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沢田昭二氏「放射線内部被曝研究の現状と課題」 市民と科学者の内部被曝問題研究会・第一回総会シンポジウム4/22(動画・内容書き出し)

市民と科学者の内部被曝問題研究会 
第一回総会記念シンポジウム 沢田昭二氏 

2012年4月22日




放射性被ばくに脅かされない世界を目指して




「放射性被ばくに脅かされない世界を目指して」ということで、
これまでいかに内部被ばく問題が、原爆被爆者の研究から隠ぺいされてきたかという事を、
具体的なお話しをちょっとしようと思っています。

今朝も先ほどお話しがありましたし、先程の肥田さんのお話もそうだったんですけど、

核兵器を使おうという政策、それから原発を推進しようとする政策に、
放射線の研究体制がすごく従属させられて、ひん曲げられてきたというのがあるんですね。
それについてちょっと、最初にお話しをしようと思います。

日本医学者の研究で一番大きな研究が始まったのが
1947年からスタートしたんですけれど、トールマン大統領が被ばく者を調べて、
これから始まるであろう核戦争の中でピカッって光った瞬間の初期放射線の影響を調べる。
一応学問的には1分以内となっているのですが、その初期放射線の影響だけを調べる、
そして相手方の部隊をどれだけやっつけることができるか、
そしてその部隊がどれだけダメージを受けるかということを明らかにするために原爆被害者を調べて、
1950年に日本で国勢調査をやったその再調査の中で調べられた被爆者の中から、
広島市と長崎市に籍を持っている人たちだけを被ばく対象者にして調査を始めたというのが、
原爆傷害調査委員会、ABCCなんですね。

そして1975年に、このABCCが閉鎖されて、日米共同の放射線影響研究所(放影研)になったんですけれど、
スタッフや研究計画はこのABCCの物をそのまま引き継いでしまいました。

ということで、初期放射線の影響だけを研究するという事だけがずっと続けられてきて、
本当は、この内部被ばくの問題には、遠距離の被ばく者とか、それから入市被ばく者の研究、
入市被ばく者に一番深刻な影響が沢山出ているんですが、それを隠ぺいした研究をずっとしてきました。

しかし、調査人数がすごく多いという事と、それから長い間、半世紀以上も長い間研究を続けてきた。
こういう研究は他にありませんから、
この研究の結果が国際的な基準基準、国際放射線防護委員会等に送られていって、
そして世界中の放射線防護の基準を作るという事になっているんですね。



続きを読むにつづく


という事でこの国際放射線防護委員会の基準も、内部被ばくが明らかになっていないデータを使っていますから、
内部被ばくは外部被ばくと変わらないという事で内部被ばくの特殊性を全く無視した、そういう基準を作ってきたのです。

内部被曝11

ですけど、1997年に、ヨーロッパ放射線リスク委員会(ECRR)というのが出来ました。
チェルノブイリの事故の後はドイツでも放射線防護協会というのが出来まして、
そういう隠ぺいされたものを「もっときちんとやらなきゃいけないんじゃないか」という事を議論を始めました。
2003年にECRR勧告を出しましたし、
2009年にはECRRはエーゲ大学と共催してギリシャのレスポス島で会議をひらきました。
私もここに招待されて報告をしたんですけれど、
そして、「内部被ばくの問題をもっとちゃんと議論をしなさい」という事を訴えた
レスポス宣言というのを出して、この体制を批判しました。

それから日本で原爆症認定の集団訴訟というのが2000年から始まったんですけど、
そこでも内部被ばくの問題が明らかになってきました。
そして、全ての判決で、内部被ばく問題をきちっと評価しなさいという判決が行われました。
しかしいまだに、日本放射線影響研究所もそうですし、
それから厚生労働省も内部被ばくを無視するという立場を変えていません。

そして今回、市民と科学者の内部被ばく問題研究会がスタートしました。
で、午前中にが紹介されたんですけれど、
ドイツの放射線防護協会というのがチェルノブイリの事故の後からずっと研究していますので
共同して、これから内部被ばくの問題を明らかにしていこうじゃないかという事になっていきます。

ドイツと私たちの会が取り組むことによって、これから放射線被ばくに脅かされない世界を作っていく、
ま、そういうことに大きな貢献ができればいいなと思っております。


これは広島の被爆者の絵なんですけど

内部被曝12

この方は爆心地から1kmの木造家屋内で被ばくしました。
21歳の兵士なんですけど、屋内でしたので火傷はしませんでした。
それから幸い、怪我もしませんでした。
彼は、だからしばらくは被爆者の援護救済を取り組んでいたんですけど、
12日後に脱毛が始まりました。

内部被曝13

そして紫色の斑点、先程肥田さんも言いましたけれども全身にこういう紫斑がでて、
23日後に出て、28日後に死亡しました。
これは瞬間的な外部被ばくの影響です。

それからこちらの少女の方は11歳の少女は、
爆心地から2キロメートル。ここでは、瞬時の放射線はほとんど到達しません。屋内でした。

内部被曝14

彼女が脱毛を始めたのは、結局放射線降下物による内部被ばくの影響であるという事が明らかな訳ですね。
ですけどこういう影響を先ほどのABCC、放射線影響研究所は認めませんでした。
遠距離のこういう脱毛は精神的なショックで起こった」んだと、
いまだに言い続けている状況が続いています。

午前中の総会にSchmitz-Feuerhakeさんっていう方がメッセージを送って下さったんですけど、
実は彼女が1983年に論文を書いてですね、
放射線影響研究所でやっている研究は遠距離被ばく者
この黒い丸で示したのが遠距離被ばく者
白い丸が入市被ばく者
これを比較対象外にするのは、それはおかしいという事を、初めて学術論文として研究をして明らかにしました。

内部被曝15

これは日本人平均と比べて、遠距離被ばく者や入市被ばく者が
どの位、癌とかいろんな病気についての発症率があるかという事で、
日本人平均と同じであれば1になるんですね。

で、調べている遠距離被ばく者や入市被ばく者は日本人に比べて死亡率は低いんですね。
それからいろんな病気なんかも低いんですけど、白血病とかいろんな癌なんかは高くなっているんですね。
死亡率はそれほど高くはないんですけれど、発症率がすごく高いんですね、のきなみ。
という事を論文に書いたんですけど、
国際的な放射線影響研究の専門家たちは彼女の論文の掲載を拒否しました。
で、彼女の論文は結局レターという、これは審査じゃないそういうところにしか掲載されなかったんですけれど、
1983年に「そういう事はおかしい」とすでに指摘していたんですな。

彼女は今現在ECRRの会長をやって下さっていまして、
今年の6月か8月ぐらいに日本にやって来て下さいますので、彼女と一緒になっていろんな研究ができると思います。

こうした隠ぺい政策の一番もとは、
「被ばく実態に基づいた被ばくの研究がおこなわれていない」ということなんですね。
それでわたくしは、原爆症認定集団訴訟が始まった事に際してそれをやる事にしました。

ABCCは1950年前後に、これから調査しうとする被ばく者の、脱毛とか
いろんな急性症状を発表しているはずなんですけど、
唯一発表しているのが脱毛の発症率ですね。

内部被曝16

四角というのが脱毛発症率なんですね。
初期放射線は爆心地から2キロまでしか到達しません。
でも、初期放射線が到達しない遠距離でもわずかですけど、脱毛が発生しているんですね。
実は放射線影響研究所の研究者はこの調査結果から、初期放射線の影響だけ引き出すことをやって、
この黒い四角と比較をしているんですね。
そしてこの比較が放射線降下物の影響だという事になるんですね。
私はこの調査結果から、これが被ばく線量と脱毛の発生率、シーベルトと読み直してもかまわないんですけれど、
被曝線量と脱毛の発生の確率を赤い直線で設定しました。
で、先程肥田さんがお話しになったように、
こういう症状が起きるのには個人差がすごく大きいわけです。

ほんのわずか浴びても、500ミリシーベルト位から始まるんだと思うんですけど、
それぐらいでもわずかに発症している人がいるわけですね。
だから、福島の原発事故で、先程のお話しのように、脱毛があったという事になると、
それは、その辺の被爆でも発症するような人ですね。
爆心地から2キロぐらいですと、5%の人に脱毛が発症していますね。
5%の発症の人は1.4ミリシーベルト浴びているということになるんですね。

内部被曝17

ずっと、被ばく線量が増えていくと、最後は100パーセント発症するわけです。
もっと被ばく線量が増えていくと必ずみんな発症する訳ですけど、
こんなに大量な4シーベルトを浴びると半分の人が60日以内に死亡するという、半致死量ですね。
それ以上浴びても、発症しない人も僅かにいるという事になるわけですね。
そういう事で個人差がすごく大きい。
だから平均値で考えてはダメだという事がイメージされている訳です。

これを元にして調べたのがこの図です。

内部被曝18

初期放射線、ピカッって光った瞬間は、こういうカーブで入ってくるんですけど、
降下物による影響というのは爆心地から6キロでも800ミリシーベルト。
これはグレイと書いてありますけれど、この辺は800ミリシーベルトという被ばくをしていることがわかりました。
国が言っているのは雨が降ってきてそれが地面の中に浸みこんだものを測ってこのバツ印。
全然違いますよね。
これを無視したのが現在の世界です。
この影響が内部被ばくだという事を今から示します。

これは長崎です。

内部被曝19

長崎は爆心地から12キロまでデータがありますので、
これは脱毛の発生率、青い線。
それから紫色の斑点が出てくる皮下出血はオレンジ色の線。
それから下痢の発症率が爆心地から近いところは発症率が低いんですけど、
逆に遠距離で、脱毛や紫斑に比べて発症率が高いですね。
この違いは何かというと、内部被ばくの影響なんですね。

で、私は今のデータから長崎の被曝線量を調べました。

内部被曝20


これが初期の被ばく線量で、降下物の量です。
1200ミリシーベルトとか1300ミリシーベルト。
広島の800ミリシーベルトよりもはるかに大きいですよね。1.5倍です。
で、これは広島よりも長崎の原爆が1.4倍だった時ことから、科学的に見ても合理的な結果な訳ですけど、
いまだに日本政府もアメリカ政府も放射線防護委員会もこれを認めようとしていない現状があります。
で、論文に書いて発表しようとしてもなかなか掲載されないという状況がずっと続きましたけど、
やっと去年の12月に、私の論文が日本の社会医学研究という雑誌に掲載されました。
世界の人達がそれを読むことになったので、そういう影響が広まっていけばいいなと思っているんですけど、

これは先ほどのですね、下痢の発症です。

内部被曝21

で、脱毛と紫斑に比べると、近距離では発症率が低い。
遠距離の方が発症率が高いんですね。
近距離はなにかというと、初期放射線が主なものです。
初期放射線は外から被ばくしますから、
下痢がはじまるというのは腸の壁の細胞が放射線にやられて剥離するという事で下痢がはじまるんですけれど、
腸のところにまで放射線が入ってくるとすると、
内部被ばくか透過力の強いものでないと入ってこないんですね。
透過力が強いというのは電離作用してダメージを与えるわけですけど、
腸の壁の細胞はすごく薄いですから、腸の壁まで到達できるんだけど、通りすぎてしまうわけですね。
という事でかなり大量に放射線を浴びないと、下痢が近距離では発症しなかった。

ところが遠距離の方は放射性物質を身体の中に取り込みます。
そしていきなり腸の細胞のところまで表面に放射性物質がきて、
そこで透過力の弱いベータ線をおもに与えるわけですね。
ベータ線は2センチか3センチしたら全部エネルギーを渡して溜まってしまう訳です。
という事で、この遠距離の下痢の発症というのは内部被ばくの影響なんですね。

だから、近距離は外部被ばく、遠距離は内部被ばくとなるわけです。
この違いを明確にすればいい訳ですね。

それを元にして被ばく線量を計算しました。
そうすると、初期放射線の影響と、放射線降下物の影響とがこんなふうにちゃんと出てくる。

内部被曝22

しかも、下痢と脱毛と紫斑の発症率が完全に被ばく線量を示す事が出来たのです。
だからこの大部分は、遠距離は内部被ばくだという事になるんです。
そうすると、先ほどお話ししましたように、
ガンマ線とベータ線の内部被ばくの影響が全然違うという事が明らかになったわけです。

いま、国際放射線防護委員会は、
ガンマ線もベータ線も内部被ばくで全く同じ影響しか与えないという基準を出しています。

で、これは放射線影響研究所のデータですけど、
放射線影響研究所はですね、遠距離被ばく者を把握していないとして、
それと比較して近距離被ばく者はどういう影響を与えているか計算しましたら、こういう線になるんですね。

内部被曝23

遠距離被ばく者を基準にしますから、こんなに低い数字が出ると。
ところが広島県民を対照にして遠距離被ばく者をちゃんと調べると、こういう線になるんですね。
これをちゃんと見ますと約2.3倍影響のズレが出てきました。

で、先日日本にやってきたMalko博士が調べたんですけれど、
ベラルーシと原爆被爆者を比べると、1シーベルト浴びた時にどれくらい癌が発症するかという事を調べたわけです。
ベラルーシはこうなったんですね。同じ被ばく線量です。
原爆被爆者の方はこうなったんですね。

内部被曝24

だからここにありますように、3.7倍から11.8倍ぐらいズレがあるんですね。
この比は何かというと、原爆被爆者の方は先ほど言ったように、
遠距離被ばくを比較対照にしているものですから、過小評価になるんですね。
2,3倍から、2~3倍のズレがある。

それから私はベラルーシの方は逆に測定がおかしいと思っています。
ホールボディーカウンターでやっています。
ホールボディーカウンターはガンマ線を測るんですけど、後でそれをベータ線などの被ばくと直すわけなんですけど、
その時に国際放射線防護委員会の基準を使うわけです。
国際放射線防護委員会はベータ線もガンマ線も全く変わらないとしています。
ですから私はホールボディーカウンターで測ったものは3倍から4倍5倍ぐらいしないと、
本当の被ばく線量は出てこないと思っています。

という事でこちらの方はそういう大量の被ばくをしたという事と、
それからこっちは被ばく線量をごまかしている、遠距離被ばく者を比較対照にしているという、
両方ちゃんとやればこの違いが解明できると思っております。
という事でこれからちゃんと議論していけば、そういう問題が明らかになると、そういう事になると思っております。

で、もう時間がないので、この被ばくの勉強をちゃんとしていけば、
いま、核兵器を無くすという事で、ウイーンで今度原爆展をやろうという事になって、
これからウイーンで2015年の核不拡散条約で核兵器廃止の交渉を開始せよという事をやるんですね。
そういうふうになれば、核兵器を禁止するという条約をやって、
今の核不拡散条約というのはある意味で不平等条約で、
この条約のもとで原発の利用なんかが進んできたという事がありますんで、
核兵器禁止条約の制定に向ければ、このNPTの誤った事を正していって、
世界中でですね、放射線の影響、原発も、核兵器もない、そういう世界を実現できるんじゃないかと思っていますんで、
皆さんと一緒になって頑張っていきたいと思います。

内部被曝25

ありがとうございました。


肥田舜太郎氏「市民と科学者の内部被曝問題研究会」第一回総会記念講演4/22(動画・内容書き出し)

松井英介氏(医師)「内部被ばくの問題」
市民と科学者の内部被曝問題研究会・第一回総会シンポジウム4/22(動画・内容書き出し)


矢ケ崎克馬氏「内部被曝の基礎」
市民と科学者の内部被曝問題研究会・第一回総会シンポジウム4/22(動画・内容書き出し)


山田 真氏(小児科医)「子どもたちの命を守るために」
市民と科学者の内部被曝問題研究会・第一回総会シンポジウム4/22(動画・内容書き出し)






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コメント

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内部被爆の現実

親愛なるキーコさんへ

毎日、大変な量の書き起こしありがとう。
お蔭で連休を利用して4月の動きをじっくり振り返ることができました。

内部被爆の問題は、これから大きな不安材料として目に見える形で起こってきます。どんなに現実から目を逸らそうと物凄い量の放射能をばら撒いてしまった現実は、変えられないので定めとして自分の身に起こるありのままを受け入れるしかありません。出産したら障害のある子供が生まれてくるようなさまざまな出来事が、次世代に渡って繰り返し起こってくるものと思われます。

私の知り合いで広島原爆の時に胎児として被爆した人がいますが、学業優秀で医大に合格して一度は医学の道を志して健康上の問題が原因で、医師になるのをあきらめた人がいます。彼は、原爆手帳を持っていましたが、血液の癌のために毎日病気と闘っているような人生を送っていました。さまざまな病気に悩ませられながら、入退院を繰り返し傍から観ると地獄の様な生活を送っていました。
二三年前に会ったのが最後ですが、白内障や糖尿病と仕事どころではなく、病気の進行を薬で抑えられずに足の壊死のために切断しなければならないといっていました。今は、生きていれば車椅子生活を余儀なくされたのではないかと思います。
頭の良い仕事のできる人でしたが、広島原爆による被爆を生き抜く人生は動画で肥田先生がおっしゃっているように大変なものです。彼の運命は体内被曝という悲しい現実と隣り合わせだった。タバコも酒もほどほど、女好きの性格は治せなかったみたいですが、人生の喜び半分しか生きれなかったのではないかと思います。

本当は、政府や電力会社で原発推進の立場にいる人々やその家族に、この地獄の苦しみを味合わせてあげたくなるくらい憤っているのですが、「みんな楽しくHappyがいい」の精神に反するコメントは差し控えておきます。

ゴールデンウィークくらいゆっくり休んでくださいネ。

No title

γ線による測定データは提供するけど、内部被曝で注意すべきα線やβ線を軽視するのも、ICRPの考え方に拠っているからと考えられます。
内部被曝を外部被曝の2~3%以下と見なしてるぐらいで、症状があらわれても”原発事故とは全く関係ありません”とするケースが今後増えるのではと懸念されます。

沢田昭二さんの『放射線による内部被曝』についてはこのページも参考になります。
→ ttp://peacephilosophy.blogspot.jp/2011/04/blog-post_20.html

セシウムはγ線のイメージですがベータ崩壊します。β線による内部被曝にも気をつける必要ありそうです。