fc2ブログ
04.13
Sat
【ペイフォワード環境情報教室】130410下地真樹先生Vol.024

2013年4月10日


Sawada:
今日は阪南大学準教授の下地真樹先生をお迎えしております。
下地先生は大阪市での震災がれき活動において説得力ある抗議活動で住民活動を支えています。

下地先生は昨年末大阪のデモで不当逮捕されてというような事がありましたが、
今般、同じく活動を共にされている方が釈放されたというニュースを私は見まして、
じつはもっともっと、
もうそんな方はいらっしゃらないのかなと思っていたんですけど、
まだまだ釈放されていない方もいるということもあるというのがありますが、
こんどぱおんさんという方ですね、しゃくほうされたということを聞いていますけど、
この経緯とかはいかがだったんでしょうか?

下地:
そうですね、ぱおんさんも順当に行けば、多分保釈されていないと思いますね。
今回保釈されたのは、警察と検察のやり方があまりにもひどくてですね、
彼女は持病があるんですけれども、
その持病に対して薬を一時処方してもらえないとか、
あるいは処方した薬の処方箋を見せてくれないという、そういう扱いを受けた事があります。
これは、些細なことでは全くなくて、
「何の薬か分からない薬を飲まされる」というのは、ま、普通の人は怖い事ですよね。
そういう、非常にひどい。
これは、憲法研究者のみなさんに検討してもらって、
これは憲法に記入されている拷問に当たる」という事で抗議の声明を出していただきました。
それも含めて参議院で院内集会なんかも開いて、
今回、ぱおんさんに対する権力の仕打ちというのは、これはもう絶対に許せないという事で、
かなり、運動的な圧力を強めました。

その中で「拷問」これ以上病状が悪化すると大変なことになる、
「国際問題にするぞ」みたいな形で圧力を加えた中で、
まぁ、「渋々認める」という形で保釈が実現したと、そんな感じです。
そのかわり、向こうも悔し紛れというか、非常に苦しい保釈の条件が付いています
大体、そんな経緯です。


Sawada:
そうですか。
ブログなんかを拝見した時に、釈放されてからもちょっと元気がないというのがでていましたが、
それは保釈の条件がとても厳しかったという事からなんでしょうかね?

下地:
まず、彼女はどれくらいかな?11月からなので、3か月以上入っていますね。
100日ぐらい入っているんです。
その100日の間、そういったかなりひどい嫌がらせを受けていますし、
また、これはみなさん是非知っておいて欲しいんですけど、
非常に些細なことで懲罰というのを受けるんですね。

「荷物が多すぎる」って言って注意されるんです。
荷物が多すぎるっていう事を注意されること自体がまずひどいんですけど、
注意された事にちょっと不満を持ったような態度を見せると、それを理由に懲罰を加えると。

その懲罰っていうのはどういうものか?って言うと、
たとえば軽いものですと、日中の起きている時間、壁に向かって座らせられて、
本を読んだりとか書き物をしたりとか、そういう事をさせてもらえないっていう、
昔学校でやった体罰のひどいものなんですけど、そういうことをします。

でもみなさん、思い出してほしいんですけれども、
まだ犯罪者と決まる前の裁判を受けるという段階の被疑者の生活に、
とてつもない生活上の制限、制約を加えたうえで、
それにちょっと、従う、従わないということで、すぐに「怒る」と。

そういうひどい管理を、扱いをした上で、
たとえば「逆らう」という事でもないですね。
不満を持った態度を見せる、ただそれだけで懲罰。

ですから、実際に「未決拘留」って言うんですけど、
実際に有罪か無罪かが確定する前に拘留されている期間の間というのも、
非常に多様な嫌がらせを受けます。

これはやっぱり拷問に当たるだろうと。
薬の話もそうです。

ですからそういった扱いを100日間受けている。
自分の生活を他人にコントロールされているという事自体が、心身ともにひどいダメージを与えます。

でまた、彼女は大阪拘置所に結構長い期間いましたが、非常に寒いところです。
ですから、まず、中にいた期間で大分ダメージを受けているという事を承知して下さい。
さらに、外に出てきてからの保釈条件っていうのが、
非常に曖昧で、かつ厳しいものでありまして、

「彼女が逮捕された時にですね、
現場付近にいた不特定多数の人々に会ってはならない」
という条件がついているんですね。
で、これは誰に会ったらいけないのか?ということも、
実は本人にも分からない。

本人は知らないけれども、実は現場近くにいたという人にたまたま会いましたというと、
それを理由にして再び拘置所にですね、再収監される恐れがあると。


ですから、彼女は保釈されたという状態ではありますが、
ほぼ自宅軟禁に近い状態です。

ですから友達に会ったりとか、いろんな人と交流したりとか、
もちろん市民運動で以前行っていたような活動も出来ない。
そういう、自宅にいる、かなり快適な状態ですね。
拘置所に比べると、かなり快適な状態にいるけれども、
でも、拘留されているのとほぼ変わらない。
何処まで言っていいのかな、かなり行動の制限がかけられている状態です。

ですから、なかなか彼女の動向や声などが聞こえてこないと思いますが、
そういう行動制限をかけられているせいだというふうにはちょっとご承知置き下さいと、
そんなところです。


Sawada:
そうですか。
そもそもなんですけれども、下地先生もそうですし、ぱおんさんも、
私どもがYoutubeなどで活動されているのをみられている中で、
昔のよく言うデモの過激な部分ではなくて、
大変まっとうな主張をされているというようなシーンばかり見た記憶しか私はないんですけれども、
そもそも、こんな事で逮捕されるというのはどういう事なんでしょうね?


下地:
そうですね、
長くこういう市民弾圧の事をやっている弁護士さんも、
「こんなことはここ20年なかった事だ」とおっしゃっていますね。
まぁ、起訴はもちろん無いですし、20日間の拘留もさすがにひどいと言われるような案件ですね。
ですから、やっぱり何と言うんでしょう、
弾圧が強化されているという雰囲気は多くの人が感じていると思います。

Sawada:
そうですか。
で、もう皆さん釈放されたかと思ったら、まだ4人いらっしゃるっていうことでしたよね。

下地:
10月5日に逮捕された人が一人。
この方は半年ですね。半年過ぎました。
4月5日で半年なんですね。
この半年拘留されているっていうのが、何をやったのか?というと、
警察官のいわゆる「転び攻防」ですね。
自作自演で警察官が勝手に転んで、「お前押し倒しただろう」というような容疑で捕まっています。
公務執行妨害と転んだ時の怪我という事で傷害罪
これは全部警察側の言い分で、傷害罪の診断書も全部警察病院というような恐ろしい事件なんですけれど、
これで裁判が始まっていますが、これだけでもう半年間拘留されています。

そういう人が一人います。

11月13日にぱおんさんと一緒に逮捕された人のうち、
1名は昨年12月に入る時に釈放されていますが、3人起訴されています。

3人起訴されているうちのぱおんさん以外の二人は現在も大阪拘置所にいます。

で、もう一人10月5日の件で11月に入ってから事後逮捕された人が一人いまして、
この人も現在大阪拘置所にいると。

ですから、半年入っている人が一人、
5か月入っている人が3人という感じですね。
非常にひどい状態です。


Sawada:
これ、どうにか透明性を高めて主張して、正義を訴えてということで、
一日も早い釈放という事を望むところですけれど、
これはなかなか難しいものなのでしょうか?


下地:
そうですね、
こういう拘留の必要性というのはいわゆる在所隠滅。証拠の隠滅の恐れがるという事と、
あるいは、逃亡の恐れがある。
少なくてもそのどちらかですね。
あと住所不定とか、その三つのうちのどれかの条件を満たしていなければいけないんですが、
あの…、ま、逃亡の恐れはないですし、証拠隠滅の恐れも無いんですね。
現行犯逮捕ですから、証拠隠滅のしようがない訳ですけれども、
ですから、そもそも
そういう拘留の理由が成り立たないのに、拘留の請求をする検察もかなり問題があります。
で、こういった拘留請求に対して裁判所が簡単に認めてしまうっていうのも問題です。


弁護士さん達はたびたび保釈請求というのを行っているんですが、
拘留の理由がない訳ですから保釈請求が通ってもよさそうなものなんですが、
これが不思議と認められないんですね。


裁判所もチェックする意欲がないというか意思が内というか、非常に問題だと思います。
ぼくはこの一連の事件の中で、
裁判所がやっぱり、僕らが思っているよりずっとひどいなと、かなり強い印象を持ちました。


Sawada:
今後こういう市民運動と取り締まりというところでいくと、
今後はどういうふうになっていくと先生は考えておられますか?


下地:
今回の逮捕なんかもですね、
たとえばぼくの事件なんかでも、威力業務妨害という罪名で逮捕されているんですけど、
ぼくは前にもお話ししたかと思うんですけど、JRの駅の構内を黙って歩いていただけなんですね。
それが何で威力業務妨害かって言うと、
威力業務妨害をしたという人と共謀したとかそういう話をされているんですね。
その威力業務妨害行為があったのか?ということも、ま、問題なんですけれども、
たとえば駅の中で警備員の人に注意をされた。
その注意に納得いかなかったので「おかしいじゃないか」って言うようなやり取りがあったとすると、
それがもう威力業務妨害だって。

それだけでも威力業務妨害の拡大解釈でひどいのに、
さらにその人と黙示の共謀。
言葉に表してはいないけれども、実は共謀があったんだ。ということで、
全然違う場所にいた僕もひっかけて逮捕するという事をやっているんですね。

こういうふうに法律の拡大解釈をどんどんどんどん裁判所に認めさせて逮捕しやすいような、
こういう前例というのを作っていくっていうのが今の警察のやり方です。

とにかく逮捕して裁判にまで持ち込めるような、
そういうテクニックというものを開発するというのが今の公安の手段です。
そういった中でそういう流れの中でいきますと、
たとえば最近在特会の非常に暴力的なというよりも、
暴力そのものの差別表現満載のあのデモの行動とかがあって、
それに対するカウンター行動とかが行われたりしています。
そういった差別表現、「ヘイトスピーチ(憎悪発言 hate speech)に対しては規制を加えるべきだ」
というような声が出てきているんですね。

ぼくは「ヘイトスピーチ規制」というのはほぼ賛成なんですけれども、
ただし非常に怖いのは、ヘイトスピーチ規制をした時に、それを実際に現場で実行するのは、
こういう腐敗した警察だっていうことなんですね。

そうすると何が起こるか?って言うと、
ヘイトスピーチ規制を口実にして取り締まられるのは、
実はヘイトスピーチで攻撃されていた側が取り締まられる可能性があります。

その規制が出来た事によって在特会のデモは多少は穏やかになるかもしれないが、
相変わらずそういう在日外国人をターゲットにしたような敵対的なデモは行われる。
他方でそれに対して反対する。
あるいは原発含めてそういった抗議行動、
公安が弾圧した抗議行動にそういった表現規制を適用して弾圧する。

そういうふうにして、どんどんですね、公安が市民運動を弾圧するための道具を増やしていくような、
非常に怖い流れが出来るかもしれないということで、
ちょっと心配はしています。

それとも在特会を使って警察がそういう手法を。
簡単に市民を逮捕するためのテクニックやハウツーをですね
蓄積しつつある
というところをちょっと注意していきたいと思います。


Sawada:
そうですか。
そんなところ、いろいろと気にしなければいけない所がありますが、
下地先生はこれからも活動を続けられるんですか?


下地:
そうですね。
こういうやり方を認めているとやっぱり怖いので、
市民の側からどういう反撃の手段があるかな」という事を今ちょっと検討中です。

具体的には、僕の事件というのは警察官が本当に嘘をついて逮捕したんじゃないかという事が
疑われる話なので、これをどういうふうに訴えるかですね。
告訴するとか、そういうことが可能なのかどうか。
あるいは、行政法とか、刑事訴訟法とかを調べて、
法的に反撃していくというようなやり方が出来ないかというのを今検討しているところです。
感触としては結構面白いんじゃないかと思っています。

Sawada:そうですか、また今後もぜひよろしくお願いいたします。




続きを読むに関西で不当逮捕・起訴の6人の即時釈放を求める院内集会 2/19動画

関西で不当逮捕・起訴の6人の即時釈放を求める院内集会


適切な投薬がなされず、心身ともに不安に曝されている
ぱおんさんの保釈請求、並びに、Hさんの起訴取り下げを訴えます

日時 2月19日(火)17時30分開場 18時開始
場所 参議院議員会館B101会議室

出席者:
 鵜飼哲(一橋大学教授)、石埼学(龍谷大学法科大学院教授)、
 下地真樹(阪南大学准教授・12.9弾圧当該)、
 小松宗弘(関西大弾圧救援会・11.13弾圧当該)、
 国会議員(予定)、大口昭彦弁護士

主催 関西大弾圧救援会・東京の会 http://ameblo.jp/kansai-tokyo-kyuen/



【ペイフォワード環境情報教室】
「一番大事なのは、怖い時に自分が怖いと思っている事をちゃんと認める事」」
2/2下地真樹先生(文字起こし)


【ペイフォワード環境情報教室】
「周囲の人に時々“小さなサイズのメッセージ”を送るのが大事」
1/24下地真樹先生(文字起こし)



<不当逮捕>下地真樹氏 意見供述の全て12/18大阪地裁 (文字起こし)

不当逮捕で拘留20日間!下地先生釈放記者会見12/29(内容書き出し)

不当逮捕で拘留20日間!北堺141号のウシさんの釈放記者会見12/29(内容書き出し)

<1>ー支援者による説明ー下地准教授らの不当逮捕抗議記者会見 12/22(文字起こし)

<2>ー大学側は逮捕の3日前、すでに下地先生が逮捕されることを知っていたー
下地准教授らの不当逮捕抗議記者会見 12/22(文字起こし)


<3>ー「立派な独裁国家、警察国家ですよね、もう完全な」山本太郎・メディア質疑応答ー
下地准教授らの不当逮捕抗議記者会見 12/22(文字起こし)~テレビ局にお願いしよう~



<許されない!>下地先生不当逮捕 
「駅での訴え 犯罪?」東京新聞こちら特報部12/21(書き出し)


モジモジ先生逮捕直前出演のラジオ番組12/5堤未果 x 下地真樹
「震災がれきの処理の現状について」(内容書き出し)


2012年11月21日
ヘレン・カルディコット医学博士来日会見(大阪)大阪の母&モジモジ先生質疑応答11/21

2012年11月13日 説明会
「彼らが支払うべきコストを私たちの身体で、そして、私たちの未来で支払うというのが
放射能をばらまく政策です」大阪・此花区瓦礫試験焼却住民説明会
11/13モジモジ先生質疑(内容書き出し)


2012年8月31日関電前
<がれき広域処理>正確な報道をしないメディアと大阪府警・機動隊「無用の暴力」

2012年8月30日の説明会
大阪市がれき広域処理説明会8/30モジモジ先生質疑(動画・内容書き出し)





ダイヤモンド・オンライン
【第20回】 2013年2月22日 井部正之 [ジャーナリスト]
がれき広域処理の反対めぐる逮捕・拘留で
憲法学者が「拷問」と告発(5)


2011年3月の東日本大震災で発生した震災がれきを全国各地で受け入れて処理する、
いわゆる震災がれきの「広域処理」。
現在大阪市が計画している「広域処理」に対して反対運動が続いているが、
そうした反対派の逮捕が相次いでいる。
2012年12月には
関西の広域処理反対運動のリーダー的な存在である阪南大学准教授の下地真樹氏ら3人が逮捕された。
下地氏ら2人は20日の勾留後、釈放されたが1人は起訴された。
がれき広域処理の反対運動に対する弾圧との指摘もある一連の警察介入の真相に迫るとともに、
今年2月から震災がれきの受け入れを本格実施した大阪市の状況を報告する。


獄中の「拷問」を告発

「これは憲法36条違反、つまり拷問です。
まさか憲法学者になって36条違反を(世間に)訴えることになるとは思わなかった」

2月19日夕刻、参議院議員会館で開催された院内集会において、
龍谷大学法科大学院の石埼学教授(憲法学)が告発する。
院内集会は関西の反原発運動やがれき広域処理反対運動で起きた「連続不当逮捕」に抗議し、
すでに起訴された6人の即時釈放を求めるものだ。

この間、2012年12月に逮捕された阪南大学経済学部・下地真樹准教授らの逮捕について報告してきたが、
集会で報告された状況が深刻なため、順序を入れ替えて現状を伝えたい。

この院内集会でとくに重視されたのが、起訴された1人、
象が好きでその鳴き声から「ぱおん」の愛称で反原発やがれき反対にかかわる人たちに知られる、
大山裕喜子さんの処遇についてだ。
石埼教授が「拷問」と評した状況とはどのようなものなのか。

大山さんは2012年11月13日午後
大阪市が計画している震災がれきの受け入れ処理(現在実施中)についての
住民説明会が開催される同市此花区の此花区民ホールを訪れ、そこでほかの3人とともに逮捕された。

このとき区民ホールでは、夜に予定されていた住民説明会のための準備がおこなわれていた。
大阪府警の発表によれば、大山さんら3人は
「共謀のうえ、此花区でおこなわれる説明会を妨害する目的で大阪市が管理する敷地内に侵入した」
という建造物侵入(刑法130条)の容疑で現行犯逮捕された。
もう1人は「被疑者逮捕を妨害した」ことによる公務執行妨害(同95条)容疑である。

大阪府警の担当者はこう説明する。

「110番通報があったのは午後3時47分。
3時半くらいから約20人が区民ホール1階で抗議活動をおこなっている。
出ていってくれというのに従ってもらえないと110番があった。
それで現場に行って、さらに4時半くらいに、
再三(大阪)市の職員がホールから出ていってくれと警告をしている状況を警察でも確認して、
午後5時15分以降の逮捕になった」

ところが、12月4日の大山さんら3人の起訴にあたっては、
容疑が威力業務妨害(同234条)に切り替わっている。
公務執行妨害容疑で逮捕された1人は処分不要とされて釈放された。


薬を勝手に変更し「処方箋は見せない」

被疑事実や逮捕の状況をめぐっても重要なことは多いのだが、それらは改めて論じることにし、
今回は勾留中の処遇のみにとどめる。

大山さんは逮捕後、布施警察署で約20日間勾留された。
また起訴後は拘置所に身柄を移されており、すでに計3ヵ月以上も抑留生活を強いられている。
もともとアトピー性皮膚炎やアレルギー、睡眠障害、混合性不安抑うつ障害で
皮膚科と神経科の病院に通っていた大山さんは、
留置場・拘置所で「ほんとにひどい対応」を受け、病状が悪化したという。
そのため1月25日の勾留理由開示公判では被疑事実への反論よりも、
むしろ処遇の悪さを中心に訴えたほどである。

その証言によれば、大山さんは11月上旬からリンパ腺がはれて高熱が数日間続くなど体調を崩していた。
逮捕当日も「夕方くらいに少し頭が痛み、体がだるく感じたので、少し熱があるのかな」と感じていた。
警察によって逮捕されたときも調子が悪く、階段に座り込んでいた。
こうした体調の悪さもあったろうが、勾留中の処遇の悪さには驚かされる。
公判の意見陳述で大山さんはこう明かした。

「まずアトピー、アレルギーの薬は逮捕後10日間ほど処方されず、
いくら症状を訴えても何もしてもらえませんでした。
ようやく出してもらった塗り薬では逆に全身がかぶれてしまい、
顔がはれ、目が開かず、全身真っ赤かで、ひどい状態になりました。

処方した医師は皮膚科の専門医ではありませんでした。
私と弁護士からの再三の要求で11月末に警察病院へ診察に連れて行ってもらい、
そこで出た薬でようやく治まりました。
初めて経験する症状でしたし、人相が変わっていましたから、さすがに留置係もやばいと思ったと思います」

勾留中の「ひどい対応」はまだ続く。

「不眠、うつの薬に関しても、こちらに断りなく一部の薬の種類を変えていました。
私が飲む前に色が違っていることからわかったのですが、
何を飲まされているかわからないという不安感、不信感でいっぱいになりました。
こちらも何度も要求して元の薬に戻させましたが、
元に戻せるならそもそもなぜ変えたのかいまだに疑問です。
私に処方されている薬なのに処方箋は見せられない、渡されない、
渡せないという警察の言い分の意味がいまでもまったくわかりません」


病状は「はっきりいって最悪」

こうした処遇は起訴後に拘置所に移ってからも変わらなかった。

「2日間、薬はいっさいなにも出ませんでした。
おそらくストレスやうつ症状からくるものだと思いますが、
食事が摂れず、眠れず、何か飲んでは吐き、めまいや幻聴があり、片方の耳が聞こえにくくなったりしました。
症状があまりにもひどいので弁護士から拘置所あてに内容証明郵便を送って抗議してもらったりしました」

するとようやく薬が処方されたが、いまだ状況は良くないという。

「アトピー、アレルギー、うつの薬はもらいましたが、とても軽い薬らしく効果は薄いのです。
とくにうつの薬は以前飲んでいた薬の離脱症状
(薬物接種を急に止めることで起こる不快な身体的・精神的症状)のようなものが出ているので、
いま現在も改善を求めていますが、変わりありません。睡眠障害の薬は一度も出ていません」

そして現在の体調を聞かれてこう答えた。

「はっきりいって最悪です。
薬の副作用とか離脱症状と思われる症状と、薬が必要である症状が、ごちゃごちゃ出ています」

前出の耳が聞こえにくくなる、めまい、吐き気のほか、
急に不安を感じて呼吸が荒くなる、発作的にパニックを起こし過呼吸になる過換気症候群が起こるなど、
むしろ悪化している。

「一番困るのが物忘れや思考停止です。ようするに考えごとができなくなります。
どうしても今日の日付を思い出せなかったり。どれも過去には一度治まった症状です。
診察の申し出をしても、数週間も専門医の診察はなく、
拘置所に置いてない薬はないから出せないと言われるばかりです。
いままでとても長い年月をかけて主治医とともに、
症状と投薬のバランスに気をつけながら治療をがんばってきたのに、
ここ何年かの治療は無駄になってきている気がします」


医師も病状悪化と診断

大山さんの処遇について、19日の院内集会で石埼教授はこう批判した。
集会では大山さんのことは「ぱおん」の頭文字から「P」さんとされている。

「そもそも拷問というのは不必要な精神的苦痛を与える。
(大山さんは)非常に重要な薬を与えられていない相当苦しい状態です。
まさに生理的な苦痛を受けている。
これは憲法36条が禁止する拷問以外はない。
まさか憲法学者になって、36条違反だと批判しなくてはいけない日が来るというのはびっくりですが、
これは明らかに36条違反です。


救急車が必要なのに放置したとか、医学上も許されないが、憲法上も許されない。
ほかのかたもふくめて、何ら勾留する理由はないと思っているが、
Pさんについては、ますます悪化して、
裁判になったときに自分のことを主張できないんじゃないかと危惧される。

被疑者勾留のときに、自白しないなら薬あげないよ等、その自白をうながすことなんて簡単です。
Pさんは捜査機関には自白してないからその問題は生じないが、
これが許されるなら捜査機関が薬を与えないことで嘘の自白をさせることは容易である。
これは憲法学者として絶対許されない」

大山さんの処遇による病状悪化については、接見した医師と主治医の2人がいずれも指摘し、
外部での治療を求める意見書を提出している。

〈2~3時間しか眠れず、動悸が激しくなり、息苦しくなり、
「死んでしまいそうな」不安、恐怖にさいなまれています。
過換気状態になってしまうというパニック発作が起こっています。
救急車で搬送されるような状態になっても、
じっとがまんをしていないといけないという悲惨な状況が続いています〉

〈このような状態が続けば、大山さんはさらなる状態不安定を呈し、
不安抗うつの増大、パニック発作の出現、睡眠障害の悪化、身体化症状の増加などを生じる可能性があります〉

拘置所や刑務所の処遇の悪さについては時おり、耳にすることがあったが、
救急車で搬送されるような病状でも放置されているとは許しがたいことである。

1995年から拘置所、刑務所の処遇改善を訴えてきたNPO「監獄人権センター」の桑山亜也さんはこう指摘する。

「大阪拘置所は関西では一番大きな拘置所で、医療設備やスタッフは重点的に配置されています。
常勤の医者は8人いて、ほかと比べてハードではひけをとらない。
にもかかわらず、こういう事態が起きているということは、医師不足とかではない。
そうなると(大山さんの処遇が悪いのは)やはり構造的な問題になってくるのかなと思います」


眠らせない拷問

石埼教授ら6人の憲法学者はこの日、こうした大山さんに対する「憲法違反」を指摘し、
保釈を求める声明を出したことを発表した。声明にはこうある。

〈私たちが、P(大山)さんの保釈を求める最大の理由は、
彼女に対する逮捕留置、被疑者勾留および被告人勾留の全期間を通じて、
大阪府警布施署および大阪拘置所が彼女に対して必要とされる医療を施さないことにあります。
このような措置は、憲法で保障されている
生命や身体の健康に対する個人の権利(日本国憲法13条)を侵害するものであり、
捜査機関や検察による取り調べがこのような状況において実施されることは、
日本国憲法36条が「絶対に」禁止している「拷問」に該当する疑いがきわめて強いものです。
したがって、このような違法な措置が継続されることは、憲法研究者として到底見過ごすことはできません〉

声明は勾留が不要との理由も指摘している。

〈P(大山)さんは、現行犯逮捕されており、
起訴の時点までに捜査機関の証拠収集等は概ねなされているものと思われ、
さらに2013年1月25日の勾留理由開示公判の際には、
此花区民センターにおける自らの行動を堂々と説明している以上、そもそも何ら勾留する理由はない

大阪府警は筆者の取材に対して、大阪市職員が当初からビデオ撮影をしていたことを明かしている。
このことからも、声明による指摘には説得力がある。

ちなみに石埼教授が「非常に重要な薬」といったのは、集会では明かされなかったが、
睡眠障害のための睡眠導入剤である。

大山さんの弁護を担当する小谷成美弁護士は「睡眠障害の薬はいまに至るまで一度も処方されていない」と話す。

集会後、石埼教授は改めてこう断言した。

「睡眠障害を持ったうつ病の患者にとって、
睡眠導入剤が処方されないというのは『眠らせない』ということです。
これはどうみても拷問です。
このまま(拷問が続く状態)では自分の主張がきちんとできず、公平な裁判にならない可能性が高い。
裁判を公平におこなうためにも保釈すべきです」

眠らせないという拷問は昔からあるが、ごく最近でも報告例がある。
たとえば、イラクのアブグレイブ刑務所で米軍が捕虜に対して、組織的に虐待や拷問をしていたことが
2004年に内部告発され、国際的に大きな問題となったが、
そこでも捕虜に「眠らせない」拷問をしていたことが報告されている。
国際問題となったアブグレイブ刑務所でのような拷問が日本で、いま現在も続いていることになる。

憲法36条にはこうある。

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる

また日本は1999年6月、
「拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰を禁止する条約
(拷問等禁止条約)」に加入している。
よって、拷問など絶対に許されない。

20日、弁護士が大山さんの保釈請求をした。
裁判所による決定は22日夜に出ることになっている。石埼教授は言う。

「このままだと国際社会からも問題になるんじゃないか」




関連記事
comment 2
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| 2013.04.14 07:32 | 編集
自民党政権には景気回復を期待している人も多い。実際、金をばら蒔くから。福島爆発原発の終息より何より景気回復が大事というわけ。自民党政権下で過去やってきたこと、今もやっていることを見ればわかるが、金のばら蒔きには「統制」「支配」がセットです。
国に逆らう奴等は危険だから逮捕され徹底弾圧されるというイメージ戦略の集大成が浅間山荘事件でした。
以降、声を上げる一般国民にも左翼だの過激派だのレッテルを貼り黙らせて、国民のほうも無力感に襲われすっかり大人しくなりました。

今は過激派がほぼ消滅しているので、在特会を使って、声を上げる一般人が参加するデモのイメージを悪く下げようとし、
過激派の代わりに市民運動家を見せしめに不当逮捕しているのです。
自民党がそれをしているというより自民党もまた使われているのでしょう。
在特会は個別に糾弾されるべきで、それを逆手に「一般国民が声を上げる」ことに及ばせてはいけない。
Necoco | 2013.04.15 11:25 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top