・福一4号機高濃度汚染4.2トン水漏れ
・福一排気用のポンプのモーターから、白い煙
・女川原発3号機の燃料集合体金属カバーの一部が欠損

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2012年8月16日木曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
小出裕章さんの原発事故関連ニュースについての解説です
きょうは近藤伸二さんと一緒にお話を伺います。
福一4号機高濃度汚染4.2トン水漏れ
千葉:
まずリスナーの方からの質問メールなんですけれど、
「福島第一原子力発電所4号機のタービン建屋1階で、
高濃度汚染水4.2トンが漏れているのが発見されたそうです。
1立法cmあたり7万7000ベクレルの放射性セシウムが検出されたそうですが、
これはいったいどれぐらいの危険性があるのでしょうか?」
という質問です。
小出:
え・・・原子力発電所から、・・私のところの原子炉もそうですけれど、
「環境に放出してもいいというセシウムの限度」があります。
それは1立法cmあたりでいうと、確か0.09ベクレルだったと思います。
千葉:1立法cmあたり0.09ベクレルですか
小出:
はい。
セシウム137で確かその値ですし、
セシウム134であれば0.06だったと思います。
それが今、7万7000とおっしゃったでしたでしょうか、
ですから、100万倍ですかね、位になるんでしょうか、
ま、モーレツな汚染水です。
千葉:
それが漏れてしまったという事なんですよね、
こちらの方は、メールの質問の続きがありまして、
「確か1平方mあたり4万ベクレルを超えるものは、放射線管理区域からは持ち出してはならないと、
小出先生がおっしゃっていたと思うんですが、」
ということなんですが。
小出:
そうです。おっしゃる通りです。
ただそれは、表面汚染という、
ようするに大地の汚染であるとかですね、私の実験着であるとか、私の掌であるとか、
そういうものに関する基準です。
それで今言っているのは、水自身の汚染濃度を言っている訳ですから、
別の基準を使わなければいけません。
それで言えば、環境に出していいのが今聞いていただいたように、
1立法cmであれば、0.0幾つという値な訳で、
7万7000などというのは、もう途方もない汚染になってしまいます。
千葉:ハァ~・・それが今回漏れたという話だったという事ですね。
小出:
そうですけれども、
でも、それが直接環境に出たということではなくて、
原子炉建屋、あるいはタービン建屋などにそういう汚染水が、
いま、充満していて循環しているという事なのですね。
千葉:ん…大変な話だなと思うんですけれども
小出:そうですね、作業員の人達が被ばくをしているんだなと思うと気が重いです。
福一排気用のポンプのモーターから、白い煙
千葉:
わかりました。
今日は第一原発については実はこんな気になるニュースも入っていまして、
福島第一原発で放射性物質で汚染された水の処理に使った部品の保管施設で、
排気用のポンプのモーターから、白い煙が出ているのが見つかったという事です。
で、東京電力によりますと、
セシウムを吸いつけるために使った吸着筒という筒のような交換部品の中に
水素ガスが僅かに溜まるために
「ポンプで強制的に排気していたら煙が出た」ということでして、
東京電力は
「ポンプは止めたけれども水素はほんの少しなので、直ちに問題は生じない」
としているという事なんですが、
”水素”って言うと、私たちの記憶の中にはやっぱり
”水素爆発”っていうのがすぐ浮かんでくるんですけれども、
そんな事につながる恐れはないんでしょうか?
小出:
可能性があるので、
東京電力はその水素をちゃんと溜まらないように排気するという事をやってきたのだと思います。
そしてそれは、危険を避けるという意味ではやるべきことですし、
これからもやらなければいけないと思います。
ただし、今回トラブルを起こしたように、
ポンプというのはモーターを回して動かしているのですけれども、
モーターの故障というのはしょっちゅうです。
ですから、ごく当たり前というかですね、沢山、多分ポンプでモーターを動かしていたと思いますが、
そのうちの一台が壊れてしまったという事なんですね。
で、「直ちに爆発にならない」という意味でなら、そうだと私も思いますけれども、
放置していい訳でもありませんので、
ポンプを交換するという作業をしなければいけませんが、
セシウムを吸着したベッセルというものは、モーレツな放射能を含んでいます。
近寄るだけでもすぐに作業員の被ばく限度に達してしまうほどだと、私は思いますし、
それなりの注意は払ってポンプ等を設置していたのだろうとは思いますけれども、
何とか修理はしなくてはいけませんし、
出来るだけ作業に従事する人の被ばくが少なく済めばいいと、私は願います。
近藤:
小出さん、いま、モーターの関係で、
「こういう故障は結構起こるんだ」という話なんですけれども、
現実に、そのー、そんなに故障が起きて大丈夫なのか?という不安を感じるんですが、
そのあたりは・・
小出:
普通の工場であれば、ポンプが壊れたら現場に行って直せばいいんですね。
私も京都大学原子炉実験所で作業をしていますので、
いろいろな放射性物質を取り扱いますし、
ポンプやモーターも取り扱ってはいますけれども、
通常の状態であれば、その現場で修理作業をする、交換作業をするという事で、
猛烈な被ばくをするという事は、少なくても私の職場ではありませんでしたし、
放射性物質を取り扱わない工場であれば何の事もない事だと思います。
ただ今現在の福島第一原子力発電所の中は、
いたるところが猛烈に放射能で汚れてしまっている。
特に、今回問題になったセシウムを吸着するための吸着筒、ベッセルと呼ばれているものは、
モーレツにセシウムを吸着してしまった挙句に交換されて保存されているものですから、
近寄ることすらが難しいという、そういう場所だと思います。
千葉:
ん~、
やっぱり今回のニュースに関しても東京電力は「直ちに問題はない」としているんですけれども、
この「直ちに」という言葉に我々は注目していかないといけないんですね。
小出:
事故直後に枝野さんがずーっと「直ちに影響が無い」とおっしゃってましたけれども、
それは要するに「後あとの事はわからないよ」と、むしろそういうニュアンスだと思いますし、
被ばくをしてしまえば必ず影響が出てきますので、
出来る限り被ばくをさせないように、十分に東京電力として配慮してほしいと私は思います。
女川原発3号機の燃料集合体金属カバーの一部が欠損
千葉:
それからですね、こんなニュースも入ってきておりまして、
東北ですね、宮城県の女川原発3号機の燃料集合体で、
金属カバーの一部が欠けているのが見つかった問題で、
残りの1385体の燃料集合体を調べた結果、17体(全部で18体・新たに17体の確認)で
同じような欠損、欠けているのが見つかったということなんです。
これは東日本大震災の揺れの影響ではなくて、
「溶接不良か、燃料集合体を移動した際に接触した可能性がある」というふうにされているんですが、
こんなことって良く起きる事なんですか?
小出:
「良く起きることではない」と思います。
1300いくつのうち17体とおっしゃったんでしょうか?
千葉:ええ
小出:
そうすると100分の1を超えてしまっている訳で、
それほど破損が生じるという事は通常の状態ではあり得ないと思います。
ですから、なにかそのような異常な状態を引き起こす原因があった筈だと私は思います。
それが東日本大震災に関連しているのか、
あるいはそうではない、溶接、一つのロットの溶接に問題があったのか、
私にそれは今判断できませんけれども、
いずれにしても異常な発生率だと思いますので、
きちっと原因を追究して再発しないようにしなければいけないと思います。
千葉:
あの、燃料集合体の金属カバーの一部が欠ける事によって、
たとえばどんなことが想定されるんでしょうか?
被害が起きるとか、
小出:
欠けているところの場所によると思いますけれども、
もともとそのカバーというのは燃料集合体を保護するのと同時に、
原子炉の中で異常な流れが起きないように、一つ一つの集合体を区切っているものですので、
それに欠損が生じているという事は、燃料集合体を、
ま、その周辺で原子炉の中の冷却材の流れが異常になるという可能性があるかもしれませんし、
燃料集合体を交換するための作業ができなくなるとかですね、
場合によっては燃料集合体をつり落としてしまうといったような事故につながることに
なっているのかもしれませんが、
いま、その場所自体が私はよく分かりませんので、
判断をちょっと留保させて下さい。
千葉:
場所がそういった危険性のある場所だったら、
そういう可能性もあるとかもしれないという事ですね?
小出:
はい、いずれにしても、
ちゃんと原因調査をしなければいけないと思います。
続きを読むに
参考として、ニュース記事と東北電力のプレスリリース
<参考>
福島第1原発:4号機の電源室で汚染水漏れ
毎日新聞 2012年08月14日 20時09分(最終更新 08月14日 23時41分)
東京電力福島第1原発で14日午前11時15分ごろ、
4号機タービン建屋1階にある電源室(約350平方メートル)に
深さ約1センチの水がたまっているのが見つかった。
部屋の前の廊下にある汚染水移送用の配管に小さな穴が開いており、周囲にも水たまりができていた。
東電は、水はこの穴から漏れたと見ている。
移送のためのポンプ2台のうち1台を止めたところ、漏えいは止まった。
東電によると、汚染水の推定漏えい量は約4.2立方メートル。
水1立方センチ当たりの放射性物質濃度(セシウム134、137)は7万7000ベクレル。
建屋外への流出はなく、4号機の使用済み核燃料プールを冷却する電源系にも影響はないという。
穴が開いた原因は不明だが、来月にも配管を交換する。
【阿部周一】
福島第1原発:排気用ポンプのモーターから白煙 消火
毎日新聞 2012年08月14日 12時56分(最終更新 08月14日 13時37分)
東京電力は14日、
福島第1原発4号機南側にある放射性汚染水浄化過程で生じる高濃度放射性廃棄物の仮置き場で、
排気用ポンプのモーターから白煙が上がったと発表した。
作業員が午前8時半ごろに発見し、10分後に消火した。
消防が原因を調べている。
放射性汚染水は、放射性セシウムを吸着させる鉄製容器「ベッセル」を通して浄化する。
使用済みのベッセル内の水は放射線で分解され、水素が発生するため、施設外に排気する必要がある。
東電は、水素の発生量はわずかで、ポンプが停止しても安全上の問題はないとしている。
【岡田英】
福島第一原発4号機・白煙と汚染水漏出8/14
東京電力のプレス発表あり
女川原発“カバー損傷 地震でない”
NHK 2012年8月10日 22時47分
東北電力女川原子力発電所3号機で、
核燃料を束ねた燃料集合体を覆う金属製のカバーの一部が欠けているのが見つかった問題で、
東北電力は「去年3月の地震による損傷ではない」とする中間報告をまとめ、
国の原子力安全・保安院に提出しました。
この問題は、ことし6月、
女川原発3号機の燃料プールに保管されている燃料集合体を覆う、
高さ4.3メートルの金属製のカバーの一部が欠けているのが見つかったもので、
原子力安全・保安院は、東北電力に対し、去年3月の巨大地震の影響かどうか調べるよう指示していました。
これについて東北電力は、調査の中間報告をまとめ、10日、国に提出しました。
それによりますと、1386体ある燃料集合体のうち18体で、
カバーの一部が最大で長さ2.6センチ欠けていることが確認されたということです。
これらの燃料集合体は、地震発生当時、燃料プールや原子炉の中にありましたが、
いずれも地震の揺れでほかの構造物と接触したり、
上から落ちてきたものに当たったりした形跡はなかったということで、
東北電力は「地震による損傷ではない」としています。
このため、カバーの溶接がそもそも不十分だったか、
燃料集合体を移動させた際に、どこかに接触して欠けた可能性があるとみて、
引き続き原因を調べるとともに、1号機と2号機でも点検を行うとしています。
女川原子力発電所3号機における
燃料集合体チャンネルボックス上部の一部欠損に係る報告について
(中間報告)
東北電力 プレスリリース平成24年 8月10日
当社は、女川原子力発電所3号機における東北地方太平洋沖地震による
原子炉内に装荷された燃料への影響を確認するため、外観点検を実施していたところ、
平成24年6月15日、チャンネルボックス※11本の上部(クリップ※2接合部)に
欠損(1箇所:長さ約1.9cm)を発見しました。
この欠損の大きさはわずかであり、また、チャンネルボックス上端にあることから
チャンネルボックスの機能へ影響を与えるものではありません。
本事象を踏まえ、
女川原子力発電所3号機の使用済燃料プールに貯蔵されている全ての燃料集合体※3について、
同様の欠損がないか水中テレビカメラによる観察を実施したところ、
他にも欠損の可能性があるチャンネルボックスが確認されたことから、
点検結果の詳細を取りまとめ、原因調査を実施することとしていました。
(平成24年7月10日お知らせ済み)
本事象は、定期検査の実施状況および東北地方太平洋沖地震後の設備点検等の状況として
定期的に報告している「女川原子力発電所の状況(平成24年6月分)」により、
平成24年7月10日、関係自治体へ報告するとともに、原子力安全・保安院へ報告しています。
当社は、同日、原子力安全・保安院より受領した指示文書
「東北電力株式会社女川原子力発電所第3号機における燃料集合体チャンネルボックス上部(クリップ)の
一部欠損について(指示)※4」に基づき、
現在までに確認している状況等について、中間報告として取りまとめ、
本日、原子力安全・保安院に報告しました。
今回の報告概要は、別紙のとおりです。
本事象に係る点検、調査は、現在も継続して実施しており、
引き続き、本事象の発生原因を究明し、再発防止対策について検討していきます。
以 上
※1 燃料集合体を覆っている四角い筒状のもので、燃料集合体内の冷却材流路を
確保するとともに制御棒のガイド等の機能を持つ
※2 燃料集合体からチャンネルボックスを着脱する際に工具を取り付けるための部位
※3 原子炉内から取り出した燃料560体を含む
※4 以下の内容について、平成24年8月10日までに報告するよう指示されたもの
1.女川原子力発電所1号機~3号機の炉内及び使用済燃料プールにある燃料
集合体について、チャンネルボックス上部(クリップ)の欠損を含む燃料集合体の
損傷、変形等の確認
2.1において確認された燃料集合体の損傷等に対する燃料集合体の健全性の
評価及び原子炉施設への影響の評価
3.1において確認された事象に係る原因の究明及び再発防止策の策定
4.チャンネルボックス上部(クリップ)の損傷に伴い生じると考えられる金属片による
原子炉施設への影響の評価及び対策
チャンネルボックス上部の欠損状況

チャンネルボックスにおけるクリップ位置および接合部溶接範囲

「女川原子力発電所3号機における
燃料集合体チャンネルボックス上部(クリップ)の
一部欠損について(中間報告)」の概要
1.燃料集合体の損傷等の確認
女川3号機の使用済燃料プールに貯蔵されている全燃料1,386体について、
チャンネルボックス上部の外観点検を実施し、
欠損の可能性があると判断された燃料の詳細点検を実施したところ、
18体の燃料(平成24年6月15日に確認された1体を含む)のチャンネルボックス上部クリップ接合部に
一部欠損(最大で長さ約2.6cm)があることを確認した。
また、これらの燃料について、チャンネルボックスおよび燃料集合体の外観点検を実施した結果、
チャンネルボックス上部の一部欠損以外の損傷や変形等の異常がないことを確認した。
2.燃料集合体の健全性評価および原子炉施設への影響評価
今回確認された欠損は、
燃料集合体にチャンネルボックスを着脱するための工具を取り付けるクリップ接合部のみであり、
チャンネルボックスの他の部位および燃料集合体の損傷等の異常は確認されていないことから、
チャンネルボックスの機能への影響はないことを確認した。
また、今回の点検により確認された欠損は、最大で長さ約2.6cmであるものの、
クリップ接合部の2カ所がともに溶接長さの半分(3.9cm)にわたって欠損した場合でも、
チャンネルボックスの着脱にかかる荷重に対して十分余裕があることから、
チャンネルボックスの着脱に影響がないことを確認した。
3.欠損が発生した要因の分析
これまで実施した要因の分析においては、
「製造欠陥」、「腐食による損傷」、「接触による損傷」、「地震による損傷」を抽出し、
以下のとおり、要因分析を実施した。

・福一排気用のポンプのモーターから、白い煙
・女川原発3号機の燃料集合体金属カバーの一部が欠損

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2012年8月16日木曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
小出裕章さんの原発事故関連ニュースについての解説です
きょうは近藤伸二さんと一緒にお話を伺います。
福一4号機高濃度汚染4.2トン水漏れ
千葉:
まずリスナーの方からの質問メールなんですけれど、
「福島第一原子力発電所4号機のタービン建屋1階で、
高濃度汚染水4.2トンが漏れているのが発見されたそうです。
1立法cmあたり7万7000ベクレルの放射性セシウムが検出されたそうですが、
これはいったいどれぐらいの危険性があるのでしょうか?」
という質問です。
小出:
え・・・原子力発電所から、・・私のところの原子炉もそうですけれど、
「環境に放出してもいいというセシウムの限度」があります。
それは1立法cmあたりでいうと、確か0.09ベクレルだったと思います。
千葉:1立法cmあたり0.09ベクレルですか
小出:
はい。
セシウム137で確かその値ですし、
セシウム134であれば0.06だったと思います。
それが今、7万7000とおっしゃったでしたでしょうか、
ですから、100万倍ですかね、位になるんでしょうか、
ま、モーレツな汚染水です。
千葉:
それが漏れてしまったという事なんですよね、
こちらの方は、メールの質問の続きがありまして、
「確か1平方mあたり4万ベクレルを超えるものは、放射線管理区域からは持ち出してはならないと、
小出先生がおっしゃっていたと思うんですが、」
ということなんですが。
小出:
そうです。おっしゃる通りです。
ただそれは、表面汚染という、
ようするに大地の汚染であるとかですね、私の実験着であるとか、私の掌であるとか、
そういうものに関する基準です。
それで今言っているのは、水自身の汚染濃度を言っている訳ですから、
別の基準を使わなければいけません。
それで言えば、環境に出していいのが今聞いていただいたように、
1立法cmであれば、0.0幾つという値な訳で、
7万7000などというのは、もう途方もない汚染になってしまいます。
千葉:ハァ~・・それが今回漏れたという話だったという事ですね。
小出:
そうですけれども、
でも、それが直接環境に出たということではなくて、
原子炉建屋、あるいはタービン建屋などにそういう汚染水が、
いま、充満していて循環しているという事なのですね。
千葉:ん…大変な話だなと思うんですけれども
小出:そうですね、作業員の人達が被ばくをしているんだなと思うと気が重いです。
福一排気用のポンプのモーターから、白い煙
千葉:
わかりました。
今日は第一原発については実はこんな気になるニュースも入っていまして、
福島第一原発で放射性物質で汚染された水の処理に使った部品の保管施設で、
排気用のポンプのモーターから、白い煙が出ているのが見つかったという事です。
で、東京電力によりますと、
セシウムを吸いつけるために使った吸着筒という筒のような交換部品の中に
水素ガスが僅かに溜まるために
「ポンプで強制的に排気していたら煙が出た」ということでして、
東京電力は
「ポンプは止めたけれども水素はほんの少しなので、直ちに問題は生じない」
としているという事なんですが、
”水素”って言うと、私たちの記憶の中にはやっぱり
”水素爆発”っていうのがすぐ浮かんでくるんですけれども、
そんな事につながる恐れはないんでしょうか?
小出:
可能性があるので、
東京電力はその水素をちゃんと溜まらないように排気するという事をやってきたのだと思います。
そしてそれは、危険を避けるという意味ではやるべきことですし、
これからもやらなければいけないと思います。
ただし、今回トラブルを起こしたように、
ポンプというのはモーターを回して動かしているのですけれども、
モーターの故障というのはしょっちゅうです。
ですから、ごく当たり前というかですね、沢山、多分ポンプでモーターを動かしていたと思いますが、
そのうちの一台が壊れてしまったという事なんですね。
で、「直ちに爆発にならない」という意味でなら、そうだと私も思いますけれども、
放置していい訳でもありませんので、
ポンプを交換するという作業をしなければいけませんが、
セシウムを吸着したベッセルというものは、モーレツな放射能を含んでいます。
近寄るだけでもすぐに作業員の被ばく限度に達してしまうほどだと、私は思いますし、
それなりの注意は払ってポンプ等を設置していたのだろうとは思いますけれども、
何とか修理はしなくてはいけませんし、
出来るだけ作業に従事する人の被ばくが少なく済めばいいと、私は願います。
近藤:
小出さん、いま、モーターの関係で、
「こういう故障は結構起こるんだ」という話なんですけれども、
現実に、そのー、そんなに故障が起きて大丈夫なのか?という不安を感じるんですが、
そのあたりは・・
小出:
普通の工場であれば、ポンプが壊れたら現場に行って直せばいいんですね。
私も京都大学原子炉実験所で作業をしていますので、
いろいろな放射性物質を取り扱いますし、
ポンプやモーターも取り扱ってはいますけれども、
通常の状態であれば、その現場で修理作業をする、交換作業をするという事で、
猛烈な被ばくをするという事は、少なくても私の職場ではありませんでしたし、
放射性物質を取り扱わない工場であれば何の事もない事だと思います。
ただ今現在の福島第一原子力発電所の中は、
いたるところが猛烈に放射能で汚れてしまっている。
特に、今回問題になったセシウムを吸着するための吸着筒、ベッセルと呼ばれているものは、
モーレツにセシウムを吸着してしまった挙句に交換されて保存されているものですから、
近寄ることすらが難しいという、そういう場所だと思います。
千葉:
ん~、
やっぱり今回のニュースに関しても東京電力は「直ちに問題はない」としているんですけれども、
この「直ちに」という言葉に我々は注目していかないといけないんですね。
小出:
事故直後に枝野さんがずーっと「直ちに影響が無い」とおっしゃってましたけれども、
それは要するに「後あとの事はわからないよ」と、むしろそういうニュアンスだと思いますし、
被ばくをしてしまえば必ず影響が出てきますので、
出来る限り被ばくをさせないように、十分に東京電力として配慮してほしいと私は思います。
女川原発3号機の燃料集合体金属カバーの一部が欠損
千葉:
それからですね、こんなニュースも入ってきておりまして、
東北ですね、宮城県の女川原発3号機の燃料集合体で、
金属カバーの一部が欠けているのが見つかった問題で、
残りの1385体の燃料集合体を調べた結果、17体(全部で18体・新たに17体の確認)で
同じような欠損、欠けているのが見つかったということなんです。
これは東日本大震災の揺れの影響ではなくて、
「溶接不良か、燃料集合体を移動した際に接触した可能性がある」というふうにされているんですが、
こんなことって良く起きる事なんですか?
小出:
「良く起きることではない」と思います。
1300いくつのうち17体とおっしゃったんでしょうか?
千葉:ええ
小出:
そうすると100分の1を超えてしまっている訳で、
それほど破損が生じるという事は通常の状態ではあり得ないと思います。
ですから、なにかそのような異常な状態を引き起こす原因があった筈だと私は思います。
それが東日本大震災に関連しているのか、
あるいはそうではない、溶接、一つのロットの溶接に問題があったのか、
私にそれは今判断できませんけれども、
いずれにしても異常な発生率だと思いますので、
きちっと原因を追究して再発しないようにしなければいけないと思います。
千葉:
あの、燃料集合体の金属カバーの一部が欠ける事によって、
たとえばどんなことが想定されるんでしょうか?
被害が起きるとか、
小出:
欠けているところの場所によると思いますけれども、
もともとそのカバーというのは燃料集合体を保護するのと同時に、
原子炉の中で異常な流れが起きないように、一つ一つの集合体を区切っているものですので、
それに欠損が生じているという事は、燃料集合体を、
ま、その周辺で原子炉の中の冷却材の流れが異常になるという可能性があるかもしれませんし、
燃料集合体を交換するための作業ができなくなるとかですね、
場合によっては燃料集合体をつり落としてしまうといったような事故につながることに
なっているのかもしれませんが、
いま、その場所自体が私はよく分かりませんので、
判断をちょっと留保させて下さい。
千葉:
場所がそういった危険性のある場所だったら、
そういう可能性もあるとかもしれないという事ですね?
小出:
はい、いずれにしても、
ちゃんと原因調査をしなければいけないと思います。
続きを読むに

<参考>
福島第1原発:4号機の電源室で汚染水漏れ
毎日新聞 2012年08月14日 20時09分(最終更新 08月14日 23時41分)
東京電力福島第1原発で14日午前11時15分ごろ、
4号機タービン建屋1階にある電源室(約350平方メートル)に
深さ約1センチの水がたまっているのが見つかった。
部屋の前の廊下にある汚染水移送用の配管に小さな穴が開いており、周囲にも水たまりができていた。
東電は、水はこの穴から漏れたと見ている。
移送のためのポンプ2台のうち1台を止めたところ、漏えいは止まった。
東電によると、汚染水の推定漏えい量は約4.2立方メートル。
水1立方センチ当たりの放射性物質濃度(セシウム134、137)は7万7000ベクレル。
建屋外への流出はなく、4号機の使用済み核燃料プールを冷却する電源系にも影響はないという。
穴が開いた原因は不明だが、来月にも配管を交換する。
【阿部周一】
福島第1原発:排気用ポンプのモーターから白煙 消火
毎日新聞 2012年08月14日 12時56分(最終更新 08月14日 13時37分)
東京電力は14日、
福島第1原発4号機南側にある放射性汚染水浄化過程で生じる高濃度放射性廃棄物の仮置き場で、
排気用ポンプのモーターから白煙が上がったと発表した。
作業員が午前8時半ごろに発見し、10分後に消火した。
消防が原因を調べている。
放射性汚染水は、放射性セシウムを吸着させる鉄製容器「ベッセル」を通して浄化する。
使用済みのベッセル内の水は放射線で分解され、水素が発生するため、施設外に排気する必要がある。
東電は、水素の発生量はわずかで、ポンプが停止しても安全上の問題はないとしている。
【岡田英】
福島第一原発4号機・白煙と汚染水漏出8/14
東京電力のプレス発表あり
女川原発“カバー損傷 地震でない”
NHK 2012年8月10日 22時47分
東北電力女川原子力発電所3号機で、
核燃料を束ねた燃料集合体を覆う金属製のカバーの一部が欠けているのが見つかった問題で、
東北電力は「去年3月の地震による損傷ではない」とする中間報告をまとめ、
国の原子力安全・保安院に提出しました。
この問題は、ことし6月、
女川原発3号機の燃料プールに保管されている燃料集合体を覆う、
高さ4.3メートルの金属製のカバーの一部が欠けているのが見つかったもので、
原子力安全・保安院は、東北電力に対し、去年3月の巨大地震の影響かどうか調べるよう指示していました。
これについて東北電力は、調査の中間報告をまとめ、10日、国に提出しました。
それによりますと、1386体ある燃料集合体のうち18体で、
カバーの一部が最大で長さ2.6センチ欠けていることが確認されたということです。
これらの燃料集合体は、地震発生当時、燃料プールや原子炉の中にありましたが、
いずれも地震の揺れでほかの構造物と接触したり、
上から落ちてきたものに当たったりした形跡はなかったということで、
東北電力は「地震による損傷ではない」としています。
このため、カバーの溶接がそもそも不十分だったか、
燃料集合体を移動させた際に、どこかに接触して欠けた可能性があるとみて、
引き続き原因を調べるとともに、1号機と2号機でも点検を行うとしています。
女川原子力発電所3号機における
燃料集合体チャンネルボックス上部の一部欠損に係る報告について
(中間報告)
東北電力 プレスリリース平成24年 8月10日
当社は、女川原子力発電所3号機における東北地方太平洋沖地震による
原子炉内に装荷された燃料への影響を確認するため、外観点検を実施していたところ、
平成24年6月15日、チャンネルボックス※11本の上部(クリップ※2接合部)に
欠損(1箇所:長さ約1.9cm)を発見しました。
この欠損の大きさはわずかであり、また、チャンネルボックス上端にあることから
チャンネルボックスの機能へ影響を与えるものではありません。
本事象を踏まえ、
女川原子力発電所3号機の使用済燃料プールに貯蔵されている全ての燃料集合体※3について、
同様の欠損がないか水中テレビカメラによる観察を実施したところ、
他にも欠損の可能性があるチャンネルボックスが確認されたことから、
点検結果の詳細を取りまとめ、原因調査を実施することとしていました。
(平成24年7月10日お知らせ済み)
本事象は、定期検査の実施状況および東北地方太平洋沖地震後の設備点検等の状況として
定期的に報告している「女川原子力発電所の状況(平成24年6月分)」により、
平成24年7月10日、関係自治体へ報告するとともに、原子力安全・保安院へ報告しています。
当社は、同日、原子力安全・保安院より受領した指示文書
「東北電力株式会社女川原子力発電所第3号機における燃料集合体チャンネルボックス上部(クリップ)の
一部欠損について(指示)※4」に基づき、
現在までに確認している状況等について、中間報告として取りまとめ、
本日、原子力安全・保安院に報告しました。
今回の報告概要は、別紙のとおりです。
本事象に係る点検、調査は、現在も継続して実施しており、
引き続き、本事象の発生原因を究明し、再発防止対策について検討していきます。
以 上
※1 燃料集合体を覆っている四角い筒状のもので、燃料集合体内の冷却材流路を
確保するとともに制御棒のガイド等の機能を持つ
※2 燃料集合体からチャンネルボックスを着脱する際に工具を取り付けるための部位
※3 原子炉内から取り出した燃料560体を含む
※4 以下の内容について、平成24年8月10日までに報告するよう指示されたもの
1.女川原子力発電所1号機~3号機の炉内及び使用済燃料プールにある燃料
集合体について、チャンネルボックス上部(クリップ)の欠損を含む燃料集合体の
損傷、変形等の確認
2.1において確認された燃料集合体の損傷等に対する燃料集合体の健全性の
評価及び原子炉施設への影響の評価
3.1において確認された事象に係る原因の究明及び再発防止策の策定
4.チャンネルボックス上部(クリップ)の損傷に伴い生じると考えられる金属片による
原子炉施設への影響の評価及び対策
チャンネルボックス上部の欠損状況

チャンネルボックスにおけるクリップ位置および接合部溶接範囲

「女川原子力発電所3号機における
燃料集合体チャンネルボックス上部(クリップ)の
一部欠損について(中間報告)」の概要
1.燃料集合体の損傷等の確認
女川3号機の使用済燃料プールに貯蔵されている全燃料1,386体について、
チャンネルボックス上部の外観点検を実施し、
欠損の可能性があると判断された燃料の詳細点検を実施したところ、
18体の燃料(平成24年6月15日に確認された1体を含む)のチャンネルボックス上部クリップ接合部に
一部欠損(最大で長さ約2.6cm)があることを確認した。
また、これらの燃料について、チャンネルボックスおよび燃料集合体の外観点検を実施した結果、
チャンネルボックス上部の一部欠損以外の損傷や変形等の異常がないことを確認した。
2.燃料集合体の健全性評価および原子炉施設への影響評価
今回確認された欠損は、
燃料集合体にチャンネルボックスを着脱するための工具を取り付けるクリップ接合部のみであり、
チャンネルボックスの他の部位および燃料集合体の損傷等の異常は確認されていないことから、
チャンネルボックスの機能への影響はないことを確認した。
また、今回の点検により確認された欠損は、最大で長さ約2.6cmであるものの、
クリップ接合部の2カ所がともに溶接長さの半分(3.9cm)にわたって欠損した場合でも、
チャンネルボックスの着脱にかかる荷重に対して十分余裕があることから、
チャンネルボックスの着脱に影響がないことを確認した。
3.欠損が発生した要因の分析
これまで実施した要因の分析においては、
「製造欠陥」、「腐食による損傷」、「接触による損傷」、「地震による損傷」を抽出し、
以下のとおり、要因分析を実施した。

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