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11.04
Sun
11月2日に自由報道協会主催
以下は質疑応答の一部分です。


田坂広志氏 音声



質問:
今伺ったように
原発ゼロ社会とは選択の問題ではなく、不可避の現実であるという、
そういう事実の前で、これから日本は何をしなければいけないんでしょうか?
高レベル放射性廃棄物、使用済み燃料というのを、どうしたらよろしいんでしょうか?


田坂広志:
これも本当に重要なご質問なので、少し丁寧に申し上げるとですね、
これは直ちに非常に難しい現実に直面する訳です。

たとえば先程の学術会議の提言をふまえて、
「その通りだ」と考えて「長期貯蔵をやろう」と、
もしくは「暫定保管」という言葉も同じなんですけれど、
で、そこまでは仮に政府が方針を定めることはできるとは思うんです。やろうと思えば。

問題はその「長期保存の施設をどこにつくるか?」なんです。
「暫定保管施設」を。
これはもう極めて大きな現実的な問題にすぐに直面します。

つまり一般政策論としては長期保存します、100年でもやりますという事は簡単に言えるんですが、
じゃあどの地域に作るか?となった時に、
皆さんは今もうすでに、がれきの搬入ですらですね、
日本全国の地域の方々が、やはり非常に抵抗がありますね。

この抵抗を感じる方々に、特に私は被害があると申し上げるつもりはないんですけれども、
誰といえども、自分たちの地域に放射性物質で汚染された可能性があるものが持ち込まれることは、
がれきですら、やはり非常に心理的な抵抗があるのが現実です。

ただ、放射性廃棄物の専門家の目で見れば、
がれきはその中でも本当に軽微なものですね。
ほとんど汚染の無いものも含まれている訳ですから。
ところがそれですらこれほど強い社会的な拒否の気持ちが動く。

これから出てくる放射性廃棄物というのは、
もっともっと、大変な放射性廃棄物が出てくる訳です。


たとえば福島で汚染水を処理すると、極めて高放射能の廃棄物が今どんどん溜まっています。
あの解体をやると、外側の解体した建屋も汚染は結構していると思います。

いやそれ以上に、
最後の本丸の福島の原発、メルトダウンを起こした3つの原発というのは、
そのまま、世界に存在する高レベル廃棄物の中で、
最も扱いにくい厄介な高レベル廃棄物
です。
それがいずれ出てきます。

そして今ご質問の使用済み燃料。

こういうものが、もっと非常に危険度の高いものが貯蔵に向かう訳です。

もう一回申し上げますが、
一番軽微なものも貯蔵施設ですら今、日本中で受け入れるところがなかなか無い。
その事で政策が行き詰る。


私は「パンドラの箱を開けてしまった」と最初の本で申し上げましたが、
これは誇張ではないです。
パンドラの箱を開けてしまったがゆえに、これから次々と難しい問題が飛び出してきます。

それがこの放射性廃棄物の処分以前に、
貯蔵の場所すら見つからないという問題がこれから次々と出てきます。


この問題にどう処するかという事ですね。

あの、あえてもう一言付け加えれば、これは、解決策というのは、
政府が強権を発動して、「どこどこの地域」とやるわけにはいかない。
これはおそらく政策論的にはですね、一度国民的な議論にしっかりと付するしかないと思います。

つまり我々は放射性廃棄物がやっぱり近くに貯蔵したりする事は、
やっぱり誰といえども抵抗がありますが、
本当は我々がこうやって電力を使ってきた結果として生まれているものでもあります。
もちろん、
「原発推進は政府が勝手にやったんだろう」とか、
「電力が勝手にやったんだろう」という心情を持たれる方もういらっしゃるかもしれませんが、
現実に社会全体として原発を進めることによって生まれてきた廃棄物ですから、
国民全体として、この最後の貯蔵という負担をどう分かち合うかという議論からはじめないと、
あの、なにが起こるか?と言えば、
今存在しているところから動かせない。
従って、存在しているところが貯蔵場所、
最悪の場合は処分場所になって行くというような話になっていってしまうと思います。

その事も含めて、先程国民の意識の成熟が問われる問題が今目の前にあると申し上げた訳です。




ーー


核廃棄物の貯蔵


質問:
プレジデン社の石井と申します。
時間の猶予はどれ程ありますか?という質問です。
どこに貯蔵するか、国民的議論に付するしかないと先程田坂先生はおっしゃいました。
その議論によって、どこに貯蔵するという事を決めるまでの、時間的な余裕というのは、
我々に果たしてどの位あるのか?という、
時間的余裕というものがどれ位あるのかという事に関してお伺いしたいと思います。


田崎広志:
これもいいご質問だと思います。あの…ただ、まず理解すべきは、
今ですね、行政とか政策が動かない理由は何か?という事から申し上げたいと思うんですが、

政策がうまく動かない理由というのは、その…
原子力に於いて最も大切なものは何か?という事を行政が理解していないからです。

たとえば行政の方に
「原子力にとって大切なものは何ですか?」と聞くと、必ず二つの事をおっしゃいます。
「安全です」そして「安心です」と。
確かにその通りなんですが、実はもっと大切なものがあります。
「信頼」ですね。

つまり、どれほど日本の行政が、もしくは私が仮に、
「みなさん安全ですから、そして安心して下さい」って言っても、
この行政もしくはそれを言っている識者の田坂が信用できないとなればですね、
信頼できないとなった瞬間に物事は一歩も動きません

つまりこれを裏返して言うとですね、

政府としてある期間、
「国民のみなさん、今政策を進めていますのでお待ちください」という事が言えれば、
この期間は多少取れます。

ところがですね、この政府に対する信頼が無いとですね、
地元住民の方からすれば
「今すぐ何とかしろ」
「すぐに持ってけ、撤去しろ」という、
このたぐいのやはり非常に厳しい反応が出てくる可能性が非常に高くなります。
従って私はもう1年半前から申し上げているのは、
「今、行政が絶対にやらなければならない事は信頼の回復だ」と、
「これ抜きには一歩も進まない」と申し上げてiます。

いまの石井さんのご質問に対して、少し違った角度のお答えになってしまうかもしれませんが、
たとえば私が行政の責任者で、
「この貯蔵施設を作るのに10年はやはり必要だ」と、仮に思ったとしてもですね、
問題はその10年待っていただけるか?という事なんです。

それを本当にお願いして、国民なり地域の住民の方に
「こういう手順で進めていきますので10年間お待ちください」
これは仮に30年でも結構です。

それを納得していただくためには、この政府は、
責任を持ってこの約束を守る」とか、
言っていることに裏と表が無い」とか、
国民の命と安全を一番重視して考えてくれている」と、
これは
間違っても産業界の意向に沿って、虜となって動いている訳ではない
という事がしっかりと理解された時に、
こういう国民、もしくは住民の方々との話し合いが、比較的円滑に進む可能性があるわけです。


したがって、
とは言っても100年というオーダーで私は当然ないと思いますから、
10年とか30年とかというオーダーの中で、どれ位
地域の住民そして国民との、行政の間で合意ができるか、
このあたりがポイントであろうと思います。

ただし、福島の原発の廃炉だけでも、私は30年でもとても無理、
あれは普通の廃炉とは全く違う概念ですので、
高レベル廃棄物のかたまりをどうするか?という問題ですので、
その問題だけ見ても数10年、50年近い歳月は、最初から覚悟せざるを得ないです。

どこまでの猶予という意味が、テーマごとに違ってきますけれども、
そのことを付け加えておきたいと思いますが。



ーーー

処分に関して国民的議論を巻き起こすには?


質問:
東電株主代表訴訟のHorie Tetuoと申します。
今まで原発推進という事でやっていけば、推進すれば自然に止まるだろうというような事で、
さきほど、最初にありましたように、使用済み燃料をどう処理するか、
この事の論議というものが出てくれば、自然的に原発は止まるだろうというふうな話しがありましたけれども、
問題は、この使用済み燃料をどうするか?というこの論議をどうやってやって、その遡上に乗せるのか?
国民的論議にするのか?という事は、「なかなか今の状態の中ではない」というふうに思っておりますので、
たとえばですね、「東京に使用済み燃料を持ってくる」とかというような、
極端な意味で、「推進する意味でこういう事が必要ですよ」というふうな何かテーゼ的なものを、
何か案があって論議を巻き起こすものっていうんですか?
そういうものが何か、こう、お考えになる部分というものは無いでしょうか?


田坂広志:
これもいいご質問を頂きましたので、やはりお答しますが、
さきほど申し上げたように使用済み燃料というのは、
一回、「国民一人一人の問題なんだ」というようなですね、
その意識の流れを作らないと、なんか、
「うちはとにかく引き受けたくない」とみんなが言いだすとですね、
「たまたま今存在している地域にずっと押し付けることになる」という、
これはやはりやるべきではないんですね。

「東京に使用済み燃料」というのは、なかなか刺激的な言葉ですが、
そこまで明瞭な言い方でないにしても、
我々が電力の恩恵によくした結果発生している使用済み燃料については、
電力の消費の量に、過去の、
消費の量で、ある意味案分した形で、
正確に言うと原発に依存した電力の消費の量に案分した形で、
「それぞれの地方自治体が責任を持って対応すべきだ」というような政策論は私はあり得ると思います。

ただしそれは間違っても全ての県が具体的に何本ずつ持つという事ではありませんが、
そういう政策論から始まって、それぞれの自治体が、
じゃあ、その使用済み燃料を最終的にどうするか?ということで、
地方自治体ごとのまたいろんな議論をしていただくというプロセスを、
私は一回やるべきだと思います。


そうしないと、たまたま受け入れてない県だけは、都道府県は、
「うちはとにかく受け入れたくない」の1点張りで行けば、
この話は非常にイージーに、その県にとっては解決できますので、
従って場合によっては法律制度的に、
使用済み燃料については、全ての恩恵をよくした国民、そして自治体が、
「責任を持ってその最終的な貯蔵あり処分の問題を検討するというような考え方を出すことは、
私は考え方としては「あり」だと思います。

ただしそれを今直ちにやることは相当なパニックになりますので、
あくまでも政策論的な基本的な考えとして申し上げておきます。


もうひとつはですね、もっと具体的なレベルで申し上げると、
この今の原子力委員会そのものを今後どうしていくか?
原子力安全委員会は規制委員会に変わりましたので、とりあえずはひとつ区切りがついていますが、
原子力を推進する立場の原子力委員会が、
今後どういう組織になっていくか?
無くなるか?という議論が出てきます。

このあたりの文脈の中で、是非メディアの方にお願いしたいのは、
「原子力の推進計画」と呼ばれるものの中に、
必ずこの使用済み燃料の最終処分を含めたものを持って、推進なり利用計画と呼ぶんだという事を
常識として広げていただきたいという事です。


今まではその部分だけは「地層処分やります」の1行で終わりですので、
それに対して真っ向おっしゃっていただいたのが、学術会議。
これは明確な国の機関です。
正確には公的なオーソリティーですね。

そしてこの方々は政府からの正式の諮問に応じてですね、報告書を提出したわけですから、
これはどこかの学者の方々が集まって、なんとなく私的研究でやったわけではありませんから、
これを正面から政府が受け止めて、
「地層処分ができない」という前提で、
「どうするんですか?」という事を今後の原子力を仮にしばらく利用するにしてもですね、
その計画の中に入れるべきだと。
入って無いものは計画とは呼ばないと。
この国民的な議論を起こさせることかと思います。





ーー会見全てーー

会見本編↓
<会見・本題>「脱原発は選択の問題ではなく、不可避の現実である」
田坂広志氏11/2自由報道協会会見(内容書き出し)


質疑応答↓

<1.望まない被ばく>「今後何十年と極めて重い心の重荷を背負う事になる」
田坂広志氏11/2自由報道協会記者会見(内容書き出し)


<2.放射性廃棄物>「国民の意識の成熟が問われる問題」
田坂広志氏11/2自由報道協会記者会見(内容書き出し)


<3.立地自治体>「地元の経済的自立を図るための政府の支援」
田坂広志氏11/2自由報道協会記者会見(内容書き出し)


<4.原子力の技術と輸出>「原発ゼロ社会にすると原子力技術者がいなくなる?」
田坂広志氏11/2自由報道協会記者会見(内容書き出し)


<5.核武装>「『プルトニウムを減らすために大間を稼働しなければいけない』は詭弁」
田坂広志氏11/2自由報道協会記者会見(内容書き出し)


<6.原子力規制委員>「何を言うよりも大切なことがある。誰が言うかだ」
田坂広志氏11/2自由報道協会記者会見(内容書き出し)






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コメント
使用済み燃料の管理について、原子力規制委員長が会見で方針を述べていたので紹介します。
→ ttp://www.youtube.com/watch?v=CC8FL46BUkE
  この動画の47分から3分程度

敷地内あるいは立地自治体で乾式貯蔵施設(ドライキャスク)を用意して、原発内のプールから崩壊熱が一定温度以下になった燃料を順次取り出して移すのが望ましい旨のことを話しています。
ドライキャスクは、一般に~100年間なら中間貯蔵施設の代わりとして機能するとされています。
最終や中間の場所や方法が未定の間、原発内のプールで保管する。何かあったときこれが一番危険なので注目しています。
ktpage | 2012.11.04 16:54 | 編集
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