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「原子力発電の正しい名前は『海温め装置』」小出裕章ジャーナル4/6ラジオフォーラム(文字起こし)

ラジオフォーラム
放送開始日:2013年4月6日(土)~
Web公開日:2013年4月9日(火)
ゲスト:保坂展人さん(東京都・世田谷区長)
パーソナリティ:湯浅誠(社会活動家)


小出裕章ジャーナル


湯浅:
この番組には原発についての様々な質問が寄せられています。
中には「もっと原発の基本から学びたい」というリスナーの声も多くあります。
そこで今日は
「そもそも原子力発電とはどういうものなのか?」
「なぜ、原子力発電が危険なのか?」
あらためて考えてみたいと思います。

まず、原子力発電所と火力発電所の違い。
どちらも代表的な発電所と言われますが、
そもそもこの二つの違いというのはどういうことなのか?教えていただけますか。


小出:
どちらも電気を起こすという機械ですけれども、
もともと200年ほど前にジェームスワット達が蒸気機関というものを発明しました。
それまでは、例えば農業をやるためには家畜を使っていたし、
一部の贅沢をしたい人達は奴隷を使っていた訳ですけども、
蒸気機関というものが発明されてからは、
水を沸騰させて蒸気をつくる事が出来るなら、その蒸気の力で機械が動くと。
そうなれば家畜もいらないし、奴隷もいらないという、そういう時代になったのです。

発電ということもいわゆる蒸気機関でして、
噴出してくる蒸気でタービンという羽根車をまわして発電するという、
言ってみれば、200年も前からできている大変古めかしい装置なのです。

火力発電所の方は石炭、石油、天然ガスというような、いわゆる化石燃料を燃料に使いますし、
原子力発電所の場合にはウランというものを使う。というのが違いです。


湯浅:
どちらも蒸気でタービンを回して発電するというところは一緒だけども、
何を燃やして蒸気をつくるか?というところが化石燃料とウラン。
その違いだという事ですね。

小出:そうです。

湯浅:
だとすると、同じ蒸気でタービンを回すなら、
なぜ、原子力発電所だけは都会には決して作る事が出来ない、そういうものなんでしょうか?

小出:
それは燃料が違う。
つまり原子力発電ではウランというものを燃料にしているという事に由来しています。
ウランはもともと放射性物質で危険なものですけれども、
そのウランを核分裂という現象を起こさせてエネルギーを取り出そうとするのですが、
一度核分裂という現象を起こさせてしまいますと、
放射能の強さが1億倍にも増加するというような現象でして、

湯浅:1億倍ですか

小出:
1億倍です。
いわゆる核分裂生成物という放射性物質が大量にできてしまう。
だから原子力発電所だけは決して都会には造れない。という事になりました。
おまけに原子力発電所、先程聞いていただいたように、蒸気機関の一種なのですが、
大変効率の悪い蒸気機関でして、
発生させたエネルギーのうちたった3分の1しか電気にならない。
残りの3分の2はどこかに棄てなければ動く事が出来ない
という、そういうバカげた装置なのです。
棄てる場所が必要ですので、なかなか都会では出来ないということにもなりました。

湯浅:
なるほど。
その造られたエネルギーの電気のうちの、3分の1しか使えないと。
3分の2は棄てなきゃいけないと。

小出:そうです。

湯浅:どこに棄ててるんですか?

小出:
基本的には、日本の場合は海に棄てています。
棄てると言っても、じゃあどうやって棄てるのか?という事になりますけれども、
海水を発電所の敷地の中に引き込みまして、その海水に熱を棄てる。
つまり海水を温める。
そしてまた海に戻していくということで、
使えない、本当に無駄になってしまうエネルギーを棄てているのです。

湯浅:
うーん。
げんしりょく発電は作りだしているエネルギーの3分の2を
海を温めるために使っている
という事ですね。

小出:
そうです。
私に「原子力というものがどういうものか」という事を教えてくれた人。
私が、ま、数少ない先生と呼ぶ人の中に、
かつて東大の原子核研究所というところで働いていらっしゃった
水戸巌(みと いわお)さんという方がいらっしゃるのですが、その水戸さんがある時私に、
「皆さんが原子力発電所と呼んでいるものをそういう呼び方で呼ぶのは間違っている」と言いました。
「どうやって呼べばいいのかな?」と、私がふと思ったら彼が、
「あれは『海温め装置』と呼びなさい」と、私に教えてくれました。

湯浅:
確かにそうですよね。
3分の2海を温めているのに使っているんだったら、
作られている電気のメインの使い方は海を温めることで、
家庭とか、工場に電気を送サブの役割だっていう事ですね。



小出:
そうです、はい。
その事を私は水戸さんから教えてもらって、
「物事というのはちゃんとやっぱり見なければいけないのだな」という事を学びました。


湯浅:
なるほど。
それで現在日本には54基の原子力発電がある訳ですけれども、
どうして電力会社は、他の選択肢があるにもかかわらずですね、ここまで原発を進めてきたんですかね。


小出:
沢山の理由がありますけれども、
まず電力会社というのは会社ですから、「金儲けをする」という事が基本的な目的です。
そしてみなさん、たとえば何か物を買う時には、
あっちこっちの商店に行ってみたりしながら、自分の気に入った物を
そして少しでも安い物というのを選ぶと思うのですが、
電気の場合には選べないのです、消費者の側からは。
いわゆる地域独占という形になっていまして、電力会社を選ぶことが出来ない。
ではその時の電気代というのはどうやって決めるか?と言うと、
電気事業法という法律で決められているのです。
その電気事業法で、
いわゆる会社ですから必要経費はあるだろう。
その他にも会社ですから儲けも取るのは当然だ。と。

じゃあその儲けというのを一体どうやって決めるか?という事なのですが、
普通の企業であれば、自分の努力で儲けを。
電気の場合には法律でその儲けの仕方が書いてあるのですね。
それを私たちは「総括原価方式」と呼んでいますけれども、


湯浅:
総括原価方式
この間何度も話題になっていますね。


小出:
はい。
電力会社が持っている資産の何%分を毎年も受けてもよいというそのような決め方なのです。
そうすると、電力会社としては資産を持てば持つほど儲けが増えるという、
法律が保証してくれるという仕組みなんですね。
原子力発電所というのは1基つくると4000億円、5000億円という巨大な資産になるわけで、
つくってしまえばもう自動的に金もうけが出来るというシステムが法律的にできてしまっていていた。
ですから電力会社としては、原子力発電所が動こうとうと動かまいと何でもいい。
とにかく造ってしまえば金儲けが出来るという、そういう事になってしまいました。


湯浅:
先日、経産省の委員会でしたっけね、
7年後の発送電分離。
まぁ、自分で電力会社を選べるように、
この間の9つの電力会社の地域独占体制を変えていくんだというふうに答申を出したかと思うんですが、
小出さんはそれによって、今おっしゃられた様な課題が、いくらかでも変わるとお考えですか?


小出:
送電と配電ですか?
その分離をするという事が出来れば、原子力は絶対に潰れます。
ただ電気というのは人々が生きるためにかなり重要なインフラですので、
本当にどうする事が人々の幸せに繋がるかという事は十分に議論すべきことだと思います。
ただいずれにしても現在のように
原子力発電を造ればひたすら電力会社が儲かってしまうというようなことは、
やはり止めなければいけないと思います。

湯浅:はい、ありがとうございました。



ーーー

Wikipedia 水戸 巌
(みと いわお、1933年3月2日 - 1986年12月30日)より

「えこ&ぴーすActio」1252号(2007年9月25日)

何より温暖化対策を真剣に考えるのならば、膨大な温排水を出している原発こそ真っ先に停止すべきです。
100万キロワットの原発の原子炉の中では、300万キロワット分のエネルギーが出ています。
電気になっているのはたった3分の1で、残りの200万キロワット分のエネルギーは海に棄てています。

私の恩師である水戸巌さんは、
「原子力発電という名前は正しくない。正しい名前は『海温め装置』だ」と指摘されました。
私はこれを聞いて、目から鱗が落ちる思いがしました。
確かに原発のエネルギーの3分の2は海に棄てられ、海を温めているのですから
「海温め装置」と呼ぶのが正当です。

これは海の生物にとっては大迷惑な話です。
100万キロワットの原発1基は、1秒間に70トンの海水を7℃温めます。
東京の主要河川である荒川でも、1秒間に30-40トンの流量だと思います。
1基の原発は、荒川以上に巨大な川の水を7℃も温めて海に流しているのです。

日本にある55基の原発全体からは、1年間に1000億トンの温かい水が排出されます。
日本全土に降る雨の量は1年間で6500億トンで、そのうち川に流れるのは4000億トンです。
つまり原発は、毎年日本の川を流れる水の4分の1に相当する量を7℃温めて海に戻しているのです。

温暖化対策を真剣に考えるなら、炭酸ガスを問題にする前に
真っ先にこの「海温め装置」を止めるべきです。

(小出裕章)






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