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保安院「2033年まで十分健全」
ガラスの原子炉玄海1号機について
2012年8月1日水曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
水野:
今日はまず、原発の寿命に関係してくる話で、
九州電力の玄海原発についてうかがいたいと思います。
玄海の1号機というのは36年以上経っているんですよね、
で、これは小出先生が最も危険性の高い原発の一つだというふうに指摘してこられた原発なんですが、
今回ですね、保安院が、
「いや、この玄海1号機まだまだいける」と。
「20年はまだ行ける」という意味のことを言っているので、
その意味を教えていただきたいと思います。
まず、小出先生がどうして玄海1号機は危険性が高いとおっしゃっていたのか、
もう一回教えていただけませんか?
小出:
はい。
何回か、たねまきジャーナルでも聞いていただいたと思いますが、
原子炉という部分の一番重要な部分に
原子炉圧力容器という、鋼鉄製の圧力がまがあります。
それだけは、交換もできない。とにかく最後までいくしかないというそういうものなのですが、
その圧力容器というのは鋼鉄で出来ています。
そして、鋼鉄というのはみなさん分かって頂けると思いますけれども、
鉄ですから、叩いたところで簡単に割れませんし、
ま、叩いて延ばそうと思えば延びることもあるし、
曲げようと思えば曲げることもできる、そういう物です。
それを私たちは「延性」と呼んでいます。
延びる性質。
水野:延びる性質、延性。
小出:
はい、
ところがこの世にあるものは全てが延性ではなくて、
たとえばガラスというようなものは叩けば割れてしまうわけで、
それは「脆性」と、脆い性質のものと
水野:脆い性質と書いて脆性
小出:
はい、
物理学的にはそうやって呼んできたのです。
でも、ガラスは今私たちが生きている通常の温度で脆くて、
鋼鉄は脆くなくて延びると思っているわけですが、
鋼鉄もどんどん冷やしていってしまいますと、あるところから脆くなってしまうのです。
水野:ガラスのような性質に、あるところからなってしまうんですね。
小出:
はい、そうです。
それで、その鋼鉄というものは、原子炉を運転させ始めると、
中性子という放射線に被曝をし続けるわけですが、
被曝をし続けると、延性と脆性の境目の温度というのが、どんどん高くなってくるのです。
ですから、今現在は本当に冷たい温度でないと、金属というのは延びる性質を持っているんですけれども、
原子炉を運転し続けると、どんどん脆くなってしまう温度が高くなってきてしまうという性質があります。
もちろんそれは原子力を推進する人達も知っていた訳で、
一体何度になったら鉄が脆くなってしまうかという事を、調べてきたのです。
実はこれまで、科学的な知識はなかったのです。
脆くなってしまう事は分かっていたけれども、
一体何年で脆くなってしまうのか?という事で、
とりあえず、30年、40年位が原子炉の寿命だと思ってきたのです。
でもそれを科学的に確かめなければいけないという事で、
試験片という物を圧力容器の内側に貼りつけて、
一体その試験片が何度になったらガラスになってしまうのか?ということを調べてきた、
水野:
つまり、圧力容器と、同じ材料の鋼鉄を
試験をするための欠片として、中に入れて取り出して見られるようにしているわけですね。
小出:
そうです。
それをある年ごとに取り出して調べてきたのですが、
彼らが思っていた以上に、急激に脆くなっていく温度が高くなってきているという事が、
玄海1号炉で分かったのです。
そして今や98度という温度。
それより以下になると、圧力容器はガラスだという事が分かってしまいました。
要するに98度以下という事は、普通の温度ですけれども、
そういう温度では、もう玄海1号機の圧力容器は、
いわゆるみなさんが思っている鋼鉄ではなくてガラスなんです。
水野:あぁ、
小出:
そういう状態を許容出来るかどうかという事が問題になってきていて、
九州電力も、今回の保安院もそうですが、
運転中は原子炉の中の温度は200何十度にもなっているから、
そういう温度では金属は延性を持っている。
水野:延びる性質を持っているから大丈夫だ、壊れないと。
小出:
だから大丈夫だと、
そうです。そう言っているのです。
ただし、皆さんにこの事をきっちりと分かっていただきたいのですが、
絶対的に安全というものはないのです。
どんな物でも。
どこまで安全なのかということを我慢出来るか
という事だけが判断の基準にならなければいけないと私は思います。
それは昔から原子力をやっている人間の間ではずーっと問題になっていまして、
「How safe is safe enough?」という、そういう英語の言葉で言われてきたのですが、
「どこまで安全なら安全と言えるのか?」という事なんですが、
それが、今まで「ここまでならいいだろう」と思っていたものが、
どんどん、どんどん、危険になってきていて、そこまで我慢をしなければいけない。
それでもやるべきなのかどうなのか?という、その判断を問われているわけです。
水野:
だって、もしもこの玄海1号機で大きなトラブルがあったらですね、
冷却水で冷やさなければいけないでしょ?
98度なんてあったらあきませんやんか。
小出:そうです
水野:
どんどん、どんどん、冷やしていかないといけない。
という事は、ガラスの様な容器の、圧力容器の中に核燃料が溜まっていることになるわけで、
小出:そうです
水野:
それがパリンッ!と割れてしまったらどうなるか?っていう
そこの危険ですよね?
小出:
そうです。
そうなればもう、手の施しようがないという事は分かっているのです。
そういう状態になる可能性がどれだけあるか?という事で、
「安全か安全じゃないか」と言う判断をしてしまっているわけです。
水野:
今まででしたら、今までの計算式で計算したら、
運転してからの年数が、もう85年に相当するという結果になっていたんだそうですね?
小出:そうです、はい。
水野:
36年経っているんですが、
「いや、実は85年経ったのと同じ状況になっている」という結果が出たんで、
これはえらいこっちゃと思っておりましたら、
今回、保安院は、昨年の11月からずーっとこれを検証していまして、
で、今回出した検証結果というのがですね、
「いやいや、まだまだ大丈夫」と。
あの・・「十分に健全である」という言葉なんですね。
それも「2033年までは十分健全である」という結果なんだそうです。
という事は、あと21年大丈夫!。
大丈夫と言ったらおかしいですね、十分健全である
そして、スタートから考えますと、「58年は健全だ」と言っているのに等しくなるわけですが、
これは小出さん、どうお考えになりますか?
小出:
要するに、これまで原子力を進めてきた原子力保安院は、
「これ位の危険は我慢できる」と言っているのです。
水野:あ、そういう意味なんですか!
小出:
はい。
でも私は、これまで「原子力発電所は安全だ」と言い続けてきた保安院こそが、
福島原子力発電所の事故を起こした張本人だし、
彼らは本当は刑務所にいなければならない人たちだと私は思ってきました。
その彼らがいまだに原子力の安全を審査するという場所にいて、
彼らから見ると「まだまだこれくらいは我慢出来る」と言っているのです。
私は彼らの主張を認めたいとは思いませんし、
もっときちっと事実に向き合うべきだと思います。
水野:
はい、
近藤さ~ん、政府は原発を「原則40年で廃炉にする」という方針を決めていますけれど、
「例外的には60年までOK」みたいなのも付いていますよね。
近藤:
保安院が・・先生ね、さっきおっしゃったように、
矢面に立たされている福島原発の事故がありながらね、
今の、その、なんていうんでしょう、そういうことを踏まえていないような反応をするというのは、
私はどういうふうに理解したらいいのかな?と思うんですがね。
小出:ww
私も理解できませんし、
毎日新聞も含めて、きちっとそれを取り上げて判断して報道してほしいと願います。
近藤:これ、メンバーは先生、まるで変わっていないんですか?
小出:保安院は全く変わっていません。
近藤:それも異常ですよね。
小出:はい、そうです。
近藤:うーーーん
水野:
そして9月上旬にも原子力規制委員会というところが出来ますけど、
そこにこの結果、報告書は引き継がれるんだそうです。
で、専門家の間でも、今回この保安院の中でやっていらっしゃる
専門家会合でも異を唱えていらっしゃる先生がいらっしゃるんですよね、
小出:そうです。
水野:
データが十分ではない。
原子炉の状態が把握できない。
健全性には疑問がある。とおっしゃっている方もいらっしゃるんですが、
もう、保安院は
専門家会合での確認を終えて8月中には報告書をまとめるという段取りは決まっているんだそうです。
小出:そうです。
水野:そうした異を唱える方の声って、今もまだ保安院を動かすことはできないんですか?
小出:
えー、もちろん昔からずーっと異を唱える人々はいました。
もちろん私もそうですし、私だけじゃなくて、
保安院がやってきたこと、原子力委員会、原子力安全委員会がやってきたことに異を唱える人はいたのです。
しかしそんなものは「国家が原子力を進める」と決めて、
行政、マスコミもそうですけれども、
すべてが一体となった社会の中では、ほとんど力を持たないままここまできたわけですし、
今現在もそういう状況が続いているという事です。
水野:はい、ありがとうございました。
続きを読むに

<参考>
玄海原発:劣化の1号機 「33年まで健全」と保安院
毎日新聞 2012年07月27日 19時56分(最終更新 07月28日 00時37分)
九州電力玄海原発1号機(佐賀県、定期検査で停止中)の原子炉圧力容器が
予想を上回り劣化していた問題で、
経済産業省原子力安全・保安院は27日、
現時点の劣化は異常なレベルではなく「2033年までは十分健全」との見解をまとめた。
1975年に運転開始した1号機は、2033年まで運転すれば58年となる。
政府は原発を原則40年で廃炉とする方針を決めているが、
9月に発足予定の原子力規制委員会が再検討することが決まっており、
今回の見解は論議に影響を与えそうだ。
保安院は昨年11月からこの問題を検討。27日開かれた専門家による意見聴取会で大筋了承を得た。
原子炉圧力容器は、核分裂反応で生じる中性子を浴び続けるともろくなる。
劣化の程度を間接的に調べるため、各電力会社は圧力容器内に同じ材質の試験片を設置。
定期検査の際に取り出して、劣化の程度を示す「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」などを調べる。
この値が異常に高いと、事故の際の注水がきっかけで圧力容器が破損する恐れがある。
九電は玄海1号機について97年までに3回分析。
いずれも脆性遷移温度は予測値を下回っていたが、
09年の値が約14度上回る98度と、国内の原発で最高値を記録した。
想定以上の老朽化を示す結果に、圧力容器の健全性を不安視する声が上がり、
保安院が専門家会合で検討してきた。

原子炉圧力容器の構造と中性子
試験片を電子顕微鏡で詳しく調べたところ異常な劣化は見つからず、現時点では「健全」と判断。
圧力容器の内壁は試験片より炉心から遠く、その分浴びる中性子の量が少ないため劣化は遅く、
実際に圧力容器の劣化が試験片と同程度になるのは、
運転開始から約58年後の2033年ごろになるとした。
議論では、圧力容器の脆性遷移温度が98度になったと仮定しても、
理論上は事故の際の注水で容器の破損には至らないとの意見が多数を占めた。
一方、1号機の脆性遷移温度が予測値を大幅に上回った理由は説明がつかないとして、
予測に使われる計算式の精度を今後、学会などが詳しく検証するよう求めた。【奥山智己】
ーーーー
2011年7月4日
たねまきJ「鋼鉄がガラスのように割れる」小出裕章氏(内容書き出し・参考あり)7/4
2011年7月5日
玄海原発1号機の危険度
原子炉圧力容器脆性ワースト7
2011年10月3日
玄海原発 圧力容器「欠陥の可能性」
井野名誉教授は
「中性子照射で脆性遷移温度が56度からいきなり98度に上がることは理屈上あり得ない」と指摘。
「圧力容器を構成する鋼材には銅0・12%、ニッケル0・56%が含まれているが、
銅の含有量が不均一のため急上昇したのではないか」と、圧力容器の材料に問題があるとの見方を示した。
「熱影響部は母材と同じ材料でできているので、母材と同じ温度になるはず。
これも圧力容器の材質が不均一なせいではないか」と指摘。脆性遷移温度上昇の原因をはっきりさせるため、
九電が脆性遷移温度の測定に使用した監視試験片を大学などの研究機関に送って詳しく調べることを提言した。
また、九電が7月11日に公表した監視試験片の生データを分析した結果、
長さ約4メートルの原子炉圧力容器の鋼の板を溶接して貼り合わせる溶接部分周辺(熱影響部)の
脆性遷移温度が約10度で、鋼材本体(母材)の温度を大きく下回っていることも突き止めた。
井野名誉教授は
「熱影響部は母材と同じ材料でできているので、母材と同じ温度になるはず。
これも圧力容器の材質が不均一なせいではないか」と指摘。脆性遷移温度上昇の原因をはっきりさせるため、
九電が脆性遷移温度の測定に使用した監視試験片を大学などの研究機関に送って詳しく調べることを提言した。
これに対して、九電は
「玄海1号機の脆性遷移温度上昇についての当社の見解は既にホームページで公表しており、
井野名誉教授の分析に対して改めてコメントすることはない」としている。
2011年11月29日
たねまきJ「原発の寿命について(どこまでも伸びる寿命と危険な玄海1号)」
小出裕章氏(内容書き出し・参考あり)11/29
2011年12月21日
不純物が6倍も入っていた玄海原発1号機・パリンッ!
老朽化が指摘される九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町、55・9万キロワット)の
鋼鉄製の原子炉容器に、不純物である銅が同社保有の他の原発と比べ最大約6倍含まれていることが
21日、九電への取材で分かった。
2012年1月24日
たねまきJ「災害対策本部の議事録が無い件・九州電力が玄海1号機の試験片を破棄した件」
小出裕章氏(内容書き出し・参考あり)1/24
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