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2012年8月1日水曜日 
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]





議院運営委員会での田中俊一さんの発言について

千葉:
今日は毎日新聞論説委員の二木一夫さんと一緒にお話を伺います。
まず今日はですね、これをお聞きします。
昨日国会の議院運営委員会で
新しくできる原子力規制委員会の初代の委員長候補となった田中俊一さんがですね、
「原子力は人類がコントロールできるか?」という問いに対して、
「油断してはダメだが原発はコントロールできると思う」と答えていました。
これを聞いて小出さんはどう思われますか?

小出:
もちろん私は正反対の意見です。
田中さんはずーっと原子力の旗を振ってきた人ですし、
「原子力発電所は事故を起こさない」という立場で、原子力学会の会長もした。
原子力委員会の委員長代理もしたという人なのです。
それで、その彼が、福島第一原子力発電所の事故が起きたことを見て、
謝罪の緊急提言という声明文を出しました。
それはそれで結構です。

ただし、原子力発電が抱える問題というのは、
単に原子力発電が事故を起こすか起こさないかというだけではありません。


もともとウランの核分裂を利用してしまえば、
核分裂生成物という放射性物質を生み出してしまうことが避けられないのです。
その核分裂生成物を無毒化する力も私たちは持っていません。
それもコントロールできるというふうにおっしゃるのだとすれば、
あまりにも科学に対する楽観的、あるいは傲慢な見方だと私は思います。


その上、原子力規制委員会というものができるにあたって、法律が改正されたのですが、
原子力基本法の中に、原子力を進める理由として、
「我が国の安全保障に資する」という文言をいきなりすべり込ませるという事がありました。
安全保障というのはいわゆる「安保」と私たちがずーっと呼んできたもので、
いわゆる軍事用語なのです。
もともと原子力というのは核と一体なもの、技術的にもそうなわけですし、
政治的にも常に一体のものとして動いてきました。
そういう事も含めて、人間がコントロールできるというふうに彼が言うのだとすれば、
あまりに軽率かなと私は思います


千葉:
日本は平和主義の国ですからね
核なんていうものが何で安全保障に資するのかというふうになるわけですけれども、
うーん・・・
そういうお考えの方が、原子力規制委員会の初代委員長候補となっているわけですね。

小出:
wそうですね、で、まぁ彼は、少なくても福島の事故に対して
自分たちがやってきたことを謝罪するというふうに言ったわけですが、
私は謝罪というものは行動を伴わなければ意味がないと思います。

福島の事故を受けて、では、これから原子力発電所をどうやったらいいと思っているのか?
という、その事をまず言わなければいけない
と思うのですが、
彼は「透明性を確保する」というような事を言ったのですねw
そんな事は当たり前のことなのであって、
「原子力発電所を本当に動かしていいのかどうなのか?」という事こそを、
彼は表明しなければいけなかった
と思います。

二木:
先生、田中さんはその時他にも
今の大飯原発の暫定基準、暫定的なものは不十分なものだ」というふうにも指摘はしたんですけれど、

小出:
そうです。
二木さん、ご指摘くださった通りそう言ったんですね。
それなら不十分なまま動きださせてしまった大飯原発を停止させるのか、どうなのか?という、
そういう具体的なことを言わなければいけないと思います。
私はもちろん、不十分だというのであれば「停止させる」と言わなければいけないと思うのですが、
多分彼はそれを言わないまま原子力規制委員会の委員長を続けることになるだろうということになると
私は今予測をしていまして、
なかなか原子力ムラというところは、図太い組織だなと思いました。


ストロンチウムについて

千葉:
分かりました。次の質問に参ります。
スタジオには沢山リスナーの方から質問が寄せられていまして、
兵庫県にお住まいの方からです。
「先日福島第一原発事故で大気中に放出された猛毒の放射性物質ストロンチウムが、
関東東北の10都県で検出されたと発表されました。
去年ストロンチウムは”重いから遠くへ飛ばない”と言っていた専門家の方もいたんですけれども、
実際は300km近く飛散していたことになります。
そこで小出さんに質問です。
まず事故から1年以上が経過しましたけれども、
ストロンチウムの検出にはこんなに時間がかかるものなのでしょうか?
またストロンチウムの毒性について改めて教えていただけないでしょうか?」
というご質問です。

小出:
まず、ストロンチウムの毒性からお答えいたします。
人間はこれまで様々なことを行って、被曝ということを地球上にばらまいてきたのですが、
その最大のものは大気圏内の核実験でした。
いわゆる空気中で、原爆を爆発させる、水爆を爆発させるという事をやって、
出来てきた放射性物質を全てそのままばら撒いてしまったということをやったのです。
その結果地球上すべてが放射能で汚れているのですが、
人間がどの放射性物質から一番被曝をうけたか?と言えば、ストロンチウム90です。

今回、福島の事故が起きて、私は「セシウム137にだけ注意をして下さい」と
これまで言ってきましたし、今もそう言っていますが、
これまで人間に被曝を与えた最大の放射性物質はストロンチウム90なのです。

何故かというと、ストロンチウム90というものは、
核分裂をした時にセシウム137とほぼ同量出来ます。
そして、それが人間に被曝を与えるという時には、
ストロンチウムという放射性物質はカルシウムと同じ挙動を取るために、骨に溜まるのです。

千葉:骨に溜まる。

小出:
はい、みなさん分かってもらえると思いますが、骨というのはカルシウムでできているんですね。
ストロンチウムはカルシウムと同じ挙動を取りますので、骨に溜まってしまいます。
そうすると、もう、抜けていかないのです。

千葉:そのままずーっと溜まり続けるんですか?

小出:
長い間骨に溜まってしまうというそういう性質を持っているので、
被曝をずっとしてしまうということになります。

一方セシウムという放射性物質はカリウムという元素と同じような挙動を取りまして、
骨に溜まるのではなくて、全身に行き渡る
というような性質を持っています。
そして私たちはもう、常日頃カリウムを大量に摂取していて、
カリウムはどんどん代謝していますし、
セシウムも人間の代謝機能で排泄されていくという、そういう性質を持っています。
今、一般の成人は70日待っていればセシウムは半分に減ってくれるだろうというのが、
基本的な科学の認識ですけれども、
ま、多くても少なくてもその程度で減っていってくれるというものなのです。

でもストロンチウムの場合は一度骨に溜まってしまうと、
何十年も減ってくれないという、そういう性質を持っているが為に、
ストロンチウムは危険なのです。

二木:骨に溜まるとどうなっていくんでしょうか?

小出:骨の癌、つまり白血病とかですね、そういうふうな物を引き起こしてしまうということになります。

二木:セシウムは全身に行き渡るだけで、骨の方には影響はないんですか?

小出:
はい。むしろ骨にはあまり行かないです。
その変わり全身に行ってしまいますので、
全身のあらゆるところで、様々な癌、あるいはほかのも引き起こすということになっている筈だと思います。

千葉:うーん、そのストロンチウムも今回300km近く飛散していたという事なんですけれども、

小出:
はい、それはですね、皆さんもともと誤解をしているのですけれども、
別に遠くへ飛ぶことは当り前なのです。
ストロンチウムが特別重たいわけではありません。
飛ぶ時は塵について飛ぶ訳ですから、別にどんな放射性物質でも同じなのです。
ですから核実験で飛散したストロンチウムも、
遠くもなにも、全世界がすでに汚染されてしまっているわけですし、
福島第一原子力発電所から空気中に出てきたストロンチウムが、
遠くに飛んで汚染を広げるということも、あたりまえのことなのです。

それで、その当たり前のことが今回公表されたというか、
「あちこちでストロンチウムが出ました」と言ったわけですけれども、
そんなの今更w驚く事でもありません。
そして、今回検出されたストロンチウムの濃度というのは、
セシウムに比べれば圧倒的に少ないのです。
だからこそ私はストロンチウムに注意をするよりはセシウムにこそ、
セシウムだけでもいいから注意をして下さいとみなさんにお願いしてきました。

千葉:
うーん、後もうひとつこの質問の中で、
こんなに検出には時間がかかるものなのでしょうか?

小出
時間はですね、別に一年半もかかりません。
ただし、セシウム137を検出するのは、大変容易なことで、
試料さえあればもう即座に値が出てくるのですが、
ストロンチウム90を分析しようと思いますと、
その測定試料を作るだけに何日、ま、いってみれば1週間というくらいの長い時間がかかってしまうという、
面倒な操作が必要なのです。
ですから、1年半という時間は全く意味のない事なのですけれども、
とにかく測定すること自身が大変なので、
なかなかこれまで測定をしてこなかったという事です。

ただし、何度も聞いていただいてきましたけれども、
大気中に出たストロンチウム90の量というのは
セシウム137の量に比べると原則で言えばたぶん1000分の1ぐらいです。
ですからそんなものに注意をするぐらいなら、セシウムに注意をして下さいと私は言ってきました。

ただし、ですけれども、
ストロンチウムという放射能は水に溶けやすいという性質を持っていますので、
大気中に出てこなかったとしても海には流れていっています。
ですからこれから海産物への汚染ということを気にする時には、セシウムだけではダメです。
ストロンチウム90という物の汚染も十分に気をつけなければいけませんし、
ちゃんと測定をこれまで以上にやらなければいけないと思います。


千葉:分かりました。小出さんどうもありがとうございました。


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福島で意見聴取会 国会でも田中俊一氏を聴取
8/1報道ステ(動画・内容書き出し)




文部科学省・ストロンチウム全国飛散調査結果公表
(事故後のストロンチウム検出地域まとめました)






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コメント
親愛なるキーコさんへ

毎日暑いですね。
粘り強く、日々戦い続けている様子を観客席から応援するサポーターにでもなって傍観している自分が情けなくて、なかなかコメントも書き込みにくくなっています。

ノダ民主党が考えたエネルギー政策など原発再稼動有りきの
奇麗事ばかりで、結局のところペテンでしかありません。
消費増税が成立すると再生可能エネルギーの民間活力もピタッと途絶えてしまうでしょう。

電力会社が描いた原発再稼動へのシナリオが、政治的にどんどん推し進められています。
そうして、いつの間にか日本列島に住む人々が放射線被爆の被害で死んでいるのか、自然災害や異常気象、温暖化による灼熱地獄で滅んでいるのか、判断が出来なくなるのではないでしょうか?

目の前の現実を何の抵抗もせずに受け入れて、抜け殻のような人生を生きるのか、もうどうすることも出来ない現実を感じながらも、最後まであきらめずに抵抗し続ける日々を生きるのか、選択を迫られているのかもしれませんね。

では、暑い日々が続きますが、頑張ってください。


パラレル | 2012.08.04 10:29 | 編集
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