03.22
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原発の再稼働 安全の根拠はどこに
東京新聞 2012年3月22日 社説
四月に迫った“原発ゼロ”を前に政府が再稼働を急いでいる。
だが肝心の安全について科学的根拠は十分示されてはいない。国民には安全安心が優先だ。
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の安全評価(ストレステスト)は、
経済産業省原子力安全・保安院の審査を通過した。
内閣府原子力安全委員会は週内にも、保安院の評価を検証する。
再稼働への焦点は首相や関係閣僚による政治判断と地元自治体の同意である。
◆政治判断できるのか
政治判断とは、一体どういうことなのか。
再稼働の可否は当初、定期検査などで停止中の原発については、
ストレステストの一次評価の結果を踏まえ、地元同意を得た上で、
首相、官房長官、経済産業相、そして原発事故担当相の協議で最終的に判断するとされてきた。
ところが、評価作業が大詰めに来て、地元同意を求める前に四人の閣僚が一度判断を表明し、
地元合意はその次、そして再び首相らが最終判断という手順に改めた。
慎重というよりも、立地自治体が「国の判断だから」と同意しやすくするためなのか。
もしそうなら、たった四人の密室協議が地元の意向を決定付けてしまうことになる。
「再稼働ありき」と見られても仕方ない。
確かな科学的根拠に基づくべき判断が、政治判断とは一体何なのか。
それで国民が納得すると考えているなら間違いだ。
そもそも、ストレステスト自体に疑問はつきまとう。
一次評価では、地震や津波などの衝撃に原発がどれだけ耐えうるか、
その余裕度を当の電力会社がコンピューターで解析し、その結果を保安院、原子力安全委、政府の順でチェックする。
すべて福島第一原発事故で信頼性が地に落ちた機関である。
事故の原因究明も収束もできていない段階で、その判断を信じろというのが無理だ。
四国電力は、伊方原発3号機の一次評価で、耐震性を想定の一・八六倍としたが、審査の結果一・五倍に修正した。
それでも保安院は「妥当」と評価した。
落第なし。安全性にお墨付きを与えるだけのテストならテストの名に値しない。
原子力安全委の班目春樹委員長は
「一次評価だけでは不十分。事故後の総合的な対策なども含めた二次評価が必要だ」と述べている。
ところが、二次評価に応じた電力会社はいまだない。不信と不安の種は尽きない。
◆地元とはどの範囲か
次に“地元”とは、何だろう。
政府は事前合意の対象を、原則原発から半径十キロ内に絞るという。
原子力安全委が原発防災指針で定める防災対策重点地域(EPZ)の中である。
これに対して、近隣の滋賀県知事や大阪市長が反発を強めている。
滋賀県は関西圏の水がめであり、県民のよりどころでもある琵琶湖の汚染を恐れている。
大阪府の予測では、福井県内の原発事故による放射線の影響は、府内二十五市町村に及ぶ。
原子力安全委は、EPZに代えて半径三十キロ圏内を新たに緊急防護措置区域(UPZ)とし、
圏内の自治体に防災指針の策定を求める方針だ。同じ政府の方針なのに、両者は明らかに矛盾する。
現状では四月中に国内五十四基の原発がすべて停止する。
その前に再稼働への道筋を付けておきたい政府の焦りが見て取れる。
政府は原子力規制の役割を原発推進役の経産省の保安院から、環境省の原子力規制庁へと移す方針だ。
発足が遅れる見込みとはいえ、そのすきを突くような保安院への駆け込み審査が、
大飯から次へと続くのは逆に不信を広げはしまいか。
もし再稼働の可否を審査するのなら、
国会の事故調査委員会の報告を待ち、新たに発足する規制機関が、
調査結果と明白な科学的根拠に基づいて判断するのを待てばいい。
その経過は国民と在野の研究者に公開もすべきである。
日本世論調査会の調査では、脱原発支持が八割に上っている。
本紙と静岡大の調査では、政治判断で全面停止中の中部電力浜岡原発の地元、
静岡県民の八割以上が、全面停止を支持した。
何より優先されるべきは国民の生命と安全だ。
世論調査の結果は、多くの国民にも相応の覚悟と決意のあることを示している。
◆地域の亀裂は避けよ
この国は今、大きな転換点に立っている。
風力や太陽光、地熱など、代替エネルギーの可能性と普及の方策を、国民にわかりやすく示しつつ、
その不信と不安を解きほぐすこと。
そして、原発推進か反対か、再稼働は是か非かで地域に亀裂を生むような、対立を避けることこそ、政治の仕事である。
そこをどうか忘れないでほしい。
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