東京新聞4月28日27面より
「核の傷」隠蔽史上映中
長年被爆者の治療を続け、今年95歳を迎えた肥田舜太郎医師のドキュメンタリー映画が公開されている。
国が低線量被ばくをした被ばく者をないがしろにしてきた歴史を告発する内容だが、
福島の原発事故が起きた今、ますますその危機感は現実のものとなっている。(出田阿生)
被ばく被害の過小評価、告発する医師
パリ出身のマーク・プティジャン監督は
2004年肥田舜太郎医師の著書「広島の消えた日」を読み、映画製作を思い立った。
2006年に完成した「核の傷」はフランスをはじめ、ロシアやカナダなどでもテレビ放映された。
監督は、福島事故をテレビで見た時
「肥田先生はまるでこの事故を予言していたようだった」と感じたという。
それが映画の最後で語られる
「核兵器反対、広島・長崎反対を言っても、時代遅れになるよ。
核はもっと先に行っていて、それに我々が苦しめられる世の中が来る」という言葉だった。
肥田医師は28歳の時、広島市郊外で被爆した。
原爆投下時に市内にいなかった人々が死亡していくことに疑問が湧いた。
戦後、被爆者の治療を続け、
長い歳月がたっても被ばく者が癌などの多くの病気に苦しめられる実態を目の当たりにしてきた。
放射性物質が呼吸や飲食で体内に入る内部被ばくで健康被害が生じている事が分かったのは30年後。
米国のアーネスト・スターングラス博士の研究からで、
映画ではそう博士もインタビューで登場する。
肥田医師は、
日米両政府が被ばく者の被害を意図的に隠ぺい、過小評価してきた歴史を、自らの経験を通して告発している。
東京・渋谷のアップリンクで上映中。
5月9日午後7時から原発事故の取材を続ける夫婦漫才「おしどり」のトークライブも開催。
問い合わせはアップリンク=03(6821)6821
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映画『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』公式サイト
「核の傷」予告編
監督・脚本・撮影・録音:マーク・プティジャン
助監督・編集:瀬戸桃子/製作:オンライン・プロダクションズ
日本版ナレーション:染谷将太
その日、広島は静かでした。
しかし、一発の原子爆弾が静寂を破り、広島に住む14万人の命を奪ったのです。
肥田:
今から60年前に、広島で病院の軍医をしてて、
原爆の時にここで沢山の方の治療をした医者なんです。

自身の被爆体験を原点に戦後被ばく者資料に献身し続けてきた
肥田:直接原爆を浴びた人と浴びない人が同じような病気で死んでいくというのが印象に残っている。
今明らかになる 内部被ばくの実態

アーネスト・スターングラス博士:
現在全世界が危険にさらされています
資料は示しています。
原発が機能している時、癌の発症率が急激に上昇し、閉鎖した時には減少することを
何百という原子力発電所が稼働し、放射能を含んだゴミが毎日生まれています。
我々の努力次第で子どもたちの命が救えるのです。
「311以降を生きる」肥田舜太郎氏講演より 同時上映
これを内部被曝と言います。
いま福島で起こっているのは、みんな内部被曝なんです。
命の持ち主が、自分の命の主人公に本当になって、絶対に病気を起こしちゃいけないと。
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内部被曝の実態を訴え続ける肥田舜太郎被爆医師(95歳)
福島原発事故以降、放射能に不安を抱く人々の要望に応え、2012年に95歳となった肥田舜太郎医師は、
自身の広島での被爆体験と被爆治療にあたった経験を元に
低線量被曝、内部被曝についての講演を日本全国で重ねている。
映画の中で肥田医師は、
直接被爆していない人々も、ただ体がだるいといった原因不明の症状を発症していくことの疑問を、
戦後30年経った1970年代にやっと理解できるようになったと語る。
その理解の元となるのは、アメリカの原発製造会社ウェスティングハウス社に勤めていたスターングラス博士が
低線量被曝についての実態を研究した著書『低レベル放射能』である。
スターングラス博士は、
原発からは平常の運転時でさえ放射能が漏れていて、その地域の癌の発症率が高いというデータを挙げており、
原爆投下後の調査でも低線量被曝の影響をアメリカは意図的に隠してきたと憤る。
2006年にフランス人のマーク・プティジャン監督が描いた本作は、
日米両政府が被爆者の実態を隠してきたことを明らかにし、
原爆投下から67年経ち、福島原発事故が起こった後でも、
日本政府の対応がなんら変わっていないことを訴えるドキュメンタリーである。
「どれくらいの放射線が人体にとって限界なのか、
広島、長崎での調査を元に、アメリカのABCC(原爆障害調査委員会)が基準を決めている。
ほんの少し体内に入った放射線の粒がどれだけ人体に影響を与えるのか、
科学を名乗った最も権威のある集団が嘘をついているのです」
──(肥田舜太郎)
なぜ日本政府は米国政府と結託して嘘をついたのか
なぜ日本政府は、アメリカ政府と結託して、原爆による死亡者の数を隠そうとしたのでしょうか?
日本にとって、原爆は忘れ去りたい過去であり、敗戦の屈辱を思い出したくなかったからかもしれません。
そしてなにより、被爆者の認定は、国の賠償責任にもつながる問題だったからでしょう。
1945年に原爆が落とされてから、数千回もの核実験が世界で繰り返されてきました。
そして、何千発もの核弾頭が、いつ爆発するか分からずに眠っています。
何百という原子力発電所が稼動し、放射能を含んだゴミが、毎日、生まれています。(『核の傷』ナレーションより)

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コメント
岩上安身氏のインタビューです。
120412肥田舜太郎氏インタビュー 1/2
http://www.ustream.tv/recorded/21779002
120412肥田舜太郎氏インタビュー 2/2
http://www.ustream.tv/recorded/21779640
120412肥田舜太郎氏インタビュー 1/2
http://www.ustream.tv/recorded/21779002
120412肥田舜太郎氏インタビュー 2/2
http://www.ustream.tv/recorded/21779640
Zephyr | 2012.05.04 09:32 | 編集