メディアは不都合な真実をなぜ伝えられないのか!
週プレNEWS [2015年01月08日]

実験走行でも毎回多くの報道陣が押し寄せていたが…
昨年末の12月についに着工したリニア中央新幹線事業。第一期となる東京から名古屋までの工事だけでも約5兆5千億円、名古屋から大阪までの第二期の工費も合わせると9兆円超という超巨大事業だ。
ところが、これだけ注目される一大事業なのに、住民らの反対運動や懸念される問題についての報道がほとんどない。週刊誌に限れば、繰り返し報道しているのは本誌と『週刊金曜日』、新聞も一部の地方紙くらいのものである。
そもそも、リニアを取材するマスコミ記者及びフリージャーナリストともに限りなくゼロ。その一因に、広告クライアントとしてJR東海の存在が大きい媒体は計画に物申す記事を載せられないことが考えられる。
実際、JR東海がスポンサーのひとつである雑誌に記者がリニア問題を扱う企画を出して通ったことは一度もない。東京電力というクライアントに「配慮」し、3.11までメディアが原発を検証する記事を掲載しなかった構図とも似ているといえる。
具体的な事例として、例えばこんなことがあった。
●事例1 報道されない市民運動
2013年8月29日、山梨県都留市。その日は、県のリニア実験線がそれまでの約18キロから約43キロへと延伸され、2年ぶりに実験走行が再開された日だった。
それに先立つ出発式では、JR東海の葛西敬之会長(当時。現在は名誉会長)と太田明宏国土交通大臣がリニア実現を願うスピーチを行ない、100人以上のマスコミ記者が押し寄せていた。ひとつのお目当ては、新型車両L0系に試乗できることだ。
だが、記者たちも一斉に驚いたのが式典会場を出た途端、約50人の市民団体メンバーが横断幕やメッセージボードを掲げ、ときにシュプレヒコールを挙げ、リニア計画の見直しを訴えていたことだ。

多くの市民団体がリニア計画に反対の声を上げているものの、その声がマスコミを通じて届くことは少ない
「世界遺産をめざす南アルプスにトンネルを掘るな!」
「NO!電磁波」
「JR東海はすべての情報を公開して疑問に答えて」…等々、
目の前を通る記者たちに次々と訴える声ーー「お願いしますね! 報道してくださいね!」
そんな反対運動の出現に少なくない数の記者が急遽、写真撮影し、ビデオカメラを回し、短いインタビューまで始まった。そこで、記者は逆に報道陣の何人かに質問をした。
「リニアの問題はほとんど報道されません。JR東海がスポンサーだと難しいんですか?」
すると、「基本的には記者とデスクの問題意識に拠(よ)りますが、最終的には上の部署の判断です。スポンサーに気を遣うのは事実です」との答え。
そして、果たしてどこも報道はされなかった。メディアの紙面を躍った言葉はほぼ横並びーー「夢の実現にあと一歩」。住民の声は封じられた。
●事例2 極めて異例な出版停止
上の部署の判断ーー。実は、記者も似たような体験をしている。
2014年9月に「“悪夢の超特急”リニア中央新幹線」(旬報社)と題した単行本を上梓、だがそれは本来、半年前に別の出版社から刊行される予定だった。
某月刊誌での連載を基に構成、すでに3千部を印刷し、さぁ翌週には書店に並ぶぞというタイミングで、その出版社の上部組織である某大学から「待った」がかかったのだ。
大学曰く、「本校において、研究者や卒業生で鉄道関連の事業に携わる者もいる。(リニアを批判する)この本の内容が大学の意図と思われるのは困る」。
そして出版停止。3千部刷られた本は日の目を見ることなく断裁されてしまった。
かつて、ロックバンド、RCサクセションの反原発ソング「サマータイムブルース」を収録したアルバム「COVERS」が発売直前に東芝EMIの判断で発売中止となったのはよく知られた話だが、まさか、同じようなことが起こるとは想像もしていなかった。
再び出版先を探すのに約5ヵ月費やし、一時はもう無理ではと諦めただけに、救いの手が差し伸べられ刊行にこぎ着けた時は心から安堵した。
せめて、校正段階での出版停止ならわかるが、印刷後の出版停止はどんなベテランジャーナリストに尋ねても「極めて異例」との反応だった。本当に大学側の言い分だけが理由のすべてなのか…あるいはなんらかの圧力があったのか、未だ真相はわからない。
●事例3 NHKでも放送内容がNG
もっとも、同様の事件は、天下のNHKでも起きたーー。
昨年12月8日。『クローズアップ現代』番組内で、リニアによって膨大に発生する建設残土の処分先がないことをテーマに放映。無視できない環境問題だとして、番組スタッフが市民団体「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会」の天野捷一代表を延べ10時間近くも取材していたものだ。
リニア問題が計画沿線住民に認知されたのは、JR東海がおおよその計画書である「環境影響評価方法書」を公開した2011年からだが、以降、NHKは一度もリニア問題を報道したことがなかった。
それが、『クローズアップ現代』では残土問題を切り口にリニア計画の問題点を炙(あぶ)り出すということで、天野さんは趣旨に賛同、協力を惜しまなかった。ところが、オンエア前日の12月7日、携帯電話に番組のスタッフから連絡が入ったーー「申し訳ありません。天野さんや住民、川崎市職員の生の声を放映できなくなりました」
自身のアレンジで取材に応じてくれた住民にもただ申し訳なく、天野さんは「取材対象の信頼を失う行為だ」と伝えた。中止の理由は詳細には教えられなかったが、上からの圧力があったことは間違いない。
結局、番組においてリニア関連で放映されたのは、各県で発生する残土の量をイラストで紹介、JR東海の住民説明会に参加した男性の「残土問題は困る」とのコメントを紹介するのみであった。
もっとも、天野さんはじめ、リニア計画に異を唱える市民団体の多くは、NHKの会長人事が安倍首相やそのブレーンである葛西敬之・JR東海名誉会長に握られていることを把握している。首相の経済ブレーンである財界人の集まりが「四季の会」で、その幹事役を務めるのが葛西名誉会長なのだ。
リニアという超巨大事業は、公共放送にもまるで問題点を報じられることなく、不都合な真実を検証すらされず着々と推進されている。このまま国民的議論を喚起することなく、報道の役目を果たすことなくメディアはリニア計画を看過することになる。
スポンサーがらみの検証報道がなされないのは、リニアに限った話ではない。だが史上最大規模の環境問題(残土問題や水枯れなど)が起きうるかもしれない巨大事業に沈黙し、監視者としての責任を放棄していいはずはない。
同じように、その危険性が指摘されながら国民的検証がないままに推進され、大事故を起こしたのが原発ではないかーー。
(取材・文/樫田秀樹)

「“悪夢の超特急”リニア中央新幹線」(樫田秀樹・著/旬報社)
“悪夢の超特急”リニア中央新幹線
「夢があっていい!」「地域が活性化する!」と思っているあなた。覚悟はできていますか?
新幹線の3倍以上かかる電力を原発再稼働でつくる?
南アルプスの天然水を枯らし、稜線に残土を積み上げる?
1日に1700台ものダンプカーを街中に走らせる?
日本最大のウラン鉱床地帯にトンネルを開ける?
48カ所のトンネル非常口・施設の建設のために立ち退く?……
著者紹介 樫田秀樹(かしだ・ひでき)
1959年北海道生まれ。岩手大学卒業。コンピュータ関連企業勤務を経てフリーのジャーナリストに。NGOスタッフとしての活動や取材でアジア・アフリカ各地に赴く。著書に『9つの森の教え』(築地書館。ペンネーム峠隆一)、『「新しい貯金」で幸せになる方法』(築地書館)、『自爆営業』(ポプラ新書)、編著書に『世界から貧しさをなくす30 の方法』(合同出版)など。各誌で環境問題、社会問題、市民運動、人物ルポなどを手がける。自身のブログやホームページでも多くのテーマを執筆している。
著者からのメッセージ
総事業費9兆円。この史上最大の鉄道事業は、その問題点をほとんど報道されることなく着工目前まで来た。
東京・名古屋間の286キロのうち86%の246キロがトンネルになることで発生する水枯れの可能性、処分方法の決まらない膨大な建設残土、掘り当てるかもしれないウラン鉱床、一日に1700台ものダンプカーが12年も走る村、10年以上も続く騒音と振動と土ぼこり、喘息、生活と交通阻害、生態系の劣悪化、立ち退き等々。
これだけの問題が、東京都から愛知県までの広範囲で起きる可能性があるが、その全情報は一人のフリージャーナリストだけでは把握できない。実際、私は、東京から名古屋まで訪れていない場所がある。会うべきなのに、まだ会っていない市民団体のメンバーもいる。目を通すべきなのに、まだ手をつけていない文献調査もある。確認すべきなのに確認していない問題もある。
それでも、私がリニアに関して取材を続けるのには理由がある。いま伝えるしかないからだ。
3・11の前、原発の危険性を訴えるマスコミはきわめて少なかった。事故が起きてから、多くの記者が饒舌になった。原発関連の本にしても、事故のあとは数百冊も出ているはずだ。もちろん否定しているのではない。次から次へと新たな問題が発生する以上、どれも大切な情報である。
だが、その礎を作ったのは、原発事故以前の数十年間、事故の可能性を訴え、反原発を訴えていた少数の市民団体やジャーナリストや研究者だ。たとえば、原発事故のあと、どの講演会場も立ち見が出るほどに時の人となった小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は、事故の前は10人前後しか聴衆のいないときもあった。それでも腐ることなく、淡々と講演活動を続けた。市民団体も廃炉を視野に入れた運動を展開したり、東京電力に何度も申し入れを行なっていた。
だが、マスコミは東京電力という大スポンサーに配慮して、こうした声を拾わなかった。東京電力はひたすら「原発は安全です」を繰り返し、国民的検証もないまま、ついに事故が起きた。
リニアが事故や問題を起こすとは断言しない。ただ人間が造るものである以上、その可能性はある。リニア計画では、すでに山梨県のリニア実験線周辺で、起こらないといわれていた水枯れが頻発しているだけに、問題発生の可能性は低くはないと推測する。しかし、その検証がされていない。
あるテレビ関係者は言った。「JR東海がスポンサーである以上、報道は難しい。でも、事故や大問題が起これば取材できる」と。だが、私は事故を待ってなどいられない。いま伝えることで、多くの人にリニアに関する情報を知ってもらい、議論をしてほしい。
なぜなら、リニアは似ているのだ。原発の推進の仕方と。
主な目次
プロローグ
第一章 計画前夜
技師の閃き/署名運動/走らないリニア/動き出した計画/「リニア・市民ネット」の誕生
第二章 空疎な「方法書」説明会
国の民意軽視/不毛な説明会―環境影響評価方法書の縦覧/計画の大義/原発一基分の電力を消費するリニア/このままではずるずると着工される/大鹿村の新聞/NO!リニア連絡会/大鹿村の説明会/東京での説明会/NOを言わなかった自治体/議論がなかった期成同盟会/自治体の本音
第三章 何が問題なのか
推進者からの批判/海外での事例/自治体にも隠される情報/何が問題なのか/電磁波/水枯れ/残土/ウラン鉱床/切り捨てられるローカル線/不安な安全対策/空疎な「町づくり」計画/なぜ報道されないのか?/「個別説明会は開催しません」
第四章 リニアは必要なのか?
速いけど早くない/声にならない声―「リニア、いりませんよね」/リニアを止める! ―「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」の誕生/ネットワーク、国土交通省へ/議員の関心/誰がリニアを必要としているのか?
第五章 土壇場での懸念の噴出
加速の第一歩/「ご理解」なんてできない/自治体も懸念。長野県大鹿村と中川村/長野県南木曽町の懸念/岐阜県可児市/静岡県七市二町の水源がなくなる?/悩ましき南アルプスの残土/公聴会と審査会
第六章 厳しい知事意見書が出ても
評価書/環境大臣意見/環境省と国交省へのダブル交渉/行政訴訟?/高まる関心
あとがき
リニア新幹線沿線住民ネットワーク加盟の市民団体一覧
「リニア新幹線狂気の計画」 文字起こしブログ
動画はこちらにあります↓
<リニア新幹線狂気の計画ー1ー>
「間違いなくこれは浜岡と抱き合わせの計画だ。
これはもう間違いなくね、このままいくと我々はもう殺されますよ」広瀬隆氏(文字起こし)
<リニア新幹線狂気の計画ー2ー>
「97%反対止めます。っていうのが普通でしょ?どんどん決定していくんですよ」
広瀬隆氏(文字起こし)
<リニア新幹線狂気の計画ー3ー>
「一部の利権者が動き出して、これは遊びなんです。最後に失敗するんですから」
広瀬隆氏(文字起こし)
<リニア新幹線狂気の計画ー4ー> リニアの電磁波問題
「これはきちんと理解したらみんな乗りませんよ、怖くって」
広瀬隆氏(文字起こし)
<リニア新幹線狂気の計画ー5ー> 電磁波を浴びる利用者の利便性
「日本人の誰も、高い金を払って時速500キロで景色も見えない鉄道が宙に浮いたまま、
目が回るような高速度で目的地に到着したいとは思っていない」 広瀬隆氏(文字起こし)
<リニア新幹線狂気の計画ー6完ー> 「運転手がいないんですって」
リニアは乗客の命を考えない、とてつもなく危険な鉄道である 広瀬隆氏(文字起こし)
広瀬隆さん長野県富士見町2011年9月20日講演(内容書き出し)
「子どものためによくないから、あの原発の火は全部無しに」
肥田舜太郎氏3/16立川(文字起こし)より
リニア新幹線。
ね、なんで大阪まで30分で行かなきゃならないんだ。
そのために穴掘って、沢山の土地を潰し、
沢山のいろんな公害を起こしながらね、
あれに乗って、大阪に30分で行った。
俺はこんな幸せな人間だなんていうのは誰もいないんだ。
高いお金を出して乗って。
そういうつまらない事をしようっていうのがいっぱいいるんだ。
東京都

神奈川県

山梨県

長野県

岐阜県

愛知県

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河口湖と山中湖の水位変化と山梨リニア実験http://ameblo.jp/kennyg1132/entry-11911319137.html
多摩川、相模川、笛吹川、富士川、早川、大井川、天竜川、木曽川、庄内川が、枯れてしまったら、東京・神奈川・静岡・愛知は、完全に干上がってしまう。
ライバルって、川を挟んで水争いが、語源だそうだ。
香川の友人が子供の頃、自分の田んぼに、こっそり水を引き入れた人が、翌日田んぼに浮かんでいたそうだ。(殺人が行われるほど、水は貴重)
昔の集落は、水を手に入れやすい水害に遭わないぎりぎりのところに作られている事が多い。
どれだけ水が大事か。
実験線だけでも被害が出ていると言うのに・・・。
先祖から受け継ぎ子孫へと毀損しないように、リニアなんてせずに、この国土を大事に使っていくべきです。
ISILですか、日本人人質事件が辛い展開になってしまいました。その上、これからは日本を標的にするとの宣言。
小説「原発ホワイトアウト」では、山奥の送電線が標的に成ってましたが、リニア新幹線であれば空気口を標的に・・・、と想像してゾッとしました。
国土を破壊し、外国に敵を作り、自国民を助けられず・・・。
他人にお任せをしていたら、とんでもないことになって来てしまいました。
私に何ができるかは分かりませんが、まずはきちんと知ることから。
きーこさん、貴重な情報を、いつも本当にありがとう。
リニア新幹線には、運転手が居ないんでしょ?!
最寄駅まで歩くって、中仙道を歩くくらいの距離あるんじゃん!!
途中宿屋もないよ~~~~。茶屋だってないさ。
ロマンもないし。
あたしゃ、そんなリニア新幹線には乗りたくない、だよ。
また、報道規制もそうでしょう。
地元では、平日に説明会などが開かれているようですが、平日の昼間に会社を休んでまで行けるかたはごく限られた方でしょう。また、仮に出席してもどこもまでが事実でどこまでが推測なのか・・・。
確実にいえる事は、環境への影響もほんとうのところ誰も証明できないという事です。
何か起きたときにその因果関係を証明・立証できるのは権力側であり。一般庶民は物理的に不可能。
不可能ならば、せめて周辺地区だけでも、引っ越しを希望する方には、十分な保障を願いたいものですが、そんな話の一つも出ていないのが現状です。
機会があればまたコメントさせて頂きます。