ラジオフォーラム
第23回放送 南海トラフ地震〜ふたつの大震災から学ぶこと
放送日:6月15日(土)~22日(金)
ゲスト:渡辺実さん(防災・危機管理ジャーナリスト)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
小出裕章ジャーナル
石井:
今日のゲストは防災・危機管理ジャーナリスト渡辺実さんです、よろしくお願いします。
今日は、「地震」をテーマにお送りしているんですけれども、
地震によって原発に多大な影響損害が与えられるという事は、
今回の福島原発をみても、私たちは十分理解をしている筈なんですが、
活断層の上に原発がいくつもありますよね。
小出:えぇ・・はい、そうですね。
石井:どうしてこんなことになっちゃったんでしょうか?
小出:
えっと、日本中活断層が無いところはないし、
もともと活断層を避けて原発を建てるという事自身が不可能だからです。
石井:活断層を避けて原発を建てることは不可能。
小出:はい。
石井:
活断層の研究が進んでいなかった、
あるいは、活断層を無視して原発を建てた。
小出:
もともと活断層の研究が無い昔から日本で原子力発電所を建て始めた。
1966年には東海1号炉をつくってしまいましたし、
浜岡だって70年代初めにはもう動きだしている訳で、
その頃はまだまだ活断層というものに関しての研究はほとんどない状態で
日本の原子力発電所は出来てきたのです。
石井:
んーー・・・、なるほど、それからもうひとつね、小出さん、
福島第一原子力発電所の事故について、東京電力側は「あれは津波である」と。
「大きな被害は津波によって起きているんだ」と主張をされています。
小出さんはそうではありませんよね?
小出:
えーっと、津波というものが大きな要因になったという事自身は疑いのない事ですけれども、
津波の他にも地震そのものによって、
原子力発電所の構造物が破壊された可能性が強いと私は思っています。
石井:
その場合に時に問題なのは、
原子力発電所はつまり何重もの安全装置があるというふうに言われてきましたけれども、
地震によって、大きな地震によって地表そのものがずれると、
あの、僕も柏崎の原子力発電所のかなり中まで入った事があるんですが、
山のようなパイプが張り巡らされていて、
小出:そうです。
石井:これは絶対外れますよね?
小出:
これまではですね、
地震が起きた時に、建屋がどのように振動して、
その中にある配管などがどのように振動して壊れるのか、壊れないのか、という、
それだけを審査してきたのですが、
たとえば活断層が原子炉建屋の直下にあって、
そこで縦にずれてしまう、あるいは横でもいいですけど、ずれてしまうという事になると、
振動ではなくて建屋自身が変形してしまう訳ですね。
そうなった時に原子力発電所というのは配管のお化けのような機械なのですけれども、
「配管は多分もうもたない」と考えるのが当り前だろうと思います。
これまではそのようなことを無視してきてしまったということなのです。
石井:
今日実は前半でですね、南海トラフ地震について渡辺さんと話を聞いてきたんですけれども、
南海トラフ地震の被害想定の区域の中に、浜岡と伊方原発がありますよね。
小出:はい、そうです。
石井:この伊方原発もかなり危険ですか?
小出:
伊方原発というのはですね、行ってみていただければお分かり頂けると思うのですが、
愛媛県の佐多岬というかなり急峻な岬があるのですが、
その急峻な岬の崖っぷちに建っているのですね。
で、伊方原発の海側は、かなり深い海がストッ!と落ちていまして、
そこに溝のような地層が存在しているという事が分かっていて、
そこが中央構造線という、日本最大の活断層だというふうに考えられています。
ですから南海トラフももちろん重要ですけれども、
日本最大の活断層の、まさにその横にあるという、そういう発電所ですので、
昔から私たちは心配してきています。
渡辺:番組の前半で南海トラフの、例の政府の被害想定のお話をしました。
小出:はい、ありがとうございます。
渡辺:
政府は、これは最悪のシナリオで、32万人の死者。220兆。
これが最大の最悪の被害だと。
「しかし原発の被害が入ってないんだよ」っていう話をしました。
担当者とこの議論を、担当者というのは
被害想定をした政府の担当者とこの議論をすると、
まだ福島の被害のメカニズムが、どうしてこんな大きな被害が出たのかという事が分からないから、
被害想定の前提としては入れられない。
「従って被害想定が出せない」という回答なんですね。
小出:そうですか、はい。
渡辺:
これはとても大きな大事な問題で、
にもかかわらず、「最悪最大」という言葉を政府が使って、
マスコミがその数字に飛びついて、
もうそれですら完全に、たとえば地方自治体など歩くと、
または僕の事務所に相談に来る自治体の職員の方は、
「もうこんな大きな被害では何の対策も出来ない、お手上げだ」ということを
多くの方がおっしゃるんですね。
しかし僕はいつも言うんですが、
「実はそれは最悪ではないよ」
「ここにプラス、原発震災、原発災害という物が加わるんだよ」っていう事をお話をしてるんですが、
なぜ今、
たとえば途中段階でも、その要素を外してしまうと国民の目からそれが外れてしまうんですよね。
だから、正確な数字ではないけれども、算定的だという条件付きで、
原発被害をこの被害総計の中に入れる事は、先生は不可能だと思ってらっしゃいます?
小出:
もちろん不可能ではありませんけれども、
いま現在進行中の福島原発の事故で、一体いくらの被害が出るかという事でさえ、
全く分からないままなんですね。
多分私は福島の事故を本当にその日本の法令にのっとって補償する、賠償するというような事をすれば、
何100兆円あっても足りないと思っていますけれども、
その推計自身がいまだに出来ていないという段階なのですから、
仮に南海トラフ地震が起きた時にどれ位の被害が起きるのかという事を推定するという事は、
もうほとんど不可能ではないかと思います。
防災というのはもともと、最悪の事態、
最悪の事態というものを想定しながら行かなければいけないはずで、
原発の事を全く初めから無視してしまうなんていう事は
防災の原則から著しく逸脱してしまっていると思いますし、
220兆円だったでしょうか?
なんか、はじき出した数字もですね、
要するに「最大でもなければ、最悪でもない」という事を
まず初めに言っておかなければいけない事だと思います。
渡辺:
その、次の南海トラフ。
これは確実にきますから、
そこではもう、
「議論にならないような状況をいま、政府は作りだしている」ようにしか僕には思えないんです。
小出:はい、私もまったく同感です。
石井:
とりあえず、日本には今「沢山の断層がある」と。
「断層の上に原発はあるんだ」と。
当時は断層の研究というのはほとんど進んでいなくて、
進んでいないうちに
「どんどん原発つくっちゃえ」という形でつくられてきた
というお話があったという理解でよろしいですね?
小出:結構です。
第23回放送 南海トラフ地震〜ふたつの大震災から学ぶこと
放送日:6月15日(土)~22日(金)
ゲスト:渡辺実さん(防災・危機管理ジャーナリスト)
パーソナリティ:石井彰(放送作家)
小出裕章ジャーナル
石井:
今日のゲストは防災・危機管理ジャーナリスト渡辺実さんです、よろしくお願いします。
今日は、「地震」をテーマにお送りしているんですけれども、
地震によって原発に多大な影響損害が与えられるという事は、
今回の福島原発をみても、私たちは十分理解をしている筈なんですが、
活断層の上に原発がいくつもありますよね。
小出:えぇ・・はい、そうですね。
石井:どうしてこんなことになっちゃったんでしょうか?
小出:
えっと、日本中活断層が無いところはないし、
もともと活断層を避けて原発を建てるという事自身が不可能だからです。
石井:活断層を避けて原発を建てることは不可能。
小出:はい。
石井:
活断層の研究が進んでいなかった、
あるいは、活断層を無視して原発を建てた。
小出:
もともと活断層の研究が無い昔から日本で原子力発電所を建て始めた。
1966年には東海1号炉をつくってしまいましたし、
浜岡だって70年代初めにはもう動きだしている訳で、
その頃はまだまだ活断層というものに関しての研究はほとんどない状態で
日本の原子力発電所は出来てきたのです。
石井:
んーー・・・、なるほど、それからもうひとつね、小出さん、
福島第一原子力発電所の事故について、東京電力側は「あれは津波である」と。
「大きな被害は津波によって起きているんだ」と主張をされています。
小出さんはそうではありませんよね?
小出:
えーっと、津波というものが大きな要因になったという事自身は疑いのない事ですけれども、
津波の他にも地震そのものによって、
原子力発電所の構造物が破壊された可能性が強いと私は思っています。
石井:
その場合に時に問題なのは、
原子力発電所はつまり何重もの安全装置があるというふうに言われてきましたけれども、
地震によって、大きな地震によって地表そのものがずれると、
あの、僕も柏崎の原子力発電所のかなり中まで入った事があるんですが、
山のようなパイプが張り巡らされていて、
小出:そうです。
石井:これは絶対外れますよね?
小出:
これまではですね、
地震が起きた時に、建屋がどのように振動して、
その中にある配管などがどのように振動して壊れるのか、壊れないのか、という、
それだけを審査してきたのですが、
たとえば活断層が原子炉建屋の直下にあって、
そこで縦にずれてしまう、あるいは横でもいいですけど、ずれてしまうという事になると、
振動ではなくて建屋自身が変形してしまう訳ですね。
そうなった時に原子力発電所というのは配管のお化けのような機械なのですけれども、
「配管は多分もうもたない」と考えるのが当り前だろうと思います。
これまではそのようなことを無視してきてしまったということなのです。
石井:
今日実は前半でですね、南海トラフ地震について渡辺さんと話を聞いてきたんですけれども、
南海トラフ地震の被害想定の区域の中に、浜岡と伊方原発がありますよね。
小出:はい、そうです。
石井:この伊方原発もかなり危険ですか?
小出:
伊方原発というのはですね、行ってみていただければお分かり頂けると思うのですが、
愛媛県の佐多岬というかなり急峻な岬があるのですが、
その急峻な岬の崖っぷちに建っているのですね。
で、伊方原発の海側は、かなり深い海がストッ!と落ちていまして、
そこに溝のような地層が存在しているという事が分かっていて、
そこが中央構造線という、日本最大の活断層だというふうに考えられています。
ですから南海トラフももちろん重要ですけれども、
日本最大の活断層の、まさにその横にあるという、そういう発電所ですので、
昔から私たちは心配してきています。
渡辺:番組の前半で南海トラフの、例の政府の被害想定のお話をしました。
小出:はい、ありがとうございます。
渡辺:
政府は、これは最悪のシナリオで、32万人の死者。220兆。
これが最大の最悪の被害だと。
「しかし原発の被害が入ってないんだよ」っていう話をしました。
担当者とこの議論を、担当者というのは
被害想定をした政府の担当者とこの議論をすると、
まだ福島の被害のメカニズムが、どうしてこんな大きな被害が出たのかという事が分からないから、
被害想定の前提としては入れられない。
「従って被害想定が出せない」という回答なんですね。
小出:そうですか、はい。
渡辺:
これはとても大きな大事な問題で、
にもかかわらず、「最悪最大」という言葉を政府が使って、
マスコミがその数字に飛びついて、
もうそれですら完全に、たとえば地方自治体など歩くと、
または僕の事務所に相談に来る自治体の職員の方は、
「もうこんな大きな被害では何の対策も出来ない、お手上げだ」ということを
多くの方がおっしゃるんですね。
しかし僕はいつも言うんですが、
「実はそれは最悪ではないよ」
「ここにプラス、原発震災、原発災害という物が加わるんだよ」っていう事をお話をしてるんですが、
なぜ今、
たとえば途中段階でも、その要素を外してしまうと国民の目からそれが外れてしまうんですよね。
だから、正確な数字ではないけれども、算定的だという条件付きで、
原発被害をこの被害総計の中に入れる事は、先生は不可能だと思ってらっしゃいます?
小出:
もちろん不可能ではありませんけれども、
いま現在進行中の福島原発の事故で、一体いくらの被害が出るかという事でさえ、
全く分からないままなんですね。
多分私は福島の事故を本当にその日本の法令にのっとって補償する、賠償するというような事をすれば、
何100兆円あっても足りないと思っていますけれども、
その推計自身がいまだに出来ていないという段階なのですから、
仮に南海トラフ地震が起きた時にどれ位の被害が起きるのかという事を推定するという事は、
もうほとんど不可能ではないかと思います。
防災というのはもともと、最悪の事態、
最悪の事態というものを想定しながら行かなければいけないはずで、
原発の事を全く初めから無視してしまうなんていう事は
防災の原則から著しく逸脱してしまっていると思いますし、
220兆円だったでしょうか?
なんか、はじき出した数字もですね、
要するに「最大でもなければ、最悪でもない」という事を
まず初めに言っておかなければいけない事だと思います。
渡辺:
その、次の南海トラフ。
これは確実にきますから、
そこではもう、
「議論にならないような状況をいま、政府は作りだしている」ようにしか僕には思えないんです。
小出:はい、私もまったく同感です。
石井:
とりあえず、日本には今「沢山の断層がある」と。
「断層の上に原発はあるんだ」と。
当時は断層の研究というのはほとんど進んでいなくて、
進んでいないうちに
「どんどん原発つくっちゃえ」という形でつくられてきた
というお話があったという理解でよろしいですね?
小出:結構です。
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