⅠというものの持つデザイン上の問題。
それから二つ目には地震に関する情報というものがあったにもかかわらず
その知見が利用されなかった、あるいは無視された。
で、三つ目は規制当局と東電との関係が密接すぎたということであります。

しかしながらこの問題というのは、なにも日本だけに限った問題ではありません。
この問題、すなわち、規制当局と事業者があまりにも深い関係を持っているという事は、
アメリカでも、ヨーロッパでも、私は散見してまいりました。
ただ、一番懸念しておりますのは、
途上国というのはこれから原子力をやっていこうという所についているわけですけれども、
そういう時に規制当局と原子力発電所を所有している事業者との間の関係が
あまりにもぬくぬくとした、近い関係になりすぎるのではないかという懸念であります。

わたくしはこれを山びこ効果と呼んでおります。
ご存じのように残響質と言いますか、エコーチェンバーというところに人々を入れますと、
そうして、そこでみんなの意見が一致しますと、
みんながもう、同じ意見しか持っていないという事になりますと、
同じ事しか言いませんので、そこでは山びこの様にどんどん、どんどん超えが大きくなっているという現象があります。
この問題というのは何も日本の問題だけ、
ま、日本の問題というのはアメリカよりは大きいだろうと思いますけれども、
しかし、日本だけの問題ではありません。
これはエコーのようにみんなが同じ意見を持つという事によって増幅され、
そして原子力に関する神話がどんどん広がっていったのであります。


つづきは続きを読む





原子炉の設計

わたくしは今回の事故を振りかえりますと、
世界の原子力会がこれから新たに原発を作っていこうというように決める前には、
もうちょっと理解しなければいけない事があると考えます。

まず最初、なかなか理解できない、そして定量化出来ない問題でありますけれども、
デザインベースが的確であったかどうかという問題であります。
どういう事かと言いますと、
エンジニアとか科学者というのは、その設計をする時には、
その当該発電所が最強、最も高いところで耐えられるレベルのイベントはこれであろうと。
そのイベントに対して、この設計は大丈夫であろうという事で、アグリーして定める訳です。

わたくしが仕事をしております原子力の世界におきましては、
いったん事故が起きれば、その事故というのはものすごく重大な事故になるわけですけれども、
しかしその事故が起こる蓋然性(がいぜんせい)あるいは確率というのはとても低い訳であります。
普通の日常生活をやっておりますと、100年に一回のような出来事と言われても、
なかなか理解はできない訳でありますが、
それでも、閾値としては充分ではないといわれますと、
例えば2万分の1と、2万年に一回というような事を言われますと、それはなかなか理解をしがたい訳であります。
福島のような事故が世界のどこかで起こらないという事を担保するためには、
そのような数字での確率というようなことを考えなければいけないというのは、
なかなか定量化し、また理解するのは難しいことです。

次の問題は地震に関係する問題です。
どうやら、福島第一の2号機と3号機というのは地震には耐えたらしいと、
ただし津波によってやられてしまったという事は言えそうでありますけれど、
1号機に関しましては本当に地震に耐えたのかどうかということは明らかではありません。
ですから、今後数年間にかけまして、
1号機というのは本当に地震に耐えたのかどうかという事に関する教訓は学んでいかなければなりません。
25:30


外部電源喪失

東電それから原子力規制委員会というのは外部電源喪失というところに注目をしているようです。
確かに津波が襲ったという事によりまして、1号機から4号機それから5号機
これに関するディーゼル機発電機というのは、全くその機能を喪失してしまったという事がありました。
6号機に関しましては一機だけディーゼル発電機は生き延びたようであります。

さて、このディーゼル発電機というのは地下に置かれておりました。
これは非常に重量が重いものでありますので、
日本のような地震多発国に置きましては重いものは、何か上の方には置きたくない、という事はあるでしょう。
ですから、1970年当時には、その論理的な既決としてディーゼルのような非常に重いものは、
これは地下に装着するという判断がありました。

27:06
しかし、結局はそういう事が分かっていなかったために、間違ったところに置かれてしまった事だろうと思います。
しかしながら、20年ぐらい前に、このような大きな津波が襲うかもしれないというような、
方法、知識というものがあり得たとすれば、
高いところに、そのディーゼル発電機を置く事があり得たとおもいます。
そして、高いところに置いたからと言って、
発電所の機能、性能に何ら影響を及ぼすという事は無かったでありましょう。
ただし、それをするためには米ドルで1億ドル位のお金がかかったという事なのです。



冷却用ポンプ

次の問題ですけれども、
福島でどうなったかという事について、やっと今分かりつつあったという事ですけれども、
これは外部電源の喪失という問題ではなくて、
究極的な冷却機能の喪失と、究極的な冷却能力、冷却機能がどうであったかという問題であります。

あの福島の事故直後の写真を見ていただきますと分かりますが、
福島の現場では、冷却用のポンプというものが設置されています。
これが海沿いに置かれています。
この分布の役割というのへ、冷却するというのがその役割であります。
そして、ディーゼルがそのような指令を得て、そしてその冷却水を炉の中に運ぶというような事をやるわけですが、
動力として、
しかしながら、ポンプそのものが機能しなかったという事があの事故の時に起こってしまいました。
しかし、ディーゼルの電源があればよかったと言われるかもしれませんが、
もし、ディーゼルの電源が生きていたとしても、私はメルトダウンという事は避けられなかったと思っております。
なぜならば、海沿いに置かれておりましたポンプが、
結局は津波によりまして潅水してしまって機能を果たさなかったからであります。

30:16
事故が起こって4週間ぐらい経ったときに、
日本人の、もう退職をなさいましたポンプエンジニアの方から連絡を頂きました。
この方が言うには、「福島第二のポンプを見てみろ」というふうにからは言いました。
「第一ではダメだったけれども、第二ではちゃんと機能を果たしている、
それは何故かというと、設計が違うからだ」というふうに彼は言っていました。
ですから、第二の場合はちゃんと学んで教訓を学んで、違う設計でポンプを置いたにもかかわらず、
そこで獲得された知見と言うのは第一に生かされる事は無かった訳です。



二つ目の問題、これはなかなか手ごわい問題で対応するのが難しい事ですけれども、
冷却を目的としたこのポンプを、どうやって防護するかっていう問題であります。
これは海沿いに置かれている訳ですけれども、
ディーゼルだったら別に他のところに置いてもいいという事があるかもしれませんけれども、
ポンプというのは、冷却水を吸い上げるためのポンプであり、
そして、冷却水というのは海にあるわけでありますから、
海沿いのところから、うんと遠いところに動かすという事は、これは出来ない訳であります。
ですから、今後の対策として、より難しい事を考えなければならないのは、
この海沿いに置かれているポンプをどのように防護するかどうか、という問題です。

次はバッテリーが十分ではなかったという問題です。
バッテリーというのは、なにも原子力発電所のディーゼル電源のような
巨大な動力を動かすということのために使われるためのものではありません。
せいぜい小さなバルブを動かすための、数時間持てばいいというためのものであります。
ですから、そのうちディーゼル発電が復旧すれば、
それまでの間持てばいいというのがバッテリーの役目であります。
ですから、今回の事故におきましても、バッテリーの存在というのは、全く不適切でありました。
これは、世界的にも言える事でありますので、
世界的にこれからバッテリーの量を増やしていかなければいけないということもありますし、
それと同時に、4時間しか、4時間持てばいいではなくて
最長2日間ぐらいは持つという程のバッテリーの準備が必要だと思います。


3号機の爆発

福島では1号機と3号機の間で、二つの爆発が違っております。
エンジニア的観点から言いますと、1号機と3号機の爆発は違います。

この話は格納が不適切であるという話なんですけれども、
その爆発が違うという事で、
1号機の場合には、ショックウエーブ、衝撃波というのは音速よりも少ないところで伝わってきております。
これをエンジニア的言葉で言いますと、
「デ・フラブレーション」と呼びます。

で、このようなデ・フラグレーションというものは、当然損傷を伴うものでして、
1号機もそれなりの損害を受けてはいます。
しかしながら、3号機の爆発というのは、これは全く違った種類の爆発です。

わたくしはこの3号機の爆発の場合の衝撃波を測定してみました。
まず、建物をきちっと測り、建物をスケーリングして、
実際にその建物がどんな風に動いたかという事から測定をしたわけでありますけど、
3号機の場合は音速よりも速い速度で衝撃波が走っております。

で、エンジニア的言葉で言いますと、
このように音速よりも速いスピードで衝撃波が走る事を「起爆」といいます。
そして、音速よりも緩い速度で衝撃波が走った時には「デ・フラグレーション」といいます。

例えば、それにどういう違いがあるかといいますと、
もし、「デ・フラグレーション」だった場合この部屋でそれが起こったといたしましょう。
そうしたら、窓は吹っ飛ぶでしょうし、この部屋にいる私たちはみんな怪我をするでしょうけれども
しかしながら「起爆・デトネーション」という事になりますと、
「この部屋全体が構造的に破壊されてしまう」という種類の爆発です。

従いまして、原子力産業界というのは、
3号機の爆発というものがどういうものであったのかという事を、より良く理解しなければなりません。
これは、スリーマイル島とも違います。
それから、1号機とも違います。
これらはそれぞれ、「デ・フラグレーション」的な爆発だったのですが、
3号機の場合には格納そのものを構造的に破壊してしまうような種類の爆発であったという事ですので、
この事をよく、原子力産業界は、理解し、把握しなければなりません。

最後に書いてあります、ベントにつきましては、すでに申しましたので、これは言いません。

38:25
避難
現場と本社の認識差

次にお話しをしたいのは避難です。
事故が起こりまして二日目にはこの事故というのは
レベル7の7段階目の事故であるという事は、これは明白でありました。
これはチェルノブイリの事故に相当する7段階のものであるという事は分かっていました。

で、わたくしは3月15日にCNNに出た時に、
「これはもうすでにレベル7の事故だ」という事を申しておりましたけれども、
その同じ頃にアメリカのエネルギー省のチュウ長官は
「いや、あれはレベル5である」という発言をしていました。

この、「5と7の違い」というのは、非常に大事でありまして、
緊急時避難区域の内容にも重大な意味が影響してきますし、
「どれくらい早く個人が避難しなければいけないか」という事にも影響してまいりますし、
また、「原発からどれくらい離れた距離まで避難しなければいけないか」という事にも関係してくるから、
この違いは非常に大きなものです。

わたくしはスリーマイル島の事故の時に、それにまさに携わっていた専門家として、
福島の事故に置きましても、
あのTMI(スリーマイル島)の時に我々が犯したと同じアメリカのミスが福島に於いても繰り返されたなと思いました。

スリーマイルの時にも、それから福島の時にも
現場で実際に原発を動かしていた人達は、
「あの事故がいかに重大なものであったか」という、その事故の重大性につきましては、非常によく認識していました。

ところが、スリーマイル島の時にも、福島に於きましても、
事故自体には30年という年限の差はありますけれども、
結局その重大だという事に気が付いた現場のところが、本部に連絡をした時には、
これはアメリカの場合にはジェネラル・パブリック・ユーリティーというところでしたし、
日本の福島の場合は東電ですけれども、
現場から実際の本部にコンタクトが行った時に全体のプロセスのスピードが落ち始めました。

スリーマイルの事故の時ですけれども、
本社側というのはどうしても「会社の資産を守りたい」という発想になってしまいます。
そして現場は「これは避難させなければいけない」という事を望んでいたにもかかわらず、
本社側からは「避難をするという事はさせないように」という指令を出しています。

42:45
私は福島でも全く同じ事だったと思っています。
現場のマネジメント、原発を担当していた人達は、初日から、そして最初の1週間
以下にこの事故がひどいものであるかということを認識しておりました。
ところがその情報が命令系統の上にいけばいくほど、
その動機はどういうところにあったかは分かりませんけれども、
その情報が上に行けばいくほど、早く行動するという事が出来なくなってしまいました。

この二つの事故の間で、機械的な安全性という事は、
相当改善するための努力はなされたという事は言えるだろうと思いますけれども、
しかしながら、体質的な問題と言いましょうか、制度的な問題と言いましょうか
本社の人達、本社の役員たち、あるいは本社機能というのは、
どうしてもその部分で、早く行動するという教訓は学んでいないように思われます。


東電と政府間の内部的問題

このように、現場と東電本社との間の内部的な問題という事に付け加えまして、
今度は、東電と日本国政府の間の問題というのもありました。

この地球の中で、緊急時対応という事に関して誰が一番備えが出来ているかと言えば、
日本人以外にないでありましょう。
なぜならば、日本は地震国でありますので、
緊急事態が起こった場合には対応しなければいけないという、その必要性につきましては、
誰よりも理解している国民であります。
しかしながら、そのような日本でこのような問題が起こったという事は、
世界の他の国も、このような事が起こった場合には、
あまり芳しくない対応しかできないのではないかという事が思われます。

で、わたくしは事故が起こってから1週間以内にCNNに出たんですけれども、
その時にわたくしはこう言っております。
「女性と子どもたちは少なくても50キロ圏外まで避難をするべきである」と。

ですからこのスライドの1行目に書いてありますところの、
すなわちあの事故というのはレベル7であったという事を認識するという事と、
だったら、女性と子どもたちは早めに避難させなければならないという事は、非常に深い関係があるわけです。
ですから、政府もそして東電の本社も
あれがいかに重大な事故であったかという事が理解できていたかどうかということと、
不適切な避難、少なくても女性や子ども達を早めに避難させる事が出来なかったということとは繋がっている訳です。

CNNで私が発言した発言録というのは、全てフェアウインズのホームページに載っておりますので、
わたくしがデタラメを言っているのではなくて、ちゃんとこういう事を言っているんだということは確かめていただけます。


長期的な問題 廃炉・除染

次に長期的な問題として考えなければならないのは、
現場の廃炉、それから日本全体の除染ということであります。


廃炉・溶けた燃料の取り出し

廃炉に関して、アメリカではじめてハンドブックが出た時に、一つの章をわたくしは書いております。
一つの章のわたくしは著者でありますので、廃炉という事に関しましては
ある程度の知見を有している人間であると自負しております。

これまでの解体作業あるいは廃炉作業として、
福島に、一番近く似ている者があるかと言えば、それはスリーマイル島しかありません。

スリーマイル島の事故に関しましては米国は20億ドルを使っておりますが、
これは、ただ単に炉の中から燃料を取り出すという事だけのために20億ドルが使われているのであります。
建物は全く解体もされておりませんで、まだそこにあります。
他のユニットが停止になるまで建物の解体というのはまだだろうと思いますけれども、
メルトダウンした原子炉の中から燃料を取り出すというだけで20億ドルを使っております。

スリーマイル島の場合には溶けた燃料棒が炉の底部のところに、
まぁ、底に重なっているというか、底に横たわっているという状態になっていた訳ですが、
福島の場合にはメルトダウンしたものが実際の炉の底部から外に流れ出してしまっていると、
格納容器の方まで流れ出しているという問題がありまして、
これによって、廃炉の問題というのはスリーマイルに比べて10倍複雑になっています。


スリーマイル島と福島の違い

スリーマイルと福島の二つのケースには違う事があります。
二つ違いがあるんですけれども、
一つは、スリーマイルの場合には、まだ運転を始めてから3か月しか経っておりませんでしたので、
そこで蓄積されました排熱というものは、そんなに高い熱ではありませんでした。

もう一つは炉のシステムの違いであります。
福島の場合には沸騰水型の炉でありますけれども、
スリーマイル島の場合には加圧水型炉でありました。

沸騰水型の炉の場合には、大体70ぐらいの開口部、穴が開いております。
原子炉の底に至りますまでに全体で70位の穴が開いております。

ところで加圧水型の場合は、穴、開口部というのはその上部
炉の上の方にしか開いておりません。
ですから福島の場合には溶けた燃料というのは炉から外に出ていきまして、
格納容器の方へ移動するという事が、ごくた易く行われる状況にありました。
穴が、なにしろ沢山開いていますので。

今では、この溶けた燃料というのは原子炉を出て行ってしまって、
今は床のところに溜まっているという状態でありますので、
その、炉から出てしまった燃料を取り出すなんていう事は、
もう全然、サイエンスというのはこの世に存在していないのであります。
ですから、今から20年ぐらいかけまして、
たとえば、ロボット工学を発展させて、そして床に落ちてしまった溶けた燃料を撤去する、運び出すというような、
新しい学問が開発されていかなければ、
そういう学問が出来ない限り、燃料を取り出すという事すら、考える事も出来ない訳です。

私の予測によりますと、あの福島第一原子力発電所の現場のクリーンアップをするというだけで、
600億ドルの経費がかかるだろうと、わたくしは予想しています。

それから、それ以外に、トータルでクリーンアップをするためには
2500億ドルかかるだろうという数字も出ております。
福島県だけで、大体1900億ドルという事が言われておりますし、
先ほど言いました600億ドルという事を足しますと、大体1兆ドルの4分の1ぐらいの経費が、
トータルのクリーンアップに対しては必要なのではないだろうかということが予想されます。


今後のがん発症の見込み

次の点に書いてありますのは、
福島の事故があったという事の影響、結果に関しまして、
追加的に100万人の癌の発症が、向こう20年間の間にあるであろうという予測があります。

わたくしの、この20年間で100万件のがん発症というのは、
原子力産業界でよく言われております数字よりは高いということは承知しております。
しかし、わたくしのこのような意見というのは、
スリーマイル島での知見に立脚したうえでの数字であります。

ノースカロライナ大学のスティーブ・ウイングという先生がおられるんですけれども、
この人はスリーマイル島の事故後どうなったかという、広範囲にわたる疫学的な研究をされました。

で、このウイング先生がスリーマイルの後で、どれだけの癌の発症があったかということの分析をなさった。
その同じ手法といいますか、同じ考えで延長福島にあてはめますと、
20年間で100万件の癌の発症という数字に私は到達いたしました。

原子力規制委員会はスリーマイル事故の結果「誰も死んでいない」という事を言っておりますけれども、
今色々な分析が行われていまして、
それによりますと、肺がんに関しましては、発症が10%増えた
また、他の癌についても同じような事が言われるという分析が示されています。
こういったスタディーというのはまさにスリーマイルが起こってから、30年ぐらい経って、
やっと色々な分析結果が出てくるようになったのです。



放射性物質の間違った処理方法

57:43
次に書いてある事ですけれども、
放射能、放射線というものをいろんなものと混ぜて、薄めていくような方法というのは、
わたくしは、日本にとって適切な方法ではないと思います。

たとえば東京の学校の例なんですけれども、
ビニールで覆った布に非常に高い線量が検知されたという事がありました。
その処理をどうしたかといいますと、
そのビニールシートの1kg当たり1000キログラムに相当するような、
すなわち1対1000という割合でクリーンな物をそこに混ぜまして、
そして、その割合でもって燃やしたと、焼却したということであります。
このような形で放射線の濃度を下げて、
これを埋め立ての材料にするという、そういう処理の仕方がなされました。

私はこのようなやり方は間違っていると思います。
これまで歴史的に廃棄物をどのように処理したかといいますと、
だいたいが穴に埋めるという事をするのですけれども、
その穴からは漏れだす、漏出という事があったりいたします。
ですから、非常に高濃度の放射線を含んだものをまとめて、
量を少ない形にして、発電所に非常に近いところに貯蔵するということの変わりに、
低濃度の物を日本のいろんな処に薄く、それをばら撒いていって、
そして発電所のところに集中させるのではなく、
濃度が低いという事で、いろんな処に貯蔵しようというか、そこで処理されようとしています。

この戦略がとられる理由というのは、
このように何かと混ぜて濃度を低くして貯蔵しようというのは、
まず、金額が安くすむという事があるでしょう。
しかしながら、忘れてならないのはそのようなピットというのはいずれ漏れ出すという事であります。
放射能というのは300年ぐらいはずっと続くという事を忘れてはなりません。
ですから、この穴から、
そういったものを埋めた穴から、今年な何も漏れ出さないでしょうけれども、
未来のどこかの時点では、漏れだすという可能性は必ずある事でありまして、
その時には安く済んだという時よりは、はるかに大きなコストが必要になってくるでしょう。


日本政府が進むべき道

この問題を解決するためには日本国政府が、
まず事故、あるいはこの状態がいかに重大なものであるかという事を理解し、それを認めるという事であります。
わたくしの意見では、今の政府というのは東電を守るという事が第一でありまして、
国民を守るという事が第二になってしまっている様に思われます。

もちろん原発でなければ電気が作れないという事ではない。
代替的方法はある訳です。
わたくしはまさに日本がそのような分岐点といいますか、
今どちらに行くかという事を決めなければならない状況にさしかかっていると思います。
そして、日本にとってだけではなくて、世界全体に於いて、
新しい電力というのはどうやって作りだすかという事を探し出す一つのチャンスであると思います。

集中型の、すなわち分散型ではなくて、集中型で発電をするという事は、
これは絶対的に20世紀には必要な発電の方法でありました。

このように集中型の発電所を建てるというのは、
ちょうど第一次世界大戦の時にフランスがマジノ線
マジノラインというものにこだわったという事と、なにか似ているような気がいたします。
あのマジノ線というものさえ守れば大丈夫だと思っていて、
フランスは全然技術が変わったのだという事に気がつかなかったのだということを思い起こさせます。

そういう技術を持っているのは、まさに日本企業だと思います。
日本企業というのはまさにこういった再生可能エネルギーの最前線で活動しておられるというふうに思います。
再生可能エネルギーの分野では三菱なんかも素晴らしい技術を持っていると思います。
ただ発電の技術というのではなくて、発電された電気をどういうふうに動かすかという事につきましても、
トヨタとか三菱とか、それぞれ素晴らしい技術をお持ちであります。
ですから、日本がそれを選択しさえすれば、
そして、違う道を歩もうと決断しさえすれば、
そこには非常に大きなチャンスが生まれてくると思います。
その場合の発電というのは、一つの大きな発電所を作って送電、配電をするというのではなくて、
例えばコンピューターを使ったり、スマートグリッドを使ったりして、
分散型の発電形式に持っていくという事が考えられます。

わたくしは何も、このような新しい道をたどる事が簡単であるとか、易しい道だと言っているわけではありません。
そして、日本だけがそれをやらなければならない事だとも思っていませんけれども、
しかしながら、これから原発を含めて新しい発電所を建てるという事をお選びになる、
しかも、こんなに地震活動が活発な国でそれを選択するという事よりは
わたくしはチャンスとして新しい技術で世界を引っ張っていくということが日本にはできると思っております。
世界を古い技術で追いかけるのではなくて、新しい技術で日本が引っ張る事が出来る。
そういうチャンスが日本にはめぐってきています。

ここに映っていますのは私の資格、私はこういう人間であるという事を書いたスクリーンでありますけれども、
わたくしの冒頭発言はこれをもちまして終了いたします。
みなさん方の質問をお待ちいたします。
1:06:58

ーーー

質疑

狭い日本に原発は何基が適当か?

1:07:35
個人会員(フリーランス)の原田と申します。
原発の数といいますか、日本という国の規模でなんですけれども、
これだけの狭い国土で、
ま、アメリカは非常に広くてですね、人口も密集していない所もありますからいいと思うんですが、
日本のように非常に狭い4つの日本列島で、50基を超える原発を作ったということの、
原発の是非はあるでしょうけれども、まずその、
もし日本が造ったにしても、本当はちょっと多かったんではないか、多すぎたんじゃないかと、
大都市の近くにもありますしね、私は思うんですが、
先生から見てどうでしょう、日本の規模なら、原発はまぁ何個ぐらいが良かったのか?
それから、地理的なものと後はソフトパワーですね、
原発に関しては日本は住民を守るそれだけの組織もなかったし、
規制庁のソフトパワーも非常にいい加減なものであったということが明らかになったんですけれど、
しかし、これから一部の原発はある程度動かしていかなければならないという部分もありますので、
ま、どれ位の原発が、このソフトパワーの官僚主義が非常に強い国でですね、やっていけるのか?
それからこの狭い国土でやっていけるのか?
先生の考えをちょっと教えて下さい。

アーニー・ガンダーセン:
ありがとうございます。
原子力発電所を立地するという事に関しましては3つの条件があると思います。

まず第一は冷却水が十分存在するかどうか
日本の場合は50基の原発を造ることのに足るだけの冷却水は沢山あります。

ところが、二つ目と三つ目の条件に対して、日本にとってはなかなか厳しいものがあります。

まず、二つ目の条件というのは地震活動であります。
日本は国土面積で言いますと、世界に占める日本の国土面積というのは0.3%です。
ところが、世界の地震の10%は日本で起こっています。
という事は、地球上のどこと比べても、日本は30倍地震が多く起こっているという事です。
ですから、1000年に一回とか100年に一回というようなレベルではダメです。
日本としてはこれから予測される、
1000年に一回起こる地震にも耐えられるような原子力発電所を建造するというような事は、
非常に難しい事でありましょう。
地震という観点から言いまして。
構造工学的に言いますと、
その日本が1000年に一回来ると思われているような地震に耐えられるような
それだけの強い原発を造るというのはなかなかな難しい事だと思われます。
原子炉に関して日本では最近ストレステストをやっておられます。
福島の事故の1週間前のレベルで同じストレステストが行われていたとしたならば、
福島の原発は合格したでありましょう。
ですからあのストレステストというのは、
私のようなエンジニアが設計して、我々が考え得る限り非常に強く、強力な、
強いものを建てたんだという事をまさに確認される訳です。
エンジニアがこれだけ強いから大丈夫だというものが造られたんだと確認されます。
ところがその設計された範疇以外の、もっと重大な物が襲った時に、どれぐらい耐えられるかという事は、
このストレステストは示してくれない訳でありまして、
まさにそれが福島で起こった事なのです。

三つ目の条件というのは人口密度です。
日本というのは人口密度の高いお国であります。

ですから、まとめて言いますと、三つの条件のうち一つは日本にとって非常に良好であると。
冷却水は十分にあると。
しかしながら、地震活動と人口密度という観点から言いますと、
原子力発電所を造るという事は日本に於きましては非常に難しいという事が言えます。

計画をしてどれ位十分に強い原子力発電所を建てられるか、
しかも地震活動と、人口密度という、
日本に独特なそういう条件に合わせて原子力発電所を造ろうという計画を立てることになりますと、
そのコストはものすごく高くなりまして、
他の代替エネルギーを開発するという事が
経済的なセンスを持つ事に意味を持つという事にまで原発のコストは高くなる事になってしまうと思うのです。
ただ今のご質問は「何基の原発であったら適正か?」といった内容の質問ですが、
それには私はお答えは出来ないんですけれども、
とにかく日本が持っている厳しい条件というものに耐えられるだけの原発を建てようと思えば、
そのコストというのは、他の代替エネルギーを使った発電という事も大いに考え得るような
そういうコストになるだろうという答えだけをさせていただきます。


GEはマークⅠが欠陥炉だと東電に言ったのか?
プルサーマルではセシウム以外に何が放出されるのか?


1:17:20
個人会員の志村です。
二つ質問があります。
一つは、マークⅠは欠陥炉であると分かってきた時点、例えば30年位の時点で、
GEから東京電力に対して、「もう、この炉は欠陥炉だから廃止しろ」というような事は言ってこなかったのか?
あるいは言ってきたけれども、東電がしなかったのかどうかという事をお聞きしたいのが一つと、
もう一つはプルサーマルというのを日本でやったわけですが、
これは、チェルノブイリにもスリーマイルにもなかった。
プルサーマルだと、多分ストロンチウムが相当出るんじゃないかと思いますが、
これについては政府も東電も黙っていますが、
プルサーマルが爆発した時の特徴、セシウム以外のものが沢山出るんではないかと思うんですが、
その辺はいかがでしょうか?



アーニー・ガンダーセン:
まずはマークⅠについての質問ですけれども
デイルブライドンダウンというGEのエンジニアは私の友人なんですけれども、
彼は1976年にGEを辞めております。
その当時にマークⅠというのは欠陥であるという事を彼は知っておりまして、
なのにGEはこのマークⅠを造り続け、しかもそれをプロモーションしているということで、
自分自身の名誉の問題として、その場に自分の身を置くことはできないという事で76年に辞めております。

GEの立場がどのようなものかといいますと、
マークⅠというものを造った時点で、適応する基準には合致するデザインであったと、
しかも、その後いろいろな変更修正などをこの原子炉には付け加えているので、
今でもそれはデザインとして適切なものであるというそういう立場であります。

GEが今までにマークⅠというものが欠陥デザインであるというような事を認めた事は、一度もなかったと思います。
改正が必要になったということぐらいは認めていると思いますけれども、
しかしながら、その後施しました修正などによりまして、
今でもこれは適切なものであるというふうに思っているというのが、GEの立場だと思います。

アメリカのオイスタークリークというところにあります原子炉なんですけれども、
これは福島よりも古いマークⅠです。
ですから、マークⅠを持っているというのは日本だけの話ではなくて、
アメリカには全部で23基のマークⅠが稼働しています。

ですから、アメリカの原子力規制委員会も、日本の原子力保安院もそれから東電も
マークⅠが欠陥設計である等という事は認識していないという事であると思います。

ですからわたくしとか、あるいはデイルブライドダウンのようなエンジニアが
長年にわたって、マークⅠというのは欠陥であるという事を言い続けているんですけれども、
しかしながら、規制当局はそふ条項という言い方をしますけれども
あの時によかったのだから、あの時によかった物は今でも引き続きそれは適正であるという考え方を取っています。


次にプルサーマルのご質問ですけれども、
あれは、紙の上ではとても新しい新規のアイディアですし、
紙の上ではなかなか結構なデザインのように思われます。
しかしながら問題は、
炉のコントロールという事が、ウランを使う原子炉よりも、もっと微妙な事が要求される。
炉のコントロールがとても難しいだろうと思います。

ですから、この種類のデザインというのは、
とにかく造るまではどんなデザインでもいいもののように見えるわけです。
で、実際にそれが運転されますと、運転上の問題というものが明らかになってくる。
ですからそこの明らかになってくるまではデザインというものはいいように見えるということだと思います。

それからプルサーマルでどんな物が放出されるかという問題ですけれども、
プルサーマルの場合にはプルトニウムが沢山放出されます。
これは福島の場合に放出されましたストロンチウムやセシウムよりも、
もっと、その危険度、有害度の高い物質であります。

ああ、MOX燃料の事を言っているんですね?

MOX燃料というのは混合燃料という頭文字をとっているんですが、
福島の原発に関しましてはすべて炉心にプルトニウムがありました。
なぜならば、ウラン238というのは、長くそれがいればいるほど、プルトニウムというのが産出されていきます。
ですから福島の場合には6つの炉、全てに於きましてその炉心にプルトニウムがあります。

ところが3号機の場合にはそれに追加的なプルトニウムが入っております。
なぜならば3号機に於きましてはMOX燃料というものが使われておりまして、
MOX燃料が30束入っております。
そこには追加的なプルトニウムが含まれております。

その追加的なプルトニウムの量というのが3号機の場合には十分多くはなかったので、
事故の進展の仕方というのが別の他の号機と大いに違ったというところまでは行きませんでした。
それほど多くのプルトニウムが追加的にはなかったからであります。
しかしながらMOX燃料が完全に炉心部分に、全部あるという事になったのならば、
3号機の場合は原子炉のコントロールというのは、非常に他の炉と違ったものになったと思います。
ウランを使ったものとは全く違った炉の管理、炉のコントロール状況になったと思います。

だからと言って、3号機の事故がより軽微に済んだという事では、全くありません。
30束のMOX燃料が入っていた訳ですから。


核燃料の廃棄物の最終処分方法は?

1:28:44
テレビ朝日の川村といいますけれども、
今後の日本のエネルギー政策についても参考になる発言だったので感謝しておりますが、
これから、アメリカも34年ぶりに原発の許可が下りたという事で、
将来アメリカも、あるいは日本も国際的に核燃料の廃棄物、中間貯蔵施設の場所すらが、
きちんと固まっていない。
最終的に廃棄するのに地中に固化するという方法だけで、
全世界的に上手く成功するという事を信じられておられるのか、
あるいは他に何か考えなければいけないとお考えなのでしょうか?


アーニー・ガンダーセン:
アメリカが最近発行いたしました認可というのはAP1000と呼ばれるシステムなんですけれども、
これは非常に面白いポイントがありまして、日本では絶対に使えないという種類の設計だと思います。
AP1000というのは、巨大な水槽、水のタンクを屋上に置くという、そういう設計になっております。
全部で600ポンド位の重量になって、これをKgに換算しようと思ったんですけれど、うまくいかないんですけれど、
とにかく、巨大な水タンクを屋上に置くというシステムになっておりまして、
日本のように地震のある国ではこんなデザインというのはこれはあり得ないとい事だと思います。
ですからアメリカでもこの認可が発行されましたのは
地震活動の低いジョージアというところに対して発給されたんですが、
カリフォルニアなんかでは、決してこれは認可される事はなかったでしょうし、
また日本ではちょっとあり得ないシステムであろうと思っております。

さて、ご質問の幅広いポイントというのは
使用済み燃料のその処理をどうするのかと、廃棄物をどうするのかという事だったと思いますけれども、
私は大学に行った時に、いつも思っていたのですが、
どんな問題があったとしても解決策というのは5年も経てば必ず出てくると、
そういうふうに思ったものでありますが、
決してその5年先というのは一度も来た事がないという感じがいたします。
で、固めて地中に埋めるというのは、短期的にはいいかもしれませんけれど、
本当にその廃棄物が崩壊をしてしまうには25万年もそこにキープしなければいけないという状況がありますので、
硬化してそれを地中に埋めるというのは、それはソリューションにならない訳であります。
廃棄物の処理という事に関しましては、他の国に比べて日本というのは、
よりひどい、厳しい状況に置かれている事だと思います。
これだけ人口が多く、しかも地震活動がある
で、他の国だったら、地震活動の無い、あんまり人口のいない所を付けるという事が可能だったりするのに、
日本の場合はそれが厳しいという事だろうと思います。
でも、福島の事故があったことによりまして、
日本は好むと好まざるとにかかわらず、もう認識をさせられるという事だろうと思います。
核燃料サイクルというのは決して閉鎖的なサイクルではないと、
要するにウランがあって、それを再処理して、そうしたらそれをまた、システムの中に入れてやって、
そのサイクルがぐるぐるぐるぐる未来永劫回っていて、
もう、一旦そのサイクルが回り始めたら全然心配する必要がないという、
「そんな閉鎖的なシステムではない」という事を、みなさん方は認識せざるを得なくなった事だと思います。
島国だし、これだけの地震があったら、
それをどうしたらいいのかという事はわたくしも本当に懸念をしていますけれども、
残念ながら「こうすればいいだろう」というようなお答えをわたくしは持ち合わせていません。

まず、わたくしの、この会を〆るにあたりまして、もう一度言いますが、
福島第一、福島第二で勇敢な活動をなさった方々に、再び尊敬の念をここで表明したいと思います。
それから皆様方にはここまで足を運んでいただきましてありがとうございました。


ーーーー

ここまで読んでいただきましてありがとうございましたヽ(。◕ᆺ◕)ノ




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comment 3
コメント
お疲れ様です。凄い大変な作業だったと思います。日本中の人に見てもらって、まじめに考えてもらいたいですね。
ぬこ主 | 2012.02.29 16:42 | 編集
キーコちゃん!
いつもありがとう!

ガンダーセン博士の基調報告は
物凄く科学的・客観的・論理的で、
わかりやすく、
しかも示唆に富んでいて、
全ての国民に見て欲しいって思いました。

オレは去年の3月に
ガンダーセン博士の
1号機と3号機の爆発の違いについてのレポートで
初めて3号機の爆発映像を
この目で見た時の衝撃を
忘れることはできません!

なぜなら、その映像は
あまりに強烈すぎたから
日本のマスコミは全社つるんで自主規制し、
日本国民の目からシャットアウトしてしまってたからです!

その映像は、
まるで原爆のきのこ雲みたいに
ムクムクと黒煙が吹き上げていて
これは核爆発に違いない!
とオレは直観し、フクシマは
チェルノ以上の大事故に違いない!
政府やマスコミの言うことは信用できない!
もう騙されないぞ!
って確信し、
それからは
キーコちゃんのように
必死でインターネットの記事を漁るようになったのです。

広瀬隆氏は
このガンダーセン博士の3号機爆発の画像を見て
これは3号機の燃料プールの核燃料も
空中で一緒に爆発したんだと
おっしゃってました

誰が考えてもおかしい
この日本における
原発推進をまだ止められない現実に
毎日憤りと苛立ちを感じながら
生きています。

キーコちゃんのブログを
読むとなぜか癒され
オレも頑張るぞ~!って
気持ちになります。

いつもありがとう!!!!
himadarake | 2012.03.01 02:28 | 編集
キーコさん、はじめまして!
文字起こしを何回か経験しています。
なので、この量の作業がどんなに大変か、わたしにはよく分かります。

ガンダーセン氏はいつも、素人の我々にもよくわかるように、丁寧に簡潔に、難しい物事を説明してくださいます。
この会見を、キーコさんが起こしてくださった膨大な量の文字と一緒に。わたしのブログ( http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr )に転載させていただいてもよろしいでしょうか?

お返事お待ちしております。
まうみ | 2012.03.01 14:01 | 編集
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