報道するラジオ 「年末スペシャル2013」
2013年12月31日放送
文字起こし部分Youtube→http://youtu.be/7VFvwsdci5U?t=22m00s
水野:
皆さんからメールファックス頂いているんですけれども、
福島県伊達市からメールを頂きました。
「求めていたのに行われなかった事、それは除染です」福島からいただきました。
市の方からお知らせがきまして、
「放射線量を測り除染しますよ」と言われたんです。
ところが来てみたら、なにをしてくれたか?
実際は家のまわりを測るだけで土を削ったり、高圧で洗浄機を使ったり、等といった事はなく、
えっ?しないの?
土も削らない、高圧洗浄機も使わない。
なにをしたかと言ったら、市の職員の人が言いました。
「基準より低いので大丈夫です」
近藤:
水野さん、あれだよね、
福島をテーマに「求めてる・求めてない」ってやったら1年中やれるんじゃないですか。
水野:1年中やらなければいけない位の話
近藤:すごい話。除染だけでもね。
水野:
本来は年間1ミリシーベルトの被ばく以内にすべて収めなきゃいけないはずなんだけど、
とんでもない、もっともっと高い。
20ミリシーベルトなんていう数値を出してきて、皆さんがそこに住んでいる。
残っている方もこんなふうに苦労して、ずっと被ばくに恐れていらっしゃるし、
その一方で、「いや、もうここにはいられない」ということで故郷を捨てざるを得なかった方々。
今日は3人来ていただきました。
ここからの特集コーナーは
「将来が全く見えない県外避難者問題」と題してお送りいたします。
3人のお客様をご紹介したいと思います。
まずは古部真由美(ふるべ・まゆみ)さんでございます。
こんにちは。
古部:こんにちは、どうぞよろしくお願いいたします。
水野:
「まるっと西日本」という組織の代表を今していらっしゃるんですけど、
これはどんな組織と思ったらいいんですか?
古部:
「まるっと西日本」は震災と原発事故で県外に避難してきた人たちを情報で支援するボランティア団体なんですね。
私たちは、もちろん関西の人達も入っておられるんですけれども、
避難者、それから支援者と一緒に県外避難者を行政や自治体、支援団体と一緒にこの問題に取り組んで行き、
末永く支援を続けるというボランティアの会です。
水野:
あ、そうなんだ。
こういうふうに聞くと古部さんは支援している方かと思うんですけど、
実は逃げてらした方でもあるわけですよね。
古部:はい、そうです。
水野:
みんなと繋がるお世話もされながらご自分も避難をなさっている。
なんかもともと大阪の方やったって聞いたんですけど、
古部:
そうなんです。
私は大阪生まれで大阪育ちなので。
とは言え、10年間向こうに住んだのでー。
水野:結婚で行きはったんですか?
古部:そうなんです。
水野:行きはったのが茨城県のつくば市ですね、今日も震度5弱の茨城沖の地震があって、
古部:本当に地震が多い
水野:それから東海村もありますよね、茨城県はね、そうした状況で。
古部:そうですね、県内に原発があるっていう、
水野:原発を抱えて、そしてこの頃茨城は地震が多い。
古部:
本当に多いんですよ、もともと多い。
常に毎月一回、もともと揺れるようなところなんです。
水野:
そうだったんですか。
そういう茨城県のつくばに結婚して移ってはった。
で、今回3.11を機に大阪に、
古部:避難してきたんですけれど、
水野:
あのね、ものすごい怒られるかもしれないけど、
「茨城で、なんで原発事故の事で避難せなあかんのですか?」って、みんな聞きません?
古部:みんな聞きます。
水野:
ね。
近藤勝重さん、3.11の福島の原発事故から、今度の3月でもう3年になろうということなんですけど、
いまだに故郷からね、出ていかなければならない状態の人が10数万人いらっしゃる状況で、
今年も年の瀬を迎えている訳ですね。
古部真由美さんは大阪の方だったけれども結婚なさって茨城県つくば市にいらした。
すごく失礼な質問かもしれませんけれども、
「なんで茨城から原発の事で逃げて来なあきませんの?」といいました。
近藤:それは知りたいね。
水野:そこは、私だけじゃなくてね。
近藤:つくばから。
水野:つくばからです。つくばは大勢の人がまだ、
古部:残ってますね。
水野:なんとも感じず残ってらっしゃるのではないかと思うんですが、どうですか。
古部:
もし、これが仮に福井県の原発が爆発したとします。
福井県だと、京都とか滋賀を想像されると思うんですね、関西の人は。
もし大阪に原発があって、爆発したら、奈良の人って逃げると思いません?
水野:確かに!その土地感はよく分かります。
古部:
もし大阪に原発があって爆発したら、多分奈良の人とか京都の人は風下の人は逃げると思います。
風が下りてきたら。
で、それと同じように福島県の真下にあるのが茨城県なんですね。
水野:
ごめんなさい私ね、
「福島県は東北」ってわかるんです。
で、「茨城は関東」でしょ。
別のチームと思ってますねん。
くっついているんですね?
古部:くっついてます。
水野:そうか、「大阪と奈良の関係」あるいは「大阪と兵庫の関係」って言われたら、そら逃げるわな。
古部:だって、電車で1時間の距離とかですよ。
近藤:その、感覚的で距離感以外に、要するに逃げなくちゃいけない必然があったわけでしょ?
古部:
そうです。
私は最初「大丈夫です」っていうキャンペーンっていうか、
「安全です」「大丈夫です」「落ち着いて下さい」というテレビ放送があったんですけれども、
本当に大丈夫かどうかは、私自身も防災の仕事をしていたので、当時は。
だから危機感というのは自分で感じるか感じないかの問題で、
誰かが「大丈夫」といっても自分で危機を感じたら、前もって準備しないといけないと思ったので、
まず逃げてから考えようと思ったんです。
で、ちょっと不安に感じたのは、まず食料が無かったですね、町の中に。
電気が落ちて、街全体がゴーストタウン化して真っ暗だった。
空港も天井が落ちて閉鎖されたりとか、
もちろんテレビの津波の映像もすごく不安で怖い映像だったんですけれども、
私がいた町も職場の壁が壊れたり、ちょっと悲惨な状態でしたね。
水野:防災の研究所の職員だったんですね。
古部:
でやっぱり、その後逃げてからいろんな事が分かって、
1ヶ月以内にいろんなニュースが入ってくるんですけれども、
私がいたつくば市のほうれん草はすみやかに、震災があって1ヶ月以内に、
研究所がいっぱいあるのでいろんな調べ方があると思うんですけれども、すぐに出荷停止になったんですね。
水野:ほうれん草が出荷停止になったんだ。
古部:
そのニュースが全国ニュースに溢れだして、
市の職員の人が水道水から放射性物質が検出されたので、ペットボトルを配り歩いたりとか、
なんか信じられない世界が突然
水野:水道も、水道の水も安心できないっていうー。
古部:
もしね、水道をひねってそこから「放射性物質が出ます」って言われたら、どうします?だって。
ドキドキしますよ、お風呂とか、本当に怖いです。
水野:お風呂入れますか~?お子さん小さいんでしょ?
古部:
そうですね、
ペットボトルだって、地震の直後からスーパーから消えるんですよ。
みんな欲しいから。
水野:みんなそりゃもう、欲しいものね。
近藤:
そういう危機感を抱いて家族に相談しますよね。
どうだったんですか?
古部:
私は職業柄も、夫に「逃げます」って言ったら夫も、
うちは子どもが一人なんですね。
なかなか生まれなかったたった一人の子どもなので、
夫も科学者なので、理系の仕事なので、
「ふわふわふわ・ポチョンと落ちてきたらもう終わりだよね」って言って、
「そやな、もう逃げようか」といって、夫も関西生まれなので、
「逃げてから考えよう」という事で家族で行いったん逃げて、
その後はまた、仕事があるので戻っていったんですけど、
水野:あ、そうか、夫は帰りはったんや。
古部:仕事があるからね
水野:仕事やからね。
古部:
やっぱり、もう3年目ですけど、
3年経ってみて久しぶりに自治体のウエブサイトとかを見ると、
ホールボディカウンターで内部被ばくの検査もやってて、
甲状腺の検査もやってて、
それが茨城県つくば市というところなんですね。
水野:ホントすみません、全然わかってないです、私。
古部:そしたら、私の親戚から「旦那さんの元に帰りなさいよ」と言われるんですけど、
水野:やっぱり、親戚はどんな感じですか?
古部:やっぱり関西の人なので良く知らないし、茨城県の事なんてニュースに載らないから、
水野:帰ったらいいやん、べつにそんな
古部:
「なにしてんの?」とか言われますよね。
「なんでこんなとこにいてんの?」とかね。
水野:
理解してないんでしょうね、状況を、住んでないと。
「なんでこんなとこにおるの?旦那さんおっぽらかして」
近藤:それは関西の声ですね。
古部:
そうです。
それは、関西の親戚とか周囲の人にはいつもそう言われます。
だからもう自分でも言わなくなってる。
言っても私みたいに関西弁をしゃべれる人間が10年ぶりに関西に帰ってきても、
そんな事は全然、それほど故郷を失っている訳ではないし、言葉の壁も感じないし、
でも本当に、福島や宮城や岩手からきている人も関西にはいっぱいいるんですね。
その人達は「いつ帰れるか分からない」
その人達は、私よりも何倍も苦しいですね。
水野:
古部さんは「ちょっと帰りぃや、茨城へ」ってまわりに言われてね、
心ないというか理解ない声に押されて帰りますわね。
帰ると、茨城、つくばの状況は、それはどうなんですか?
迎えてくれはるんですか?
古部:
…いろいろですよね。
価値観がみんな同じじゃないから、
水野:いわゆる放射S燃料に関する考え方とか、
古部:価値観やその数値も識者がいろんな事を言うので、
水野:「大丈夫だ」という人もいますからね。
古部:
「大丈夫」で不安を抱えている人もいる。
でも、本当にこの震災の捉え方は人それぞれで違うし、持っている情報も違います。
水野:もう全然違う捉え方をしている人からは、古部さん関西にきてる事をどう見られているんですか?
古部:
どうなんでしょうね。
私は大したことはないと思います、
でも、福島や宮城や岩手からきている人は関西の人から
私は実はそのボランティア活動の中で住宅支援の調査を今回やったんですね。
それによると、ほとんどじゃないんですよ。
避難している人の半分の人が公営住宅の入居を保障で支援されているんですね。
これが関西の自治体が行っている事なんですけれど、
でも国は今年(2013)の春に通達を出して、5年間、恒久仮設と同じように
東日本の被災地と同じように5年間の公営住宅の入居を許可してくれているんですけれども、
要望を出してくれているんですね。
それによると、まず国が通達を出し、被災3県、茨城県もさらに通達を出し、
県外に散らばった自分のところの県民を広く受け入れて下さい。
その財源は交付金や災害救助法にのっとって受け入れた自治体が負担する訳ではなくて、
国や地元の自治体に請求するような、
そういう災害救助法という法律があって、それを使ってくださいというふうに。
水野:
一応法律でなんとか支援しようというのはあるんですね。
それはどうなんですか?十分上手くいっているんですか?
古部:
それでもやっぱり、先ほど私が話した様な、こちらの自治体にしてみれば、
「なんで茨城県?」っていう人もいたりとか、「復興したでしょう」って。
水野:「もう復興したでしょう」って。
古部:っていう自治体の担当者の方もおられます。
水野:担当者も言いますか、そういうことを。
古部でも、もし関心を持っていなければ、分からない事ですよね。
近藤:
うーーん、今ね、3年に入って、
とにかくこういう事ってここまで風化してしまうかな、なんていう実感ってあります?
古部:なんか、風化はとにかく早いですね。
近藤:
たとえばいろいろと言っていた言葉がもうまるで忘れられてしまったとか、
そういうのはありますか?
古部:
風化は、・・やっぱり遠いですよね。
東日本、東北が関西と。
東京に会議に行ったりすると、もっとリアルな感じなんですよ。
水野:
そうか、関西の人の方が理解が進んでいないというか分かっていない人が多い。
友達がいないんですよ、東北に行ったことがないんですよ、多くの方が。
私も今回の震災以降はね、取材で何回も行かせてもらっていますけれども、
なかなかそれまで、いわゆる遊びに行ったっていう経験はあんまりないんですよ。
古部:私も修学旅行で一回行ったきりですから。
水野:ねー、友達がいないとかね。そういう意味での、
古部:風化は距離感もありますし、
近藤:
距離感とか、いっとき「絆」とかいろんな事を言いましたよね。
いまでもおっしゃる方はおっしゃるんだけど。
「絆」なんて言うのは本当にあれは日々の積み重ねの中でやらないと
「絆」なんかなかなか生まれるもんじゃないわけで。
もう今「絆」って、どうなっているんですかね?
言葉自体がもう力がないわけですか?
古部:
もし、本当に「絆」があれば、
国が4年恒久仮設として県外避難者の住宅支援として公営住宅の入居を4年延長します、4年間やります
そしたらやっぱり、今回被災しなかった関西の自治体で、しかも財源はある。
だったら、ここは「絆」を発揮するかなと、
水野:
関西の自治体がお金を出さなくったって、国から出るようになっているんだから、
あとは「やる気」ですよね。
そこがだけど、もうすでに薄くなっていると。
古部:
それは、この前調査した時に思ったのは、
それは被災した人は自分で言いにくいんですよ、やっぱり。
もうこんなに、2年半住まわせてもらった。
だから「早く自立しなさい」というふうに言われると、
自治体の人がヒアリングとかを行って、
「頑張って下さいね」「自立して下さいね」
もちろん自立しようと、みんな働いているんです。
今日お隣にいる佐藤さんも一生懸命福島からやってきて、働いてはるんですけど、
でも「いつか帰りたい」と思っていて、「帰れない」今は帰れない。
でも、関西で頑張って働いている人もいて、
まだまだ関西の人が応援する方法はある筈だなと思います。
水野:
ある筈ですね、ハッキリありますね、今伺っていてもね。
具体的にありますよね。
じゃあお隣にいらっしゃいます佐藤かなめさんに伺いたいと思います。
つづくーー
2013年12月31日放送
文字起こし部分Youtube→http://youtu.be/7VFvwsdci5U?t=22m00s
水野:
皆さんからメールファックス頂いているんですけれども、
福島県伊達市からメールを頂きました。
「求めていたのに行われなかった事、それは除染です」福島からいただきました。
市の方からお知らせがきまして、
「放射線量を測り除染しますよ」と言われたんです。
ところが来てみたら、なにをしてくれたか?
実際は家のまわりを測るだけで土を削ったり、高圧で洗浄機を使ったり、等といった事はなく、
えっ?しないの?
土も削らない、高圧洗浄機も使わない。
なにをしたかと言ったら、市の職員の人が言いました。
「基準より低いので大丈夫です」
近藤:
水野さん、あれだよね、
福島をテーマに「求めてる・求めてない」ってやったら1年中やれるんじゃないですか。
水野:1年中やらなければいけない位の話
近藤:すごい話。除染だけでもね。
水野:
本来は年間1ミリシーベルトの被ばく以内にすべて収めなきゃいけないはずなんだけど、
とんでもない、もっともっと高い。
20ミリシーベルトなんていう数値を出してきて、皆さんがそこに住んでいる。
残っている方もこんなふうに苦労して、ずっと被ばくに恐れていらっしゃるし、
その一方で、「いや、もうここにはいられない」ということで故郷を捨てざるを得なかった方々。
今日は3人来ていただきました。
ここからの特集コーナーは
「将来が全く見えない県外避難者問題」と題してお送りいたします。
3人のお客様をご紹介したいと思います。
まずは古部真由美(ふるべ・まゆみ)さんでございます。
こんにちは。
古部:こんにちは、どうぞよろしくお願いいたします。
水野:
「まるっと西日本」という組織の代表を今していらっしゃるんですけど、
これはどんな組織と思ったらいいんですか?
古部:
「まるっと西日本」は震災と原発事故で県外に避難してきた人たちを情報で支援するボランティア団体なんですね。
私たちは、もちろん関西の人達も入っておられるんですけれども、
避難者、それから支援者と一緒に県外避難者を行政や自治体、支援団体と一緒にこの問題に取り組んで行き、
末永く支援を続けるというボランティアの会です。
水野:
あ、そうなんだ。
こういうふうに聞くと古部さんは支援している方かと思うんですけど、
実は逃げてらした方でもあるわけですよね。
古部:はい、そうです。
水野:
みんなと繋がるお世話もされながらご自分も避難をなさっている。
なんかもともと大阪の方やったって聞いたんですけど、
古部:
そうなんです。
私は大阪生まれで大阪育ちなので。
とは言え、10年間向こうに住んだのでー。
水野:結婚で行きはったんですか?
古部:そうなんです。
水野:行きはったのが茨城県のつくば市ですね、今日も震度5弱の茨城沖の地震があって、
古部:本当に地震が多い
水野:それから東海村もありますよね、茨城県はね、そうした状況で。
古部:そうですね、県内に原発があるっていう、
水野:原発を抱えて、そしてこの頃茨城は地震が多い。
古部:
本当に多いんですよ、もともと多い。
常に毎月一回、もともと揺れるようなところなんです。
水野:
そうだったんですか。
そういう茨城県のつくばに結婚して移ってはった。
で、今回3.11を機に大阪に、
古部:避難してきたんですけれど、
水野:
あのね、ものすごい怒られるかもしれないけど、
「茨城で、なんで原発事故の事で避難せなあかんのですか?」って、みんな聞きません?
古部:みんな聞きます。
水野:
ね。
近藤勝重さん、3.11の福島の原発事故から、今度の3月でもう3年になろうということなんですけど、
いまだに故郷からね、出ていかなければならない状態の人が10数万人いらっしゃる状況で、
今年も年の瀬を迎えている訳ですね。
古部真由美さんは大阪の方だったけれども結婚なさって茨城県つくば市にいらした。
すごく失礼な質問かもしれませんけれども、
「なんで茨城から原発の事で逃げて来なあきませんの?」といいました。
近藤:それは知りたいね。
水野:そこは、私だけじゃなくてね。
近藤:つくばから。
水野:つくばからです。つくばは大勢の人がまだ、
古部:残ってますね。
水野:なんとも感じず残ってらっしゃるのではないかと思うんですが、どうですか。
古部:
もし、これが仮に福井県の原発が爆発したとします。
福井県だと、京都とか滋賀を想像されると思うんですね、関西の人は。
もし大阪に原発があって、爆発したら、奈良の人って逃げると思いません?
水野:確かに!その土地感はよく分かります。
古部:
もし大阪に原発があって爆発したら、多分奈良の人とか京都の人は風下の人は逃げると思います。
風が下りてきたら。
で、それと同じように福島県の真下にあるのが茨城県なんですね。
水野:
ごめんなさい私ね、
「福島県は東北」ってわかるんです。
で、「茨城は関東」でしょ。
別のチームと思ってますねん。
くっついているんですね?
古部:くっついてます。
水野:そうか、「大阪と奈良の関係」あるいは「大阪と兵庫の関係」って言われたら、そら逃げるわな。
古部:だって、電車で1時間の距離とかですよ。
近藤:その、感覚的で距離感以外に、要するに逃げなくちゃいけない必然があったわけでしょ?
古部:
そうです。
私は最初「大丈夫です」っていうキャンペーンっていうか、
「安全です」「大丈夫です」「落ち着いて下さい」というテレビ放送があったんですけれども、
本当に大丈夫かどうかは、私自身も防災の仕事をしていたので、当時は。
だから危機感というのは自分で感じるか感じないかの問題で、
誰かが「大丈夫」といっても自分で危機を感じたら、前もって準備しないといけないと思ったので、
まず逃げてから考えようと思ったんです。
で、ちょっと不安に感じたのは、まず食料が無かったですね、町の中に。
電気が落ちて、街全体がゴーストタウン化して真っ暗だった。
空港も天井が落ちて閉鎖されたりとか、
もちろんテレビの津波の映像もすごく不安で怖い映像だったんですけれども、
私がいた町も職場の壁が壊れたり、ちょっと悲惨な状態でしたね。
水野:防災の研究所の職員だったんですね。
古部:
でやっぱり、その後逃げてからいろんな事が分かって、
1ヶ月以内にいろんなニュースが入ってくるんですけれども、
私がいたつくば市のほうれん草はすみやかに、震災があって1ヶ月以内に、
研究所がいっぱいあるのでいろんな調べ方があると思うんですけれども、すぐに出荷停止になったんですね。
水野:ほうれん草が出荷停止になったんだ。
古部:
そのニュースが全国ニュースに溢れだして、
市の職員の人が水道水から放射性物質が検出されたので、ペットボトルを配り歩いたりとか、
なんか信じられない世界が突然
水野:水道も、水道の水も安心できないっていうー。
古部:
もしね、水道をひねってそこから「放射性物質が出ます」って言われたら、どうします?だって。
ドキドキしますよ、お風呂とか、本当に怖いです。
水野:お風呂入れますか~?お子さん小さいんでしょ?
古部:
そうですね、
ペットボトルだって、地震の直後からスーパーから消えるんですよ。
みんな欲しいから。
水野:みんなそりゃもう、欲しいものね。
近藤:
そういう危機感を抱いて家族に相談しますよね。
どうだったんですか?
古部:
私は職業柄も、夫に「逃げます」って言ったら夫も、
うちは子どもが一人なんですね。
なかなか生まれなかったたった一人の子どもなので、
夫も科学者なので、理系の仕事なので、
「ふわふわふわ・ポチョンと落ちてきたらもう終わりだよね」って言って、
「そやな、もう逃げようか」といって、夫も関西生まれなので、
「逃げてから考えよう」という事で家族で行いったん逃げて、
その後はまた、仕事があるので戻っていったんですけど、
水野:あ、そうか、夫は帰りはったんや。
古部:仕事があるからね
水野:仕事やからね。
古部:
やっぱり、もう3年目ですけど、
3年経ってみて久しぶりに自治体のウエブサイトとかを見ると、
ホールボディカウンターで内部被ばくの検査もやってて、
甲状腺の検査もやってて、
それが茨城県つくば市というところなんですね。
水野:ホントすみません、全然わかってないです、私。
古部:そしたら、私の親戚から「旦那さんの元に帰りなさいよ」と言われるんですけど、
水野:やっぱり、親戚はどんな感じですか?
古部:やっぱり関西の人なので良く知らないし、茨城県の事なんてニュースに載らないから、
水野:帰ったらいいやん、べつにそんな
古部:
「なにしてんの?」とか言われますよね。
「なんでこんなとこにいてんの?」とかね。
水野:
理解してないんでしょうね、状況を、住んでないと。
「なんでこんなとこにおるの?旦那さんおっぽらかして」
近藤:それは関西の声ですね。
古部:
そうです。
それは、関西の親戚とか周囲の人にはいつもそう言われます。
だからもう自分でも言わなくなってる。
言っても私みたいに関西弁をしゃべれる人間が10年ぶりに関西に帰ってきても、
そんな事は全然、それほど故郷を失っている訳ではないし、言葉の壁も感じないし、
でも本当に、福島や宮城や岩手からきている人も関西にはいっぱいいるんですね。
その人達は「いつ帰れるか分からない」
その人達は、私よりも何倍も苦しいですね。
水野:
古部さんは「ちょっと帰りぃや、茨城へ」ってまわりに言われてね、
心ないというか理解ない声に押されて帰りますわね。
帰ると、茨城、つくばの状況は、それはどうなんですか?
迎えてくれはるんですか?
古部:
…いろいろですよね。
価値観がみんな同じじゃないから、
水野:いわゆる放射S燃料に関する考え方とか、
古部:価値観やその数値も識者がいろんな事を言うので、
水野:「大丈夫だ」という人もいますからね。
古部:
「大丈夫」で不安を抱えている人もいる。
でも、本当にこの震災の捉え方は人それぞれで違うし、持っている情報も違います。
水野:もう全然違う捉え方をしている人からは、古部さん関西にきてる事をどう見られているんですか?
古部:
どうなんでしょうね。
私は大したことはないと思います、
でも、福島や宮城や岩手からきている人は関西の人から
私は実はそのボランティア活動の中で住宅支援の調査を今回やったんですね。
それによると、ほとんどじゃないんですよ。
避難している人の半分の人が公営住宅の入居を保障で支援されているんですね。
これが関西の自治体が行っている事なんですけれど、
でも国は今年(2013)の春に通達を出して、5年間、恒久仮設と同じように
東日本の被災地と同じように5年間の公営住宅の入居を許可してくれているんですけれども、
要望を出してくれているんですね。
それによると、まず国が通達を出し、被災3県、茨城県もさらに通達を出し、
県外に散らばった自分のところの県民を広く受け入れて下さい。
その財源は交付金や災害救助法にのっとって受け入れた自治体が負担する訳ではなくて、
国や地元の自治体に請求するような、
そういう災害救助法という法律があって、それを使ってくださいというふうに。
水野:
一応法律でなんとか支援しようというのはあるんですね。
それはどうなんですか?十分上手くいっているんですか?
古部:
それでもやっぱり、先ほど私が話した様な、こちらの自治体にしてみれば、
「なんで茨城県?」っていう人もいたりとか、「復興したでしょう」って。
水野:「もう復興したでしょう」って。
古部:っていう自治体の担当者の方もおられます。
水野:担当者も言いますか、そういうことを。
古部でも、もし関心を持っていなければ、分からない事ですよね。
近藤:
うーーん、今ね、3年に入って、
とにかくこういう事ってここまで風化してしまうかな、なんていう実感ってあります?
古部:なんか、風化はとにかく早いですね。
近藤:
たとえばいろいろと言っていた言葉がもうまるで忘れられてしまったとか、
そういうのはありますか?
古部:
風化は、・・やっぱり遠いですよね。
東日本、東北が関西と。
東京に会議に行ったりすると、もっとリアルな感じなんですよ。
水野:
そうか、関西の人の方が理解が進んでいないというか分かっていない人が多い。
友達がいないんですよ、東北に行ったことがないんですよ、多くの方が。
私も今回の震災以降はね、取材で何回も行かせてもらっていますけれども、
なかなかそれまで、いわゆる遊びに行ったっていう経験はあんまりないんですよ。
古部:私も修学旅行で一回行ったきりですから。
水野:ねー、友達がいないとかね。そういう意味での、
古部:風化は距離感もありますし、
近藤:
距離感とか、いっとき「絆」とかいろんな事を言いましたよね。
いまでもおっしゃる方はおっしゃるんだけど。
「絆」なんて言うのは本当にあれは日々の積み重ねの中でやらないと
「絆」なんかなかなか生まれるもんじゃないわけで。
もう今「絆」って、どうなっているんですかね?
言葉自体がもう力がないわけですか?
古部:
もし、本当に「絆」があれば、
国が4年恒久仮設として県外避難者の住宅支援として公営住宅の入居を4年延長します、4年間やります
そしたらやっぱり、今回被災しなかった関西の自治体で、しかも財源はある。
だったら、ここは「絆」を発揮するかなと、
水野:
関西の自治体がお金を出さなくったって、国から出るようになっているんだから、
あとは「やる気」ですよね。
そこがだけど、もうすでに薄くなっていると。
古部:
それは、この前調査した時に思ったのは、
それは被災した人は自分で言いにくいんですよ、やっぱり。
もうこんなに、2年半住まわせてもらった。
だから「早く自立しなさい」というふうに言われると、
自治体の人がヒアリングとかを行って、
「頑張って下さいね」「自立して下さいね」
もちろん自立しようと、みんな働いているんです。
今日お隣にいる佐藤さんも一生懸命福島からやってきて、働いてはるんですけど、
でも「いつか帰りたい」と思っていて、「帰れない」今は帰れない。
でも、関西で頑張って働いている人もいて、
まだまだ関西の人が応援する方法はある筈だなと思います。
水野:
ある筈ですね、ハッキリありますね、今伺っていてもね。
具体的にありますよね。
じゃあお隣にいらっしゃいます佐藤かなめさんに伺いたいと思います。
つづくーー
2013年12月31報道するラジオ年末スペシャル
文字起こしブログ
東京オリンピックの裏で~切り捨てられる弱者と原発事故の収束復興~
12/31報道するラジオ(文字起こし)
<東電を破たんさせないのは?>
「国が前面に出て銀行に全部借金を返してあげます」12/31報道するラジオ・古賀茂明氏(文字起こし)
<小泉さんの脱原発って?>
「夢のある再生エネルギーの成長戦略、それが結局は経済成長の大きな戦略になる」
12/31報道するラジオ・古賀茂明氏(文字起こし)
<なんで茨城県?>
将来が全く見えない県外避難者問題12/31報道するラジオ(文字起こし)
<避難先自治体の格差と子どもたちの格差>
保養に行ける家族と行けない家族がある12/31報道するラジオ(文字起こし)
<東京オリンピックと避難解除>
早く帰ってくれば保証金を上乗せして出します12/31報道するラジオ(文字起こし)
<秘密保護法>
福島県選出なのに・・・森まさこ大臣12/31報道するラジオ(文字起こし)
福島県民に「申し訳なかった」って謝るべきなんじゃじゃないの?12/31報道するラジオ(文字起こし)
- 関連記事
-
- ❤福島県の小中学生を受け入れている「まつもと子ども留学」へボストンからのプレゼント♪5/26菅谷松本市長会見(文字起こし)他
- <放射能から避難する>井戸弁護士「経済的な理由で裁判を断念している避難者の力になる決定だ」自主避難に初の賠償仮払い命令
- 私たちは震災の被災者ではなくて原発の被害者なんだという事を最初に申し上げたい5/14(文字起こし)
- 【県内避難:中通り→会津若松】 自主避難者は「勝手に避難した」って言われて、何の権利もない。福島原発告訴団3/1(文字起こし)
- 【自主避難:鏡石町→北海道】「『考えたら避難なんかできない。何も考えず娘の将来だけを考えよう』と自分に言い聞かせました」福島原発告訴団3/1(文字起こし)
- 「自主避難して正解」?福島民友
- <避難先自治体の格差と子どもたちの格差>保養に行ける家族と行けない家族がある12/31報道するラジオ(文字起こし)
- <なんで茨城県?>将来が全く見えない県外避難者問題12/31報道するラジオ(文字起こし)
- <まつもと子ども留学>「松本モデル」が全国に広がって欲しい12/17菅谷昭松本市長会見(文字起こし)
- <みんな一緒>「放射能が怖い」と当り前なことが言えない.孤独感でいっぱいでした。12/15宇都宮(音声・文字起こし)
- <避難するまでの経緯と変化> これ以上「子どもを守りきることができなかった」と思う方を増やしてほしくないのです。(音声&文字起こし)
- 「で、それを見た時に私は、『私のせいだ』と思ったんです。『しがみついているものを全部手放そう』とその時に決めたんです」(自主避難の方のお話文字起こし)
- 「行政は私たちを守らない」と主人と放射能の測定結果を見てそう感じました。(文字起こし)
- 「なにが大変ですか?」と聞かれ続けて、大変さが改善された事はありません。6/21避難の実情(文字起こし)
- <自主避難>「原発事故後故郷の千葉から車で縁もゆかりもない宮崎にたどり着きました」フクシマからみやざきへ
コメント
http://www.kaze-to-hikari.com/2013/06/40-1.html
直接関係無いですが
光る風(立読みのみ無料) 山上たつひこ
http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/22687.html?dealerid=103
「がきデカ」発表より、ずっと前の作品
直接関係無いですが
光る風(立読みのみ無料) 山上たつひこ
http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/22687.html?dealerid=103
「がきデカ」発表より、ずっと前の作品
隣接県被曝者数グラフです | 2014.01.03 11:17 | 編集
この記事が書かれた時に、未だ北関東の野菜が汚染されて廃棄、ってNews、流れていなかったのかなぁ。
よく、腐敗県の「バカ狭」地域のNuclear Plantでaccidentがあると、舞鶴市までは絶対ホーシャノーが来る、っていうけれど、京都府の腐敗県、兵庫県とに挟まれた距離はあまり長くないので、東の風が吹いている時に事故が起これば兵庫県の豊岡市、城崎温泉まで来るでしょうね………くらいの想像力は働かないんですかね。
「1988年サントリー社長の東北蔑視発言」ってNETで打って、よく読んでみて下さい。私個人も東北、群馬、新潟、北海道に行った事がないけど、大学で高校の社会科の先生としての知識を学んだから、東北南部は何処の県に近いかは勿論知ってたよ。
Title通り、severe accidentが起きた以上は、地図を見てから避難して来た人にモノを言いましょうね。
余談ですが、伊方は罪稼動されて松江は罪禍動されないと仮定すると、西は尾道、東は姫路までがNuclear Plantから遠くて災害も少なく、asyura.2というsiteで「岡山遷都論」がありました。
よく、腐敗県の「バカ狭」地域のNuclear Plantでaccidentがあると、舞鶴市までは絶対ホーシャノーが来る、っていうけれど、京都府の腐敗県、兵庫県とに挟まれた距離はあまり長くないので、東の風が吹いている時に事故が起これば兵庫県の豊岡市、城崎温泉まで来るでしょうね………くらいの想像力は働かないんですかね。
「1988年サントリー社長の東北蔑視発言」ってNETで打って、よく読んでみて下さい。私個人も東北、群馬、新潟、北海道に行った事がないけど、大学で高校の社会科の先生としての知識を学んだから、東北南部は何処の県に近いかは勿論知ってたよ。
Title通り、severe accidentが起きた以上は、地図を見てから避難して来た人にモノを言いましょうね。
余談ですが、伊方は罪稼動されて松江は罪禍動されないと仮定すると、西は尾道、東は姫路までがNuclear Plantから遠くて災害も少なく、asyura.2というsiteで「岡山遷都論」がありました。
阿修羅に於けるPen-Name歯磨き右近高山 | 2016.01.22 14:59 | 編集