・事故後1年半「なんとも辛い一年半でした」
・再臨界?放射性クリプトンと水素の濃度が時折上昇 福島第1原発1号機
2012年9月12日水曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
水野:
3.11原発事故から一年半経ちました。
小出先生、リスナーの方々から本当に多くの声を頂戴し続けてきたわけですけれども、
今日もラジオネームたね蒔きたね子さんっていう方は、
3.11以降に小出先生が出演していらっしゃるという事でたね蒔きジャーナルを初めて知り、
それからずーーっと聞いていますよとおっしゃっています。
原発事故が時々刻々と変化する状況の中でも、
小出さんの情報を頼りに、日常の生活にどう折り合いを付けるかの指針にしてきました。
小出:はい。
水野:
この「日常の生活をどう生きるか?」というところ
これは今も問われ続けているのではないかと思いますが、
この一年半で小出先生はどんな思いを持っていらっしゃいますか?
小出:
さーーー(ため息)、そうですね、一言では言えませんけれども
なんとも辛い一年半でした。
ただ、私の辛さなどというものは、今現在故郷を追われて仮住まいのような生活をしている人々、
あるいは汚染地に見捨てられて被ばくの恐怖にさらされながらも、
それでも毎日を生きなければいけない人たちの苦しみに比べれば
本当に私のものなんて些細なものなんだろうなと思います。
水野:
んー、北海道の方はですね、
「いかに自分がこれまで何も知らずに、また知ろうともせずにのほほんと暮らしてきたかを
原発事故後の小出先生のお話で気付かせてもらいました」とおっしゃています。
ただ、今現在も私たちはどれだけのことを知っているのか?
そのあたりはこれからもずっと続く問題なんですかね
小出:
そうですね。
まだ事故が収束している訳ではありませんし、
故郷を追われてしまった人、先程も聞いていただいたように、
故郷を追われた人、汚染地に取り残されている人というものが、現実に今でもいらっしゃるのですね。
そういった人たちの苦痛はずーっとまだまだ続くわけですから、
これから何十年という単位で傷が残ると思います。
水野:
はい、
では今日はですね、福島第一原発1号機について教えて下さい。
「原子炉格納容器の中で、放射線クリプトンと水素の濃度が時折上昇する」
そんな状態が続いているんだそうです。
この放射線クリプトンってどんなものなんでしょうか?
小出:
これまでも何度も聞いていただきましたけれども、
ウランが核分裂すると核分裂生成物という放射性物質が出来ます。
それはおよそ200種類に及ぶさまざまな放射性物質の集合体なのですが、
中にクリプトンという放射性物質も含まれています。
で、「希ガス」という元素群に属していまして、
完全なガス体で他の物質とは全く反応しないという、そういう性質のものです。
水野:
この放射性クリプトンと水素の濃度が時折上昇するという事は、
一体何を意味していて、大丈夫なんですか?
小出:核分裂生成物ですので、ウランが核分裂した時に出来るんですね。
水野:核分裂した時に出来るんですね?クリプトンは。
小出:
そうです。
それが時々上昇しているという事は、
今でも核分裂反応が時々起きているという事を疑う事になるわけですけれども、
私はたぶん違うと思います。
水野:ほぉ!
小出:
クリプトンという放射性物質の中にもいろいろな番号のクリプトンがありまして、
今回問題になっているのはクリプトン85というものです。
それは半減期が10.7年という、かなり寿命の長い核分裂生成物なのです。
それが多分事故の時に、ま、いっぺんに噴出してきてですね、
大部分のものはもう大気中に出てしまったのですが、
格納容器と呼ばれている容器の中の一部に、
まだ溜まったまま残っているものがあるのではないかと思っています。
特に、サプレッションチェンバーと私が呼んでいるドーナツ状の巨大な・・
水槽というか、半分まで水が入っているような構造物があるのですが、
それの上部のところに溜まってしまっていて、
それが時々外に漏れてくるということだろうと私は思います。
水野:
じゃあこれは、
「再臨界の恐れはない」と、
「爆発の恐れもない」と東電は言っているんですけれども、
小出:はい。多分そうだと思います。
水野:多分そこは心配ない。
小出:
再臨界だとすると他の希ガス。
たとえば、ゼノンとかですね、33番のゼノン、135番のゼノンなんていうものも出てくるはずですし、
容易に検出できる筈だと私は思います。
クリプトン85だけが増えているということであれば、多分再臨界ではありません。
水野:でもこれ、どうしてこうなっているのか、調べる作業を始めたんですが、
小出:そうですね。
水野:
その作業の中でですね、セシウムが放出されるかもしれない。
「セシウムが放出されたとしてもごくわずかな量」だと東電は言っているっていうんです。
そう思って大丈夫なもんなんですか?
小出:
量というのは、まあ考え方の問題なのですが、
今でも福島第一原子力発電所からはセシウムを含めていろいろ放射性物質が出てきてしまっているわけです。
ただし今現在出ている量というのは、昨年の3月11日から半月程に出た量に比べれば、
多分何100万分の一、あるいは何億分の一という、その程度のものになっているわけです。
で、今回の作業でまたセシウム137がなにがしか出てくるという事はあるかもしれませんが、
いずれにしても事故当初に出たものに比べれば、何億分の一とかというそういうものです。
水野:
近藤さん、
逆に言うと事故当初にどれだけ膨大なものが出たか、という事かもしれませんね。
近藤:ぞっとしますね。
水野:
ね…そして今も収束はしていない。
出続けている状態でこの1年半を迎えているという事を改めて思い知らされます。
どうもありがとうございました。
続きを読むに
関連記事
原子炉格納容器の水素濃度が上昇 福島第1原発1号機
日本経済新聞 2012/9/8 21:56
東京電力福島第1原発1号機の原子炉格納容器内で4月以降、
窒素封入量やガス管理設備の排気流量を変更していないのに、
核分裂反応で発生する希ガス「放射性クリプトン」と水素の濃度が時折、上昇する状態が続いている。
東電は再臨界や爆発の恐れはないとしているが、原因を突き止めるための作業を始めた。
昨年3月に起きた原子炉建屋の水素爆発は、
燃料集合体を覆う被覆管が水と反応して発生した水素が原因になった。
クリプトンは再臨界を判断する指標の一つだ。
格納容器内のこれまでの水素濃度は最高で0.5%程度で、可燃限界の4%には達していない。
東電は、原子炉格納容器下部の圧力抑制室内に、事故初期に発生した水素とクリプトンが残っていて、
圧力の変化によって格納容器内に流れ込んでいるとみている。
東電はこのメカニズムを検証するため、
圧力抑制室内に窒素を注入して水素とクリプトンを格納容器内に追い出し、
濃度が上昇するかどうかを確認する。
東電は「異常がないかどうか確認しながら、段階的に窒素を入れていく」と説明。
仮に圧力抑制室内の空間に水素が充満していて、これを窒素で追い出したとしても、
格納容器内の濃度は1.5%以下で十分な余裕があるという。
また、作業による外部へのセシウム放出があったとしても、ごくわずかな量とみている。〔共同〕
「放射性クリプトン」と水素の濃度が時折上昇/福島1号機/その他最近の福一
東京新聞 2012年9月8日の記事他

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「日本のジャーナリズムがどういうものかという事への試金石になる」
小出裕章氏・たね蒔きジャーナル存続の陳情8/27MBS(動画・内容書き出し)
・再臨界?放射性クリプトンと水素の濃度が時折上昇 福島第1原発1号機
2012年9月12日水曜日
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
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水野:
3.11原発事故から一年半経ちました。
小出先生、リスナーの方々から本当に多くの声を頂戴し続けてきたわけですけれども、
今日もラジオネームたね蒔きたね子さんっていう方は、
3.11以降に小出先生が出演していらっしゃるという事でたね蒔きジャーナルを初めて知り、
それからずーーっと聞いていますよとおっしゃっています。
原発事故が時々刻々と変化する状況の中でも、
小出さんの情報を頼りに、日常の生活にどう折り合いを付けるかの指針にしてきました。
小出:はい。
水野:
この「日常の生活をどう生きるか?」というところ
これは今も問われ続けているのではないかと思いますが、
この一年半で小出先生はどんな思いを持っていらっしゃいますか?
小出:
さーーー(ため息)、そうですね、一言では言えませんけれども
なんとも辛い一年半でした。
ただ、私の辛さなどというものは、今現在故郷を追われて仮住まいのような生活をしている人々、
あるいは汚染地に見捨てられて被ばくの恐怖にさらされながらも、
それでも毎日を生きなければいけない人たちの苦しみに比べれば
本当に私のものなんて些細なものなんだろうなと思います。
水野:
んー、北海道の方はですね、
「いかに自分がこれまで何も知らずに、また知ろうともせずにのほほんと暮らしてきたかを
原発事故後の小出先生のお話で気付かせてもらいました」とおっしゃています。
ただ、今現在も私たちはどれだけのことを知っているのか?
そのあたりはこれからもずっと続く問題なんですかね
小出:
そうですね。
まだ事故が収束している訳ではありませんし、
故郷を追われてしまった人、先程も聞いていただいたように、
故郷を追われた人、汚染地に取り残されている人というものが、現実に今でもいらっしゃるのですね。
そういった人たちの苦痛はずーっとまだまだ続くわけですから、
これから何十年という単位で傷が残ると思います。
水野:
はい、
では今日はですね、福島第一原発1号機について教えて下さい。
「原子炉格納容器の中で、放射線クリプトンと水素の濃度が時折上昇する」
そんな状態が続いているんだそうです。
この放射線クリプトンってどんなものなんでしょうか?
小出:
これまでも何度も聞いていただきましたけれども、
ウランが核分裂すると核分裂生成物という放射性物質が出来ます。
それはおよそ200種類に及ぶさまざまな放射性物質の集合体なのですが、
中にクリプトンという放射性物質も含まれています。
で、「希ガス」という元素群に属していまして、
完全なガス体で他の物質とは全く反応しないという、そういう性質のものです。
水野:
この放射性クリプトンと水素の濃度が時折上昇するという事は、
一体何を意味していて、大丈夫なんですか?
小出:核分裂生成物ですので、ウランが核分裂した時に出来るんですね。
水野:核分裂した時に出来るんですね?クリプトンは。
小出:
そうです。
それが時々上昇しているという事は、
今でも核分裂反応が時々起きているという事を疑う事になるわけですけれども、
私はたぶん違うと思います。
水野:ほぉ!
小出:
クリプトンという放射性物質の中にもいろいろな番号のクリプトンがありまして、
今回問題になっているのはクリプトン85というものです。
それは半減期が10.7年という、かなり寿命の長い核分裂生成物なのです。
それが多分事故の時に、ま、いっぺんに噴出してきてですね、
大部分のものはもう大気中に出てしまったのですが、
格納容器と呼ばれている容器の中の一部に、
まだ溜まったまま残っているものがあるのではないかと思っています。
特に、サプレッションチェンバーと私が呼んでいるドーナツ状の巨大な・・
水槽というか、半分まで水が入っているような構造物があるのですが、
それの上部のところに溜まってしまっていて、
それが時々外に漏れてくるということだろうと私は思います。
水野:
じゃあこれは、
「再臨界の恐れはない」と、
「爆発の恐れもない」と東電は言っているんですけれども、
小出:はい。多分そうだと思います。
水野:多分そこは心配ない。
小出:
再臨界だとすると他の希ガス。
たとえば、ゼノンとかですね、33番のゼノン、135番のゼノンなんていうものも出てくるはずですし、
容易に検出できる筈だと私は思います。
クリプトン85だけが増えているということであれば、多分再臨界ではありません。
水野:でもこれ、どうしてこうなっているのか、調べる作業を始めたんですが、
小出:そうですね。
水野:
その作業の中でですね、セシウムが放出されるかもしれない。
「セシウムが放出されたとしてもごくわずかな量」だと東電は言っているっていうんです。
そう思って大丈夫なもんなんですか?
小出:
量というのは、まあ考え方の問題なのですが、
今でも福島第一原子力発電所からはセシウムを含めていろいろ放射性物質が出てきてしまっているわけです。
ただし今現在出ている量というのは、昨年の3月11日から半月程に出た量に比べれば、
多分何100万分の一、あるいは何億分の一という、その程度のものになっているわけです。
で、今回の作業でまたセシウム137がなにがしか出てくるという事はあるかもしれませんが、
いずれにしても事故当初に出たものに比べれば、何億分の一とかというそういうものです。
水野:
近藤さん、
逆に言うと事故当初にどれだけ膨大なものが出たか、という事かもしれませんね。
近藤:ぞっとしますね。
水野:
ね…そして今も収束はしていない。
出続けている状態でこの1年半を迎えているという事を改めて思い知らされます。
どうもありがとうございました。
続きを読むに

原子炉格納容器の水素濃度が上昇 福島第1原発1号機
日本経済新聞 2012/9/8 21:56
東京電力福島第1原発1号機の原子炉格納容器内で4月以降、
窒素封入量やガス管理設備の排気流量を変更していないのに、
核分裂反応で発生する希ガス「放射性クリプトン」と水素の濃度が時折、上昇する状態が続いている。
東電は再臨界や爆発の恐れはないとしているが、原因を突き止めるための作業を始めた。
昨年3月に起きた原子炉建屋の水素爆発は、
燃料集合体を覆う被覆管が水と反応して発生した水素が原因になった。
クリプトンは再臨界を判断する指標の一つだ。
格納容器内のこれまでの水素濃度は最高で0.5%程度で、可燃限界の4%には達していない。
東電は、原子炉格納容器下部の圧力抑制室内に、事故初期に発生した水素とクリプトンが残っていて、
圧力の変化によって格納容器内に流れ込んでいるとみている。
東電はこのメカニズムを検証するため、
圧力抑制室内に窒素を注入して水素とクリプトンを格納容器内に追い出し、
濃度が上昇するかどうかを確認する。
東電は「異常がないかどうか確認しながら、段階的に窒素を入れていく」と説明。
仮に圧力抑制室内の空間に水素が充満していて、これを窒素で追い出したとしても、
格納容器内の濃度は1.5%以下で十分な余裕があるという。
また、作業による外部へのセシウム放出があったとしても、ごくわずかな量とみている。〔共同〕
「放射性クリプトン」と水素の濃度が時折上昇/福島1号機/その他最近の福一
東京新聞 2012年9月8日の記事他

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小出裕章氏・たね蒔きジャーナル存続の陳情8/27MBS(動画・内容書き出し)
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