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12.05
Wed
原発事故1年9ヶ月を小出裕章さんに聞く  
<前半>「わかりません。 人類が経験した”初めての事”なのです」
小出裕章さんに聞く 12/1愛川欽也パックイン・ニュース(内容書き出し)
   
via パックイン・ニュース kinkin.tv (20121201)


愛川欽也
ゲスト・小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
山田厚史(ジャーナリスト)
樋口恵子(評論家)
内田 誠(ジャーナリスト)
升味佐江子(弁護士)
横尾和博(社会評論家)

(※音声からの文字起こしですので、お名前が分からない所があります。)





愛川:
小出先生のお話を聞いていると、良くこの頃ね、選挙ももうすぐ始まりますが、
なんか、ちゃんと原子力安全委員会みたいなところが大丈夫って言って、
やるだけの事をやって安全性が確保できたら、「確保できる」って言っちゃうんですからね、
政治家ってひとは。
そしたら、「それは運転してもいいんじゃないか」っていう事を言っていますね。
小出先生から見て、これは福島で、ここはもう完全に使い物にならないけど、
あと51基ぐらい。
今2基しか動いていないんですけれどもね、これも強引に動かしたようですけれども、
これでその他は今止まっているんだけれども、動かしたいらしいんですよ。
そういった時にその人たちが、「まずますの安全性を確認した」という事を言うらしいんですけれど、
こういう話を聞いてて、小出さんが原子力の学者として見てらして、
どう思いますか?

小出:
この福島の原子力発電所も、彼らは「安全性を確認した」と言って動かしたのです
東京電力は「安全だ」と言ったし、
国も東京電力の主張を調べて「ちゃんと安全性を確認した」と言って許可を出した原子炉が、
今こういう状態になっているのです。


それと、そういう許可を出した人達と同じ人たち
私は原子力ムラと呼んできましたけれども、
そのムラというものが全く無傷のまま生き延びていまして、
組織はだいぶ名前が変わったりして今は原子力規制庁、原子力規制委員会とかになっていますけれども、
やっている人はみんな一緒なんですね。
その人たちがまた「安全性を確認して動かす」というような事を言っているのですけれども、
「みなさん、ちゃんと事実を見て下さい」と、私はまずはお願いしたいと思います。

ーー:
でも、先程の使用済み燃料の問題なんですけれども、
たとえば4号機というのは今非常に不安定な状況で、
「柱がついて大丈夫だ」って言っているけれども、グラッと来たら分からないですよね。
で、ちょうど3.11の後、年末かなんかにディスクローズされたんですけれども、
あの時に「一番大変なことが起こるようだったら、
首都圏の3~4000万人がみんな避難しなければいけない状況があったんだ」という事が、
12月ごろになって表に出てきたんですけれどもね、
今はもう「そういう状況になるという事は絶対にない」ような
安全になっているんですか、これ。
さっき伺ったらもう、ガラガラと使用済み燃料が落っこっちゃったらですね、
そうとうな事が起きるんじゃないかと思うんですけど、その辺はどうなんでしょうか?

小出:
もちろん起きるのです。
ですから去年の事故の直後に原子力を進めてきた人たちも
4号機の使用済み燃料プールが倒壊するような事になったら大変だという事に気がついて、
すぐに評価をしているのですね。

原子力委員会の近藤駿介さんという委員長を中心として評価をして、
もし4号機の使用済み燃料プールが倒壊するような事になれば、
燃料がまたそこで溶けて、膨大な放射性物質が噴出してきて、
東京も含めて、もう避難をせざるをえなくなる
という、
そういう報告を彼らが作ったのです。
その状況は今でも全く変わっていませんので、
もしそこにある使用済み燃料プールが、今でも毎日あるような余震で、
次に大きな余震が来て崩れ落ちるようなことになれば、もちろんその可能性はあるのです。

ただし、「運」なのです
要するに放射能が噴出してしまえばあとは風に乗って流れるだけなのであって、
風が太平洋に向かって流れてくれれは東京は助かるかもしれないし、
北風が吹いていれば東京がやられるという事になります。


ーー:
風に乗って流れていって、
実は原発の恩恵なんか何にも受けてなかった福島県の飯館村なんていう所が、
ほとんど全村帰れないような状況でいますね。
あれ、いったいいつになったら…
本当に「帰れる」と思ってみんな希望を持っていいんでしょうか?

小出:帰れません。

ーー:帰れませんですか。

小出:
今、日本の政府、あるいは原子力をこれまで進めてきた人、
そしてこれからも進めようとしている人達は、
「除染をすれば帰れる」というような事を言って、人々に幻想を持たせているのですが、
飯館村を含めて猛烈な汚染を今しています。
日本は法治国家と言われてきましたが、
その法治国家である日本がもし、自分が作った法律を守ろうとするのであれば、
「放射線の管理区域」という所に指定して、私のようなごくごく特殊な人しか入ってはいけない。
でも私のような特殊な人間が入っても、「水すら飲んではいけない」という、
そういう場所に指定しなければいけない汚染、それの10倍汚染しているんです。
飯館村などは。

到底帰れないと私は思いますし、
大変お気の毒で、私は言うのも辛いですけれども、
やはり「帰れない」という事をしっかりと国として伝えて、
早く飯館村が再建できる、
その場所ではない、残念ながらその場所ではないけれども、
コミュニティーごとどこかに移動して、そこに新たな飯館村をつくるという、
そういう作業を早く始めるべきだと私は思います。

愛川:
このね、そんなに危険な原発がまだあちこちにあって
で、おっしゃったように風の吹くままで、風が太平洋に向かって吹けば大丈夫だっていうような、
偶然の、なんか事を頼りに、
原発をあちこちでこれから動かしていくと、
その今の原子力が、規制委員会がOKとしたならばという事を言っているし、
私たちの頭の中でも「とりあえず俺のところは大丈夫だ」という事を言ってるんですね。
こういう事を言っている人たちに対して、やっぱり、
小出さんは、とんでもない奴だと思いませんか?

小出:
もちろん思います。
どこか町の小さな工場が、たとえば事故を超して毒物をどこかに流したというようなことになれば、
すぐに警察が踏み込んで、そこの人達を逮捕して、刑事罰でも何でも加える
と私は思いますけれども、
今はこの福島の事故が起きて、モーレツな放射能が東北地方、関東地方の広大なところに降り注いで、
人々を苦しめている。
それでも誰も処罰されないのですね。

東京電力の会長、社長、これまで原子力を進めてきた原子力委員会、原子力安全委員会、政府の人達、
誰一人として処罰もされない
と。
大変私は「不思議なことだ」とそれだけでも思いますし、
その人たちがいまだに原子力の実権を握っていて、
相変わらず「安全性を確認したら動かします」というような事を言っているわけで、
私の常識から言えば到底信じられない事が起きています。


ーー:
ちょっと戻るようで申しわけない、二つお聞きしたいんですけど、
4号機の使用済み燃料プールがもし崩壊した場合ですね、
1号機から3号機というのは今、
注水循環冷却なるもので、溶けたメルトダウンしたものを冷やして
水をまた回収するという事をやっていますよね。
これがいったいどうなるか?っていう事と、

それからもうひとつはさっき石棺というふうにおっしゃいましたけれど、
石棺をつくるという方針ではないですよね、今のところ。
それから地下ダムの問題もあって、
実際抑えるという事がいまの日本政府は正しい方向に向かっているのか?
という事についていかがですか?

小出:
4号機の使用済み燃料プールが倒壊した時に、
実際どういう事が起きるか?という事は、なかなか正確に予測できないのです。
でも本当にその使用済み燃料の中に含まれている放射性物質が全量出てくるような事になれば、
もちろんもう、福島原発の中に、敷地の中に人がとどまることはできませんから、
もう全員が撤退すると。
つまり1号機から3号機で今事故収束というか、
なんとか放射能が出てくる事を食い止めようとしている作業すらをすべて放棄するしかないと思います。
そうなればもう、放射能が出るに任せるという事になってしまうと思います。

それから石棺の事に関しては、
現在政府、あるいは東京電力が描いているやり方というのは、
私は先程「石棺をつくるだろう」と言ったのとはちょっと違うのです。
そのやり方というのは、まずは使用済み燃料プールの中の使用済み燃料は
とにかく安全な場所に移そうというのは、私と一緒
です。
多分、そのために10年あるいは20年かかると私は思います。
そのあとで彼らは、「溶け落ちてしまった炉心をまた掴み出したい」と言っているのです。
でも私は多分それはできないと思います。
それをやろうとすると猛烈なまた被ばくになってしまいますし、多分出来ない
で、出来ない以上は私は石棺をつくるしかないと、思っているわけですし、

いま内田さんがおっしゃって下さったように地下に遮水壁というものを張り巡らせて、
地下水と接触しないような事もやらなければならない
と思います。
でも政府の方はそうではなくて、とにかく全部掴み出すというのが政府の計画で、
それをもし、本当にやることになれば20年30年あるいは40年、
もっと長い時間が結局かかっていくだろうと思います。

愛川:
その掴み出して、小出さんは今「どこか安全なところにそれを」って、
その安全なところってどこですか?

小出:
ないんですね、それが。
少なくても、でも、そこの使用済み燃料プール4号機のは、
もう建物地震が崩れようとしているのですから、
まずそこからは出さなくてはいけないということになっているのですね。
手前の右下の方にあるのが共用の使用済み燃料プールという建屋なんですが、
そこにはまだ、建屋自身倒壊していないし、まだ少し健全な形のプールがありますので、
そこに多分、まずは移すことになると思います。

でも、最終的にこれから何十年何百年毒性が消えるまでに100万年という毒物ですので、
本当にどうする事が安全なのか?それすらが分からないということです。

愛川:
よく言うのがね、
日本はこうやって、じゃあ止めてもいいけれど、よその国はどんどん造っているじゃないかと、
そういう事なんだからこっちも造っていないとというような事を言う人達は、
そこに一体安全の根拠はどこへ行っちゃったのか
と、僕なんかは見ていると思います。
だけど普通の人は「そういう事なんだよね」で、そこで終わっちゃうんですね。
そういう所で終わっちゃうという事で、小出さんから見て、
やっぱり僕らはメディアから教わるわけですね。
こういうこと言っちゃなんだけど、日本の新聞とテレビとか見ていて、イライラしませんか?

小出:(笑)

愛川:ごめんなさいね。

小出:大変イライラします。

愛川:
あのね、僕もつくづく思うんですよ。
我々の知恵なんて本当にタカが知れているんで、
小出さんにお話を聞いて、もう…ですから1年ぐらいですかね、前に来てもらって、
その時から小出さんは、その前に来た時も大体同じ様な話しを聞かせてもらったんだけど、
つまりこれをどういうふうにして私たちは、これをなくすには、
ま、毎週金曜日には首相官邸の周りをね、大勢の人達が行進をして、意思表示はしているけれども、
最近は新聞には写真も載らなくなっちゃったけれど、
そういうのが実際にしかし本当の怖いんだぞっていうことを、
今まで安全で安くて怖くなくて、プルサーマルなんてもう一回使えるって、
何時までの使える燃料だなんて滅多にないよという事で騙され続けた私たちが、
この…目を覚ますには、
小出さんはそういう仕事をしていらっしゃらないんだけど、
どうしたらいいと思いますかね?
しょっちゅう小出さんにきてもらうしかないかな。

小出:
私はもちろん原子力の専門家として、自分の知り得た事をみなさんにお伝えするというのが
私の仕事だと思っていますので、
今日もこうやって愛川さんに呼んでいただいて大変ありがたい事だと思っています。
ただし、日本の報道全体で言えば、この場所が非常に特殊なのであって、
ジャーナリズム全体はこれまでも国家、あるいは経済界、大きな企業と一体になって、
原子力を進めるという事もやってきたわけですし、
原子力の持っている危険性なんていうものは一切報道しない。

大丈夫なんだ、いいもんだということでしかこなかったので、
私は大変これまでもイライラするというか悲しい思いで来ましたし、
「これからもきっとそうなんだろうな」と、半ば、半分諦めています。

ーー:
だけど確かにね、「運」次第なんですよね。
運が良ければ、本当にうまーく渡っていければ、
何もなくて取り出して20年かけて処理出来るかもわかりませんけれども、
そんな保証はないですよね。
ガラガラガラときて、4号機のところにある使用済み燃料が下に落ちただけで、
もう日本は事実上もう、政治的にもパニックになるのは間違いないでしょうね


小出:もちろん、そうですね。

ーー:そういうリスクと僕たちがいま隣合わせで生活しているっていう事じゃないですか。

小出:そうです
いまだにそうであって、事故が収束したわけでも何でもないという事は、
皆さん承知しておいていただかなければいけません。
そして仮に「崩れ落ちなかったのならいいのか?」と言えば、そうではないのです。
崩れ落ちなかったとしても放射能は消えずにそこにある。

どこかに移さなければならないし、
それを10万年100万年これから閉じ込め続けなければいけないというようなものを、
私たちがずーっと原子力を選択することでつくってきてしまったということなのです。

ーー:それは、福島だけじゃなくて、今出ている核のゴミもそうですよね。

小出:そうです。

ーー:
また原発から出たゴミも含めて地層処理としても
何万年も何十万年というリスクを負わなければいけないということ。

小出:
そうです。
これまでは原子力の電気が一番安いとか、これをやらなければ経済が立ち行かないとか言いながら、
50基を超えるような原子力発電所をつくってきてしまったわけですが、
それが今日までに生み出してきた核分裂生成物は、広島原爆がばら撒いた核分裂生成物の120万発分

愛川:120万発もつくったのか、

小出:
それをこれから10万年、100万年、どこかで閉じ込めなければいけないと、
享楽的な生活を何十年かしたかもしれませんけれども、
子子孫孫ゴミだけを押し付けるという事になる。


愛川:
それでね、これはもう地震でぶっ壊れちゃったんだけども、
そうじゃない奴でも、原子炉というもうつくっちゃったやつはね、
現にもうスタンバイしているわけです。
もう早く動かしたくてうずうずしている人たちがいっぱい居るんですね。
動かしたとして、普通にね、地震も無くて、風もそよがないで、寿命っていうのもあるでしょ?

小出:もちろんあります。

愛川:それはどのくらい?

小出:
40年だと思ってきたんですね。
ただ、要するに人類が経験した事のない機械を今動かしているわけで、
本当に何年持つか?は分からなかった。
とりあえず40年だろうと思ってやってきたわけですが、
たとえば敦賀とか美浜という原子力発電所は、すでにもう、42年経っているわけですね。
機械として動きそうだから、まだこれから10年、20年動かし続けたいという事で、
これまできていたのです。
で、福島の事故が起きて、やはりそれはまずいだろうという事で
「40年を限度にしよう」という案も出てはきていますけれども、
でも特例として、またさらに10年、20年の運転を認めてもいいというような事まで、
もうすでに言われているわけですから、
寿命はもっと長くされてしまう事もあると思います。

愛川:
ただ、原子炉ってのは、その、僕らが便利になっちゃっている車だとか汽車だとかなんだとかは、
事故があって、その事故がって、綺麗に片付いて、犠牲者は出ますけど、
そこで終わるんですね、一応。
コイツばっかりは終わりがないですね、これは。

小出:
そうです。
これはもう事故でたまたまこんな形になってしまっていて、
これから何10年何100年苦闘が続くのか、私にはわかりませんが、
事故を起こさなかったとしても、もう放射能まみれになってしまった原子炉がそこに残ってしまう

愛川:なにも言えなくなっちゃうね。

ーー:
原子炉の問題って、なんか経済性とかですね、安全保障とかそういう事で語られているんですけど、
倫理的にやっぱり、相当問題な、やっぱり装置ですよね

小出:
もちろん、安全性に問題があるからこそ原子力発電所だけは東京に建ってなかったんですね。
石原さんが「東京に建てる」とおっしゃっているけれども、
是非建てて欲しいと私は思います。

愛川:
本当ですね、だから私たちはやっぱりもう一回、こんなにね、なんか、
熱しやすく冷めやすい日本人ってよく言われますけど、
この原発だけはね、
とんでもないものをみなさんが作っちゃった。
造っちゃったんで、出来上がっちゃったものを、もう、本当の上手にあれしなかったら、
これ大変ですね、本当にね。

小出:
私たちの世代が、原子力なんていうものをやってしまったわけですから、
私たちの世代でなんとしても引導を渡したいと私は思います。


愛川:
わかりました。
また一つ小出さん出てきて下さいね、今日はどうもありがとうございました。





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愛川欽也



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comment 2
コメント
印籠ではなく引導ではないですか?
反反日 | 2012.12.05 23:33 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2012.12.06 02:51 | 編集
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