深刻な地下水汚染「水の惑星で生きている私たちには、その水が汚されてしまうということは大きな脅威になる」小出裕章氏



ラジオフォーラム 小出裕章ジャーナルより一部転記させていただきました。
(少し書き足しました)


湯浅誠:
今日はトリチウム。
汚染水の中でもトリチウムのことをちょっと伺いたいのですが、
先月18日に東京電力は福島第一原発で高濃度汚染水約300トンが漏れた地上タンクの近くにある
地下水観測用井戸からトリチウムが1リットル当たり79万ベクレル検出されたと発表しました。
この値は過去最大値だという事ですが、
79万ベクレル、これはどういう数字だということで理解したらいいですか?

小出:
私のところは京都大学原子炉実験所という研究をしている組織ですが、
そこからたとえば敷地の外に放射性物質を流さざる得なくなった場合には、
いわゆる濃度規制というのを守りながら流すことになります。
トリチウムの場合には、
私の職場から環境に流していいトリチウムの濃度は、1リットル当たりに換算すると6万ベクレルです。
それを超えたものはもう流してはいけないということになっているわけですが、
今回の値は79万ベクレルですから、
環境に流してはいけないという濃度の10を越えているようなものが井戸の中にすでにあるということです。

湯浅:
原発事故以降ですね、いろんな放射性物質の名前が出てきて、一回聞いてもまた忘れちゃうんですけど、
トリチウムという放射性物質の性質というのをもう一度教えていただいてよろしいでしょうか?

小出:
トリチウムという放射性物質は、別名「三重(さんじゅう)水素」と私たちは呼んでいます。
3倍重たい水素と書きます。
天然にある水素はいわゆる普通の水素と2倍重たい「重水素」というのが天然に存在しているのですが、
どちらも放射能を持っていません。
放射線は出さないという水素というのが天然にはあるのですけれども、
この三重水素、トリチウムというものは放射能を持っていて放射線を出すという性質のものです。

それで、ただし、
トリチウムというこの放射性物質が出す放射線はβ(ベータ)線と呼ばれている放射線だけです。
そしてそのβ線のエネルギーが大変低い、数字でいうと18.6キロエレクトロンボルト、という、
β線を出す放射線の中では一番に低い、といってもいいぐらいの低いエネルギーのβ線しか出さないのです。
そのため、生命体に対する危険度は低いです。

ただし、放射線を出していますので、もちろん無害ではありません。
そして、水素というのは環境に出てしまいますと必ず水になってしまいます。
今現在、汚染水というのがあって苦闘しているわけですけども、
汚染水の処理ということをなんとかやろうとしているわけですね。
その処理というのは、
汚染水の中に混じっている放射性物質を水の中から取り出して、水をきれいにしようというのが
実際にやろうとしていることなのですけれども、
トリチウムの場合は水そのものですので、どんなにきれいにしたところでトリチウムだけは除けないのです。
ですから、すでにもう井戸の中に入ってしまっているもの、
あるいはタンクの中に入っているもの、
そんなものもトリチウムに関しては何の手も打てませんので、
いずれにしても全量放出するということになってしまいます。

湯浅:なるほど。

小出:
ただ、地球というのは水の惑星と呼ばれるくらい大量の水がありますので、
ただただ薄まってくれるということを期待するということなのですけれども、
でも水の惑星で生きている私たちは、基本的に水に依存して生きているわけですから、
その水が汚されてしまうということは、生命体にとって大きな脅威になる
と思います。


湯浅:
これはやっぱり他の放射性物質と同じで、自然界にないものを作り出しちゃったわけですから、
人体に対する影響についてもよくわからないことが多いということですか?

小出:
トリチウムに関しても、放射能的にわかってないということがまだありまして、
有機物、例えばタンパク質の構成の一部になってしまった時に、
トリチウムが一体、体内の中にどれくらいの期間残存するのであろうか?とか、
かなり難しい問題がまだ残っていまして、トリチウムの影響も完璧に解明されているわけではありません。




ーーー

●ラジオフォーラムで話している最高79万ベクレルのトリチウム汚染のある地下水は
タンクからの水漏れがあったH4エリア周辺の地下水。



東京電力 2013年11月4日
福島第一原子力発電所構内H4エリアのタンクにおける水漏れに関するサンプリング結果
(H4エリア周辺)
より
2013110524.jpg



11月3日採取測定結果とこれまでの最高値 (↓クリックすると大きく見る事が出来ます)
2013110525.jpg

E-1エリア 作成グラフ 全ベータとトリチウム (↓クリックすると大きく見る事が出来ます)
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2013110523.jpg



ーーー

●おしどりマコさんがもっと重要だと言っている地下水の汚染は護岸エリアの地下水汚染
いままでの最高値
No1-1 トリチウム   63万ベクレル/L (7月8日)
No1   トリチウム   50万ベクレル/L (5月24日、6月7日)
      ストロンチウム 1200ベクレル/L(6月7日)



<メディアが伝えない福島第一原発その2>
「人員計画・地下水の汚染・建屋内のがれき撤去」11/1おしどり・木野龍逸 報道するラジオ(文字起こし)
より

護岸エリアの地下水の汚染

マコ:
護岸の方の海に近いエリアの1号機と2号機のあいだの、
「海からもう数mのあたりでの地下水が、かなり高濃度に汚染されている」という状況の、
「護岸エリアの汚染水の問題」というものがあるんですね。
これはもうものすごく深刻で、測定して気が付いたのが今年の5月の末で、
その時に海から数mのエリアの地下水がもうかなり汚染されていたというのがわかって、
いつから汚染していたのかが分からない
地下水の観測抗を去年の12月に掘って、
その時に「セシウムの値があまり出なかったから大丈夫だ」という判断をしたんですね。
その時にトリチウムはかなりの量が出ていたんですよ。
私はそれを会見でずっと質問してたんですけど、
その時点でトリチウムには注目していなかったので問題にしなかった。

トリチウムはH3という記号のとおり、水にすごく近いので、
水と一緒に早く移動するんですね、地下水と一緒に。
なのでその時になんらか気が付いていればと思うんですけれど、
去年の12月に地下水の観測抗を掘ってから、
「大丈夫だ」という判断をしてしまったので、6カ月間一度も測定をしていなくて、
それで、今年の5月末に測定してみたら、
あら?ビックリいろいろ高濃度のものが出てきました。
「ストロンチウムも高濃度でした」というので、
それで、海に近いエリアの地下水が汚染されているという大問題が出てきたんですね。

で、それを調べると、
2011年の4月に2号機からしょんべん小僧のように水がピューーっと
高濃度の汚染水が海に直接流れ出ていて、
慌てて止めなきゃということが2011年の4月にあったんですけど、
どうもその時に出た高濃度の汚染水が関係しているということで、
つまり、2011年の4月から、汚染水が何らかの形で海へ出続けている可能性があるんですね。
「それは否定できない」と東京電力も言っています。
で、それが本当に重要な問題なんですけれども、
それが汚染水の問題としてまず上がってきて、
それはいったん止めたと、コンクリートとかをあちこちに詰めて
もう漏れていそうな経路を塞ぎましたということになったんですけど、
でも、どうもいろいろ調べるとそのエリアの地下水が汚染されている範囲が広いので、
どうもその「2号機のその当時に出た高濃度の汚染水がどうなったのか?」というのを
今ずっと調べているんですけど、
で、先日の汚染水対策ワーキングという規制委員会でやっている汚染水関連の検討会があるんですけど、
いまだに漏えい元が分からないんです、どこのものか?
漏えい元が1カ所ではなくて、「止めたと思っていてもやっぱりここの値が下がらない」
海の値も下がらないという事で、漏えい元が分からない。
だから漏えい元を探すということと、海に汚染水が直接流れるのを防ぐという、
いま2本立てで、その護岸エリアという海に近い汚染水の対策をしているんですね。
私はこっちの問題がかなり深刻だと思っています。


護岸エリアの地下水汚染

2013年11月4日 東京電力
福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果
より

護岸エリア地下水サンプリング箇所  (↓クリックすると大きく見る事が出来ます)
2013110511.jpg



最高値(護岸地下水) (↓クリックすると大きく見る事が出来ます)
2013110521.jpg







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コメント

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No title

理科系知識が無いので折角の記事を読みこなせなくて申し訳ありません。一言だけコメントいたします。この本文の「驚異」という標記に違和感を覚えて読んでみたのですが、これは明らかに『脅威』の変換ミスだろうと思います。このために文章のインパクトが殺されてしまったように思います。

No title

「大きな驚異になる」ではなく「大きな脅威になる」ではありませんか?

Re: No title

> 「大きな驚異になる」ではなく「大きな脅威になる」ではありませんか?

ご指摘ありがとうございました。
訂正させていただきました。

Re: zenboさま

ご指摘ありがとうございます。
訂正させていただきました。

トリチウム

トリチウム(三重水素)は自然にできるもので、平常時の自然界に「96京ベクレル」つまり「96兆ベクレルの1万倍」存在しているそうです。
、そこからいけば79万ベクレルはごく小さい数値ですし、よく解らない世界ですね。