04.02
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福島第1原発事故:田村市と川内村で警戒区域を解除

警戒区域から避難指示解除準備区域に変更になり、立ち入りが可能になった自宅の片付けをする渡辺イセ子さん
=福島県田村市で2012年4月1日午前11時12分、西本勝撮影
福島第1原発事故に伴う警戒区域が1日、福島県田村市と川内村で先行解除され、
避難指示解除準備区域と居住制限区域に再編された。
出入りが自由になった住民らは早速、自宅を訪れて片付けるなど帰還へ向けた準備を始めた。
ただ実際に帰還するには、地区内の除染やインフラ復旧などの課題が残る。【乾達、三村泰揮】
◇帰宅者、掃除大忙し
穏やかな春の日差しが古里を包む。警戒区域解除初日の午前、田村市の都路(みやこじ)町地区。
「1年ぶりの我が家だあ」。
無職の根内(こんない)昌春さん(83)は自宅前で、椅子代わりのビールケースに腰掛け、ひなたぼっこを楽しんだ。
これまでに立ち入り時間が限られる一時帰宅の機会もあったが、高齢のため見送っていた。
息子に連れられ実現した1年ぶりの帰宅だ。
地区内では、一時帰宅の機会に片付けが進んだ民家と、地震の爪痕をそのまま残す民家が混在。
「真っ先に、倒壊した墓の修理を」と朝一番で墓地に向かう人々の姿もあった。
300年以上前から先祖が地区に住むという農業、渡辺清栄(きよえい)さん(75)は、
明治時代に描かれた祖父らの肖像画や、孫の清智さん(25)が高校野球でプレーする姿の写真など
自宅を彩る「家族の歴史」に目を細めた。
一緒に来た次男清則さん(52)、その妻のイセ子さん(51)ともども清掃に大忙し。
玄関の棚をぞうきんがけするイセ子さんは
「ここなら仮設住宅と違って、夫婦げんかをしても迷惑にならないわ」と冗談を飛ばす。
渡辺さんは「家が火事で全焼したときもあったが、先祖はこの土地を守って暮らしてきた。
代々続く家系図も、この地でまたつないでいきたいよ」と話した。
■ ■
警戒区域が先行解除された区域は
(1)早期帰還を目指す「避難指示解除準備区域」
(2)5年以内の帰還を目指す「居住制限区域」--に再編された。
田村市では(1)に約120世帯約380人、
川内村では(1)に約140世帯約300人、(2)に約20世帯約60人の住民がいる。
住民は1日午前0時から、宿泊はできないものの許可を受けずに立ち入りできるほか、
インフラ整備などの公的立ち入りや、製造業などの事業再開(居住制限区域では一部)も可能になった。
南相馬市も16日に警戒区域を解除する予定だが、
残る8町村では賠償格差への懸念などから調整が難航、解除時期は決まっていない。
◇「除染は」「学校は」「補償は」…今後に不安も
「肝心なのは、帰って生活が成り立つかどうかだ」。
両市村の住民らは自由な立ち入りを歓迎しつつも、課題を口にする。
自宅周辺の除染がいつ始まるのか。学校や幼稚園の再開、水道の復旧は。
避難生活中に壊れた自宅の補修費用は補償されるのか--。
そして何よりも、避難生活に伴う東京電力からの賠償が「生活できるようになるまで必要だ」と指摘する。
警戒区域解除を巡る田村市と国の協議では、すぐに居住できる完全解除の選択肢もあった。
だが、そうなれば東電の賠償は一定期間後に打ち切られる。
同市船引町の2カ所の仮設住宅などに身を寄せていて賠償対象となるのは約120世帯。
行政区長を務める同市都路町の農業、坪井和博さん(64)は、
避難指示自体は続く「避難指示解除準備区域」への再編を住民の総意として市側に伝えた。
坪井さんは賠償が必要な時期について「除染が終わり、農業を再開し、生活できるようになるまで」と訴え、
「凍結で破損した水道管の修理も手配したい。水道が直れば、家の手入れもできるようになる」と話した。
一方、原発関連の2次下請け企業に勤務する男性(62)は
「国のモデル地区以外では、除染スケジュールさえまだ分からない。来春まで仮設暮らしを覚悟している」と話す。
川内村の居住制限区域内の行政区長、吉岡清さん(69)は
「普通の生活には何年かかるか分からないが、一歩前進した」と評価する。
1日は午前中に約2時間帰宅し、部屋の換気や掃除をした。
これまでは、自宅に帰る機会も時間も限られていたため「これからは週1回は掃除に来たい」と話した。【太田穣、深津誠】
毎日新聞 2012年4月1日 21時28分(最終更新 4月2日 0時04分)
東日本大震災:
福島原発事故に伴う「除染モデル実証事業」
方法、材質の違いで大きく異なる効果
国と日本原子力研究開発機構(原子力機構)が実施している東京電力福島第1原発事故に伴う「除染モデル実証事業」で、除染の方法や建物の材質の違いなどで、効果が大きく異なることが明らかになった。福島県内12市町村で、方法ごとの放射線量の低減率や、地域ごとの除染前後の空間線量を調べた。
このうち、住宅屋根の高圧水洗浄は「セメント瓦」で30%程度、「スレート」では10%程度しか低減できず、「推奨されない」と結論づけた。一方、大型建物の屋上や壁に使われる「コンクリート・モルタル」では30~70%の低減効果があった。また布などでの拭き取りでは粘土瓦で70%程度低減できたが、セメント瓦ではほとんど落とせなかった。
アスファルト舗装の道路では、通常の高圧水洗浄では2~50%しか低減できなかったが、10倍以上の力がある「超高圧水洗浄」では、40~90%低減できた。放射性物質がアスファルトの溝深くまで入り込んでいるためという。
森林では、落ち葉や腐葉土の除去で40%、枝打ちでも10~20%の低減効果があったが、幹の洗浄では1%程度しか落とせなかった。周辺を森林に囲まれた住宅では「住宅と森林の境界から10メートルまで落ち葉を除去すると効果があるが、それ以上広げても効果は得られない」とした。農地では、土壌の反転耕で65~80%、天地返しでは約65%低減、表土はぎ取りでは最大80%低減した。
放射線量は、警戒区域の大熊町役場周辺で1時間当たり11.5マイクロシーベルトから同3.9マイクロシーベルトや富岡町立富岡第二中学校周辺で同5.4マイクロシーベルトから0.8マイクロシーベルトと大幅に低下したが、南相馬市立金房小学校周辺では同1.3マイクロシーベルトが1.1マイクロシーベルトにしか低下しないなど、線量の低い地域では下がりにくかった。結果は原子力機構のホームページ(http://www.jaea.go.jp/fukushima/decon04/decon04-ke.html)で公開している。【神保圭作】
==============
■主な除染方法の評価■
場所 方法 低減率 評価
住宅などの屋根 高圧水洗浄 10~30%程度 ×
拭き取り 最大70%程度 ○
アスファルト道路 高圧水洗浄 2~50% △
超高圧水洗浄 40~90% ◎
森林 落ち葉や腐葉土の除去 40% ◎
樹木の幹洗浄 1%以下 ×
農地 反転耕 65~80% ◎
表土のはぎ取り 70%程度 ◎
強く推奨=◎、推奨=○、目標の線量により推奨=△、推奨できず=×(評価は日本原子力研究開発機構による)
==============
■主な場所の除染前後の放射線量の変化■
場所 除染前 除染後
(1時間あたりのマイクロシーベルト)
南相馬市立金房小学校周辺 1.3 → 1.1
田村市都路町地見城地区 0.7 → 0.6
浪江町権現堂地区 5.7 → 2.6
大熊町役場周辺 11.5 → 3.9
富岡町の「夜の森公園」周辺 7.9 → 4.2
富岡町立富岡第二中学校周辺 5.4 → 0.8
川俣町山木屋地区 3 → 1.7
浪江町下津島地区 10 → 5.7
飯舘村草野地区 3.6 → 2.2
葛尾村役場周辺 1.7 → 1.3
毎日新聞 2012年4月2日 東京朝刊
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