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02.19
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“核のゴミ”はどこへ~検証・使用済み核燃料~


"核のゴミ"はどこへ ~検証・使用済み核燃料~ 投稿者 tvpickup
NHKスペシャル 2013.2.10。




使用済み核燃料 知られざる脅威
“核のゴミ”をどこに捨てるのか


EU、ヨーロッパ連合の研究施設。

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厚さ1mのガラスの向こう側、原子炉から取り出した使用済み核燃料です。
この中にプルトニウムなど極めて強い放射能をもつ物質が含まれています。

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研究者:
ガラスの中に入ったら、放射線量が数シーベルトというレベルですから、
被曝すれば、健康に深刻な影響が出て死に至るでしょう。


原発を稼働すれば必ず出てくる使用済み核燃料。

その巨大なリスクを突き付けたのが、東京電力福島第一原子力発電所の事故でした。
原子炉で次々とメルトダウンが起きる中、もうひとつの危機が迫っていたのです。
原子炉のすぐ近くのプールに貯蔵されていた使用済み核燃料です。
冷却装置が止まり水位が低下。
最悪の場合ここでもメルトダウンが起きる可能性があったのです。

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田中俊一委員長 原子力規制委員会:
今回の事故を踏まえると、
その、原子炉の上の方に使用済み燃料を沢山貯蔵して置くのはよくないというのは、これは明らかですから、

事故から2年。
今も各地のプールには使用済み燃料がおかれたままになっています。
今らに処理の方法は確立されず、最終的に捨てる場所も見つかっていません。


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溜まり続けたその量は全国で1万7000トン。
原発を再稼働すれば早いところはおよそ2年で満杯になってしまいます。

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行き場のない核のゴミをどうするのか?
引受先を決めないまま進めてきた原子力行政のツケで、今波紋が広がっています。

三村申吾知事 青森県:
おかしいでしょう、青森にもっていけば、置いておけば何とかなるんじゃないかって、
とてもとてもこれは話し合いの席じゃないよ。

今後の原発を考える上で避けて通れない使用済み核燃料と核のゴミの問題。
どう解決していくのか?
その道筋をさぐります。

“核のゴミ”はどこへ~検証・使用済み核燃料~
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伊東敏恵:
東京電力福島第一原子力発電所の事故からもうすぐ2年になります。
私は事故が起きるまで、
発電所の中にあれだけ大量の使用済み核燃料が保管されている事を知りませんでした。
自衛隊や消防が懸命に水をかけようとしているのを見て、
あらためてその危険性に気付き、「怖い」と思った事を覚えています。

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今すでにある使用済み核燃料の安全性をどう確保して、核のゴミとして処分していくのか?
ということはもう避けて通れない問題です。
今日は科学文化部の根元デスクとこの問題について考えます。

根元さん、そもそもなぜ危険な使用済みの核燃料があれだけ発電所の中に溜まっているんでしょうか?

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根元良弘:
はい、日本では使用済み核燃料は、ごみではなく資源とみなしていまして、
処理するまでの間原発の中で保管するというのが基本方針なんですけれども、
これがうまくいっていないんですね。
こちらで詳しく説明したいと思います。

日本の場合全国の原発から出た使用済み核燃料は
青森県の六ヶ所村にある、再処理工場に送ることになっています。
ここで再処理をして資源と、資源にならない核のゴミとに分別し、
核のゴミは最終処分するというのが日本が原発を始めた時からの決まりでした。

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伊東:ただこの最終処分する場所というのは日本ではまだ全く決まっていませんよね。

根元:
そうですね、はい。まだ候補地すら決まっていないんですね。
さらにその前の段階。
再処理工場もですね、一度も本格稼働をした事がありません。
その結果、
行き場を失った大量の使用済み核燃料が全国の原発に留め置かれるという状態が続いているのです。

伊東:この原子力発電というのは初めから半世紀ですよね。何故こういった状態が続いているのでしょうか?

根元:
原発を始めた時からですね、「必ず最終的に核のゴミは出る」という事は分かっていたんですが、
国も電力会社も、「原発を動かすこと」には熱心でも、核のゴミの問題に本気で向き合おうとせず、
問題を先送りしてきたという事だと思います。
そのツケがですね、おととしの原発事故の際に
使用済み核燃料のリスクとなって私たちの目の前に現れてきたんだと思います。

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伊東:
では、その使用済みの核燃料をプールに保管するリスク、
そして最大の課題、核のゴミの最終処分が何故すすまないのか?
その現実から見ていきます。

ーー

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去年、報道陣に初めて公開された福島第一原発4号機です。

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爆発で屋根がふく飛んだ原子炉建屋。

むき出しになっていたのは使用済核燃料の貯蔵プールです。

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原子炉から取り出された使用済み核燃料はその後数年間大量の熱を出し続けます。
そのため、建屋の中の貯蔵プールで冷やすことになっています。

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福島第一原発4号機に貯蔵されていた使用済み核燃料は250トン
事故直後電源が失われ、冷却水が送れなくなりました。


2011年3月17日
「今水を投下しました、今ヘリコプターが水を投下しました」

懸命の放水作業によって事なきを得ましたが、冷却が遅れれば、メルトダウンの恐れがありました。


去年(2012年)1月
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細野原発事故担当相(当時):
4号機のプールにそれ個を大きなダメージがあるというのは、最悪のシナリオに繋がりますので、
政府としても備えはしておくべきだという事は考えました。

当時政府が想定していた最悪のシナリオです。
事故6日目、4号機のプールの水位が下がり、使用済み核燃料が露出。
放射性物質の放出が始まります。
14日目、水が完全に干上がりメルトダウン。
原子炉のように格納容器に守られていないため、直接プールから大量の放射性物質が放出されます。
住民の移住が必要な汚染は原発から250kmの範囲に及ぶとされました。

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原発に溜まり続ける使用済み核燃料。
最終的に処分する場所はまだ決まっていません。

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処分のための研究だけが北海道で進められています。
核のゴミをどのように最終処分するのか?
国の計画では地下300mよりも深く埋めることになっています。
地上に影響が及ばないようにするためです。

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使用済み核燃料を再処理すると出る廃液。
わずかな時間で死に至るほどの極めて強い放射線を放ちます。

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この廃液をガラスと混ぜて固めたものがいわゆる核のゴミ。
放射能が問題ないというレベルに下がるまで数万年かかります。

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国が想定する最終処分場です。
核のゴミは張り巡らされたトンネルの下に入れます。
広さはおよそ10㎢、
2020年ごろまでに出る4万本を埋める計画です。

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この施設の目的はあくまでも研究で、核のごみを持ち込む事はありません。
地下水の流れや岩盤の強さを調べていますが、
数万年後の状況を正確に予測するのは困難です。


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あくまでも自然を相手にしている訳ですね、地下というのは
不確実性を出来るだけ小さくしていく訳です。
そういうことをやっているということですね。

最終処分場をどこにつくるのか?
その場所を探すのが原子力発電環境整備機構(NUMO・ニューモ)
国と電力会社がつくった組織です。

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核のゴミが増え続けることへの懸念から、
2000年、原発が稼働して34年経ってようやく設立されました。

NUMOは処分場の候補地に市町村が名乗りをあげるのを待つ公募制をとってきました。
公募に応じた自治体は建設の前に3段階の調査を受けます。
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それぞれの段階で交付金が用意され、
最初は20億円、次は70億円が支払われることが決まっています。
しかし、現在応募に応じている自治体はひとつもありません。


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山路亨理事長 原子力発電環境整備機構:
地域の方々の理解がなくてはなかなか成り立たちませんので、
地域の自主性をきちんと尊重して、えー、やっていくと。

自治体とのやりとりでどのような事が行われてきたのか?
NUMOは一切明らかにしていません。
私たちが調べた結果、少なくても15の市町村で応募の動きがあった事が分かりました。

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琵琶湖の北にある滋賀県旧余呉町もその一つです。

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ここで処分場誘致の話が持ち上がったのは8年前の事です。
当時の町長の畑野佐久郎さんは
応募をしたのは最初の調査だけで20億円受け取れると知ったからです。

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畑野佐久郎さん 元余呉町長:
財政が非常に苦しい貧乏な街というイメージをなんとか払しょくしたいという事もあって、
「いい話があるな」と思いました。


2006年10月、畑野さんは国とNUMOの担当者を招いて、住民に対する事前説明会を開きました。
説明会でのやり取りを録音したテープです。
NUMOと国の担当者は最終処分の安全性を説明しました。

NUMO:バリアを何重にも巻いて地層の中に埋める
経済産業省:十分な遮蔽がなされれば何ら人体に影響ない、そういうもの

説明会に参加した住民の一人、村上宣雄さんは
「安全だ」と繰り返す説明に違和感を抱いたと言います。

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村上さん:
日本で初めて余呉町にね、最終処分場を作りたいというふうに思っているんでしょうけれども、
一つ重要な問題はね、じゃぁ何故余呉なのか?と。
何とかしてでもね、余呉へ持ってこようとしている感じは強かったね。


住民からは反対意見が相次ぎました。
国とNUMOは応募するかどうかは地元の判断にゆだねるという立場です。
最後は畑野さんが一人で説得。
「財政を立て直すには交付金が必要だ」と訴えるしかありませんでした。

(説明会のテープ)
畑野元町長:やはり原子力に頼らざるを得ない。処分をしながらでもそこに、
住民:話が違う、聞いてる話をせないかん。
畑野:この方法に頼るしか、余呉町には方法がない。なにかあったら教えてほしいと私は思っています。
住民:そんな事身から出たサビじゃないか。
畑野:えぇっ?
住民:身から出たサビや!

住民の半数を上回る反対署名を突き付けられた畑野さん、応募を断念しました。

畑野佐久郎元余呉町長:
この調査を受け入れてでも財政を立て直して欲しい、余呉町を。
そしてこんなものも、道路もあれもつくって欲しいという意見にしたかったんやけどな。
そうはいかなかった。


福島第一原発の事故によって、住民による誘致活動が止まったところもあります。
長崎県の対馬です。

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誘致活動の中心となってきていた大石明徹さんです。
大きな雇用が生まれ、島の活性化につながると期待しました。

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高校を卒業したら90%が本土に行くんですよ、毎年毎年。

大石さん達は核のごみへの理解を広めようと実物大の看板を手作りしました。

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しかし、事故の後反発を招きかねないと取り外しました。

大石さん:
実際はあった方がいいんですよ、私は。
しかし世間の目を考えたらですね、言えないですよ。
もう積極的な言葉が、もう出てきませんね。

大石さん達が活動を始めたのは9年前。
NUMOに掛けあって、青森県六ケ所村への見学ツアーを実施。
延べ600人も送りだしてきました。
ツアーに参加した梅野博征さんです。
原子力施設が生みだす経済効果を目の当たりにして驚いたと言います。

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梅野さん
幼稚園でござる、小学校でござる、体育館でござる、図書館でござる、
私たちの街より田舎の町がよ、そんな立派な施設をもっているわけだから、
そりゃぁやっぱりうらやましい限りやったね。

誘致に前向きだった梅野さん。
福島第一原発の事故がその考えを一変させました。

梅野さん:
福島の事故があって初めて、
いわゆるその、放射性物質が怖いものだっていう事が改めて分かった
んですよね。
(誘致の話は)立ち消えになっていくじゃないの?

経済効果と引き換えの最終処分場受け入れ。
そのやり方が今問われ始めています。

去年開かれた国の原子力委員会。去年(2012年)9月

日本を代表する研究者の集まり、日本学術会議が最終処分場の選定のあり方について提言しました。

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日本学術会議のメンバー:
いわゆる原発マネーという形で埋め合わせて合意を調達する事に偏り過ぎていたのではないか。

これまでの姿勢を改め交付金に頼るやりかたを見直すべきだと指摘したのです。

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日本学術会議のメンバー:
交付金みたいな形で便益供与をするという政策手段をとってきましたけれども、
処分地を決めようとすると、かえって問題解決を紛糾させて逆効果になる。


国は選定の在り方について見直すと明言しましたが、具体的な方針はまだ示していません。



伊東:先ずは交付金ありきの候補地選びが、かえって住民の不信をかって、進んでいなかったんですね。

根元:
そうですね、
国は自治体に関心を持ってもらわなければ始まらないとして、
この交付金の制度を作ったんですけれども、もくろみどおりにはいかなかったという事なんです。
原発事故の後、最終処分場の候補地選びというものがより一層困難さを増しています。
「地震国日本で、本当に地下に埋めて処分できるのか?」と、
そういうふうに指摘する専門家もいるんですね。

しかし現在のところ他に有力な選択肢がないのも現実で、
最終処分場探しというのは最優先に取り組むべき課題だと思います。


伊東:あの、原発をもっている他の国というのはどうなっているんですか?



ーーーつづく


<3の2・海外の場合>“核のゴミ”はどこへ~検証・使用済み核燃料~(内容書き出し)


<3の3・なぜ再処理>“核のゴミ”はどこへ~検証・使用済み核燃料~(内容書き出し)




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