<両棲類と哺乳類のトリチウム取り込み比較>「トリチウム水投与後10日目では脂肪組織に最も多く、 次いで脳、睾丸、肝の順」放射線医学総合研究(内容書き出し)

放射線医学総合研究所資料集より

昭和48年 メダカ胚核酸におけるトリチウム代謝
生物研究部(上野昭子)

トリチウム水の水生生物への影響を知るための基礎的知見として、
また食物連鎖におけるトリチウムの行動の研究の一環として、
トリチウム水のメダカ胚核酸への取り込みを研究した。

メダカの受精卵を産卵当日より孵化直線まで(9日間)トリチウム水中、25℃で飼育し、、
この卵を蒸留水で4階洗滌(せんじょう)したのち、
KirbyらのPAS-フェノール法を一部修正した方法により高分子核酸を抽出した。
放射能は液体シンチレーションカウンターで測定した。
卵全体へのトリチウムの取り込み量は46.8±5.72×10-10乗Ci/wet eggで、
濃縮係数は約0.60であった。
乾燥卵への取り込み量は生卵の約1%であった。

核酸(DNA+RNA)への取り込み量は、
10,100、および1000μCi/mlのトリチウム水を使用した時、濃度に完全に依存した。
100μCi/mlのトリチウム水中で飼育した卵のDNAへの取り込み量は8.48μCi/gDNAで、
このトリチウムによるベータ線のDNAへの吸収線量はBondらの式により計算すると、
約2.4rad/day/gDNAとなった。
DNAを構成塩基に加水分解し、各々の塩基への取り込み量を調べた結果、
4種類の塩基の全てに取り込まれるが、特にチミンへの取り込み量が多い事が分かった。

また、卵発生の各ステージにおける取り込みを調べたところ、
これらの核酸が合成される時期にトリチウムが取り込まれることが明らかになった。
トリチウム水中に7日間飼育してからトリチウムのない水に卵を移し、
取り込まれたトリチウムの減少速度を調べたところ、
DNAに取り込まれたトリチウムは徐々に減少するが、その速度は非常に緩慢である事が分かった。
(卵化するまでの時間では生物学的半減期に到達しなかった)

研究発表
上野:日本放射線影響学会第15回大会(1973.10)
上野:Radiat.Res.(1974)(in press)



昭和49年 メダカ胚核酸及び蛋白質におけるトリチウム代謝
生物研究部(上野昭子)

(1)前年度、トリチウム水のメダカ胚核酸への取り込みを調べたので、
これに引き続き、今年度は核酸及び蛋白の前駆体である遊離アミノ酸へのトリチウム水の取り込みを測定した。

<方法>
メダカの受精卵を産卵当日より9日間1mCi/mlのトリチウム水中で飼育し、
この卵から開遊離アミノ酸を抽出精製した。
精製したアミノ酸試料は二次元の薄層クロマトグラフィーにより分離し、
各スポットをかきとって0.1規定塩酸で抽出して一部を定量、残りを放射能測定に用いた。

<結果>
トリチウム水は種々のアミノ酸に取り込まれ、その取り込み量はアミノ酸の種類によって大きな差があった。
特にグルタミン酸、アラニン、アルギニン等に取り込み量が多い。
このような取り込み量の差は、
これらのアミノ酸の代謝の途中にトリチウムを取り込みやすい過程があるためか、
または比較的安定な形で取り込まれたものだけが残り、不安定なものは外れてしまうためと推定される。
今後はこの結果を高速液体クロマトグラフィーで確かめ、さらに発生過程での変動なども調べる予定である。

[研究発表]
Akiko M. Ueno:"Incorporation of tritium from tritiated water into nucleic acids of Oryzias 1ati-pes eggs."Radiation Res.59,629-637(1974)



(2)自動液体クロマトグラフ装置
本装置は日本分光製ASC=Ⅱ型で、次の所性能を有する。
1)高性能シリンジ型ポンプ(圧力最高350kg/㎠)を用いているので、
従来の液クロより分離時間が大幅に短縮され、アミノ酸18種を90分で分離できる。
また、移動相の定流量性がよいので、分離能もすぐれている。
2)アミノ酸の検知器に蛍光光度計を用いているので、感度が約2桁向上している。
3)放射性物質の活性を測定するため、分離した試料の一部を分取する事ができる。
4)カラムの種類を簡単に取り換えられるので、応用範囲が広い。



昭和50年 メダカ卵におけるトリチウム代謝
生物研究部(上野昭子、一政祐輔※)※研究生

<目的>
先にメダカ卵のDNA,RNAおよびクロマチンタンパクへのトリチウム水の取り込み量を報告したが、
本年度はこれらの前駆体である卵内遊離アミノ酸および脂質へのトリチウム水の取り込みを研究し、
トリチウム水の水生生物への影響ならびに食物連鎖における
トリチウムの行動を解明するための基礎的知見を提供する、

<経過>
(1)産卵1日目のメダカ卵を材料とし、
①8日間、トリチウム水のみ
②産卵後4日間トリチウム水、その後4日間常水中、
③産卵後4日間常水、その後4日間トリチウム水中
との3条件に従って飼育した。
この飼育卵を水洗後Bligh,Dyer法により卵脂質を抽出、さらに薄層クロマトグラフィで脂質組成を分析し、
各分画の放射能は液体シンチレーション法で求めた。

(2)メダカ卵を1mCi/mlのトリチウム水中、25℃で孵化直前(9日間)および6日間飼育、
卵内アミノ酸はメダカ卵約400個を水洗後、ホモジナイズ処理し、
常法に従って
抽出液をAmberlite IR120によるイオン交換樹脂カラムに吸着、溶出させてアミノ酸試料とした。

<成果>
(!)メダカ卵脂質含量は最大量当たり2.2%で、
中性脂質(主としてトリグリセリド、ステロール、ステロールエステル)80%、
リン脂質(主としてレシチン)20%よりなる。
トリチウム水中の飼育による脂質分画の放射能の総量は少ないが、
その80%はリン脂質分画に特異的に分布する。

卵の飼育条件の差に基づく放射能の濃度や分布に変化は認められなかった。

(2)高速液体クロマトグラフ装置(日本分光ASCⅡ型)を用い、
2カラム法で各アミノ酸を分離し、フルオレスサミン蛍光法により検出する。
標準アミノ酸混合液の分離に成功したので、今後メダカ卵試料についても実施する。




昭和51年 生物卵におけるトリチウムの摂取、代謝に関する研究
一政祐輔(外来研究員)

<目的>
トリチウム水の生体内の挙動を、
貯蔵物質あるいは生体膜の主構成成分として重要な働きを持つ等室との関連で検討する。

<経過>
メダカOryzias latipesの受精卵は産卵後25℃の恒温室内で飼育した。
トリチウム水の卵内挙動をみるために、
トリチウム水での飼育を6日間続けて行う場合と、
始めの3日間をトリチウム水で飼育し、後の3日間を淡水で飼育する場合と、
さらに始めの3日間を淡水で飼育して後の3日間をトリチウム水で飼育した場合を比較して調べた。
なお、トリチウム水の放射能濃度は1mCi/mlのものを使用した。

卵からの糖質の抽出はBligh and Dyer(1959)の方法に準じて行った。
糖質の分画には薄層クロマトグラフィーを用いた。
各資質成分の分解は2規定・水酸化ナトリウム溶液中、封管下で100℃、2時間行ったのち、
まず不ケン化物を石油エーテルで抽出し、次に中和して脂肪酸を抽出した。
薄層クロマト上の放射能はプレートからかきとり、液体シンチレーション法で測定した。

<成果>
1)産卵直後のメダカ卵をトリチウム水を含む水中(1mCi/ml)で飼育すると、
脂質画分へのトリチウムの取り込みは孵化に至るまではほぼ直線的に増加し、
6日後には186dpm/eggに達する。

これは上野(1974)が報告した核酸への取り込み量のほぼ1/3である。
卵の水分含量を70%とし、卵水分中のトリチウム水を外液中と等しいと仮定して
(実際には1~3日目の間は4.2%、6日目では34%)
糖質への取り込み率を計算すると、0.0086%である。

2)糖質の各成分へのトリチウム水からのトリチウムの取り込みを調べると、
リン糖質、特にレシチンへの取り込みが最大であり、
全糖質への取り込み量の約40%に達する(レシチン含量は全糖質の約14%)。
レシチンに取り込まれたトリチウムの87%はグリセロールとコリン画分に、
10が脂肪酸に分布する。
なおレシチンにおけるH/Tは1×10マイナス6乗であり、
上野(1974)のデータ―から計算するとシトシンでは2×10マイナス5乗である。

3)産卵3日目に卵をトリチウム水から普通の水(淡水)に移しても
脂質中のトリチウム活性の低下は極めて遅く、3日後に約10%減少するにすぎない


[研究発表]
一政、秋田:日本放射線影響学会第19回大会 広島(1976.10)



昭和52年 トリチウムの生物に及ぼす影響研究における実験手法の確立
一政祐輔(外来研究員)

<目的>
メダカ卵をトリチウム水で飼育し、
その卵の脂質分画についてトリチウムの取り込みについて得られた知見と実験手法をラットに応用し、
両棲類と哺乳類のトリチウムの取り込み機作の比較に役立てることを目標とした。

<経過>
実験動物と投与については、動物系(1)と同一、
またその分画法は前年度報告のメダカ卵脂質の例と同様なので省略する。

<成果>
1)各組織の脂質に取り込まれた放射能はトリチウム水投与後10日目では脂肪組織に最も多く、
次いで脳、睾丸、肝の順
であり、
それらの減衰は脂肪組織と脳では遅くて半減期はそれぞれ
脂肪組織は80日
脳は33日と213日の2型であり、
一方、肝は6日と24日
睾丸は10日と38日とやや短い半減期であった。

これらの結果は脂肪組織と脳の脂質の一部はいわゆる第3成分の長半減期に属することを示唆する。

2)脂質各成分の放射能の経時変化をみると、
肝と睾丸ではホスホリピド、トクグリセリドへの取り込みが最も高く、
総脂質の放射能の減衰とほぼ並行して減衰した。

脳ではホスホリピドへの取り込みが最高であることは肝や睾丸と同様であるが、
その減衰は両者に比較して遅く、
これが脳におけるトリチウム半減期が著しく大きい原因と思われる。

脂肪組織ではトリグリセリドへの取り込みが最高で他成分への取り込みは
トリグリセリドの1/50以下であった。
トリグリセリドの放射能の減衰が遅い事は脂肪組織の特徴である。

3)脳のホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシドに
取り込まれたトリチウムは排出されにくいことが明らかになった。


[研究発表]
一政、武田、秋田:日本放射線影響学会第20回大会 仙台(1977.10)





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