
岩上:
「薄めて流せ」と、そして「トリチウムは何の問題もないんだ」と、
こういうプロパガンダがですね、本当に言う人がいますよね、実際ね。
えっと、この間中継に入らせてもらえなかったんですけど、
あの人、推進派というか対談をおやりになりましたよね。
池田信夫さん。
ああいう方はかなり乱暴なこともおっしゃるようですけど、
小出:
えっと、池田さんのはですね、結局経済なんですよ、彼の立脚というのは。
それで彼が一番商工会議所の論争の中で言ったことは、
これからはもう原子力発電所を新しく建てることはできないだろうと池田さんも認めた。
でも、すでにあるやつをこのまま動かさないで不良債権にしてしまうと
「電気代が4割上がります」とか言ったんです。
そして、青年会議所というのはいわゆる経営者の人たちがいるわけで、
自分の工場を持ったりしているわけですね。
そういう人たちがやっぱり今電気代が4割上がったらやっぱり駄目だと、
そういうふうに多分判断されたんだと思います。
私は、実はそんなことではなくて、
今がどうのこうのではない。
「これをやればやるだけ損をしていくんだ」というふうに私は言ったわけですけれども、
でも商工会議所の人からみれば「今、4割上がったらもう駄目だ」という、そういう判断何だと思います。
ですからそういう議論はあるし、池田さんの議論はそういう議論です。
岩上:多くの人達は対して人も死んでないしね、チェルノブイリだって
小出:
そうです、池田さんはそれも言いました。
「原子力が怖い怖いというけれども、放射能で死んだ奴なんかいないじゃないか」と、
「むしろ石炭の方が怖いんだから原子力いいじゃないか」と、池田さんは言ったのです。
でも、わたしは「それは、被ばくが危険ということの本質を見誤っている」と言って、
被ばくの影響に関しては急性障害と晩発性の障害というのがあって、
急性障害は見えなくても晩発性の障害というのは必ずあるんだと、
それはもう、大量にこれから出てくるはずだと、私はそう言いましたけれども、
でも、いかんせん見えない、すぐには。
そうなると、池田さんのような議論はもちろん出来るわけだし、
経営して言える人たちからみると、「まあ、今は見えないんだから」という事になるんだろうと思います。
岩上:うーん
小出:
でも私は、放射能というのは必ず害があるし、
長い期間に渡ってじわじわじわじわ出てくるだろうと思っています。
岩上:
なるほど。
で、トリチウムの話に戻しますとトリチウムはとにかく取り出す方法が全くない。
小出:ありません。
岩上:
そして先程のストロンチウムに関してもこれも希釈するのは難しいと、
希釈というか、薄めるのが難しい。
で、薄めると言いますか、レベルを下げるのが難しいと、
でも彼らが考えているのは、「じゃあ、濃度が高いなら水で薄めて出せばいいんじゃないか」
「トリチウムを水で薄めて出せばいいじゃないか」と、
つまり水割と同じ扱いで出したらいいんじゃないかと、考えているのはこれだけですよね。
小出:
そうです、最後はそれしかないんです。
ですからそれが何時の時点で発動されるかというだけですね。
岩上:
そうなったときにどんな影響が出ますか?
ま、あんなふうにためていること自体、そうすると労力の無駄なんですよ。
だから、こんなことはやめちゃって、そこそこ取れるものは取って、セシウムは取ったと。
「だからもう他はしょうがないじゃない」って言って、
「だったらどんどん、お金の無駄だからさ、流そうよ」って流した結果、
「ほら、海に戻したら海で希釈されるでしょ」って、それを進めている推進派の学者は
「何の問題もない。海へ捨てればいいんだ」とこんなことを言っている論者がいっぱいいますから、
だからその彼らの言い分に従ってやった場合、どんなことが起きてしまうでしょうか?
小出:
たとえば、ですけれども、
人間が放射性物質をばら撒いたというのは、福島の事故が初めてではないのです。
その前にはチェルノブイリ原子力発電所の事故があって、
福島の事故よりはむしろ多くばら撒いていた、だろうと思います。
それよりもっと前には、大気圏内核実験というのがあって、
1950年代から60年代に空中でボンッ!と原爆や水爆を爆発させるわけですから、
放射性物質を全部そこで、公共にばら撒いたという事をやったんですね。
その大気圏内核実験でばらまいた放射性物質の量というのは、
福島の原子力発電所でこれまでに、これまでにばら撒いた量に比べると、
何十倍も多いのです。
「だから福島の事故なんが大したことない」
「どうせ汚れてたんだから気にすることない」というようなそういう考え方なんですね。
岩上:役人も言いますもんね、はい。
小出:
でもそれ自身が私は正しくないと思っていて、
大気圏内核実験で放射能をばら撒いたが為に、
沢山の人達がそれによって犠牲に、もうすでになっているはずだと。
ただしそれが見えないという放射線障害の特異性の故に見えない。
福島の物をばら撒けば、またそれで被害が出るという事は、私は確信しているわけですね。
ですから出来る限り出さないようにしなければいけないと思っているのです。
じゃあ今、汚染水の中に溜まっているストロンチウム、なんかが溜まっている訳ですけれども、
それがどの位の量なのかというと、
多分、核実験でばら撒いたストロンチウムより多いと思います。
岩上:
そうですか。
出たものはアレですけれども、貯蔵量というか溜まっているのは…・どのくらいの量になるんですか?
小出:
えーっとですね、セシウムという放射性物質で比べると、
大気圏内核実験でばら撒いたのは、日本政府の公表値の約60倍ばらまいているんですね、
セシウムが、大気圏内核実験で。
岩上:公表値というのは、日本政府が何を?
小出:IAEAに報告を出して、事故直後から大気中に放出したセシウム137の
岩上:福島に関してですね。
小出:福島です。
岩上:で核実験はそれの60倍。
小出:
はい。
要するに大気圏内核実験は空気中にばら撒いたんですね。
ですからそれと、福島の原発が空気中にばら撒いたセシウムを比べると
約60倍大気圏内核実験の方が多いんです。
で、セシウムの量とストロンチウム90の量はほとんど一緒なんです、核分裂した時に出来る。
ですから、ストロンチウム90も大気圏内核実験で大量にばら撒いている訳ですけれども、
いま、・・・
ストロンチウムは大気中にはほとんど出なかった、福島の事故の場合には、出なかったんですけれども、
その分汚染水にみんなあるんですね。
それは、福島の事故から大気中にばら撒いたと日本政府が言っている量の
たぶん10倍以上、もっとあると思います。
何十倍かあると思います。
つまり、ストロンチウムだけを問題にする限りは、
大気圏内核実験でばらまいたストロンチウムと、
今福島の敷地の汚染水の中にあるストロンチウムと、
同じか、むしろ福島の方が多いだろうと私は思っている
それをでも、じゃあ、海へ流したって、
「これまで大気圏内核実験でストロンチウムを撒いたのと同じぐらいなんだからいいだろう」と、
そういう事を言う人がいるだろうと私は思います。
でも、「今までだって害だったんだし、それと同じ害だからいいだろう」
という議論は私は正しくないと思うし、やってはいけないだろうと思いますけれども、
でも「打つ手が本当にあるのかな?」と考えると、難しいと思います。
つづくーー
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