ラジオフォーラム
第19回放送
放送日:5月18日(土)~24日(金)
ゲスト:纐纈(はなぶさ)あやさん(映画監督)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
放射能は何故怖いのか
小出裕章ジャーナル
石井:
今日は映画監督、「祝の島(ほうりのしま)」、
山口の上関原発に反対する島民のみなさんを描いたドキュメンタリー映画の纐纈さんと一緒にお話を伺います。
纐纈:よろしくお願いいたします、ご無沙汰いたしております。
小出:こんにちは、ご無沙汰しておりました。
石井:どこかでご一緒された事がおありになるそうですね。
小出:神戸の集会でご一緒させていただきました。
石井:
今日はですね、小出さん。
「放射能はなぜ怖いのか」についてお聞きしたいと思います。
まずですね、放射能というのを小出さんはどういうふうに説明していらっしゃいますか?
小出:
皆さん放射線というのは多分分かって下さると思います。
たとえば病院に行ったりするとエックス線撮影というのをうけますし、
学校でも年にいっぺん受けたり、入学の時に受けたりするわけですが、
そのエックス線というのは私たちが放射線と呼ぶものの一種です。
で、エックス線のほかにアルファ線とかガンマ線とかベータ線とかという、
放射線と呼ぶものがあるのですが、
放射能というのはその放射線を出す能力を意味する言葉です。
そして日本では、放射線を出す能力を持っているもの、つまり放射性物質を放射能と呼ぶ場合もよくあります。
石井:
そうすると
「放射能と放射線というのはまず違うよ」というところを前提として押さえて置かなければいけない。
小出:もちろんそうです。
石井:
私たちが本当に、「5年前には誰も知らなかった」とハッキリ言って良いと思いますが、
ベクレル、シーベルトという単位でですね、
これは放射線の値という理解でよろしいでしょうか?
小出:
ええっと、ベクレルというのは、放射能の強さの単位。
物には何でも単位がありますね、たとえば身長を測る時には1m何十cmと測るわけですし、
体重を測る場合には何十kgとか、どんなものにも単位があるわけですが、
放射能に関する単位がベクレル。
その放射能から放射線が飛び出してきて、人々が被ばくする時に、
その被ばくの量を測るのがシーベルトという単位です。
石井:なるほど。これはある種の「相関関係がある」という理解でよろしいんですか?
小出:
これもまぁなかなか難しいのですが、
たとえば電球を考えて下さい。
電球の明るさがありますね。
たとえば100ワットとか200ワットとか、
それが言ってみいれば放射能の強さに対応しています。
電気急が明るければ放射能の強さは強いし、暗い電球の場合は放射能の強さが弱いと思って下さい。
その電球のごく近くにいれば明るさを強く感じることができるわけですし、
その電球から遠く離れていってしまえば、明るさを感じないようになるわけですね。
ですから人がどこにいるかによって、明るさというのが変わってしまう訳で、
その人が感じる明るさというのがむしろ被ばくの単位であるシーベルトを意味しています。
ですから、同じ1ベクレルと言っても、危険の程度が違いますし、
その放射性物質にどれだけ近づいているかによって、人々が被ばくする量、
つまりシーベルトという事も違ってくるという事なのです。
石井:とすると、大変ベクレルの高いものの近くにいれば、シーベルトは当然高くなると。
小出:おっしゃる通りです。
石井:大変危険であると。
小出:
そうです。
ですから放射能から被ばくをしないようにと思えば、なによりもその放射能、つまり放射性物質ですけれども、
それから遠ざかるという事が一番大切なことになります。
石井:
いま小出さんがおっしゃられた「放射能が大変危険だ」という事なんですけれども、
なぜ危険で、どのように人体に影響があるというふうに
小出さんたち科学者の間では考えられているんでしょうか?
小出:
「被ばくがどれほど危険か」という事の情報というのは、
長い被ばくの歴史の中でだんだんわかってきたわけです。
特に広島・長崎の原爆で沢山の人が死んでしまったり、火傷を負ったりしたわけですけれども、
人間は大量に被ばくをしてしまうと死んでしまう訳ですね。
では大量というとどれだけなのか?というと、
8シーベルトという被ばくをすると、人間は100%死んでしまいます。
ではその8シーベルトという被ばくがどの程度のものか?という事ですけれども、
被ばくというのはもともと放射線から、人間なら人間がエネルギーを受けてしまうという事なのですが、
その放射線から受けたエネルギーで、人間の体温は8シーベルトという被ばくをしたとしても、
1000分の2度しか上がりません。
私はちょっとこの数日風邪気味なのですが、
たとえば体温が1度上がるというようなことはみなさんどなたでもあると思います。
でも人間は死なないんですねそんなことでは。
しかし、事放射線からエネルギーを与えられてしまう場合には
体温が1000分の2度上がるだけでも100%死んでしまうという、それほどのものなのです。
何故かというとですね、
放射線と私たちが呼んでいるもののエネルギーが、生き物を支えているエネルギー、
つまり水素や酸素や炭素がお互いに結びつけあって生き物というのは生きているのですけれども、
その結び付けているもののエネルギーに比べると、
「何十万倍も何百万倍も高い」というのが放射線のエネルギーなんです。
そんなものが生き物の身体の中に入ってきてしまいますと、
生き物が持っている遺伝情報なども含めてズタズタに切り裂かれてしまう、
そのため、わずか1000分の数度という位にしか体温が上がらなくても
生き物は生きていけないという事になてしまうのです。
石井:
大人の方より子どもの方の方が非常に被害を受けやすいというふうにも聞いていますが、
これはなぜでございますか?
小出:
えっと、石井さんと私は違う人間ですね。
わたしと纐纈さんも違う人間です。
それは私が持っている遺伝情報が石井さんとも纐纈さんとも違いますし、
全ての人で遺伝情報が違うから、なのですね。
そしてその遺伝情報というのは、私の一人の人間の細胞の中に遺伝情報というものが書き込まれていて、
それが細胞分裂という形で増えながら私なら私という体を支えているのですね。
ただ、もう私なんかは60歳を超えた人間ですから、細胞分裂をそんなに活発にしているものではありません。
ただし赤ん坊とか、5歳10歳15歳というような子どものころには、
細胞分裂をどんどん繰り返しながら、遺伝情報を正確に複製しながら生きていく訳です。
そういう時代に遺伝情報に傷を受けてしまいますと、
その傷ついた遺伝情報がどんどん増幅してしまうということで、
子どもの時の被ばくは大人に比べると圧倒的に影響が大きくなってしまうんです。
石井:
なるほどね、とするとやっぱり、
現在福島の原発の近くでですね、何らかの形で放射線の影響を受けている人達の身体にですね、
大変目に見えない影響が出ているという判断をせざるを得ないですよね。
小出:
そうです。
いま被ばくで傷ついた細胞が、大きくなっていくにしたがって
細胞分裂という形で増殖していくのですけれども、
それが何時の時点かで癌や白血病という病気になってあらわれてくる可能性もある訳ですし、
先程聞いていただいたように、
放射線のもっているエネルギーは、生命体を支えているエネルギーに比べて圧倒的に高いので、
多分、癌や白血病だけじゃなくて、さまざまな異常というものが出てくるのだろうと私は思います。
そういう中で子どもを含めて沢山の人が今現在も被ばくをしてしまっているわけで、
本当であれば逃げて欲しいのですけれども、なかなか逃げる事が出来ないままになっています。
そうであればせめて「子どもたちを少しでも被ばくから守る」という事が、私たち大人の責任だと思います。
石井:
そうですね、
大人が放射能や放射線の危険について伝えていく、ま、一助になればいいと思いますので、
初歩的な質問ばかりで申しわけないんですが、今しばらくお付き合いください。
今日はどうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
第19回放送
放送日:5月18日(土)~24日(金)
ゲスト:纐纈(はなぶさ)あやさん(映画監督)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
放射能は何故怖いのか
小出裕章ジャーナル
石井:
今日は映画監督、「祝の島(ほうりのしま)」、
山口の上関原発に反対する島民のみなさんを描いたドキュメンタリー映画の纐纈さんと一緒にお話を伺います。
纐纈:よろしくお願いいたします、ご無沙汰いたしております。
小出:こんにちは、ご無沙汰しておりました。
石井:どこかでご一緒された事がおありになるそうですね。
小出:神戸の集会でご一緒させていただきました。
石井:
今日はですね、小出さん。
「放射能はなぜ怖いのか」についてお聞きしたいと思います。
まずですね、放射能というのを小出さんはどういうふうに説明していらっしゃいますか?
小出:
皆さん放射線というのは多分分かって下さると思います。
たとえば病院に行ったりするとエックス線撮影というのをうけますし、
学校でも年にいっぺん受けたり、入学の時に受けたりするわけですが、
そのエックス線というのは私たちが放射線と呼ぶものの一種です。
で、エックス線のほかにアルファ線とかガンマ線とかベータ線とかという、
放射線と呼ぶものがあるのですが、
放射能というのはその放射線を出す能力を意味する言葉です。
そして日本では、放射線を出す能力を持っているもの、つまり放射性物質を放射能と呼ぶ場合もよくあります。
石井:
そうすると
「放射能と放射線というのはまず違うよ」というところを前提として押さえて置かなければいけない。
小出:もちろんそうです。
石井:
私たちが本当に、「5年前には誰も知らなかった」とハッキリ言って良いと思いますが、
ベクレル、シーベルトという単位でですね、
これは放射線の値という理解でよろしいでしょうか?
小出:
ええっと、ベクレルというのは、放射能の強さの単位。
物には何でも単位がありますね、たとえば身長を測る時には1m何十cmと測るわけですし、
体重を測る場合には何十kgとか、どんなものにも単位があるわけですが、
放射能に関する単位がベクレル。
その放射能から放射線が飛び出してきて、人々が被ばくする時に、
その被ばくの量を測るのがシーベルトという単位です。
石井:なるほど。これはある種の「相関関係がある」という理解でよろしいんですか?
小出:
これもまぁなかなか難しいのですが、
たとえば電球を考えて下さい。
電球の明るさがありますね。
たとえば100ワットとか200ワットとか、
それが言ってみいれば放射能の強さに対応しています。
電気急が明るければ放射能の強さは強いし、暗い電球の場合は放射能の強さが弱いと思って下さい。
その電球のごく近くにいれば明るさを強く感じることができるわけですし、
その電球から遠く離れていってしまえば、明るさを感じないようになるわけですね。
ですから人がどこにいるかによって、明るさというのが変わってしまう訳で、
その人が感じる明るさというのがむしろ被ばくの単位であるシーベルトを意味しています。
ですから、同じ1ベクレルと言っても、危険の程度が違いますし、
その放射性物質にどれだけ近づいているかによって、人々が被ばくする量、
つまりシーベルトという事も違ってくるという事なのです。
石井:とすると、大変ベクレルの高いものの近くにいれば、シーベルトは当然高くなると。
小出:おっしゃる通りです。
石井:大変危険であると。
小出:
そうです。
ですから放射能から被ばくをしないようにと思えば、なによりもその放射能、つまり放射性物質ですけれども、
それから遠ざかるという事が一番大切なことになります。
石井:
いま小出さんがおっしゃられた「放射能が大変危険だ」という事なんですけれども、
なぜ危険で、どのように人体に影響があるというふうに
小出さんたち科学者の間では考えられているんでしょうか?
小出:
「被ばくがどれほど危険か」という事の情報というのは、
長い被ばくの歴史の中でだんだんわかってきたわけです。
特に広島・長崎の原爆で沢山の人が死んでしまったり、火傷を負ったりしたわけですけれども、
人間は大量に被ばくをしてしまうと死んでしまう訳ですね。
では大量というとどれだけなのか?というと、
8シーベルトという被ばくをすると、人間は100%死んでしまいます。
ではその8シーベルトという被ばくがどの程度のものか?という事ですけれども、
被ばくというのはもともと放射線から、人間なら人間がエネルギーを受けてしまうという事なのですが、
その放射線から受けたエネルギーで、人間の体温は8シーベルトという被ばくをしたとしても、
1000分の2度しか上がりません。
私はちょっとこの数日風邪気味なのですが、
たとえば体温が1度上がるというようなことはみなさんどなたでもあると思います。
でも人間は死なないんですねそんなことでは。
しかし、事放射線からエネルギーを与えられてしまう場合には
体温が1000分の2度上がるだけでも100%死んでしまうという、それほどのものなのです。
何故かというとですね、
放射線と私たちが呼んでいるもののエネルギーが、生き物を支えているエネルギー、
つまり水素や酸素や炭素がお互いに結びつけあって生き物というのは生きているのですけれども、
その結び付けているもののエネルギーに比べると、
「何十万倍も何百万倍も高い」というのが放射線のエネルギーなんです。
そんなものが生き物の身体の中に入ってきてしまいますと、
生き物が持っている遺伝情報なども含めてズタズタに切り裂かれてしまう、
そのため、わずか1000分の数度という位にしか体温が上がらなくても
生き物は生きていけないという事になてしまうのです。
石井:
大人の方より子どもの方の方が非常に被害を受けやすいというふうにも聞いていますが、
これはなぜでございますか?
小出:
えっと、石井さんと私は違う人間ですね。
わたしと纐纈さんも違う人間です。
それは私が持っている遺伝情報が石井さんとも纐纈さんとも違いますし、
全ての人で遺伝情報が違うから、なのですね。
そしてその遺伝情報というのは、私の一人の人間の細胞の中に遺伝情報というものが書き込まれていて、
それが細胞分裂という形で増えながら私なら私という体を支えているのですね。
ただ、もう私なんかは60歳を超えた人間ですから、細胞分裂をそんなに活発にしているものではありません。
ただし赤ん坊とか、5歳10歳15歳というような子どものころには、
細胞分裂をどんどん繰り返しながら、遺伝情報を正確に複製しながら生きていく訳です。
そういう時代に遺伝情報に傷を受けてしまいますと、
その傷ついた遺伝情報がどんどん増幅してしまうということで、
子どもの時の被ばくは大人に比べると圧倒的に影響が大きくなってしまうんです。
石井:
なるほどね、とするとやっぱり、
現在福島の原発の近くでですね、何らかの形で放射線の影響を受けている人達の身体にですね、
大変目に見えない影響が出ているという判断をせざるを得ないですよね。
小出:
そうです。
いま被ばくで傷ついた細胞が、大きくなっていくにしたがって
細胞分裂という形で増殖していくのですけれども、
それが何時の時点かで癌や白血病という病気になってあらわれてくる可能性もある訳ですし、
先程聞いていただいたように、
放射線のもっているエネルギーは、生命体を支えているエネルギーに比べて圧倒的に高いので、
多分、癌や白血病だけじゃなくて、さまざまな異常というものが出てくるのだろうと私は思います。
そういう中で子どもを含めて沢山の人が今現在も被ばくをしてしまっているわけで、
本当であれば逃げて欲しいのですけれども、なかなか逃げる事が出来ないままになっています。
そうであればせめて「子どもたちを少しでも被ばくから守る」という事が、私たち大人の責任だと思います。
石井:
そうですね、
大人が放射能や放射線の危険について伝えていく、ま、一助になればいいと思いますので、
初歩的な質問ばかりで申しわけないんですが、今しばらくお付き合いください。
今日はどうもありがとうございました。
小出:ありがとうございました。
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