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03.13
Wed
鎌仲ひとみ氏(映画監督)「内部被ばくについて」

キックオフイベント
「子どもたちを放射能から守るために信州でできること」

2013年3月9日    動画はこちら↓
http://www.ustream.tv/recorded/29842796



それで一つですね、
「喪失」って言うのが被ばくに伴って、なにか失ってしまうという、
ものすごく大きなものを失ってしまうという感覚が、私にはあるんですよ。

無題30915

それはイラクに行ったりですとか、世界中の放射能汚染地帯を取材したりとかして、
そして今回の福島の事とかを取材していると本当に感じる事は、
たとえば、
「地域そのものが、もう全部失われてしまう」とか、
「ゆっくりと健康が失われていく」とかですね、
それに私たちはどうやったらいいのかな?って言う事ですけど、
やっぱりすごく難しさがあるのが、
人間が、人間の五感の、
においをかいだり、肌で感じたり、目で見たり、そういう五感を超えた出来事なんですよね。

で、どの放射能汚染地帯に行っても、
みんな「気がつかなかった」って言うんですよ。

アメリカのハンフォードっていう核兵器工場の風下に、ものすごく沢山放射性物質がばら撒かれた時も、
そこに住んでいた農民たちは、「気がつかなかった」。
みんながすごく病気になっているというのは知っていたし、
自分たちの家族も次々と不思議な病気になったりしていくって。
でも、生活に追われて、それが被ばくのせいだとは思いもしなかった。

こういうのをね、「無自覚な被ばく」って言うんです。

被ばくは無自覚の進行するんです。
だから工夫しないといけないんですよね。
でも先程も言ったように広島・長崎で起きたあの被ばく、
人類で初めてのものすごく大量の数の人達が、被曝させられ殺されたあの事実が、
「いったいなんだったのか?」っていうのを一番考えなければいけなかったのは、私たち日本人なんですよね。

でも、たとえばあの原爆はひとりの人間を殺すために必要なエネルギーっていうか、
たとえばウルトラマンが、「ウルトラマンビーム」って、わけのわからない光を出して相手を倒しますよね。

で、一人の人間を殺してしまうために必要なエネルギーって、いったいどれくらいだろうか?と、
ピストルで撃つとか、ナイフで刺すとか、
でも原爆はひとりの人間を20万回殺せるようなエネルギーを出して、殺したんです。

ああいうのを過剰殺戮っていうんですよ。
だから、人間の肉体が消滅してしまった人たちもいたんですよね。

「あれはいったい何だったのか?」っていう事を私たち日本人はもっともっと考えたり話し合ったり、
教育の中で伝えたり、体験を継承して行ったりっていう、
そういう営みを続けていかなければいけない、そういう民族なんですよ。

だけどそういうのをしっかりとやってこなかったんですよね。
だから、そこに人間性が人間として踏みにじられたという事ももちろんあった。

その中身が、そういうころされ方をしたという事ではなく、
目に見えない被ばくをして生涯苦しんだのに、
社会的に「自分は被爆者だ」っていうと、就職差別だとか、結婚差別とかね。

それで身体がだるい、ものすごくだるくて働けない。
「怠け者だ」って言われたりね。
そういう理不尽な差別を受けるので、自分から積極的に「自分が被曝した」という事を
自分の被害を被害者として訴える事がかなわない社会
を私たちは作ってきてしまったんですね。

だから今福島で、
まさに今現在進行形で起きている事は、
「自分たちは汚染された」とか、
「自分たちは被曝させられた」というのは禁句なんです


そんな事絶対に言えないんですよ。

でもそれはものすごく深い人間の心理に根ざしているんですよね。
そんなこと言ったら、
自分で自分を否定してしまうとか、
自分の心が折れてしまうとか、
そういう…、でもそこを掘り下げ救済をするっていう事が、
やっぱり十分にあの体験から日本社会はやってこなかったそのツケが今出ていると思います。


「被爆者世界の終わりに」っていう映画から私は被曝問題を取り始めてもう13年経つんですけれども、
13年間この被ばくに関する映画だけを4本とってきたんですが、


えっと、これサッカーしている、イラクの子どもたちがサッカーしている。
世界中の子どもたちはサッカーして遊ぶし、福島でもサッカーしています。
子どもたちはグラウンドでサッカーをしています。

私がこの1998年に行ってショックだったのは、
子どもたちが外で遊ぶだけで被曝する」ということだった。
「そんな事…、あるのか!?」
でも今、日本ではそうなんですよね。

まさしく私たちが生きている日本で、同じ事が起きるようになってしまった。


でも、どうやって子どもを被ばくから守るか?っていう事を考えて前に進んでいかないと、
本当に子どもたちが救えないので、
今回この信州ネットが発足した事は本当に重要な事です。

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どうしたら守れるか?っていう事の具体策、
最善の策を考えて、みんなでこうすれば、
「どうしようもないんだ」じゃなくて、「こうすればいいんだ」というそういう具体策を提案して、
それをみんなで「あ、こうすればいいんだ」っていう事を共有していくっていう事が、大事だと思います。

まず一つは先程から言われている保養とかですね、避難したりとかですね、
本当に食品とかが安全かどうかを検査していくっていう事ですよね。
後は情報を開いていくんですよね。

先程マコさんがおっしゃった、どんだけ放射能が出ているか?
どれだけ、さっきは、あれは毎時でいいんですか?

毎時1000万ベクレル。

当然ですよ。
だってね、メルトダウンして放射性物質がこう、ダラダラッと溶けて、
そこにむき出しにあるそこに、
そこを冷やさないと、また爆発しちゃう。

それを冷やすために直接おだんごに、
放射性物質の熱い熱い熱い熱いおだんごに水をかけているだけなんです。
かければ水蒸気が出るんですよね。

で、放射性物質はある一定の熱で熱すると揮発性の物質になるんです。
つまり放射性物質が気体になっちゃうんですよ。

だからむき出しの放射性物質に、熱い熱いものに水をかければ蒸気になるのは当たり前で、
そこに何にも蓋をしてないんですよ。
で、2年経ったんですよ。

今度はですね、かけた水はもっと危険なんですね。
かけた水がダラダラ~っと、放射性物質を含みながら汚染水になって溝に入り、
溝から深いプールの方にためているんですよね。
それが汚染水です。
それをタンクに入れて原発の裏にずーーーっと溜めているんですけど、
ついにタンクが満杯になりました。

もうこれ以上溜められない。
だって、そんなのこれからいったいどれくらい続けるんですか。

で、東京電力は「もうこれは海に捨ててしまうしかしょうがない」と。
「しょうがない」と。
そっちの方が、こっちの方がですね、汚染の度合いは空中に出るよりも多いんです。
蒸気になって出るよりも、水をかけて直接触れたものから、
水の中に放射能を含んだ汚染水の方がもちろん危険ですよね。

それが海中に出て、気体に出て、
1000万ベクレルというのは相当大変な値です。

そしてですね、いま、空間線量はちょっと下がってきています。
だけど、やっぱり私たちはチェルノブイリに学ばなければならないので、
これからは空間線量の高さよりも、土壌汚染、食品の汚染が内部被ばくのカギになってきます。

だから、これはシュミレーションですごく大雑把な汚染地図なんですよね。

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これをもっと精密な土壌調査をして、汚染マップを作らなければ、具体的な対策を建てる事が出来ないし、
避難するにしてもどこから避難させたらいいのか?という事が分からないんですね。

先ほど原爆が同心円になりました。
あれは原爆だから、出てきた放射線は確かに同じ距離にいれば同じだけの放射線を浴びるんですけれど、

原発事故は、
放射性物質が放出されて、風向きによって濃いと薄いが出るんです。

その放射性物質を含んだ気体が飛んでいった時に、雪が降ったり雨が降ったりした時に、
空中にある放射性物質を、雨や雪が叩き落として地表に降りそそいだ。
それが残ってこういう土壌汚染になっているんですね。

でも気体はあったんですよ。
その気体が大事なんですよ。
えー、で、その気体が今も出ている訳なんですけど、


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ここはチェルノブイリの原発なんですが、
こんな広範囲にわたって汚染が広がったんですが、皆さんここでちょっと、よくよく見て下さい。

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この色の付いているところが汚染なんですけど、
でも、これは気体がどうやって拡散したのか?という、
この中は全部放射性物質が含まれています。
だからここにいる人達は呼吸によってこれを吸いこんでいました。

雨が降りました。雪が降りました。霧が出ました。
…っていうところだけがさっきの赤い色になっているんです。

だけど、この放射性物質を含んだ気体が通過したところにいた人達は、
呼吸器を通じて吸いこんじゃった。
呼吸器を通じた被ばくが起きているんですね。
で、ここに行った時に雪が降ったり、雨が降ったり、こういうふうに。

これはですね、非常に精密なシュミレーションなんですね。
フランスの原子力研究機関がつくったものなんですけど、
でもこういうことももちろん日本で起きたんですね。


それでどうなったか?というと、チェルノブイリの場合は、これはベラルーシなんですけど、
こういう原発の中心から離れた所にもすごく濃いところが沢山出来たし、
さっき言った、煙がぐるぐると回ったところで、土壌汚染が起きたのは、
雨が降ってその時に、雨が降ったこういうところなんですよ。

でも、こういう所に住んでいる人だけが被曝したのではないという証拠があるんですね。

これはベラルーシなんですけど、
ここはポーランドとの国境なんです。

無題031112

ここは600km離れています、600km。
で、ここは薄いんですよ、汚染が。
だからこれまではあんまり大したことはないと思われていたんですけど、
去年ここに取材しに行ったら、
26年経っても甲状腺チェックを毎年やっているんですね。

無題30920

そうするとこの方は29才なんですけど、
86年当時は3歳だった。
その時にあの気体を、吸いこんじゃったんですね。
だから、いますごい問題が出ているんですよ。

1986年事故当時、すでに生まれていた子どもは全てリスクを持っている。
っていうのがベラルーシとかウクライナの考え方です。
だから26年経ってもリスクは存在するという事で甲状腺医療検診を毎年やっているんですよ。
すごいGDPの低い国なんですけれども、日本よりももっともっと・・・
だって…確か…福島は2年に一回しか検査しないって、マコさんが言っているんですよね?
2年ですよね。

でもこうやってちょっと問題が見つかると半年に1回とか、
すごく丁寧に見守るいというか、そういう事をやっているんですね。

無題031113

で、この工場には3000人の女たちが働いていて、
この人達は本当に甲状腺が心配なので、この医療検診に必ず参加して、
たまたま、その工場にやって来てくれるので無料でやってくれる検診なんですね。
無料で、全員やるんですよ。
そういう意味では日本でだってですね、
この全域に住んでいる人たちの検診が必要です。
大人も必要かもしれない、ひょっとしたら。

10代、20代ぐらいまでやった方がいいんじゃないかな、と思います。

そしてですね、地域で食品検査をする事が日常的に行われています。
タダです。

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このジャガイモをこのおばさんが測ったら、7ベクレル位ありました。
みんな自分の家で作って、高いか低いかもわからずに食べるので、
すごい放射線量が上がっちゃったんですね。

で、10ベクレル食で子どもの7割に健康異常が出るという報告もあります

10ベクレル食を食べ続ける事によって、
体内にずーっと放射性物質があって出ていかないっていう状態に会って、
一定量がずーっとあるという状態が保たれると、
やっぱり健康リスクが高まるという事になるんですね。

で、この子はですね、ナスチャーちゃんなんですけど、
私の「内部被ばくを生き抜く」っていう映画に出てくる、スモールニコワさんっていうお医者さんの患者さんで、
生まれて…2歳位の時に子宮がんになっちゃったんですよ。

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それが転移して、大変だったんです。
今は手術をしてこうやって元気そうに見える。
で、同じ姉妹、同じ学校の友達は元気なんです。
こういう事が起きるんです。

放射能汚染を受けた場所に行くと、クラスの中で何人かが病気になるんです。
もちろん、全員が全員、すごく重大な病気になるわけではないけれども、
何人かはなる。なっています。

そうすると、「じゃあ今元気そうに見えるしいいんじゃないの?」と思うでしょ?

「甲状腺なんて命に別条ないよ」っていうんですよ、福島県立医大の人達は。
日本の甲状腺の専門家たちも、
「いやぁ、そんなに大した手術じゃないんだ」と。
「子ども時代に甲状腺を取ったって、ホルモン剤を飲めばいいんだ」と。
「副作用もないし、大したことない」ってみんな言うんですけど、

このナスチャーちゃんは、こうやって写真に写っている時は元気そうに見えますけど、
話をしてみると、「自分の子宮がもうない」「妊娠も出来ない」ということ。
自分の将来に対して、ものすごく深く絶望しているんです。

カウンセリングを受けたりとかですね、もうすごい精神的なケアが大変です。
そういう事が起きるんですよ。
本当はならなくてもいい病気なんですよね、本来であればね。

でもそれが放射線由来であるかどうか?っていうことが、
すごく証明するのが難しいんですよね。

これからどんな病気に、
今、福島にとどまり続けることでどんな病気になっても、
「それは放射線のせいではありませんよ」って言われる可能性は非常に高いですね。

だからなり損です。
だからこそ病気にならない工夫をしなくちゃならないんですよ。
やっぱり大切なのは、被ばくの●を身につけることだと思います。
なんなのか?
わかってる事はどこまで分かっているのか?
わかっていない事の方が多いんですけど、分かっている事を私たちが理解する。
そして、なにをすれば防げるのか?っていうことも理解する。
これがすごく大事ですし、

えー、今、起きている事態は複雑です。
ものすごく複雑で、単に医療問題でもないし、
地域全体の文化的社会的経済的問題なんですね。

だから先ほども佐藤さんがおっしゃったように、
一概に避難できない。
一概に除染したから住めるわけでもないし、
すごく複雑なんですよね。

それをやっぱり一つ一つ理解しなければいけないと私は思います。

だけど、その理解が進む前に、日本はそれを忘れようとしているんですよ。

忘却の波が。
なんかこう、「もう済んだ事だ」
そういう事にしないためにも、私はお母さんたちの苦悩を理解する必要があると思うんです、真っ先に。
「母親革命」というふうにこの映画の中で言っているんですけれども、
「移住」か「とどまるか」の二者択一ではない解決が必要なんですね。

そしてチェルノブイリ連帯基金の代表の鎌田さんは、
「もし福島にとどまるなら手打ち続ける必要がある」と。

無題031115

それは、移住や避難保養がベスト、いろんなセカンドベストがあると思うんですけれども、
でも、確実に福島にとどまり続ける子どもたちは存在し続けます。
その子たちを「避難しないから」ではなく、やっぱり手を打ち続ける。
何らかの最善の策を考え続けるっていう事を、外にいる私たちもしなくちゃいけない。

それはやっぱり、子どもを守ろうと苦闘するお母さん達と繋がるっていう事だと思うんですね。

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これは私の「内部被ばくを生き抜く」に出てくる佐々木るりさんで、息子の●君ですけれども、
本当に苦しんで悩んでいました。
だからそういう悩みを少しでも軽くするために、
そして子どもたちの健康のために、この信州ネット、出来る事が広がってきました。
皆さん是非、協力をお願いします。



本の宣伝をしてもいいですか?

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「ミツバチ革命が始まる」というのは、
私の13年間の映画をつくってきたことで気が付いた事を本にさせていただきました。


そしてこれは、福島大学の1年生と授業した本なんですけど、
これは信州ネットではないんですけど、
印税は全て、福島の子どもたちが広河さんの沖縄に行く費用に寄付しています。



そして、「今こそエネルギーシフト」飯田さんが書いた本なんですけど、
この印税も全て太陽光パネルを被災地に付けるお金に寄付していまして、
もう200万円を超えました。

みなさん、これを買っていただくだけで小さな貢献になりますので、
読んだらみんなで回してみていただくとかですね、

で、「内部被ばくを生き抜く」のビデオは上映権が付いていますので、
買っていただいた方は上映会を開く事が出来ます。
DVDご購入方法はこちら
ありがとうございます。




ーーー

<前半>
「市民が、自分たちの権利・人権というものを獲得するために運動しようと思うと…同じ手が使われます」
鎌仲ひとみ3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)



<1>「昼夜問わず放出してございます」おしどりマコ&ケン
3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)


<2>「ちょっと人数が多くないですか?」おしどりマコ&ケン
3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)



<3>「いろんなところに良い人と悪い人がいます」おしどりマコ&ケン
3/9子ども信州ネットキックオフイベント(内容書き出し)



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