原発解体(内容全て文字起こし)

今から3年前、NHKはこんな番組を放送していました。

平井憲夫さんはおっしゃいました。
この原子力発電所というのは、止めて置いておくこともできない。
いったん燃料を入れて動かすと、止めておくことも廃炉にすることもできない
」と。



原発解体~世界の現場は警告する~
2009年10月11日(日) 午後9時00分~9時58分 総合テレビ


深刻化する地球温暖化。各国のエネルギーの獲得競争。
世界を巡る環境が大きく変わる中、今、原子力発電が注目されている。
火力発電所に比べて大幅に二酸化炭素の排出が少なく、発電の出力が大きいからだ。

チェルノブイリ原発事故以降、脱原発の政策を続けてきた欧米。中国・インド・ロシアなどの新興国。
そして産油国までも建設に舵をきった。
世界で新たに導入の準備がすすむ原発の総数は100基にのぼる。

その陰で初期につくられた原発が役割を終えて解体されている事はあまり知られていない。
閉鎖された数は既に120基あまり。私たちは原発の大解体時代をむかえていたのだ。
国内にも「ふげん」と「東海発電所」の2つが解体に着手。
取材クルーははじめて、知られざる原発解体の現場に密着した。
そこでは放射線という一般の建物にはない特殊な環境下での厳しい作業が続いていた。
次々と関係者の事前の想定を越える壁が立ちふさがる。
さらに原発の解体は別の課題を抱えていることもわかってきた。
解体した後に発生する大量の放射性廃棄物を処分する場所が未だに決まっていないというのだ。

世界の社会経済環境が大きく変わる中で高まる原子力発電へのニーズ。 
一方で未だ解決の道筋がみえていない解体からでる廃棄物の行き先。
この難しい問題にどう私たちは答えをだすのか。解体現場の取材からの報告。

原発解体 2009年10月11日放送


原発解体 ~世界の現場は警告する~ 1/3 from sonar on Vimeo.



運転を停止して14年経った原子炉。原子力発電所の心臓部です。
今も強い放射線を出し続けています。
「数値は1900マイクロシーベルト」
この数値は、一般の人が一年間に浴びても差し支えないとされる量を30分余りで越えてしまいます。
原発は、運転を終えてもなお、数百年に渡って放射能が消えないのです。
これまでに世界で作られた原発は539基。

そのうちの100基以上が閉鎖され、解体の時を迎えています。
日本でも、二つの原発の解体が始まっています。
その現場に初めてカメラが入りました。
立ちふさがっていたのは、放射能という目に見えない壁。
「ちょっと待った、今下がった」
「入らんのよ。うまいこといかんのよ」
あらゆるところに汚染が残っている可能性があるのです。

ドイツ
すでに15基の原発を解体してきたドイツ。
最先端のご術を使っていますが、思うように進んでいません。
「気をつけろ 止めろ止めろ」「失敗してしまった」

イギリス
放射性廃棄物の処理に苦しむイギリス
巨額の税金をつぎ込まなければならない事態に陥っています。

原子力施設責任者:
廃棄物へ近づくほど強い放射線が出ている

放射線廃棄物の専門家:
原発があるどの国でも放射性廃棄物が大量に生まれている
私たちは解体や廃棄物の処分にもっと注目しなければならない。

原発が生み出す転機。
それによって成り立つ私たちの暮らし。
その原発の建設が、今、更に加速しようとしています。

運転中に二酸化炭素を出さないため、温暖化対策として注目されているのです。

しかし、その陰で放射性廃棄物という負の遺産が生み出され続けています。
原発解体という人類が初めて直面している課題。
現場からの警告です。


    原 発 解 体
~世界の現場は警告する~



福井県敦賀市にある原子力発電所「ふげん」
去年から解体が行なわれています。
原発は内部が汚染されているため、放置すると安全上問題があり、
管理コストがかかるとして国はすべて解体する方針です。
解体は放射線物質を絶対に外に漏らさずにすすめるとしています。
本当に周囲に影響を与えず安全に解体できるのか。
私たちは取材を始めました。

「ふげん」の内部です。
今も健康に影響をあたえるほどの放射線が出ている場所もあります。
「こちらは制御棒駆動装置の上部です」
まず持たされたのが放射線の測定器です。
どれだけ被ばくしているか、常に確認できるようにしておくためです。

「ふげん」地下二階。
解体を行うのは放射線による被曝を防ぐための特別な教育を受けた作業員たちでした。

現場責任者の井上辰也さん。
今回の作業は安全に解体できることを実証することが目的だといいます。

「手足もと良いか。」
「手足もとよし。手足元よし。手足元よし」
「本日もご安全に」
「ご安全に」

汚染区域に入る前、作業員はゴム手袋を2重に付けていました。
テープで入念に固めるのは汚染物質が手に付くと口や鼻を触って体内に入るおそれがあるためです。
マスクもつけなくてはなりません。
放射性物質は仮に顔についても洗い流すことが出来ますが、
吸い込むと健康被害につながるおそれがあるからです。

解体が進む「ふげん」の構造です。
「ふげん」は原子炉内で核分裂をおこし、その時に出る莫大な熱を使ってタービンを回し発電します
その際、原子炉では極めて高い放射能を持つ核のゴミが出ます。
原発は運転を終えても原子炉を中心に配管やタービンなど広い範囲に汚染が残ります。

解体は危険な核燃料を抜いたあと、汚染の比較的少ないところから始めます。
そして最も強い放射線が出る原子炉は最後です。

解体で出る放射性廃棄物は、特別な容器に入れ地下に埋めるなどして、処分されることになります。

私たちが取材したのは原子炉とタービンの間にある主蒸気管室です。
比較的汚染レベルが高い場所でカメラが入るのは今回が初めてです。

他の区域へ汚染を広げないためのシート。
その先に主蒸気管室がありました。
一般の建物と異なり、目に見えない放射性物質が残っているおそれがあります。

「ここ足場いるやろ」
「手で切らなあかんやろ」

配管が複雑に入り組んだ空間で作業は行われていました。

この日、汚染の可能性が高い機器の解体に取りかかろうとしていました。
原発を緊急に止めるときに使われる大型のバルブの解体です。

バルブは原子炉から流れる蒸気を止めるときに使われます。
内部には放射性物質を含んだ蒸気がたまります。

解体は弁を抜き取る作業から始まりました。

「つこてもええけど防具付けなあかんで」
「これで上(上の部品)は取れます」

弁を引きぬいたあと、内部から放射性物質が見つかりました。
その直後、事務所に戻った井上さん。
緊急に対策を話し合いました。

「汚染の方は?」
「汚染は測りました」
「特にない?」
「あります。ダメです」
「いくつぐらい?」
「6キロ」
「おー、すごいな」

見つかった6キロという数値は平均的な汚染レベルの6倍。
吸い込むと健康に影響を及ぼす恐れがあります。
作業員は急遽、放射性物質が付着しにくい特別な防護服を着ることになりました。

「測ってみないとわからない時もあるんですか?」
「そうですね。バラつきもあるので、そりゃもうとってみないとわからないというのはありますね。
正確な値というのは」

取材をはじめて1ヶ月。この日新たな問題が持ち上がりました。

「入らんのよ、うまいこと。うまいこといかんのよ」
「また変な細工してあるわ」

井上さんたちが切ろうとしていた太い配管。
周りには、配管を支える鉄骨が張り巡らされていました。
そのため電動ノコギリを使うスペースが無いというのです。
代わりに取ったのが、高温のガスで溶かして切断する方法でした。

しかし、この方法は危険を伴います。
高温のガスで切断するとヒュームと呼ばれる気体が発生。
ヒュームには配管の中に残った放射性廃棄物が含まれることがあり、吸い込むと危険なのです。

「出来れば溶断は避けたいんですか?」
「ああ、出来ればですね、小さい配管はバンドソー(電動ノコギリ)のほうが楽なので。
火花も飛び散らないし、溶断するとヒュームといって金属の蒸気が出てあまり体に良くない」

特別なマスクをつけることになりました。
作業員とは別に放射線を管理する専門の人がいます。
ヒュームに含まれる放射性廃棄物を10分ごとに測定していました。
基準を上回った場合作業員を退出させることもあるといいます。

放射能という眼に見えない壁に阻まれ、予定していた工程は1ヶ月以上遅れました。

現場責任者 井上辰也さん:
僕らが想定した作業時間。で、こういう格好で作業すると
実際5時間もつやろうと思っていたのが4時間しか体力が持たないとか、
そういう読み違いがあったと思います。
実際に半面(マスク)をしながら作業をするのが、きついというのが分かられたと思いますけれども、
そこの読みも甘かったと思います

放射性物質を絶対に外に漏らさず解体しようという現場。
安全を確保しながら解体することの難しさが取材で明らかになってきました。

国は原発の解体についてどのように考えてきたのか。
これは日本の原子力政策をまとめた原子力長期計画です。
昭和31年にできた最初の計画の中に解体についての記述はありませんでした。
将来起こりうる解体を考慮せずに原発は作られてきたのか。
専門家は原発は事故や地震に備えて頑丈に作ることが第一に求められ、
解体に対する対策はいわば後回しになってきたといいます。

原子力研究バックエンド推進センター 榎戸裕二さん:
解体をとくに考慮した設計というものは採用されていなかったのが実態です
設計思想においては原子力発電所のの健全性や、安全性の確保という事を主に考慮されておりまして
解体については将来の技術開発において対応できる
また、「今後技術開発をすることによって十分な技術が確保できる」
という考え方のもとでやっておりまして、近い将来の課題とは考えておらなかったと。

国が解体しやすい原発の研究を始めたのは昭和60年代。
しかし、今も国は、解体を考慮した設計を建設の際の条件にはしていません。

日本に最初の原発ができたのは昭和41年。
その後電力需要の伸びと共に次々と建設され現在57基に登ります。
しかし、解体を前提に作られていないため現場に思わぬ問題が起きていることが取材で見えてきました。

茨城 東海村

11年前に運転を停止した東海発電所です。
最も難しい原子炉の解体に向けられた準備が進んでいます。

東海発電所の構造です。
5年かけて配管やタービンなどを解体してきました。
現在は原子炉周辺の機器の撤去を進めています。
原子炉は強い放射線を出しているため今も人が入ることはできません。

そこで原子炉の解体に国内で初めてロボットを導入することにしました。
コンピューターを使ってロボットの遠隔操作の訓練が行なわれています。
ロボットを使うには、原子炉内部の詳しい構造と正確な寸法を入力しなくてはなりません。
そのためには建設当時の詳細な図面が必要でした。

しかし、ここで壁にぶつかりました。
必要な図面が見つからないのです。

「今このリストにないものがいくつかあって、それを探してもらえると嬉しいのですけども」

東海発電所の建設は40年以上前。
保管義務のない書類も少なくないのです。

「ああ違うな」
「ありましたありました。これかな」




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原発解体 ~世界の現場は警告する~ 2/3 from sonar on Vimeo.




図面が見つかっても古くなったり汚れたりして、数字などが良く見えないものもあります。

「このへんが切りはりした?」
「こういう所ですね」
「今のように電子データーをそのままPDFにしたんじゃなくて、写真を取ったんじゃなくて、
昔の青いコピーですね。青いコピーを写真に撮ってるんですね」

これまでに集めた原子炉の図面は合わせて1500枚。それでもロボットを操作するにはまだ不十分だといいます。

「85番、あそこはね見えないんだよね確かに」
「たとえば、この辺の字なんかも読めないわけですね」
「こちらの図面を中心にコントラストを当ててしまうと、こちらの字が見えないということになるんで」

日本原子力発電 松本松治 副社長:
まぁ40年前に作られたもんですから、今のこの解体を想定しながらそれがうまくいくように、
図面をやっぱり整備しておかなくてはいけないという考え方は、その時点はなかったんだろうと思うんですね。
今、原子力発電所を造るとなると、それこそ、そういった図面をきっちり残しておく工夫が
どんどんされていかなければいけないと思っています

東京
必要な情報を入手できないか。

「あ、おはようございます」

解体プロジェクトの担当者が原子炉を作った当時の技術者を訪ねました。
今のままでは解体が遅れかねないため話を聞こうと考えたのです。

今年71歳になる林勝さんです。
建設が始まった昭和35年から完成まで現場で工事を担当していました。

原子炉解体担当者:
事前準備でいろんなコトを調べとかないと、
解体の時にですね、思わぬことが起こるということが前提で考えてますから

林勝さん:
これはもう、基本的にですね、解体を考慮しない、あの、建設工程で作ってますから、
非常に解体の方の逆工程を想定するというのは難しいかもしれませんね

解体を考慮せずに建てられた古い原発。
建設に携わった技術者から話を聞けるうちに方法を見極めることができるのか。
解体は時間との戦いになっています。
東海発電所の原子炉の解体は2年後に迫っています。

これまでに世界で閉鎖された原発は107基。
これらが次々と解体される時代を迎えています。

日本より10年先に原発を導入したヨーロッパ。
中でもドイツでは32の原発のうち既に15基を閉鎖しています。
ドイツでは今、最新の技術を使って原発の解体を進めようとしています。
14年前に閉鎖された、ビュルガッセン発電所。
ここでも解体を考慮していなかったことで新たな問題に直面していました。

ビュルガッセン発電所

私たちは日本が間もなく取り組むことになる原子炉の解体を取材しました。
この解体プロジェクトの責任者ヘンゲルハウプト(原子炉解体責任者 クラウス・ヘンゲルハウプト)さん。
原子炉の解体に詳しい解体の専門家です。
これまでアメリカやヨーロッパ各国で原発の解体に関わってきました。
遠隔操作のロボットを使って原子炉の解体にあたっています。

原子炉解体責任者 クラウス・ヘンゲルハウプトさん:
この原子炉は閉鎖された時より放射線の量が低くなっています。
それでも人への影響がないほどではありません。だから離れた場所で作業しなくてはならないのです。
遠隔操作のロボットを開発するためには長い時間と高い技術が必要でコストも掛かります

ヘンゲルハウプトさんが解体に取り組んでいる原子炉です。
運転を停止した今も強い放射線を出し続けています。
私たちは被ばくを最小限に抑え安全を確保するため、撮影を20分以内に終えるよう求めれられました。


放射線管理員:
ここの空気は外部と遮断されています。
ここは6マイクロシーベルトだけど上に持っていけば測定の音が変わる。
音を聞いて。全然違うだろ。
1900マイクロシーベルト。

この数値は一般の人が1年間浴びても差し支えないとされるものを30分あまりで超えるものです。
原子炉は運転停止から14年経っても強い放射線を出し続けています。
それは、放射化と呼ばれる現象のためです。
核燃料から出る中性子にさらされたため、金属の性質が変化し、
自ら強い放射線を出すようになっているのです。
長い間運転した原子炉は全てこのような状態になります。

ビュルガッセン原発の原子炉解体を行っているのは世界で最先端の解体技術を持つ企業です。

エアランゲン
除染研究センター

放射性物質による汚染を取り除く技術で実績を上げてきました。
今では細い配管の中の汚染までほとんど取り除けるといいます。
しかし、原子炉から出る放射線を抑えることはこの企業でも出来ません。

除染技術責任者 ライナー・ノイハウズ博士:
原子炉の汚染を減らすことには限界があります。大部分が放射化しているからです。
原子炉事態が放射能を持っているため取り除くことが出来ないのです。
これがまさに原子炉の難しいところです。
表面の汚染しか取り除くことしか出来ません。
原子炉そのものが放射化してしまうとどんな方法でも放射能を減らすことが出来ないのです。


ヘンゲルハウプトさんは原子炉を解体するため、
建設当時の図面を元に1年間かけて計画を作りました。
この計画に基づいて解体する場所ごとに別々のロボットを特注。
さらに、原子炉と同じ大きさの模型を作り、事前にテストを繰り返しました。

ビュルガッセン発電所

ロボットを使った解体が始まりました。常にモニターでチェックしながらの作業です。
ヘンゲルハウプトさんが考えた解体の方法です。
原子炉の中に入れたロボットを離れた場所から操作し、
内部のリング上の構造物を切ります。
切断に使うのは高圧で噴出する金属を混ぜた水です。

「ゆっくり静かに動かすんだ」
「速さの調節が難しい」
「うまくはめるのは大変だ」
「気をつけろ。止めろ止めろ、失敗してしまった」

技術の粋を集めたロボットを使っての作業。
それでもヘンゲルハウプトさんが予想しなかった問題が起きました。

「これは切り残しになっているのか」
「そうです。こっちの線もジグザグです」
「こっちはぶれているが切れている」
「でもこっちは完全に切り残しだ」

計算上問題なく切断できるはずだった金属が、実際には切り離せないのです。
原因を探ると、問題は溶接の部分にあることがわかりました。
厚みのある溶接部分を避ければ切れるはずでした。

建設当時の図面

建設当時の図面です。
溶接の幅は20ミリと書かれていました。
しかし、実際の溶接は幅50ミリになっていました。

建設当時溶接を暑くすることでより安全に固定できると現場で判断していました。
そのため切断した部分は予定より厚みがあり切り残しができたのです。

「うまくいかなかったな」
「本当なら1回の切断でいいのに」
「ああ計画通りだったらな」

リングの切断にかかった期間は35日間。10日で行う予定が3倍以上かかりました。

原子炉解体責任者 クラウス・エンゲルハウプトさん:
原発は解体を想定して作られたわけではなく、あくまで運転を目的に作られています。
私たちが想像しているような方法ですべての部品を解体できないことが改めて分かりました。

解体は計画よりも7年遅れる見込みです。
費用も当初の900億円からおよそ1.5倍の1300億円にふくれあがっています。

ドイツの取材から見えてきたのは最先端の技術を使っても時間とコストがかかる原発解体の難しさでした。

世界で運転を取りやめた原発は既に100基以上。
取材を進めるうちに更に大きな課題があることが分かってきました。
解体にともなって原発からでる大量の放射性廃棄物の問題です。
解体したあとに残る廃棄物。原子炉で使われた排気路を含め、
人が住む環境に影響を与えないよう、特別な容器に入れ地下などに処分しなければなりません。
しかし世界各国は共通の問題を抱えています。
すべての廃棄物を埋められる処分場がある国は1つもないのです。

ザルツギッター ドイツ

「この土地に放射性廃棄物は要らない」
「放射性廃棄物は要らない」
「放射性廃棄物はいらなーい」

今年5月(2009年)、ドイツで処分場の建設に反対するデモが行われていました。

今ドイツでは放射性廃棄物が大きな問題になっています。
国民の不信感を募らせたのは廃棄物の処分をめぐっておきた、ある出来事でした。

アッセ元処分場

ドイツ中部、17年前に閉鎖されたアッセ処分場です。
施設は地下深くにあります。
ドイツ政府は処分場を作る際、安定した地質だと住民に説明していました。
しかし問題が発覚し閉鎖されたのです。

処分場管理担当者:
ここは深さ595メートルの地点です。
壁が塊になって剥がれてしまうんです。

処分場の壁はあちこちで崩れていました。
建設当時は予想しなかった地下水が漏れ出し、汚染が広がるおそれも出てきたともいいます。
過去に持ち込まれた放射性廃棄物は今も埋められたままです。

処分場管理担当者:
この下の廃棄物から出る放射線は命に関わるほど強いです。

処分場の環境が悪化していたことを、国は10年近く公表しませんでした。
アッセ処分場は住民不信の象徴となりました。
ドイツでは解体の時代を迎えても住民が処分場を受け入れることは極めて難しいのです。

国の放射性廃棄物管理委員会のミハエル・サイラー委員長です。
ドイツは原発の建設を優先し廃棄物の問題を先送りしてきたと考えています。

放射性廃棄物管理委員会 ミハエル・サイラー委員長:
そもそも原発を使い始める時から処分場のことを考えるべきだったのです。
原発がある、どの国でも放射性廃棄物は大量に生まれています。
そして、最終的な解決方法を見出した国は世界のどこにもありません。
私たちは解体や廃棄物の処理の問題にもっと注目すべきなのです。


原発解体 ~世界の現場は警告する~ 3/3 from sonar on Vimeo.




処分場がないまま進む原発の解体。
今最も深刻な状況を招いているのがイギリスです。

世界最初の原発1956年

1956年イギリスは世界で初めて原発を建設しました。

エリザベス女王:
皆さんは歴史が誕生する瞬間に立ち会っているのです
未来は私たちが想像できないものになるでしょう。

それ以来、半世紀余りの間に45基の原発を作ってきました。

イギリス

しかしその半数を越える25基は既に寿命を迎え閉鎖されました。
そのため解体や廃棄物の処理に多額の税金をつぎ込まざるを得ない事態に陥っています。
イギリスで今後必要となる費用は11兆円。
市民の間で問題意識が高まっています。


「原発の解体は問題だ。本当に恐ろしい。どこに放射性廃棄物を置くというのか」
「どこの国よりも廃棄物を作ってきたんだ。そのツケを背負うしかないんだ」

なぜ費用が膨らんだのか。

トロースフィニド原発

18年前に運転を中止したトロースフィニド原発を取材しました。

発電所にある貯蔵施設には放射性廃棄物が入ったドラム缶が積みあげられていました。
どこにも処分法がないからです。
そこでやむを得ず、発電所内にもう一つ貯蔵施設を作ることになりました。
建設費はおよそ30億円。全て国民の税金です。

貯蔵施設責任者:
1960年代に原発を作ったときにはこんな施設が必要になるなんて思ってもいませんでした。
廃棄物の処分場がないからこんな施設をつくらないといけない。
もし処分場があればこんな施設はいらないのに。

経営が立ちいかなくなった原子力関係の企業も出ています。

セラフィールド

イギリス中西部にあるセラフィールド。
ここでは世界有数の原子力企業が、
原発だけではなく使用済み核燃料の再処理工場などを運営していました。
しかし放射性廃棄物の処理や再処理工場で起きた事故への対応に費用がかさみ
債務超過に陥ったのです。
こうした費用を国が肩代わりすることになり、3兆5千億円の税金を投じる事態になっています。

カンブリア州

費用が嵩むのにはもう一つ理由があります。処分場の建設をめぐる地域への対策費です。
国の放射性廃棄物の処理の責任者アラン・エリスさん。
各地を回って住民への説明を行っています。
処分場への不信感が根強いイギリス。
殆どの自治体が拒否する中3つの自治体が興味を示しました。
しかし受入れには条件がありました。

地元議員:
処分場を受け入れると利益があるのか、みんな興味を持っているのよ

原子力廃止措置機関 アランエリスさん:
処分場は地域のためになります

地元議員:
それは見通しでしょ
地域としてはただ処分場を作らせるだけではなく、
関連企業を含むあらゆるところから利益を得たいのです。
そうすれば多くのお金を得られます。

住民:
それは重要だ。最初に考えて欲しい大事な点だ

住民からは具体的な地域振興策を求める声が相次ぎました。

原子力廃止措置機関 アランエリスさん:
地域に利益をもたらすことができるか、それが処分場を作る鍵になります。
地元の要求全てに答えるのは不可能です。理解を求めていくしかありません。

エリスさんは処分場を建設するめどを立てられずにいます。

イギリスでは 25基の原発の解体や廃棄物処理の費用が積み上がり
最終的には11兆円という巨額の負担になったのです。
負の遺産を解決できないまま、今、世界は原発の建設に舵を切り始めています。


国連気候変動サミット9月22日

温暖化対策につながるとして二酸化炭素を出さない原発に注目が集まっているからです。

アメリカオバマ大統領:
気候変動による危険は否定出来ない。私たちは責任を取らなくてはいけない。

フランス サルコジ大統領:
温室効果ガスを2050年までに50%削減。先進国は80%削減しなくてはならない。

フィンランド

ヨーロッパではチェルノブイリの事故以降、およそ20年ぶりに原発の建設がふたたび始まりました。
新興国でも建設ラッシュが始まっています。

中国

経済成長を続ける中国。
今後3年間で16基の建設を計画しています。

建設中・計画中

今後世界で作られる予定の原発は100基を超えます。
放射性廃棄物という課題に私たちはどう向き合うのか。
原発の解体と建設が同時に進むイギリス。

カンブリア州 イギリス

政府は温暖化対策やエネルギーの確保を目的に方針を転換、原発建設に乗り出しました。

エネルギー気候変動省 エド・ミリバンド大臣:
この国には原子力ルネサンス新しい原発が必要です。
気候変動が国民の考え方を変えたのです。
原子力ルネサンスは世界中で沸き起こっています。

これに対し政府内から反対する声も上がっています。

政府のエネルギー諮問委員会 ジョナサン・ポリット委員長:
廃棄物の問題を解決した国は殆どありません。
現状では原発はデメリットのほうが大きいのです。
問題が解決できるまでは、新たに原発の建設をすすめるべきではありません。

市民の間でも意見が分かれています。
原発の建設候補地で開かれた電力会社による住民説明会です。

「原発は持続可能な発展をもたらします。反対している人はごくわずかです」
「本当にこの村が建設に適しているのですか」
「なぜここに原発を建てたいと思うのかわかりません」

電力会社幹部:
雇用が生まれますし、将来的には子どもにとっても良いニュースです。

イギリスでは政府、住民、様々なレベルで議論が広がっています。
日本でも2つの原発が解体されると同時に9基の建設計画が進んでいます。
しかし、国民的な関心は充分に高まっているとは言えません。
処分場がないまま解体で出る廃棄物が増え始めています。

東海発電所

解体が進む東海発電所。
運転中の7倍の放射性廃棄物が出ると見込まれています。
東海発電所に設けられた貯蔵施設です。
廃棄物は専用の容器に入れられコンクリートの施設に保管されていました。
しかし広さは限られています。
解体作業が進むと、数年後には満杯になるとみられています。

日本原子力発電 松本松治 副社長:
解体をやっているのだけど廃棄物がどう処分されるかわからない。
外に出せない場合は、そこに(発電所内)保管せざるをえないわけですが、
そこがだんだんとひっ迫してくると、ある意味解体に着手が出来ないという
状況に陥っていくということになろうかと思います

放射線の影響を受ける廃棄物は6万8千トン。

少しでも減らすため、一般の製品にリサイクルしようとしています。
国の制度では放射線が胃のレントゲンで浴びる量の60分の1を下回ればリサイクルできます。
作業員は汚染の度合いを測定します。

「線量どうですか?」
「100以下でオッケーです」

基準以下と認められれば原発の外に持ち出すことができます。
この日、リサイクルが許可された廃棄物を地元の企業に持ち込みました。
廃棄物を溶かしてベンチやテーブルに加工しています。
リサイクルが目標にしている量は4万トン。
しかしこうした廃棄物の加工を引き受けてくれるのは1社だけです。
健康に影響のないレベルだとしても放射能に対する抵抗感が根強いためだといいます。
リサイクルを初めて2年、まだ広がっていません。

廃止措置安全小委員会の報告書

国は放射線廃棄物の処分場について、どう考えているのか。
平成13年にまとめられた国の審議会の報告書です。
原発が解体撤去される前に廃棄物の処分場を作ることが不可欠だと指摘しています。
東海発電所で原子炉の解体が始まるのは2年後。大量の廃棄物が生まれることになります。

原子力委員会 東京千代田区

国の原子力政策を立案する内閣府、原子力委員会の近藤委員長に
処分場がない現状をどう考えているか問いました。

内閣府原子力委員会 近藤駿介 委員長:
当初はもう少し、あの、早く進むということを想定していたと思うんですけど
しかしこれはいろいろな、あの・・・
当時は想定していなかった
いろいろな不都合、不具合がプロセスで起きた結果として遅れているという
国民との対話を通じてですね、自分たちの問題と理解していただける
そういう人たちの数を増やしていくと、
私はまだまだそういう目で見ますとね、われわれ日本の原子力関係者の努力が足りないと。

国民の理解を広げ、処分場を作りたいとする国。
原発を推進してきた責任が今問われています。

市民による原発を考える授業

「宜しくお願いしますね」
「よろしくお願いしまーす」

原発解体で出る廃棄物の問題に将来向きあうのは子供たちです。

「皆さんもそうなんですけども、日ごろエネルギーというものをどれくらい使ってますか。
いまね、日本でですね、電気のうちの原子力は30%くらい。
3割くらいは原子力発電使ってるんです。」

大和田小学校 埼玉新座

「まず賛成の方から言いたいと思います。
賛成の理由は電気ができて一酸化炭素を出さずに環境にもすごくいいと思いました」

「僕は反対しました。
理由は地下に埋めてもそのうち埋められなくなって、埋めるところがなくなります。
いくら環境にいいとしても、地上に置かれるとちょっと怖くて、
厳重にされているとしても、本当に怖くなるからです」

原発が生み出す負の遺産を次の世代に先送りし続けるのか。
私たちは再び「ふげん」を取材しました。
地下に作られた廃棄物の処理施設では、廃棄物を分別する作業に追われていました。

解体で増え続ける放射性廃棄物。
日本のどこに処分されるのか、そのゆくえは決まっていません。
人類が原発を手にしてから半世紀。これまでに作られた原発は世界で539基にのぼります。
そして、その全てがいずれ解体され廃棄物となるのです。


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