2014/07/14
インタビュアー:香山リカ
香山リカ :今の状況というのはどんな風にご覧になってらっしゃいますか?

菅原文太:
それも全部インチキやな。
それはもう明らかでしょ。
あの当時原発がスタートする、始めたお偉いさんたちがまだ元気で、
国民を説得し続けていた時ですら、アメリカから来た政治家と言ってもいいのかもしれない、
原発を推進する側のアメリカの人間が、しきりに言ってたよね、テレビでも。
「アメリカの優れた原発を買いなさい」と「買え」というのをしきりに言っていたのが、
これが印象的に聞いてたんだけど、
それに対して、湯川さんのような何人かの、鈴木さんとか何人かの、
本当にそういうものに左右されない偉い物理学者たちは、
相変わらず「反対」を言っていたけど、ほとんどの人は説得されて、
日本の原発を推進する側は、アメリカから54基も買ったのかな。
ま、全部アメリカじゃないだろうけど、
そういう人間模様で、人たちの様を見ると、
これはもう、「人間の性」と言っていいのかな、
情けないけど、偉い人たちがみんなコロコロコロコロ転んで行く。
それで福島の、あの大きな災害が起きて急にみんな慌て出した。
その慌てる様がまた、みっともないよね。
自己弁護を始めて。
だけどそれが国民に、どうしてこうスッと伝わっていかないのかが、
国民まで、そういう右往左往する様に左右され始めている。
これも情けない。
それであの政治家達、
そしてそういう人たちに賛同している、原発という巨大な利権を生む周囲にたかっている人たち。
が、
慌ててそういう場から逃げ出した人たちもいれば、
さて、図々しく逃げ出さないで、子供騙しの様な理屈で、相変わらずしがみ付いている人達。
そういうのがいろんな形で見えてきているでしょ。
もうそこまで行くとなんかね、情けない〜
香山リカ:
今おっしゃったように、一般の人たちもなんとなく
「ああやっぱり安全なのかな」とか「やっぱり仕方ないのかな」とかというふうに、
だんだんまたね、原発を認める方に、なんかこう、なびいて行ってしまっているような人たちも、
残念ながら一般の人たちにも少なくないと思うんですけれども、
そういう中で、菅原さんのように非常に影響力を持つ方が、
今のように「ちょっと考えてみれば、こんなの間違っているってわかるでしょ」
っていうふうに声を上げて下さりというのは、本当に大切な貴重なことだと思うんですけど、
なかなかね、発言をするってやっぱり勇気がいるっていうかね、
菅原文太:勇気なんかいらないよ
香山リカ:そうですか?
菅原文太:うん
香山リカ:
なかなかね、
みなさん「思ってはいるんだけどいろんな関係があるから言うのはちょっとやめたい」とおっしゃる方も、
特に影響力の強い方の中には多いんですけど。
菅原文太:
それはどうもね、日本人にこう、多いことなのかなぁ。
今、いろんな形で、スポーツを含めてサッカー含めていろんなこう、世界中がワッサワッサしてるじゃない。
良い事も悪い事も含めて、そういう政治的なことも含めて、
単純に強いか弱いかっていうことも、ゴチャゴチャになってね、入り乱れているけど、
やっぱりそういう中から、自分の家族とか子供とか、そういう者たちに悪影響を与えること。
それからそうじゃない、少し過剰だけどまあ、蹴ったりしてやっていることも、
これもね、そんな暇があったらこっちにちょっと、みんな気持ちを移してくれよと言いたくなるけど、まぁね。
だからそういうこともやっぱり整理して、
自分の中で「これは良い事だ、これは止めた方がいい」ということを
本当はね、一人一人が判別してくれるといいんだけど、
やっぱり常に人間っていうのは流れに流されてしまうのが、一番困ったことなんでね。
だから峻別できないでしまう。
これは、まーー、本当は毅然と反対したほうがいい。
それからこれは、まーー、人によって無理にそこに入りこまなくてもいいという、
そういう区分けがあるはずなんだけど、
それもみんなゴチャゴチャになってしまっているから、
どうも、いつまで経ってもね、ハッキリしない。
それをいい事に政治家たちは、なんとかかんとか誤魔化して、国民を誤魔化して、
自分たちの思う方へ持って行こうとしているということじゃないかな。
香山リカ:
そこで菅原さんがこうやって発言をしようと思われて、
それは何かきっかけがありました?
この間実は発起人のお一人の作家の赤川次郎さんに来ていただいてお話をした時に。
赤川さんがおっしゃっていたのは、
「自分は小説家なので、これまでは小説を書くのが仕事と思ってそれを一生懸命やってきた。
しかしやっぱりここ最近の日本の社会を見ていると、
『私は小説家だから社会のことはちょっと発言しません』とは、とても言っていられなくなってきた」と。
そういうことで赤川さんも、ここ数年はいろんな社会の問題に対しても
ご自分で新聞の投書欄に投書でね、お名前を書いてなさったりするぐらい、
原発の問題に関しても、投書されていましたけれど、
「もう、無責任に黙っていられない」ということで仕事を超えて発言することにした、
っていう話をしていただいたんですけど、
菅原さんの場合も「黙っていられない」という気持ちになったんですか?
菅原文太:
ククッ…そうなんだろうね。
原発がああいう事故を起こすまでは、敢えて反対しなかったんだから、
原発っていうのがよく分からないで、そういう科学的なものが、出てきたのかと、
それはもうみんな、「ちゃんとした科学者がタッチしていることだから間違いないんだろう」
ぐらいに思っていてね。
それすらも結局は「そうじゃなかった」という。
だからこれからは、軽々に政治家であるとか、科学者であるとかが「これは良い」と言ったからといって、
その通りに受け取らないというのはもうね、
俺だけじゃなくて大勢の人が、今そう思っているだろうとは思うけど。
これもだから、それをはっきり発言したり、投書したりして。
何人もいますよね、今、そういう人が。
香山リカ:
でも、残念ながらあまり多くないですよね。
もっと私たちとしてはね、
本当に一般の方たちに影響力のある菅原さんのような役者の方、音楽家の方とか、
そういう方達にもっともっと発言をしてもらったら若い人なんかも耳を傾けるんじゃないかと思うんですけど、
やっぱり皆さん、「私は社会問題は専門じゃないので」とか
「私は音楽家なので音楽だけを」と言って、なかなか発言をしてくださらない方も。
これは日本の一つの傾向かもしれませんけれどね、多いと思うんですけど。
菅原文太:
それはね、映画人だってそうだよね。
全く知らんふりして、「自分は映画だけやっていればいい」というのも大勢いるし、
中にはその中で、意外な人が反対をしたり、ね、それによって干されるかもしれない。
それでも勇気を持ってやっている人も、
香山リカ:やっぱり干されるんですか?
菅原文太:
やっぱりそうじゃないの?
どんな職業でもそれはあるんじゃないかな。
だからみんな用心し過ぎている。
そういう用心させられてしまう人たちがどんな分野にもいるとしたら、その国は間違っているよね。
香山リカ:そうですね。
菅原文太:
どんな意見だろうが、どんな主張だろうが、それは自由に行き来しなければ。
それが、思った人の通りに通るのか、なかなか通りにくいのか、これは別問題だから。
でも、人間である以上どんな意見をもって、反対しようが賛成しようが、それは自由なわけだから。
それが閉ざされていくということは、だから、それはもうやっぱり許されざることですよね。
それは断固として「反対」をやっぱるすることだし、
自分は「原発は無い方が良い」と思ったら、そう思った通りの主張をし続けなければ、
別にそれで絞首刑になるわけじゃないしね(笑)。
香山リカ:
でもあれですか、こうやって発言されて周りには、
「菅原さんほどの役者さんが、もうそんなこと言わなくていいじゃないですか」みたいなことを、
親切も含めてそんな風におっしゃる方はいらっしゃいますか?
菅原文太:
それは…、全くないわけじゃないんだろうけれど、
あんまり、まぁ、言われたことはないね。
だから、どうなんだろうね。
香山リカ:
たとえばこの会もね、
細川さん、小泉さんと総理大臣も経験された政治家の方たちが中心になって始めたんですけど、
そのお二人も周りはね「そんな総理大臣までやって、悠々自適な老後を過ごしている方が、
またそんなことを発言しなくてもいいんじゃないですか」っておっしゃる方もいらっしゃいますよね。
菅原文太:
でも、小泉さんなんかは結構言ってるじゃない。
「自分は賛成だったけど、元総理大臣までやった男です。
だけど、「良い悪いは今の段階で決めているんだ、今は反対です」と言っているわけだから、
それで、ま…、小泉さんに文句言いに行く…(笑)
香山リカ:
行く人はいないんですけど、たまにはね、そういうことを発言されている方のいろいろ、ものを読むと、
そういうふうに言っている方もいるみたいですけど、
もちろん菅原さんもそうですし、発起人さんでいらっしゃる方々は皆さんそれぞれの分野で、
映画の世界とか、歌舞伎の世界とか、学問の世界とか、
それぞれで皆さん活躍されている方々なんですけれど、
そういう方たちがあえて、やっぱり原発問題に対しては、
「もうこれはどう言われようと自分の意見を言いたい」という方たちが集まってくださっているんでね。
菅原文太:
俺はもう、今は映画の世界じゃないから。
辞めたから。
それと、…原発だけのことじゃないんだよね。
どんなことであれ、良い事と悪い事が、それは個人によって差異はあるだろうけれども、受け取る。
だけどまぁ、概ね良い事と悪い事というのが基本的にあるんだから、
それは、原発以外のことでもやっぱり言わなきゃダメだよね。
「こういう事はしてはいけない」
俺なんかも若い頃は、こういう事をしてはいけないことをした事もあるけど、(笑)
酒は飲み過ぎちゃいかんけれども、というようなことは若い者がよく年寄りに忠告されるけれど、
俺なんか忠告を無視して飲み過ぎてしまったんだ。
まぁまぁ、それぐらいのことは許される事でも、許されない事もあるからね。
許されない事は、良くない事は「良くない」と、やっぱり言わないと。
それが日本人はどうも「不得意」みたいだね。
外国だって、むしろ進歩しすぎた社会はダメかもしれない。
香山リカ:
でもアメリカなんだkだとハリウッドの俳優さんも「戦争はダメだ」とか、
いろんなところにはっきり「人権を大事に」とか発言されている方もいらっしゃいますよね。
菅原文太:
います、います。
でもやっぱり、どちらかというと、未成熟の社会の若い人たちの方が、
そういうことに対してね、ハッキリ。
言うだけではなく行動まで、過激なところまで行ってしまう国もあるし、
それがいいか悪いかというのはね、こう、一概に良いんだ、悪いんだと言い切れないところもあるけれど、
やっぱり、どんなことであれ正しい事と、自分が確信することには、
はっきり意思を表明すべきだろうと思うけど、
なかなか難しけどね。
でも、原発は良くないことは、ハッキリわかったんだから、
まだわからないでいるんならば、これはよくよく首をひねって考えたりすることもあるだろうけど、
今は原発という、原発と言っていいのか、ウランを
このあいだのテレビの科学者の集まりの中でも、
「みだりにウランを使ってはいかん」ということを言う科学者が大勢いたんですよ。
だからそういう事になると、これはもう、どっちが正しいかなんていうことはわかっていて、
ここまで来ると分かっている話だから。
科学といえどもこういうものを使ってはダメだ。
ここまでは許容されるという事が科学者によって、
だけど科学者によってもね、
それを今まで本来使ってはいけないものを使ってきた科学者も大勢いるんだから、
まあ、難しいところだけど。
香山リカ:
発起人のお名前を見て、私の周りの若い世代の方も、
「あれ、菅原文太さんもいるんですか」って、すごいやはり他の誰よりもみんな注目したり、
「菅原文太さんはどんな意見を持っているんですか?」って、
すごい注目度が高いものがあるなと私も実感しているんですけれども、
特に若い世代の人たちに、原発・自然エネルギー問題に関してメッセージがありましたら、
ぜひお伝えいただけますか。
菅原文太:
あの、よくよく考えて欲しいよね。
物事を判断するのに、「世間に通用していることが正しい」なんて思わないで、
自分の目で、そういう職業とか、生き方とか、
そういうことも自分の頭の中で、心の中で判断して、
良し悪しは自分で決めなさい。ということを言いたいよね。
香山リカ:原発問題もまさに同じですよね。
菅原文太:
同じだよね。
みんな騙されて、「こんな安いものはない」と言われてきたけど、
「こんな高いものはない」という事がハッキリしてきたじゃないですか。
もう、京都大学のあの先生の本をちょっと読み始めたら、小出先生のね。
なに、廃棄物のね、原子力の。
500万年!
廃炉になるまで5年ならいざ知らず、500万年かかるなんていうことが書いてあってね、
これはもう、数字で表せないような時間と労力と、
香山リカ:その頃の子孫の子孫の子孫の子孫みたいな人たちがどんなに恨むでしょうね。
菅原文太:
それはそうでしょ。
「恨む」なんていう言葉では表せない。
もうこの地球に「オギャー」って生まれてきたことが幸せではなくなるかもしれないでしょ。
不幸を背負ってこれからの赤ちゃん達は生まれてくることになるかもしれない。
だから、
香山リカ:先祖が作った核のゴミを処理するためにってね、事ですよね。
菅原文太:俺のような歳になったらもういいけどね。もうほんとほんと。
香山リカ:
「原発問題も誰々が言うからいいんだ」というふうに考えないで、
ちゃんと自分で見て、考えて、答えをちゃんと若い人でも出して欲しいっていうことですかね。
菅原文太:
今は判断できるような、小出先生のような方が書いたものとか、いろんなものが出ているから、
そういうものを買って、高くないよ、本なんていうものはね、一冊。
そういうものでよくよく判断して、そして自分の意見を決めてくれよ、と言いたいよね。
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2014年11月1日
【沖縄】翁長雄志 うまんちゅ 1万人大集会
菅原文太「これが最も大事です。絶対に戦争をしないこと!」11/1沖縄(文字起こし)
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2013年11月20日
秘密保護法案反対 メディア関係者らによる総決起集会
これがもし通れば「とどめ」になるのかなと思うくらい悪法だと思っています
2013年11/20菅原文太さん(文字起こし)
2013年7月18日
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