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ニューズウィーク日本語版
危険な廃棄物と化した原発は解体撤去もままならず、
事故処理は今いる日本人が皆死んだ後まで続くかもしれない
2011年08月18日(木)13時08分     千葉香代子(本誌記者)

福島原発は廃炉にできない
[2011年7月27日号掲載]


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封じ込め 原子炉建屋を覆い放射性物質の飛散を防止する試みも 

福島の一角で巨大な事故を起こした原発が不安を与え続けている。
放射能の塊を早く取り除いてほしい──というのは、避難民や周辺住民のみならず、日本全体に共通した願いだ。
汚染水を海に投棄したときに抗議した隣国や、
地球の裏側なのに甲状腺の被曝対策として安定ヨウ素剤を買いあさった国があったことを考えれば、
世界全体の願いと言ってもいい。

しかし放射性物質を外界に大量に放出した東京電力福島第一原発は、
事故から4カ月を経た今になっても、撤去の前提となる原子炉の安定すらできずにいる。
にもかかわらず、東電や政府関係者は確かな根拠があるとも思えない発言を続けている。

政府と東電は先週末、当初の目標としてきた「原子炉の安定的な冷却」に到達したという見解をまとめた。
菅直人首相は原発周辺の市町村長らに対し、
来年1月の予定だった核燃料の熱を100度以下に安定させる冷温停止を
「前倒しで実現できるよう頑張りたい」と語った。

だが、冷却のために汚染水を浄化して循環させる「循環注水冷却」は6月末のスタートからトラブル続き。
先週も循環する水の量が低下するトラブルでシステムを一時停止した。

核燃料棒が溶けて塊になったり炉外へ溶け出していた場合、
冷温停止が困難を極めることは、多くの専門家の一致した意見だ。
燃料に水を行き渡らせ、効率的に冷やすことが難しいからだ。

福島原発の最終的解決は、
すべての元凶である核燃料と放射性物質を取り除き、原発を解体撤去する廃炉の実現にある。

だが、それが実現するのはいつなのか。
政府は内閣府原子力委員会の中に廃炉検討チームを設置する方針だ。
廃炉に向けた政府と東電の中長期の工程表も近く明らかにされるだろう。

だが政府と東電は事故以来、事態が収束に向かっているように見せることにひたすらエネルギーを注いできた。
メルトダウン(炉心溶融)はおろか、それより深刻なメルトスルー(溶融貫通)が起きていたことも、
3カ月たってやっと認めたほどだ。
公表される廃炉スケジュールが「最悪の事態」を踏まえたものになるとは考えにくい。

前例のない事故を起こした福島第一原発には、
今から廃炉に至るまでの過程にどんな専門家も答えを知らない技術的難題が山積している。

廃炉には、事故を起こさなかった普通の原子炉でも30年程度の時間がかかる。
原子力委員会は福島の廃炉に要する時間を「数十年」と評しているが、
この「数十年」は限りなく100年に近い、あるいは100年以上と考えたほうがいいかもしれない。


続きを読むにつづく




建設より厄介な廃棄作業

福島第一は破壊の程度がひどいため、事故処理にはほぼ永遠と言っていい時間がかかるだろうと、
京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は言う。

チェルノブイリ原発の石棺のように巨大な構造物で建屋を覆った上、
作業員の被曝を避け、放射性物質が外に漏れ出さないよう監視しながらの作業が必要だ。
いま生きている日本人は誰一人、その終わりを見ることはないのではないか」と、小出は言う。

福島第一は廃炉にもできず、放射能を閉じ込めた「悲劇のモニュメント」として半永久的に残る──
その可能性すら、政府や東電はまだ認めていない。

そもそも廃炉は原発から使用済み燃料を取り出し、構造物を解体撤去して更地に戻す廃棄作業だ。
原発を造るより長い時間と労力と巨額の費用が掛かる

6月に国民投票で脱原発を決めたイタリアでは、
90年に停止が決まった福島と同じ型のカオルソ原発など4基の廃炉に取り組んでいる。
作業は2020年頃に完了する予定で、その費用は約7000億円に上る
福島の場合、コストはその何倍にも膨らむはずだ。

廃炉は、これを請け負う原子力業界にとってはビジネスチャンスだ。
世界的な脱原発の流れも受けて、今後大きな市場になるとみられている。
「だが、福島だけは誰も手を出したがらないだろう」と、
コンサルティング会社ブーズ・アンド・カンパニーでエネルギー問題を担当するパウル・デュールローは言う。
爆発した原発の廃炉が技術的に可能なのかどうかも分からない

廃炉で最も重要なのは、核燃料を取り出すことと、
高濃度から低濃度まで放射能に汚染された廃棄物を処理することだ。

原発が冷温停止した後、放射線レベルが下がるのを何年も待ち、
低濃度のものから徐々に解体して最後に原子炉を撤去する。
その際、染み付いた放射性物質を分離・分類し、不純物を取り除いた上、
種類別にまとめて密閉容器に閉じ込めなければならない。
放射能を周囲に広げないための、原子レベルの超ハイテク技術だ。

だが爆発した原発の廃炉は、これまで誰も経験がない。
86年に爆発したチェルノブイリは廃炉にできず、今も放射能レベルが下がるのを待ち続けている。
設置から40年を経てコンクリートが浸食され、石棺はもはやボロボロの状態だ。

日本版チェルノブイリに

普通に運転停止した原発であれば燃料棒を束ねた燃料集合体を取り出せば済むし、
周囲の汚染も大したことはないと、かつて東芝で原子炉格納容器の設計をしていた後藤政志は言う。

だが福島第一の場合は、大量の放射性物質が格納容器の外に漏れ出て、建屋内部が放射能まみれになった。
もはや普通の廃炉という概念は当てはまらない」と、後藤は言う。
燃料集合体は溶けてチーズのようになり、どこに流れ出したかも分からない。
周囲は壁まで放射能が染み付いている。
この状態からどうやって放射性物質を取り出すのか、もはや誰にも分からない。

物理的な障害も少なくない。
炉のふたに据え付けられている開閉用のクレーンは既に吹き飛び
金属製のふたそのものも熱で変形していると考えられている。
ふたを開けるためだけに、専用クレーンを一から開発しなければならない。

福島は廃炉にできない」と、後藤は言う。

英科学誌ネイチャーは先週、専門家の見解に基づく記事で、
数十年から場合によっては100年かかるとの見方を示した。
損傷した燃料を含めて原子炉内の放射性物質の除去に長い時間がかかることなどがその理由だ。
記事は、放射能汚染の除去作業が2065年まで続くチェルノブイリと似た状況になるだろうと指摘している。

福島第一原発の危機は、まだ現在進行形である可能性もある。
メルトスルーしたウラン溶融体が、
地下深くに潜っていって地下水を汚染する危険性を京大の小出は警告
し続けている。

逆に炉心のすべてが崩壊していない場合は、
これからさらにメルトダウンが発生して水蒸気爆発が起きる可能性もまだ否定し切れないとい
う。

いずれの場合でも、今とは桁違いの放射能汚染が広がることになる。
廃炉もますます遠のくだろう。

事故の終わりは当面期待できず、待っているのは巨大廃棄物との果てしない戦いだけかもしれない。

汚染された原発周辺の土壌を完全に元に戻す技術も、人類は持ち合わせていない。
どれだけ巨大なふたで覆ったとしても、「悲劇のモニュメント」は今後数代にわたって日本人を脅かし続ける。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


爆発していない原子炉の廃炉も、下記の番組をみるといかに大変かがわかります

NHK特集、1988年6月27日放送、45分 
「原子炉解体・放射性廃棄物をどうするか」



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コメント
キーコちゃん、俺は何にも知らなかった!国と電力会社は原子力が安いだなんて、よくもぬけぬけと言えたもんだ!俺も原発がトイレの無いマンションだってことは知ってたから、核のゴミの処理がどれだけ大変なことかってことは認識してたけど、原発の解体→廃炉がこんなに大変なことだとは知らなかった。原子力発電によって作られる核のゴミの処分だけでも、気の遠くなるほどの時間とお金と労力がかかるのに、原発1基廃炉にするごとに、その数倍の放射能廃棄物が出るし、より一層の時間とお金と労力がかかるんだね!こういうコストを国もマスコミも一切言おうとしない。いまだに日本国民の過半数は原子力が安いと信じ込まされてる。しかも今度の総裁選挙では、どの候補者も原発のゲの字も言おうとしない。マスコミもそれについては一切触れようとしない!まったくどうなってるんだ、この国は!キーコちゃん、全ての原発が止まるまで頑張ろう!
himadarake | 2011.08.23 01:43 | 編集
爆発から半年ぐらい経って、最近、だんだんと思うのですが、
日本人て、自分や自分の家族や親族が発病したりしないかぎり、
あまり放射能の恐さについて実感を感じない国民性なのではないかと思い始めています。

広島・長崎での放射能の後遺症や、原発銀座の福井県で白血病と甲状腺癌が全国平均より高いというデータがあるにも関わらず、
「今回の放射能は大丈夫。原発から出る放射能は大丈夫、少しなら大丈夫。まだ皆元気だから大丈夫。」という雰囲気。

放射能は、5年後10年後20年後から体に異変が現れるから、
その時にならないと、たぶん、日本の人たちは、狭い日本の国土に沢山の原発を建ててしまったことを、後悔しないのではないでしょうか。

日本の国土はアメリカの約25分の1、旧ソ連の約60分の1なのです。
とてもちっこい国土の中で、日本国民は暮らしているんです。
一か所の事故が、国土の大半に影響を及ぼします。

その時は、どんな職業についていようと、お金を持っていようといまいと、居た場所によって、被ばくしてしまうのです。

あきらめ | 2011.08.23 12:08 | 編集
私もそう思います。
マスコミが本当の事を流さなくても
今回は「おかしいな」って思わないのかな?と
周りにいる人々の心が分からなくなります
だんだん身近な人に自分の本心を打ち明ける事も恐くなってきました
当たり前のことだと思うのに
放射能は恐い
人の命のほうが電気よりお金より大事
自然が大事
地球が大事
それだけの事なのに・・・
電気が無いと生活が出来ない
だから原発が必要だって自信を持って話す人の気持ちが
・・・なんでなのか・・わかんない
ki-ko | 2011.08.23 20:06 | 編集
廃炉にするだけでも大変な量の放射性廃棄物が生まれるのですね
54基も原発があって、この狭い日本のどこに放射性廃棄物を捨てるのか・・
私達は放射能の海の中でおぼれてしまうのでしょうか・・
稼働している事は勿論、許せないけれど
廃炉にする事も恐いのです
人間って・・・バカだ
ki-ko | 2011.08.23 20:12 | 編集
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