保育園での講演会後、アットホームな感じの質疑応答です。
お母さん方の、率直な質問がとてもいいです。
普段とちょっと違う質疑応答、文字起こししました。
長いけど、一度にUPしちゃいます。
20130706
小出裕章さん講演会質疑応答 座間麦っ子畑保育園
麦っ子畑保育園の講演なので、子どもに関する質問から先にやらせていただきます。
家で食材測れますか?
質問:
家でも野菜などのベクレルを測る方法はありませんか?
たとえば、見た目でわかるやり方はありますか?

小出:
申し訳ありませんが、ありません。
皆さんもちろん「知りたい」と思うし、
多くの方々が測定器を購入したりして測ろう、測ろうとしてきたし、
今でも測って下さっている方々もいらっしゃるわけですけれども、
私が言うと傲慢に聞こえて申し訳ないと思うけれども、
「放射能を測定するという事は、大変難しい事です」本当は。
「普通の方々が簡単に放射能を測定できるというふうにむしろ思わないでください」
と私はお願いしたいです。
そしてみなさんが、何がしか放射線測定器というのを買って、
今でもお使いの方もいらっしゃると思いますけれども、
そういう測定器で食べ物の汚染が測定できるという事は基本的にありません。
やはりきちっとしたところで測って貰わないといけないという、そういうものです。
私はついこの間福島県の南相馬という汚染地帯に行ってきました。
人々はごく普通に生活をしています。
でもそこの場所は、私が先程聞いていただいたような基準で言うと、
「放射線の管理区域」にしなければいけない場所なのです。
その場所で普通にみんな生活をしていて、子どもたちもそこで生きているんです。
私はその南相馬に行って、ご飯も食べたし、夜になってみんなと一緒に酒も飲みました。
「でも本当はここでは水すら飲んではいけないところなんだ」と、私は知っていながらそうしたわけです。
その時私が思ったのは、「放射能が目に見えればいいのにな」と思いました。
「みんながすぐにわかるならば、こんな悲惨な事実そのものにもっと人々が気付いてくれる」
と思いましたけれども、残念ながら出来ないのです。
放射能が目に見えたり、においを感じたりするほど放射能が周りにあれば、
人間は簡単に死んでしまうんです。
大変微量なものが今、微量というか、放射能からすれば微量なものが汚している訳ですけれども、
今日何度も聞いていただいたように、
人間の体温が1000分の何度上がるというだけでもう死んでしまうという、
そういうものを相手にしているわけで、
目に見えるなんていう事は決してありませんし、簡単に測定できることもないと思って下さい。
給食の測定方法 雨
質問:
給食の事で、大変恥ずかしい話なんですが、
座間市は給食を小学校も保育園も一切測定をしないで食べさせている市なんですが、
これは海老名市からなんですけれども、
1週間分の食事をゲルマで測定していますが、
ベクれている食材があっても薄まってしまうと思うのですがいかがでしょうか?
不検出であれば問題ないでしょうか?
ということと、
座間市、や海老名市など、雨に今でも気を付けた方がいいでしょうか?
小出:
食品はですから、今聞いていただいたように、測ることが大変難しいのです。
それを測ることができるとすれば、やはり行政しかないだろうと思いますので、
学校給食に関しては、事細かく測定させるように行政に働きかけるという作業が必要だと思います。
それもいっしょくたにして測るのではなくて、
お米ならお米、肉なら肉、野菜ならきゅうり、トマト…個別に測って、
そしてどれがどんな風に汚れているかという情報を蓄積していきながら
子供たちを未来にわたって守っていくという、そういう測定の仕方が必要だと思います。
それから、雨の事。
(ー:座間市や海老名市この辺で)
えーっとですね・・・・・・
今は大丈夫、あ、「大丈夫」という言葉は使ってはいけない。
ごめんなさい訂正します。
放射能、あるいは被ばくという事に関しては、「大丈夫」という言葉は使わないでください。
「安心」という言葉も「安全」という言葉も使ってはいけません。
今日聞いていただいたようにどんなに微量な被ばくでも危険は必ずありますので、
「安心」でも「安全」でも「大丈夫」でもありません。
ですから、雨に濡れない方がいいと言えば、濡れない方がいいと思います。
ただし、雨って、私大好きだし、
子どもだったらきっと雨の中でだって遊びたいと思うのですね。
それを禁じてしまったら、きっと子供としてちゃんと育たないと私は思うし、
雨の中で遊ぶ、泥んこになって遊ぶという事を私はむしろ積極的にやってほしいと思います。
そして事故から2年以上経ったいまの段階では、
空気、少なくてもこの座間の空気というのであれば、殆ど汚れていない。
福島の事故で福島から飛んできているような放射能では汚れていないと言っていいですので、
雨に関しても…それを避けようとすることは、私としてはしたくないと思います。
魚 土や肥料
質問:
お魚が好きですけれども、原発事故後食べられなくなりました。
水揚げされた場所は魚が住んでいた場所とは違いますが、どうしたらいいでしょうか?
それから
プランターの土とかが心配なのですが、家で野菜をつくって、それの基準、
土や肥料の基準とかはどうなっていますか?
小出:
魚は私も大変心配です。
今ご質問の方もきちっと書いて下さっていましたけれど、
魚の産地というのは水揚げした場所なんですね。
たとえば福島県沖で魚をとっても、
それを北海道に持って行ってしまえば、北海道産の魚になるわけだし、
九州の港で水揚げされれば九州産になってしまう訳で、
「いま魚がどれだけ汚れているか」という事に関しては、
情報がかなり少ないと私は思います。
ですから、産地で選ぶということもかなり危険を伴っていますので、
――-注意をしなければいけない。
ということぐらいしか私からはアドバイスをする事ができません。
「必ずここで獲れた」と分かっているような魚がもしあるならそういうものを選んで、
出来る限り福島から離れているという物を選んでいただきたいと思います。
それから、プランターとかの、いわゆる土ですね。
売っている土があるわけですけれども、
それも今はかなり汚れているものも出回っていると思います。
それから、芝生なんかもそうです。
芝生というのはついこの間私は知ったんですけれども、
つくばが芝生の生産の8割ぐらいを占めているそうなんですけれども、
つくばはかなり、さっきの地図でもありましたけれども汚れていますので、
たとえば座間市のとこかの園芸店で芝生を買ってきたりすると、
その芝生はかなり汚れていると思います。
プランターに入れる土にしても、
「どこから来ている土か」という事で、やはり汚れているものもあると思いますので、
―――すみませんが、やはり注意をして下さいという事しか、
私からはアドバイス出来る事がありませんし、
もし可能であれば、行政にきちっと測らせるという、そういう要求もしていただきたいと思います。
http://youtu.be/U0P2NxU0wug?t=8m45s
海水浴
質問:
夏休みに子どもを海水浴に連れていきたいと思いますが、
どこまで西に行けば大きな影響を受けないで住みますか?
小出:
今日私は福島の事故の話を聞いていただいたわけですが、
人間がこの地球を放射能で汚したというのは福島の事故が初めてではありません。
最悪なのは、大気圏内核実験という事を
1950年代60年代に米国と旧ソ連を中心として、大量に行ったのです。
原爆や水爆を空で爆発させるわけですから、
出来た核分裂生成物はそのまま空にぶちまけられたということが、
50年代60年代に大量に行われていまして、
今日私は福島第一原子力発電所から大気中に放り出された放射能は
広島原爆の168発分だと皆さんに聞いていただきましたけれども、
と、日本政府が言っていると聞いていただいたのですけれども、
それに比べれば、大気圏内核実験がばら撒いたのは何十倍も多いです。
ほぼ100倍多いです。
つまり、そういう放射能が全地球を汚していたんです。
この座間だって汚していた。
日本中、九州から北海道まで全部汚していた。
それだけではなくて、全世界を汚していたのです。
だから太平洋も汚していた。
みなさんがこれまで何気なく行っていた太平洋だって、海だって、
大気圏内核実験でみんな汚されていたんです。
で・・・・・・空から降ってきた量をごく簡単に言ってしまうと、
大気圏内核実験で降ってきたのは1平方メートル当たり5000ベクレルです。
よろしいですか。
1m四方のところに50年代から60年代の何十年間かに渡って、じわじわじわじわ降ってきて、
合計すると1平方mあたり5000ベクレル位もう降っていたんです。
この座間にも降っていたし、そこらの海にも降っていたんです。
それで、チェルノブイリ原子力発電所というところの事故が1986年にありましたけれども、
それによってソ連国内とか、ヨーロッパが膨大に汚れました。
1平方mあたり5000なんていうのでは済まないで、
何万、何十万というふうにチェルノブイリの事故でソ連とヨーロッパが汚れたのです。
その時に、じゃあ日本はどれだけだったか?というと、
1平方mあたり100ベクレルで済んだんです、基本的に言うと。
地域によって違うんですけれども、大体100ベクレルで済んだ。
ですから、日本というこの国は大気圏核実験で5000ぐらい降っていた上に、
チェルノブイリ原子力発電所に事故で、100ぐらいが上乗せされrた、
でも、その上乗せでも大変な食べ物があちこちで汚れて
お茶が出荷停止になったという事はその時に起きたわけです。
そして今、福島の事故ですね。
その福島の事故では先程聞いていただいたように、
福島の原発の近くでは1平方m当たり、60万を超えている。
何百万という汚染地帯が、1000平方kmもあるという、
そういう状態で汚れてしまった。
だから、大気圏核実験で汚れた5000なんていうのではなくて、
その10倍も100倍も、あるいは1000倍もというような汚染が、
福島原発周辺でダーッと起きているわけですね。
そして放射線の管理区域にしなければいけないというのは、
1平方m当たり4万と私は先程聞いていただいたわけで、
それを超えている地域が東北地方関東地方の広大な地域、
おそらく2万平方km位になるんです。
つまり、大気圏内核実験の10倍というような汚染を東北関東が受けているんですね。
海もだから、東北地方、関東地方の海もそういう汚染を受けたという訳です。
この座間だって、多分1平方mあたりでいえば、何千ぐらいはあるだろうと思います。
ですから、放射線の管理区域に指定しなければいけない程ではないけれども、
でもここだって、大気圏核実験に匹敵する位の汚染を受けたのです。
ですから海へ行けば、大気圏核実験で汚れていた位の、同じか
あるいはそれを超えるぐらいの汚染を太平洋、あるいはこの日本の近海にあるだろうと思います。
だから「じゃあ海水浴は止めるか」という、そういう選択なんですが、
私もさっきも聞いていただいたけれども、「子どもは海で泳がせたい」です。
遊ばない子どもなんて…子どもじゃない…と思うので、
汚染があるのはもう、長い歴史でしょうが…ない。
そして確かに今、汚染を上乗せしてしまった…わけですけれども、
こういう世界の中で生きるしかない…し、
今後どういう形で子どもを育てていくことができるかっていう事をかん…、
やはりみなさんお一人お一人で考えながら選んでいただくしかないと思います。
ただ、海水浴って一日中そこにいるわけじゃ、海水に浸かっている訳じゃない。
ひと月もふた月もずーっと海で生きているわけではないわけですから、
そこの事だけをことさら避けようとする事に意味があるとは私は思いませんし、
だからむしろ子どもは海でも遊ばせた方がいいだろうと私は思います。
歯のレントゲン
質問:
子どもの歯の治療の際にレントゲン撮影の事なんですが、
歯を写すのに、防護エプロンを着ますが意味がありますか?
あるとすれば「被ばくの範囲が口に留まらないで、脳にまで影響するんではないか」
という心配をされております。
で、やむを得ない撮影の際に防御する秘策はありますか?
小出:
え……、要するに私は先程聞いていただいたけれども、無用の被ばくはしない方がいい。
医者はとにかくエックス線を撮りたがります。
でも本当に必要なのかという事は、皆さん医者に確認したほうがいいだろうと思います。
特に子どもの歯の治療というのであれば、
「本当に撮影をしなければ治療が出来ないんですか?」というぐらいのことは
医者に聞いてもらった方がいいと思います。
聞いたうえでちゃんと治療をするにはやはり撮影をした方がいいと医者が言うなら、
やはりそれは受け入れざるを得ないこともあると思いますし、
その場合には「できる限り被ばくの部位を絞る」というんでしょうか、
たとえば胸部エックス線もここだけ(胸)だけ撮影するっていう事が出来るんですね。
それもですね、昔の機械は結構ずさんで胸だけ撮ろうと思っても頭の先から足の先まで被ばくをしてしまう。
つまり、胸だけに放射線を当てるという事がなかなかできない時代があったんですけれども、
今は、撮影をしたい所だけに放射線を局限させるという技術はものすごく進歩してきていますので、
胸なら胸を撮る時には胸から下は被ばくをしない、頭ももちろん被ばくをしないというふうに、
撮影装置を使う事が出来るようになっています。
ですから歯の場合ももちろん出来ますので、
歯の本当に必要な部分だけの撮影を撮るように、
ほかの部位が被ばくをしないように注意をしてもらうように医者に頼むという事だと思います。
ただし医者というのは放射線に対してほとんど知識がありません。
病院でも、病院の医者は放射線に対して知識が無くて、
いわゆるレントゲン技師という人たちがやっているのですが、
そういう人たちにやはり頼むしかないと思います。
歯医者さんの場合にはきちっとしたレントゲン技師がいるところの方がむしろ少ないと思いますので、
なかなか皆さんとしては手段がないと思いますけれども、
出来るのであれば医者とちゃんと相談をして、被ばくを出来る限り局限して、
「必要なものに限ってくれ」という、そういう要求をする事しか、今のところはできないと思います。

鼻血
質問:
鎌倉で保育士をしている人からなんですけれども、
そこの保育園は日常的によく海へ遊びに行っていた保育園なんですが、
事故後海遊びは一切しておりません。山遊びの場合には山道の放射線の、
多分これは空間線量ですけれども、測った上で行っていて、園庭の土も入れ替えています。
そういうところなんですが、時折理由なく鼻血を出す子どもがいます。
放射能の影響が考えられますか?
私たちにできることは様子を見ることぐらいしかできないのでしょうか?
小出:
被ばくの影響という事を私は今日聞いていただきました。
沢山被曝をしてしまうと人間が死んでしまうという事は今日見ていただいた通り、
長い歴史の中でだんだんわかってきたんですね。
で、沢山被曝をしないでどうなるか?という事に関しても、沢山の研究がつづけられてきています。
たとえば一番代表的なのは、広島長崎で原爆に被ばくをした人たちです。
もちろん大量に被ばくをした人は死んでしまったわけですけれども、
死なずに生き延びた人たちで、「ヒバクシャ」というレッテルをはられた人たちがいたのですね。
その人たちを米軍が調査を始めました。
1950年になってからですけれども、
「ヒバクシャ」とレッテルを貼った人々を、「毎年毎年自分の研究所に検査に来い」と、
ほぼ10万人の人達に命令をして、毎年被ばく者を集めました。
そして検査を始めた。
「お前はあの日にどこにいた」
「火の玉を見たのか見なかったのか」
「建物の陰にいたのか、それとも外にいたのか」という事をまず事細かに聞いて、
一人一人がどれだけの被ばくをしたのかという推定をまずしました。
それから健康診断をして、
「こいつは何だか病気だな」と、「おかしいな」という事を事細かに付けていくんですね。
で、検査はするけれども、一切の治療はしません。
とにかく検査をして「じゃあ帰りなさい」「次の年にまた来なさい」と言うんです。
来て調べてまた検査をする。そうすると病気が悪化しているかどうかがまた分かるし、
ある年になって来なくなると「あ、あいつ死んだな」という事が分かる。
そうやって長い間検査を続けてきました。
それで一番初めに分かった事が、被ばく者の中に白血病が多いという事がわかりました。
次にまた、検査を続けていって分かったことは、
白血病だけじゃなくて癌が多いという事がわかりました。
さらにまた、ずーっと調査を続けていくと、
それまで被ばく量が少ないと思っていた人でも、
やはり、癌や白血病が増えているという事が分かってきました。
さらにまた調査を続けていくと、
もっと被ばくが少ないと思っていた人の中にも、やはり癌や白血病が増えてきているという事が分かってきた。
そういう歴史だったのです。
だから今日私が聞いていただいたように、現在の学問の到達点で言えば、
どんなに微量であっても癌とか白血病、
遺伝的な障害というリスクがあるという事がだんだんわかってきたという歴史のです。
しかし最近になってまた分かってきた事があります。
これまでは癌とか白血病が増えてきたという事が分かってきたのですけれども、
最近になって「いやそれだけでは無い」と。
心臓疾患だって多くなっているじゃないか。
他のいろんな病気だって、「被ばく者の方が多い」というデータが、だんだんだんだんわかってきている
被ばくをしてからもう67年、68年になろうとしている。
そういう長い年月をかけてきて、
だんだんだんだん様々な病気が増えてきているという事が分かってきたという、そういう歴史なのです。
それで私自身は、先程聞いていただいたように、
放射線が持っているエネルギーというのは、生命体を維持しているエネルギーから比べると圧倒的に高いので、
どんな事が起きても不思議ではないと思っています。
癌や白血病だけでは無い、あらゆる病気がきっと放射線の被ばくで出るだろうと思います。
ただし、そういう調査というか長い年月をかけて調査をしなければならない中で、
これが確実だというふうに立証はされていないのです。
でも私は出るだろうと思っていますし、
今おっしゃって下さった鼻血というものも、「ひょっとしたらそうかもしれない」と私は思いますが、
残念ながらそれを化学的に証明するだけのデータというものが今はないという、
そういう段階なのです。
それは今後もなかなか科学的なデータとしては揃わないだろうと思います。
ただ、何度も聞いていただきますが、「どんな事でも起こる」と覚悟をしていただいた方がいいし、
注意が出来ることはやはり注意をする。
海、海水浴の場合だって出来れば注意をした方が・・・注意をしろと言ってもできないだろうけれども、
あんまり長い間水につけておかないとか、
山に行く場合には今おっしゃって下さったように汚染を測ってから行くというようなことも必要だと思うし、
少なくとも子どもの被ばくを減らすという意味では、
どんな注意もしないよりはした方がいいと思いますので、
思いつく限りのことをやってほしいと思います。
日光への修学旅行
質問:
いまのこのあたりの小学生というのは、日光に修学旅行に行く学校が多いんです。
1泊2日ぐらいだと思いますが、先生はどう思われますか?
小出:
日光は放射線管理区域にしなければいけない汚染地帯です。
え…、残念ながらそこに人が住んでいるんですね。
子どもだってそこに住んでいるわけです。
そこに住むという事は1年365日そこで生活をしているという事ですし、
何年何十年とそこで生きるという事がそこで生きている人たちなんですね。
修学旅行というのは1日2日いて帰ってきてしまうということな訳ですから、
被ばくの程度で言えば、圧倒的に少ないと私は思います。
要は修学旅行として日光へ行く価値があるかどうかという、そういう事だと思います。
「できる限り被ばくはしない方がいい」と私は先程から言っているわけですから、
喜んで放射線管理区域の中に子どもを連れ込んで行くなんていう事は、本当はやってはいけない事です。
でも、この世界を知っておく。
知っておくべき価値のある場所であるなら、やはり子供を連れていくという選択はあり得ると思います。
ただし、日光という場所がそれに該当するかどうかという事は、
それぞれの判断によるだろうと思いますし、
え・・・、非常にこんなことは言ってはいけないかもしれないけれど、
私自身は日光の東照宮なんていうものを見たいとも思わないし、
あんなところに子どもを連れていく価値は、私はないと思いますので、
あえてこの時期に日光への修学旅行という選択は私であればしません。
でも、こういう判断はかなり個人的な判断だと思いますので、
「それが価値がある」と思われるのであれば、1日2日の被ばくということも、
被ばくというか、放射線の管理区域の中に子どもたちを連れていくという選択は、
完璧にないとは私は思いません。
被ばくの排泄方法
質問:
これはちょっとあの…
先生が被ばくされた分を身体から排泄するために工夫している事があったら教えていただきたい。
小出:
えー、ありません。
被ばくというのには2種類あります。
外部被ばくというのと内部被ばくというのがあって、
たとえばこの大ホールが(笑)いま放射能で汚れているとなると、
私はここにいると被ばくをしてしまう訳ですね。
で、ここから離れれば被ばくをしないで済むというのが外部被ばくです。
ですから、放射能の汚染のあるところに行けば被ばくをするし、
そこかに逃げれば被ばくをしないで済むという事が出来ます。
もうひとつは内部被ばくというのですが、
それは食べ物であるとか空気を通して、放射性物質を身体の中に取り込んでしまうという、
そういう被ばくの仕方があります。
その時は、たとえば今ここの空気が汚れているとして、
私がその空気を吸い込んでしまって、身体にとりこんでしまう。
そうすれば、私はここからどこかへ逃げても放射能そのものが私の身体の中にあるわけですから、
もう被ばくを避けることができなくなるのですね。
それを内部被ばくといいます。
私は放射線管理区域の中で仕事をしていますので、
放射性物質を吸い込んだりして身体の中に取り込む危険はあるわけですけれども、
でも一度取り込んでしまったら、それを排泄するという事は基本的にはできません。
生き物として環境の中で生きているわけで、
いろいろなものを身体の中に取り込みます、そしてもちろん排泄します。
食べ物を食べて毎日ウンコもおしっこもするわけで、
どんどんどんどん排せつをしているわけで、
放射性物質を仮に食べたり吸い込んだりしても、一定のスピードで排せつはしていきますけれども、
でもその排せつのスピードを速めたりするという事は、基本的にはできません。
大量にその放射性物質を取り込んでしまって、
なにがなんでも排泄したいと思う時、いわゆる事故というような時がありますけれども、
そういう時には薬物に頼ります。
薬に頼って、私の身体の中の放射性物質を強制的に何とか出すという事はありますけれども、
強烈な副作用もまた伴いますので、
通常の場合は「できない」と思っていただいた方がいいと思います。
原発を残したいと本当に思ってる?
質問:
政府やマスコミの偉い人にも子どもや孫がいると思いますが、
原子力発電所を残したいと本当に思っているのでしょうか?
小出:
日本の国の人とか、電力会社の人とか、
今でも「原子力をどんどんやる」と言っているわけですね。
もちろんそういう人にも子どもはあるし孫もいるはずです。
私だったら到底認められないし、即刻止めるべきだと、
先程から皆さんに聞いていただいている通りですけれど、
でも「やろう」という人はいます。
私も不思議です。
聞いて下さい、皆さん、そういう人たちに。
「あなたどう思っているのか」という事を。
本当に不思議です、私は。不思議に思います。
京都大学は国立だけど・・・大丈夫?
質問:京都大学は国立ですけれども、先生が政府の意に反することをおっしゃっても問題ありませんか?
小出:
大変なことはなんにもありません。
私は京都大学という大学の教員です。
で、もしわたしが東京大学の教員であれば、もっとずっと前に嫌がらせを受けて辞めさせられていたと思います。
京都大学という大学は、東大への対抗意識ということもあるだろうし、
それぞれの大学の校風というのがあって、
一人一人の教員の独創性をとにかく重んじるという事を長い間歴史にしてきた大学ですので、
私の様な、国家にたてつく教員でも、
「学問的な嘘を言わない限りは良いだろう」というぐらいの度量のある大学だと私は思います。
大変ありがたいことだと、私自身は思っていますし、
これまで、何の圧力も受けた事がありません。
そして仮にもし圧力を受けたとしても、
よく人が私に言うんですけれども、「お前鈍感だな」と。
「だから圧力があっても、ただお前は感じてないだけだ」というようなことを言うんですけれども、
仮に私が圧力だと感じたとしても、
「だから何なんだ」と私はむしろ思うんですね。
今日何度も聞いていただきましたけれど、
私は、かけがえのない私なんです。
一回しか生きられないんです。
他の誰でもなくて私であって、私の命はひとつしかなくて1回しか生きられない。
「それなら私らしく生きなければ損だ」と私は思う。
金なんか儲けたってつまらないし、
偉いポストに就いたってつまらない。
私らしく生きるという事が何よりも大切なわけですから、
それに関しては誰にも譲る気はありませんので、
私はこれまでも自分のやりたいように生きてきましたし、
これからもやりたいように生きていきたいと思っています。
政府主催の公聴会など話しあいは?
質問:
原発の稼働について、政府と専門家のみなさん、教授のみなさんたちが、
公聴会などを通して話し合いを今されているでしょうか?
公聴会みたいなところで、政府の偉い人と先生でなにか話しあいをしているんですか?
小出:
私はですね、「論争は歓迎する」と言っています。
どんな論争でも公平にやってくれる限りはその場所に行くと表明しています。
今日は麦っ子畑保育園にきていますし、
私は福島の事故以降、沢山の方が私に「来い」と声をかけて下さるようになって、
今現在10件のお誘いのうち1件程度しかお受け出来ない状態になっています。
そして私は優先順位を付けています。
1番の優先順位は「敵地」です。
原子力を推進している人たちが私に話をさせるというのなら、どこにでも行くと言っています。
ただしその場合の条件が公平だという事です。
論争させる。
2番目が「現地」ということで、
いまの福島の汚染地帯であるとか、そういうところに読んでくれるのであれば喜んで行くと言っている。
3番目の優先順位が、「若い人」」という事で、
麦っ子畑も、若いと言ってもちっちゃい(笑)ですけれども、
優先順位の高い所に置かせていただいて今日も来ているのですけれども、
何よりも私「論争をすべきだ」と思っていて、
「公平な論争である限りは何処へでも行く」と言っているのですけれども、
政府が主催する公聴会とか、そういう場所には決して行かないと、
これまでは言ってきました。
何故かというとそういう場所というのは、
政府が原子力を進めるためのアリバイ作りなんです。
どんなことをやってもこれをやったから、反対派の意見も言わせたと、
彼等のアリバイ作りにしかならないという事で、私はそういう場には行かないと言ってきました。
ただし、これまで何度かそういう場所に行かざるを得なくなった時がありました。
それは…、政府の方から仕掛けてきて、
住民の方もこれをやらないと抵抗する事が出来ないので、自分たちとしても受けるしかないし、
「お前来て反対の意見を言ってくれ」と、誘われた事が何度かあって、
そういう時には私も行った事が何度かあります。
そしてもちろん私は「原子力なんてやるべきではない」という発言をしてきました。
ただ、そういう場所で私がいくら発言をしても、
やはりそれは政府が原子力を進めるためのアリバイ作りにこれまでは使われてきてしまったという歴史でした。
質問:あの、事故直後に国会で先生が話された、それは?
小出:
はい、行きました。
わたしは・・・・
政治というのがあるんですね、皆さんまた選挙もありますけれども、
政治というものにかなり深く絶望していまして、
「政治にはかかわらない」とずーっと発言をしてきましたし、
政治的な行動に私がかかわることはないと言ってきたのです。
ただ、福島の事故が起きて以降、
たとえば、どこどこの政党が私に入れとか、そういう誘いは山ほど今でもありますけど、
そんなものは一切お断りしています。
ただし、ある時に参議院というところから、
「私に話に来い」というお誘いがありました。
私は本来だったら「そんな所に行くか」と思うのですけれども、
今日も一番初めに聞いていただいたように、「福島の事故を防げなかった」という事に関して、
私はやはりかなり重たい責任が自分にはあると思いましたので、
自分が政治が嫌いだと言って、一切それに関わらないというのはやはり、「できないな」と思いまして、
一度はやはり行かなければいけないと思って、参議院の行政監視委員会という委員会でしたけれども、
その場所に一度だけ行って、これまで原子力を進めてきた政治の責任に関して一言意見を言ってきた、
それだけです。
放射線管理区域の4万ベクレルの中身
質問:
実は今日、中継をさせていただいていますけれども、
中継をご覧になった方からの質問で、電話で質問がきたんでしょうか、
4万ベクレル=4ベクレル/平方cmの汚染とはガンマ線のみでしょうか?
ガンマ線+ベータ線の合算でしょうか?
小出:
はい、私は先程
1平方mあたり4万ベクレルというのが放射線管理区域の基準だと聞いていただいたんですね。
それをご質問の方は換算して、「1平方cm当たりに換算すれば4ベクレルという数字だろう」と、
そうなんです、その通りです。
そして、その数字というのが「ガンマ線とベータ線の合算か?」というのがご質問ですけれども、
簡単に言ってしまうと合算です。
ただし、本当に測っているのは放射線というよりは、放射性物質の量なんです。
これはきちっと説明すると大変に難しいんですけれども、
放射性物質の中には
アルファ線というものを出す放射性物質もあるし、
ベータ線を出す放射性物質もあるし、
ベータ線を出してガンマ線を出す放射性物質もあるのです。
ですから、ベータ線とかガンマ線という放射線で基準を決めているのではなくて、
放射性物質という、その物質の濃度で、1平方cm当たり4ベクレルということを決めているのであって、
その時は、ベータ線を出す放射性物質も、ベータ線もガンマ線も出す放射性物質も、
全部合算で決めています。
アルファ線を出す放射性物質だけは除外で、
その場合にはもうひとけた厳しい基準になります。
焼却場の温水プール
質問:
焼却施設での温水プールは、水の汚染が無ければ入っても大丈夫でしょうか?
ドイツの発表では呼気からの影響が60%と聞きましたがどう思われますか?
小出:
焼却場で温水プールをやっている。
そこのプールで泳ぐ事が危険かどうかという事ですね。
とても難しいご質問ですけれども、…「世界は全部汚れているんです、今」
食べ物だって「1kgあたり100ベクレルなら良い」と言って、全部汚れているものが出回っている。
それを私たちは扱いながらゴミにして、それを焼却場で焼くんですね。
焼却場で焼けば、汚れの一部は煙突から出てくるわけですし、
殆どのものは焼却灰というところに残って、濃縮されて、いくわけです。
でも温水プールというのは、その焼却施設の温水プールというのは、
別にその、焼却灰を混ぜてプールにするわけではないわけですし、
煙突から噴き出してくる放射性物質といっても、私はそれほど多いとは思いませんけれども、
それが温水プールの建屋の中にわざわざ引き込まれているわけでもないですよね。
多分ないはずだと思いますので、
そうであれば、もう地球の環境が全部汚れてしまっているという意味では、私は同じだと思います。
まぁ、できるだけその焼却しているところに近づかない方がいいと言えばそうだとは思いますけれども、
でも・・・、そこも汚れている中でなにがしかの上乗せがあるという、その程度の事だと思いますし、
焼却場のプールだからそのプールの水が汚れているという事は関係ないと思います。
被ばくした人からの被ばく
質問:
東海村の事故で被ばくした人から被ばくをして治療をしたというお話がありましたけれども、
それでは、食品などから内部被ばくをした人から、二次被ばくの危険はありますか?
小出:
あの…、私たちはこの地球に生きているんですね。
それで今日私は、人間がこの地球を放射性物質で汚したという話を聞いていただいたわけですが、
この地球という星にはもともと放射性物質はあるのです。
ウランであるとか、トリウムというものもありますし、
カリウム、窒素、リン酸、カリというのが農業の3大肥料ですけれど、
そのカリの中にも実は放射性物質があるのです。
そういう、何がしか放射性物質がある世界の中で、
生き物がだんだん死滅したり進化しながらここまで来て、
人間も何とか今この環境で生きていて、
この環境に何とか適合しながら今生きているんですね。
で、私なら私の身体の中にも、天然に存在している放射性物質が、もうすでに存在しているんです。
ウランやトリウムという放射性物質も、微量なら私の身体の中にあるし、
カリという放射性物質であれば、結構な量がもう、私の身体の中にあるのです。
えー、私の身体全部で言えば、たぶん4000ベクレルとか5000ベクレルぐらいある。
カリというのがある。
ですから、私の近くにこうやって座っていると、私の身体から出ている放射線で被ばくしている。
逆に言えば私は、皆さんから被ばくをさせられている。
たとえば誰かを抱けば、そのだいた人が近くによるわけですから、その人から被ばくをしてしまう。
という事があるわけです。
で、汚染食品を食べた人がいる。
その人がたとえば近くに来れば、また被ばくをしてしまうというのは、
言っててみれば当たり前の事としてあるわけですけれども、
でも、汚染食品を食べた人が、大量のその・・・・・・、汚染を、身体の中に蓄積しているとすれば、
症状があらわれてくるはずだし、そういう方は多分分かるはず、
いま発電所の中で働いている労働者の方の中には、多分そういう人もいると思いますけれども、
そういう人とごく濃密に接触するという事は、できれば避けた方がいいと思いますけれども、
それ以外のことはもう、ほとんど避けることすらが出来ないという、
そういう世界だと思っていただいた方がいいと思います。
J-PARC日本原子力研究開発機構の放射能漏れ事件
質問:
JCOの事故が最近もありましたが、テレビなどでほとんど報道されていません。
「問題ない」というような空気ですけれども、
実際のところはどういう事故だったのでしょうか?
小出:JCOじゃないですね?
質問:JCOって書いてありますけど。
小出:
JCOの事故は今日聞いていただいた臨界事故というやつで、1999年9月30日です。
最近あった、東海村であった事故というのがありました。
それは日本原子力研究開発機構というところで、加速器というものを使っていて事故を起こしました。
その事故は言ってみれば「大変バカげた事故」です。
なんでそんな放射線、放射能を取り扱う専門の研究機関でありながら、こんな事故を防ぐ事が出来ないのかと、
私からすると本当に唖然とするほどバカげた、初歩的な誤りを積み重ねた事故でした。
でも事故の規模としては遥かに小さくて、
事故の当事者にも放射線の影響が出るという程のものではありませんでしたし、
周辺環境に法令の、法律が決めた以上の放射性物質をばらまいたということもありませんでした。
今日聞いていただいたように、福島第一原子力発電所の事故は、
もう、法令を遥かに超えたものを大量にばらまいて、もう日本国中、世界中を汚染しているわけで、
そういう事故に比べれば、日本原子力研究開発機構でこの間起きた事故は、あまりにも小さいし、
取るに足らないと言っていい程の事故でした。
ただし、専門家と言われているような人間でもあまりにもずさんなことをやるという事は、
しっかりとやはりみなさんも知っておくべきだと思いますし、
ましてや事故を起こした彼等は、
しっかりとこの事故に関して調査をして、責任も取るべきだと私は思います。
日本の農業を守る
45:09
質問:
これからお子さんを生む方は食べ物を気を付けた方がいいと思うんですけれども、
これは、農作業に従事している、特に茨城とか近いところの方達の事だと思いますが、
その方達の被ばくも問題ではないでしょうか?
農家のさらされている環境はよくありません。
という事で、農家の方々の被ばくについては60禁とすると、それを認めることにはなりませんか?
多分、農業従事者の方が高齢だという事だと思うんですけれども。
小出:
はい、それも大変難しい問題です。
私は今日「子どもをとにかく被爆から守りたい」という話をみなさんに聞いていただいたんですが、
私は実はもうひとつやりたい事があるんです。
それは、「日本の農業を守る」という事をやりたいと言ってきました。
何故かというと、まあ、きちっと聞いていただくと大変ですけれども、
簡単に言いますと、日本というこの国は、まいわゆる
「明治維新というもので近代国家の仲間入りをした」と言われています。
それ以降どうしたかというと、ヨーロッパ、米国を見習って、
西洋文明をとにかく取り入れて工業化しようと、そして大国になろうという
そういう歴史をずっと歩んできたんですね。
そして、そのためにはエネルギーをどんどん使っても良いから、工業を発展させる。
もう農業や漁業はダメだという事で切り捨ててきてしまった。
で、その一番の象徴が私は原子力だと思っているのです。
工業さえ発展させればいいというものの象徴というものが原子力だと思ってきました。
その原子力が今回の様な事故を起こして、膨大な汚染を引き起こしている訳ですけれども、
その汚染があるからと言って、農業を崩壊させるような事に手を貸してしまうと、
この日本という国は立ち直れないと私は思っていますので、
汚染があったとしても日本の農業は潰してはいけない。
なんとしても農業を守らなければいけないと実は思っているのです。
ところが先程聞いていただいたように、
今1000平方kmというところはとにかく汚染がひどすぎて、
もう、人々全部が放り出されているんですね。
農民もなにもみんな追い出されている。
だから農業が崩壊してしまったんです。
少なくても1000平方kmは崩壊した。
そして私は先程から何度も聞いていただいているように、そんな範囲では済まない。
ほぼ2万平方kmという範囲を放射線管理区域にする。
つまり、「無人にしなければいけない」と私は言っているわけで、
「農民もなにもそこから追い出さなければいけない」と私は言っている。
本当であればそうだと私は言っている。
でも、日本の国家がそれをしないで、人々をそこに捨てたわけです。
そうすると捨てられた農民はそこで農業をするしかないのです。
「生きるために農業をする」んです。
農民は汚染地帯で被ばくをしながら食べ物を作っているんです。
そういう農民に関しては、私はやはり支えるしかないと思う。
本当ならば逃げて欲しいけれども、
逃がすことができないで今被ばくをしながら働いている農民は、支えるしかない。
その農民が作っている食べ物は引き受けるしかないと私は思っています。
そのための提案が先程聞いていただいた60禁なんです。
大人が被ばくを受け入れながら農業を守るしかないという提案を私はしてきたのです。
でも子どもには被ばくをさせてはいけないので、
できる限り綺麗な食べ物を回せるような社会的なシステムを作らなければいけないと私は思っています。
では、じゃあ、その農民たちはどうするのか。
農民だって被ばくをしながらじゃないかというような事を言ってしまうとその通りなんです。
防ぐ事が出来ない。
外部被ばくは少なくても防げない。
農地が汚れているから、そこで仕事をする限りは防ぐ事はできません。
放射能の防護服って皆さんご存知かもしれませんけれども、
あれは、体に付着したり、あるいはマスクをして身体の中に取り込まないという、
内部被ばくを防ぐためだけのものであって、
外部被ばくに関する限りは、防護する手段はありません。
その場所から逃げるしかないんです。
鉛のスーツを着るというのはひとつの手段ですけれども、
鉛のスーツなんか着て農作業なんかできるどおりがないのであって、
もう仕方がないのです。
被ばくをするしかない。
だから農民が少しでも被ばくを減らすという事をするとすれば、
できるだけ泥が身体につかないようにして下さいとか、
もし可能であればマスクをして下さいとか、
せいぜいその位の事しか言えません。
それでつくってくれたものは、大人が覚悟を決めて食べましょうというのが私の提案です。
ただし、この私の提案は大変難しいというか、……難しい事を含んでいます。
というのは、私は「農業を守りたい」と言ったわけですけれども、
農業というのは土に根ざしてずーっと長い年月をかけてやるんですね。
今の大人の世代が農業をやるだけではだめで、子どもの世代もそこで育てなければいけないのです。
子どものいない農業というのは潰れる。
でも私は「子どもだけは被ばくさせたくない」って言っている。
という事は、私が言っていることに矛盾がある。
子どもは被ばくしたらダメだけど農業を守れと言ったら出来ない。
その事で私は「農業を守りたい」と言って、ずっと運動を続けてきた人たちと、
先日深刻な論争の場に呼び出されてやってきました。
私を呼び出した人たちは、有機農業というのを長い間やって、
「これからも日本の農業を守っていきたい」と言って、苦闘を続けてきた人たちが私を呼び出したわけで、
その人達は、
「こうなった以上は、子どもも含めて被ばくをさせながらでも守るしかない」と私に議論を挑んできたのです。
私も農業を守りたいけれども、私は「子どもはダメだ」と言いまして、
その方達と物別れになりました。
でも、私の言っている事が矛盾なんです。
私は十分それを承知していますけれども、
でも子どもを被ばくさせる事だけは私は認める事が出来なかったので、そうして帰ってきました。
でも今でも何とか農業を守りたいと思っています。
大変難しい事が、今、私たちの目の前にある。
みなさんも忘れないで、この問題を自分のこととして考えていただきたいと思います。
解決策はありません。
残念ながら私も「こうすればいい」という解決策を皆さんにお伝えできないけれども、
でも困難な事が今でもあるという事だけは忘れないで欲しいと思います。
52:39
お母さん方の、率直な質問がとてもいいです。
普段とちょっと違う質疑応答、文字起こししました。
長いけど、一度にUPしちゃいます。
20130706
小出裕章さん講演会質疑応答 座間麦っ子畑保育園
麦っ子畑保育園の講演なので、子どもに関する質問から先にやらせていただきます。
家で食材測れますか?
質問:
家でも野菜などのベクレルを測る方法はありませんか?
たとえば、見た目でわかるやり方はありますか?

小出:
申し訳ありませんが、ありません。
皆さんもちろん「知りたい」と思うし、
多くの方々が測定器を購入したりして測ろう、測ろうとしてきたし、
今でも測って下さっている方々もいらっしゃるわけですけれども、
私が言うと傲慢に聞こえて申し訳ないと思うけれども、
「放射能を測定するという事は、大変難しい事です」本当は。
「普通の方々が簡単に放射能を測定できるというふうにむしろ思わないでください」
と私はお願いしたいです。
そしてみなさんが、何がしか放射線測定器というのを買って、
今でもお使いの方もいらっしゃると思いますけれども、
そういう測定器で食べ物の汚染が測定できるという事は基本的にありません。
やはりきちっとしたところで測って貰わないといけないという、そういうものです。
私はついこの間福島県の南相馬という汚染地帯に行ってきました。
人々はごく普通に生活をしています。
でもそこの場所は、私が先程聞いていただいたような基準で言うと、
「放射線の管理区域」にしなければいけない場所なのです。
その場所で普通にみんな生活をしていて、子どもたちもそこで生きているんです。
私はその南相馬に行って、ご飯も食べたし、夜になってみんなと一緒に酒も飲みました。
「でも本当はここでは水すら飲んではいけないところなんだ」と、私は知っていながらそうしたわけです。
その時私が思ったのは、「放射能が目に見えればいいのにな」と思いました。
「みんながすぐにわかるならば、こんな悲惨な事実そのものにもっと人々が気付いてくれる」
と思いましたけれども、残念ながら出来ないのです。
放射能が目に見えたり、においを感じたりするほど放射能が周りにあれば、
人間は簡単に死んでしまうんです。
大変微量なものが今、微量というか、放射能からすれば微量なものが汚している訳ですけれども、
今日何度も聞いていただいたように、
人間の体温が1000分の何度上がるというだけでもう死んでしまうという、
そういうものを相手にしているわけで、
目に見えるなんていう事は決してありませんし、簡単に測定できることもないと思って下さい。
給食の測定方法 雨
質問:
給食の事で、大変恥ずかしい話なんですが、
座間市は給食を小学校も保育園も一切測定をしないで食べさせている市なんですが、
これは海老名市からなんですけれども、
1週間分の食事をゲルマで測定していますが、
ベクれている食材があっても薄まってしまうと思うのですがいかがでしょうか?
不検出であれば問題ないでしょうか?
ということと、
座間市、や海老名市など、雨に今でも気を付けた方がいいでしょうか?
小出:
食品はですから、今聞いていただいたように、測ることが大変難しいのです。
それを測ることができるとすれば、やはり行政しかないだろうと思いますので、
学校給食に関しては、事細かく測定させるように行政に働きかけるという作業が必要だと思います。
それもいっしょくたにして測るのではなくて、
お米ならお米、肉なら肉、野菜ならきゅうり、トマト…個別に測って、
そしてどれがどんな風に汚れているかという情報を蓄積していきながら
子供たちを未来にわたって守っていくという、そういう測定の仕方が必要だと思います。
それから、雨の事。
(ー:座間市や海老名市この辺で)
えーっとですね・・・・・・
今は大丈夫、あ、「大丈夫」という言葉は使ってはいけない。
ごめんなさい訂正します。
放射能、あるいは被ばくという事に関しては、「大丈夫」という言葉は使わないでください。
「安心」という言葉も「安全」という言葉も使ってはいけません。
今日聞いていただいたようにどんなに微量な被ばくでも危険は必ずありますので、
「安心」でも「安全」でも「大丈夫」でもありません。
ですから、雨に濡れない方がいいと言えば、濡れない方がいいと思います。
ただし、雨って、私大好きだし、
子どもだったらきっと雨の中でだって遊びたいと思うのですね。
それを禁じてしまったら、きっと子供としてちゃんと育たないと私は思うし、
雨の中で遊ぶ、泥んこになって遊ぶという事を私はむしろ積極的にやってほしいと思います。
そして事故から2年以上経ったいまの段階では、
空気、少なくてもこの座間の空気というのであれば、殆ど汚れていない。
福島の事故で福島から飛んできているような放射能では汚れていないと言っていいですので、
雨に関しても…それを避けようとすることは、私としてはしたくないと思います。
魚 土や肥料
質問:
お魚が好きですけれども、原発事故後食べられなくなりました。
水揚げされた場所は魚が住んでいた場所とは違いますが、どうしたらいいでしょうか?
それから
プランターの土とかが心配なのですが、家で野菜をつくって、それの基準、
土や肥料の基準とかはどうなっていますか?
小出:
魚は私も大変心配です。
今ご質問の方もきちっと書いて下さっていましたけれど、
魚の産地というのは水揚げした場所なんですね。
たとえば福島県沖で魚をとっても、
それを北海道に持って行ってしまえば、北海道産の魚になるわけだし、
九州の港で水揚げされれば九州産になってしまう訳で、
「いま魚がどれだけ汚れているか」という事に関しては、
情報がかなり少ないと私は思います。
ですから、産地で選ぶということもかなり危険を伴っていますので、
――-注意をしなければいけない。
ということぐらいしか私からはアドバイスをする事ができません。
「必ずここで獲れた」と分かっているような魚がもしあるならそういうものを選んで、
出来る限り福島から離れているという物を選んでいただきたいと思います。
それから、プランターとかの、いわゆる土ですね。
売っている土があるわけですけれども、
それも今はかなり汚れているものも出回っていると思います。
それから、芝生なんかもそうです。
芝生というのはついこの間私は知ったんですけれども、
つくばが芝生の生産の8割ぐらいを占めているそうなんですけれども、
つくばはかなり、さっきの地図でもありましたけれども汚れていますので、
たとえば座間市のとこかの園芸店で芝生を買ってきたりすると、
その芝生はかなり汚れていると思います。
プランターに入れる土にしても、
「どこから来ている土か」という事で、やはり汚れているものもあると思いますので、
―――すみませんが、やはり注意をして下さいという事しか、
私からはアドバイス出来る事がありませんし、
もし可能であれば、行政にきちっと測らせるという、そういう要求もしていただきたいと思います。
http://youtu.be/U0P2NxU0wug?t=8m45s
海水浴
質問:
夏休みに子どもを海水浴に連れていきたいと思いますが、
どこまで西に行けば大きな影響を受けないで住みますか?
小出:
今日私は福島の事故の話を聞いていただいたわけですが、
人間がこの地球を放射能で汚したというのは福島の事故が初めてではありません。
最悪なのは、大気圏内核実験という事を
1950年代60年代に米国と旧ソ連を中心として、大量に行ったのです。
原爆や水爆を空で爆発させるわけですから、
出来た核分裂生成物はそのまま空にぶちまけられたということが、
50年代60年代に大量に行われていまして、
今日私は福島第一原子力発電所から大気中に放り出された放射能は
広島原爆の168発分だと皆さんに聞いていただきましたけれども、
と、日本政府が言っていると聞いていただいたのですけれども、
それに比べれば、大気圏内核実験がばら撒いたのは何十倍も多いです。
ほぼ100倍多いです。
つまり、そういう放射能が全地球を汚していたんです。
この座間だって汚していた。
日本中、九州から北海道まで全部汚していた。
それだけではなくて、全世界を汚していたのです。
だから太平洋も汚していた。
みなさんがこれまで何気なく行っていた太平洋だって、海だって、
大気圏内核実験でみんな汚されていたんです。
で・・・・・・空から降ってきた量をごく簡単に言ってしまうと、
大気圏内核実験で降ってきたのは1平方メートル当たり5000ベクレルです。
よろしいですか。
1m四方のところに50年代から60年代の何十年間かに渡って、じわじわじわじわ降ってきて、
合計すると1平方mあたり5000ベクレル位もう降っていたんです。
この座間にも降っていたし、そこらの海にも降っていたんです。
それで、チェルノブイリ原子力発電所というところの事故が1986年にありましたけれども、
それによってソ連国内とか、ヨーロッパが膨大に汚れました。
1平方mあたり5000なんていうのでは済まないで、
何万、何十万というふうにチェルノブイリの事故でソ連とヨーロッパが汚れたのです。
その時に、じゃあ日本はどれだけだったか?というと、
1平方mあたり100ベクレルで済んだんです、基本的に言うと。
地域によって違うんですけれども、大体100ベクレルで済んだ。
ですから、日本というこの国は大気圏核実験で5000ぐらい降っていた上に、
チェルノブイリ原子力発電所に事故で、100ぐらいが上乗せされrた、
でも、その上乗せでも大変な食べ物があちこちで汚れて
お茶が出荷停止になったという事はその時に起きたわけです。
そして今、福島の事故ですね。
その福島の事故では先程聞いていただいたように、
福島の原発の近くでは1平方m当たり、60万を超えている。
何百万という汚染地帯が、1000平方kmもあるという、
そういう状態で汚れてしまった。
だから、大気圏核実験で汚れた5000なんていうのではなくて、
その10倍も100倍も、あるいは1000倍もというような汚染が、
福島原発周辺でダーッと起きているわけですね。
そして放射線の管理区域にしなければいけないというのは、
1平方m当たり4万と私は先程聞いていただいたわけで、
それを超えている地域が東北地方関東地方の広大な地域、
おそらく2万平方km位になるんです。
つまり、大気圏内核実験の10倍というような汚染を東北関東が受けているんですね。
海もだから、東北地方、関東地方の海もそういう汚染を受けたという訳です。
この座間だって、多分1平方mあたりでいえば、何千ぐらいはあるだろうと思います。
ですから、放射線の管理区域に指定しなければいけない程ではないけれども、
でもここだって、大気圏核実験に匹敵する位の汚染を受けたのです。
ですから海へ行けば、大気圏核実験で汚れていた位の、同じか
あるいはそれを超えるぐらいの汚染を太平洋、あるいはこの日本の近海にあるだろうと思います。
だから「じゃあ海水浴は止めるか」という、そういう選択なんですが、
私もさっきも聞いていただいたけれども、「子どもは海で泳がせたい」です。
遊ばない子どもなんて…子どもじゃない…と思うので、
汚染があるのはもう、長い歴史でしょうが…ない。
そして確かに今、汚染を上乗せしてしまった…わけですけれども、
こういう世界の中で生きるしかない…し、
今後どういう形で子どもを育てていくことができるかっていう事をかん…、
やはりみなさんお一人お一人で考えながら選んでいただくしかないと思います。
ただ、海水浴って一日中そこにいるわけじゃ、海水に浸かっている訳じゃない。
ひと月もふた月もずーっと海で生きているわけではないわけですから、
そこの事だけをことさら避けようとする事に意味があるとは私は思いませんし、
だからむしろ子どもは海でも遊ばせた方がいいだろうと私は思います。
歯のレントゲン
質問:
子どもの歯の治療の際にレントゲン撮影の事なんですが、
歯を写すのに、防護エプロンを着ますが意味がありますか?
あるとすれば「被ばくの範囲が口に留まらないで、脳にまで影響するんではないか」
という心配をされております。
で、やむを得ない撮影の際に防御する秘策はありますか?
小出:
え……、要するに私は先程聞いていただいたけれども、無用の被ばくはしない方がいい。
医者はとにかくエックス線を撮りたがります。
でも本当に必要なのかという事は、皆さん医者に確認したほうがいいだろうと思います。
特に子どもの歯の治療というのであれば、
「本当に撮影をしなければ治療が出来ないんですか?」というぐらいのことは
医者に聞いてもらった方がいいと思います。
聞いたうえでちゃんと治療をするにはやはり撮影をした方がいいと医者が言うなら、
やはりそれは受け入れざるを得ないこともあると思いますし、
その場合には「できる限り被ばくの部位を絞る」というんでしょうか、
たとえば胸部エックス線もここだけ(胸)だけ撮影するっていう事が出来るんですね。
それもですね、昔の機械は結構ずさんで胸だけ撮ろうと思っても頭の先から足の先まで被ばくをしてしまう。
つまり、胸だけに放射線を当てるという事がなかなかできない時代があったんですけれども、
今は、撮影をしたい所だけに放射線を局限させるという技術はものすごく進歩してきていますので、
胸なら胸を撮る時には胸から下は被ばくをしない、頭ももちろん被ばくをしないというふうに、
撮影装置を使う事が出来るようになっています。
ですから歯の場合ももちろん出来ますので、
歯の本当に必要な部分だけの撮影を撮るように、
ほかの部位が被ばくをしないように注意をしてもらうように医者に頼むという事だと思います。
ただし医者というのは放射線に対してほとんど知識がありません。
病院でも、病院の医者は放射線に対して知識が無くて、
いわゆるレントゲン技師という人たちがやっているのですが、
そういう人たちにやはり頼むしかないと思います。
歯医者さんの場合にはきちっとしたレントゲン技師がいるところの方がむしろ少ないと思いますので、
なかなか皆さんとしては手段がないと思いますけれども、
出来るのであれば医者とちゃんと相談をして、被ばくを出来る限り局限して、
「必要なものに限ってくれ」という、そういう要求をする事しか、今のところはできないと思います。

鼻血
質問:
鎌倉で保育士をしている人からなんですけれども、
そこの保育園は日常的によく海へ遊びに行っていた保育園なんですが、
事故後海遊びは一切しておりません。山遊びの場合には山道の放射線の、
多分これは空間線量ですけれども、測った上で行っていて、園庭の土も入れ替えています。
そういうところなんですが、時折理由なく鼻血を出す子どもがいます。
放射能の影響が考えられますか?
私たちにできることは様子を見ることぐらいしかできないのでしょうか?
小出:
被ばくの影響という事を私は今日聞いていただきました。
沢山被曝をしてしまうと人間が死んでしまうという事は今日見ていただいた通り、
長い歴史の中でだんだんわかってきたんですね。
で、沢山被曝をしないでどうなるか?という事に関しても、沢山の研究がつづけられてきています。
たとえば一番代表的なのは、広島長崎で原爆に被ばくをした人たちです。
もちろん大量に被ばくをした人は死んでしまったわけですけれども、
死なずに生き延びた人たちで、「ヒバクシャ」というレッテルをはられた人たちがいたのですね。
その人たちを米軍が調査を始めました。
1950年になってからですけれども、
「ヒバクシャ」とレッテルを貼った人々を、「毎年毎年自分の研究所に検査に来い」と、
ほぼ10万人の人達に命令をして、毎年被ばく者を集めました。
そして検査を始めた。
「お前はあの日にどこにいた」
「火の玉を見たのか見なかったのか」
「建物の陰にいたのか、それとも外にいたのか」という事をまず事細かに聞いて、
一人一人がどれだけの被ばくをしたのかという推定をまずしました。
それから健康診断をして、
「こいつは何だか病気だな」と、「おかしいな」という事を事細かに付けていくんですね。
で、検査はするけれども、一切の治療はしません。
とにかく検査をして「じゃあ帰りなさい」「次の年にまた来なさい」と言うんです。
来て調べてまた検査をする。そうすると病気が悪化しているかどうかがまた分かるし、
ある年になって来なくなると「あ、あいつ死んだな」という事が分かる。
そうやって長い間検査を続けてきました。
それで一番初めに分かった事が、被ばく者の中に白血病が多いという事がわかりました。
次にまた、検査を続けていって分かったことは、
白血病だけじゃなくて癌が多いという事がわかりました。
さらにまた、ずーっと調査を続けていくと、
それまで被ばく量が少ないと思っていた人でも、
やはり、癌や白血病が増えているという事が分かってきました。
さらにまた調査を続けていくと、
もっと被ばくが少ないと思っていた人の中にも、やはり癌や白血病が増えてきているという事が分かってきた。
そういう歴史だったのです。
だから今日私が聞いていただいたように、現在の学問の到達点で言えば、
どんなに微量であっても癌とか白血病、
遺伝的な障害というリスクがあるという事がだんだんわかってきたという歴史のです。
しかし最近になってまた分かってきた事があります。
これまでは癌とか白血病が増えてきたという事が分かってきたのですけれども、
最近になって「いやそれだけでは無い」と。
心臓疾患だって多くなっているじゃないか。
他のいろんな病気だって、「被ばく者の方が多い」というデータが、だんだんだんだんわかってきている
被ばくをしてからもう67年、68年になろうとしている。
そういう長い年月をかけてきて、
だんだんだんだん様々な病気が増えてきているという事が分かってきたという、そういう歴史なのです。
それで私自身は、先程聞いていただいたように、
放射線が持っているエネルギーというのは、生命体を維持しているエネルギーから比べると圧倒的に高いので、
どんな事が起きても不思議ではないと思っています。
癌や白血病だけでは無い、あらゆる病気がきっと放射線の被ばくで出るだろうと思います。
ただし、そういう調査というか長い年月をかけて調査をしなければならない中で、
これが確実だというふうに立証はされていないのです。
でも私は出るだろうと思っていますし、
今おっしゃって下さった鼻血というものも、「ひょっとしたらそうかもしれない」と私は思いますが、
残念ながらそれを化学的に証明するだけのデータというものが今はないという、
そういう段階なのです。
それは今後もなかなか科学的なデータとしては揃わないだろうと思います。
ただ、何度も聞いていただきますが、「どんな事でも起こる」と覚悟をしていただいた方がいいし、
注意が出来ることはやはり注意をする。
海、海水浴の場合だって出来れば注意をした方が・・・注意をしろと言ってもできないだろうけれども、
あんまり長い間水につけておかないとか、
山に行く場合には今おっしゃって下さったように汚染を測ってから行くというようなことも必要だと思うし、
少なくとも子どもの被ばくを減らすという意味では、
どんな注意もしないよりはした方がいいと思いますので、
思いつく限りのことをやってほしいと思います。
日光への修学旅行
質問:
いまのこのあたりの小学生というのは、日光に修学旅行に行く学校が多いんです。
1泊2日ぐらいだと思いますが、先生はどう思われますか?
小出:
日光は放射線管理区域にしなければいけない汚染地帯です。
え…、残念ながらそこに人が住んでいるんですね。
子どもだってそこに住んでいるわけです。
そこに住むという事は1年365日そこで生活をしているという事ですし、
何年何十年とそこで生きるという事がそこで生きている人たちなんですね。
修学旅行というのは1日2日いて帰ってきてしまうということな訳ですから、
被ばくの程度で言えば、圧倒的に少ないと私は思います。
要は修学旅行として日光へ行く価値があるかどうかという、そういう事だと思います。
「できる限り被ばくはしない方がいい」と私は先程から言っているわけですから、
喜んで放射線管理区域の中に子どもを連れ込んで行くなんていう事は、本当はやってはいけない事です。
でも、この世界を知っておく。
知っておくべき価値のある場所であるなら、やはり子供を連れていくという選択はあり得ると思います。
ただし、日光という場所がそれに該当するかどうかという事は、
それぞれの判断によるだろうと思いますし、
え・・・、非常にこんなことは言ってはいけないかもしれないけれど、
私自身は日光の東照宮なんていうものを見たいとも思わないし、
あんなところに子どもを連れていく価値は、私はないと思いますので、
あえてこの時期に日光への修学旅行という選択は私であればしません。
でも、こういう判断はかなり個人的な判断だと思いますので、
「それが価値がある」と思われるのであれば、1日2日の被ばくということも、
被ばくというか、放射線の管理区域の中に子どもたちを連れていくという選択は、
完璧にないとは私は思いません。
被ばくの排泄方法
質問:
これはちょっとあの…
先生が被ばくされた分を身体から排泄するために工夫している事があったら教えていただきたい。
小出:
えー、ありません。
被ばくというのには2種類あります。
外部被ばくというのと内部被ばくというのがあって、
たとえばこの大ホールが(笑)いま放射能で汚れているとなると、
私はここにいると被ばくをしてしまう訳ですね。
で、ここから離れれば被ばくをしないで済むというのが外部被ばくです。
ですから、放射能の汚染のあるところに行けば被ばくをするし、
そこかに逃げれば被ばくをしないで済むという事が出来ます。
もうひとつは内部被ばくというのですが、
それは食べ物であるとか空気を通して、放射性物質を身体の中に取り込んでしまうという、
そういう被ばくの仕方があります。
その時は、たとえば今ここの空気が汚れているとして、
私がその空気を吸い込んでしまって、身体にとりこんでしまう。
そうすれば、私はここからどこかへ逃げても放射能そのものが私の身体の中にあるわけですから、
もう被ばくを避けることができなくなるのですね。
それを内部被ばくといいます。
私は放射線管理区域の中で仕事をしていますので、
放射性物質を吸い込んだりして身体の中に取り込む危険はあるわけですけれども、
でも一度取り込んでしまったら、それを排泄するという事は基本的にはできません。
生き物として環境の中で生きているわけで、
いろいろなものを身体の中に取り込みます、そしてもちろん排泄します。
食べ物を食べて毎日ウンコもおしっこもするわけで、
どんどんどんどん排せつをしているわけで、
放射性物質を仮に食べたり吸い込んだりしても、一定のスピードで排せつはしていきますけれども、
でもその排せつのスピードを速めたりするという事は、基本的にはできません。
大量にその放射性物質を取り込んでしまって、
なにがなんでも排泄したいと思う時、いわゆる事故というような時がありますけれども、
そういう時には薬物に頼ります。
薬に頼って、私の身体の中の放射性物質を強制的に何とか出すという事はありますけれども、
強烈な副作用もまた伴いますので、
通常の場合は「できない」と思っていただいた方がいいと思います。
原発を残したいと本当に思ってる?
質問:
政府やマスコミの偉い人にも子どもや孫がいると思いますが、
原子力発電所を残したいと本当に思っているのでしょうか?
小出:
日本の国の人とか、電力会社の人とか、
今でも「原子力をどんどんやる」と言っているわけですね。
もちろんそういう人にも子どもはあるし孫もいるはずです。
私だったら到底認められないし、即刻止めるべきだと、
先程から皆さんに聞いていただいている通りですけれど、
でも「やろう」という人はいます。
私も不思議です。
聞いて下さい、皆さん、そういう人たちに。
「あなたどう思っているのか」という事を。
本当に不思議です、私は。不思議に思います。
京都大学は国立だけど・・・大丈夫?
質問:京都大学は国立ですけれども、先生が政府の意に反することをおっしゃっても問題ありませんか?
小出:
大変なことはなんにもありません。
私は京都大学という大学の教員です。
で、もしわたしが東京大学の教員であれば、もっとずっと前に嫌がらせを受けて辞めさせられていたと思います。
京都大学という大学は、東大への対抗意識ということもあるだろうし、
それぞれの大学の校風というのがあって、
一人一人の教員の独創性をとにかく重んじるという事を長い間歴史にしてきた大学ですので、
私の様な、国家にたてつく教員でも、
「学問的な嘘を言わない限りは良いだろう」というぐらいの度量のある大学だと私は思います。
大変ありがたいことだと、私自身は思っていますし、
これまで、何の圧力も受けた事がありません。
そして仮にもし圧力を受けたとしても、
よく人が私に言うんですけれども、「お前鈍感だな」と。
「だから圧力があっても、ただお前は感じてないだけだ」というようなことを言うんですけれども、
仮に私が圧力だと感じたとしても、
「だから何なんだ」と私はむしろ思うんですね。
今日何度も聞いていただきましたけれど、
私は、かけがえのない私なんです。
一回しか生きられないんです。
他の誰でもなくて私であって、私の命はひとつしかなくて1回しか生きられない。
「それなら私らしく生きなければ損だ」と私は思う。
金なんか儲けたってつまらないし、
偉いポストに就いたってつまらない。
私らしく生きるという事が何よりも大切なわけですから、
それに関しては誰にも譲る気はありませんので、
私はこれまでも自分のやりたいように生きてきましたし、
これからもやりたいように生きていきたいと思っています。
政府主催の公聴会など話しあいは?
質問:
原発の稼働について、政府と専門家のみなさん、教授のみなさんたちが、
公聴会などを通して話し合いを今されているでしょうか?
公聴会みたいなところで、政府の偉い人と先生でなにか話しあいをしているんですか?
小出:
私はですね、「論争は歓迎する」と言っています。
どんな論争でも公平にやってくれる限りはその場所に行くと表明しています。
今日は麦っ子畑保育園にきていますし、
私は福島の事故以降、沢山の方が私に「来い」と声をかけて下さるようになって、
今現在10件のお誘いのうち1件程度しかお受け出来ない状態になっています。
そして私は優先順位を付けています。
1番の優先順位は「敵地」です。
原子力を推進している人たちが私に話をさせるというのなら、どこにでも行くと言っています。
ただしその場合の条件が公平だという事です。
論争させる。
2番目が「現地」ということで、
いまの福島の汚染地帯であるとか、そういうところに読んでくれるのであれば喜んで行くと言っている。
3番目の優先順位が、「若い人」」という事で、
麦っ子畑も、若いと言ってもちっちゃい(笑)ですけれども、
優先順位の高い所に置かせていただいて今日も来ているのですけれども、
何よりも私「論争をすべきだ」と思っていて、
「公平な論争である限りは何処へでも行く」と言っているのですけれども、
政府が主催する公聴会とか、そういう場所には決して行かないと、
これまでは言ってきました。
何故かというとそういう場所というのは、
政府が原子力を進めるためのアリバイ作りなんです。
どんなことをやってもこれをやったから、反対派の意見も言わせたと、
彼等のアリバイ作りにしかならないという事で、私はそういう場には行かないと言ってきました。
ただし、これまで何度かそういう場所に行かざるを得なくなった時がありました。
それは…、政府の方から仕掛けてきて、
住民の方もこれをやらないと抵抗する事が出来ないので、自分たちとしても受けるしかないし、
「お前来て反対の意見を言ってくれ」と、誘われた事が何度かあって、
そういう時には私も行った事が何度かあります。
そしてもちろん私は「原子力なんてやるべきではない」という発言をしてきました。
ただ、そういう場所で私がいくら発言をしても、
やはりそれは政府が原子力を進めるためのアリバイ作りにこれまでは使われてきてしまったという歴史でした。
質問:あの、事故直後に国会で先生が話された、それは?
小出:
はい、行きました。
わたしは・・・・
政治というのがあるんですね、皆さんまた選挙もありますけれども、
政治というものにかなり深く絶望していまして、
「政治にはかかわらない」とずーっと発言をしてきましたし、
政治的な行動に私がかかわることはないと言ってきたのです。
ただ、福島の事故が起きて以降、
たとえば、どこどこの政党が私に入れとか、そういう誘いは山ほど今でもありますけど、
そんなものは一切お断りしています。
ただし、ある時に参議院というところから、
「私に話に来い」というお誘いがありました。
私は本来だったら「そんな所に行くか」と思うのですけれども、
今日も一番初めに聞いていただいたように、「福島の事故を防げなかった」という事に関して、
私はやはりかなり重たい責任が自分にはあると思いましたので、
自分が政治が嫌いだと言って、一切それに関わらないというのはやはり、「できないな」と思いまして、
一度はやはり行かなければいけないと思って、参議院の行政監視委員会という委員会でしたけれども、
その場所に一度だけ行って、これまで原子力を進めてきた政治の責任に関して一言意見を言ってきた、
それだけです。
放射線管理区域の4万ベクレルの中身
質問:
実は今日、中継をさせていただいていますけれども、
中継をご覧になった方からの質問で、電話で質問がきたんでしょうか、
4万ベクレル=4ベクレル/平方cmの汚染とはガンマ線のみでしょうか?
ガンマ線+ベータ線の合算でしょうか?
小出:
はい、私は先程
1平方mあたり4万ベクレルというのが放射線管理区域の基準だと聞いていただいたんですね。
それをご質問の方は換算して、「1平方cm当たりに換算すれば4ベクレルという数字だろう」と、
そうなんです、その通りです。
そして、その数字というのが「ガンマ線とベータ線の合算か?」というのがご質問ですけれども、
簡単に言ってしまうと合算です。
ただし、本当に測っているのは放射線というよりは、放射性物質の量なんです。
これはきちっと説明すると大変に難しいんですけれども、
放射性物質の中には
アルファ線というものを出す放射性物質もあるし、
ベータ線を出す放射性物質もあるし、
ベータ線を出してガンマ線を出す放射性物質もあるのです。
ですから、ベータ線とかガンマ線という放射線で基準を決めているのではなくて、
放射性物質という、その物質の濃度で、1平方cm当たり4ベクレルということを決めているのであって、
その時は、ベータ線を出す放射性物質も、ベータ線もガンマ線も出す放射性物質も、
全部合算で決めています。
アルファ線を出す放射性物質だけは除外で、
その場合にはもうひとけた厳しい基準になります。
焼却場の温水プール
質問:
焼却施設での温水プールは、水の汚染が無ければ入っても大丈夫でしょうか?
ドイツの発表では呼気からの影響が60%と聞きましたがどう思われますか?
小出:
焼却場で温水プールをやっている。
そこのプールで泳ぐ事が危険かどうかという事ですね。
とても難しいご質問ですけれども、…「世界は全部汚れているんです、今」
食べ物だって「1kgあたり100ベクレルなら良い」と言って、全部汚れているものが出回っている。
それを私たちは扱いながらゴミにして、それを焼却場で焼くんですね。
焼却場で焼けば、汚れの一部は煙突から出てくるわけですし、
殆どのものは焼却灰というところに残って、濃縮されて、いくわけです。
でも温水プールというのは、その焼却施設の温水プールというのは、
別にその、焼却灰を混ぜてプールにするわけではないわけですし、
煙突から噴き出してくる放射性物質といっても、私はそれほど多いとは思いませんけれども、
それが温水プールの建屋の中にわざわざ引き込まれているわけでもないですよね。
多分ないはずだと思いますので、
そうであれば、もう地球の環境が全部汚れてしまっているという意味では、私は同じだと思います。
まぁ、できるだけその焼却しているところに近づかない方がいいと言えばそうだとは思いますけれども、
でも・・・、そこも汚れている中でなにがしかの上乗せがあるという、その程度の事だと思いますし、
焼却場のプールだからそのプールの水が汚れているという事は関係ないと思います。
被ばくした人からの被ばく
質問:
東海村の事故で被ばくした人から被ばくをして治療をしたというお話がありましたけれども、
それでは、食品などから内部被ばくをした人から、二次被ばくの危険はありますか?
小出:
あの…、私たちはこの地球に生きているんですね。
それで今日私は、人間がこの地球を放射性物質で汚したという話を聞いていただいたわけですが、
この地球という星にはもともと放射性物質はあるのです。
ウランであるとか、トリウムというものもありますし、
カリウム、窒素、リン酸、カリというのが農業の3大肥料ですけれど、
そのカリの中にも実は放射性物質があるのです。
そういう、何がしか放射性物質がある世界の中で、
生き物がだんだん死滅したり進化しながらここまで来て、
人間も何とか今この環境で生きていて、
この環境に何とか適合しながら今生きているんですね。
で、私なら私の身体の中にも、天然に存在している放射性物質が、もうすでに存在しているんです。
ウランやトリウムという放射性物質も、微量なら私の身体の中にあるし、
カリという放射性物質であれば、結構な量がもう、私の身体の中にあるのです。
えー、私の身体全部で言えば、たぶん4000ベクレルとか5000ベクレルぐらいある。
カリというのがある。
ですから、私の近くにこうやって座っていると、私の身体から出ている放射線で被ばくしている。
逆に言えば私は、皆さんから被ばくをさせられている。
たとえば誰かを抱けば、そのだいた人が近くによるわけですから、その人から被ばくをしてしまう。
という事があるわけです。
で、汚染食品を食べた人がいる。
その人がたとえば近くに来れば、また被ばくをしてしまうというのは、
言っててみれば当たり前の事としてあるわけですけれども、
でも、汚染食品を食べた人が、大量のその・・・・・・、汚染を、身体の中に蓄積しているとすれば、
症状があらわれてくるはずだし、そういう方は多分分かるはず、
いま発電所の中で働いている労働者の方の中には、多分そういう人もいると思いますけれども、
そういう人とごく濃密に接触するという事は、できれば避けた方がいいと思いますけれども、
それ以外のことはもう、ほとんど避けることすらが出来ないという、
そういう世界だと思っていただいた方がいいと思います。
J-PARC日本原子力研究開発機構の放射能漏れ事件
質問:
JCOの事故が最近もありましたが、テレビなどでほとんど報道されていません。
「問題ない」というような空気ですけれども、
実際のところはどういう事故だったのでしょうか?
小出:JCOじゃないですね?
質問:JCOって書いてありますけど。
小出:
JCOの事故は今日聞いていただいた臨界事故というやつで、1999年9月30日です。
最近あった、東海村であった事故というのがありました。
それは日本原子力研究開発機構というところで、加速器というものを使っていて事故を起こしました。
その事故は言ってみれば「大変バカげた事故」です。
なんでそんな放射線、放射能を取り扱う専門の研究機関でありながら、こんな事故を防ぐ事が出来ないのかと、
私からすると本当に唖然とするほどバカげた、初歩的な誤りを積み重ねた事故でした。
でも事故の規模としては遥かに小さくて、
事故の当事者にも放射線の影響が出るという程のものではありませんでしたし、
周辺環境に法令の、法律が決めた以上の放射性物質をばらまいたということもありませんでした。
今日聞いていただいたように、福島第一原子力発電所の事故は、
もう、法令を遥かに超えたものを大量にばらまいて、もう日本国中、世界中を汚染しているわけで、
そういう事故に比べれば、日本原子力研究開発機構でこの間起きた事故は、あまりにも小さいし、
取るに足らないと言っていい程の事故でした。
ただし、専門家と言われているような人間でもあまりにもずさんなことをやるという事は、
しっかりとやはりみなさんも知っておくべきだと思いますし、
ましてや事故を起こした彼等は、
しっかりとこの事故に関して調査をして、責任も取るべきだと私は思います。
J-PARC日本原子力研究開発機構の放射能漏れ事件に関する記事
「茨城東海村大学院生等4名2ミリシーベルトの内部被ばく。
連絡は警報から36時間後。モニタリングポストの異常あり」
日本原子力研究開発機構公表資料&NHKニュース時系列
「安全装置は1日10回ぐらい毎日止まるんです、だから経験から再起動」
5/27モーニングバード書き出し・J-PARC55名の被ばく検査結果資料・東京新聞社説
<保存してるよ!>放射放出事件・東海村J-PARCがネットから消した資料
どんな放射性同位体が飛び出したの? 東海村J-PARC(日本原子力研究開発機構)事故
茨城県の東海村の実験施設の事故について 5/28武田邦彦氏(音声文字起こし)
放射性物質の拡散した方向と種類 J-PARC東海村放射能漏れ事故5/29公表資料より
J-PARC換気扇回しっぱなしで3日間の言い訳
日本の農業を守る
45:09
質問:
これからお子さんを生む方は食べ物を気を付けた方がいいと思うんですけれども、
これは、農作業に従事している、特に茨城とか近いところの方達の事だと思いますが、
その方達の被ばくも問題ではないでしょうか?
農家のさらされている環境はよくありません。
という事で、農家の方々の被ばくについては60禁とすると、それを認めることにはなりませんか?
多分、農業従事者の方が高齢だという事だと思うんですけれども。
小出:
はい、それも大変難しい問題です。
私は今日「子どもをとにかく被爆から守りたい」という話をみなさんに聞いていただいたんですが、
私は実はもうひとつやりたい事があるんです。
それは、「日本の農業を守る」という事をやりたいと言ってきました。
何故かというと、まあ、きちっと聞いていただくと大変ですけれども、
簡単に言いますと、日本というこの国は、まいわゆる
「明治維新というもので近代国家の仲間入りをした」と言われています。
それ以降どうしたかというと、ヨーロッパ、米国を見習って、
西洋文明をとにかく取り入れて工業化しようと、そして大国になろうという
そういう歴史をずっと歩んできたんですね。
そして、そのためにはエネルギーをどんどん使っても良いから、工業を発展させる。
もう農業や漁業はダメだという事で切り捨ててきてしまった。
で、その一番の象徴が私は原子力だと思っているのです。
工業さえ発展させればいいというものの象徴というものが原子力だと思ってきました。
その原子力が今回の様な事故を起こして、膨大な汚染を引き起こしている訳ですけれども、
その汚染があるからと言って、農業を崩壊させるような事に手を貸してしまうと、
この日本という国は立ち直れないと私は思っていますので、
汚染があったとしても日本の農業は潰してはいけない。
なんとしても農業を守らなければいけないと実は思っているのです。
ところが先程聞いていただいたように、
今1000平方kmというところはとにかく汚染がひどすぎて、
もう、人々全部が放り出されているんですね。
農民もなにもみんな追い出されている。
だから農業が崩壊してしまったんです。
少なくても1000平方kmは崩壊した。
そして私は先程から何度も聞いていただいているように、そんな範囲では済まない。
ほぼ2万平方kmという範囲を放射線管理区域にする。
つまり、「無人にしなければいけない」と私は言っているわけで、
「農民もなにもそこから追い出さなければいけない」と私は言っている。
本当であればそうだと私は言っている。
でも、日本の国家がそれをしないで、人々をそこに捨てたわけです。
そうすると捨てられた農民はそこで農業をするしかないのです。
「生きるために農業をする」んです。
農民は汚染地帯で被ばくをしながら食べ物を作っているんです。
そういう農民に関しては、私はやはり支えるしかないと思う。
本当ならば逃げて欲しいけれども、
逃がすことができないで今被ばくをしながら働いている農民は、支えるしかない。
その農民が作っている食べ物は引き受けるしかないと私は思っています。
そのための提案が先程聞いていただいた60禁なんです。
大人が被ばくを受け入れながら農業を守るしかないという提案を私はしてきたのです。
でも子どもには被ばくをさせてはいけないので、
できる限り綺麗な食べ物を回せるような社会的なシステムを作らなければいけないと私は思っています。
では、じゃあ、その農民たちはどうするのか。
農民だって被ばくをしながらじゃないかというような事を言ってしまうとその通りなんです。
防ぐ事が出来ない。
外部被ばくは少なくても防げない。
農地が汚れているから、そこで仕事をする限りは防ぐ事はできません。
放射能の防護服って皆さんご存知かもしれませんけれども、
あれは、体に付着したり、あるいはマスクをして身体の中に取り込まないという、
内部被ばくを防ぐためだけのものであって、
外部被ばくに関する限りは、防護する手段はありません。
その場所から逃げるしかないんです。
鉛のスーツを着るというのはひとつの手段ですけれども、
鉛のスーツなんか着て農作業なんかできるどおりがないのであって、
もう仕方がないのです。
被ばくをするしかない。
だから農民が少しでも被ばくを減らすという事をするとすれば、
できるだけ泥が身体につかないようにして下さいとか、
もし可能であればマスクをして下さいとか、
せいぜいその位の事しか言えません。
それでつくってくれたものは、大人が覚悟を決めて食べましょうというのが私の提案です。
ただし、この私の提案は大変難しいというか、……難しい事を含んでいます。
というのは、私は「農業を守りたい」と言ったわけですけれども、
農業というのは土に根ざしてずーっと長い年月をかけてやるんですね。
今の大人の世代が農業をやるだけではだめで、子どもの世代もそこで育てなければいけないのです。
子どものいない農業というのは潰れる。
でも私は「子どもだけは被ばくさせたくない」って言っている。
という事は、私が言っていることに矛盾がある。
子どもは被ばくしたらダメだけど農業を守れと言ったら出来ない。
その事で私は「農業を守りたい」と言って、ずっと運動を続けてきた人たちと、
先日深刻な論争の場に呼び出されてやってきました。
私を呼び出した人たちは、有機農業というのを長い間やって、
「これからも日本の農業を守っていきたい」と言って、苦闘を続けてきた人たちが私を呼び出したわけで、
その人達は、
「こうなった以上は、子どもも含めて被ばくをさせながらでも守るしかない」と私に議論を挑んできたのです。
私も農業を守りたいけれども、私は「子どもはダメだ」と言いまして、
その方達と物別れになりました。
でも、私の言っている事が矛盾なんです。
私は十分それを承知していますけれども、
でも子どもを被ばくさせる事だけは私は認める事が出来なかったので、そうして帰ってきました。
でも今でも何とか農業を守りたいと思っています。
大変難しい事が、今、私たちの目の前にある。
みなさんも忘れないで、この問題を自分のこととして考えていただきたいと思います。
解決策はありません。
残念ながら私も「こうすればいい」という解決策を皆さんにお伝えできないけれども、
でも困難な事が今でもあるという事だけは忘れないで欲しいと思います。
52:39
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コメント
いつも情報ありがとうございます。
胸部レントゲンや、歯医者さんのレントゲンの時、
α線β線γ線X線が測定できるという、インスペクタープラスをもって入ります。(一度ガイガー福島も連れて入ったら、α線β線以外はダメらしく、カシャッの瞬間画面が消えて、しばらく正常に働かなくなりました)
胸部レントゲンの時は、手に持ってられないので、1mくらい離れた台に置き、カシャッの後、顎を機械から下ろして振り返ると、減衰途中1,68μでした。
歯のレントゲンの時は、口に向いてるレントゲン機械の30cm隣りに、自分の方に画面を向けて(感知部はあちら側)手で掲げて、数値を観察しました。カシャッの瞬間は1,98μで一気に減衰。
感知部は機械の方は向いてないし、近くとはいえ、照射方向とは違う所にあるガイガーが、このような数値を表すのは、被写体方向以外にも、X線が飛んでるのでしょうか。どなたか教えて下さい。だとしたら、エプロンだけでなく、首や頭の被ばくを防ぐものがあるといいなぁと思います。お医者さん歯医者さん、どうかご検討お願いします。
胸部レントゲンや、歯医者さんのレントゲンの時、
α線β線γ線X線が測定できるという、インスペクタープラスをもって入ります。(一度ガイガー福島も連れて入ったら、α線β線以外はダメらしく、カシャッの瞬間画面が消えて、しばらく正常に働かなくなりました)
胸部レントゲンの時は、手に持ってられないので、1mくらい離れた台に置き、カシャッの後、顎を機械から下ろして振り返ると、減衰途中1,68μでした。
歯のレントゲンの時は、口に向いてるレントゲン機械の30cm隣りに、自分の方に画面を向けて(感知部はあちら側)手で掲げて、数値を観察しました。カシャッの瞬間は1,98μで一気に減衰。
感知部は機械の方は向いてないし、近くとはいえ、照射方向とは違う所にあるガイガーが、このような数値を表すのは、被写体方向以外にも、X線が飛んでるのでしょうか。どなたか教えて下さい。だとしたら、エプロンだけでなく、首や頭の被ばくを防ぐものがあるといいなぁと思います。お医者さん歯医者さん、どうかご検討お願いします。
鎮守の森 | 2013.10.01 13:43 | 編集
JA新ふくしま組合長吾妻雄二氏「福島市内の学校給食に福島米~命をかけて売る」
http://onsen.tumblr.com/image/62607840607
カメレオンの舌を持っている? 24分~小泉元総理が脱原発 音声映像を遮断の意味は?・・
何方かが役割分担って言ってたね・・・核の処分場になる日本?
海外で売り込んでいる原発、核のゴミは日本に送られる予定
http://www.dailymotion.com/video/x15f0mt_2013-10-01_news
消費税を上げる必要性はない
https://www.youtube.com/watch?v=joxYDri0Mac
http://onsen.tumblr.com/image/62607840607
カメレオンの舌を持っている? 24分~小泉元総理が脱原発 音声映像を遮断の意味は?・・
何方かが役割分担って言ってたね・・・核の処分場になる日本?
海外で売り込んでいる原発、核のゴミは日本に送られる予定
http://www.dailymotion.com/video/x15f0mt_2013-10-01_news
消費税を上げる必要性はない
https://www.youtube.com/watch?v=joxYDri0Mac
| 2013.10.02 13:29 | 編集
いい書き起こしだ。
「解決策はないけれど、それでもみんなで無い知恵を出しあって、どうしても何とかしなくてはならない」――その通りだ。
「解決策はないけれど、それでもみんなで無い知恵を出しあって、どうしても何とかしなくてはならない」――その通りだ。
いつも、大変な書き起こしありがとうございます。
小出氏の放射能汚染農作物は大人・老人が食べるべき、というような発言には以前から批判がありましたし私も耳を疑いましたが、御自分で矛盾をみとめていらっしゃるんですね。
有機農業の方たちの「こうなった以上は、子どもも含めて被ばくをさせながらでも守るしかない」っていうのも驚きです。尋常じゃない。
彼らは農業を守りたいんじゃなくて自分たちの仕事・収入をまもりたいだけですね。
有機農法の理念の本末転倒。
被曝しながら毒物を生産し、流通させる=消費者まで被曝させるための有機農法って???
茨城で自然農業をやってて、311以後関西に移住して、限界集落のようなところで農地を借りて自然農法を始めた知り合いがいます。老人ばかりの集落なので歓迎されているようです。
そう、関西にはまだ借りられる農地がたくさんあります。
農地を借りると昔の小作人みたいで収入が減るのがいやなんでしょうか。
関東の有機農産物より関西の一般農産物を私は買います。
小出氏にすすめられても私は食べません!小出氏のロマンに付き合う気はないです。毒物を知りながら積極的に食べるようになったら生物としてお終い。
小出氏、是非小泉元総理と会っていただきたいです。
小泉が言うんなら、と恐る恐る反原発を言い始めるマスコミや政治家の動きが見ものです。
小出氏の放射能汚染農作物は大人・老人が食べるべき、というような発言には以前から批判がありましたし私も耳を疑いましたが、御自分で矛盾をみとめていらっしゃるんですね。
有機農業の方たちの「こうなった以上は、子どもも含めて被ばくをさせながらでも守るしかない」っていうのも驚きです。尋常じゃない。
彼らは農業を守りたいんじゃなくて自分たちの仕事・収入をまもりたいだけですね。
有機農法の理念の本末転倒。
被曝しながら毒物を生産し、流通させる=消費者まで被曝させるための有機農法って???
茨城で自然農業をやってて、311以後関西に移住して、限界集落のようなところで農地を借りて自然農法を始めた知り合いがいます。老人ばかりの集落なので歓迎されているようです。
そう、関西にはまだ借りられる農地がたくさんあります。
農地を借りると昔の小作人みたいで収入が減るのがいやなんでしょうか。
関東の有機農産物より関西の一般農産物を私は買います。
小出氏にすすめられても私は食べません!小出氏のロマンに付き合う気はないです。毒物を知りながら積極的に食べるようになったら生物としてお終い。
小出氏、是非小泉元総理と会っていただきたいです。
小泉が言うんなら、と恐る恐る反原発を言い始めるマスコミや政治家の動きが見ものです。
ぽこたん | 2013.10.02 14:48 | 編集
初めまして・・・でしょうか?
全文文字起こしという大変な作業をしていただいて、ありがとうございました!
遅くなりましたがFBに転載させていただきました。
https://www.facebook.com/mugikkobatake.hoikuen?fref=ts
小出先生に来園していただいて、親の方々や小学生達が直接聴くことができて本当に良かったと思います。
私自身もくじけそうになるたびに、小出先生のその時々の言葉に助けられてきました。
先生のようにきちんと発現される人がどんどん表に出てくることを願っています。
全文文字起こしという大変な作業をしていただいて、ありがとうございました!
遅くなりましたがFBに転載させていただきました。
https://www.facebook.com/mugikkobatake.hoikuen?fref=ts
小出先生に来園していただいて、親の方々や小学生達が直接聴くことができて本当に良かったと思います。
私自身もくじけそうになるたびに、小出先生のその時々の言葉に助けられてきました。
先生のようにきちんと発現される人がどんどん表に出てくることを願っています。
麦っ子畑保育園 | 2013.10.07 05:13 | 編集