fc2ブログ
09.21
Fri
・MOX燃料
・建設中の原発工事再開の矛盾
・もんじゅを使って研究?
・廃炉ってどうやるの?どうなるの?


2012年9月20日木曜日 
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章先生に伺いました
Radio News「たねまきジャーナル」
MBSラジオ [MBS1179.com]
千葉猛
近藤伸二 毎日新聞・大阪本社論説委員




MOX燃料

千葉:
今日もスタジオには沢山小出さんへの質問が届いていまして、それをお伺いしていきます。
まず菜千葉県柏市にお住まいの方です。

先日、枝野経済産業大臣が建設中の原発の工事再開に合意したという報道がありました。
ところで大間原発は燃料がフルMOXの特殊な原発という事ですが、
MOXは運転中の制御が難しいだけでなく、使用済み燃料になれば放射線量が高く
仮に地層処分が決まったとしても、埋められるレベルまで線量を下げるために、
プールで100年保管しなければならないという話を知りました。
これは本当なんでしょうか?教えて下さいというメールです。

小出:
100年という年数が本当にそうなのかどうかということは明確には言えません。
ただし、MOX燃料を使った原子力発電所から出てくる使用済み燃料は、
普通の原子力発電所から出てくる使用済みの燃料に比べれば、
発熱量が高くて、それが長く尾を引いていくという事は本当です。

そしてこれまで普通の原子力発電所から出てきた使用済み燃料は、
原子力発電所の敷地の中に数年、およそ5年位まずは冷やしておいて、
それから再処理工場にようやく移動できると。
そして再処理をして、えー、取り出して、ガラス固化体というのをつくろうとしてきました。
もっともそれも上手くいっていないのですが、
上手くガラス固化体が出来た暁には、50年後ぐらいには埋められるのではないか?という、
そういう期待で作業が進められてきました。

しかしMOX燃料の場合には、まずは原子力発電所の使用済み燃料プールから再処理工場に移すまでに、
もっともっと長い時間、プールの底に沈めておかなければいけませんし、
もともとMOX燃料を処理できるような再処理工場自体がありません。


え…ま、どうしていいか分からないままここまで来てしまったのですが、
最終的にはやはり使用済み燃料のまま何とか始末をつけていくことになっていくだろうと思いますが、
それももう何百年先の事になるかもわからない、という事になってしまいます。

千葉:そういう状態の燃料を使う原子力発電所を新たにつくろうという事なのですね。

小出:はい、そうです。


建設中の原発工事再開の矛盾

近藤:
小出さん、そもそもこの建設中の原発の工事再開という点なんですけれども、
2030年代に原発ゼロにするという方針と明らかに矛盾していますよね。

小出:そう思いますよね、誰が考えてもそうだろうと思うのですが、はい。

近藤:そのあたりの方針についてはいかがですか?

小出:はい、
要するに日本というこの国が国の体裁を成していないのだと私は思います。
少なくとも原子力というものに関しては、基本的に一貫した政策が全くありません。
ぐらぐら、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしているだけで、
もともと2030年にゼロにするか15にするか、25にするかというような事を国民に問うたのに、
その結果ゼロにしろという声が多かったにもかかわらず、
今度はいつのまにか2030年というように言いだしたんですね。
2030年代というのは39年までという事ですから、
全く話にならないほどひどい話だと思います。


もんじゅを使って研究?

千葉:
さらにですね、こんな質問のメールがきていますのでご紹介いたします。
こちらは奈良県橿原市にお住まいの方

核心的エネルギー環境戦略の原案によると、
高速増殖炉原型炉もんじゅについては、
「使用済み核燃料から出てくる廃棄物を減らすための研究炉」
とした後に廃炉とする方向で調整されているそうですが、
廃棄物を減らすための研究って、もんじゅで出来るんでしょうか?

小出:
これもですね、原理の問題と、実際のもんじゅという原子炉という問題を
ちょっと分けて考えた方がいいと私は思います。
原理的に言うとですね、いわゆる高速中性子というものを使う事が出来るのであると、
私たちが超ウラン元素と呼んでいる
寿命の長い放射性物質を寿命の短い放射性物質に変える可能性があります。
ですから、「そういう研究は必要か?」と問われると、
私も「必要かもしれない」と心の片隅で思わないでもありません。
しかし「もんじゅ」というような原子炉が、その研究のために向いているか?と言えば
全く向いていませんし、
もんじゅを動かすという事は、途方もない危険を抱えてしまいますし、
途方もないお金をまた払わなければならなくなります。
本当にその研究が必要だということであれば、
もんじゅはまずは諦めて、基礎的な研究から始めるべきだと思います。

千葉:ま、動かすための理由を後付けで付けているというような感じにも見えなくもないですが、

小出:
はい、要するにそういう事なのです。
もんじゅというものをつくってしまって、すぐに廃炉にする事もとても難しいものなので、
何とかして延命したいと思っているのがひとつと、
それから昨日もちょっとお答えしましたけれども、
もんじゅというものを、発電のためであろうと、研究のためであろうと、
動かしてしまうと、超優秀な核兵器材料が生み出されます。
「その事をどうしても願っている人が政治の世界にいるだろう」と私は推測しています。

千葉:そういう事情もあるんですね…

小出:はい。


廃炉ってどうやるの?どうなるの?


千葉:
分かりました。次なんですけれども、
15日の毎日新聞に原子炉の廃炉についての記事が載っていたんですが、
原子炉はいつかは必ず廃炉になるんですけれども、
事故を起こしていない原発でも原子炉を止めて建屋を解体して、更地に出来るまでには
どんな過程があって、どのくらいの期間がかかるものなのでしょうか?

小出:
どのくらいの期間がかかるかは実際には分かりません。
まだ、ちゃんとやった原子力発電所が世界中に一つもありません。

千葉:えっ?1個もないんですか?

小出:
はい。
えっと、ちいちゃな原子炉を解体したことはありますけれど、
実用規模の原子炉を解体した例は世界中一つもありません。
それで、どういう事をやらなければいけないかというと、
廃炉という事には大きく分けて二つの事があります。

一つはもう全く手を付けることなく、原子炉そのものを全部、
たとえばコンクリートなどで封鎖してしまってですね、
今まで使っていたものを、そのまま墓場にしてしまうというやり方です。

もうひとつは、日本がそれをとろうとしているやり方なのですが、
とにかく全部バラバラにしてしまって、更地に戻すというやり方です。
ただ、バラバラに戻してしまうと言ってもですね、
放射能まみれになっているのですから、壊すだけでも大変です。

たとえば日本で一番初めに動き出した原子力発電所は
1966年に動き始めた東海第一原子力発電所です。
その発電所は1998年に32年間動いた段階で停止しました。
それからようやく廃炉作業というものが始まりました。
で、放射能の汚れの少ないところから少しずつ解体していますけれども、
いまだに原子炉本体には手を付けることもできないままで、放ってあるという、
そういう状態になっています。

そしてその廃炉作業というものですけれども、何十年かかるわけですが、
さまざまなゴミが出てきます。
大雑把に言うと、一つの原子力発電所を解体すると、
60万立方メートルのゴミが出るという試算になっています。
ただそれを全て放射能のゴミとしてお守をしようと思うと、大変な労力とお金がかかってしまうので、
「それはもう出来ない」と、
放射能で大変汚れたものはかなり深い穴を掘って埋めよう。
そしてもう少し放射能汚染の度合いが低いものは、
もうちょっと浅い穴を掘って埋めよう、というような計画になっているのですが、
放射能の汚染が比較的少ないものに関しては、
もう野放しにしようという、そういう方針になっています。


千葉:わぁ……

小出:
それを私たちはクリアランスという言葉で呼んでいますが、
たとえば、放射能の汚染が少ない鉄材などが野放しにされる。
そうすると屑鉄屋がそれを買っていく訳ですね。
そうするとその屑鉄は回収されて、また鉄製品になって市場に出回ってくることになります。
たとえば、家庭のフライパンというようなものの中にも、
その鉄材が混じり込んで来るだろうと考えているわけです。
で、じゃあフラパンを使って料理をした時に、
その行為によってどれだけの被ばくをするか?という事をモデルで計算をしまして、
1年間に10マイクロシーベルトという被ばくを超えないように計算で得られるのであれば、
もう野放しにするというそういう基準になっています。

千葉:うーーん

小出:
ですからこれからたくさんの原子力発電所を解体することになるわけで、
もしこれまでの政府の方針が実行されてしまうのであれば、
私たちの生活の中にいろいろな形で原子力発電所の放射能が出回ってくるという時代になります。


千葉:
ウーーン、新しく原子力発電所をつくるというよりも、
本当にきちんと安全な廃炉の仕方というのを早く研究したほうがいいという事ですね。

小出:
そうですね、もう残念ながら50基を超える原子力発電所をつくってきてしまいました、これまでに。
それを壊す手段すら知らないままここまできたわけで、
本当に…あの、皆さん立ち止まって、まずは考えるべきだと私は思います。

千葉:
はい。
分かりました。小出さんどうもありがとうございました。



続きを読むに関連記事






大間原発の建設再開容認 経産相、青森知事に方針
河北新報社 2012年09月16日日曜日

政府の新エネルギー戦略の決定を受け、枝野幸男経済産業相は15日、
原子力施設が集中する青森県の三村申吾知事らと青森市内で会談し、
電源開発大間原発(大間町)など建設中の原発について
「既に設置許可が与えられている。取り消しや新たな手続きといった変更は考えてない」と述べ、
建設再開を容認する方針を表明した。

東日本大震災後、建設中断が続く原発に対し、枝野経産相が建設を認める考えを明らかにしたのは初めて。
新戦略は「2030年代の原発ゼロ」を掲げ、原発の新増設を認めないとしており、
建設中の原発を例外扱いすることで矛盾が一段と鮮明になった。
 
大間原発の工事進捗(しんちょく)率は約40%。2014年11月の運転開始を目指している。
枝野経産相は「運転開始には、独立性を持った原子力規制委員会の許認可が必要」との考えも示した。
 
原子炉の設置許可は東京電力東通原発1号機(東通村)にも出ているが、枝野経産相は会談後の取材に対し
「東電は、福島の被災者への賠償や企業体質を変えることに全力を挙げることが重要だ」と強調。
当面の建設再開を否定した。
 
核燃料サイクル政策については
「これまでの青森県との約束が大前提。従来の政策を変更するものではない」と繰り返し、
使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)、中間貯蔵施設(むつ市)ともに
完工に向け着実に進める」と明言した。
 
プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を一般の原子炉で使うプルサーマルに関しても
「国が責任を持って進める」とし、青森県を使用済み核燃料の最終処分場にしないこともあらためて表明した。

三村知事は核燃サイクル政策の継続を評価した上で、サイクルの要となる原発のゼロ目標に
「具体的な道筋が不透明だ。明確な方針を示してほしい」と注文。
再処理事業の中止を想定し検討していた使用済み核燃料の返還には
「さまざまな約束は守られていくと受け止めた」と見送る考えを明らかにした。






枝野「設置許可の出ている原発は変更しない」
島根原発3号機・大間原発・東通原発1号機の建設継続を認める






もんじゅ実用化断念、廃棄物減量の研究拠点に
読売新聞 2012年9月14日21時50分

政府の革新的エネルギー・環境戦略で、高速増殖炉の実用化を断念し、
「もんじゅ」(福井県敦賀市)の役割を
廃棄物の減容、有害度の低減などを目指した研究を行う」に切り替えることが決定された。

文部科学省は「原子炉の設計変更などは生じないが、新たな燃料製造研究は必要」(同省幹部)としており、
新たな研究計画に伴う追加負担が焦点となりそうだ。

通常の原発(軽水炉)では、核分裂で発生する中性子が水で減速されるが、もんじゅでは減速されない。
新たな研究では、この「高速炉」の特性を生かし、
使用済み核燃料に含まれる長寿命で毒性の高い放射性物質などに、高速の中性子を照射。
高レベル放射性廃棄物の量を減らす技術の開発を目指す。



今「原子力」を考える:
もんじゅ、研究開発方針変更なし 廃炉の方向一転 /福井

毎日新聞 2012年09月19日 地方版

◇「ごまかしだ」批判も
 
「もんじゅの重要性は従来通り」−−。
平野博文文部科学相が18日、西川一誠知事と河瀬一治敦賀市長を相次いで訪問し、
高速増殖原型炉もんじゅ(敦賀市)の研究開発方針に大きな変更はないとの考えを伝えた。
14日に決定した政府の新たなエネルギー・環境戦略で、
もんじゅは年限を区切って研究を終了することになっていたが、
結局は福島第1原発事故前と実質的に変わらないことになる。
「ごまかしだ」と批判の声も上がっている。【佐藤慶、山衛守剛、柳楽未来】

■県庁

午前10時半、平野文科相と西川知事の会談が始まった。
平野文科相は、体制強化などもんじゅの研究計画を改めて策定し、研究を続行する意向を説明した。
西川知事は「高速増殖炉の研究開発を合理的に追究するという、
もんじゅの本来の目的はぶれることなく達成してほしい」と要望した。

もんじゅを巡っては、新戦略決定前の13日、県庁を訪れた牧野聖修副経済産業相らが
「もんじゅは研究成果がある程度出た段階での廃炉の方向性が出ている」などと説明し、
西川知事が強く反発した経緯がある。
西川知事は平野文科相に対し、
「もんじゅの方針がぐらぐらしたのは、地元に十分な話がなく、東京だけで議論してきたのが一因。
重要事項は事前に協議して妥当な方向を見いだすべきだ」と注文をつけた。

■敦賀市

午後0時半、平野文科相は敦賀市役所で河瀬市長と会談した。河瀬市長
「高速増殖炉を含めた核燃料サイクル政策について、何ら変更したものではないという説明を受けた」
歓迎
また会談後、報道陣に対し、
「このまま研究を進めるということで、もんじゅは存続していくと思っている。
少し安堵(あんど)している。(運転再開があれば)市民に理解をいただき、同意したい」と話した。

一方、平野文科相は会談後、もんじゅの今後の研究計画について、年内に中間報告を策定する意向を示した。
また、もんじゅの運転再開、原型炉の次の実証炉の建設計画などについては
「検証した上で判断したい」と述べ、明言を避けたものの否定はしなかった。

■反対の声

県内で活動する市民団体「サヨナラ原発福井ネットワーク」の山崎隆敏代表(63)は
「政府は当初の方針通り、廃炉の立場を堅持するべきだった。
これまでたくさんの税金をつぎ込んできたとはいえ、リスクを冒してまで存続させるべきではない。
傷がより深くなる前に撤退すべきだ」
と批判した。

原子力資料情報室(東京都)の西尾漠共同代表は
「廃炉にすればこれまでの研究開発が失敗したことになり、
少しでも動かして役割を果たしたことにしたいのだろう」と分析。
また「国は本音では、もんじゅの研究はうまくいかないと分かっていながら、
これまで協力してきた地元をいきなり突き放すわけにいかず、ごまかしているだけだ」と批判した。







関連記事
comment 1
コメント
番組が終了するので、小出さんも精一杯の情報提供をしてるような、そんな盛り沢山な内容ですね。
使用済みMOX燃料の発熱量が大きくて、六ヶ所村を含め送れる施設がない。これぞ無責任産業の極めつけです。
前の福島県知事 佐藤栄佐久氏がプルサーマル導入を拒否し続けた理由がこれです。現状も原発内で管理するしかありません。

直接処分の民意も空しく再処理するぞなどと言ってますが、その結果生まれたMOX燃料を使った場合、原発からの搬出先はないのを承知で進めようとしている訳です。あの原子力委員会の近藤駿介 委員長も当然承知で、以前「2010年ぐらいからMOX燃料用の再処理施設を考えないといけない~」とのことでしたが、これに関する情報など何もありません。
どんな産業でもついて回るゴミ処理・後始末、これに対する意識が異常に低すぎる、行き詰るのは当たり前の 廃棄すべき産業、それが原発だと思います。
ktpage | 2012.09.22 02:52 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top