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04.27
Sat

クローズアップ2013:
福島、子供の甲状腺検査 高まる県民の不信

毎日新聞 2013年04月22日 東京朝刊

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NPO法人による甲状腺検査。
県の検査への不信から独自に検査をする動きが出ている
=福島県いわき市で3月16日午前11時半ごろ


東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質から子供の健康を守るとして、
福島県が実施している甲状腺検査が揺れている。
これまでに3人のがん患者が確認され、7人にがんの疑いがあるとされたが、
県側は「被ばくとの因果関係は考えにくい」と強調する。
「県民の不安解消」を検査の目的に掲げる県だが、
情報公開に消極的な姿勢も相まって、保護者の不安と不信はやむ気配がない。【日野行介】

 ◇4観察項目省略、公表せず

福島県二本松市の主婦、鈴木麻記子さん(39)は昨秋、長男(6)の検査に付き添った。
検査技師はモニターを見つめて何かを測っている様子だったが、
結果について何も話さず、2分ほどで終了した。

不安になった鈴木さんは、一般の病院で改めて検査を受けさせた。
10分ほどかかった検査で、7ミリの結節(しこり)が見つかった
県の判定基準では2次検査が必要な「B」に当たる。
だが、約1カ月後に県から届いた通知は、経過観察にとどまる「A2」だった。


鈴木さんは検査画像とリポートの情報公開を請求した。
約3週間後に開示されたリポートには
1・6ミリののう胞(液体がたまった袋のようなもの)があると記されていたが、結節は「なし」だった。
県の検査は一人一人の子供を真剣に見ていない。本当に親の気持ちを大事にしているとは思えない」
と鈴木さんは憤る。

実は県の検査では、甲状腺検査で一般的に実施される12の観察項目のうち4項目を省いている
だが、県はこのことは公表していなかった
識者からは「精度に疑問がある」との指摘も出ている。

日本乳腺甲状腺超音波診断会議などが編集する「甲状腺超音波診断ガイドブック」は、
観察項目として「甲状腺の形状」「大きさ」など12項目を挙げる。
検査を委託される県立医科大は住民説明会でこのガイドブックを引用し「高い精度の検査だ」と強調してきた。
しかし、実際には「甲状腺の内部変化」「血流の状態」など4項目を実施していない。
検査責任者の鈴木真一教授は「短時間の1次検査では見る必要はないと考えた。
(内部変化や血流の状態は)一律には見ていないが、必要な場合は見ている」と説明する。
検査対象となる事故当時18歳以下の子供は約36万人に上り、
検査のスピードアップのために省略したという。

県の検査方法に関し北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は
血流の状態の確認をしないと、小さなのう胞と血管の区別はできにくく、精度が高いとはいえない。
大きな病気がないかどうか簡単に見るだけの内容だ」と指摘
している。

 ◇独自検査の動きも

保護者の根強い不信と不安の背景には、情報公開に消極的な県側の姿勢がある。
県立医大が開いている住民説明会では、
確認されたがん患者の居住地や、被ばく線量の推計値の説明を求める声が上がった。
だが、鈴木教授は「個人情報だ」として明かさず、
「被ばく線量は低い」「見つかったがん患者と被ばくの因果関係は考えにくい」と繰り返した。


こうした姿勢に、参加者からは「『被ばくの影響なし』という結論ありきだ」との批判も出ている。
会津若松市で3月に開かれた説明会では、ある母親が立ち上がり、
「『親の不安を解消する』と言うが、私たちは不安を解消してほしいのではなく事実を知りたい。
私たち自身が判断する」
と訴えた。

今回開示された「自治体別データ」は、今年1月の開示に合わせて市町村に伝達されたが、
それも自らの自治体分だけで「比較できない」と不満も出ていた。
そんな中、自治体や市民団体が独自に検査に乗り出す動きも広がる。
既に本宮市、浪江町などが開始。
NPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」は3月17日、
最新機器の寄付を受けて検査を始め、印刷した画像もその場で手渡している。

==============

 ■ことば
 ◇福島県の甲状腺検査

原発事故当時18歳以下の約36万人が対象で、2年半で一回りし、
20歳までは2年ごと、以後5年ごとに受ける。
1次検査は超音波でしこりなどの有無と大きさを検査し、A1〜Cに分類。B、Cは2次検査の対象。
2011年度にB判定となり、2次検査を受けた子供から、3人のがん患者と7人の疑い例が見つかった。





放射線医学県民健康管理センター
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平成25年4月22日の毎日新聞報道について
2013年4月24日

4月22日付毎日新聞報道において、県と県民健康管理センターの実施する甲状腺検査について、
スピードアップのために本来必要な検査項目を故意に外しているかのような報道がなされました。
これは事実に反しております。

このような報道は、県民健康管理調査事業における甲状腺検査の精度管理について
県民の皆様の信頼を不当に損なうものであり、毎日新聞には強く抗議するとともに、訂正を求めております

「検査責任者の鈴木眞一(真一は記事の誤り)・県立医大教授は開示後の2月13日の記者会見でも
『地域が特定されて本人に迷惑がかかる』と述べ、市町村別の判定結果を明らかにしなかった」
との報道について。


2月13日の検討委員会後の記者会見において鈴木教授は正確には
「B、C判定については非常に数が少なく、
地域が同定されて本人に迷惑がかかる可能性があるというのは十分に配慮しなければならない。」
とコメントしました。
一覧表そのものから直接個人を特定することはできないにしても、
地域が特定されれば、該当人数が少ない分、個人特定にたどりつく可能性を危惧したものです。

チェルノブイリにおいても、
放射線による健康影響についての情報が子どもの心に及ぼす影響は非常に大きいとの指摘があります。
その教訓からも、個人特定につながる可能性のある情報の公表はできるだけ慎重であるべき、
という考えが背景にあります。

なお、同時に鈴木教授は
「当然、統計学的には市町村単位や線量単位での検討というのは、今後必ずしなければならない」
ともコメントしております。

6歳のお子様に見つかったとされる7ミリの結節について

記事にある6歳のお子様の検査結果の食い違いについて、
県と医大が実施した検査結果が間違っているということはどのように確認されたのか
毎日新聞に問い合わせをしております。

検査のスピードアップのために検査項目を省略した という記事について

検査のスピードアップのために検査項目を省略しているというようなことは一切ございません。
甲状腺検査には手順、段階があります。
結節が認められない方に、結節の良・悪性を確認する検査項目をおこなうことはない、というように、
個人個人の甲状腺の状態に応じて必要とされる検査項目を手順にしたがっておこなっております。

例えば記事にある「血流の状態」という観察項目についても、
検査を行う医師・技師への説明資料内「観察項目」の頁に記載はありませんが、
腫瘍、びまん性甲状腺腫を疑う場合には必然的に血流状態の観察、確認をおこなっております。
このように、資料中に項目記載がないから検査を「実施していない」、
「観察項目を省略したことを公表していない」とすることは事実に反します。
検査のスピードアップのために検査項目を省略するようなことは一切ございません。

この点についても、毎日新聞には訂正を求めております。




ーーー

福島県が開示した甲状腺検査の自治体別判定結果(2011年度)

第10回「県民健康管理調査」検討委員会2013.2.13 <質疑応答文字起こし・ほとんど全部>

ーーー


福島県立医科大の放射線医学県民健康管理センターが毎日新聞に強く抗議したことに関して
OurPlanetTVでは2011年の資料を入手し、
「ガイドブックに沿った診断が実施されてい ないことが明らかである」と指摘しています。

続きを読むにOurPlanetTVの記事





【資料は語る1】
「精密」はウソ?〜甲状腺検査で観察項目を大幅省略

投稿者: ourplanet 投稿日時: 水, 04/24/2013 - 06:54


「精度の高い検査」と説明されてきた福島県県民健康管理調査の甲状腺検査。
毎日新聞が4月22日、甲状腺超音波診断ガイドブックの診断基準に記載されている検査項目のうち
4項目が省略されていると報じたことに対し、
福島県立医科大の放射線医学県民健康管理センターが、反論した。
しかし、 OurPlanetTVの入手した2011年の資料によると、3分の1にあたる4項目が×印や線で消されており、
ガイドブックに沿った診断が実施されてい ないことは明らか。

入手した資料を公開する。
 
入手したのは、2011年8月4日から毎週開催されている県立医科大学県民健康管理センターの
「甲状腺専門委員会」資料

県立医科大では2011年10月より、他の地域に先駆けて、
飯館村、浪江町、川俣町の山木屋地区に住んでいた18歳以下の子ども4000人を対象に、
県立医科大学で甲状腺検査を実施。
その後、11月以降、田村市、南相馬市、伊達市、川俣町(山木屋地区以外)、
広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、葛尾村の約28000人を対象に検査を実施し、
平成23年度に、計38114人が検査を受けている。
 
          平成23年度甲状腺検査市町村別検査結果

※2次検査対象者および結節ありと診断された子どもの市町村別人数と割合
(県の資料をもとにOurPlanetTVが作成)
 
効率化のために、観察項目を除外
飯館村、浪江町、川俣町山木屋地区を対象とした先行調査では、
検査に専門医が一人あたり1日50人だったが、その後、1人あたり60人に診断数を増加。
そのほかの地域を対照とする11月以降は、指導医と技師でチームをつくり、1日5ブースを用意。
1チームあたり1日100人計500人をこなすことを目標と した。
 
20万人もの子どもに甲状腺の検査をこととなった県民健康調査。
専門委員会は初回から「5チームが連日効率よく検診が出来るかが鍵」としており、
甲状腺結 節診断基準などを検討する2011年9月13日の第4回の委員会で、
「甲状腺の内部変化」
「血流の状態」
「腫瘤内外の血流状態」や
「組織弾性イメージング (エラスとグラフィ)」を観察項目から除外。

1人あたりの診断時間は大幅に縮小された。
 
2012年1月25日に開催された第5回福島県県民健康管理調査の準備会(「秘密会」)で、
放射線影響研究所の児玉和紀主席研究員が
3ヶ月で1万人もの 検査していることは驚異的」と発言したところ、
鈴木教授は「今は1日900人実施している。単純なシステムを開発した」と回答していた。
 







(秘密会資料上記4点は、2011年9月13日の第4回甲状腺専門委員会での配布資料>
 

(2012年1月25日の福島県県民健康管理調査検討会「秘密会」議事録より)
  
甲状腺超音波ガイドブックは2010年に改訂され、甲状腺全体の観察項目として、
(1)甲状腺の形状、
(2)大きさ
(3)甲状腺内部の変化、
(4)血流の 状態の4項目をを挙げているほか、
結節性甲状腺腫の観察項目として
(1)形状、
(2)境界、
(3)内部エコー、
(4)境界部低エコー、
(5)周辺機器との 関係、
(7)腫瘤内・外の血流状態
(8)組織弾力イメージングを実施するとしている。

県民健康調査の甲状腺検査は、このうち3分の1にあたる、4項目を除外していたことになる。
また、作成された「実際の作業の手順」も非常に簡素なものとなっている。

 
県民健康調査甲状腺検査の責任者を務めている
福島県立医科大の鈴木真一教授は、同ガイドブックの検討メンバーの一人。
これまで、福島県県民健康調査検討会 でも、
診断基準を整備した当事者として、同水準の検査をすると述べており、
福島県内各地で開催されている甲状腺説明会でも、
ガイドラインに沿った精度の高い甲状腺検査を実施していると発言してきた。
 
医師が直接診断しない福島県の甲状腺検査。
写真などのみによる判定に不安を抱く保護者も多く、
診療所や自主検診などで再度、検査をするケースも少なくない。
また、大人数が同時に検査をするためにトラブルも多く、
甲状腺専門委員会に提出された「アクシデント・リポート」によると、
去年11月9日、郡山市内 の中学校では、600人以上の生徒に対し、検査技師が午前4名、午後3名となり、
結果的に160人が当日検査を受けられない事態が生じた。
このほか、機器がうまく稼働せずに、検診の開始が遅れるケースなども出ている。






OurPlanetTV
会員のみなさまからの会費や、視聴者のみなさまからの寄付・カンパを基金に制作しています。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/92
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