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04.11
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(*ノω<*)誤字・脱字が沢山ありましたので見直して訂正しました・・・ごめんなさい。(4月12日)

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2012年4月9日月曜日 東京新聞夕刊より


思うままに  梅原猛(哲学者)

二種の絆

最近「絆」という言葉がしばしば肯定的に語られている。
未曽有の災害というべき東日本大震災に際して、確かに多くの人々が家族ばかりか地域の人々を思いやって行動した。
人を助けるために自らの尊い命を犠牲にした人は5人や10人ではない。
この大震災にあって日本人が甚だ道徳的であった事は海外のメディアでも称賛された。
また、被災地の人々が大震災後、力強く立ち上がる力となったのも人間の絆であった。
このように考えると、「絆」が高らかに礼讃されるのももっともなことである。

しかし絆というものはいかなる場合もよいものであろうか。
社会学の開祖といわれるドイツの学者テンニエスは、
人間社会をゲマインンシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)に分類した。
共同社会は血縁、地縁によって結合される社会で、人間の本質意思によって成立するが、
利益社会は会社あるいは大都市の社会で、人間の選択意思によって形成されたものであり、
人々を結びつけるのは金銭的な利害関係である。

テンニエスは人間社会は共同社会から利益社会へ発展すると考えた。
中世社会は共同社会の、近代社会は利益社会の性格が強いというのであろう。
とすれば、日本のような近代国家においては共同社会の絆より利益社会の絆が強いといわねばならない。
東日本大震災にあたって人々を驚かせたのは、
この辺境といってよい東北の地に共同社会の美徳が残っていたことである。
私は30年ほど前に書いた著書「日本の深層」で、
東北の地には日本の基層文化である縄文文化が多分に残っていると論じたが、
その認識は間違いではなかった。

しかし大震災によって、私はまた利益社会の絆の強さも感じざるを得なかった。
たとえば、東京電力という国家に手厚く守られた会社の絆である。

内閣府原子力安全委員会や経産省原子力安全・保安院の人々をはじめとする
多くの学者や官僚との間に非常に強力な絆が築かれていたように思われる。
福島の原発事故について正当な発言をしてくれると思われた友人の学者がメディアで、
むしろ東京電力を擁護するような発言をした。
不思議に思っていたところ、
その学者をはじめ多くの原子力関連の学者が東京電力から多額の寄付を受けていたことが分かった。

わたしは、今回の大事故にもかかわらず確固たる根拠もなしに原発の安全性を叫ぶのは、
このような利益社会の絆の中に立たざるを得ない人間であるような気がする。

先日亡くなった吉本隆明から学ぶべきものは、
一切の絆から離れて自分の思想をはっきり語る態度である。
共同社会の絆はもちろん利益社会の絆も大切であろうが、
しかしたとえ少数でも、一切の絆から離れて自分の意見をはっきり主張する人間がいないかぎり、
日本が近代国家として立派に発展することは不可能であるとわたしは思う。



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梅原 猛(うめはら たけし、1925年3月20日 - )
日本の哲学者。
ものつくり大学総長(初代)、京都市立芸術大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。
東日本大震災復興構想会議特別顧問(名誉議長)。
立命館大学文学部教授、京都市立芸術大学学長、国際日本文化研究センター所長(初代)、
社団法人日本ペンクラブ会長(第13代)などを歴任した。

日本仏教を中心に置いて日本人の精神性を研究する。
進歩主義、西洋哲学、西洋文明(すなわちヘレニズムとヘブライズム)に対しては否定的な姿勢をとる。
西洋哲学の研究者が多い日本の哲学者のなかで、異色の存在である。

臓器移植反対論者として知られている。原子力発電所に対しても30年前から反対論者の立場を取る
(2011年3月26日京都新聞朝刊のコラム「天眼」)
images_20120411111210.jpg
原発について、私は三十年前から事故が起るたびに
新聞や雑誌で、主として原発そのものが大事故を起こす危険性を秘めているという理由で厳しく反対してきた。
(中略)
その私もまさか今回の大震災によってこのような事故が起るとは予想もしなかった。私の勧告は正しかったのである。
しかし今は、私が東京電力や関西電力の人にお世話になったことがあるために、
火の玉となって原発の反対を訴えなかったことを後悔するのみである。

巨大な私的権力欲、金銭欲をもって日本の政治を支配してきた政治家や、
危険極まる原子力発電によって利潤を上げようとする企業経営者や、
立身出世のみを考え、退職後も天下りを繰り返してのうのうとくらす官僚ばかりか、
私を含めて学者も芸術家も多かれ少なかれエコノミックアニマルになっていたのである。
原発を廃止するにはこのようなエコノミックアニマルの国家を否定しなければならない。

これはまことに困難な課題であるが、
被災地の過酷な状況の中で助け合う人々や原発事故の拡大阻止のために生命の危険も顧みず奮闘する人々をみると、
このような国家の建設も不可能でないと思うのである。

吉本 隆明 よしもと たかあき(1924年(大正13年)11月25日 - 2012年(平成24年)3月16日)

日本の思想家、詩人、評論家、
東京工業大学世界文明センター特任教授(講義はビデオ出演のみ)。
日本の言論界を長年リードし、「戦後思想界の巨人」と呼ばれる
他、右派の江藤淳に対して左派の論陣を張り、両者は戦後最後の「批評家」と評されている。
血液型はA型。「隆明」を音読みして「りゅうめい」と読まれることも多い(有職読み)。
漫画家のハルノ宵子は長女。 作家のよしもとばななは次女。

アカデミックな経歴を持たない吉本は、自身の著述活動・知的探求を独学で身に着けた知識で支えた。
自らを市井の人と位置付け、組織に属さず、
「大衆の原像」にこだわると同時にそれを阻害するあらゆる権威を批判した「気風(きっぷ)の良さ」が、
吉本が広範に支持を受けた大きな要因と考えられる。






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コメント
福一事故後、原発廃止だけは主張し続けなければ死んでも死に切れない気持ちです。
永島 健一 | 2012.04.11 12:14 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2012.04.12 06:44 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2012.04.12 12:31 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2012.04.13 11:33 | 編集
地球消滅2015 警世短歌 たつまき
☆ 万事無償奉仕社会を目指せとの 創造主らの天命を知れ
☆ 通貨なき先進文明惑星が地球の行く手示しているぞ
☆ 万事無償奉仕社会へ移れとの 創造主らの指示に従え
☆ 資本制金権奴隷体制を廃絶すべし無償社会へ
☆ アンテナで空中電力無尽蔵に得られる技術既にあるのだ!
☆ "Abolish Money !"バナーでG8首脳会議へ英国でデモ
☆ 日本人無償奉仕の社会へと英国デモと共に闘え
☆ 万事無償奉仕社会へ移れとの 天命無視で地球は破滅
☆ 巨大なる暗黒ガス雲飛来して地球消滅2015に 
☆ 巨大なる磁気球体も飛来して地球消滅切迫しけり
☆ トカゲ座のレプ変身体の植民地悪文明の地球消滅
☆ 創造主らサタン類似の邪悪者の妨害排除すべき時なり
http://ameblo.jp/tatsmaki

たつまき | 2015.02.01 02:12 | 編集
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