ラジオフォーラム
小出裕章ジャーナル
■放送開始 2013年3月9日(土)~
■Web公開日 2013年3月15日(金)
テーマ/世界が見えてくる「イラク戦争開戦から10年」
ゲスト/今井紀明さん(特定非営利活動法人D×P共同代表)
パーソナリティ/西谷文和(ジャーナリスト)
西谷:
今日はですね、先生、ズバリ聞きたいんですが、
劣化ウランとはどんな物質なんでしょうか?
小出:
地底からウランを引きずり出してくると、
実はそのウランには2種類あるんです。
西谷:2種類ある、
小出:
それで一つが原子爆弾の原料になったり、原子力発電所の燃料になったりする
核分裂を起こす性質をもっているウラン、というものが一方にあるし、
もう一方に核分裂を起こさないで使い道がないという、そういうウランがあるのです。
核分裂するウランは235番と言う番号が付いていて、
天然のウランの中には0.7%という、大変微量な物しかないのです。
西谷:0.7%しかないんですか。
小出:
はい。
残りの99.3%は238番という番号のついた役立たずのウランなのです。
原爆を作ったり原子力発電所の燃料を作ったりする時には、
核分裂性のウランだけを集めてくるという、「濃縮」という作業をするのですが、
そうすると一方には
今度は核分裂性のウランが少なくなってしまったウランというものが残ってしまう訳です。
それが「劣化ウラン」です。
西谷:
「劣化」という名前なので、何か問題が無いのかな?と思うのですが、
この劣化ウランも人体には危険なんですか?
小出:
もちろん危険です。
ウランは235番も238番も放射能をもっていますので、
もともと超危険な毒物です。
西谷:
今おっしゃったように、地下深くからウランを掘ってきて、濃縮をするわけですよね。
これはやはり原子力発電所のためにという事でしょうか?
小出:
原爆を作るためにも濃縮はしなければいけませんし、
原始力電所の燃料を得る場合にも濃縮をしなければいけません。
西谷:たとえば広島型の原爆の場合、何%ぐらいまで濃縮したら…?
小出:
広島の原爆の場合には、おそらくですけれども、
90%を超えるまで核分裂性のウランを集めたと思います。
西谷:90%。
小出:はい。
西谷:普通の原子炉で燃えている濃縮ウランは何%なんですか?
小出:4%~5%ぐらいです。
西谷:と言う事は、同じ作業をして出来上がるものなんですね?
小出:そうです。
いずれにしても掘り出したウランの中から、核分裂をする性質をもっているウランを集めてくる。
つまり濃縮という作業を、いずれにしてもやらなければなりません。
西谷:
ここでですね、質問がきているんですけれども、
劣化ウラン弾は原発のために作られる中の核のゴミということなんですが、
小出:そうです。
西谷:
日本の原発で使われていたウランのために出た劣化ウラン。
それがイラクやアフガニスタンで使われているのでしょうか?という質問なんですが。
小出:
本当にどうなっているのか?という事は私にはよく分かりませんが、
原理的には使われていると思います。
日本の原子力発電所で使っているウラン、濃縮されたウランですけれども、
それをつくりだすために米国であるとか、一部の国で濃縮という作業をやってもらって、
日本に来ている訳ですが、
取り出してしまった劣化ウランが戦争の材料になったという事は充分あり得るし、
多分そうだろうと思います。
西谷:ああ、日本のためのウランもアメリカで濃縮している訳ですか
小出:そうです。
西谷:
それはもしかしたら私たちが使っている電気のために出た劣化ウランが、
イラクで使われた可能性があるという事ですね。
小出:もちろん、十分にあり得ると思います。
西谷:
戦争と原発というのは、バラバラに報道される場合が多いのですが、
先生、これ繋がっていますよね。
小出:
もちろんです、
初めから繋がっているのです。
全ての原理、ウランを核分裂させるというところから始まって、
ウランを燃料に使うという事も、核分裂させるという事ですね、
これが根本にあるわけで、
それが軍事的な目的に使うか、いわゆる平常時にエネルギー問題で使うか、
結局同じ事になります。
西谷:
もともとですね、この「地下深くに埋まっているウランを掘りだす」ということが、
なんか問題があるような気がするんですが、どうでしょうか?
小出:
もちろんです。
放射能は先程聞いていただいたように、必ず危険ですし、
ウランは放射能をもっていますので、
そのようなものを掘り出してきてしまえば、そこからもう被害が始まるという事になってしまいます。
西谷:
私もモンゴルに行ってどのウランの鉱山を見たんですけど、
やっぱり凄い放射能が出ていますし、
これ、地域の住民にとっても大変迷惑な話ですよね。
小出:
そうです。
大変不思議だと私はいつも思うのですが、
ウランが出る場所というのはここの場合もそうですし、オーストラリアの場合もそうですし、
ほとんどがいわゆる先住民という人たちの住んでいるところでして、
そういうところで先住民の人達が労働者として駆り出されて働いて被ばくをし、
そしてウランのゴミを投棄されてまた被ばくをするという歴史がずーっと続いています。
西谷:インドにも行かれたらしいですね、先生。
小出:はい、行きました。
西谷:やはりそこも少数民族の村でしたか?
小出:そうです。
昔からのインドの人達で、インド先住民で、
インドというのはカースト制度という、言ってみれば人種差別の厳しい国なのですが、
そのカースト制度にも入れない人はアンタッチャブルという不可触賎民と呼ばれる人たちですが、
そのアンタッチャブルにすらなれないという人たちがインドの先住民で、
そのような人たちがウラン採掘の被害を受けています。
西谷:
あのね、私もモンゴルに行った時に、
出てくるところが実はブリアード族という少数民族のところだったんです。
不思議ですね、先生ね、
何でそういうところに
小出:いや、そうなのです。もう、そんなところばっかりなのです、ウラン鉱山は。
西谷:
具体的にね、私は、日本の場合はオーストラリアのウランを購入していると、多くはね。
聞いた事があるんですが、
そのオーストラリアの天然ウランを日本が買ってアメリカにもっていく訳ですか?
小出:確か日本で使っているもののほとんどは米国で濃縮をしてもらっていると思います。
西谷:で、その出てきた劣化ウランがリサイクルされて、劣化ウラン弾になっている可能性があると。
小出:そうですね。
リサイクルというか、要するにもう使い道のないゴミなんですね。
それも放射能を持ったとても厄介なゴミなんですけれども、
それを米国という国は敵国に撃ち込んで人を殺して、敵国に捨ててくるという事をやっている訳です。
西谷:
こんな危険なものを戦争でも使うし、
それをこう、国際社会が止められないというのも、ねェ、ちょっと問題ですよね。
小出:
皆さん国際社会という言葉が大好きなようですけれども、
要するに国際社会というのは米国を中心とする力の強いものの社会という事ですね。
彼ら地震が劣化ウだんだんも使いたがっている訳ですから、
止められる道理がありません。
西谷:
わかりました。
今日は劣化ウランと原発と戦争の繋がりについて小出さんにお聞きしました。
小出さんどうもありがとうございました。
小出:いいえこちらこそありがとうございました。
原子力発電のゴミは劣化ウラン弾となり戦争の道具に使われる~犠牲になる子供たち~
ブログ初期の頃なので動画の文字起こしはしていません。
劣化ウラン弾の犠牲になった子どもたちの動画2つ紹介しています。
アメリカ女性兵【放射能=ガンだけじゃない】10年後の日本?ぶらぶら病 (内容書き出し)
イラク軍に放つための劣化ウラン弾で被ばくした女性アメリカ兵の証言。
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