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福島第一 単純ミス2週間で5回
東京新聞 2013年10月10日 07時12分

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東京電力福島第一原発で、放射性セシウムを除去した処理水から塩分を除去する装置で水が漏れた問題で、東電は九日、現場にいた下請け企業の作業員十一人のうち六人が処理水をかぶっていたと発表した。

 漏れた水には、一リットル当たり三四〇〇万ベクレルと放出が許される濃度の数十万倍の放射性ストロンチウムなどが含まれていた。ストロンチウムなどが発する放射線は遮蔽(しゃへい)が容易だが、処理水に直接触れたり、体内に取り込んだりすると、やけどや長期の内部被ばくにつながる。

 作業員は厚手のかっぱを着用しており、処理水がついたのは、胸や脚に限られ、やけどなどの症状もなかったという。被ばく線量も作業前に予想した線量の半分以下で、六人とも水を拭き取るなどして帰宅した。念のため、十日に体内への取り込みを詳しく調べる。

 水漏れが起きたのは当初の発表より三十分ほど早い午前九時三十五分。作業員十人が装置近くで配管作業をした際、誤って外してはいけない配管を外してしまった。一人の応援が駆け付け、配管をつなぎ直すなどして約一時間十五分後にようやく漏れが止まったが、この間に七トンが漏れたと推定されている。

◆現場疲弊士気も低下

 東京電力福島第一原発でこの二週間、単純ミスによるトラブルが五件も相次いでいる。誤って原子炉を冷やす注水ポンプを止めてしまったり、移送先を間違えて汚れた雨水をあふれさせたりした。原因は不注意など単純なだけに、逆に対処が難しい。現場の疲弊や士気の低下が指摘されるが、こんな状況では、無用のトラブルが続きかねない。

 「規制して直るレベルではなく、作業環境を改善し、士気を保つようにしないといけない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長は九日の記者会見で、福島第一の現状について苦言を呈した。

 処理水から塩分を除去する装置からの水漏れトラブルも、給水系統と排水系統を間違えて配管を外してしまう通常は起こり得ないミスで起きた。

 この塩分除去装置に限らず、事故発生から間もない時期に設置された設備は、どれも急造されたため、配管を色などで識別する配慮はほとんどされていないという。

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は「(識別票をつけるなど)そうした作業をできる状況にない」と語った。ということは、今後も作業の安全は、現場の注意力に左右されることになる。

 本紙は二週間以上前のトラブル事例も調べたが、単純ミスによるものはわずか。仮設配電盤のショートや、ボルト締め型タンクや地下貯水池からの水漏れなどは、どれも急造された設備類の構造的な問題が原因だ。

 偶然かもしれないが、トラブルは先月十九日に福島第一を視察した安倍晋三首相が「しっかり期限を決めて汚染水を浄化すること」などの指示を出して以降に集中している。

 七日の汚染水問題をめぐる参院の閉会中審査では、現場の意欲低下、疲弊がミスを誘発していると指摘され、広瀬直己(なおみ)社長は「下請け企業を含めて作業環境の改善を一生懸命進めたい」と述べた。

 だが、作業員たちの話では、現場では「国からの命令だからとにかく急げ」との指示が飛んでいる。必要以上の重圧が現場の判断力を鈍らせている可能性もある。 (原発取材班)

(東京新聞)







クローズアップ2013:
汚染水、6人被ばく ミス続発、士気の維持課題 人員の量・質、確保カギ

毎日新聞 2013年10月10日 東京朝刊

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 作業ミスが相次ぐ東京電力福島第1原発で9日、また新たな汚染水漏れが発生した。30〜40年に及ぶ廃炉作業を完遂するためには作業員の量と質の両面を確保することがカギになる。一方、東電は柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働を申請しているが、廃炉と再稼働という相反する作業を同時に進められるのかが問われそうだ。

 「現場の士気がかなり落ちており、不注意によるトラブルを起こす原因になっている」。原子力規制委員会の田中俊一委員長は9日午前の定例会で、東電を批判したが、淡水化装置の汚染水漏れについての東電発表はその「苦言」の直後に飛び込んできた。

 淡水化装置は約700平方メートルの施設内に設置され、汚染水を処理して原子炉の冷却に再利用する「循環注水冷却システム」(1周4キロ)の一角にある。供給用と排水用の配管が通り、二つは材質も色も形も同じ。本来は排水用配管を交換する計画だったが、作業員3人が間違って供給用配管を外し、施設内に深さ数センチの汚染水が約7トンたまった。施設外には流れ出ていないという。

 水しぶきを浴びるなどで作業員6人が被ばく。被ばく量はガンマ線が0・42〜0・11ミリシーベルト、ベータ線が1・2〜0・2ミリシーベルトだった。体内に放射性物質を取り込んでおらず、東電は健康への影響はないとみている。

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は9日の記者会見で「なぜそうなったかは原因を深掘りしている」と説明した。トラブルが起きた時、10人が周辺にいたが、誰も作業ミスに気づかなかったという。

 第1原発では他にも人為ミスが原因のトラブルが相次ぐ。1日には汚染水を移送するポンプのホースを本来つなぐ場所ではない仮設タンクにつなぎ、約5トンの汚染水があふれた。翌2日には傾斜地に設置した貯蔵タンクに水を入れすぎて汚染水約0・43トンが漏れ、一部が港湾外の海に流れた。

 汚染水処理の切り札となる多核種除去装置「ALPS」もトラブル続きだ。試運転を再開した9月27日以降、タンク内にゴム製シートを置き忘れたり、作業員が操作をミスしたりして停止を繰り返している。今月7日には作業員が誤って電源盤の停止ボタンを押し、1号機の炉心を冷やす注水ポンプが一時停止した。

政府の汚染水処理対策委員会は9月末、今後起こり得る事故のリスクと予防・追加策をまとめた。しかし、人為ミスによるリスクは盛り込まれていない。「想定外」の人為ミスについて、対策委の委員長を務める大西有三・京都大名誉教授は「人為ミスは対策を講じる以前の問題だ。なぜ、このようなことが続くのか理解できない」と指摘。事務局の経済産業省資源エネルギー庁担当者は「人為ミスも考えなければならなかったが、リスクとして分類するのが難しく、悩ましい」と漏らす。

 東電は原因について、▽責任の所在が不明確▽緊急的な口頭指示で作業予定表などの改定が未実施▽東電と協力企業間の情報共有不足−−などと分析する。【鳥井真平、奥山智己】
 ◇高線量でベテラン離脱 技術や知識、継承困難

 第1原発の廃炉にかかわる作業員は、協力企業を含め1カ月当たり約8500人。このうち実際に働いた作業員の延べ人数は同約6000人で、東電は「作業員には一定程度の余裕がある」とする。

 しかし、労働安全衛生法(規則)は、作業員の被ばく線量上限を「年間50ミリシーベルトかつ5年間100ミリシーベルト」と設定。線量の高い第1原発で現場指揮に当たるベテラン作業員の被ばく線量は一般作業員より高く、上限を超えたベテランが現場を離脱して内勤へ異動するケースも相次ぐ。

 9日の汚染水漏れで、被ばくした6人の現場経験は不明だが、全員が協力企業作業員だった。

 一方、東電は柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査を申請している。東電側は「第1原発では原子力部門の技術者を1000人、柏崎刈羽でもほぼ同数を確保し、廃炉との両立は可能」とする。

 しかし、規制委からは「あれはあれ(汚染水)、これはこれ(再稼働)とは考えられない」(更田豊志(ふけたとよし)委員)、「技術的ノウハウや知識があると思えない会社が申請すること自体、驚きだ」(中村佳代子委員)などの声が上がる。田中委員長が9日の毎日新聞のインタビューで、柏崎刈羽の安全審査入りについて「第1原発の状況を見極める」と述べたのも、こうした懸念を受けたものだ。

 第1原発の汚染水総量は、タンク貯蔵分や原子炉建屋地下などを含めて1日時点で約44・8万トン(ドラム缶換算で224万本)。30〜40年に及ぶ廃炉作業には「汚染源」となっている1〜3号機の溶融燃料を回収する必要があるが、建屋周辺にたまる汚染水を処理するのが大前提だ。

第1原発所長を務めた二見常夫・東京工業大特任教授は「福島での作業は通常の原発とまったく異なるという認識が必要だ。作業員を教育・訓練するセンターのような公的機関を作るなど、国が作業員確保へ積極的に関与すべきだ」と提言する。【中西拓司、岡田英】

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 ◇東京電力福島第1原発の事故処理を巡る最近の主なトラブル

 8月19日 貯蔵タンクからの汚染水漏れ発見。点検がずさんで発見遅れる

 9月26日 放射性物質が海へ拡散させないための「シルトフェンス」が破損

   27日 タンク内にゴム製シートを置き忘れ多核種除去装置「ALPS(アルプス)」が一時停止

10月 1日 雨水移送での作業ミスで仮設タンクから放射性物質を含む水が約5トンあふれる

    2日 貯蔵タンクの傾斜を知りつつ汚染水を入れすぎ、タンク上部から流出

    4日 アルプスがごみ詰まりによる想定外のトラブルで一時停止

    7日 作業員が誤って停止ボタンを押し1号機の注水ポンプが停止

    9日 淡水化装置から汚染水が漏れ作業員6人が被ばく




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