後半・「原子力というのは核です。 核兵器そのものなのです。力の論理で平和が築ける筈はないのです」小出裕章氏9.1さようなら原発講演会(文字起こし)

9.1さようなら原発講演会
2013年9月1日 日比谷公会堂

ここまでは↓
前半・「そして今彼らは、この事故をなかった事にしようとしています」
小出裕章氏9.1さようなら原発講演会(文字起こし)



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小出裕章氏:
これからですが、
福島の問題はもちろんとてつもなく重大な問題です。
しかし、原子力の問題というのは、単に安全か危険かという問題ではありません

もともと日本が原子力をやろうとした動機は、「核開発」です。

ここに我が国の外交政策大綱という文書があるんですが、その中の一節を紹介したいと思います。
こう書いてある。

核兵器については,
NPTに参加すると否とにかかわらず,当面核兵器は保有しない政策をとるが,
核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともに
これに対する掣肘(せいちゅう)をうけないよう配慮する。
また、核兵器の一般についての政策は、国際政治、経済的な理解特質の計算に基づくものである。
との趣旨を国民に啓発する



すでに1969年にこういう方針を建てて原子力を進めてきたのです。

ある時には外務省の幹部が新聞のインタビューでこんなことを答えています。
(朝日新聞 1992年1月19日)
個人としての見解だた、日本の外交力の裏付けとして、
核武装の選択の可能性を捨ててしまわない方がいい。
保有能力はもつが、当面政策として持たないという形でいく。
そのためにもプルトニウムの蓄積と、
ミサイルに転用できるロケット技術は開発しておかなければならない。
というのです。
まことに見事だと私は思います。
原子力の平和利用だと言いながらプルトニウムはどんどんどんどん蓄積して懐に入れてきました。
すでに日本には45トンの分離されたプルトニウムがありますが、
それで原爆をつくれば4000発作れてしまいます。

そしてつい先日はイプシロンというロケットの打ち上げようとしました。
その前にはH2ロケットは沢山打ち上げているんですね。
それも全てミサイルに転用できるロケット技術を開発できるという事でやってきたのです。

日本国内では、たとえば朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星を打ち上げる、
そのために「ロケットを打ち上げるんだ」と言って、イカオ(ICAO)という国際的な団体に申請しました。
申請した通りにロケットを朝鮮民主主義人民共和国が打ち上げた。
それに対して日本という国は「実質的なミサイルを打ち上げた」というんですね。
「撃墜する場合もある」というような事を言う国でした。
何のことはない、日本は沢山H2ロケットでもなんでも打ち上げている。
「それはじゃあ、実質的なミサイルではないのか?」と、むしろ私は聞きたくなります。


朝鮮民主主義人民共和国が核兵器をつくった作らないということがありますけれども、
私は実はまだ、彼らは作ってないと今でも思っているのですが、
どうせ出来たとしてもするはずです。
それなのに日本はもうすでに4000発もつくれるだけの材料を懐に入れているという、そういう国なのです。

今、世界を支配しているのは国連です。
国連というのは英語で言えばUnited Nationsです。
かつて日本と戦った連合国が今世界を支配している訳です。
日本は戦争で戦った国ですから、国連憲章の中には敵国条項というのがあって
悪い国には特別のやり方、制裁をとっていいという事がいまだに国連憲章の中に残っているのです。

その国連の常任理事国は、米国、ロシア、英国、フランス 中国ですけれども
沢山の連合国があった中で、なんでこの5カ国だけが常任理事国になっているのかと言えば、
核兵器を持っているからです。

核兵器を持つという事は現在の世界を支配するために決定的に重要なファクターになってしまっているという、
そういう世界があります。
そして、その5カ国には核兵器を製造するための中心3技術というのがあります。
ウラン濃縮、原子炉、再処理、という3つの技術ですけれども、
その3つをもちろん持っています。
で、自分は持っているけれども他の国にはそれは持たせないというので、核不拡散条約をつくって、
自分たちだけが独占できるようにする。
そして、さっきもちょっと出ました
IAEAという国際的な原子力マフィアを使って、他の国を監視するという、
そういう体制をずーーっと作ってきました。

しかしそういう体制の中で、
核兵器保有国ではなくて中心3技術の全てを持っている国が世界で1カ国だけあるんです。

どこですか?
日本ですよね。

日本という国は平和利用だという事を言いながら、
実質的な核保有国にすでになったという、非常に特殊な国なのです。

そのためまた日本は、さらなる悪事を働こうとしています。
昨年の6月に原子力基本法というものが改定されました。(2012年6月20日成立)
もともと基本方針にはこう書いてありました。
「原子力利用は平和の目的に限り、安全の確保を旨として、
民主的な運営のもとに実質的にこれを行うものとし、その成果を公開し、
進んで国際協力に資するものとする」と書いてあります。
なんとなく文言は綺麗に読めますけれども、
「平和の目的に限り」なんてあっても
「実質的には核兵器を開発するためにやってきた」というのは今聞いていただいた通りです。

そして去年の6月にこんな文言を付け加えました。

前項の安全の確保については確立された国際的な基準を踏まえ、
国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全、
並びに我が国の安全保障に資することを目的として行うものとする。

安全保障」という言葉はみなさんよくご存じだと思いますけれど、
「日米安全保障条約」という名前がある通り、軍事的な専門用語です。

つまり日本は原子力をやるにあたって、
「安全保障を目的としてやるんだ」というところにまで、日本の政府は踏み込んできている。
つまり、日本というこの国が核兵器を持つか持たないかという事は、
政策の問題だし、利害得失に基づくものだという事を、国民にちゃんと知らせようという事を
多分やり始めたという事だと思います。


私は原子力にいる人間として、
原子力は徹底的に危険だと思います。

こんなものはやってはいけないと思いますけれども、
私が原子力に反対しているのは単に危険だからではありません。

原子力というのは他者の犠牲の上にしか成り立たないという、そういうものです。
差別に基づかなければできないという、そういうものに私は反対しています。


もともと原子力発電所で働いている労働者の被ばくは、
9割以上は下請け孫請けの労働者が担ってきました。
そこで事故が起きたら大変だという事で、都会を離れて過疎地に押し付けた。
過疎地で事故が起きてしまえば、そこの人達が本当に苦難のどん底に突き落とされて、
そして事故の収束に行くのは
下請け孫請けの労働者たちがまた被ばくをさせられてしまうということになります。

仮に事故が起こらなくても、原子力を使ってしまう限りは、
核分裂生成物という放射性物質を生み出してしまって、
その放射性物質を私たちが無毒化する力を持っていないのです。
100万年にもわたってどこかに隔離をしなければいけない。
そんな事が出来る道理が無いのです。

私が死んでも、皆さんが死んでも、自民党政権なんてなくなっても、
無くならない毒を残していくという事になります。


今私たちが原子力を選択するという事に、何の決定権も持たない子どもたち。
未来の子どもたちが毒物だけを押し付けられるという事になります。

未来犯罪」とでも呼ぶべきだと私は思います。


その上で今聞いていただいたように、
原子力というのは核です。
核兵器そのものなのです。


皆さんは原子力と核は違うものだと思い込まされてきたかもしれませんが、同じものなのです。
その核を持つ事が世界を支配するための力なのだと、
要するに自民党政権もみんな思っているわけですけれども、力の論理で平和が築ける筈はないのです

その事に気付かなければいけないと思うし、
私たちは他の人々を犠牲にするという、そういう原子力、
原子力的なものというものを捨てるということが必要なのだと思います。

これはお分かりになりますね。

では、私たちがいる日比谷公会堂です。
私は日比谷公会堂のこの壇上にいます。
そして、53年前、この壇上でなにが起きたかというとこういう事でした。

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今見て下さった通りですけれども、
当時社会党の副委員長だった浅沼稲次郎さんが、こういう姿で殺されました。
犯人は防共挺身隊(ぼうきょうていしんたい)の山口二矢(おとや)という、17歳の少年でした。
この事件を受けて、大江さんが小説を書いて、「政治少年死す」という小説でしたけど書いてくれました。
大変困難の多い時代であったと思います。

自由とか平和とかを守るという事は、大変難しい。
自由や平和をつくっていくことも大変難しいことだと思います。

今私はここに、日本国憲法の前文を書こうと思っているのですけれども、
初めの方にこういう事が書いてあります。

政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こる事が無いようにする事を決意し、
ここに主権が国民に存することを宣言する。


つまり、政府がバカなことをやらないように私たち国民がちゃんとチェックして政府を監視するんだと、
それを決意したというのが日本国憲法なのです。

私たち一人一人がしっかりしなければならない。
そうしなければ自由も平和も作れない。
また戦争になってしまうよ
という事が憲法前文に書いてある。
そして、こう書いてある。

平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した。


というのです。
軍事力によってわれらの安全を保障しようというのではないのです。
軍隊では無い、諸国民の公正と信義に信頼して、自分の安全を守ると決意したというのです。

これは大変な事なのです。
簡単なことではない。
とても大変なことを私たち国民が請け負うという事を書いているのです。
そしてこうです

全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和のうちに生存する権利を有することを確認する。


というのです。
日本だけでは無いんです。
世界中全部の国の人々が平和のうちに生存する権利があるということを認める。

一国平和主義でもなんでもないんです。
世界全体を平和にするために自分たちは軍隊を捨てると言っているわけですし、
諸国民の公正と信義に信頼すると言っているんです。


大変素晴らしい憲法だと私は思います。
なんとしてもこれを守るという事も同時に考えています。


かつて戦争がありました。
大本営の発表ばかりで、一般の人々はほとんど真実を聞かされませんでした。
いつも勝っている、戦争で勝っていると聞かされて、
日本は神国だ。
天皇陛下がいるから絶対に戦争は勝てると言われました。

実際の軍隊は殲滅されて無くなっちゃっている時は今度は転戦だと言うことばで報道したわけです。
ほとんどの日本人は戦争は勝てるだろうと思いこまされた。
そして中に反対する人がいると、国家がその人たちを虐殺していくという事をやったわけですし、
それどころか住民自身がそういう人を村八分という形で虐殺して言ったという歴史もあるんです。

そんな歴史が一応は終わったけれども、
その後で、「いや、悪かったのは軍部だ」と。
「俺たちはちゃんとしたところを聞かされなかったからこうなった」
と言い訳をする人は多分沢山いたと思います。
でもそれで本当にいいのか?と私は思います。

福島の事故が起きた今もそうです。
今日この会場を埋め尽くして下さっている人たちにしても、
福島の事故が起きるまでは原子力がこれほどのものだと言う事に気がつかないでこられた方は多いと思います。
もちろん日本の国は安全だと言って、
マスコミ全てが安全だという宣伝を流してきたわけですから、
普通の方々がそう思っても不思議ではないし、
皆さんが騙されたと思っても私は不思議でなありませんけれども、
「騙されたから無罪だ」というんなら、またきっと騙されてしまいます。
騙された事に関しては、騙された責任があるだろうと思っています。

そして未来を私たちは子どもたちから問われるのです。
福島の事故が起きて以降、お前たちはどうやって生きたか?
わたしは必ず問われると思います。

憲法が今危機に存している時に、その憲法を守ろうとしている人たちももちろんいるけれども、
「一人一人はどうやって生きたか」という事を必ず見られ、子どもたちから問われるだろうと思います。

その問いにきちっと答えられるように私は生きたいと思います。

私もそうですし、皆さんもそうですけれども、
たった一度しか生きられません、人生は。
どんなな事を言ったって一度きりです。
みなさんも一度、私も一度。
そのたった一度の人生ですから、歴史と事実をしっかりと見つめて、騙されないようにする。
そして自分のやりたいことの思いに忠実に生きていたい
と私は願います。


ありがとうございました、終わります。











【内容情報】
“テロリズム”とは何か?今、“テロリズム”の季節が始まった六〇年安保から半世紀余りが経つ。
すでに現代史としていかに記述していくのかが問われている。
われわれは、厳しく困難ではあっても“テロリズム”の恐怖に怯えることなく、
真正面から、これに立ち向かっていかなければならない。
作者みずからが焚書し幻の書となっている『政治少年死す』『風流夢譚』も復刻掲載し、
その歴史的意味を解明する。

【目次】
対談 山口二矢と三島由紀夫をめぐって(若松孝二/鈴木邦男)
対談 二つのテロ事件から言論を考える(板坂剛/鈴木邦男)
政治テロのはじまり一九六〇年代
復刻資料(大江健三郎「政治少年死す セヴンティーン第二部」-『文学界』一九六一年二月号
深沢七郎「風流夢譚」-『中央公論』一九六〇年十二月号
深沢七郎「これがおいらの祖國だナ日記」-『群像』一九五九年十月号/各社社告)




「9.1さようなら原発講演会」の文字起こし

動画はこちらにあります↓
「みなさん、これは民主主義と言えますか?」内橋克人氏9.1さようなら原発講演会(文字起こし)

「人間の命としても明日の保障はないですね」澤地久枝さん9.1さようなら原発講演会(文字起こし)

「このまま、このまま、死ねないよね」落合恵子さん9.1さようなら原発講演会(文字起こし)

「これは最初から出来レースなんです。こんな犯罪を許せますか!」
佐藤和良氏(いわき市議会議員)9.1さようなら原発講演会(文字起こし)


小出裕章氏講演↓
前半・「そして今彼らは、この事故をなかった事にしようとしています」
小出裕章氏9.1さようなら原発講演会(動画・文字起こし)


後半・
「原子力というのは核です。 核兵器そのものなのです。力の論理で平和が築ける筈はないのです」
小出裕章氏9.1さようなら原発講演会(文字起こし)








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No title

ご苦労様です。大変勉強になります。

その中の1説→一節

利害確執に基づく→利害得失

ミサイルに兼用できる→転用

実際の軍隊は選別されて→殲滅