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04.14
Sun
ラジオフォーラム

第14回放送
■放送日 2013年4月13日(土)~19日(金)
■Web公開日 2013年4月16日(火)

■ゲスト おしどり(漫才師)
■パーソナリティ 今西憲之(ジャーナリスト)
■テーマ 原発事故と福島の子どもたち


小出裕章ジャーナル


今西:おしどりの二人が今日はスタジオにゲストに来て下さっています。

マコ:お久しぶりです。

小出:こんにちは、ケンさんもですね?

ケン:そうですよ、僕もいてます。

今西:
それでですね、ロフトプラスワンのシンポジウムの時に、ギャラリーの方から質問があって、
全て答えられなかったものがあるんですが、
そこで出たもので、3月12日の、
2年前の3月12日、福島第一原発の事故の時に1号機が爆発しました。
その時に専門家の方がいろんな話をテレビとか新聞でされておられたんですが、
まずですね、メルトダウンという事についてですね、
先生、簡単にちょっと解説を頂ければと思います。

小出:
はい。
原子力発電所というのはウランを核分裂させて、その時に出るエネルギーで水を沸騰させて蒸気にする。
それでタービンを回しているわけですが、
何か事故が起きると原子炉で起きている核分裂反応自身は比較的容易に止める事が出来ます。
原子炉の中に制御棒というものを入れることで、核分裂反応を止めることは出来ます。
しかし、それまでの運転で
原子炉の中には核分裂生成物という放射性物質が膨大に溜まってしまっている訳です。
核分裂生成物というのはそれ自身が放射線を出す、つまり発熱しているという、そういうものなのですね。
ですから核分裂の連鎖反応事態を止められたとしても、
すでに炉心の中に核分裂生成物が溜まってしまっていると、
その発熱を止めることができない、のです。
その熱をどこかに逃がさない限りは原子炉の温度が上がってしまって、
どっちにしても溶けてしまうという事を避けられないというのが原子炉という装置なのです。

今西:
なるほど。
それでですね、1号機のオペレーションフロアですね。
これはどういう部分に当たるのでしょうか?

小出:
「原子炉」と私たちが普通呼んでいるものは炉心という部分がまず一番中心にあって、
それを原子炉圧力容器という鋼鉄製の圧力釜の中に入れてあります。
その圧力容器のさらに大きな原子炉格納容器と呼ぶ、
福島第一原子力発電所の場合には、
理科の実験で使うフラスコのような形をしている大きな容器があるのですが、
その中に入れてあります。
その格納容器というのが、原子炉になにかトラブルがあった時に、
放射能を閉じ込めるための最後の防壁なのですが、
その格納容器も含めて、さらにまた原子炉建屋という皆さんが映像で見られた四角い建物が、
四角の大きな建物があるのです。

今西:
白とブルーの、あの建物の事ですね。

小出:
そうです。
で、オペレーションフロアというのは原子炉建屋の最上階の部分に相当するところを
私たちはオペレーションフロアと呼んでいます。

今西:
なるほど。
それでオペレーションフロアがですね、爆発で吹っ飛んだという事は、
メルトダウンしているに違いない。
というのが原子力の専門家の常識であるという事なのですが、
そのあたりについてお願いします。

小出:
なぜ、あんな大きな爆発が起きたのか?と言えば、
原因はひとつしか考えられません。
要するに水素なのです。
水素というのは非常に軽い気体ですので、もしそれがどこからか漏れてくる事になれば、
建屋なら建屋の最上階に集まってくるという、そういう性質のものなのです。
で、1号機の爆発も原子炉建屋の最上階に相当しているオペレーションフロアで起きたのです。
そうなればあの爆発は水素爆発だということはすぐにわかりますし、
一体じゃあ、その水素というのは何処から出て来たのか?という事が次に問題になります。
そしてこの水素は、ウランの燃料というのは通常セトモノに焼き固めてあります。
直径1cm高さ1cmという小指の先ぐらいの小さなセトモノに焼き固めてあるのですが、


今西:よく言われるペレットというものですね。

小出:
そうです。
そのペレットを約400個ほど細いパイプの中に詰めてあるという、
そんな形で炉心の中に存在しています。
そのパイプの材料がジルコニウムという金属で出来ているのですが、
そのジルコニウムという金属は温度が850度程度になると、周辺の水と反応して水素を発生するという、
そのような化け学的な性質を持っているのです。
ですから、原子炉の中にあった核分裂生成物が熱を出したが為に、炉心の温度がどんどん上がっていって、
850度を超えて、ジルコニウムが水と反応して水素を出したという事が分かります。

今西:なるほど。

小出:
そしてその反応は発熱反応と私たちが呼んでいる反応で、
一度その反応が始まってしまいますと、その反応自身によってまた熱が出てくる。
そうすると温度がまたさらに上がってしまう。
そうすると反応がさらに加速する。
そうするとまた温度が上がってしまうという悪循環に陥ってしまいまして、
どんどん温度が上がっていって、
一気にジルコニウムという金属が水と反応して大量の水素を発生してしまうという事になる事が分かっています。
で、同時にそのジルコニウムという金属はウランのペレットを中に包んでいたものなわけですし、
発熱によって、次はウランのペレット自身が溶けてしまうということになるというのが、
私たちの事故を想定してのシナリオだったのです。
まさにその通りの事が起きました。

今西:いわばあの原子力の専門家の方々が言われる、教科書通りの事が起こったというわけですね。

小出:そうです。

今西:
けれども、ま、私の知る範囲でですね、当時テレビですとか新聞ですとか、
専門家の方がいろいろ解説をされておりましたが、
小出さんのように、そういう明快な解説をされた方というのはあまり記憶にない
のですが、
どうしてなんですかね?

小出:
まぁ、マスコミに出させてもらえる専門家というのは、
いわゆる原子力ムラ、原子力を推進していた人達だけだった訳ですし、
そういう人たちは「決して事故など起きない」と言い続けてきた人だし、
「炉心が溶けることはあり得ない」と発言し続けてきたわけですから、
彼らからみれば「今もう溶けてしまっています」という事はやはり言いたくなかったのだろうと思いますし、
もしそうでないとすれば、よっぽど無知な人だったという事だと思います。

今西:なるほどねぇ~。

マコ:
あの、4つの事故調を全部読みなおしていて、
国会と民間や政府と社内の、
それも全て今小出さんがおっしゃった、
ジルコニウムで反応があって、水素がいっぱい出て爆発しましたという事が全部書いてあるんで、
もう、小出先生が事故当時からね、直後からおっしゃっていた事を
1年経って全部報告書にまとまって上がってきたっていう感じになっているよね。
で、事故調の各報告書を読んでいて、
炉心が冷却できなくなって、どんどん水が減っていったっていう、
水位計がきちんと機能していなかったんじゃないかっていうふうに、
ちょっと読みとれる箇所があったんですけど、
この、水位計がきちんと読みとれなければ、原発事故の時にものすごく致命傷だと思うんですけど、
これは何とかならないものなのでしょうか?
あの、現在の各地の原発でも。


小出:
多分難しいと思います。
要するに想定している通常の運転状態であれば、原子炉の、
今問題にしているのは沸騰水型というのですけれども、
沸騰水型の原子炉の中の、どの部分でどのくらいのボイド、
私たちがボイドと呼ぶ泡ですね。
水が沸騰して蒸気になるかという事はそれぐらいの角度を持って、確実性を持って計算できるのですけれども、
事故のような事が起きてしまいますと、
猛烈にドラスティック(drastic)に事故が進行していくわけで、
どんな状態になっているかという事自身が正確にはなかなか分からないという事がありますので、
通常測っている水位計で事故時の水位という事が
本当に正しく測られているかどうかということは分からないと思います。
出来る限り、だから、「わかるような装置をつけろ」という事はもちろんそうなのですが、
本当の事故になってしまうと、「どこまで確かなのか」ということはよく分からなくなってしまいます。

マコ:
なるほどありがとうございます。
そうですね、通常は分かるけれども事故になると見せかけの圧力とかで、
水はいっぱいあるように思っていたけれど、実は全くありませんでしたっていう状態だったっていうのが
すごいその。

小出:
それは1979年にスリーマイル島というところで、
それは今度は加圧水型の原子力発電所というものだったのですが、
それも水位計というものが「付いてはいた」のですけれども、
通常運転の時と全く違う挙動をしてしまいまして、
「原子炉の中に水はある」と運転員は思いこんだんですが、実は「水は全くなかった」という、
それで事故になってしまいました。

今西:
水位計というのも想定外には対応できんもんなんやね。あてにならんもんやね。
わかりました。小出さん、今日はありがとうございました。

小出:ありがとうございました。



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