ラジオフォーラム 第12回放送
■放送開始 2013年3月30日(土)~
■Web公開日 2013年4月5日(金)
■ゲスト 西谷文和(ジャーナリスト)
■パーソナリティ 石丸次郎(ジャーナリスト
小出裕章ジャーナル
IAEA「ビキニ環礁は永住に適さない」
西谷:
今日は核実験の事についてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、
今から59年前の1954年3月。
太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁でアメリカが水爆実験を行いましたね。
この時、いわゆる死の灰をかぶった、第5福竜丸の乗務員の久保山無線長が、
半年後に亡くなるという痛ましい事件になってしまいましたが、
この「死の灰」これはよく聞く用語なんですけれども、
どのように理解すればいいでしょうか?
小出:
はい。
ウランという物質を核分裂させるという事が原爆の原理ですし、
現在やっている原子力発電所の原理でもあるのです。
ウランをそうして核分裂させてしまいますと、
核分裂生成物という、およそ200種類に及ぶ放射性物質が出来てしまうのです。
で、もともとウラン自身が放射性物質ですので、危険なものなのですが、
それを核分裂すると、放射能の強さが約1億倍に膨らんでしまうという、
西谷:1億倍
小出:
はい、そういう現象なのです。
で、出来た核分裂生成物の中には、寿命が著しく短いものもありますし、
また長ーい寿命を持った放射性物質もあるのです。
それが原爆が爆発する、あるいは水爆の起爆にも原爆を使っているのですが、
原爆を爆発させてしまいますと、一気に大気中に噴き出してくる訳ですね。
で、短い寿命のものは被ばくをする人の所に届く前に消えてくれるものもあるわけですけれども、
久保山さん達が乗っていた第5福竜丸というのはビキニ環礁の、かなり、
100何十キロだったと思いますけれども、のところにいて、
そこまで「死の灰」いわゆる核分裂生成物が飛んでくるまで
それほど長い時間がかからないで降ってきてしまったわけです。
船の上で、もう逃げることもできませんので、
雪のように降ってきた放射性物質を浴びてしまって、そのまま汚れた船に乗ったま、
とにかく焼津まで逃げて帰ってきた訳ですけれども、
その間ずーっと被ばくをし続けてしまうという事になりました。
西谷:
なるほど。
この100数十キロ離れた第5福竜丸ですら、そうとうの「死の灰」をかぶったわけですけれども、
このビキニ環礁、当然アメリカ政府は汚れてしまう事が、
汚染されてしまう事を予想して、島民に離党させていました。
ところが元の島、住み家に帰りたいという人たちが70年代に139名が帰島をしています。
ところが健康不安があってですね、「ちゃんと調査をせよ」ということで、
98年にIAEAがビキニ環礁は
「定住してそこで得られる食料を摂ると、年間15ミリシーベルトに達するので永住に適さない」
という結論を出しているんですが、これは15ミリ。
ところが、福島の場合2011年4月に政府は計画的避難区域に指示をする基準をですね、
20ミリシーベルトに、年間積算線量を20ミリシーベルトを基準として出してきていましたけれども、
この20ミリシーベルト、…IAEAは「15ミリでも危ない」と言っている訳ですけれども、
「永住には適さない」と言っている訳ですけれども、
それを基準に考えた時、この20ミリというのはどのように考えたらいいですか?
小出:
もちろん適さないのです。
もともと日本というこの国では、
「普通の人々は1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてもいけないし、させてもいけない」
という法律があったのです。
何故かと言えば、被ばくをする事はあらゆる意味で危険で、
仮に1ミリシーベルトにとどまったとしても危険はある。
それでも「日本というこの国に住む以上はその程度の危険はをしなさい」ということで引かれた基準が
1年間に1ミリシーベルトというものだったのです。
ただ私はたとえば、京都大学原子炉実験所という職場で働いていまして、
もちろん放射能を取り扱ったりするわけですね。
それで給料も貰っていますので、私を雇っている側からすると、
「お前には給料をやっているのだから、被ばくは少しぐらい我慢をしろ」と言ってくる訳です。
そして私の1年間に被ばくをしていい、というか、それ以上は被ばくをしてはいけないという限度は、
1年間20ミリシーベルトなんです。
それから私のようなごくごく特殊な人間で、
「それを仕事にして給料をもらっているというような人間はその程度は諦めなさい」
として決められた基準なのです。
それを一般の人々に押し付けるというような事は、もう、到底許せないと私は思います。
北朝鮮「沢山の死人と先天性異常」
西谷:
それで、私は北朝鮮の取材をずっと続けている中でですね、
北朝鮮の内部の人達とよくインタビューを繰り返していると、
ま、軍の統制地域の傍、あるいはおそらく核関連施設の傍でですね、
あの、沢山の死人が出ているだとか、それから先天性異常の子どもが非常に多く生まれているという話を、
ま、不確かな部分もあるんですけれども、良く聞くんですよね。
核実験は武器としても非常に怖い一方でですね、
「北朝鮮という国で、ちゃんとした核物質管理がされているのか?」ということも非常に私はやっぱり怖いなと、
中に住んでいる人の立場、それから北朝鮮、朝鮮半島の大地が汚れるという事に、
非常に憂慮を感じるんですけれども、
あの、本題とちょっと離れますけれども、この北朝鮮の核実験について、
実験の報を聞かれてですね、小出さんはどういう印象、感想をお持ちになりましたか?
小出:
私は「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を持っているかどうか」というその事自身に疑いを持っています。
「核実験をした」というような事を言っている訳ですけれども、
それはむしろその朝鮮民主主義人民共和国の方から
「自分の国は強いんだぞ」ということを言いたいための宣伝である可能性もまだ私は残っていると思っています。
何故かというと、核兵器を作ろうとすると、プルトニウムという物質を分離しなくては行けなくて、
それが再処理と言われている工程なのです。
しかし、朝鮮民主主義人民共和国にはその再処理工場はないのです、まだ。
ですから基本的に私は、
「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を作る力がいまだにない筈だ」と私は思っているのです。
ただし、まぁ、「核実験をやった」と言っている訳ですし、
もしそうだとすれば、え…、大変不完全な形で再処理ということをやっている。
「工場もないの」にですね。
もともと再処理というのは膨大な危険を抱えている作業でして、
米国はハンフォードというところでやりましたが、
ハンフォード周辺は膨大な放射能汚染をしています。
ロシアも原爆を作るために再処理をやりまして、
チェリャビンスクというところでやったのですが、
そこも膨大な放射能汚染をしてしまっていて、周辺の住民に被害が出ています。
ですからどこでも原爆を作ろうとするようなところは、
環境を破壊しながら、人々に危害を加えながらやってきた訳です。
ましてや朝鮮民主主義人民共和国には再処理工場という正式なものが無い状態ですので、
そんなところで、もし再処理という作業を本当にしたのであれば、
環境が汚れることはもちろん避けることはできませんし、
周辺に被害が出ているということも頷けます。
西谷:
なるほど。
なかなか情報が出てこない国で、
だから故にですね、余計にその被害の広がりなんかが本当に心配になりますね。
小出:はい、そうです。
西谷:解りました。どうも小出さんありがとうございました。
ロシア チェリャビンスク
2013年2月15日現地時刻9時頃には重さ10トンと見られる隕石が落下。
1957年にチェリャビンスクから150キロメートル北西にあるオジョルスク市(秘密閉鎖都市のため、当時はチェリャビンスク-65と呼ばれた)のマヤーク核兵器工場で事故が発生し、3万人を越える住民が被曝した。
「北朝鮮に核兵器があるということはあり得ない」と思う理由~小出裕章ジャーナル6/29
ラジオフォーラム(文字起こし)
■放送開始 2013年3月30日(土)~
■Web公開日 2013年4月5日(金)
■ゲスト 西谷文和(ジャーナリスト)
■パーソナリティ 石丸次郎(ジャーナリスト
小出裕章ジャーナル
IAEA「ビキニ環礁は永住に適さない」
西谷:
今日は核実験の事についてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、
今から59年前の1954年3月。
太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁でアメリカが水爆実験を行いましたね。
この時、いわゆる死の灰をかぶった、第5福竜丸の乗務員の久保山無線長が、
半年後に亡くなるという痛ましい事件になってしまいましたが、
この「死の灰」これはよく聞く用語なんですけれども、
どのように理解すればいいでしょうか?
小出:
はい。
ウランという物質を核分裂させるという事が原爆の原理ですし、
現在やっている原子力発電所の原理でもあるのです。
ウランをそうして核分裂させてしまいますと、
核分裂生成物という、およそ200種類に及ぶ放射性物質が出来てしまうのです。
で、もともとウラン自身が放射性物質ですので、危険なものなのですが、
それを核分裂すると、放射能の強さが約1億倍に膨らんでしまうという、
西谷:1億倍
小出:
はい、そういう現象なのです。
で、出来た核分裂生成物の中には、寿命が著しく短いものもありますし、
また長ーい寿命を持った放射性物質もあるのです。
それが原爆が爆発する、あるいは水爆の起爆にも原爆を使っているのですが、
原爆を爆発させてしまいますと、一気に大気中に噴き出してくる訳ですね。
で、短い寿命のものは被ばくをする人の所に届く前に消えてくれるものもあるわけですけれども、
久保山さん達が乗っていた第5福竜丸というのはビキニ環礁の、かなり、
100何十キロだったと思いますけれども、のところにいて、
そこまで「死の灰」いわゆる核分裂生成物が飛んでくるまで
それほど長い時間がかからないで降ってきてしまったわけです。
船の上で、もう逃げることもできませんので、
雪のように降ってきた放射性物質を浴びてしまって、そのまま汚れた船に乗ったま、
とにかく焼津まで逃げて帰ってきた訳ですけれども、
その間ずーっと被ばくをし続けてしまうという事になりました。
西谷:
なるほど。
この100数十キロ離れた第5福竜丸ですら、そうとうの「死の灰」をかぶったわけですけれども、
このビキニ環礁、当然アメリカ政府は汚れてしまう事が、
汚染されてしまう事を予想して、島民に離党させていました。
ところが元の島、住み家に帰りたいという人たちが70年代に139名が帰島をしています。
ところが健康不安があってですね、「ちゃんと調査をせよ」ということで、
98年にIAEAがビキニ環礁は
「定住してそこで得られる食料を摂ると、年間15ミリシーベルトに達するので永住に適さない」
という結論を出しているんですが、これは15ミリ。
ところが、福島の場合2011年4月に政府は計画的避難区域に指示をする基準をですね、
20ミリシーベルトに、年間積算線量を20ミリシーベルトを基準として出してきていましたけれども、
この20ミリシーベルト、…IAEAは「15ミリでも危ない」と言っている訳ですけれども、
「永住には適さない」と言っている訳ですけれども、
それを基準に考えた時、この20ミリというのはどのように考えたらいいですか?
小出:
もちろん適さないのです。
もともと日本というこの国では、
「普通の人々は1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてもいけないし、させてもいけない」
という法律があったのです。
何故かと言えば、被ばくをする事はあらゆる意味で危険で、
仮に1ミリシーベルトにとどまったとしても危険はある。
それでも「日本というこの国に住む以上はその程度の危険はをしなさい」ということで引かれた基準が
1年間に1ミリシーベルトというものだったのです。
ただ私はたとえば、京都大学原子炉実験所という職場で働いていまして、
もちろん放射能を取り扱ったりするわけですね。
それで給料も貰っていますので、私を雇っている側からすると、
「お前には給料をやっているのだから、被ばくは少しぐらい我慢をしろ」と言ってくる訳です。
そして私の1年間に被ばくをしていい、というか、それ以上は被ばくをしてはいけないという限度は、
1年間20ミリシーベルトなんです。
それから私のようなごくごく特殊な人間で、
「それを仕事にして給料をもらっているというような人間はその程度は諦めなさい」
として決められた基準なのです。
それを一般の人々に押し付けるというような事は、もう、到底許せないと私は思います。
北朝鮮「沢山の死人と先天性異常」
西谷:
それで、私は北朝鮮の取材をずっと続けている中でですね、
北朝鮮の内部の人達とよくインタビューを繰り返していると、
ま、軍の統制地域の傍、あるいはおそらく核関連施設の傍でですね、
あの、沢山の死人が出ているだとか、それから先天性異常の子どもが非常に多く生まれているという話を、
ま、不確かな部分もあるんですけれども、良く聞くんですよね。
核実験は武器としても非常に怖い一方でですね、
「北朝鮮という国で、ちゃんとした核物質管理がされているのか?」ということも非常に私はやっぱり怖いなと、
中に住んでいる人の立場、それから北朝鮮、朝鮮半島の大地が汚れるという事に、
非常に憂慮を感じるんですけれども、
あの、本題とちょっと離れますけれども、この北朝鮮の核実験について、
実験の報を聞かれてですね、小出さんはどういう印象、感想をお持ちになりましたか?
小出:
私は「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を持っているかどうか」というその事自身に疑いを持っています。
「核実験をした」というような事を言っている訳ですけれども、
それはむしろその朝鮮民主主義人民共和国の方から
「自分の国は強いんだぞ」ということを言いたいための宣伝である可能性もまだ私は残っていると思っています。
何故かというと、核兵器を作ろうとすると、プルトニウムという物質を分離しなくては行けなくて、
それが再処理と言われている工程なのです。
しかし、朝鮮民主主義人民共和国にはその再処理工場はないのです、まだ。
ですから基本的に私は、
「朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を作る力がいまだにない筈だ」と私は思っているのです。
ただし、まぁ、「核実験をやった」と言っている訳ですし、
もしそうだとすれば、え…、大変不完全な形で再処理ということをやっている。
「工場もないの」にですね。
もともと再処理というのは膨大な危険を抱えている作業でして、
米国はハンフォードというところでやりましたが、
ハンフォード周辺は膨大な放射能汚染をしています。
ロシアも原爆を作るために再処理をやりまして、
チェリャビンスクというところでやったのですが、
そこも膨大な放射能汚染をしてしまっていて、周辺の住民に被害が出ています。
ですからどこでも原爆を作ろうとするようなところは、
環境を破壊しながら、人々に危害を加えながらやってきた訳です。
ましてや朝鮮民主主義人民共和国には再処理工場という正式なものが無い状態ですので、
そんなところで、もし再処理という作業を本当にしたのであれば、
環境が汚れることはもちろん避けることはできませんし、
周辺に被害が出ているということも頷けます。
西谷:
なるほど。
なかなか情報が出てこない国で、
だから故にですね、余計にその被害の広がりなんかが本当に心配になりますね。
小出:はい、そうです。
西谷:解りました。どうも小出さんありがとうございました。
ロシア チェリャビンスク
2013年2月15日現地時刻9時頃には重さ10トンと見られる隕石が落下。
1957年にチェリャビンスクから150キロメートル北西にあるオジョルスク市(秘密閉鎖都市のため、当時はチェリャビンスク-65と呼ばれた)のマヤーク核兵器工場で事故が発生し、3万人を越える住民が被曝した。
「北朝鮮に核兵器があるということはあり得ない」と思う理由~小出裕章ジャーナル6/29
ラジオフォーラム(文字起こし)
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