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小出裕章ジャーナル
2013年1月19日放送(ラジオフォーラム)
原子力発電にかかる費用と解決策のない使用済み核燃料の処理

石井彰:今夜も電話が繋がっています。小出さーん、こんばんは。
小出裕章:こんばんは。
小室等:今晩は小室等です。はじめまして、
小出:始めまして、お話できてうれしいです。
小室:こちらこそよろしくお願いいたします。

石井:
小出さん、先程ですね、小室さんから原発の費用の問題というのがお話しの中で出てきたんですが、
実際にはあんまり原発を動かすためだけには使われていないんではないかというのは、
それは本当でございますか?

小出:
安全装置の費用というのをどのように評価するのか?ということに関わってくると思いますが、
「原子力発電所は5重の壁に守られているから安全だ」というのが、
原子力を推進してきた人たちの宣伝の仕方でした。
でも私から考えると、5重の壁を作らなければ安全と言えないようなものなんだと、
むしろそのように私は受け止めています。

膨大な放射性物質を持っているが故に、
それを環境にまき散らさないためには何重もの壁を用意しておかなければ動く事が出来ないという、
そういう機械なのです。
もちろん費用もかかります。


小室:
パーセンテージとしてですね、どこからどこまでって線を引くのは科学的にもいろいろと、
そう簡単には行かないんでしょうけれども、
つまり燃料があって、燃料の原料があって、
そしてその原料のタービンを動かすために、タービンを動かすためには電力が必要であると、
その電力でもって、原子力発電所の燃料を何らかの形で云々、っていって、
タービンが回るっていうことみたいなんですけど、
そこの、その原理だけのことでかかる費用っていうのと、

小出:
はい、要するに原子力発電所も火力発電所も単なる湯沸かし装置なんです。
水を沸騰させて蒸気を噴出させて、タービンが回ればそれでいいのですが、
原子力発電所の場合には燃料がウランというもともと放射性物質ですし、
ウランを核分裂させてしまうと、放射能の量は1億倍に増えてしまいます。
そのためにそんな放射能をむき出しにはもちろん取り扱えませんので、
もう様々な安全のための道具を張りめぐらさないと、お湯を沸かすことすらが出来ないという、
そういう状態になっている訳です。



石井:
あの、小出さん、
もちろん実際にタービンを回していく、電力を作っていくということもさることながら、
原子力発電所に特有の問題としてですね、
いわゆる放射能のゴミ、廃棄物が出てきますよね。

小出:そうです。

石井:
いわゆる使用済み燃料をどうするか?ということについて、
私たちは何も考えないまんま、どんどん、どんどん原発を各地につくってきた。
これを今、陸上で保管するというプランが出てきているというニュースを最近見たんですけれども、
この事について小出さんはどのようにお考えですか?

小出:
はい、原子力というものを今私たちは使っているわけですが、
人間が一番初めに原子炉というものをつくったのは、1942年です。
マンハッタン計画という米国の原爆製造計画の中で、
「プルトニウムという原爆材料を作るためには原子炉をつくらなければいけない」
ということで初めてつくってきました。
それから数えるともうすでに70年経っています。
そして原子炉を動かしたその時から、
原子炉を動かしてしまえば核分裂生成物という放射能がどうしても出来てしまうし、
それを無毒化できなければ「大変なことになる」ということは、実はもうみんな知っていたのです。
そのために、1942年から、もう、放射能の無毒化の研究ということは始まって、
「いつか、何とか、科学が、してくれる」という事を、期待はしてきたのですが、
結局70年経っても放射能の無毒化ということは「出来ない」ということになってしまっています。

そうすると、
[無毒化できない限りはどこかに隔離して人々のところに出てこないようにする]
ということ以外にはもう成す手段が無いというところに私たちは今追い込まれているのです。

まァ、いろいろな手段が考えられまして、
「宇宙にロケットで打ち上げて捨てて来い」という話もありましたが、
ロケットは時々失敗して落っこってきてしまいますので、
それはやはり「出来ない」ということになりました。
他の手段としては「深い海の底に沈めてしまおう」という案や、
「南極に行って捨ててこよう」という案もありましたけれども、
海も南極も原子力の恩恵を受けた国だけのものではないと、やはりそれは「ダメだ」ということで、
国際条約ですでに禁止されてしまっています。

そうなるともうどこか、陸上で始末というか、保管を続けるしかない訳ですけれども、
きちっと保管をしようと思うと、大変なお金がかかってしまいますので、
今日本の原子力を推進してきた人たちは、
もう「地面の深い所に埋めてしまえば後はもういいだろう」という、そういう選択をしようとしているのです。

ただし、では埋めてしまって、何年間そこにじっとしていてくれたらいいか?というと、
10万年とか100万年、というのです。
そんな事を世界一の地震国で保障できるような土地は日本にはどこにもありませんので、
本当はやってはいけないのです。
しかし他の手段も無いし、もうどうにもならないということで、
そこに日本という国は追い込まれてきたのですが、

つい先日9月11日(2012年)に、日本の学者の国会ともいうべき日本学術会議という所が、
「やはり放射能のゴミを埋め捨てにするのは正しくない」という勧告を出しました。

そうなるともう、他に話す術が無い…という状態に今なってしまっていまして、
その少し前から原子力を推進してきた人たちは、
「日本で生みだした放射能のゴミをモンゴルにもっていって捨ててしまおう」という、
そんな案までもが出てきてしまっています。


小室:ひどいですね

小出:はい、本当にひどいことだと思っています。

石井:
いま原子力発電を止めたとしても、小出さん、最後の質問になりますが、
すでに今までに沢山の使用済み燃料が、いわゆる核のゴミが出ております。

小出:そうです。

石井:
これは、大変苦渋の選択ですが、小出さん。
どうしたらいいんでしょうか?
とりあえず、もう出てしまったものは。

小出:
はい、えーっとわたしはみなさんからそう問われるのですけれども、
申し訳ありませんけれども私も「わからない」のです。
私は「自分で分からない様なゴミは生んではいけない」と思いますので、
まず「即刻原子力は止めるべきだ」と、先ず第一に主張しています。

そしてでも、それだとしてもすでにつくってしまったゴミがあると。
その量は、広島原爆が生み出した核分裂生成物の120万発分すでにあるのです。
それをこれから10万年、100万年後の子子孫孫にまで
私たちが押し付けていかなければいけないという事になっているわけで、
私自身はなんとしてもそのゴミを無毒化したいと思っているのですが、
70年間苦闘して出来なかった事というのは、
「ほとんど出来ない」と、やはり受け止めざるを得ないと思います。

小室:小出先生、そんな事言わないで・・・それでも…、

小出:
はい、それでも何とかしたいと、私も思っていますし、
私たちの世代、せいぜい数10年という世代が、原子力に頼って、享楽的な生活を維持しようとしたわけで、
それが生み出したゴミというのは何としても私たちの世代で始末をつけるべきだと思いますので、
そのような研究を、今後もやはり続けなければいけないと思います。
私が生きている間にそれが出来るかどうかという事に関しては、
自信はありませんけれども、でも方策は探らなければいけないと思います。

石井:
あの、小出さんには沢山ですね、番組をお聴きの方の質問ですとか、
私たち、小室さんも僕もいろいろと聞きたい事はあるんですが、
毎週小出さんには電話に出ていただいてですね、一つづつ、お話を伺わせていただこうと思います。
末長くお付き合いください。

小出:
こちらこそ、貴重な機会を作っていただいてありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。

石井:よろしくお願いいたします、ありがとうございました。




ーーー


「今もう危ない事に直面しながら日々怯えて暮らしている筈なのにこの怯えなさは何なんだろう?」
小室等さん1/19ラジオフォーラム(内容書き出し)




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