トリチウム水の魚卵発生に及ぼす影響~「孵化稚魚の眼径は有意に小さい」放射線医学総合研究所資料集(書き出し)

放射線医学総合研究所資料集より


昭和48年 海産魚の胚発生に及ぼすトリチウム水の影響
環境衛生研究部(市川龍資、須山一兵)

原子力施設から海域中に放出されるトリチウムが
沿岸魚類資源に影響をもたらす可能性について検討するための基礎的情報を得る目的で、
海産魚卵をトリチウム添加海水中で発生させる際の影響の有無の研究に着手した。
今年度はヒラメとクサフグの受精卵を種々の濃度のトリチウム海水中でふ化させたが、
10-3乗から10-2乗Ci/ℓの濃度範囲ではふ化率が対照群と有意な差を示さなかった。
ただし1Ci/ℓおよび10Ci/ℓという高濃度のトリチウム海水中にては、ふ化率の低下が検知され、
特に10Ci/ℓ群のふ化直後の稚魚は対照群稚魚のように活発に遊泳せず
その体形も対照群に比して短小であり、腹部が大きい。
眼の直径の測定結果では10Ci/ℓ群の眼径が対照群のそれの57%の値であった。

しかし、体重は両群でほとんど相違せず、
これは10Ci/ℓの稚魚に卵黄の残存量が大きいためと考えられた。



昭和49年 海水中トリチウムの魚卵発生に及ぼす影響
環境衛生研究部(市川龍資・須山一兵)

今年度は10マイナス3乗Ci/ℓから10Ci/ℓまでの5段階のトリチウム濃度を有する海水中に
クサフグFugu niphobles の受精卵(嚢胚中期)を浸漬し、
水温25℃にて6日間で孵化した。
各群の孵化率は10Ci/ℓのトリチウム濃度の場合だけを除き余り変わらなかった。
各群から30個体ずつ抽出した孵化稚魚の眼径の測定結果では、
同じく10Ci/ℓの群にて有意に小さい
ことが認められた。

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[研究発表]
市川、須山:Effects of Tritiated Water on the Embryonic Development of Two maeine Teleosts.
日本水産学会誌40(8)819-824(1974)



昭和50年 メダカ稚魚の成長に及ぼす水中トリチウムの影響
環境衛生研究部(市川龍資、須山一兵)

環境に放出されるトリチウムの魚類に及ぼす影響を調べる目的で、
トリチウム水中で孵化させたメダカ稚魚の成長を観察した。
受精直後の卵を10マイナス2Ci/ℓと1Ci/ℓの濃度のトリチウム水中に入れ、
25℃で10日間飼育した。
この間に孵化した稚魚を清浄水に移し、その後30日間配合餌料とミジンコ都投餌し飼育した。

その間、毎日死亡魚を数え、また実験終了時点でフォルマリン固定して尾叉長を測定した。
同じ実験を2回繰り返した。

孵化率はコントロールで88%とやや低かった他は、96~98%で差はなかった。
用いた卵数に対する30日間の生存率は2回の平均で、
コントロールの51%に対して両群とも47.5%と幾分低かったが、有意差ではなかった。
尾叉長の平均はコントロールの12.22mmに対して、
10マイナス2乗Ci/ℓ群が11.38mm、
1Ci/ℓ群が11.42mmと僅かながら成長の遅れがみられた。


また受精直後の卵に100,200,500,1000及び2000RのX線を照射し、
孵化後30日間上記の方法で飼育、観察した。

0~1000Rの照射では孵化率は95~98%で影響は見られないが、
2000R照射では16%に落ちた


生存率はコントロールの65%に対して、
100~1000R照射では67~76%で、むしろ高率であったが、
2000R照射群では3%で孵化したものもほとんど育たないことが分かった。


尾叉長の平均はコントロール、12.75mm
100R、12.77mm
200R、12.30mm
500R,11.10mm
1000R,11.88mmで、
500R以上の照射群でやや成長の遅れがみられた。
2000R照射群で最後まで生き残ったのは2尾で、
その尾叉長は14.0mmと13.5mmであった。



昭和51年 トリチウム水の魚卵発生に及ぼす影響
環境衛生研究部(市川竜資、須山一兵)

<目的及び経過>
これまでトリチウム水中での淡水産魚卵および海産魚卵の発生実験を行い、
形態的変化の検出に重点を置いて検討した。
今年度から、トリチウムによる生理的変化の検知を目的とし、
発生中の魚卵の水中からの物質吸収度をトリチウムの濃度別に比較する試みを開始した。

<内容及び成果>
今年度は、予備実験として、カルシウムのメダカ卵への取り込みを45Caをトレーサーとして測定した。
産卵当日のメダカ卵を45Caを10マイナス2乗および1μCi/ml濃度で含む水中で飼育し、
1,2,3,5,7,9日目にサンプリングし、
赤外線ランプ下で乾燥後、GMカウンタでその放射能を測定した。
9日目に検出された放射能の40~60%が24時間で観察され、その後の増加は緩慢であった。

短時間での取り込みをみるために、
飼育開始後5,10,30および60分後にサンプリングし、直ちに測定を行い、
急速かつ直線的な放射能計算値の増加を観察した。

24時間後に検出される放射能計測値の約50%が1時間で観測されたが、
これは急速な表面吸着が起こるためと考えられる。
しかし、9日目に未孵化の卵を洗滌後、清浄水に移し、
その後24時間で孵化した稚魚から9日目の卵と同程度の放射能が計測された事は
単に吸着だけでなく、卵膜を通しての吸収が進行していることを示唆しているものと考えられる。



昭和52年 トリチウム水の魚卵発生に及ぼす影響
環境衛生部(市川竜資、須山一兵)

<目的及び経過>
これまでトリチウム水中での淡水産魚卵および海産魚卵の発生実験を行い、
形態的影響の検出に重点を置いて検討した。
今年度は、トリチウム水中で発生させたメダカ卵の発生初期における染色体異常の頻度を求めた。
また、γ線断続照射したメダカ卵についても染色体異常頻度を求め、両データを比較した。

<内容及び成果>
受精直後のメダカ(Oryzias latipes)卵をトリチウム(0~10Cile)を含む水中で飼育した(25℃)。
処理開始後約8時間で卵を押しつぶし、醋酸オルセインで染色して、染色体異常を観察した。
観察した時のメダカ卵の発生段階は胞胚初期ないし胞胚後期にあった。
染色体異常として細胞分裂後期及び末期にみられる染色体橋の形成をとりあげ、
分裂後、末期にある細胞数に対する割合をもって示した。
また、受精直後のメダカ卵を137Cs(セシウム137)および60Co-r(コバルト60)線源を用いて
8時間連続照射し、
トリチウム水中飼育卵と同様の処理を行い、染色体異常頻度を求めた。
結果を下表にまとめて示す。
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