台湾・先住民の島に放射性廃棄物
見過ごされた危機 台湾の孤島で
見過ごされた危機_台湾の孤島で_報道特集20121124 投稿者 gomizeromirai
2012年11月24日放送 TBS 報道特集

天然資源に乏しく海に囲まれた地震多発地帯
日本と極めて似た環境にある台湾は、
エネルギーや原発政策についても日本と同じような道を歩んできました。
放射性廃棄物の問題も例外ではありません。
長年核のゴミを、言わば押し付けられてきた台湾の沖に浮かぶ小さな島を取材しました。

台湾本島から南方80kmの沖合に浮かぶ蘭嶼島。
広さ48平方km伊豆七島の一つ三宅島よりも一回り小さな島に、
およそ3000人の先住民“タオ族”が伝統文化を守りながら暮らしている。
だが、この島の南側に、今から30年前放射性廃棄物の貯蔵時絶がつくられて以降
健康被害を訴える声が相次いでいる。
島民:叔父はその施設で何年か働いて、39か40歳で胃癌で死んだ。
この女性は1995年、甲状腺がんの手術を受けた。
甲状腺がんは放射線の影響で発病する可能性が指摘されている。
Q:蘭嶼島には甲状腺がん患者が多い?

甲状腺がんになった女性:
ええ、何人もいます。近所にも知っているだけで3人もいます。
癌と貯蔵施設との関係について、誰かに調べてもらって明らかにしてほしいです。
私たちに教えて欲しいのです。

この緑色の建物が放射性廃棄物の貯蔵庫だ。
東京ドーム2.5個分の敷地に23棟並んでいる。

貯蔵庫の高さは1.5m
地下は3m掘られ、1996年に搬入中止となるまでの14年間で、
10万個に及ぶドラム缶が積み上げられた。

貯蔵庫の中を最近移したとされる写真だ。


多くのドラム缶が錆び、中身が出てしまったものもある。
30年に及ぶ保管でドラム缶が破損していたのだ。
この貯蔵施設はもともと一時保管のためのものだった。
近くに専用の船着き場をつくり、当初はここから海に運び投げ捨てる計画だった。

1950年代から70年代にかけ、アメリカが行っていた低レベル放射性廃棄物の海洋投棄。
台湾も同じように行おうとしたが、その後国際的に禁止となり、蘭嶼島の貯蔵施設に運ばれて行った。
台湾には3カ所に6基の原発がある。
総発電量の12%を占めるが、日本と同様放射性廃棄物の最終的な処分に苦慮している。
現在使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物はそれぞれの原発敷地内に置かれている。
一方、蘭嶼島に運び込まれたのは原発で使用した作業服や廃液、泥などの低レベル放射性廃棄物だ。
島民にはどんな施設をつくるのかさえ知らされなかったという。
島民:
“缶詰工場”を建てるから働らいてもらうとか言っていたけど、
こんなのをつくるなんて思いもよらなかった。
島の年寄りたちは言葉も分からず騙されたんだ。
先住民の島に押し付けられた放射性廃棄物。
台湾の先住民の調査を続ける文化人類学者、桜美林大学の中生教授はこれを問題視し、
東日本大震災の3か月前に論文を発表していた。

「蘭嶼島 津波の島に蓄積される核廃棄物」
中生氏は蘭嶼島に大きな津波が来る可能性があり、この貯蔵施設ごと破壊され、
ドラム缶から放射性物質が海に流れていくのではないか。
そして台湾方面からの黒潮に乗って、日本近海へ汚染が広がるのではないかと問題提起したのだ。

今年4月中生氏は調査団を結成した。
メンバーは、各分野のエキスパートだ。




台湾の津波に詳しい琉球大学の中村准教授。
放射線測定の専門家首都大学東京の加藤準教授。
そして、医師で桜美林大学の渡辺教授だった。
8月末、いよいよ蘭嶼島での調査が始まった。
放射性廃棄物の貯蔵施設は大丈夫なのか?
今年8月台湾の蘭嶼島に日本の調査団が向かった。
津波が専門の中村氏は、対岸の各地を掘って地層調査を行った。
中村衡准教授 琉球大学:
化石を見て、沖の方からる波が来たのかどうかを判断します。
そういう事で、何時ぐらいに大きな波が来たかを知れると思います。
この島の先住民“タオ族”は固有の文字を持たないため、津波に対する古い文献が残っていない。
だが、過去に大きな津波が発生し、今後も10mを超える津波が来る可能性があるという。
実は1771年、沖縄八重山諸島沖の地震では大津波が発生。
最大30mにも達し、当時石垣島の島民の半数が死亡、行方不明となったのだ。

そして中村氏はこの地層を発見した。
貝殻を年代測定すると、蘭嶼島に700年間で3回の津波が来た可能性があることが分かった。
次に中村氏が訪れたのは、貯蔵施設の目の前にある防波堤だった。

中村:
これ完全に入っちゃいますね。あ、結構奥まで行きますね、ほとんど全部いっちゃいました。
こういうところから波が入って、巣があるから中を侵食しますから、
頻繁にやるとこういうのがやっぱり劣化のもとになります。
これ、取れますけど。
やっぱりこれは土ですね。
Q:全体的に倒れてしまう?
中村:倒れるか、ま、中のものが抜けて壁が崩れるかですね。
防波堤は海抜9mの道に、およそ2mの高さで設置されているが、
これを乗り越える大津波が来る可能性は否定できない。

島の港にもこれと似た防波堤があり、8月末の台風で崩れていた。
放射線測定の専門家、加藤氏は、まず貯蔵施設の脇にやってきた。
施設の周りで測定すると、
加藤:
0.03マイクロシーベルト/hですね。
0.04ぐらいです。
今までの東京と同じという形ですね。
Q:問題はなさそう?
加藤:問題は今のところはなさそうですね。
国際放射線防護委員会は一般人の平常時の被ばく許容限度を年間1ミリシーベルトと勧告している。
1時間なら0.11マイクロシーベルトに相当するが、それを下回る値だ。
だが、この貯蔵施設について、加藤氏は別の事が心配になった。
加藤:
岩が落ちて直撃する可能性がありますよね。
そしたらドラム缶なんてひとたまりもないですよね。
Q:あれだけ切り立っているわけですからね。


加藤:
ちょっと危ないんじゃないのかな。
立地条件として、そのまま谷沿いで、きちゃいますよね、こちら側に。
崖の下にある、この貯蔵施設の天井と壁は、厚さ35cmのコンクリートで覆われている。
しかし、がけ崩れや、巨大な岩の落下があれば
施設が破壊され、放射性物質が海に漏れだすのではないかと考えたのだ。
加藤氏は海岸に出て施設の排水管にも入った。

加藤:
まだまだ奥はめちゃくちゃ深いですから、で、どんどんどんどん線量が上がっていきます。
で、確実にセシウムです。
0.15マイクロシーベルト/hです。
とにかく中に入っていけばいくほど濃度が上がってくると思いますね。
その後加藤氏は島の沿岸部500mごとに放射線測定を行った。
線量が上がったのはゴミ集積場の前だった。
家庭ゴミが集められる場所だというが、
加藤:
線量が2.35マイクロシーベルト/hですか。
島自体が0.02とか0.03とか、それぐらいしかないのに、
もう一気に100倍に。
何が入っているのかは分からないんですけれども。
意外にも線量がさらに上がったのは、島の南にある、貯蔵施設から最も離れた北部の集落だった。

加藤:瞬間ですけれども、50マイクロシーベルト/hですよ。
巡回地では、たびたび50マイクロを超えた。
場所によっては固定しても毎時7マイクロシーベルト。
年間換算すると、61ミリシーベルトだ。
日本で避難が望ましいとされる基準20ミリシーベルトを大きく上回った。
この地区には小学校もある。
朗島小学校校長:
毎時10マイクロシーベルトぐらいの放射線量を毎日浴びているとすると、
人体にはどのような影響があるのでしょうか?
加藤:
一番多いのは染色体異常ですね。白血病。
ヨウ素だとすれば甲状腺。
子どもは特にヨウ素は集積しやすいですから、
校長:
このような高い数値を見て、とても不安です。
自然環境の良いこの島に、あんな施設があってはいけないのです。
この高い線量について加藤氏は、貯蔵施設からの放射性物質のせいとは特定できず、
天然鉱物や、かつて夜光塗料に使われたラジウムによる可能性も捨てられないという。
医師で桜美林大学の渡辺教授は島民のアンケート調査を始めていた。
渡辺:私たちは生活と健康のかかわりを調べているんですね。
渡辺氏は島の医療関係者にも会った。
渡辺:癌で一番多いのはどこの部位のがんですか?
島の医療関係者:
癌は多いですね。
肺がん、甲状腺がん、口腔がん、少ないですが脳のがんもあります。
渡辺氏は貯蔵施設の元作業員にも話を聞いた。
この女性は現場の放射線管理はずさんだったと振り返る。

貯蔵施設の元作業員:
上司が放射線量の表示を勝手に調整して、
「ほら、大丈夫だろ。基準値には達していないよ」と言っていました。
でも私は見ました。
勝手に数値を直しているのを見たのです。
蘭嶼島調査の3日目。
調査団は施設の内部へと入った。
応対したのは池(チ)所長と台湾電力のアドバイザーを長年務めている輔仁大学の謝教授だった。
謝:まずこっちへ来てちょっと休んで下さい。
池國泰所長 台湾電力・蘭嶼貯蔵場
まずは津波対策について尋ねる。
台湾電力は東日本大震災の後、追加措置を検討したが必要ないと判断したという。
謝(しゃ)教授もこう述べた。
謝牧謙教授 輔仁大学:
石の塀がありますね、そこが大体11m(海抜)。
で、過去において一番高い津波が5.6mぐらいですね、うん。
Q:台湾では想定外の津波は来ないという事ですか?

謝:
問題はその想定がどういうふうに定義しているか。
過去の津波を無視したわけですね、福島の場合は。
台湾電力は津波やがけ崩れなど、さまざまな災害を想定した作りになっていると言う。
内部のドラム缶については、

池:
ドラム缶は鉄で作られているのでサビは避けられません。
鉄ですから、長い年月が経つとサビます。
だから、安全のために再包装、リパックしたのです。
台湾電力は多数のドラム缶が破損したため、
2007年から去年に掛け、ドラム缶10万個すべてを検査して詰め替えたという。
その過程で放射性物質の飛散はなかったのか?
池:
作業員が呼吸するための空気口には空気清浄システムが使われていましたが、
わずかな粒子が地面に落ちてそこに雨が降り、海辺に流された可能性があります。
一時的に線量が上がったが、島民の健康への影響はなく、
今後住民全員の健康調査を一層強化していくと強調した。
今月10日、中生氏と加藤氏は再び蘭嶼島を訪れた。
台湾の原子力委員会から共同調査の依頼があったのだ。
高い放射線量が計測されたあの集落で、あらためて測定を行うと、
103マイクロシーベルト/h
この前よりひどいね。
毎時100マイクロシーベルト以上の場所が新たに見つかった。
電信柱や建物の壁で線量が高くなるところも見つかり、
原因としてコンクリート汚染の可能性も浮上した。
コンクリートはセメントと砂や砂利を混ぜて作るが、
それらの材料が何らかの理由で放射性物質に汚染されていたかもしれないというのだ。

中生:
雨で降って来たならほかのものも同じように高くなっている筈だけども、
ここだけ高いから、やっぱり。74。
だが同じ場所で台湾電力や原子力委員会など、台湾側による測定では高い数値は出なかった。

謝:10倍ぐらい、これはちょっとおかしいですよ。
加藤氏によると、台湾側の測定器は「放射性物質の種類によって測らない設定」になっているという。
一方台湾側は「付近の電磁波による影響を受けた異常値ではないか?」と主張した。
今月11日、住民説明会が開かれた。
その場で島民の長年における貯蔵施設への不信感がふきだした。
島民:
あなた方はいつも隠ぺいしてきました。
どんな専門家だというのか。
30年間使ってきたあなた方の線量計はどうして日本の先生たちのと違うのか?
ちゃんと答えなさいよ。
島民:
あなた達は最初から最後までウソしか言っていない。
私たち島民にもうウソを言わないでくれ。
もう出ていってくれ!
島民:あなた達は汚染を認めないし、話しすら聞いてくれない。
島民:その施設が安全だというなら、自分の家に置けよ!
台湾電力側は会場を出るように言われて、席を立った。
中生氏は島民の代表に測定器を寄贈した。
今後も調査を行うとしている。

ーー
文化人類学だったり医師だったりと、研究の分野の異なる専門家たちが集まって、
チームとしてこういった調査をするというのは貴重な試みだと感じましたね。
そして、今回は日本の調査団が行っているんですけれども、
台湾の原発事情というのはどうなんですか?
日下部正樹:
簡単に言うと、90年代の民主化以前はですね、
国民党の一党独裁で本当に有無を言わせぬ原子力政策を進めてきていて、
蘭嶼島の人々が、その犠牲者なんですね。
ただ民主化以降はと言いますと二大政党の一つである民進党。
これは、完全に明確な反原発を打ち出していて、一つの大きなうねりになっているんですけれども、
こういう事もあって独裁時代のような強硬手段はとれなくなっているんですね。
こうした中、たとえば放射性廃棄物をめぐって処分に困ってですね、
北朝鮮に運ぶ計画とかもあったんですけれども、
これは国際的な非難を浴びて挫折しているんですけれどもね。
そして、福島の事故を受けてですね、
与党の国民党も稼働中の原発については2025年までに廃炉にする方針を決めているという事で、
まァ、脱原発の方向では多少台湾の方が進んでいるかな、という気はするんですけどね。
金平茂樹:
先程ね、このスタジオも震度4の地震がありましたでしょ。
やっぱり地震という事で言うと、台湾も日本も隣接していて地震国という、
そこでこう見えてくる放射性廃棄物の処理の問題って言うのは、
まるでね、日本の状況を二重写しにしてみているみたいで、
情報の隠ぺいとかですね、あるいは都合の悪いものをなによりも過疎地とか、島とか、
特に少数民族に人達に押し付けるという、差別の構造というのは、
見ていて非常にですね、他人事じゃないものを感じましたですね。
台湾南東部のとても美しい蘭嶼島が台湾電力の放射性廃棄物で汚された
/毎時67マイクロシーベルト
ーーー
最後の写真、台湾に寄贈した測定器(途中で日本の先生が測っていた測定器と同じもの)は、
ローソンが野菜や弁当を山盛りにして測定していた機械と一緒のものだという事を発見しましたww
食べて応援しよう~ローソンの場合~


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コメント
たしかに、このケースでは本来の用途に使っていますね。
台湾側の機械もIdintiFINDERというものでしょうか。名ドキュメンタリー「放射性廃棄物」において、ルアーグで市民監視団体が海岸で測るのに使用していたと思います。
しかし、モニタリングポストの不正といい、ごまかしは、よくないですね。人間というのは悪いものです。性善説がどんなに間違っているか、この1年半で痛感しました。でも全体では一部に過ぎなくても、善人でありたいものです。
台湾側の機械もIdintiFINDERというものでしょうか。名ドキュメンタリー「放射性廃棄物」において、ルアーグで市民監視団体が海岸で測るのに使用していたと思います。
しかし、モニタリングポストの不正といい、ごまかしは、よくないですね。人間というのは悪いものです。性善説がどんなに間違っているか、この1年半で痛感しました。でも全体では一部に過ぎなくても、善人でありたいものです。
ゆず | 2012.11.25 21:56 | 編集