03.25
Sun
2012年3月24日 飯能市市民会館で行われた、
小出裕章氏講演会の第2部質問コーナーです。
<質問の内容>
・リスクと避難ー現在の状況で東京で育児をするリスクと覚悟・避難するべきか?
・いざという時に逃げるべきかどうか?
今後非常事態が起こった場合小出さんの意見をいち早く知るにはどこに連絡したらいいか?
・1号機は圧力容器にも格納容器にも穴が開いているという事だが、その水は何処へ行っているのか?
・岩手県野田村の木くずを日高市にある太平洋セメントが受け入れるという事で住民の意見が分かれています。
100ベクレル以下であっても受け入れを拒否する自治体があるのはなぜですか?
100ベクレルというのが本当は危険な数値なのか、それとも受け入れる側が恐れすぎているのか。
・国ががれきの広域処理にこだわる理由は何でしょうか?
何故被災地に焼却炉を建てないのか理解できません。
・除染を少しでも早く回復させる手段は本当にないのでしょうか?
・原発を廃炉にするための技術的な研究はなされていますか?
廃炉を実現するためにはどれ位の年月がかかりますか?
・自然エネルギーに転換させるためにどうしたらいいですか?
・日本が原発依存から抜けられない理由は何ですか?
小出裕章さん 飯能講演会 2012.3.24 No.2
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講演会の内容を書き出しました
●リスクと避難-現在の状況で東京で育児をするリスクと覚悟・避難するべきか?
06:28
このご質問に関しては分かる事と分からない事が半々です。
分かる事は被ばくをする事でどれだけの危険を負わなければいけないかという事に関しては、
私が分かる事です。
それは、1年間に1ミリシーベルトの被ばくをするという事は、
それによって2500人に1人が癌で死ぬという危険を覚悟することだと、そういう危険です。
そして、子どもの場合には平均的な人に比べて4倍も5倍も危険が高いと私は言ったわけで、
赤ん坊の場合には1ミリシーベルトの被ばくをさせてしまうと、
500人、あるいは600人に1人は、いずれ癌で死ぬ危険を負わされるという、そういう危険度です。
もし、1ミリシーベルトじゃなくて、10倍の危険を、10ミリシーベルトの被ばくをすることであれば、
その10倍の危険を負わなければいけない。
つまり子どもであれば、50人か60人に1人がいずれ癌で死んでしまうという、
そういう危険を受け入れる事が出来るかできないかという、そういう量です。
(※高校の一クラスに1人って感じ・・・)
ですから、逆に言えば50人に1人が癌で死ぬよという時には
50人のうち49人は被害をこうむらないで済むという、そういう事も意味している訳です。
(※これが木下黄太さんがいうロシアンルーレット・・・)
ただしそれは1年間に1ミリシーベルト、あるいは10ミリシーベルトといった時の量をわたしは言っている訳で、
それが2年3年4年5年と続いていけば、それをまた順番に上乗せされて受けるという事なんですね。
それが私が皆さんにお伝えできる、どれだけの危険があるかという、
リスクがあるかという答えです。
では、そのリスクを避けるために、避難をした方がいいのかどうなのか?という事になってしまうと、
申し訳ありませんが、私にはわからないのです。
それは先程も、これも聞いていただきましたけれども、
逃げるという事は大変な重荷を背負う事になると思います。
生活を、要するに捨てる。
あるいは自分の命の源であった大地を捨てるという、
農民や、酪農家畜産家にとっては、そうなってしまうわけで、
その重荷というのは、多分一人ひとり全員違うんだと、思います。
かた一方は、だから、リスクはもうはっきりしている。
片方の逃げるということの重荷がいったいどれだけなのかという事は、
やはりお一人お一人に判断していただかなければ、いけないとおもいます。
それも家族全員で逃げるという場合と、
男親は生活のために被ばく地に残して、母親と子供だけ逃げるという時の
その重さというのは、やはり、その人たちに判断していただかなければいけないものだと思います。
大変、あの・・・みなさんが悩んで、切実に、この質問をわたしにして下さっているという事はもちろんわかります。
どこの集会に行っても、必ずこの質問をわたしは受けることになるのですけれども、
申し訳ありませんけれども、私はお答えできない。
一人ひとりの方がご自分の重荷というのを測って、決めていただくしかないと、いうのが私の答です。
●いざという時に逃げるべきかどうか?
今後非常事態が起こった場合小出さんの意見をいち早く知るにはどこに連絡したらいいか?
10:35
今後起こることの危険は、私は先程二つあると聞いていただいたつもりです。
一つは溶けてしまった炉心が、どんどん防壁を突き破って、地下にのめり込んでしまって、
それが地下水に接触して汚染を広げるという、その危険が一つです。
ただそれは、ジワジワジワと進行していく。
そして海を汚して、じわじわと食べ物を汚すという、そういう、危険に結びついていくんだと思います。
ですから、そちらはまだ、いざという時になってどうするべきかという、
緊急性を持って判断を迫られる事は無い方です。
もう一つの危険は、
4号機の使用済み燃料プールというのが、今、壊れたまま、宙ぶらりんのようになっているのですね。
東京電力ももちろんそれを知っていて、
事故があった、かなり早い段階で耐震補強工事というものを施したという事になっています。
傾いてしまった使用済み燃料プールの下に、沢山の鉄柱を並べて、
それ以上壊れないようにするという事をやったと言っているのですけれども、
あの現場はものすごい被ばく環境で、ゆっくりとそこで作業者が仕事ができるというような状態ではなかったのです。
ですからわたしはどこまでちゃんとした耐震補強工事が出来たかという事に、不安を感じていまして、
もし、これから大きな余震が起きて使用済み燃料プールが崩壊するような事になれば大変だと、
実は私は危惧している訳です。
そして、あのプールの底には使用済み燃料が広島の原発に比べて、
約4000発分に相当するぐらいの放射能があるのです。
これまで大気中に放出された放射性物質は、日本政府の公表によっても170発分。
多分その数倍とわたしは思っているのですけれども、
そういうものに比べてなおかつ10倍というような放射性物質が
むき出しに環境に出されてしまうという可能性がある訳です。
ですから、「大きな地震が起きないでくれよ」と、私は今願っているわけですけれども、
もし、起きてしまえば、これまで以上の放射能が東京にも飛んでくるという可能性は、もちろんあると思います。
ですからみなさんが注意をしなければいけないのは、
福島第一原子力発電所の周辺で、大きな地震が起きたか起きないかという、その事です。
もう、毎日のようにあの辺で余震が起きていますので、私は毎日のようにヒヤヒヤしていますけれども、
本当に大きな余震が起きた、という事が分かった時には、
避難も含めて皆さんも準備を始めた方がいいだろうと思います。
東京まで放射能が飛んでくるには、多分何日・・何時間か、あるいは半日・・・もっとあるかな・・
半日から一日ぐらいの猶予はあると思いますので、
その時間のうちに決断をして、風下に入らないようにするという事です。大切なことは。
とても難しいと思いますけれども、距離が離れていても風下に入ったらおしまいです。
私は先程、飯能の人達に被害を及ぼすと言って地図を回転したりしてお見せしたりしましたけれども、
風下に入らなければ大丈夫です。
風下に入ればそれで被害を受けることになってしまいますので、
充分に気象条件等に注意をしながら、逃げていただくしかないと思います。
私に連絡が取れるかどうかという事で言えば、
多分、取れないと思います。
私は、もしそんな事になっていれば、きっと、自分のできることのために、走り回っていると思いますし、
個別の方々からのご質問を受けるような余裕は、多分ないだろうと思います。
ただし、私にできる限りの発信は、そういう時にはし続けるつもりですので、
ま、マスコミが私の意見を使ってくれるかどうかはわかりませんが、
マスコミ、あるいはネット上の情報というのを注意してみていただければいいと思います。
●1号機では圧力容器にも格納容器にも穴が開いているという事だが、その水は何処へ行っているのか?
15:00
原子炉というものは、いついかなるときにも冷やしておかないと壊れてしまうと言う事を
今日初めに聞いていただきました。
放射のがある限り、その放射能が猛烈に発熱をしている訳ですから、
冷やさなければ終わり。当り前なんですね、
ですから今も、一年経った今も、とにかく冷やそうって言って、水をどんどん、どんどん入れている。
原子炉の炉心という部分にも入れているし、格納容器というところにも入れている。
でも、もうすでに圧力容器という巨大な圧力がまはそこが抜けてしまっているわけだし、
格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁であるその容器も、
実はもう、あっちこっちに穴が開いてしまっているのですね。
だから、どんどん水入れなければいけないのだけれども、入れた水はどんどん漏れている。
それで、事故の当初からそうですけれども、
原子力発電所の敷地の中に、
10何万トンもの汚染水が溜まっていると言われてきました。
じゃぁいったいどこに溜まっているのか?というと、
ジャージャー水を入れたのが漏れて、あちこちに流れていっているわけですね。
たとえば原子炉建屋の地下であるとか、
タービン建屋の地下であるとか、
あるいはトレンチ、ピット、建て坑と言っているような、
ま、そういう地下の構造物と言われているところに汚染水が溜まっていると、政府と東京電力が言ってきたのです。
そういう構造物はみんなコンクリートでできているんです。
皆さん分かっていただけると思うけれども、コンクリートって必ず割れています!
水が漏れないように出来るっていうのは、コンクリートっていうのはもともとそういう性能は無い。
つまり、コンクリートの中に汚染水が溜まっているという事は、
どんどん漏れているという事なんです。
ある時に、ピットという部分で、海面より上の部分にピットの一部がでていて
そのむき出しになったピットから、滝のように汚染水が流れ落ちているというのを見つけた事があって、
その時に東京電力が慌ててそこを「何とか塞がなければいけない」といって、
マスコミやなんかでも大きく取り上げました。
それで、ようやくにそこは塞いだというんですけれども、
私は何を騒いでいるのかとその時に思いました。
もちろんそこは、むき出しになっているから目に見える。
だからやらなければいけないというのは本当だけれども、
実はほとんどの構造物は地下にある。
原子炉建屋の地価、タービン建屋の地下、トレンチもピットも本当は全部地下にある。
それがみんな割れて、そこらじゅうから漏れている。
たまたま見えたところだけ塞いだってダメだ。
私は敷地に溜まっている汚染水をどんどん安全な場所に移さなければいけないと主張して、
そのための方策を3月の段階で提案をしました。
私の提案は巨大タンカーを連れてきてそれに移せという、提案でした。
巨大タンカーは10万トンとか20万トンの原油を入れる能力がありますので、
そこになんとか核汚染水を移すと、そういう提案をしました。
私は政治は大嫌いなんですが、何人かの政治家と話をしたこともあります。
そうすると、政治家の方も口をそろえて、「それは必要だからやります」といったのですけれども、
結局何にもやらないまま、汚染水はいまだに、どんどん、どんどん漏れていってしまっているという、
そういう状態にあります。
水は必ず入れなければなりません。
入れなければいけないけれど、入れたものは海へ流れていってしまっているという、そういう状態になっています。
●岩手県野田村の木くずを日高市にある太平洋セメントが受け入れるという事で意見が分かれています。
100ベクレル以下であっても受け入れを拒否する自治体があるのはなぜですか?
100ベクレルというのが本当は危険な数値なのか、それとも受け入れる側が恐れすぎているのか。
私は今日聞いていただいたつもりですけれども、被ばくに関しては安全量は無いのです。
ですから1kg当たり100ベクレルという、そういう放射能であっても、安全なわけではないのです。
たとえば、食べ物の事で言えば、今現在1kg当たり500ベクレルというのが暫定規制値といわれています。
お米でも、それを下回ればいいという数字です。
4月からは100ベクレルという、今数値で示した、それは瓦礫のことですけれども、
食べももの1kgあたり100ベクレルというような基準にこれからなるのです。
では1kg当たり100ベクレルのお米は安全か?と言えば、安全ではないのです。
福島第一原子力発電所の事故が起きる前に、
日本のお米というのは1kg当たり0.1ベクレル程度しか、汚れていなかった。
100ベクレルというのは、その1000倍の汚染をもう、許すしかないという、そういう基準値なのです。
日本に生えている木だってそうです。
事故の前のがれきだって、何でもそうですけれども、
1kg当たり、せいぜい0.なんベクレルという放射能しか汚れていなかったのです。
だから、1K当たり100ベクレルと言えば、
私が「世界が変わってしまった」という前の世界に比べれば
ものすごい汚染だと、私は思います。
それを焼却するような事をすれば、何百倍何千倍と濃縮された焼却灰がでてくる訳ですから、
もちろん注意して取り扱わなければいけないのです。
焼却工場で働かなければいけない人々は、普通の労働者です。
私のように元から放射能を取り扱うという事を覚悟して、
放射能業務従事者というレッテルを甘んじて受け入れて仕事しているのではない人たちが、
普通の現場で働いている訳です。
だから、1kg当たり100ベクレルであったとしても、私は注意をしなければいけないと思います。
そういうゴミを本当に受け入れてもいいのかどうなのかという事に関しては、
やはり、ちゃんと議論をしたうえで、危険はあるけれども仕方がないから受け入れようか、
でも、やっぱり嫌だと、どっちかを選ぶしかないと言う事だと思います。
●国ががれきの広域処理にこだわる理由は何でしょうか?
何故被災地に焼却炉を建てないのか理解できません。
私も理解できません。
放射能を取り扱う時の原則というのは、放射能はその場所でなるべくコンパクトに隔離するというのが原則です。
薄めてはいけないというのが放射能に向き合う時の原則です。
今日本の国がやろうとしているのは、汚染したがれきを全国にばらまいて、
それぞれの焼却施設で燃せえと言っている事ですから、もともと原則に反しています。
そして、出てきた焼却灰はそれぞれの自治体で、勝手に埋めてしまえと言っている訳ですから、
それも原則に反しています。
私は放射能を取り扱う原則にのっとれば、どうやればいいかと言えば、そこに書いてある通りです。
要するに、汚染したがれきのある現地に専用の焼却施設を造って、そこで焼くと、
そして出てきた焼却灰も、集中して管理をするというやり方がいいだろうと思います。
なんで国がいつまで経っても、それをやらないのか、大変私も不思議におもっています。
もっとも、福島県内の膨大な汚染瓦礫に関しては、
今のところ、国の方も手を付けられないで、全国にばらまこうという事も
もちろんしようとしている訳ではないのですけれども、
でも、そういうがれきに関しても、急いで専用の焼却施設を造って、え・・・焼くと。
焼く事がいい事なのかどうなのか、という議論はあると思いますかれども、
でも、そのまま瓦礫放置しておけば、放射能というのは移動していますので、
どんどん、また、子どもたちも含めて被ばくしてしまうというような事になるので、
急いで、私は福島県内のがれきも処理する必要があると思いますし、
国がそれをやらなければいけないと、思いますし、
それをやらない国というのが本当に不思議でならないわたしは思います。
●除染を少しでも早く回復させる手段は本当にないのでしょうか?
放射能というものは残念ながら人間の手では消せないのです。
煮ても焼いても無くなりません。
何とか放射能を消したいと思いながら、人間は70年ほどその研究を続けてきているのですけれども、
その方策が見えないのです。
つまり、消せない。
除染というのは汚れを除くと書くのですけれども、
汚れは除けないのです、本当は。
ここにある汚れを隣に移すことは出来ます。
ですから、今も移動させるとおっしゃったけれど、私は移染と呼ぶ。
汚れを移すということはできるけれども、除くことは出来ないのです。
ただし、私は事故後からずーーっと、除染をしなくちゃいけないと言い続けてきた人間なんです。
私が言ってきた除染というのは、非常に限定的です。
子どもをとにかく守るという事をやらなければならない。
子どもが集中的に時間を過ごす場所、学校の校庭だとか、幼稚園の園庭であるとか、各地域の公園であるとか、
あるいは各家庭でも、子どもたちが泥んこになって遊ぶ場所とかは、
表面を5センチとにかく土をはぎ取ってくれと、
私はずっと言い続けてきたのです。
5センチの土をはげば放射能の9割をどける事が出来ると私は思います。
そのため、私はそういう場所で除染をしてくれと言ってきて、
たとえば、福島県の郡山市で、学校の校庭の土をはぎ取ってくれた事がありました。
ところがその、はぎ取った土を郡山市の処分場に持って行ったら、処分場の周辺の住民たちが、
「放射能のゴミなんかこんなところに持ってくるな」と言って反対をした。
そのため、捨てる事が出来なくて、また、はぎ取った土は校庭に逆戻りしたという事がありました。
そんな事はやっぱりしてはいけない。
子どもたちをとにかく守るという事をやらなければいけないからはぎ取ってくれと、
でもはぎ取っても無くならない。
どこかに移すしかない。
移す現場をちゃんと確保しなければいけないという事なのです。
そして、日本の政府は今、そういう放射能のごみの捨て場というのを、
双葉郡内の、町や村に作りたいと言って、打診しています。
打診を受けた双葉町の町長は、
「そんなことは嫌だ」と言って断ったそうです。
私はその町長発言を聞いた時に二つの思いを抱きました。
一つは「あなたがそんな事を言うか」という思いです。
双葉町というのは「原子力正しい理解で豊かな暮らし」と言うのを町の標語にして、
原子力の片棒を担いできた町なのです。
そこの町長が、「事故を起こしたから、自分たちは汚染は嫌だ」という、
その考え方にわたしは、「ん?」と首をひねった。それがひとつです。
しかし、と、次に思いました。
「双葉町という町だって、喜んで原子力を受け入れたわけではない、実は。」
国の、この国ほ国土の作り方の中で、過疎にされてしまって、
出稼ぎに行くしか自分たちの生活が出来ないというところにまで追い込められて、
「やはり、原子力にかけてみよう」と、思わされてしまったという歴史も確かにありましたし、
誰だって放射能なんて嫌な訳ですから、
「自分たちの故郷にそんなものを入れてくれるな」といのは
「あ、なるほど本当はそうなんだろうな」と、私は次におもいました。
ですから、どこかに核のゴミ置き場を造らなければならないのは本当だけれども、
それが双葉郡になる可能性もあるけれども、
でも、住民にとってはあまりにも酷な事だろうとわたしは思いました。
じゃぁどうするのか?と、いうことで、私は実は提案があるのです。
今、私達が「汚染」と言って悩んでいるもの
それは、もともと東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった、東京電力のウラン
東京電力の所有物であったウランが、燃えて出来たもの。
核分裂生成物はそうなのです。
つまりもともとは東京電力のれっきとした所有物なのです。
それを東京電力が勝手にばらまいた。
「絶対ばら撒きません」と言い続けてきた東京電力がばら撒いた。
ばら撒いた途端に東京電力は、
今度は「無主物」だと言いだした、という話しをわたしは先程聞いていただいた訳だけど、
そんな理由、いい訳を決して私は認めたくないと思う。
東京電力のれっきとした所有物なんだから、東京電力に返すのが筋だと、ー笑&拍手ー 思います。
ですから、学校の土地をはぎ取った土も、
東京電力の福島第一原子力発電所に返せばいいと思います。
ただし、今現在福島第一原子力発電所は戦争状態です。
「何とか事故をこれ以上悪化させないように」という事で、今戦っているのです。
ですから、福島第一原子力発電所が無理ならば、私は東京電力の本社ビルに持っていくのがいいと思います。
ー拍手ー
多分東京電力の本社ビルには、会長室、社長室、というような、
高級ななんか絨毯かなんかが敷いていあるのか知りませんが、
わたしは行った事がないので知りませんけれども、多分素晴らしい部屋があるんだと思う、
そういう会長室、社長室から、放射能のゴミで埋め尽くしていくと、重役室も埋め尽くす。
ー拍手ー
どんどんそういう形で、東京電力に徹底的に責任を取らせる。
という事をわたしはやりたいと思います。
そしてそれが・・みなさんも今ちょっと笑った方もいらっしゃいましたが
「あまりにもそれはムリだろう」ということであれば、まだ、行き場所はあるのです。
どこか?と言えば、東京電力福島第二原子力発電所という、広大な敷地があります。
今東京電力は「福島第二原子力発電所は再稼働させる」というような事を言ってきている。
「冗談を言うな!」と、私は思う。
そんな原子力発電所は絶対に動かしてはいけないのだし、
福島第二原子力発電所は核のゴミで埋め尽くすと、ー拍手ー ありがとうございます。
それでも、核の行き場所がないというのであれば、
仕方がないから、双葉郡の住民の人に頭を下げて、そこにお願いするという選択はあるかもしれないと思います。
でも、いずれにしても核のゴミ捨て場というものをとにかく確保して、ま、東京電力に責任を取らせて、
そこに、私が言っている非常に限定的な除染のものを、移染ですね、移動させるということで、
子どもたちの被ばくを減らしたいというのが、私の提案です。
ただしみなさん、考えてみて下さい。
汚れているのは、学校の校庭だけではない。幼稚園の園庭だけじゃない。
さっきの地図で見ていただいた、福島県全部というのは、
山もあれば、畑もあるし、林だってある。
みーんなそれが汚れている。
・・・・もう、土を剥ぐなんていう事は出来ない。
出来ないし、移動させる事も出来ない。
なんか日本の政府は除染をすれば人々が戻れるかのような事を、今言い続けているのですけれど、
決してそんなことはできません。
もう、汚れちゃったところは捨てるしかないんです。
大変住民の人たちに対しては言いにくいし、わたしもお気の毒だとは思うけれども、
除染は出来ない。
その事をちゃんと住民に伝えて、次の生活に早く乗り出すことができるように、
きちっと伝えるという事が、今の日本の政府のやるべきことだと思うのですが、
残念ながら日本の政府は、何か幻想を与えながら、じたいをずるずる、ずるずると遅らせてしまっているという、
そういうことに、なってしまっています。
●原発を廃炉にするための技術的な研究はなされていますか?
廃炉を実現するためにはどれ位の年月がかかりますか?
廃炉というものにも、いろいろなものがあると思います。
たとえば、今、福島第一原子力発電所は事故を起こして、
放射能の本体がどこにあるかすらわからないという、そういう状態にあるのですね。
もともと廃炉という言葉は、こんな事故を全く想定していませんでした。
機械としての原子力発電所が、大変順調に、思惑通り動いた、事故も何にもなかった。
それでも、いつか寿命が来る。
いつか寿命が来た時には、その原子力発電所全体が放射能で汚れた物として残る。
当り前なんですね、事故がなくても、そう必ずなる。
それをどうしようか、というのが廃炉ということだったのです。
一つの原子力発電所を、もし、潰してしまうとすると、
60万立法メートルのゴミが出てくると言われています。
60万立方メートルって、私は数字ではちょっと分かりませんけれども、
とにかく膨大なゴミが出てきてしまう訳ですね。
それを全て放射能のゴミとしてお守をしようとすると、到底採算が合わない。
金がかかりすぎる。
だから、一つの原子力発電所を潰して出てきたごみを
放射能の汚れごとに仕分けをすると、言っています。
そして、ものすごく放射能で汚れたもの、つまり、原子炉圧力容器であるとか、
その圧力容器の中に入っていた様々な機器であるとか、
あるいは、一次冷却水というものが循環していた配管であるとか、
そういうものに関しては、地下に深い穴を掘って、そこに埋めようということになっています。
日本の国の方針では。
ま、世界的にもそういうふうになっています。
実際にやった国はありません。
けれどもそういう事をやろうとしてきました。
そして、放射能の汚れの少ないものは、「もう、しょうがない」と。
「放射能としての管理をはずそう」という事に決めました。
それをクリアランスという言葉でわたしたちは呼んでいます。
ある汚染値以下のものはもう野放しにするという基準を決めているのです。
その基準はたとえばセシウム137であれば、1kg当たり100ベクレルという、先程出てきた数字です。
それをどうやって決めたかというと、
たとえば原子力発電所をバラバラにした時に、鉄骨が沢山出てくるわけですね。
鉄骨もある程度は汚れてくるのですけれども。
その鉄骨をある程度これ以上は放射能として取り扱わないでいいということにすると、
それはクズ鉄屋が買っていくんですね。
クズ鉄屋が買って行って、また溶かして、鉄製品にして出回ってくる訳です。
鉄製品の中には、たとえばフライパンがあります。
家庭で、その再生されたフライパンを使って、料理をすると。
そうすると皆さん分かっていただけるだろうけれども、
フライパンで料理をしていると、フライパンって、少しずつ減っていくんですよ、ね。
減っていっている部分っていうのは、食べているっていう事ですよ、料理と一緒に。
そうやって食べちゃって、人間が1年間に10マイクロシーベルト、
数字を言って恐縮ですかれども、10マイクロシーベルトの被ばくをするかしないかを計算しろと。
10マイクロシーベルトにならないような被ばくなら、もう、野放しにすると。
いうようなのを、クリアランスと呼んでいるのです。
ですから、もしこれから、日本で54基の原子力発電所があるのですが、
それを廃炉にしていくとなると、
一つ一つ、60万平方メートルのゴミが出て、
それを次々と、ある部分は埋めて、ある部分はクリアランスとして、一般に出回せるという事になるのですから、
そういうゴミがわたしたちのところに出回ってくるという事になります。
「いったい何年かかるのか?」と言われると、実は分からないのです。
やったことがないのです。
日本では1966年に動き始めた東海第一原子力発電所という発電所がありました。
それは1998年に32年間動いて運転を停止しました。
それから廃炉作業に入っています。
すでにもう、10数年たっているのですけれども、
いまだに原子炉本体には手を付けることができません。
これから何年かけてやろうかという事で、立ち止まっているという、そういう段階です。
だから、廃炉というのは、
今この会場にいる皆さんが、多分、この中の何割かの人が死んでしまった時も、まだ廃炉は終わらないと
すぐに原子力を廃絶させたとしても、そういう事になるだろうと思います。
ネックは沢山あります。
お金がかかりすぎると、いうこともあるでしょう。
それから人材もいなくなるかもしれません。
今日までのところは原子力というのは、
自分で言うのも変ですけれども、私が原子力に夢を持った時代というのがあって、
それなりにみんな夢に燃えてこの現場に来たんです。原子力の場に。
私が大学に入ったのは1968年でした。
その時には、ま、日本には沢山大学がありますけれど、
昔の大日本帝国という国の時にあった、帝国大学というのが、全国に7つあります。
北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州。
その7つの大学全てに原子核工学科、あるいは原子力工学科という学科があって、花形学科でした。
しかし、原子力というものの実態が次々と明らかになってきて、
これにはもう未来がないという事に学生が気付き始めてしまって、
工学部の中の最低の学生すらが、もう、来てくれなくなったという事になって、
7つの帝国大学から、原子力工学科も原子核工学科も、全てもう、消えてしまったんです。
日本には原子力の専門家を育てるという力が、もう、無くなってしまっているという、そういう段階なのです。
もちろん原子力を推進するような学問は、もうわたしはするべきではないと思っていますけれども、
でもここまでやってしまって、膨大な放射能を作ってしまった。
放射能まみれの原子炉も作ってしまった。
それを何とかしなければいけないという仕事が必ずあるので、私は専門家の養成は必要だと思います。
思うけれども、若い人たちにそれを求める事が出来るか?と、
私は責任があると思うから、ゴミの始末だってやらなければいけないし、
必要ならば私の人生を投げてもいいと私は思うけれども、
でもこれから育ってくる若い人たちは、わたしたちの世代が愚かにも選択した原子力に対しは、何の責任もない。
そのものに関して、「ゴミがあるからお前たち何とかこれを、始末のために研究をしろ」と言ったところで、
本当に引き受けてくれる若い人がいるんだろうか、というと、私は不安です。
ですから、人材の面でも不安です。
そして、技術という面でも不安です。
つまり、放射能はなくせない。
つまり、閉じ込めるという事しかできないわけですけれども、
その閉じ込める期間というのは人間の一生をかけても終わらないという期間なのです。
ウランを燃やしてできた核分裂生成物のその本体は、
これから100万年間閉じ込めなければいけないという、そういうゴミなんです。
100万年なんて、人間なんかいるかいないか分からないような未来です。
科学で保証できる道理がないのであって、こんなゴミを生み出してはいけなかった。
技術的にどうしていいか分からないという、そういう状態のままここまで来てしまったという事なのです。
皆さんも「トイレの無いマンション」という言葉を聞かれたと思います。
トイレの無いマンションに、皆さん住めますか?
・・・・住めないですよね。
ポータブルトイレを置いたっていいけれども、何日か経ったら溢れます。
でも、原子力ってそうだった。
自分が生み出すゴミの始末も出来ない。
どうしていいか分からないというまま、ずーーっとやってきてしまった。
それだけを考えたって、私は原子力なんてやめるべきだって思います。
大変悲観的な事しか言えませんけれども、
廃炉、あるいは私達が生み出した核分裂生成物の始末という事に関しては、もう、山ほどの課題が、
金銭的にも、人員的にも、技術的にも、
乗り越えることが難しいと思えるような壁だらけという、そういう状態です。
●自然エネルギーに転換させるためにどうしたらいいですか?
すみません、皆さんで考えて下さい。
ー笑い&拍手ー
私は、原子力の場にいる一人の専門家です。
ですからわたしは原子力に関してはわたしが出来る事をやりたいと思ってやってきましたし、
これからもやっていきたいと思っています。
しかし、わたしはただの一人の人間です。
何でも出来るわけではありません。
なんか、去年の3月11日以降に、皆さん私に「運動の主導者になれ」とか、「政治にもっとものを言え」とか、
さまざまな事をわたしにお求めになるのですけれども、
申し訳ないけれども、出来ない、のです。
誰かに何かを期待する
誰かを指導者にさせてしまう
誰かをカリスマにする、と、
そういうような考え方が間違えていたとみなさんに思っていただきたい。
ー拍手ー
わたしはわたしが出来る事をやります。
自然エネルギーに取り組みたいと思われる方がいるのであれば、その方がやって下さい。
そうやって一人ひとりが、
「これが自分のやりたい事だ」
「これは自分の得意な事だ」
というような事を、お一人お一人がやるような事になってくれたら、
原子力なんて簡単に止められると、わたしは思っていますし、
いずれにしても原子力はどうせ先はもうありません。
そして化石燃料だって、いずれ枯渇してしまうんですから、自然エネルギーに行くしかないんです。
もう、歴然とそうなのです。
もちろん風力だって、太陽光だって、地熱だって、これから必要になります。
そういう事に興味のある方がやっていただきたいと、思いますし、
運動にも、そういう方が、率先して取り組んでいただきたいと、私は思います。
答にならずに申し訳ございませんけれども、お許しください。
●日本が原発依存から抜けられない理由は何ですか?
どうして原発を止められないのかという要因には二つあると思います。
一つは、「金さえあれば豊かになる」と考えてしまった、人々の考えです。
もちろん中心は政治家と経済界の人達が、金さえあれば豊かになれる思った。
その考え方が間違えていたと言う事ですし、いかにその考え方が根強く残っていて、
この期に及んでも、経団連の会長すらが「
原子力をやめたら経済が潰れてしまう」というようなトンマな事を言っているという、そういう人たちだという事ですね。
もう一つは、今日この話を聞いていただこうと思うと、もう時間がありませんけれども、
原子力というのは、もともと「核」なんです。
皆さんは「原子力」という言葉と、「核」という言葉を違うものだと思っていらっしゃるかもしれない。
日本というこの国では、マスコミも含めて巧みに使い分けられてきたので、
何か別物だと思っていらっしゃるかもしれませんが、実は一緒なのです。
2年ほど前にNHKが「核を求めた日本」という番組を放映した事がありました。
NHK国策放送局ですね、
そういう放送局がそういう番組を流した。
その番組の中で何を描いていたかというと、
日本というこの国は戦争で負けて2等国になってしまった。
何とか1等国になるためには核兵器を持つ力を付けなければならない。
そのためには原子力平和利用と標榜しながら、核兵器を作る能力を手に入れなければいけない。
と考えて、同じ敗戦国だったドイツにそれを持ちかけるという事を1960年代にやっていたというのです。
ドイツの方はビックリして、ちゃんと文書に残しているんですね。
「日本というのはこんな国だ」というようなことを。
そして日本の外交官や外務省もそれを裏付けているという事を
丹念に掘り起こして造った番組でした。
私自身は、実は原子力の場にいる人間として、そういう文書も知っていたので、
元から、原子力と核は一緒だし、日本というこの国が原子力をやり続けてきた一番最後の理由というか、
根本的な理由は、核兵器を作りたいというところにあると思ってきましたので、
意外な番組ではありませんでしたけれども、
NHKという、国策放送会社すらが、それを認めて流すという事になったということです。
※”核”を求めた日本ー被爆国の知られざる真実ー(内容全て書き出しました)
それがある限りは、
日本という国家としては、どうしても原子力を捨てる事が出来ない。
国際的な政治の力学の中で、それを捨てる事が出来ないと思っている人たちが、
やはり、政治の中枢にいたし、今でもいるんだろうなと思っています。
そういう人たちを何とか打倒しなければいけないわけだし、
日本という国には平和憲法が、憲法9条があると、私たちは言ってきたし、
私は本当にそれが大切なことだと思うけれども、
それすらがすでにもう、無いものにさせられてしまおうとする、そういう時代ですので、
私達が、本当に、根性を決めてですね、
どういう世界をつくりたいかという事まで考えなければ、この戦いは多分勝てないと思います。
何とか皆さんも根性を決めてやっていただきたいと思います、よろしくお願いします。
ー拍手ー
小出氏講演 飯能市 第一部 2012年3月24日
小出裕章氏講演会の第2部質問コーナーです。
<質問の内容>
・リスクと避難ー現在の状況で東京で育児をするリスクと覚悟・避難するべきか?
・いざという時に逃げるべきかどうか?
今後非常事態が起こった場合小出さんの意見をいち早く知るにはどこに連絡したらいいか?
・1号機は圧力容器にも格納容器にも穴が開いているという事だが、その水は何処へ行っているのか?
・岩手県野田村の木くずを日高市にある太平洋セメントが受け入れるという事で住民の意見が分かれています。
100ベクレル以下であっても受け入れを拒否する自治体があるのはなぜですか?
100ベクレルというのが本当は危険な数値なのか、それとも受け入れる側が恐れすぎているのか。
・国ががれきの広域処理にこだわる理由は何でしょうか?
何故被災地に焼却炉を建てないのか理解できません。
・除染を少しでも早く回復させる手段は本当にないのでしょうか?
・原発を廃炉にするための技術的な研究はなされていますか?
廃炉を実現するためにはどれ位の年月がかかりますか?
・自然エネルギーに転換させるためにどうしたらいいですか?
・日本が原発依存から抜けられない理由は何ですか?
小出裕章さん 飯能講演会 2012.3.24 No.2
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●リスクと避難-現在の状況で東京で育児をするリスクと覚悟・避難するべきか?
06:28
このご質問に関しては分かる事と分からない事が半々です。
分かる事は被ばくをする事でどれだけの危険を負わなければいけないかという事に関しては、
私が分かる事です。
それは、1年間に1ミリシーベルトの被ばくをするという事は、
それによって2500人に1人が癌で死ぬという危険を覚悟することだと、そういう危険です。
そして、子どもの場合には平均的な人に比べて4倍も5倍も危険が高いと私は言ったわけで、
赤ん坊の場合には1ミリシーベルトの被ばくをさせてしまうと、
500人、あるいは600人に1人は、いずれ癌で死ぬ危険を負わされるという、そういう危険度です。
もし、1ミリシーベルトじゃなくて、10倍の危険を、10ミリシーベルトの被ばくをすることであれば、
その10倍の危険を負わなければいけない。
つまり子どもであれば、50人か60人に1人がいずれ癌で死んでしまうという、
そういう危険を受け入れる事が出来るかできないかという、そういう量です。
(※高校の一クラスに1人って感じ・・・)
ですから、逆に言えば50人に1人が癌で死ぬよという時には
50人のうち49人は被害をこうむらないで済むという、そういう事も意味している訳です。
(※これが木下黄太さんがいうロシアンルーレット・・・)
ただしそれは1年間に1ミリシーベルト、あるいは10ミリシーベルトといった時の量をわたしは言っている訳で、
それが2年3年4年5年と続いていけば、それをまた順番に上乗せされて受けるという事なんですね。
それが私が皆さんにお伝えできる、どれだけの危険があるかという、
リスクがあるかという答えです。
では、そのリスクを避けるために、避難をした方がいいのかどうなのか?という事になってしまうと、
申し訳ありませんが、私にはわからないのです。
それは先程も、これも聞いていただきましたけれども、
逃げるという事は大変な重荷を背負う事になると思います。
生活を、要するに捨てる。
あるいは自分の命の源であった大地を捨てるという、
農民や、酪農家畜産家にとっては、そうなってしまうわけで、
その重荷というのは、多分一人ひとり全員違うんだと、思います。
かた一方は、だから、リスクはもうはっきりしている。
片方の逃げるということの重荷がいったいどれだけなのかという事は、
やはりお一人お一人に判断していただかなければ、いけないとおもいます。
それも家族全員で逃げるという場合と、
男親は生活のために被ばく地に残して、母親と子供だけ逃げるという時の
その重さというのは、やはり、その人たちに判断していただかなければいけないものだと思います。
大変、あの・・・みなさんが悩んで、切実に、この質問をわたしにして下さっているという事はもちろんわかります。
どこの集会に行っても、必ずこの質問をわたしは受けることになるのですけれども、
申し訳ありませんけれども、私はお答えできない。
一人ひとりの方がご自分の重荷というのを測って、決めていただくしかないと、いうのが私の答です。
●いざという時に逃げるべきかどうか?
今後非常事態が起こった場合小出さんの意見をいち早く知るにはどこに連絡したらいいか?
10:35
今後起こることの危険は、私は先程二つあると聞いていただいたつもりです。
一つは溶けてしまった炉心が、どんどん防壁を突き破って、地下にのめり込んでしまって、
それが地下水に接触して汚染を広げるという、その危険が一つです。
ただそれは、ジワジワジワと進行していく。
そして海を汚して、じわじわと食べ物を汚すという、そういう、危険に結びついていくんだと思います。
ですから、そちらはまだ、いざという時になってどうするべきかという、
緊急性を持って判断を迫られる事は無い方です。
もう一つの危険は、
4号機の使用済み燃料プールというのが、今、壊れたまま、宙ぶらりんのようになっているのですね。
東京電力ももちろんそれを知っていて、
事故があった、かなり早い段階で耐震補強工事というものを施したという事になっています。
傾いてしまった使用済み燃料プールの下に、沢山の鉄柱を並べて、
それ以上壊れないようにするという事をやったと言っているのですけれども、
あの現場はものすごい被ばく環境で、ゆっくりとそこで作業者が仕事ができるというような状態ではなかったのです。
ですからわたしはどこまでちゃんとした耐震補強工事が出来たかという事に、不安を感じていまして、
もし、これから大きな余震が起きて使用済み燃料プールが崩壊するような事になれば大変だと、
実は私は危惧している訳です。
そして、あのプールの底には使用済み燃料が広島の原発に比べて、
約4000発分に相当するぐらいの放射能があるのです。
これまで大気中に放出された放射性物質は、日本政府の公表によっても170発分。
多分その数倍とわたしは思っているのですけれども、
そういうものに比べてなおかつ10倍というような放射性物質が
むき出しに環境に出されてしまうという可能性がある訳です。
ですから、「大きな地震が起きないでくれよ」と、私は今願っているわけですけれども、
もし、起きてしまえば、これまで以上の放射能が東京にも飛んでくるという可能性は、もちろんあると思います。
ですからみなさんが注意をしなければいけないのは、
福島第一原子力発電所の周辺で、大きな地震が起きたか起きないかという、その事です。
もう、毎日のようにあの辺で余震が起きていますので、私は毎日のようにヒヤヒヤしていますけれども、
本当に大きな余震が起きた、という事が分かった時には、
避難も含めて皆さんも準備を始めた方がいいだろうと思います。
東京まで放射能が飛んでくるには、多分何日・・何時間か、あるいは半日・・・もっとあるかな・・
半日から一日ぐらいの猶予はあると思いますので、
その時間のうちに決断をして、風下に入らないようにするという事です。大切なことは。
とても難しいと思いますけれども、距離が離れていても風下に入ったらおしまいです。
私は先程、飯能の人達に被害を及ぼすと言って地図を回転したりしてお見せしたりしましたけれども、
風下に入らなければ大丈夫です。
風下に入ればそれで被害を受けることになってしまいますので、
充分に気象条件等に注意をしながら、逃げていただくしかないと思います。
私に連絡が取れるかどうかという事で言えば、
多分、取れないと思います。
私は、もしそんな事になっていれば、きっと、自分のできることのために、走り回っていると思いますし、
個別の方々からのご質問を受けるような余裕は、多分ないだろうと思います。
ただし、私にできる限りの発信は、そういう時にはし続けるつもりですので、
ま、マスコミが私の意見を使ってくれるかどうかはわかりませんが、
マスコミ、あるいはネット上の情報というのを注意してみていただければいいと思います。
●1号機では圧力容器にも格納容器にも穴が開いているという事だが、その水は何処へ行っているのか?
15:00
原子炉というものは、いついかなるときにも冷やしておかないと壊れてしまうと言う事を
今日初めに聞いていただきました。
放射のがある限り、その放射能が猛烈に発熱をしている訳ですから、
冷やさなければ終わり。当り前なんですね、
ですから今も、一年経った今も、とにかく冷やそうって言って、水をどんどん、どんどん入れている。
原子炉の炉心という部分にも入れているし、格納容器というところにも入れている。
でも、もうすでに圧力容器という巨大な圧力がまはそこが抜けてしまっているわけだし、
格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁であるその容器も、
実はもう、あっちこっちに穴が開いてしまっているのですね。
だから、どんどん水入れなければいけないのだけれども、入れた水はどんどん漏れている。
それで、事故の当初からそうですけれども、
原子力発電所の敷地の中に、
10何万トンもの汚染水が溜まっていると言われてきました。
じゃぁいったいどこに溜まっているのか?というと、
ジャージャー水を入れたのが漏れて、あちこちに流れていっているわけですね。
たとえば原子炉建屋の地下であるとか、
タービン建屋の地下であるとか、
あるいはトレンチ、ピット、建て坑と言っているような、
ま、そういう地下の構造物と言われているところに汚染水が溜まっていると、政府と東京電力が言ってきたのです。
そういう構造物はみんなコンクリートでできているんです。
皆さん分かっていただけると思うけれども、コンクリートって必ず割れています!
水が漏れないように出来るっていうのは、コンクリートっていうのはもともとそういう性能は無い。
つまり、コンクリートの中に汚染水が溜まっているという事は、
どんどん漏れているという事なんです。
ある時に、ピットという部分で、海面より上の部分にピットの一部がでていて
そのむき出しになったピットから、滝のように汚染水が流れ落ちているというのを見つけた事があって、
その時に東京電力が慌ててそこを「何とか塞がなければいけない」といって、
マスコミやなんかでも大きく取り上げました。
それで、ようやくにそこは塞いだというんですけれども、
私は何を騒いでいるのかとその時に思いました。
もちろんそこは、むき出しになっているから目に見える。
だからやらなければいけないというのは本当だけれども、
実はほとんどの構造物は地下にある。
原子炉建屋の地価、タービン建屋の地下、トレンチもピットも本当は全部地下にある。
それがみんな割れて、そこらじゅうから漏れている。
たまたま見えたところだけ塞いだってダメだ。
私は敷地に溜まっている汚染水をどんどん安全な場所に移さなければいけないと主張して、
そのための方策を3月の段階で提案をしました。
私の提案は巨大タンカーを連れてきてそれに移せという、提案でした。
巨大タンカーは10万トンとか20万トンの原油を入れる能力がありますので、
そこになんとか核汚染水を移すと、そういう提案をしました。
私は政治は大嫌いなんですが、何人かの政治家と話をしたこともあります。
そうすると、政治家の方も口をそろえて、「それは必要だからやります」といったのですけれども、
結局何にもやらないまま、汚染水はいまだに、どんどん、どんどん漏れていってしまっているという、
そういう状態にあります。
水は必ず入れなければなりません。
入れなければいけないけれど、入れたものは海へ流れていってしまっているという、そういう状態になっています。
●岩手県野田村の木くずを日高市にある太平洋セメントが受け入れるという事で意見が分かれています。
100ベクレル以下であっても受け入れを拒否する自治体があるのはなぜですか?
100ベクレルというのが本当は危険な数値なのか、それとも受け入れる側が恐れすぎているのか。
私は今日聞いていただいたつもりですけれども、被ばくに関しては安全量は無いのです。
ですから1kg当たり100ベクレルという、そういう放射能であっても、安全なわけではないのです。
たとえば、食べ物の事で言えば、今現在1kg当たり500ベクレルというのが暫定規制値といわれています。
お米でも、それを下回ればいいという数字です。
4月からは100ベクレルという、今数値で示した、それは瓦礫のことですけれども、
食べももの1kgあたり100ベクレルというような基準にこれからなるのです。
では1kg当たり100ベクレルのお米は安全か?と言えば、安全ではないのです。
福島第一原子力発電所の事故が起きる前に、
日本のお米というのは1kg当たり0.1ベクレル程度しか、汚れていなかった。
100ベクレルというのは、その1000倍の汚染をもう、許すしかないという、そういう基準値なのです。
日本に生えている木だってそうです。
事故の前のがれきだって、何でもそうですけれども、
1kg当たり、せいぜい0.なんベクレルという放射能しか汚れていなかったのです。
だから、1K当たり100ベクレルと言えば、
私が「世界が変わってしまった」という前の世界に比べれば
ものすごい汚染だと、私は思います。
それを焼却するような事をすれば、何百倍何千倍と濃縮された焼却灰がでてくる訳ですから、
もちろん注意して取り扱わなければいけないのです。
焼却工場で働かなければいけない人々は、普通の労働者です。
私のように元から放射能を取り扱うという事を覚悟して、
放射能業務従事者というレッテルを甘んじて受け入れて仕事しているのではない人たちが、
普通の現場で働いている訳です。
だから、1kg当たり100ベクレルであったとしても、私は注意をしなければいけないと思います。
そういうゴミを本当に受け入れてもいいのかどうなのかという事に関しては、
やはり、ちゃんと議論をしたうえで、危険はあるけれども仕方がないから受け入れようか、
でも、やっぱり嫌だと、どっちかを選ぶしかないと言う事だと思います。
●国ががれきの広域処理にこだわる理由は何でしょうか?
何故被災地に焼却炉を建てないのか理解できません。
私も理解できません。
放射能を取り扱う時の原則というのは、放射能はその場所でなるべくコンパクトに隔離するというのが原則です。
薄めてはいけないというのが放射能に向き合う時の原則です。
今日本の国がやろうとしているのは、汚染したがれきを全国にばらまいて、
それぞれの焼却施設で燃せえと言っている事ですから、もともと原則に反しています。
そして、出てきた焼却灰はそれぞれの自治体で、勝手に埋めてしまえと言っている訳ですから、
それも原則に反しています。
私は放射能を取り扱う原則にのっとれば、どうやればいいかと言えば、そこに書いてある通りです。
要するに、汚染したがれきのある現地に専用の焼却施設を造って、そこで焼くと、
そして出てきた焼却灰も、集中して管理をするというやり方がいいだろうと思います。
なんで国がいつまで経っても、それをやらないのか、大変私も不思議におもっています。
もっとも、福島県内の膨大な汚染瓦礫に関しては、
今のところ、国の方も手を付けられないで、全国にばらまこうという事も
もちろんしようとしている訳ではないのですけれども、
でも、そういうがれきに関しても、急いで専用の焼却施設を造って、え・・・焼くと。
焼く事がいい事なのかどうなのか、という議論はあると思いますかれども、
でも、そのまま瓦礫放置しておけば、放射能というのは移動していますので、
どんどん、また、子どもたちも含めて被ばくしてしまうというような事になるので、
急いで、私は福島県内のがれきも処理する必要があると思いますし、
国がそれをやらなければいけないと、思いますし、
それをやらない国というのが本当に不思議でならないわたしは思います。
●除染を少しでも早く回復させる手段は本当にないのでしょうか?
放射能というものは残念ながら人間の手では消せないのです。
煮ても焼いても無くなりません。
何とか放射能を消したいと思いながら、人間は70年ほどその研究を続けてきているのですけれども、
その方策が見えないのです。
つまり、消せない。
除染というのは汚れを除くと書くのですけれども、
汚れは除けないのです、本当は。
ここにある汚れを隣に移すことは出来ます。
ですから、今も移動させるとおっしゃったけれど、私は移染と呼ぶ。
汚れを移すということはできるけれども、除くことは出来ないのです。
ただし、私は事故後からずーーっと、除染をしなくちゃいけないと言い続けてきた人間なんです。
私が言ってきた除染というのは、非常に限定的です。
子どもをとにかく守るという事をやらなければならない。
子どもが集中的に時間を過ごす場所、学校の校庭だとか、幼稚園の園庭であるとか、各地域の公園であるとか、
あるいは各家庭でも、子どもたちが泥んこになって遊ぶ場所とかは、
表面を5センチとにかく土をはぎ取ってくれと、
私はずっと言い続けてきたのです。
5センチの土をはげば放射能の9割をどける事が出来ると私は思います。
そのため、私はそういう場所で除染をしてくれと言ってきて、
たとえば、福島県の郡山市で、学校の校庭の土をはぎ取ってくれた事がありました。
ところがその、はぎ取った土を郡山市の処分場に持って行ったら、処分場の周辺の住民たちが、
「放射能のゴミなんかこんなところに持ってくるな」と言って反対をした。
そのため、捨てる事が出来なくて、また、はぎ取った土は校庭に逆戻りしたという事がありました。
そんな事はやっぱりしてはいけない。
子どもたちをとにかく守るという事をやらなければいけないからはぎ取ってくれと、
でもはぎ取っても無くならない。
どこかに移すしかない。
移す現場をちゃんと確保しなければいけないという事なのです。
そして、日本の政府は今、そういう放射能のごみの捨て場というのを、
双葉郡内の、町や村に作りたいと言って、打診しています。
打診を受けた双葉町の町長は、
「そんなことは嫌だ」と言って断ったそうです。
私はその町長発言を聞いた時に二つの思いを抱きました。
一つは「あなたがそんな事を言うか」という思いです。
双葉町というのは「原子力正しい理解で豊かな暮らし」と言うのを町の標語にして、
原子力の片棒を担いできた町なのです。
そこの町長が、「事故を起こしたから、自分たちは汚染は嫌だ」という、
その考え方にわたしは、「ん?」と首をひねった。それがひとつです。
しかし、と、次に思いました。
「双葉町という町だって、喜んで原子力を受け入れたわけではない、実は。」
国の、この国ほ国土の作り方の中で、過疎にされてしまって、
出稼ぎに行くしか自分たちの生活が出来ないというところにまで追い込められて、
「やはり、原子力にかけてみよう」と、思わされてしまったという歴史も確かにありましたし、
誰だって放射能なんて嫌な訳ですから、
「自分たちの故郷にそんなものを入れてくれるな」といのは
「あ、なるほど本当はそうなんだろうな」と、私は次におもいました。
ですから、どこかに核のゴミ置き場を造らなければならないのは本当だけれども、
それが双葉郡になる可能性もあるけれども、
でも、住民にとってはあまりにも酷な事だろうとわたしは思いました。
じゃぁどうするのか?と、いうことで、私は実は提案があるのです。
今、私達が「汚染」と言って悩んでいるもの
それは、もともと東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった、東京電力のウラン
東京電力の所有物であったウランが、燃えて出来たもの。
核分裂生成物はそうなのです。
つまりもともとは東京電力のれっきとした所有物なのです。
それを東京電力が勝手にばらまいた。
「絶対ばら撒きません」と言い続けてきた東京電力がばら撒いた。
ばら撒いた途端に東京電力は、
今度は「無主物」だと言いだした、という話しをわたしは先程聞いていただいた訳だけど、
そんな理由、いい訳を決して私は認めたくないと思う。
東京電力のれっきとした所有物なんだから、東京電力に返すのが筋だと、ー笑&拍手ー 思います。
ですから、学校の土地をはぎ取った土も、
東京電力の福島第一原子力発電所に返せばいいと思います。
ただし、今現在福島第一原子力発電所は戦争状態です。
「何とか事故をこれ以上悪化させないように」という事で、今戦っているのです。
ですから、福島第一原子力発電所が無理ならば、私は東京電力の本社ビルに持っていくのがいいと思います。
ー拍手ー
多分東京電力の本社ビルには、会長室、社長室、というような、
高級ななんか絨毯かなんかが敷いていあるのか知りませんが、
わたしは行った事がないので知りませんけれども、多分素晴らしい部屋があるんだと思う、
そういう会長室、社長室から、放射能のゴミで埋め尽くしていくと、重役室も埋め尽くす。
ー拍手ー
どんどんそういう形で、東京電力に徹底的に責任を取らせる。
という事をわたしはやりたいと思います。
そしてそれが・・みなさんも今ちょっと笑った方もいらっしゃいましたが
「あまりにもそれはムリだろう」ということであれば、まだ、行き場所はあるのです。
どこか?と言えば、東京電力福島第二原子力発電所という、広大な敷地があります。
今東京電力は「福島第二原子力発電所は再稼働させる」というような事を言ってきている。
「冗談を言うな!」と、私は思う。
そんな原子力発電所は絶対に動かしてはいけないのだし、
福島第二原子力発電所は核のゴミで埋め尽くすと、ー拍手ー ありがとうございます。
それでも、核の行き場所がないというのであれば、
仕方がないから、双葉郡の住民の人に頭を下げて、そこにお願いするという選択はあるかもしれないと思います。
でも、いずれにしても核のゴミ捨て場というものをとにかく確保して、ま、東京電力に責任を取らせて、
そこに、私が言っている非常に限定的な除染のものを、移染ですね、移動させるということで、
子どもたちの被ばくを減らしたいというのが、私の提案です。
ただしみなさん、考えてみて下さい。
汚れているのは、学校の校庭だけではない。幼稚園の園庭だけじゃない。
さっきの地図で見ていただいた、福島県全部というのは、
山もあれば、畑もあるし、林だってある。
みーんなそれが汚れている。
・・・・もう、土を剥ぐなんていう事は出来ない。
出来ないし、移動させる事も出来ない。
なんか日本の政府は除染をすれば人々が戻れるかのような事を、今言い続けているのですけれど、
決してそんなことはできません。
もう、汚れちゃったところは捨てるしかないんです。
大変住民の人たちに対しては言いにくいし、わたしもお気の毒だとは思うけれども、
除染は出来ない。
その事をちゃんと住民に伝えて、次の生活に早く乗り出すことができるように、
きちっと伝えるという事が、今の日本の政府のやるべきことだと思うのですが、
残念ながら日本の政府は、何か幻想を与えながら、じたいをずるずる、ずるずると遅らせてしまっているという、
そういうことに、なってしまっています。
●原発を廃炉にするための技術的な研究はなされていますか?
廃炉を実現するためにはどれ位の年月がかかりますか?
廃炉というものにも、いろいろなものがあると思います。
たとえば、今、福島第一原子力発電所は事故を起こして、
放射能の本体がどこにあるかすらわからないという、そういう状態にあるのですね。
もともと廃炉という言葉は、こんな事故を全く想定していませんでした。
機械としての原子力発電所が、大変順調に、思惑通り動いた、事故も何にもなかった。
それでも、いつか寿命が来る。
いつか寿命が来た時には、その原子力発電所全体が放射能で汚れた物として残る。
当り前なんですね、事故がなくても、そう必ずなる。
それをどうしようか、というのが廃炉ということだったのです。
一つの原子力発電所を、もし、潰してしまうとすると、
60万立法メートルのゴミが出てくると言われています。
60万立方メートルって、私は数字ではちょっと分かりませんけれども、
とにかく膨大なゴミが出てきてしまう訳ですね。
それを全て放射能のゴミとしてお守をしようとすると、到底採算が合わない。
金がかかりすぎる。
だから、一つの原子力発電所を潰して出てきたごみを
放射能の汚れごとに仕分けをすると、言っています。
そして、ものすごく放射能で汚れたもの、つまり、原子炉圧力容器であるとか、
その圧力容器の中に入っていた様々な機器であるとか、
あるいは、一次冷却水というものが循環していた配管であるとか、
そういうものに関しては、地下に深い穴を掘って、そこに埋めようということになっています。
日本の国の方針では。
ま、世界的にもそういうふうになっています。
実際にやった国はありません。
けれどもそういう事をやろうとしてきました。
そして、放射能の汚れの少ないものは、「もう、しょうがない」と。
「放射能としての管理をはずそう」という事に決めました。
それをクリアランスという言葉でわたしたちは呼んでいます。
ある汚染値以下のものはもう野放しにするという基準を決めているのです。
その基準はたとえばセシウム137であれば、1kg当たり100ベクレルという、先程出てきた数字です。
それをどうやって決めたかというと、
たとえば原子力発電所をバラバラにした時に、鉄骨が沢山出てくるわけですね。
鉄骨もある程度は汚れてくるのですけれども。
その鉄骨をある程度これ以上は放射能として取り扱わないでいいということにすると、
それはクズ鉄屋が買っていくんですね。
クズ鉄屋が買って行って、また溶かして、鉄製品にして出回ってくる訳です。
鉄製品の中には、たとえばフライパンがあります。
家庭で、その再生されたフライパンを使って、料理をすると。
そうすると皆さん分かっていただけるだろうけれども、
フライパンで料理をしていると、フライパンって、少しずつ減っていくんですよ、ね。
減っていっている部分っていうのは、食べているっていう事ですよ、料理と一緒に。
そうやって食べちゃって、人間が1年間に10マイクロシーベルト、
数字を言って恐縮ですかれども、10マイクロシーベルトの被ばくをするかしないかを計算しろと。
10マイクロシーベルトにならないような被ばくなら、もう、野放しにすると。
いうようなのを、クリアランスと呼んでいるのです。
ですから、もしこれから、日本で54基の原子力発電所があるのですが、
それを廃炉にしていくとなると、
一つ一つ、60万平方メートルのゴミが出て、
それを次々と、ある部分は埋めて、ある部分はクリアランスとして、一般に出回せるという事になるのですから、
そういうゴミがわたしたちのところに出回ってくるという事になります。
「いったい何年かかるのか?」と言われると、実は分からないのです。
やったことがないのです。
日本では1966年に動き始めた東海第一原子力発電所という発電所がありました。
それは1998年に32年間動いて運転を停止しました。
それから廃炉作業に入っています。
すでにもう、10数年たっているのですけれども、
いまだに原子炉本体には手を付けることができません。
これから何年かけてやろうかという事で、立ち止まっているという、そういう段階です。
だから、廃炉というのは、
今この会場にいる皆さんが、多分、この中の何割かの人が死んでしまった時も、まだ廃炉は終わらないと
すぐに原子力を廃絶させたとしても、そういう事になるだろうと思います。
ネックは沢山あります。
お金がかかりすぎると、いうこともあるでしょう。
それから人材もいなくなるかもしれません。
今日までのところは原子力というのは、
自分で言うのも変ですけれども、私が原子力に夢を持った時代というのがあって、
それなりにみんな夢に燃えてこの現場に来たんです。原子力の場に。
私が大学に入ったのは1968年でした。
その時には、ま、日本には沢山大学がありますけれど、
昔の大日本帝国という国の時にあった、帝国大学というのが、全国に7つあります。
北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州。
その7つの大学全てに原子核工学科、あるいは原子力工学科という学科があって、花形学科でした。
しかし、原子力というものの実態が次々と明らかになってきて、
これにはもう未来がないという事に学生が気付き始めてしまって、
工学部の中の最低の学生すらが、もう、来てくれなくなったという事になって、
7つの帝国大学から、原子力工学科も原子核工学科も、全てもう、消えてしまったんです。
日本には原子力の専門家を育てるという力が、もう、無くなってしまっているという、そういう段階なのです。
もちろん原子力を推進するような学問は、もうわたしはするべきではないと思っていますけれども、
でもここまでやってしまって、膨大な放射能を作ってしまった。
放射能まみれの原子炉も作ってしまった。
それを何とかしなければいけないという仕事が必ずあるので、私は専門家の養成は必要だと思います。
思うけれども、若い人たちにそれを求める事が出来るか?と、
私は責任があると思うから、ゴミの始末だってやらなければいけないし、
必要ならば私の人生を投げてもいいと私は思うけれども、
でもこれから育ってくる若い人たちは、わたしたちの世代が愚かにも選択した原子力に対しは、何の責任もない。
そのものに関して、「ゴミがあるからお前たち何とかこれを、始末のために研究をしろ」と言ったところで、
本当に引き受けてくれる若い人がいるんだろうか、というと、私は不安です。
ですから、人材の面でも不安です。
そして、技術という面でも不安です。
つまり、放射能はなくせない。
つまり、閉じ込めるという事しかできないわけですけれども、
その閉じ込める期間というのは人間の一生をかけても終わらないという期間なのです。
ウランを燃やしてできた核分裂生成物のその本体は、
これから100万年間閉じ込めなければいけないという、そういうゴミなんです。
100万年なんて、人間なんかいるかいないか分からないような未来です。
科学で保証できる道理がないのであって、こんなゴミを生み出してはいけなかった。
技術的にどうしていいか分からないという、そういう状態のままここまで来てしまったという事なのです。
皆さんも「トイレの無いマンション」という言葉を聞かれたと思います。
トイレの無いマンションに、皆さん住めますか?
・・・・住めないですよね。
ポータブルトイレを置いたっていいけれども、何日か経ったら溢れます。
でも、原子力ってそうだった。
自分が生み出すゴミの始末も出来ない。
どうしていいか分からないというまま、ずーーっとやってきてしまった。
それだけを考えたって、私は原子力なんてやめるべきだって思います。
大変悲観的な事しか言えませんけれども、
廃炉、あるいは私達が生み出した核分裂生成物の始末という事に関しては、もう、山ほどの課題が、
金銭的にも、人員的にも、技術的にも、
乗り越えることが難しいと思えるような壁だらけという、そういう状態です。
●自然エネルギーに転換させるためにどうしたらいいですか?
すみません、皆さんで考えて下さい。
ー笑い&拍手ー
私は、原子力の場にいる一人の専門家です。
ですからわたしは原子力に関してはわたしが出来る事をやりたいと思ってやってきましたし、
これからもやっていきたいと思っています。
しかし、わたしはただの一人の人間です。
何でも出来るわけではありません。
なんか、去年の3月11日以降に、皆さん私に「運動の主導者になれ」とか、「政治にもっとものを言え」とか、
さまざまな事をわたしにお求めになるのですけれども、
申し訳ないけれども、出来ない、のです。
誰かに何かを期待する
誰かを指導者にさせてしまう
誰かをカリスマにする、と、
そういうような考え方が間違えていたとみなさんに思っていただきたい。
ー拍手ー
わたしはわたしが出来る事をやります。
自然エネルギーに取り組みたいと思われる方がいるのであれば、その方がやって下さい。
そうやって一人ひとりが、
「これが自分のやりたい事だ」
「これは自分の得意な事だ」
というような事を、お一人お一人がやるような事になってくれたら、
原子力なんて簡単に止められると、わたしは思っていますし、
いずれにしても原子力はどうせ先はもうありません。
そして化石燃料だって、いずれ枯渇してしまうんですから、自然エネルギーに行くしかないんです。
もう、歴然とそうなのです。
もちろん風力だって、太陽光だって、地熱だって、これから必要になります。
そういう事に興味のある方がやっていただきたいと、思いますし、
運動にも、そういう方が、率先して取り組んでいただきたいと、私は思います。
答にならずに申し訳ございませんけれども、お許しください。
●日本が原発依存から抜けられない理由は何ですか?
どうして原発を止められないのかという要因には二つあると思います。
一つは、「金さえあれば豊かになる」と考えてしまった、人々の考えです。
もちろん中心は政治家と経済界の人達が、金さえあれば豊かになれる思った。
その考え方が間違えていたと言う事ですし、いかにその考え方が根強く残っていて、
この期に及んでも、経団連の会長すらが「
原子力をやめたら経済が潰れてしまう」というようなトンマな事を言っているという、そういう人たちだという事ですね。
もう一つは、今日この話を聞いていただこうと思うと、もう時間がありませんけれども、
原子力というのは、もともと「核」なんです。
皆さんは「原子力」という言葉と、「核」という言葉を違うものだと思っていらっしゃるかもしれない。
日本というこの国では、マスコミも含めて巧みに使い分けられてきたので、
何か別物だと思っていらっしゃるかもしれませんが、実は一緒なのです。
2年ほど前にNHKが「核を求めた日本」という番組を放映した事がありました。
NHK国策放送局ですね、
そういう放送局がそういう番組を流した。
その番組の中で何を描いていたかというと、
日本というこの国は戦争で負けて2等国になってしまった。
何とか1等国になるためには核兵器を持つ力を付けなければならない。
そのためには原子力平和利用と標榜しながら、核兵器を作る能力を手に入れなければいけない。
と考えて、同じ敗戦国だったドイツにそれを持ちかけるという事を1960年代にやっていたというのです。
ドイツの方はビックリして、ちゃんと文書に残しているんですね。
「日本というのはこんな国だ」というようなことを。
そして日本の外交官や外務省もそれを裏付けているという事を
丹念に掘り起こして造った番組でした。
私自身は、実は原子力の場にいる人間として、そういう文書も知っていたので、
元から、原子力と核は一緒だし、日本というこの国が原子力をやり続けてきた一番最後の理由というか、
根本的な理由は、核兵器を作りたいというところにあると思ってきましたので、
意外な番組ではありませんでしたけれども、
NHKという、国策放送会社すらが、それを認めて流すという事になったということです。
※”核”を求めた日本ー被爆国の知られざる真実ー(内容全て書き出しました)
それがある限りは、
日本という国家としては、どうしても原子力を捨てる事が出来ない。
国際的な政治の力学の中で、それを捨てる事が出来ないと思っている人たちが、
やはり、政治の中枢にいたし、今でもいるんだろうなと思っています。
そういう人たちを何とか打倒しなければいけないわけだし、
日本という国には平和憲法が、憲法9条があると、私たちは言ってきたし、
私は本当にそれが大切なことだと思うけれども、
それすらがすでにもう、無いものにさせられてしまおうとする、そういう時代ですので、
私達が、本当に、根性を決めてですね、
どういう世界をつくりたいかという事まで考えなければ、この戦いは多分勝てないと思います。
何とか皆さんも根性を決めてやっていただきたいと思います、よろしくお願いします。
ー拍手ー
小出氏講演 飯能市 第一部 2012年3月24日
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| 2012.04.13 17:06 | 編集