放射線量、腎臓病リスク高める 放影研が被爆者調査
47NEWS 2013/05/12 16:52
原爆の被爆者が浴びた放射線量が多いほど慢性腎臓病(CKD)のリスクが高まることが12日、
日米共同の研究機関「放射線影響研究所」(放影研、広島市・長崎市)の研究で分かった。
米放射線影響学会の学術誌に発表した。
放影研によると、被爆者の慢性腎臓病と線量の関係が判明したのは初めて。
世羅至子研究員らが、2004~07年に放影研で成人健康調査を受けた長崎原爆被爆者のデータを分析。
うち慢性腎臓病の患者162人を含め、線量が判明している746人を対象に、
腎疾患と線量の関係を調べた。
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Radiation Research§掲載論文
「原爆被爆者における慢性腎臓病と心血管疾患危険因子との関連:横断調査」【共同通信】
【今回の調査で明らかになったこと】
原爆被爆者において、慢性腎臓病は心血管危険因子である高血圧、糖尿病、高脂血症、
メタボリック症候群と関連が見られた。
また放射線量と慢性腎臓病には関連が見られた。
とくに慢性腎臓病においてより程度が強い重度腎機能障害では放射線量との強い関連が見られた。
【解説】
がんの放射線治療の際の高線量被ばく(50-60 グレイ)により生じる心血管疾患と原爆被爆者(1-4 グレイ)において見られる心血管疾患の発生機序が同じであるか否かについては多くの議論があるが、原爆放射線被曝線量と高血圧、脂質異常、脂肪肝および炎症マーカー高値などの代謝性心血管危険因子との間には関連性が見られており、これらが原爆被爆者における心血管疾患の増加に関与している可能性が示唆されている。
近年心血管疾患の危険因子として慢性腎臓病が認識されるようになった。慢性腎臓病は2002 年に米国腎臓財団により提唱された新しい疾患概念である。原爆被爆者と腎臓病については最近腎不全死亡率と被曝線量の関連が報告された。しかし、原爆放射線と慢性腎臓病の関係についてはこれまで報告がなく不明であった。
放射線影響研究所の世羅至子研究員(長崎研究所臨床研究部)らは、
長崎の成人健康調査において、慢性腎臓病と高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリック症候群の関連
および放射線量と慢性腎臓病、腎機能障害の関連を調査し、Radiation Research 誌に結果を発表した。
1.調査の目的
原爆被爆者において慢性腎臓病と心血管危険因子である高血圧、糖尿病、高脂血症、
メタボリック症候群の関連および放射線量と慢性腎臓病の関連を調べる。
2.調査の方法
2004年から2007年に長崎で成人健康調査を行った 1,040人について、腎機能障害の程度に基づき、
正常(121人;推定糸球体ろ過率 eGFR ≥ 90 ml/分/1.73 m2)、
軽度腎機能障害(686人;eGFR 60–89 ml/分/1.73 m2)、
中等度腎機能障害(217人;eGFR 30–59 ml/分/1.73 m2)、
重度腎機能障害(16人;eGFR < 30 ml/分/1.73 m2)に分類し、
中等度および高度腎機能障害を一般的な診断基準に従い
慢性腎臓病(233 人;eGFR 59 ml/分/1.73 m2)と診断した。
そのうえで年齢、性別、喫煙および飲酒習慣を調節して
慢性腎臓病と高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリック症候群の関連を調べた。
1,040人のうち被曝線量が判明している 746 人において、
慢性腎臓病、腎機能障害と原爆放射線量の関連についても調べた。
3.調査の結果
慢性腎臓病と心血管危険因子の関連性慢性腎臓病は
心血管危険因子である高血圧(オッズ比 1.57;95%信頼区間 1.12–2.20、P = 0.009)、
糖尿病(オッズ比 1.79;95%信頼区間 1.23–2.61、P = 0.002)、
高脂血症(オッズ比 1.55;95%信頼区間 1.12–2.14、P = 0.008)、
メタボリック症候群(オッズ比 1.867;95%信頼区間 1.32–2.63、P < 0.001)と関連していた。
特に高脂血症とメタボリック症候群は軽度腎機能障害との関連もみられた。
慢性腎臓病と放射線量の関連性慢性腎臓病は放射線量と関連が見られた。
(オッズ比/1 Gy 1.29;95%信頼区間1.01–1.63、P = 0.038)、
また重度腎機能障害では放射線線量と強い関連が見られた。
(オッズ比/1 Gy 3.19;95%信頼区間 1.63–6.25、P < 0.001)
原爆被爆者において、今回初めて被曝放射線量と慢性腎臓病、高度腎機能障害との関連が示された。
また慢性腎臓病が高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリック症候群といった
心血管疾患の危険因子とも関連があることが明らかとなった。
以上の所見は慢性腎臓病が原爆被爆者における心血管疾患増加に関与している可能性を示唆しているが、
本研究が長崎の成人健康調査を対象としていたため、
重度腎機能障害者が 16人と少なく結果の解釈には慎重を期す必要がある。
このため今後広島、長崎成人健康調査を対象にさらに大規模な詳しい研究を予定している。
放射線影響研究所は、広島・長崎の原爆被爆者を 60 年以上にわたり調査してきた。
その研究成果は、国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の放射線リスク評価や
国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護基準に関する勧告の主要な科学的根拠とされている。
§Radiation Research 誌は、米国放射線影響学会の公式月刊学術誌であり、
物理学、化学、生物学、および医学の領域における放射線影響
および関連する課題の原著および総説を掲載している。
(2011年のインパクト・ファクター:2.684)
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| 2013.05.12 22:47 | 編集