国会の事故調査の最終報告について
・今回の事故は自然災害ではなくて、人災である
・地震にも津波にも耐えられる保証がある状態は?
・地震で壊れた可能性もある
・「人災だ」という言葉の独り歩き
2012年7月11日水曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
<参考>
国会事故調:原発事故「明らかに人災」…報告書公表
毎日新聞 2012年07月05日 21時05分(最終更新 07月06日 01時14分)
東京電力福島第1原発の事故原因などを調べてきた国会の事故調査委員会(国会事故調、黒川清委員長)は5日、
根源的な原因は「『自然災害』ではなく明らかに『人災』である」と断定した報告書を公表した。
地震・津波対策を立てる機会が過去、何度もあったのに、政府の規制当局と東電が先送りしてきたと批判。
その背景に「組織的、制度的問題」があると指摘した。
報告書は641ページ。衆参両院議長に提出した。
事故の根源的な原因として、経済産業省と密接な関係にあった東電が、
歴代の規制当局に規制の先送りや基準を軟化するよう強い圧力をかけ、
「規制する立場と、される立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電気事業者の『虜(とりこ)』になっていた」とした。
その結果、経産省原子力安全・保安院の「原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」とし、
東電を「自らは矢面に立たず、役所に責任を転嫁する黒幕のような経営体質」と断じた。
事故の直接的な原因として
「事故は津波が要因」との見方を否定する見解も盛り込んだ。
政府の事故調査・検証委員会(政府事故調、畑村洋太郎委員長)の中間報告書(昨年12月公表)や、
東電の社内調査報告書(今年6月公表)は「非常用電源の喪失は津波による浸水が原因」との見方を示してきた。
しかし国会事故調の報告書は、津波の到達時間などを検証した結果、
少なくとも1号機の非常用電源の喪失は津波によるものではない可能性があると指摘した。
原子炉圧力容器の圧力を下げるための弁が作動していなければ、
「1号機では地震の揺れによる小規模の冷却材喪失事故が起きていた可能性がある」とした。
東電が原発からの「全面撤退」を検討したとされる点は
「東電内部で全面撤退が決まった形跡はなく(官邸側の)『誤解』だった」と結論付けた。
ただ、誤解を生んだ最大の責任は
「民間企業の経営者でありながら、自律性と責任感に乏しい清水(正孝元)社長が、
あいまいな連絡に終始した点に求められる」と指摘。
「東電は、官邸の誤解や過剰介入を責められる立場になく、そうした事態を招いた張本人である」とした。
◇官邸介入で混乱
事故後の対応では、保安院や東電の説明不足に不信感を募らせた官邸が現場に介入したとし、
「情報を把握できないまま介入し混乱を引き起こした。
事故の進展を止められず、被害を最小化できなかった最大の要因」と認定。
そのうえで
「官邸政治家は、真の危機管理意識が不足し、官邸が危機において果たすべき役割についての認識も誤っていた」と
厳しく指摘した。
「官邸、規制当局、東電経営陣には、準備も心構えもなく、被害拡大を防ぐことはできなかった」と強く批判した。
事故発生翌日の3月12日朝、菅直人前首相が現場を視察したことに関しても
「現場の士気を鼓舞したというよりも、自己のいら立ちをぶつけることで、
むしろ現場にプレッシャーを与えた可能性もある」と指摘した。
こうした検証を踏まえ、報告書は
▽規制当局に対する国会の監視▽政府の危機管理体制の見直し
▽新しい規制組織に必要な要件--など7項目を提言している。【笈田直樹、奥山智己】
◇解説…規制の「主従逆転」を指弾
発生直後から原子力業界が「想定外」で片付け、誰もがふに落ちなかった東京電力福島第1原発事故。
東電と監督する規制当局の「逆転関係」が原因と指弾したのが、国会事故調の特徴だ。
当初、調査期間が半年と短く、任命されて初めて原発問題に取り組んだ委員もいて、調査への不安もささやかれた。
しかし、調査の予算は約15億円で政府事故調の3倍超。
強力な調査権限が認められ、菅直人前首相ら当事者の声を公開の場で伝えた意味は大きい。
報告書は「規制を骨抜きにする試みを続けてきた」という東電や、
安全制度の強化に否定的な経済産業省原子力安全・保安院の安全文化を軽視する体質を断罪した。
事故から1年4カ月。
今なお16万人余りが福島県内外で避難生活を強いられ、政府は国民を守らない、という疑念さえ抱かせている。
このような惨劇を招かないよう関係者の覚悟を求めたい。【奥山智己】
国会事故調 最終報告書

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番組内容を書き出しました。
今回の事故は自然災害ではなくて、人災である
水野:
まずは福島第一原発事故を検証してきました国会の事故調査の最終報告がでた。
これについてうかがいたいと思います。
これは今回の事故は自然災害ではなくて、人災であると。
人災であるというふうに結論付けていて、
これについて一方他の報告とは違う突っ込んだ印象を持つ方も多いと思いますが、
この「人災だ」という結論の付け方に、小出さんはどんな印象、感想をもたれますか?
小出:当り前だと思いました。
水野:へぇ、人災であると
小出:はい
水野:それはどんな意味ですか?当り前だとおっしゃるのは。
小出:
事故報告書の中に詳しく書いてありますけれども、
これまで東京電力自身が、こんな事故は全然起こらないというふうに思ってきていて、
何の備えもしなかったという事ですし、それを規制するほうの組織。
いわゆる原子力安全委員会などの組織が全く役に立たなかった、
そして法律までもが役に立たなかったというのは、詳しく検証されていますので、
日本というこの国で原子力をやろうとして、これまできたわけですけれども、
そのやる組織が全く無いままここへきてしまったという指摘なんですね。
まさに人災です。
地震にも津波にも耐えられる保証がある状態は?
水野:
わたしは一つこういう記述があって気になっていたんですが、
地震にも津波にも耐えられる保証がない脆弱な状態で震災を迎えた。
という記述があるんですね。
ただこういう事があれば地震や津波にも耐えられる保証のある、
脆弱でない状況というのはどうやったら作れるんだろう?と思うんですが、これは科学的にどう思われますか?
小出:
ま、国会事故調の方に聞いていただけば良いと思いますが、
私自身はそんな物はありえないと思いますし、日本というような世界一の地震国で、
マグニチュード8.5,9.0というような地震が来るところで、
完璧な安全などというものはあり得ないという事が私は思っていますので、
事故調の記載自身があるのですけれども、多分事故調の人達もそれを信じているわけではないと私は思います。
地震で壊れた可能性もある
水野:
細かくいろいろと見ていきますとね、
「これはどういう事なんだろう?」と疑問を持つ点がいくつも、私のような素人でもございまして、
まず一つ教えていただきたいのは、
「今回原発が壊れたのは津波のせいだったのか、それとも津波が来る前に地震でも壊れていたのか」、
というところは非常に大きな点であると小出先生はおっしゃってきましたよね。
小出:そうです
水野:
で、今回の報告書では「地震で壊れた可能性もある」という指摘があるんですね。
これまで東電も政府の事故調も保安院もその全ては津波のせいだと、言ってきたんですが、
「いや、そうではないかもしれない」という説明があります。
で、これちょっと詳しいところを近藤さーん、
ちょっとややこしいかもしれませんけど、大切な点だと思いますので、細かくご紹介させて下さいね。
一つ問題になっているのは、
津波の時刻と、実際に原発の電源が喪失された時刻。
この時刻がどうなのかという事が大きいんですね。
これまではですね、大前提となる津波が来た時刻は何時なのかというのが、
第一の波、第一波は、午後3時17分ごろ。
そして第二波は3時35分ごろ。とされておりました。
ところがですね、今回国会事故調はこの時間を、
「いやいやこれは沖合の1.5キロのところにある計器、測定器が記録した数字であると、記録であると。
だから原発に津波が到着した時刻ではないんだという事になっているんです。
で、少なくとも1号機の電源が開喪失したのは
午後3時35分か、36分とみられているんです。
こういうことを考え合わせますと、
もしかしたら津波が来たと今までされていた時間というのは沖合1.5キロに来てた時間ですから、
そこから遅い時間になってやっと原発に到達している。
しかし、それまでの時間に原発の電源が喪失していたのではないか?とそういう記述がなされているんです。
小出さん、この事の意味はどうお考えですか?
小出:
はい、あり得るかもしれないと思いますが、
問題は、これは何度も私は聞いていただいてきましたけれども、
現場でそれを確かめに行くことすらがまだできないのです。
水野:そうなんですね。
小出:
電源設備の調査もできませんし、もっと重要なことは、
津波が来る前に地震によって配管が破れたかもしれないという事をずっと私自身も気にしてきたのですけれども、
そのこと自身を確かめることができない。
現場に行ってですね。
そういう事態が今ある訳で、
まさに原子力発電所の事故というものの困難性をその事が示しているとおもいます。
これまで4つ事故調査報告書が出たわけですけれども、
そのどれもが実際の事故の証拠をつかむことができないというのが今なのだと思います。
水野:
そうですね、今回も「地震で壊れた可能性がある」とはしながらも、
実際には電源喪失は津波による浸水だと断定する前に基本的な疑問に対する筋の通った説明が必要だと、
こういう落としどころになっているんですが、
小出:でも、それができない。
水野:
筋の通った説明をしようにも、筋が通らんという事が分かるにしろ、
説明を付ける試料が実際に得ることができないんですね。
小出:
事故が火力発電所であれば、
現場に行ってどうやって壊れたかという事を調べることができるのですけれども、
原子力発電所の場合には現場に行かれないのです。
水野:
う・・・ん・・・
近藤さん、これ実際は強制力のある国政調査権の発動を要請して、
もっと資料を公開の形で請求する事もできたというんですが、
それを実際しなかったんだそうですね。
いろんなその・・・「もっとできなかったのか」という点はあるかと思いますが、
近藤:
盲点は今言った津波の到達2分前に電源が喪失していたんじゃないかという事もそうですが、
東電の説明も結構嘘が多いよね。
改めてこう、抱き合わせで読むとね。
水野:ビックリしますよね、
沖合1.5キロの計器の時間やったなんて言われたら、
「はぁ?」って思いますね。
「人災だ」という言葉の独り歩き
近藤:
あの、先生ね、
わたしは「人災だ」っていう言葉の独り歩きはある意味恐れるんです。
つまり、その、「人災だったら人がちゃんと注意してやれば、原発事故を防げるじゃないか」と言いかねませんから、
現に言っている人がおる訳でね。
小出:そうですね
近藤:
そうすると僕は、
「人災の面があるが、しかし人間のいかなる注意力を払っても原発事故は防げないのは
日本が異常なほどの地震大国である」とこう書けばね、私は論理的には納得できるんですよ。
だけど人災だっていうのがね、結論だっていうとなんか鬼の首取ったみたいに言うんだけど、
しかしそれ自体が逆につけ込まれる余地があるっていう気がしているんですが、
先生、結局そういうことですよね?
小出:
近藤さんのご指摘の通りですけれども、
わたしはもう一歩思うところがあって、
「日本は地震国だからどんなに手立てをしてもダメなんだ」という、そういう、今近藤さんがおっしゃったと思いますが、
わたしは別に地震国じゃなかったとしても、
「原子力発電所というのは機械だから、壊れる時には壊れますよ」と、ずーっと言ってきたんです。
近藤:あ、なるほど
水野:そっか、地震国でなくても、最終の処理の仕方は分からないままですしね。
小出:
もちろんです。
核分裂という現象を起こしてしまえば、自分が作ったゴミの始末すらが出来ないのが今なのです。
そして事故にしたって、どんなに注意を払ったところで、
やはりダメな時というのはあると覚悟しなければいけないと思います。
水野:
今回の事故報告書はですね、衆院議長に渡されましたけれども、
政府に申し入れるべき物は申し入れますというような答えがあったようで、
こっから先どういうふうに取り扱われるかというのは決まっていないんだそうです。
小出:はい
水野:ここからなにかが始まったり、何かが改められたりというものではなさそうですね。
小出:まさに人災ですね。
水野:まさにそういう意味の人災でありますね。
小出:はい。
・今回の事故は自然災害ではなくて、人災である
・地震にも津波にも耐えられる保証がある状態は?
・地震で壊れた可能性もある
・「人災だ」という言葉の独り歩き
2012年7月11日水曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
<参考>
国会事故調:原発事故「明らかに人災」…報告書公表
毎日新聞 2012年07月05日 21時05分(最終更新 07月06日 01時14分)
東京電力福島第1原発の事故原因などを調べてきた国会の事故調査委員会(国会事故調、黒川清委員長)は5日、
根源的な原因は「『自然災害』ではなく明らかに『人災』である」と断定した報告書を公表した。
地震・津波対策を立てる機会が過去、何度もあったのに、政府の規制当局と東電が先送りしてきたと批判。
その背景に「組織的、制度的問題」があると指摘した。
報告書は641ページ。衆参両院議長に提出した。
事故の根源的な原因として、経済産業省と密接な関係にあった東電が、
歴代の規制当局に規制の先送りや基準を軟化するよう強い圧力をかけ、
「規制する立場と、される立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電気事業者の『虜(とりこ)』になっていた」とした。
その結果、経産省原子力安全・保安院の「原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」とし、
東電を「自らは矢面に立たず、役所に責任を転嫁する黒幕のような経営体質」と断じた。
事故の直接的な原因として
「事故は津波が要因」との見方を否定する見解も盛り込んだ。
政府の事故調査・検証委員会(政府事故調、畑村洋太郎委員長)の中間報告書(昨年12月公表)や、
東電の社内調査報告書(今年6月公表)は「非常用電源の喪失は津波による浸水が原因」との見方を示してきた。
しかし国会事故調の報告書は、津波の到達時間などを検証した結果、
少なくとも1号機の非常用電源の喪失は津波によるものではない可能性があると指摘した。
原子炉圧力容器の圧力を下げるための弁が作動していなければ、
「1号機では地震の揺れによる小規模の冷却材喪失事故が起きていた可能性がある」とした。
東電が原発からの「全面撤退」を検討したとされる点は
「東電内部で全面撤退が決まった形跡はなく(官邸側の)『誤解』だった」と結論付けた。
ただ、誤解を生んだ最大の責任は
「民間企業の経営者でありながら、自律性と責任感に乏しい清水(正孝元)社長が、
あいまいな連絡に終始した点に求められる」と指摘。
「東電は、官邸の誤解や過剰介入を責められる立場になく、そうした事態を招いた張本人である」とした。
◇官邸介入で混乱
事故後の対応では、保安院や東電の説明不足に不信感を募らせた官邸が現場に介入したとし、
「情報を把握できないまま介入し混乱を引き起こした。
事故の進展を止められず、被害を最小化できなかった最大の要因」と認定。
そのうえで
「官邸政治家は、真の危機管理意識が不足し、官邸が危機において果たすべき役割についての認識も誤っていた」と
厳しく指摘した。
「官邸、規制当局、東電経営陣には、準備も心構えもなく、被害拡大を防ぐことはできなかった」と強く批判した。
事故発生翌日の3月12日朝、菅直人前首相が現場を視察したことに関しても
「現場の士気を鼓舞したというよりも、自己のいら立ちをぶつけることで、
むしろ現場にプレッシャーを与えた可能性もある」と指摘した。
こうした検証を踏まえ、報告書は
▽規制当局に対する国会の監視▽政府の危機管理体制の見直し
▽新しい規制組織に必要な要件--など7項目を提言している。【笈田直樹、奥山智己】
◇解説…規制の「主従逆転」を指弾
発生直後から原子力業界が「想定外」で片付け、誰もがふに落ちなかった東京電力福島第1原発事故。
東電と監督する規制当局の「逆転関係」が原因と指弾したのが、国会事故調の特徴だ。
当初、調査期間が半年と短く、任命されて初めて原発問題に取り組んだ委員もいて、調査への不安もささやかれた。
しかし、調査の予算は約15億円で政府事故調の3倍超。
強力な調査権限が認められ、菅直人前首相ら当事者の声を公開の場で伝えた意味は大きい。
報告書は「規制を骨抜きにする試みを続けてきた」という東電や、
安全制度の強化に否定的な経済産業省原子力安全・保安院の安全文化を軽視する体質を断罪した。
事故から1年4カ月。
今なお16万人余りが福島県内外で避難生活を強いられ、政府は国民を守らない、という疑念さえ抱かせている。
このような惨劇を招かないよう関係者の覚悟を求めたい。【奥山智己】
国会事故調 最終報告書

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今回の事故は自然災害ではなくて、人災である
水野:
まずは福島第一原発事故を検証してきました国会の事故調査の最終報告がでた。
これについてうかがいたいと思います。
これは今回の事故は自然災害ではなくて、人災であると。
人災であるというふうに結論付けていて、
これについて一方他の報告とは違う突っ込んだ印象を持つ方も多いと思いますが、
この「人災だ」という結論の付け方に、小出さんはどんな印象、感想をもたれますか?
小出:当り前だと思いました。
水野:へぇ、人災であると
小出:はい
水野:それはどんな意味ですか?当り前だとおっしゃるのは。
小出:
事故報告書の中に詳しく書いてありますけれども、
これまで東京電力自身が、こんな事故は全然起こらないというふうに思ってきていて、
何の備えもしなかったという事ですし、それを規制するほうの組織。
いわゆる原子力安全委員会などの組織が全く役に立たなかった、
そして法律までもが役に立たなかったというのは、詳しく検証されていますので、
日本というこの国で原子力をやろうとして、これまできたわけですけれども、
そのやる組織が全く無いままここへきてしまったという指摘なんですね。
まさに人災です。
地震にも津波にも耐えられる保証がある状態は?
水野:
わたしは一つこういう記述があって気になっていたんですが、
地震にも津波にも耐えられる保証がない脆弱な状態で震災を迎えた。
という記述があるんですね。
ただこういう事があれば地震や津波にも耐えられる保証のある、
脆弱でない状況というのはどうやったら作れるんだろう?と思うんですが、これは科学的にどう思われますか?
小出:
ま、国会事故調の方に聞いていただけば良いと思いますが、
私自身はそんな物はありえないと思いますし、日本というような世界一の地震国で、
マグニチュード8.5,9.0というような地震が来るところで、
完璧な安全などというものはあり得ないという事が私は思っていますので、
事故調の記載自身があるのですけれども、多分事故調の人達もそれを信じているわけではないと私は思います。
地震で壊れた可能性もある
水野:
細かくいろいろと見ていきますとね、
「これはどういう事なんだろう?」と疑問を持つ点がいくつも、私のような素人でもございまして、
まず一つ教えていただきたいのは、
「今回原発が壊れたのは津波のせいだったのか、それとも津波が来る前に地震でも壊れていたのか」、
というところは非常に大きな点であると小出先生はおっしゃってきましたよね。
小出:そうです
水野:
で、今回の報告書では「地震で壊れた可能性もある」という指摘があるんですね。
これまで東電も政府の事故調も保安院もその全ては津波のせいだと、言ってきたんですが、
「いや、そうではないかもしれない」という説明があります。
で、これちょっと詳しいところを近藤さーん、
ちょっとややこしいかもしれませんけど、大切な点だと思いますので、細かくご紹介させて下さいね。
一つ問題になっているのは、
津波の時刻と、実際に原発の電源が喪失された時刻。
この時刻がどうなのかという事が大きいんですね。
これまではですね、大前提となる津波が来た時刻は何時なのかというのが、
第一の波、第一波は、午後3時17分ごろ。
そして第二波は3時35分ごろ。とされておりました。
ところがですね、今回国会事故調はこの時間を、
「いやいやこれは沖合の1.5キロのところにある計器、測定器が記録した数字であると、記録であると。
だから原発に津波が到着した時刻ではないんだという事になっているんです。
で、少なくとも1号機の電源が開喪失したのは
午後3時35分か、36分とみられているんです。
こういうことを考え合わせますと、
もしかしたら津波が来たと今までされていた時間というのは沖合1.5キロに来てた時間ですから、
そこから遅い時間になってやっと原発に到達している。
しかし、それまでの時間に原発の電源が喪失していたのではないか?とそういう記述がなされているんです。
小出さん、この事の意味はどうお考えですか?
小出:
はい、あり得るかもしれないと思いますが、
問題は、これは何度も私は聞いていただいてきましたけれども、
現場でそれを確かめに行くことすらがまだできないのです。
水野:そうなんですね。
小出:
電源設備の調査もできませんし、もっと重要なことは、
津波が来る前に地震によって配管が破れたかもしれないという事をずっと私自身も気にしてきたのですけれども、
そのこと自身を確かめることができない。
現場に行ってですね。
そういう事態が今ある訳で、
まさに原子力発電所の事故というものの困難性をその事が示しているとおもいます。
これまで4つ事故調査報告書が出たわけですけれども、
そのどれもが実際の事故の証拠をつかむことができないというのが今なのだと思います。
水野:
そうですね、今回も「地震で壊れた可能性がある」とはしながらも、
実際には電源喪失は津波による浸水だと断定する前に基本的な疑問に対する筋の通った説明が必要だと、
こういう落としどころになっているんですが、
小出:でも、それができない。
水野:
筋の通った説明をしようにも、筋が通らんという事が分かるにしろ、
説明を付ける試料が実際に得ることができないんですね。
小出:
事故が火力発電所であれば、
現場に行ってどうやって壊れたかという事を調べることができるのですけれども、
原子力発電所の場合には現場に行かれないのです。
水野:
う・・・ん・・・
近藤さん、これ実際は強制力のある国政調査権の発動を要請して、
もっと資料を公開の形で請求する事もできたというんですが、
それを実際しなかったんだそうですね。
いろんなその・・・「もっとできなかったのか」という点はあるかと思いますが、
近藤:
盲点は今言った津波の到達2分前に電源が喪失していたんじゃないかという事もそうですが、
東電の説明も結構嘘が多いよね。
改めてこう、抱き合わせで読むとね。
水野:ビックリしますよね、
沖合1.5キロの計器の時間やったなんて言われたら、
「はぁ?」って思いますね。
「人災だ」という言葉の独り歩き
近藤:
あの、先生ね、
わたしは「人災だ」っていう言葉の独り歩きはある意味恐れるんです。
つまり、その、「人災だったら人がちゃんと注意してやれば、原発事故を防げるじゃないか」と言いかねませんから、
現に言っている人がおる訳でね。
小出:そうですね
近藤:
そうすると僕は、
「人災の面があるが、しかし人間のいかなる注意力を払っても原発事故は防げないのは
日本が異常なほどの地震大国である」とこう書けばね、私は論理的には納得できるんですよ。
だけど人災だっていうのがね、結論だっていうとなんか鬼の首取ったみたいに言うんだけど、
しかしそれ自体が逆につけ込まれる余地があるっていう気がしているんですが、
先生、結局そういうことですよね?
小出:
近藤さんのご指摘の通りですけれども、
わたしはもう一歩思うところがあって、
「日本は地震国だからどんなに手立てをしてもダメなんだ」という、そういう、今近藤さんがおっしゃったと思いますが、
わたしは別に地震国じゃなかったとしても、
「原子力発電所というのは機械だから、壊れる時には壊れますよ」と、ずーっと言ってきたんです。
近藤:あ、なるほど
水野:そっか、地震国でなくても、最終の処理の仕方は分からないままですしね。
小出:
もちろんです。
核分裂という現象を起こしてしまえば、自分が作ったゴミの始末すらが出来ないのが今なのです。
そして事故にしたって、どんなに注意を払ったところで、
やはりダメな時というのはあると覚悟しなければいけないと思います。
水野:
今回の事故報告書はですね、衆院議長に渡されましたけれども、
政府に申し入れるべき物は申し入れますというような答えがあったようで、
こっから先どういうふうに取り扱われるかというのは決まっていないんだそうです。
小出:はい
水野:ここからなにかが始まったり、何かが改められたりというものではなさそうですね。
小出:まさに人災ですね。
水野:まさにそういう意味の人災でありますね。
小出:はい。
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