調べれば調べていくほどすごい方だった。
宇都宮健児さんという方が東京都の都知事に立候補して下さるなんて、
いま、都民にだけ与えられたこの大きなチャンスを逃がしてはいけない。
今から5年半ぐらい前のNHKプロフェッショナルに
宇都宮健児さんが出ていらっしゃいました。
権力に屈することなく、前向きに。そして闘う。
ご本人は
「あんまり人付き合いや人脈をつくることが上手じゃない。」とおっしゃっていますが、
人々の方から勝手に宇都宮さんの方に集まって言っちゃっているように思えます。
不思議な方です。
この、穏やかな優しい笑顔の中に隠れた強さ。
それは
暴力団にも負けない!!ლ (。◕ˇε ˇ◕。ლ)
その2006年2月の放送をご紹介します。
プロフェッショナル 仕事の流儀
ヤミ金融に立ち向かう一人の弁護士の仕事を追う。
2006年2月7日放送 NHK
http://youtu.be/R4mCQoTbeZg
弁護士 宇都宮健児
ヤミ金融と闘う弁護士、宇都宮健児(この時 59歳)。
コラー!心臓えぐるぞこのクソババア!!オリャー!
ホームレスであふれかえる東京新宿中央公園
血管ぶち抜いてからお前心臓えぐりとったるわ!このクソババアが こりゃー!
悪徳金融の過酷な取り立てに耐えられず、家や職場から逃げてきた人が少なくない
一人の男が声をかけてまわっていた。
「法律相談やっています。
いつでも相談に乗りますから、安心して早く仕事を見つけてね」
このどこにでもいそうな小柄な男が、
数々の社会悪と戦ってきた凄腕弁護士だと、誰が気づくだろう。
豊田商事事件の被害者救済
地下鉄サリン事件損害賠償請求
振り込め詐欺の刑事告発

弁護士宇都宮健児
その名を聞けば暴力団もしり込みする。
闇金融の被害者:
悪徳業者が
「宇都宮って宇都宮健児じゃないだろうな?」って
「宇都宮健児先生です」って言ったら、
「それは相手が悪い」というように言ってきました。
今立ち向かうのは暴利を無さぶる闇金融
多重債務に苦しむ人々に宇都宮は語りかける。
「大丈夫、人生はやり直せる」

住吉美紀
プロフェッショナル仕事の流儀。
一流のプロの仕事の秘密とその人間に迫ります。
まず今日はこの小説、宮部みゆきの「火車」
読んだことありますか?
茂木健一郎
読みましたよ。
これは多重債務の過酷さを描いた迫真のベストセラーですよね。
住吉:
はい、今日のプロフェッショナルは、
この小説に登場する弁護士のモデルになった人物なんです。
弁護士の宇都宮健児さんです。
戦後の名だたる悪徳商法には必ずといっていいほどその名が出てきます。
豊田商事事件では中坊公平さんとともに被害者の救済に奔走。
地下鉄サリン事件では被害対策弁護団長としてオウム真理教を破産させ、被害者への賠償を実現しました。
今は多重債務者の救済に力を入れているという事ですね。
茂木:
そうですね、やっぱり相談してくる方っていうのはお金が無いわけですから、
報酬もそんなに期待できない訳ですよね。
今の世の中ね、お金が全てっていう中で、宇都宮さんは何故頑張れるんでしょうね?
人は何のために働くのか?という根源的な問いに今日は迫りたいと思います。
仕事の現場に流儀を見る
弁護士宇都宮健児は毎朝電車で銀座へ向かう。
事務所は築23年の雑居ビルにある。
事務所の中はまるでうなぎの寝床。
弁護士5人、事務員10人を抱える事務所のトップ、いわゆる”ボス弁”だ。
パソコンが苦手なお話ー略ー
他の弁護士に断られてここに来る人が多い
なかでも闇金融が目立つ。
10日で4割の不当な金利を要求する
出資法違反の犯罪行為だ。
そして始まるのは暴力的な取り立て。
「バカ野郎!コラ!血管引きちぎったるワ
年金の日が楽しみじゃのう、オマエ」
被害者は社会的に弱い立場の人の方が圧倒的に多い。
宇都宮:
低所得、それから失業、病気とかですね、それから中小零細の場合は事業資金ですね、
それを補うために借金だとか闇金融に手を出しちゃったと。
相談者がやってきた。都内に住む60代の男性。
病気がきっかけで失業生活費に充てようと闇金融に手を出した。
闇金融業者から20万円位借りたがたちまち返済に行き詰った。
他の弁護士を頼ったが取り合ってもらえずここに来た。
借金を重ねた事を宇都宮は決して責めない。
責めれば心を閉ざし解決が遠のく。
闇金融と対決する時、宇都宮には確固とした流儀がある。
日陰の交渉はしない
おもむろに1枚の紙を取り出した。
「受任通知書」
業者との交渉の全てを弁護士が肩代わりすることを通告する文書だ。
闇の金融業者を法律の力で陽のあたる場所へ引きずり出す。
これを送れば法律により債務者への直接の取り立てはできなくなる。
さらに借りた金は一切返さない。
逆に刑事告発し追い詰める。
法律にのっとり交渉すれば闇金融からの取り立ては無くなると宇都宮は言う。
儲けるなんて考えるな
多重債務の相談は金にはならない。
闇金融と1社交渉して料金は2万円。
それを月々5000円からの分割払いにしている。
宇都宮:
なんかいろいろと若い人たちが弁護士になって金儲けをなんて思っているけれど、
そういう人ならばね、企業の経営者になればいいんでね。
弁護士というのはそういう弱者のために仕事をするもの。
事務所の収支はとんとんだ。それでいいと思っている。
1年ほど前から宇都宮はホームレスの居る場所に出かけ、無料の法律相談を行っている。
闇金融の問題は解決できる。
それを知らずに人生を棒に振っている人があまりに多い。
一人の男性が近づいてきた。
この男性は取り立てに追われて家をすてた。
その後一度はやり直そうとしたが、すぐに業者に見つかり、再び路上生活に舞い戻ったという。
人生をやり直したいのにやり直せない。
この夜の気温は4度。
真冬の法律相談は2時間に及んだ。

住吉:
宇都宮健児さんにお越しいただきました。
お忙しい中ありがとうございます。
茂木:宇都宮さん、パソコン全然使えないんじゃ、仕事の上で困ることは無いですか?

宇都宮:
うーん、あった方が便利なのかもしれないんですけど、
私たちの世代は境目の世代で、覚えようとしたんですけどね、
やはり手書きでどんどん、事務員さんに、逆にメールを送ってもらうんです。
自分が送らなくって、その方が早いんでついつい。
茂木:
なんか銀座に事務所があるっていうのがちょっと意外な感じがしたんですけれど、
何故銀座になさったんですか?
宇都宮:
鋭い質問ですねw
あの、いろいろないきさつがありまして、
最初に事務員さんを見つけないと事務所が開けませんので、
それで事務員さんと面接をしたんですね、喫茶店で。
その事務員さんが、ま、女性なんですけど、「私銀座なら勤めます」って言われちゃったんですよ。
それで、私もえらいショックを受けましてね、
ああ、女性っていうのはそういうところで、どこに事務所があるかで勤務先を決めるように考えるのかと、
とても私がおっよびがつかなかった所でね、
考えてみたら多重債務者の事件というのは深刻で暗い事件ですから、
パッと明るい銀座でサラ金事件をやるのもいいんじゃないかと思って、
その事務員さんの勧めに従ってですね、銀座の今の入っている事務所の3階の部屋が開いていましたので、
それで銀座に決めたんです。
住吉:
このプロフェッシャルではプロの道具を見せていただいているんですけれど、
今日は大きな黒い鞄を…見せていただけますか?
宇都宮:かばんはいろんな記録が入っていて
住吉:大きいですね
ー藤沢周平さんと、山本周五郎さんの本等出てくる。
去年は50冊ぐらい読んだ。何を読んだか忘れないように読んだ本のリスト(原稿用紙の裏側)
手帳。
住吉:相談者の方にはすごく優しく話を聞いていましたよね
宇都宮:裏切られるのは覚悟しなければいけないです。
住吉:裏切られる?
宇都宮:
弁護士費用を払わなければいけない場合でも、
やっぱり人間は弱いから、取り立てが止まる、給料が全部貰えるとなると、
一杯飲みに行きたいというのもあるわけですよ。
給料をもらったら送金ができる筈なのにね、だけどそれを使っちゃったと、
それを素直にいえない人もいるわけです。
茂木:そんな時にはサジを投げたくなるような気持になりませんか?
宇都宮:
ええ、だからしょっちゅう。
給料袋を落としたとかね、何回もおとしている人もいますよ。次から次へと。
茂木:それでも見捨てないんですか?
宇都宮:
これは見捨てたら、ちょっとね他に行くところが無いですからね。
だから誓約書を何回も書いてね、
「もう2度と闇金融には手を出しません」という事を、
誓約書を2回も3回も書いて、でもまた来る人もいますけどね。
住吉:お金で困っている方を助けて、そして銀座で事務所っていうのは、経営は成立するんですか?
宇都宮:
5000円とか1万円でもそれを100人とか200人やれば、
毎月100万200万のお金が入るわけですから、
そういう事で、大量に、その・・w
小額の事件を沢山やることによって成り立っていけるようになったということですね。
茂木:
なんか、おそらく皆さんすごく興味があると思うんですけれども、
年収はズバリどれ位ですか?
宇都宮:年収はですね、一般の
だから最初はあれだったけれども、今は一般の弁護士ぐらいにはなっているんじゃないですかね。
住吉:っていうと、どのぐらいなんですか?
宇都宮:
なんか・・1000万は超えているかもしれないですね。
そのくらいは、それで十分だと思いますけれどね。

弁護士、宇都宮健児
悪徳金融の事件に関わるようになったきっかけは若き日の苦い挫折にあった。
宇都宮は東京大学法学部にストレートで合格。
難関中の難関、司法試験にも在学中に合格するという秀才だった。
22歳で大学を中退し、異例の速さで弁護士の卵となり、希望に満ちたスタートだった。
鳴かず飛ばず
昭和46年、東京有楽町の法律事務所に入所する。
居候の弁護士、通称”イソ弁”として修業しながら自分の顧客を増やし、独立を目指した。
しかし宇都宮には社会人として必要なある能力が欠けていた。
宇都宮:
あんまり人付き合いが上手じゃないんですね。人脈をつくるっていうのがですね。
んー、今でもそんなに得意じゃないんですけれど、やや自分には不得手でね。
同期の多くは経営者が集まるゴルフコンペにこまめに参加。
親睦を深め顧問契約を取り付けていた。
しかし、人付き合いが苦手な宇都宮は営業活動ができなかった。
離婚や相続などの仕事を細々とこなしていた。
そんなある日、宇都宮は事務所のトップ、通商”ボス弁”に呼び出され、
「いつまでここにいるつもりだ。もうそろそろいいだろう」
事務所に居場所がなくなった。
収入の道を断たれた宇都宮は税理士などを養成する専門学校で講師をし食いつないだ。
その時31歳。
いったい自分は何をしているのだろう?と思った。
同期の弁護士たちは次々と独立を果たしていた。
50人の同期のうち、宇都宮だけが半人前のままだった。
宇都宮:
当時は本当に苦しかったですよね。
同僚はもう独立して、中には”イソ弁”さんをもう雇っているのもいる。
それからみんな輝いて、こちら側から見ると輝いて見えるわけですよね。
何とかしなければと、ある日東京弁護士会を尋ねた。
その時職員が言った。
「誰もやってくれない仕事がある、受けてくれないか」
サラ金の取り立てを止めて欲しいという依頼だった。
当時悪徳サラ金業者が社会問題となっていた。
夜逃げや自殺に追い込まれる人が相次いでいた。
仕事が無かった宇都宮はとりあえず引き受けた。
宇都宮:
5000円でも1万円でも、弁護士費用として払ってもらえると、
背に腹はかえられませんしね、少しでも収入になればという事で。
人生ってわからない
依頼者は中年のタクシー運転手だった。
生活苦のためサラ金数10社から借り入れを重ねていた。
厳しい取り立てに憔悴しきっていた。
宇都宮はサラ金の店舗に出向き直接交渉した。
「あなた方の利息は、法律に照らしても高すぎる。借金を減らして欲しい」
いきなり凄まれた。
夜道には気をつけろ
数日後、目つきの鋭い男が訪ねてきた。
話し始めた途端、キラッと光るものをちらつかせた。
「一切手を引け、それがいやならお前が払え」
逃げ出したかった、しかし、ようやく手にした仕事だ。引き下がれない。
宇都宮:
僕は、「和解、話しあうつもりが無いなら、弁護士というのは喧嘩は裁判でやりますから」
それで、席を蹴って帰っていって、
追い詰められた宇都宮は分厚い法律書を読み込み対策を考えた。
金利が違法に高いことを理由に、借金の減額を求める裁判を起こした。
意外なことが起こった。
相手が途端に和解を求めてきたのだ。
もともと違法な貸し付け、裁判になれば勝ち目はないと見たからだ。
宇都宮は150万円の利息を、法にのっとった金額で再計算。
2万円の支払いで和解を成立させた。
相談者は深々と頭を下げて言った。
「これで穏やかな暮らしが取り戻せます」
自分にもできる仕事がある。
弁護士宇都宮健児が歩き始めた瞬間だった。

住吉:これで穏やかな生活が取り戻せますって言われたら、ね、嬉しいですよね。
茂木:そういうときって、相談者の方はどういう表情をしているんですか?
宇都宮:
要するに私たちのところに来るまでは、もう着る物もボロボロだし
それからもう、目だけ充血していてですね、顔はげっそりしててですね、青白くなっているわけですよね。
だんだん、だんだん、その弁護士がつくことによって取り立てが和らぎますからね、
それで、赤みが差してくる。ふっくらしてくる。
住吉:依頼者の方の安堵した表情を見てどんな風に感じましたか?
宇都宮:
それまで私は12年間弁護士をやってたわけですけど、
いろんな事件をやってましたけど、離婚の問題とか相続の問題。
そういうところでは味わえない、あの…遣り甲斐って言うんですか
自分が頼りにされるっていうのはすごく遣り甲斐、張り合いがあることなんですね。
こういう自分でも頼りにしてもらえるっていうのがね。
茂木:
最近の研究って、人間の脳ってお金だとかそういうものだけじゃなくて、
人に頼られるとか、人に必要にされるということ自体も
報酬として嬉しいと思うという事が分かってきているんですけれども、
宇都宮さんはそういうふうな道を歩んできたんだなぁと、
で、最初からそれを目指したんじゃなくて、それに出会ったという、そういう事ですよね。
宇都宮:
ええ、
多分私がそういう事に出会う事が出来たのは、
かなり落ちこぼれの弁護士で、どうしようもなかったから。
もし私がかなり、そういう営業能力があってですね、目先の効く弁護士だったら、
早く独立してて、こういう事件はやれなかったと思うんですね。
住吉:最初の事務所をクビになった時というのはどんなお気持ちだったんですか?
宇都宮:
一つは「あんたはいらない」と言われた訳ですから、
まず、全人格を否定された。
それから展望が無いですよね。
だから、ま、くさってですね、喫茶店に入って、漫画ばっかり読んでいましたねw
住吉:そうなんですか
宇都宮:
モーニングとかねwwモーニングサービスを食べながらモーニング読んでてww
そこでいろいろ、弁護士としてやっていけるのか?とか、
どうしたらいいんだろう、ということでね、
ん・・・ま、くさった生活をずっとやってたっていう事ですよね。。
茂木:
宇都宮さんはたまたま天職を見つけた訳ですけど、
いろんな職業の人は結局突き詰めると「何のために働いているのか?」と
あるいは何のために働くのが理想だと思われますか?
宇都宮:
私自身非常に尊敬するのは自分の両親なんですよ。
山を切り開いて開拓して、農家で今はミカンを作ってるんですけどね、
黙々と畑を耕して、黙々とミカンを作っていてですね、
だけどそのおかげで私たちは学校にも行けて、こういう仕事のきっかけも得る事が出来たんですけど、
泣き言一つ言わないでね、黙々と土に向かっている。
親は、そんな自分の働く意味とかはほとんど言っていないです。
ただ子どもたちのため。
そういうところで黙々とね、働いていて、自然と格闘してですね、畑を作って、
そして子どもたちを育てたと、
それが立派な事なんですよ。
茂木:じゃもう、別に意味なんかなくてもとにかく働く。
宇都宮:
多分そうだと思いますね。
自分でまず、生活ができる事ですね。
あとプラスちょっとだけ、人のためになる事だったら、それはもう、上出来であってね、
茂木:仕事の目的なんか、プラスちょっとだけで良いっていう、
宇都宮:
そういうことですね。
それが、まず他人に迷惑をかけたりね、
他人を犠牲にしたり押しのけたりそういう事をしないで、ちゃんと自分が生活できればね、
これは立派な事なんですよね。
勝負
去年11月、東京霞が関。
3300万円の裁判費用を公的機関から借りて用意した。
宇都宮は大勝負に出ようとしていた。
取られた金を取り戻す。
標的は闇金融の帝王と呼ばれた、元山口組系五菱会の幹部達。
3年前に摘発され、隠し持っていた金を押収されている。
その額3億3000万円あまり。
この金を取り戻そうと考えたのだ。
押収された金はもとはと言えば被害者の金。
その返還を求め前代未聞の裁判をおこした。
宇都宮:
もともとこれは被害者の財産ですから、
被害者に返されて、被害者の救済にあてられてしかるべきだと思っていますので。
裁判の長期化を見越して周到な手も打った。
押収された金は東京地検が保管している。
今の法律では被告の刑が確定すると、本人に返還されてしまう恐れがある。
それを食い止めるために3300万円の補償金を打ち差し押さえを行った。
宇都宮:
放置しておけば、それがまた暴力団の闇金融の資金になってですね、被害を拡大しますからね、
誰かがやっぱりやらなければいけないですよね。
宇都宮が思い切った手段に出たのにはわけがある。
この日事務所に原告の被害者たちが集まった。
闇金融の罠にはまり、苦境に陥っている人たちだ。
裁判の原告は総勢175名。
被害者には多重債務がきっかけで、職を失ったり、家族との関係がめちゃくちゃになった人が少なくない。
取り返すのは単なる金ではない。
闇金融に狂わされてしまった人生を一からやり直すための金だ。
12月、裁判の準備が佳境に入った。
闇金融から被告たちへの金の流れがつかめる証拠集めだ。
その矢先だった。
もうひとつ押収された金を狙う存在が現れた。
東京国税局。
被告が税金を滞納していたため、押収された金のうちおよそ1億円を引き渡すよう求めてきたのだ。
このままでは見こんでいた金が取り戻せなくなる。
宇都宮は弁護士たちを集めた。
弁護士1:どんな申し入れをしても、新たな立法措置が無いと無理でしょ
弁護士2:なかなか国税は頭が固いんだけど、一応引き続き交渉するつもりだから
法律では複数の差し押さえが重なった場合、国が最優先される。
議論は行き詰った。
1時間後宇都宮がおもむろに口を開いた。「国税局に直談判する」
宇都宮:
あれ、持っていかれたら、仮差し押さえになっちゃうからね。
それで一回行かなきゃいけない。
何でもね、顔を合わせて持ち込まないとダメ。
電話一本じゃダメだし、文書もダメ。
向こうも人情があるから、場合によれば考慮してくれるのもあるしね。
法律の壁を直談判で越える。
宇都宮の眼の色が変わった。
宇都宮:
合理的には非常に難しい、針の穴を通すぐらいの。
ただ常識的に考えて、裁判をやればですね、被害者に返されるべき財産なんですから、
それを課税して持っていくというのは、やはり普通の人が考えてもちょっとおかしいんじゃないかな。
道は自分で作る
国税局への異例の申し入れの日が来た。
これまで宇都宮は誰もやらないことばかりやってきた。
とかく経済優先、弱者に厳しいこの国の仕組みを変えようと戦ってきた。
午後4時、東京国税局に乗り込んだ。
伝えることはただ一つ。
「あの金は被害者のかね。差し押さえは取り下げてほしい」
30分が過ぎた。
Q:いかがでしたか?
宇都宮:ま、一応提出はしてきましたけれど、国税の対応は固いですね、ええ。
国税局は首を縦に振らなかった。
「税の執行機関として法律にしたがって徴収を行う」それが答えだった。
心配で駆け付けた被害者も、言葉が無い。
宇都宮だけはいつも通り飄々(ひょうひょう)としていた。
突然、宇都宮が一人の弁護士を呼び寄せた。
宇都宮:
三上さんちょっと、
一回、地検の方にぜひ足運んで、国税に渡すなと。
出来るだけ粘ってくれと言ってね、少しおかしいと。
金はまだ東京地検が押さえている。
国税局に金を渡さないよう要請しようというのだ。
まだまだ手はある。
まだまだやりなおせる。
1月、宇都宮は会議を開き、さらなる対策を練った。
法律を改正し被災者を最優先にするよう国会に求めることを決めた。

宇都宮:優先的に被害者に配布するような制度をつくらなくてはいけないですよね。
宇都宮健児は今日も戦う。
敢然と、そして飄々と。
プロフェッショナルとは

宇都宮健児:
弱者のためにとことんやる人、徹底的にやっている人だろうと思いますけどね、
もう少しひろく考えれば、他人のために頑張れる、一生懸命仕事をやっている。
そういう事なんだろうと思いますけどね。
平成18年1月23日
東京地検は東京国税局に約1億円を引き渡した。
抜本的な法改正を目指し、宇都宮の闘いは続く
ーーー
「数々の修羅場踏み腹の据わった弱者の味方」
宇都宮けんじ氏インタビュー岩上安身11/15(書き出し)
日本弁護士連合会 会長宇都宮健児 会長声明文
2011年(平成23年)4月22日
「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明
全てが分かる「さよなら原発1000万人アクション」記者会見4名の内容文字起こし&声明文他
2011年9月6日
な、なんと( ゚д゚)ハッ!宇都宮健児さんのスピーチを私は去年の9月に文字起こししていました
ーーー
東京都民が前回の都知事選の間違いを二度と犯さないために~
宇都宮健児氏 都知事選出馬会見11/9(内容書き出し)
「原発の無い社会は人にやさしい社会だと思っております」
国会正門前11/11 宇都宮健児氏スピーチ(書き出し)
前半「東京を変えるキックオフ集会・前半」11/14
宇都宮けんじ・中山弁護士・松元ヒロ・雨宮処凛(内容書き出し)
後半「東京を変えるキックオフ集会・前半」11/14
宇都宮けんじ鎌田慧・落合恵子・佐高信・海渡雄一・山本太郎(内容書き出し)
宇都宮健児さんという方が東京都の都知事に立候補して下さるなんて、
いま、都民にだけ与えられたこの大きなチャンスを逃がしてはいけない。
今から5年半ぐらい前のNHKプロフェッショナルに
宇都宮健児さんが出ていらっしゃいました。
権力に屈することなく、前向きに。そして闘う。
ご本人は
「あんまり人付き合いや人脈をつくることが上手じゃない。」とおっしゃっていますが、
人々の方から勝手に宇都宮さんの方に集まって言っちゃっているように思えます。
不思議な方です。
この、穏やかな優しい笑顔の中に隠れた強さ。
それは
暴力団にも負けない!!ლ (。◕ˇε ˇ◕。ლ)
その2006年2月の放送をご紹介します。
プロフェッショナル 仕事の流儀
ヤミ金融に立ち向かう一人の弁護士の仕事を追う。
2006年2月7日放送 NHK
http://youtu.be/R4mCQoTbeZg
弁護士 宇都宮健児
ヤミ金融と闘う弁護士、宇都宮健児(この時 59歳)。
コラー!心臓えぐるぞこのクソババア!!オリャー!
ホームレスであふれかえる東京新宿中央公園
血管ぶち抜いてからお前心臓えぐりとったるわ!このクソババアが こりゃー!
悪徳金融の過酷な取り立てに耐えられず、家や職場から逃げてきた人が少なくない
一人の男が声をかけてまわっていた。
「法律相談やっています。
いつでも相談に乗りますから、安心して早く仕事を見つけてね」
このどこにでもいそうな小柄な男が、
数々の社会悪と戦ってきた凄腕弁護士だと、誰が気づくだろう。
豊田商事事件の被害者救済
地下鉄サリン事件損害賠償請求
振り込め詐欺の刑事告発

弁護士宇都宮健児
その名を聞けば暴力団もしり込みする。
闇金融の被害者:
悪徳業者が
「宇都宮って宇都宮健児じゃないだろうな?」って
「宇都宮健児先生です」って言ったら、
「それは相手が悪い」というように言ってきました。
今立ち向かうのは暴利を無さぶる闇金融
多重債務に苦しむ人々に宇都宮は語りかける。
「大丈夫、人生はやり直せる」

住吉美紀
プロフェッショナル仕事の流儀。
一流のプロの仕事の秘密とその人間に迫ります。
まず今日はこの小説、宮部みゆきの「火車」
読んだことありますか?
茂木健一郎
読みましたよ。
これは多重債務の過酷さを描いた迫真のベストセラーですよね。
住吉:
はい、今日のプロフェッショナルは、
この小説に登場する弁護士のモデルになった人物なんです。
弁護士の宇都宮健児さんです。
戦後の名だたる悪徳商法には必ずといっていいほどその名が出てきます。
豊田商事事件では中坊公平さんとともに被害者の救済に奔走。
地下鉄サリン事件では被害対策弁護団長としてオウム真理教を破産させ、被害者への賠償を実現しました。
今は多重債務者の救済に力を入れているという事ですね。
茂木:
そうですね、やっぱり相談してくる方っていうのはお金が無いわけですから、
報酬もそんなに期待できない訳ですよね。
今の世の中ね、お金が全てっていう中で、宇都宮さんは何故頑張れるんでしょうね?
人は何のために働くのか?という根源的な問いに今日は迫りたいと思います。
仕事の現場に流儀を見る
弁護士宇都宮健児は毎朝電車で銀座へ向かう。
事務所は築23年の雑居ビルにある。
事務所の中はまるでうなぎの寝床。
弁護士5人、事務員10人を抱える事務所のトップ、いわゆる”ボス弁”だ。
パソコンが苦手なお話ー略ー
他の弁護士に断られてここに来る人が多い
なかでも闇金融が目立つ。
10日で4割の不当な金利を要求する
出資法違反の犯罪行為だ。
そして始まるのは暴力的な取り立て。
「バカ野郎!コラ!血管引きちぎったるワ
年金の日が楽しみじゃのう、オマエ」
被害者は社会的に弱い立場の人の方が圧倒的に多い。
宇都宮:
低所得、それから失業、病気とかですね、それから中小零細の場合は事業資金ですね、
それを補うために借金だとか闇金融に手を出しちゃったと。
相談者がやってきた。都内に住む60代の男性。
病気がきっかけで失業生活費に充てようと闇金融に手を出した。
闇金融業者から20万円位借りたがたちまち返済に行き詰った。
他の弁護士を頼ったが取り合ってもらえずここに来た。
借金を重ねた事を宇都宮は決して責めない。
責めれば心を閉ざし解決が遠のく。
闇金融と対決する時、宇都宮には確固とした流儀がある。
日陰の交渉はしない
おもむろに1枚の紙を取り出した。
「受任通知書」
業者との交渉の全てを弁護士が肩代わりすることを通告する文書だ。
闇の金融業者を法律の力で陽のあたる場所へ引きずり出す。
これを送れば法律により債務者への直接の取り立てはできなくなる。
さらに借りた金は一切返さない。
逆に刑事告発し追い詰める。
法律にのっとり交渉すれば闇金融からの取り立ては無くなると宇都宮は言う。
儲けるなんて考えるな
多重債務の相談は金にはならない。
闇金融と1社交渉して料金は2万円。
それを月々5000円からの分割払いにしている。
宇都宮:
なんかいろいろと若い人たちが弁護士になって金儲けをなんて思っているけれど、
そういう人ならばね、企業の経営者になればいいんでね。
弁護士というのはそういう弱者のために仕事をするもの。
事務所の収支はとんとんだ。それでいいと思っている。
1年ほど前から宇都宮はホームレスの居る場所に出かけ、無料の法律相談を行っている。
闇金融の問題は解決できる。
それを知らずに人生を棒に振っている人があまりに多い。
一人の男性が近づいてきた。
この男性は取り立てに追われて家をすてた。
その後一度はやり直そうとしたが、すぐに業者に見つかり、再び路上生活に舞い戻ったという。
人生をやり直したいのにやり直せない。
この夜の気温は4度。
真冬の法律相談は2時間に及んだ。

住吉:
宇都宮健児さんにお越しいただきました。
お忙しい中ありがとうございます。
茂木:宇都宮さん、パソコン全然使えないんじゃ、仕事の上で困ることは無いですか?

宇都宮:
うーん、あった方が便利なのかもしれないんですけど、
私たちの世代は境目の世代で、覚えようとしたんですけどね、
やはり手書きでどんどん、事務員さんに、逆にメールを送ってもらうんです。
自分が送らなくって、その方が早いんでついつい。
茂木:
なんか銀座に事務所があるっていうのがちょっと意外な感じがしたんですけれど、
何故銀座になさったんですか?
宇都宮:
鋭い質問ですねw
あの、いろいろないきさつがありまして、
最初に事務員さんを見つけないと事務所が開けませんので、
それで事務員さんと面接をしたんですね、喫茶店で。
その事務員さんが、ま、女性なんですけど、「私銀座なら勤めます」って言われちゃったんですよ。
それで、私もえらいショックを受けましてね、
ああ、女性っていうのはそういうところで、どこに事務所があるかで勤務先を決めるように考えるのかと、
とても私がおっよびがつかなかった所でね、
考えてみたら多重債務者の事件というのは深刻で暗い事件ですから、
パッと明るい銀座でサラ金事件をやるのもいいんじゃないかと思って、
その事務員さんの勧めに従ってですね、銀座の今の入っている事務所の3階の部屋が開いていましたので、
それで銀座に決めたんです。
住吉:
このプロフェッシャルではプロの道具を見せていただいているんですけれど、
今日は大きな黒い鞄を…見せていただけますか?
宇都宮:かばんはいろんな記録が入っていて
住吉:大きいですね
ー藤沢周平さんと、山本周五郎さんの本等出てくる。
去年は50冊ぐらい読んだ。何を読んだか忘れないように読んだ本のリスト(原稿用紙の裏側)
手帳。
住吉:相談者の方にはすごく優しく話を聞いていましたよね
宇都宮:裏切られるのは覚悟しなければいけないです。
住吉:裏切られる?
宇都宮:
弁護士費用を払わなければいけない場合でも、
やっぱり人間は弱いから、取り立てが止まる、給料が全部貰えるとなると、
一杯飲みに行きたいというのもあるわけですよ。
給料をもらったら送金ができる筈なのにね、だけどそれを使っちゃったと、
それを素直にいえない人もいるわけです。
茂木:そんな時にはサジを投げたくなるような気持になりませんか?
宇都宮:
ええ、だからしょっちゅう。
給料袋を落としたとかね、何回もおとしている人もいますよ。次から次へと。
茂木:それでも見捨てないんですか?
宇都宮:
これは見捨てたら、ちょっとね他に行くところが無いですからね。
だから誓約書を何回も書いてね、
「もう2度と闇金融には手を出しません」という事を、
誓約書を2回も3回も書いて、でもまた来る人もいますけどね。
住吉:お金で困っている方を助けて、そして銀座で事務所っていうのは、経営は成立するんですか?
宇都宮:
5000円とか1万円でもそれを100人とか200人やれば、
毎月100万200万のお金が入るわけですから、
そういう事で、大量に、その・・w
小額の事件を沢山やることによって成り立っていけるようになったということですね。
茂木:
なんか、おそらく皆さんすごく興味があると思うんですけれども、
年収はズバリどれ位ですか?
宇都宮:年収はですね、一般の
だから最初はあれだったけれども、今は一般の弁護士ぐらいにはなっているんじゃないですかね。
住吉:っていうと、どのぐらいなんですか?
宇都宮:
なんか・・1000万は超えているかもしれないですね。
そのくらいは、それで十分だと思いますけれどね。

弁護士、宇都宮健児
悪徳金融の事件に関わるようになったきっかけは若き日の苦い挫折にあった。
宇都宮は東京大学法学部にストレートで合格。
難関中の難関、司法試験にも在学中に合格するという秀才だった。
22歳で大学を中退し、異例の速さで弁護士の卵となり、希望に満ちたスタートだった。
鳴かず飛ばず
昭和46年、東京有楽町の法律事務所に入所する。
居候の弁護士、通称”イソ弁”として修業しながら自分の顧客を増やし、独立を目指した。
しかし宇都宮には社会人として必要なある能力が欠けていた。
宇都宮:
あんまり人付き合いが上手じゃないんですね。人脈をつくるっていうのがですね。
んー、今でもそんなに得意じゃないんですけれど、やや自分には不得手でね。
同期の多くは経営者が集まるゴルフコンペにこまめに参加。
親睦を深め顧問契約を取り付けていた。
しかし、人付き合いが苦手な宇都宮は営業活動ができなかった。
離婚や相続などの仕事を細々とこなしていた。
そんなある日、宇都宮は事務所のトップ、通商”ボス弁”に呼び出され、
「いつまでここにいるつもりだ。もうそろそろいいだろう」
事務所に居場所がなくなった。
収入の道を断たれた宇都宮は税理士などを養成する専門学校で講師をし食いつないだ。
その時31歳。
いったい自分は何をしているのだろう?と思った。
同期の弁護士たちは次々と独立を果たしていた。
50人の同期のうち、宇都宮だけが半人前のままだった。
宇都宮:
当時は本当に苦しかったですよね。
同僚はもう独立して、中には”イソ弁”さんをもう雇っているのもいる。
それからみんな輝いて、こちら側から見ると輝いて見えるわけですよね。
何とかしなければと、ある日東京弁護士会を尋ねた。
その時職員が言った。
「誰もやってくれない仕事がある、受けてくれないか」
サラ金の取り立てを止めて欲しいという依頼だった。
当時悪徳サラ金業者が社会問題となっていた。
夜逃げや自殺に追い込まれる人が相次いでいた。
仕事が無かった宇都宮はとりあえず引き受けた。
宇都宮:
5000円でも1万円でも、弁護士費用として払ってもらえると、
背に腹はかえられませんしね、少しでも収入になればという事で。
人生ってわからない
依頼者は中年のタクシー運転手だった。
生活苦のためサラ金数10社から借り入れを重ねていた。
厳しい取り立てに憔悴しきっていた。
宇都宮はサラ金の店舗に出向き直接交渉した。
「あなた方の利息は、法律に照らしても高すぎる。借金を減らして欲しい」
いきなり凄まれた。
夜道には気をつけろ
数日後、目つきの鋭い男が訪ねてきた。
話し始めた途端、キラッと光るものをちらつかせた。
「一切手を引け、それがいやならお前が払え」
逃げ出したかった、しかし、ようやく手にした仕事だ。引き下がれない。
宇都宮:
僕は、「和解、話しあうつもりが無いなら、弁護士というのは喧嘩は裁判でやりますから」
それで、席を蹴って帰っていって、
追い詰められた宇都宮は分厚い法律書を読み込み対策を考えた。
金利が違法に高いことを理由に、借金の減額を求める裁判を起こした。
意外なことが起こった。
相手が途端に和解を求めてきたのだ。
もともと違法な貸し付け、裁判になれば勝ち目はないと見たからだ。
宇都宮は150万円の利息を、法にのっとった金額で再計算。
2万円の支払いで和解を成立させた。
相談者は深々と頭を下げて言った。
「これで穏やかな暮らしが取り戻せます」
自分にもできる仕事がある。
弁護士宇都宮健児が歩き始めた瞬間だった。

住吉:これで穏やかな生活が取り戻せますって言われたら、ね、嬉しいですよね。
茂木:そういうときって、相談者の方はどういう表情をしているんですか?
宇都宮:
要するに私たちのところに来るまでは、もう着る物もボロボロだし
それからもう、目だけ充血していてですね、顔はげっそりしててですね、青白くなっているわけですよね。
だんだん、だんだん、その弁護士がつくことによって取り立てが和らぎますからね、
それで、赤みが差してくる。ふっくらしてくる。
住吉:依頼者の方の安堵した表情を見てどんな風に感じましたか?
宇都宮:
それまで私は12年間弁護士をやってたわけですけど、
いろんな事件をやってましたけど、離婚の問題とか相続の問題。
そういうところでは味わえない、あの…遣り甲斐って言うんですか
自分が頼りにされるっていうのはすごく遣り甲斐、張り合いがあることなんですね。
こういう自分でも頼りにしてもらえるっていうのがね。
茂木:
最近の研究って、人間の脳ってお金だとかそういうものだけじゃなくて、
人に頼られるとか、人に必要にされるということ自体も
報酬として嬉しいと思うという事が分かってきているんですけれども、
宇都宮さんはそういうふうな道を歩んできたんだなぁと、
で、最初からそれを目指したんじゃなくて、それに出会ったという、そういう事ですよね。
宇都宮:
ええ、
多分私がそういう事に出会う事が出来たのは、
かなり落ちこぼれの弁護士で、どうしようもなかったから。
もし私がかなり、そういう営業能力があってですね、目先の効く弁護士だったら、
早く独立してて、こういう事件はやれなかったと思うんですね。
住吉:最初の事務所をクビになった時というのはどんなお気持ちだったんですか?
宇都宮:
一つは「あんたはいらない」と言われた訳ですから、
まず、全人格を否定された。
それから展望が無いですよね。
だから、ま、くさってですね、喫茶店に入って、漫画ばっかり読んでいましたねw
住吉:そうなんですか
宇都宮:
モーニングとかねwwモーニングサービスを食べながらモーニング読んでてww
そこでいろいろ、弁護士としてやっていけるのか?とか、
どうしたらいいんだろう、ということでね、
ん・・・ま、くさった生活をずっとやってたっていう事ですよね。。
茂木:
宇都宮さんはたまたま天職を見つけた訳ですけど、
いろんな職業の人は結局突き詰めると「何のために働いているのか?」と
あるいは何のために働くのが理想だと思われますか?
宇都宮:
私自身非常に尊敬するのは自分の両親なんですよ。
山を切り開いて開拓して、農家で今はミカンを作ってるんですけどね、
黙々と畑を耕して、黙々とミカンを作っていてですね、
だけどそのおかげで私たちは学校にも行けて、こういう仕事のきっかけも得る事が出来たんですけど、
泣き言一つ言わないでね、黙々と土に向かっている。
親は、そんな自分の働く意味とかはほとんど言っていないです。
ただ子どもたちのため。
そういうところで黙々とね、働いていて、自然と格闘してですね、畑を作って、
そして子どもたちを育てたと、
それが立派な事なんですよ。
茂木:じゃもう、別に意味なんかなくてもとにかく働く。
宇都宮:
多分そうだと思いますね。
自分でまず、生活ができる事ですね。
あとプラスちょっとだけ、人のためになる事だったら、それはもう、上出来であってね、
茂木:仕事の目的なんか、プラスちょっとだけで良いっていう、
宇都宮:
そういうことですね。
それが、まず他人に迷惑をかけたりね、
他人を犠牲にしたり押しのけたりそういう事をしないで、ちゃんと自分が生活できればね、
これは立派な事なんですよね。
勝負
去年11月、東京霞が関。
3300万円の裁判費用を公的機関から借りて用意した。
宇都宮は大勝負に出ようとしていた。
取られた金を取り戻す。
標的は闇金融の帝王と呼ばれた、元山口組系五菱会の幹部達。
3年前に摘発され、隠し持っていた金を押収されている。
その額3億3000万円あまり。
この金を取り戻そうと考えたのだ。
押収された金はもとはと言えば被害者の金。
その返還を求め前代未聞の裁判をおこした。
宇都宮:
もともとこれは被害者の財産ですから、
被害者に返されて、被害者の救済にあてられてしかるべきだと思っていますので。
裁判の長期化を見越して周到な手も打った。
押収された金は東京地検が保管している。
今の法律では被告の刑が確定すると、本人に返還されてしまう恐れがある。
それを食い止めるために3300万円の補償金を打ち差し押さえを行った。
宇都宮:
放置しておけば、それがまた暴力団の闇金融の資金になってですね、被害を拡大しますからね、
誰かがやっぱりやらなければいけないですよね。
宇都宮が思い切った手段に出たのにはわけがある。
この日事務所に原告の被害者たちが集まった。
闇金融の罠にはまり、苦境に陥っている人たちだ。
裁判の原告は総勢175名。
被害者には多重債務がきっかけで、職を失ったり、家族との関係がめちゃくちゃになった人が少なくない。
取り返すのは単なる金ではない。
闇金融に狂わされてしまった人生を一からやり直すための金だ。
12月、裁判の準備が佳境に入った。
闇金融から被告たちへの金の流れがつかめる証拠集めだ。
その矢先だった。
もうひとつ押収された金を狙う存在が現れた。
東京国税局。
被告が税金を滞納していたため、押収された金のうちおよそ1億円を引き渡すよう求めてきたのだ。
このままでは見こんでいた金が取り戻せなくなる。
宇都宮は弁護士たちを集めた。
弁護士1:どんな申し入れをしても、新たな立法措置が無いと無理でしょ
弁護士2:なかなか国税は頭が固いんだけど、一応引き続き交渉するつもりだから
法律では複数の差し押さえが重なった場合、国が最優先される。
議論は行き詰った。
1時間後宇都宮がおもむろに口を開いた。「国税局に直談判する」
宇都宮:
あれ、持っていかれたら、仮差し押さえになっちゃうからね。
それで一回行かなきゃいけない。
何でもね、顔を合わせて持ち込まないとダメ。
電話一本じゃダメだし、文書もダメ。
向こうも人情があるから、場合によれば考慮してくれるのもあるしね。
法律の壁を直談判で越える。
宇都宮の眼の色が変わった。
宇都宮:
合理的には非常に難しい、針の穴を通すぐらいの。
ただ常識的に考えて、裁判をやればですね、被害者に返されるべき財産なんですから、
それを課税して持っていくというのは、やはり普通の人が考えてもちょっとおかしいんじゃないかな。
道は自分で作る
国税局への異例の申し入れの日が来た。
これまで宇都宮は誰もやらないことばかりやってきた。
とかく経済優先、弱者に厳しいこの国の仕組みを変えようと戦ってきた。
午後4時、東京国税局に乗り込んだ。
伝えることはただ一つ。
「あの金は被害者のかね。差し押さえは取り下げてほしい」
30分が過ぎた。
Q:いかがでしたか?
宇都宮:ま、一応提出はしてきましたけれど、国税の対応は固いですね、ええ。
国税局は首を縦に振らなかった。
「税の執行機関として法律にしたがって徴収を行う」それが答えだった。
心配で駆け付けた被害者も、言葉が無い。
宇都宮だけはいつも通り飄々(ひょうひょう)としていた。
突然、宇都宮が一人の弁護士を呼び寄せた。
宇都宮:
三上さんちょっと、
一回、地検の方にぜひ足運んで、国税に渡すなと。
出来るだけ粘ってくれと言ってね、少しおかしいと。
金はまだ東京地検が押さえている。
国税局に金を渡さないよう要請しようというのだ。
まだまだ手はある。
まだまだやりなおせる。
1月、宇都宮は会議を開き、さらなる対策を練った。
法律を改正し被災者を最優先にするよう国会に求めることを決めた。

宇都宮:優先的に被害者に配布するような制度をつくらなくてはいけないですよね。
宇都宮健児は今日も戦う。
敢然と、そして飄々と。
プロフェッショナルとは

宇都宮健児:
弱者のためにとことんやる人、徹底的にやっている人だろうと思いますけどね、
もう少しひろく考えれば、他人のために頑張れる、一生懸命仕事をやっている。
そういう事なんだろうと思いますけどね。
平成18年1月23日
東京地検は東京国税局に約1億円を引き渡した。
抜本的な法改正を目指し、宇都宮の闘いは続く
ーーー
「数々の修羅場踏み腹の据わった弱者の味方」
宇都宮けんじ氏インタビュー岩上安身11/15(書き出し)
日本弁護士連合会 会長宇都宮健児 会長声明文
2011年(平成23年)4月22日
「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明
全てが分かる「さよなら原発1000万人アクション」記者会見4名の内容文字起こし&声明文他
2011年9月6日
な、なんと( ゚д゚)ハッ!宇都宮健児さんのスピーチを私は去年の9月に文字起こししていました
ーーー
東京都民が前回の都知事選の間違いを二度と犯さないために~
宇都宮健児氏 都知事選出馬会見11/9(内容書き出し)
「原発の無い社会は人にやさしい社会だと思っております」
国会正門前11/11 宇都宮健児氏スピーチ(書き出し)
前半「東京を変えるキックオフ集会・前半」11/14
宇都宮けんじ・中山弁護士・松元ヒロ・雨宮処凛(内容書き出し)
後半「東京を変えるキックオフ集会・前半」11/14
宇都宮けんじ鎌田慧・落合恵子・佐高信・海渡雄一・山本太郎(内容書き出し)
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- 日本弁護士連合会 会長宇都宮健児 会長声明文
コメント
きーこさん、今回も本当にありがとうございました。
今まで、弁護士にはあまり良い印象を持っていなかったんですが、こんな弁護士さんもいるんですね〜。
宇都宮健児さんのことを知れば知る程、東京都知事に是非、是非なって欲しい!って思います。
今まで、弁護士にはあまり良い印象を持っていなかったんですが、こんな弁護士さんもいるんですね〜。
宇都宮健児さんのことを知れば知る程、東京都知事に是非、是非なって欲しい!って思います。
雪 | 2012.11.16 14:53 | 編集
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| 2012.11.16 21:58 | 編集